JP3576620B2 - 非常用ブレーキ装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、動力伝達装置の非常用ブレーキ装置、特に、刈払機等の携帯用作業機の動力伝達装置の非常用ブレーキ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、刈払機等の携帯用の作業機においては、内燃エンジン、電動機等の原動機から刈刃部等の作業部への動力の伝達は、その動力伝達経路の途中に遠心クラッチを介装させ、原動機からの動力は、回転遠心力を利用して前記遠心クラッチをクラッチイン状態として、作業部を駆動せしめて草木の刈払い等の作業を行っていた。
そして、従来の前記動力の伝達は、前記遠心クラッチをクラッチアウト状態としても、その動力伝動系統は慣性力により暫くの間回転を持続する傾向があるので、この回転を速やかに制止するために、クラッチとは別に非常用ブレーキ装置を設けることが行われている。
【0003】
前記非常用ブレーキ装置を設ける手段としては、例えば、刈払機の回転刃近傍にブレーキフランジを配置し、前記回転刃の回転制止時には、前記ブレーキフランジのライニングを前記回転刃に接触させることによって前記回転刃の回転を制止させるもの(実公昭54−1378号公報)、あるいは、遠心クラッチのクラッチシューにブレーキシューを一体に設ける一方、伝動ケース等の固定部にブレーキスリーブを設けて、遠心クラッチのクラッチアウト時に前記クラッチシューに設けたブレーキシューをブレーキスリーブに接触させることにより作業部への従動軸の回転を制止させるもの(実公平3−17077号公報)、さらには、駆動軸に設けられたクラッチシューと従動軸に設けられたクラッチドラムから成る遠心クラッチにおいて、前記クラッチドラムにブレーキライニングを設けるとともに、前記従動軸に前後動可能に嵌合する摺動体にブレーキライニングを設けて、クラッチアウト時等に前記クラッチドラムのブレーキライニングに前記摺動体の前記ブレーキライニングを接触させて、作業部への従動軸の回転を制止させるもの(実公昭54−1373号公報)等が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、かかる従来の原動機から作業部への動力伝達経路の途中に遠心クラッチを介装したものおいては、該遠心クラッチが駆動軸によって回転するクラッチシュー等の遠心力で自動的にクラッチイン状態となり、格別のクラッチ操作を必要としないが、この遠心力が働いてクラッチイン状態になっている遠心クラッチを、直ちに、動力をまったく伝達をしないクラッチアウト状態にすることができない。
【0005】
このことは、例えば、刈払い作業等において作業部を駆動(回転もしくは往復動)して作業をしているとき、作業部が障害物等に接触してその駆動が阻害されたような場合には、前記遠心クラッチを直ちにクラッチアウトの離脱状態として駆動力の伝達を無くして、原動機の負担の軽減もしくは作業者等への危険の防止等をする必要があるが、従来の前記遠心クラッチでは、直ちに、完全なクラッチ離脱状態とすることができず、機体各部に不具合が生じる等の問題点があった。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、特に、原動機を駆動して作業部へ動力伝達するとき、その動力伝達経路の途中に介装されるクラッチが自動的にクラッチイン状態になると共に、必要に応じて、直ちに、クラッチアウトの離脱状態とし、作業部への駆動を速やかに停止できる動力伝達装置の非常用ブレーキ装置を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、本発明の非常用ブレーキ装置は、伝動ケースに対して被動側覆いケースの基端部を移動可能に配置し、前記伝動ケース内に遠心クラッチを内装し、前記遠心クラッチのクラッチシュー付駆動側制動板をクラッチ摺動子に作用する遠心力で回転軸線に沿って被動側クラッチ板方向に摺動するべく配置し、該被動側クラッチ板と一体の被動軸を前記被動側覆いケース内に回転自在に支持し、前記被動側クラッチ板の後側面と該後側面に対向する前記伝動ケースの環状フランジの一側面とをブレーキ用摩擦面とし、前記伝動ケースと前記被動側覆いケースとの間に、前記被動側覆いケースと前記被動側クラッチ板とを前記回転軸線に沿って前記駆動側制動板方向に移動付勢する付勢部材を介在したことを特徴としている。
【0008】
そして、前記被動側覆いケースと前記被動側クラッチ板との前記駆動側制動板方向への移動を阻止し、前記被動側クラッチ板と前記環状フランジの二つのブレーキ用摩擦面を互いに接触せしめて、前記遠心クラッチを強制的にクラッチアウト状態とすると共に、ブレーキイン状態とするブレーキ作動部材を備えたことを特徴としている。
【0009】
【作 用】
前述の如く構成された本発明による刈払機等のクラッチ付非常用ブレーキ装置は、原動機を所定回転速度で駆動すると、遠心クラッチが自動的にクラッチイン状態となって、作業部であるバリカン刃等に動力を伝達して駆動するが、刈払い等の作業中に、前記バリカン刃が何等かの障害物等に接触し、該バリカン刃の移動が阻害され、原動機に過剰負荷がかかると、原動機、及び、該原動機と一体となっている前記伝動ケースが前記被動側覆いケースに対して相対的に移動しようとする力が働く。即ち、前記過剰な負荷によって、前記伝動ケースと前記被動側覆いケースとを前記付勢手段を圧縮する方向に動かす力が働き、前記伝動ケースに対して前記被動側覆いケースを移動(相対的移動)させ、前記クラッチシューから前記被動側クラッチ板が離れて強制的にクラッチアウト状態になると共に、前記被動側クラッチ板の後側面が摩擦停止用ブレーキ部材に摩擦接触してブレーキイン状態となる。
【0010】
【実施例】
以下に添付の図を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。
図1は、本発明の非常用ブレーキ装置が適用された一実施例のバリカン型刈払機の全体構成の斜視図である。
バリカン型刈払機10は、操作桿を構成する被動側覆いケース11の先端部にギヤケース12を介してバリカン刃13を備えた刈払部が取り付けられている。前記被動側覆いケース11の後端部には小型空冷2サイクルガソリンエンジン等の原動機14が配備され、該原動機14と前記被動側覆いケース11との間には、内部に遠心クラッチ及びブレーキ(詳細は後述)が配備された非常用ブレーキ装置20が装備されている。
【0011】
前記原動機14の動力は、前記非常用ブレーキ装置20の伝動ケース21内に配備されたクラッチを介して、前記被動側覆いケース11内に配備された被動ドライブシャフト47及び前記ギヤケース12内のベベルギヤ等(図示省略)を介して前記バリカン刃13に伝達されるようになっている。
そして、前記操作桿を構成する被動側覆いケース11上の前記原動機14とバリカン刃13との間には、ハンドル取付装置15を介して全体がU字状のパイプ部材から成るハンドル16が配置固定されている。このハンドル16にはハンドル握り17、17が取り付けられると共に、一方のハンドル握り17にスロットルレバー18が設けられており、前記原動機14を操作するべくスロットルワイヤ19を連結している。
【0012】
図2は、本実施例の非常用ブレーキ装置20の断面図であり、図3は、図2のIII−III 矢視断面図、図4は前記非常用ブレーキ装置20の被動側伝動ケース23の分解斜視図である。
前記原動機14に固定されている前記伝動ケース21は、駆動側伝動ケース22と被動側伝動ケース23とから成り、前記駆動側伝動ケース22は一端を前記原動機14に固着し、他端を前記被動側伝動ケース23との接合部とする円筒状としており、前記被動側伝動ケース23は、図4に示した如く、左右対称の半割の伝動ケース23a、23bとして構成されている。
【0013】
前記駆動側伝動ケース22の前記被動側伝動ケース23との接合部分24は、幾分外径が小さく構成され、その接合部分24の外周には、環状溝25が形成されている。前記被動側伝動ケース23は前記駆動側伝動ケース22側が円筒状部分23a1 、23b1 を、前記被動側覆いケース11側が裁頭円錐筒状部分23a2 、23b2 を構成しており、前記被動側伝動ケース23の前記駆動側伝動ケース22との接合部分には、前記駆動側伝動ケース22の前記環状溝25に係合する内方向に突出する環状突起26を形成している。
【0014】
前記被動側伝動ケース23の裁頭円錐筒状部分23a2 、23b2 の外周で、前記左右の半割の伝動ケース23a、23bの接合部の各々には、耳状フランジ27が上下に対称に設けられる。これ等の耳状フランジ27の各々には、前記被動側伝動ケース23の前記半割の伝動ケース23a、23bを固定するケース固定ボルト28を挿通するボルト挿通孔29が穿設されている。前記半割の伝動ケース23a、23bには、その接合部の前記耳状フランジ27の部分には二つのブレーキ作動部材30が上下に一対介在している。
【0015】
これ等のブレーキ作動部材30は、各々前記ケース固定ボルト28に揺動自在に支持されるものであり、中間部にボルト挿通孔30を穿設すると共に、一側にブレーキ解除押圧部30bを他側に係合爪30cを備えている。前記耳状フランジ27の前記ボルト挿通孔29と前記ブレーキ作動部材30の前記挿通孔30aとに前記ケース固定ボルト28を挿通し、ケース固定ナット33で締め付けることによって、前記半割の伝動ケース23a、23bは前記ブレーキ作動部材30を揺動自在に保持するとともに、互いに接合固定される。
【0016】
前記伝動ケース21内には、遠心クラッチ40が内装されており、該遠心クラッチ40は、駆動側にクラッチ円盤41が前記原動機14の出力軸である駆動側ドライブシャフト60に固定されており、前記クラッチ円盤41と同一軸線X−X位置に対向して駆動側制動板43が配置されている。前記クラッチ円盤41には前記駆動側制動板43との対向面の中心部に突出爪部41aを備える一方、前記駆動側制動板43には前記突出爪部41aと互いに係合することによって噛み合いクラッチを構成する係合爪部43a備えている。前記駆動側制動板43の前記係合爪部43aは、前記クラッチ円盤41の前記突出爪部41a、を包むように係合しており、前記突出爪部41aに対して軸線X−X方向に摺動可能となっており、前記クラッチ円盤41と前記駆動側制動板43とは前記突出爪部41aと前記係合爪部43aとで構成される噛み合いクラッチを介して一体となって回転する。
【0017】
前記クラッチ円盤41の前記駆動側制動板43側の面には同一形状の半月状の一対のクラッチ摺動子係合溝41b、41bが設けられていると共に、前記駆動側制動板43の前記クラッチ円盤41側の面は、外周方向が前記クラッチ円盤41側に傾斜するテーパー状の面となっている。
前記クラッチ円盤41と前記駆動側制動板43との間には、一対のクラッチ摺動子42、42が軸線X−Xに対して対向して配置され、これ等のクラッチ摺動子42、42は、図3に示すように、各々半月状しており、その対向部分には左右一対の引張コイルばね45、45が取り付けられ、前記一対のクラッチ摺動子42を互いに中心方向に付勢している。前記クラッチ摺動子42の図2の左右方向の面は、前記クラッチ円盤41側では、回転軸線X−Xに対して垂直な面をしており、前記クラッチ円盤41のクラッチ摺動子係合溝41bに係合して半径方向へ摺動し、前記駆動側制動板43側は、前記駆動側制動板43のテーパー面に摺接する外周方向が前記クラッチ円盤41側に傾斜するテーパー面となっている。
【0018】
前記駆動側制動板43のテーパー面と反対の面には、円板状のクラッチシュー44が一体に固定されており、該クラッチシュー44と対向する位置には、被動側クラッチ板46が配置されている。
前記被動側クラッチ板46は、被動軸46bを一体に備えており、該被動軸46bは前記バリカン刃13に動力を伝達する被動ドライブシャフト47に連動連結されていると共に、前記操作桿を構成する被動側覆いケース11の基端部内にスナップリング51で位置決めされた軸受48、48を介して回転自在に支持されている。
【0019】
前記被動側覆いケース11の前記遠心クラッチ40側の基端部近傍には、半径方向外方に延びる環状フランジ49が設けられており、該環状フランジ49と前記被動側伝動ケース23の前記裁頭円錐筒状部分23a2 、23b2 の端部に設けられた内方向に延びる環状フランジ33a、33bとの間には、付勢部材としての圧縮コイルスプリング50が前記被動側覆いケース11の外周をとり囲んで介在されている。したがって、該被動側覆いケース11は、前記被動側クラッチ板46と共に、前記圧縮コイルスプリング50の付勢力によって、常時は前記駆動側制動板43に向けて押圧移動されている。
【0020】
前記被動側クラッチ板46の後側面46aと、該後側面46aに対向する前記被動側伝動ケース23の内方向に突出している環状フランジ31の内側面31aは、ブレーキ用摩擦面として構成されるものであり、図示例では、該内側面31aには更に環状の摩擦停止用ライニング部材32が配置されている。
次に、本実施例の作動について説明する。
【0021】
図2は、前記バリカン型刈払機10の非作業時の状態で、前記原動機14が停止していて、前記遠心クラッチ40が回転していないクラッチアウト状態を示し、図5は、作業時の状態で、前記原動機14の回転動力が前記遠心クラッチ40を介して前記バリカン刃13に伝達されているクラッチイン状態を示し、更に、図6は、前記原動機14の回転動力が前記遠心クラッチ40には伝達されているが、バリカン刃13には伝達されないクラッチアウト状態で、被動側がブレーキインの状態を示している。
【0022】
前記バリカン型刈払機10の作業者が、図2の状態から前記原動機14を始動すると、該原動機14が回転すると共に、前記駆動側ドライブシャフト60を回転させる。該駆動側ドライブシャフト60の回転によって、前記遠心クラッチ40の駆動側の部材、即ち、前記クラッチ円盤41、前記クラッチ摺動子42、42、及び、前記駆動側制動板43が一体となって回転する。作業者が前記スロットルレバー18を操作してこの回転が所定値まで上がることにより、前記クラッチ摺動子42、42がその回転遠心力によって、放射外方向に移動する。該クラッチ摺動子42、42が移動すると、該クラッチ摺動子42、42の前記テーパー面と前記駆動側制動板43のテーパー面との相互摺動作用によって、前記駆動側制動板43が前記被動側クラッチ板46方向に移動し、図5に示すように、前記駆動側制動板43と一体の前記クラッチシュー44が前記被動側クラッチ板46に圧着される状態、即ち、クラッチイン状態になる。この状態では、前記クラッチシュー44と前記被動側クラッチ板46とが摩擦接触しているので、前記クラッチシュー44の回転動力が前記被動側クラッチ板46に伝えられ、両者は一体となって回転する。この図5のクラッチイン状態で、作業者が前記バリカン型刈払機10の前記ハンドル16の左右の前記ハンドル握り17を握って、刈払い作業を行う。
【0023】
ところで、作業者が前記バリカン型刈払機10で刈払い作業中に、前記バリカン刃13が何等かの障害物等に接触し、該バリカン刃13の移動が阻害され、原動機14側に過負荷がかかると、原動機14、及び、該原動機14と一体となっている前記伝動ケース21が前記被動側覆いケース11に対して相対的に移動しようとする力が働く。即ち、前記伝動ケース21と前記被動側覆いケース11とは、前記圧縮コイルスプリング50によって、遠心クラッチ40のクラッチイン方向に互いに押圧移動しているが、前記過負荷によって、前記伝動ケース21と前記被動側覆いケース11とを前記圧縮コイルスプリング50を圧縮する方向に動かす力が働き、図5において、前記伝動ケース21に対して前記被動側覆いケース11を右方向に移動(相対的移動)させ、図6に示すように前記クラッチシュー44から前記被動側クラッチ板46が離れてクラッチアウト状態になると共に、前記被動側クラッチ板46の後側面46aが摩擦停止用ライニング部材32に摩擦接触して、ブレーキイン状態となるよう動作する。この動作によって原動機14への過負荷が防止されると共に、前記バリカン刃13の作動をロックする。
【0024】
また、図6に図示されている前記ブレーキ作動部材30の位置は、クラッチアウト状態で、ブレーキイン状態とするべく、前記ブレーキ作動部材30の係合爪30cを前記被動側覆いケース11の前記環状フランジ49の前記圧縮コイルスプリング50と反対側に係合した状態を示すものであり、前記原動機14は回転し、前記クラッチ円盤41、クラッチ摺動子42及び駆動側制動板も回転している状態を示している。
【0025】
前記ブレーキ作動部材30を、例えば手動操作により図6の状態とすることによって、前記原動機14が回転しているか否かに係わらず、前記被動側クラッチ板46を前記被動側覆いケース11にブレーキインの摩擦固定状態とし、前記バリカン刃13の作動をロックできる。
そして、前記ブレーキインの摩擦固定状態の解除は、前記ブレーキ作動部材30のブレーキ解除押圧部30bを指で押圧することによって、前記係合爪30cが前記環状フランジ49との係合から外れ、前記被動側覆いケース11が前記圧縮コイルスプリング50の付勢によって、図6の左方に移動し、前記被動側クラッチ板46の後側面46aが摩擦停止用ライニング部材32から離れ、ブレーキアウト状態になる。
【0026】
次に、本発明の他の実施例を図7及び図8に基づいて説明する。
本実施例は、回転刃型刈払機にクラッチ付非常用ブレーキ装置を適用した実施例であり、本図示例の説明においては、前記した第一実施例の各部に対応する部分は、同一の符号を付すこととし、それらの重複する説明を省略して、前記第一実施例との相違点を重点的に説明する。
【0027】
本実施例においては、前記第一実施例の前記バリカン刃13に替えて回転刃13’とし、前記ブレーキ作動部材30に替えてブレーキ作動部材30’とし、該ブレーキ作動部材30’を前記ハンドル16のハンドル握り17部分で操作できるようにすると共に、前記圧縮コイルスプリング50の配置位置を変更した点で相違し、残余の構成は前記第一実施例と同一である。
【0028】
本実施例では、圧縮コイルスプリング50が、被動側伝動ケース23の環状フランジ31と被動側覆いケース11の環状フランジ49との間に介在されており、前記被動側伝動ケース23に対して被動側覆いケース11を図8における右方向に相対的に移動するべく付勢している。図8における作動位置は前記被動側伝動ケース23に対して前記被動側覆いケース11が最右位置に移動している状態を示しており、前記被動側覆いケース11と一体となって移動する被動側クラッチ板46が摩擦停止用ライニング部材32と摩擦接触してブレーキイン状態であると共に、クラッチシュー44と前記被動側クラッチ板46とは離れており、遠心クラッチ40はクラッチアウト状態である。
【0029】
前記ブレーキ作動部材30’は、中間部にケース固定ボルト28を挿通するボルト挿通孔30’aを穿設しており、下側に作動爪30’cを上側に操作ワイヤ61の一端を連結するワイヤ取付部30’bを備えている。前記ブレーキ作動部材30’は、前記被動側伝動ケース23の上側の挿通孔29に前記ケース固定ボルト28によって、揺動自在に支持されている。
前記操作ワイヤ61の他端は、前記ハンドル16の前記ハンドル握り17に導かれ、該ハンドル握り17に取り付けられた操作レバー62に連結され、該操作レバー62よって操作される。
【0030】
次に、本実施例の作動について説明する。
前述の如く図8は、前記回転刃型刈払機10’の非作業時で、前記原動機14が回転し、前記遠心クラッチ40の駆動側は回転しているが、前記遠心クラッチ40がクラッチアウト状態で、被動側がブレーキインの状態を示している。このような状態のもとで、作業者が前記回転刃型刈払機10’の前記ハンドル16の左右の前記ハンドル握り17を握って、更に、該ハンドル握り17に固定されている前記操作レバー62を前記ハンドル握り17と一緒に握って前記操作ワイヤ61を牽引すると、前記ブレーキ作動部材30が前記ケース固定ボルト28を軸心として時計回りに揺動する。この揺動によって、前記ブレーキ作動部材30の作動爪30’cが前記被動側覆いケース11の前記環状フランジ49を押圧して前記被動側覆いケース11を図8における左方に移動させる。この移動によって、前記圧縮コイルスプリング50が圧縮されると共に、被動側クラッチ板46が摩擦停止用ライニング部材32との摩擦接触から外れてブレーキアウト状態とする一方、前記クラッチシュー44に前記被動側クラッチ板46が摩擦接触して遠心クラッチ40をクラッチイン状態にする。前記遠心クラッチ40がクラッチイン状態になると、前記回転刃13’が回転する。このような状態で、作業者が前記ハンドル16の前記ハンドル握り17を握って刈払い作業を行う。
【0031】
また、刈払い作業を終了するときは、前記原動機14を停止すると、前記遠心クラッチ40の回転駆動力が減少するので、前記遠心クラッチ40の前記クラッチ摺動子42、42が遠心力を無くして軸中心方向に移動し、前記被動側クラッチ板46から前記クラッチシュー44が離れて摩擦接触を解除し、クラッチアウト状態として前記回転刃13’の回転駆動を停止する。
【0032】
ところで、作業者が前記回転刃型刈払機10’で刈払い作業中に、前記回転刃13’が何等かの障害物等に接触し、該回転刃13’の回転が阻害されるような状態になると、前記原動機14に過負荷がかかってしまう。このような状態になった時、作業者が前記ハンドル握り17の操作レバー62を解除して操作ワイヤ61の牽引力を無くすと、前記圧縮コイルスプリング50の付勢力によって前記被動側覆いケース11が前記被動側伝動ケース23に対して右方に移動、即ち、前記図8に示した位置に移動する。この移動によって、前記遠心クラッチ40の前記クラッチシュー44から前記被動側クラッチ板46が離れてクラッチアウト状態になると共に、前記被動側クラッチ板46の後側面46aが摩擦停止用ライニング部材32に摩擦接触してブレーキイン状態とする。この動作によって原動機14側の過負荷が自動的に防止されると共に、前記回転刃13’を固定する。
【0033】
このように、前記二つの実施例は、刈払機等の動力伝達経路の途中にクラッチ付非常用ブレーキ装置を設けたので、作業部分に何等かの理由で過負荷がかかったようなとき、即座にクラッチアウト状態とすると共に、ブレーキイン状態として、作業部分への動力伝達を停止すると共に、刈刃を固定することができる。
以上、本発明の二つの実施例について詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている本発明の精神を逸脱することなく、種々の変更を行うことができる。
【0034】
例えば、前記実施例では、刈払機の刈刃部分への動力伝達経路の途中に遠心クラッチ付非常用ブレーキ装置を介装した例を示したが、広く移動用作業機、さらには、一般の動力伝達装置にも前記遠心クラッチ付非常用ブレーキ装置を介装することができる。
また、前記第一実施例のブレーキ作動部材を、前記第二実施例の如く、ハンドルのハンドル握り部で操作できるように操作ワイヤ等を介して操作するべく構成することもできる。
更に、遠心クラッチ自体も前記実施例に限定されるものではなく、被動側クラッチ板が回転軸線方向に移動できる構成であればどのようなものでもよい。
【0035】
【発明の効果】
以上の説明から理解できるように、本発明は、刈払機等の動力伝達経路の途中に遠心クラッチ付非常用ブレーキ装置を介装したので、遠心クラッチがクラッチイン状態で被動部側に動力が伝達されていても、自動もしくは手動で、即座にクラッチアウト状態に動作することができると共に、同時に被動部側をブレーキイン状態として固定できる。このため被動部側の刈刃部分等が何等かの障害物等に接触し、該刈刃等の移動が阻害され、原動機側に過負荷がかかっても、この過負荷を前記動作によって即座に回避でき、かつ、前記刈刃部分等の作業部を固定することができる。
【0036】
また、本発明は、遠心クラッチのクラッチシューと被動側クラッチ板との接触接合面をディスク式の摩擦クラッチと同等に構成したので、通常の遠心クラッチに比べて接触接合面(摩擦接触面)を大きく取ることができるので、しっかりとしたクラッチイン状態を確保できると共に、前記接触接合面の加工が容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のバリカン型刈払機の全体概略を示す斜視図。
【図2】図1の矢印II方向からみたクラッチ付非常用ブレーキ装置のクラッチアウト状態の縦断面図。
【図3】図2のIII−III 矢視断面図。
【図4】被動側伝動ケース部分の分解斜視図。
【図5】図1の矢印II方向からみたクラッチ付非常用ブレーキ装置のクラッチイン状態の縦断面図。
【図6】図1の矢印II方向からみたクラッチ付非常用ブレーキ装置のブレーキイン状態の縦断面図。
【図7】本発明の他の実施例の回転刃型刈払機の全体概略を示す斜視図。
【図8】図7の矢印VIII方向からみたクラッチ付非常用ブレーキ装置のブレーキイン状態の縦断面図。
【符号の説明】
10…バリカン型刈払機
11…被動側覆いケース
16…ハンドル
20…非常用ブレーキ装置
21…伝動ケース
30…ブレーキ作動部材
30’…ブレーキ作動部材
31…環状フランジ
31a…環状フランジの一側面
32…摩擦停止用ブレーキ部材
40…遠心クラッチ
42…クラッチ摺動子
43…駆動側制動板
44…クラッチシュー
46…被動側クラッチ板
46a…被動側クラッチ板の後側面
46b…被動軸
50…圧縮コイルスプリング(付勢部材)
62…操作レバー
X−X…回転軸線
Claims (6)
- 伝動ケース(21)に対して被動側覆いケース(11)の基端部を移動可能に配置し、前記伝動ケース(21)内に遠心クラッチ(40)を内装した非常用ブレーキ装置(20)であって、
前記遠心クラッチ(40)のクラッチシュー(44)付駆動側制動板(43)をクラッチ摺動子(42)に作用する遠心力で回転軸線(X−X)に沿って被動側クラッチ板(46)方向に摺動するべく配置し、
該被動側クラッチ板(46)と一体の被動軸(46b)を前記被動側覆いケース(11)内に回転自在に支持し、
前記被動側クラッチ板(46)の後側面(46a)と該後側面(46a)に対向する前記伝動ケース(21)の環状フランジ(31)の一側面(31a)とをブレーキ用摩擦面とし、
前記伝動ケース(21)と前記被動側覆いケース(11)との間に、前記被動側覆いケース(11)と前記被動側クラッチ板(46)とを前記回転軸線(X−X)に沿って前記駆動側制動板(43)方向に移動付勢する付勢部材(50)を介在したことを特徴とする非常用ブレーキ装置。 - 前記被動側覆いケース(11)と前記被動側クラッチ板(46)との前記駆動側制動板(43)方向への移動を阻止し、前記被動側クラッチ板(46)と前記環状フランジ(31)の二つのブレーキ用摩擦面(31a、46a)を互いに接触せしめて、前記遠心クラッチ(40)を強制的にクラッチアウト状態とすると共に、ブレーキイン状態とするブレーキ作動部材(30)を備えたことを特徴とする請求項1に記載の非常用ブレーキ装置。
- 伝動ケース(21)に対して被動側覆いケース(11)の基端部を移動可能に配置し、前記伝動ケース(21)内に遠心クラッチ(40)を内装した非常用ブレーキ装置(20)であって、
前記遠心クラッチ(40)のクラッチシュー(44)付駆動側制動板(43)をクラッチ摺動子(42)に作用する遠心力で回転軸線(X−X)に沿って被動側クラッチ板(46)方向に摺動するべく配置し、
該被動側クラッチ板(46)と一体の被動軸(46b)を前記被動側覆いケース(11)内に回転自在に支持し、
前記被動側クラッチ板(46)の後側面(46a)と該後側面(46a)に対向する前記伝動ケース(21)の環状フランジ(31)の一側面(31a)とをブレーキ用摩擦面とし、
前記伝動ケース(21)と前記被動側覆いケース(11)との間に、前記被動側覆いケース(11)と前記被動側クラッチ板(46)とを前記駆動側制動板(43)と反対方向に移動付勢する付勢部材(50)を介在したことを特徴とする非常用ブレーキ装置。 - 前記付勢部材(50)によって、前記被動側クラッチ板(46)と前記環状フランジ(31)の二つのブレーキ用摩擦面(31a、46a)を互いに接触せしめてブレーキイン状態とすると共に、前記被動側覆いケース(11)と前記被動側クラッチ板(46)とを前記駆動側制動板(43)方向へ移動させてブレーキアウト状態とするブレーキ作動部材(30’)を備えたことを特徴とする請求項3に記載の非常用ブレーキ装置。
- 前記非常用ブレーキ装置(20)が刈払機(10)に装備されていることを特徴とする請求項2又は4に記載の非常用ブレーキ装置。
- 前記ブレーキ作動部材(30、30’)が、前記刈払機(10)のハンドル(16)に設けた操作レバー(62)で操作されることを特徴とする請求項5に記載の非常用ブレーキ装置。
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