JP3575720B2 - ラミネート用多層シーラントフィルム及びそれを用いたラミネートフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、多層フィルムおよびそれを用いたラミネートフィルムに関する。さらに詳しくは滑り性,耐ブロッキング性,透明性および表面外観に優れた多層フィルムおよびそれを用いたラミネートフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
二軸延伸されたポリプロピレンフィルム,ナイロンフィルム,ポリエチレンテレフタレートフィルム等を基材フィルムとしたラミネートフィルムは、透明性,カスバリヤー性などの特徴を生かして、多くの分野に使われている。このラミネートフィルムは、通常基材フィルムにヒートシールのためのフィルム(シーラントフィルム)がラミネーションによって一体化されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
このようなシーラントフィルムとしては、ポリエチレン系,ポリプロピレン系などがその用途によって使い分けられているが、耐熱性があり、低温シール性であることが要求される。また、その他の特性として、透明性,滑り性,耐ブロッキング性を満足することが望まれている。特に耐ブロッキング性と透明性、およびラミネートフィルムに用いた場合の表面外観のいずれにも優れたものは、未だ得られていないのが現状である。
【0004】
すなわち、フィルム製造から内容物の充填に至るまでの全工程において要求されるシーラントフィルムの滑り性および耐ブロッキング性を向上させるため、粒子径の大きな耐ブロッキング剤を含有させると、透明性が低下するとともに、表面に凹凸が目立つようになり(いわゆるオレンジピールの発生)外観上好ましくなく、また、耐ブロッキング性を確保するためには、ある程度の大きさの粒子径の耐ブロッキング剤を必要とするため、滑り性や耐ブロッキング性と、透明性や表面外観とを同時に向上させることは困難であった。
【0005】
本発明は上述の問題に鑑みなされたものであり、耐ブロッキング性,滑り性に優れるとともに、フィルム加工時のラミネート適性,製袋適性にも優れ、さらに、透明性、および表面外観にも優れた多層のシーラントフィルムを提供すること、およびこのフィルムを用いた透明性、および表面外観に優れたラミネートフィルムを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため本発明によれば、一の外層としてヒートシール層を、また、他の外層としてラミネート層をそれぞれ有し、かつ少なくとも両外層が微粉シリカを含有した直鎖状低密度ポリエチレン樹脂からなる多層フィルムにおいて、前記ヒートシール層とラミネート層との間に、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂からなる中間層が設けてあり、前記微粉シリカが、その表面を表面処理されたものであり、ヒートシール層中に含有された微粉シリカの平均粒子径が、ラミネート層に含有された微粉シリカの平均粒子径よりも大であり、かつヒートシール層の表面が、滑り性や耐ブロッキング性のための十分な凹凸を有するとともに良好な透明性および表面外観を有することを特徴とするラミネート用多層シーラントフィルム(但し、ヒートシール層はヒドロキシ脂肪酸グリセリドを含まない)が提供される。
【0007】
また、基材フィルムの上に、前記ラミネート用多層シーラントフィルムを、そのラミネート層と基材フィルムとが対向するように接着層を介して積層してなり、良好な透明性や表面外観を有することを特徴とするラミネートフィルムが提供される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
1.多層フィルム
本発明の多層フィルムは、ヒートシール用のシーラントフィルム等として好適に用いられるものである。
【0012】
本発明は、ヒートシール層と、必要に応じて複数設けられる中間層と、ラミネート層とから構成されている。
【0013】
また、本発明においては、少なくともヒートシール層、およびラミネート層の2層に微粉シリカが含有されている。この場合、微粉シリカの平均粒子径は、ヒートシール層中のものの方がラミネート層中のものよりも大きく設定する必要がある。
【0014】
このような多層のフィルムとすることにより、単層のフィルムでは実現することが困難であった滑り性,耐ブロッキング性と、透明性,表面外観とをいずれも満足するフィルムを得ることができたのである。
以下、構成要素ごとにさらに詳しく説明する。
【0015】
(1)ヒートシール層,ラミネート層、および中間層
▲1▼各層の樹脂成分
本発明に用いられるヒートシール層,ラミネート層および必要に応じて用いられる中間層の樹脂成分としては、熱可塑性樹脂であれば特に制限はない。例えば、ポリエチレンテレフタレート,ポリブチレンテレフタレート,ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート,ポリフェニレンオキシド,ポリスルホン,ポリエーテルスルホン等のポリエーテル、6,6−ナイロン等のポリアミド、ポリフェニレンスルフィド,ポリオキシメチレン等の縮重合系重合体、ポリアクリル酸,ポリアクリル酸エステル,ポリメチルメタクリレート等のアクリル系重合体、ポリオレフィン、またはポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン,ポリフッ化ビニリデン等のハロゲン含有ビニル化合物共重合体等を挙げることができる。
中でも、透明性,機械的特性,コスト等を考慮すると、ポリオレフィン樹脂が好ましく、高密度ポリエチレン,低密度ポリプロピレン,直鎖状低密度ポリエチレン,ポリプロピレン,エチレンビニルアルコール等がさらに好ましい。特に、直鎖状低密度ポリエチレンが最も好ましい。
なお、それぞれの層は同一であっても、異なっていても良い。
【0016】
特にヒートシール層として柔軟性に優れた直鎖状低密度ポリエチレンを用いる場合には、そのベタツキ性から耐ブロッキング性を発現させるのは困難であるため、本発明の構成が最も効果を発揮することになる。
【0017】
また、中間層は、必要に応じ、たとえばガスバリアー性の付与、および腰や強度の付与のため、一以上設けることができる。中間層であるため、特に耐ブロッキング性を考慮する必要はない。
▲2▼各層の厚さ
各層の厚さは、用いる樹脂によっても異なるが、通常下記のものを用いることができる。
(i)ヒートシール層
ヒートシール層の厚さは2〜20μmが好ましく、2〜15μmがさらに好ましい。
2μm未満であるとヒートシール性・製膜性に劣り、20μmを超えると剛性の低下や、シールやせによる破袋が発生しやすくなる。
【0018】
(ii)ラミネート層
ラミネート層の厚さは、10〜100μmが好ましく、10〜80μmがさらに好ましい。
10μm未満であると耐熱性や腰が低下し、100μmを超えると製膜性や加工適性が悪くなる。
【0019】
(iii )中間層
中間層の厚さは、その要求特性にもよるが、全体としての厚さは、2〜80μmが好ましく、10〜50μmがさらに好ましい。
2μm未満であると、用いることによる所望の効果が得られないことがあり、80μmを超えるとヒートシール層の特性が十分に得られなくなる。
【0020】
(2)微粉シリカ
本発明に用いられる微粉シリカとしては、特に制限はないが、有機硅素化合物等の表面処理剤によって表面処理をさせたものが、耐ブロッキング性を効率よく発現させるため好ましい。
【0021】
本発明に用いられる微粉シリカは、レーザー法で測定した重量平均粒子径が2〜10μmが好ましく、3〜7μmがさらに好ましい。2μm未満であると、所期の耐ブロッキング性が発現せず、10μmを超えると多層フィルムの透明性が悪化し、また、表面の凹凸が目立つようになる。また、本発明においては、ブロッキングしやすいヒートシール層のブロッキング防止と、多層フィルムの透明性を悪化させないという相反することを両立させるため、ヒートシール層に含有させる微粉シリカの平均粒子径を、ラミネート層中の微粉シリカの平均粒子径よりも大とする必要がある。
例えば、ヒートシール層中に含有するものの平均粒子径としては、6.6〜10μm、ラミネート層中に含有するものとしては、2〜5.2μmとすることを挙げることができる。
【0022】
このように構成することによって、ヒートシール層表面の滑り性,耐ブロッキング性を下記のようにすることができる。
滑り性としては、静摩擦係数で表わした場合、0.05〜0.3が好ましい。さらに、好ましくは0.1〜0.2である。0.05未満であるとブロッキングしやすくなり、0.3を超えると表面の凹凸が目立つようになる。
耐ブロッキング性としては、0〜0.05kg/25cm2 が好ましく、さらに好ましくは0kg/25cm2 である。0.05kg/25cm2 を超えるとブロッキングが発生しやすくなり、実用上支障がある。
また、ラミネートフィルムの透明性は、ヘイズとしては、10%以下が好ましく、さらに好ましくは7.5%以下である。10%を超えると透明性が悪く、用途が限定されることもある。
表面外観は、目視によって確認したところ、ボイドや気泡等は認められなかった。
なお、静摩擦係数、ヘイズ、および耐ブロッキング性の評価は、以下の方法に準拠した。
(静摩擦係数)
ASTM D−1894に従い、傾斜板を傾けたときにフィルムが滑り始める角度(θ)を測定し、静摩擦係数=tanθを求めた。
(耐ブロッキング性)
2本のロール間をツール面同士が密着するようにして500mm/分の速さで通し、剪断密着強度を測定した。
なお、密着面積は、(5×5)cm2 ,加圧力は、1kg/cm2 ,回転速度は、15m/分とした。
(ヘイズ)
ASTM−D1003法に準拠した。
【0023】
(3)他の添加剤
本発明においては、各層のうち、少なくとも一層に、必要に応じて、酸化防止剤,光安定剤,熱安定剤,抗ブロッキング剤,滑剤,触媒中和剤(塩素吸収剤),防曇剤,帯電防止剤等を添加してもよい。
【0024】
(4)多層フィルムの製造
本発明の多層フィルムを製造する方法としては、特に制限はないが、たとえばインフレーションフィルム成形法やTダイフィルム成形法等を挙げることができる。
本発明の多層フィルムの構成は、これらの方法において、フィルムの巻き外観を向上させると共にダイスリップへのいわゆる目ヤニの付着を減少させる等の製造工程上の効果を発揮する。
【0025】
2.ラミネートフィルム
本発明のラミネートフィルムは、基材フィルム上に前述の多層フィルムを接着層を介して積層したものである。
(1)基材フィルム
本発明に用いられる基材フィルムは、用途に応じて適宜選択されるが、たとえば、二軸延伸ポリプロピレン,二軸延伸ナイロン,二軸延伸ポリエチレンテレフタレート等を挙げることができる。
その厚さとしては、特に制限はないが、一般に12〜25μmが好ましい。25μmを超えるとツール性の低下や耐屈曲ピンホール性等が低下し、12μm未満であると腰や耐熱性が低下する。
【0026】
(2)接着剤
本発明に用いられる接着層としては特に制限はなく、基材フィルムおよび多層フィルムのラミネート層の材質に応じて適宜選択することができる。
【0027】
(3)ラミネート方法
本発明に用いられるラミネート方法としては特に制限はないが、たとえばドライラミネーション,押出しラミネーション,無溶剤型ラミネーション,ウェットラミネーション,ホットメルトラミネーション等を挙げることができる。
ドライラミネートは、通常基材フィルムと多層フィルムのラミネート層との間に、2〜4g/m2 のウレタン系接着剤を介在させて貼合することが好ましい。
【0028】
【実施例】
[実施例1]
多層フィルムの使用樹脂として、ラミネート層、および中間層に、直鎖状低密度ポリエチレン(出光石油化学社製 モアテック0238)を、またヒートシール層に直鎖状低密度ポリエチレン(出光石油化学社製 モアテック0398)をそれぞれ用いた。
このヒートシール層(以下(A)層という),中間層(以下(B)層という)、およびラミネート層(以下(C)層という)をそれぞれ、スクリュー径φ50mm,65mm,40mmの押し出し機で、(A)層/(B)層/(C)層が7/35/7μmになるよう、マルチマニホールド:Tダイ800mm,樹脂温度250℃,総吐出量100kg/h,フィルム引速50m/分,冷却ロール温度50℃の条件で共押出しし、多層フィルムを製作した。
この実施例における微粉シリカの種類および添加量、並びに多層フィルムの厚さ((A)+(B)+(C))、層厚さ比(A)/(B)/(C)、ヘイズ、耐ブロッキング性、および静摩擦係数の測定結果を表1に示す。
【0029】
なお、微粉シリカの種類は表2に示すものを用いた。
ここで、S−1は、富士シリシア化学社製SPB−4004を、S−2は、富士シリシア化学社製SPB−407を、S−3は、富士シリシア化学社製SPB−702をそれぞれ示す。
この表2中、平均粒子径は、レーザー法(レーザー粒度分布測定装置:掘場製作所LA−50)で測定した値を用いた。
【0030】
次に、ドライラミネーターを用い、得られた多層フィルムのラミネート層を基材フィルム(出光石油化学社製二軸延伸ナイロン 商品名ユニロン 厚さ15μm)上に、接着剤(東洋モートン社製AD−308:使用量3.2g/m2 )を介して積層して、ラミネートフィルムを作成した。
表面外観,静摩擦係数、およびヘイズの測定結果を表1に示す。
【0031】
[実施例2〜4]
多層フィルムの厚さ((A)+(B)+(C))、層厚さ比(A)/(B)/(C)および微粉シリカの種類,添加量を表1のように変えたこと以外は実施例1と同様にした。
各種物性の測定結果を表1に示す。
【0032】
[比較例1〜4]
多層フィルムの厚さ((A)+(B)+(C))、層厚さ比(A)/(B)/(C)および微粉シリカの種類,添加量を表1のように変えたこと以外は実施例1と同様にした。
各種物性の測定結果を表1に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
以上のことから次のことがわかった。
(1)実施例1と比較例1および2との比較(A,C層に添加したシリカの種類以外は全て同じ)
▲1▼A,C層とも実施例1と同粒径のシリカを含む比較例1は、表面外観が不良であり、C層に添加したシリカの粒径が大きすぎてボイドが発生し、ヘイズも若干悪くなる。
▲2▼実施例1とは逆に、A層のシリカ粒径が小さい比較例2は、耐ブロッキング性が低下する。その上、C層のシリカ粒径が大きすぎるので、ボイドが発生し、表面外観が不良となる。
(2)実施例3と比較例3との比較(A,C層に添加したシリカの種類以外は全て同じ)
実施例3とは逆に、A層のシリカ粒径がC層のシリカ粒径より小さい比較例3は、耐ブロッキング性が悪く、その上、C層のシリカ粒径が大きすぎるので、ボイドが、発生し、表面外観が不良となる。
(3)比較例1と比較例4との比較(A,C層とも同粒径のシリカを使用した例)
粒径が大きい比較例1は、ボイドの発生による表面外観が不良となり、粒径の小さい比較例4は、表面外観は良好なものの、耐ブロッキング性が低下する。
【0036】
【発明の効果】
以上、説明したように本発明によって、ヒートシール層の表面が滑り性,耐ブロッキング性に優れるとともに、ラミネート層が透明性、表面外観に優れた多層フィルムを提供することができる。また、滑り性,耐ブロッキング性に優れるとともに透明性,表面外観に優れたラミネートフィルムを提供することができる。
Claims (2)
- 一の外層としてヒートシール層を、また、他の外層としてラミネート層をそれぞれ有し、かつ少なくとも両外層が微粉シリカを含有した直鎖状低密度ポリエチレン樹脂からなる多層フィルムにおいて、
前記ヒートシール層とラミネート層との間に、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂からなる中間層が設けてあり、
前記微粉シリカが、その表面を表面処理されたものであり、
ヒートシール層中に含有された微粉シリカの平均粒子径が、ラミネート層に含有された微粉シリカの平均粒子径よりも大であり、
かつヒートシール層の表面が、滑り性や耐ブロッキング性のための十分な凹凸を有するとともに良好な透明性および表面外観を有することを特徴とするラミネート用多層シーラントフィルム(但し、ヒートシール層はヒドロキシ脂肪酸グリセリドを含まない)。 - 基材フィルムの上に、請求項1記載のラミネート用多層シーラントフィルムを、そのラミネート層と基材フィルムとが対向するように接着層を介して積層してなり、良好な透明性や表面外観を有することを特徴とするラミネートフィルム。
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JP12049696A JP3575720B2 (ja) | 1996-05-15 | 1996-05-15 | ラミネート用多層シーラントフィルム及びそれを用いたラミネートフィルム |
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