JP3575212B2 - タイトスケール縞鋼板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、スケール密着性に優れた縞鋼板いわゆるタイトスケール縞鋼板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
縞鋼板は、熱延鋼板の一方の面の全面に所定の高さと形状を有する縞目の突起を形成した鋼板であり、自動車、車両、船舶、各種の建築構築物の床、ステップ等に広範囲な用途に使用されている。
【0003】
縞鋼板は、通常の熱延鋼板と同様に、熱間圧延ラインで熱間圧延後、冷却、巻取って製造されるが、その際、仕上圧延機の最終スタンドに凹状の縞目を有するロールを組み入れて鋼板の片面に縞目を転写して製造される。縞鋼板の一般的な縞目の一例を図2に示す。縞鋼板1として求められる機能や品質を満足するには、縞目2は、所定の高さと形状を有することが必要である。
【0004】
熱間圧延の圧延、冷却、巻取の工程において、鋼板表面に不可避的にスケールが生成するが、このスケールは一般的に脆い性質のものである。そのため、縞鋼板を剪断、成形加工する際に、スケールが剥離し、また剥離したスケールにより縞鋼板に表面疵が発生する。スケールの剥離は、作業環境を悪化するだけでなく、最終ユーザーにおける縞鋼板の塗装性や外観品質を劣化するという問題がある。近年、最終ユーザーにおける要求品質がより厳格化し、スケール剥離の問題点が従来に比してより顕在化しており、縞鋼板表面に生成しているスケール剥離の防止が重要な課題になっている。
【0005】
スケール剥離の防止には、スケール密着性を向上させることが有効である。従来より、スケール密着性は、スケール厚やスケール組成と関係することが知られており、かかる観点からスケールの密着性を向上させるいわゆるタイトスケール鋼板の研究・開発が盛んに行われている。しかし、この研究・開発は、平鋼板を主とした熱延鋼板(以下、通常の熱延鋼板)を対象としたものが多く、縞鋼板を対象とするものは少ない。
【0006】
例えば、通常の熱延鋼板を対象とする以下の方法が提案されている。
【0007】
(1)特開昭59−19018号公報には、仕上圧延以降のランナウト全長にわたって水幕流による気密室を形成し、この気密室に不活性ガスを供給することによってスケール生成を抑制する方法が提案されている(先行技術1)。
【0008】
(2)特開昭62−136529号公報には、仕上圧延後、20℃/秒以上40℃/秒未満の冷却速度で550℃以下まで冷却して巻取ったコイルを非酸化性雰囲気中で350℃以下まで冷却することによって、スケール密着性の良好な鋼板を得る方法が提案されている(先行技術2)。
【0009】
(3)特開昭64−83615号公報には、wt%でTiをTi(%)/(C(%)+N(%))で5〜8の量を含む鋼を、1000〜1100℃の低温加熱して熱間圧延するとともに、750〜650℃の低温で仕上圧延を完了し、650〜570℃の温度で中高温巻取り後、570〜500℃の区間を10℃/h以下の冷却速度で徐冷却して、スケール生成を抑制すると同時にスケール組成を破断強度の高いFe3O4に変態させることにより、スケール密着性を改善する方法が提案されている(先行技術3)。
【0010】
(4)特開平2−190422号公報(先行技術4)には、AlとSiがスケール密着性に影響するという知見に基づいて、鋼中のAl、SiをSi≦0.04wt%、Al≦0.02wt%かつ2×Al(wt%)+Si(wt%)≦0.06に規定して、900℃以下の温度で仕上圧延後、5秒以内に注水冷却を開始し、冷却速度15℃/秒以上で急冷し、550〜700℃の温度で巻取り、スケール生成を抑制すると同時にスケール組成をFe3O4主体にすることにより、スケール密着性を改善する方法が提案されている(先行技術4)。
【0011】
また、(5)縞鋼板を対象とするものとして、特開昭61−276937号公報には、仕上圧延後の冷却を2段冷却に分けて、前段冷却で500〜460℃に下げ、後段冷却で巻取り直前の温度を450℃以下に下げる制御冷却を行う方法が提案されている(先行技術5)。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
縞鋼板の表面には、特殊な形状の縞目が存在する。良好な縞目品質(縞目高さと縞目形状)を確保するには、通常の熱延鋼板とは異なる製造上の制約があり、また、縞目の存在により、鋼板表面の冷却のされ方、スケール生成の仕方が通常の熱延鋼板と同一ではない。
【0013】
先行技術1、2による場合、雰囲気制御のための特別な設備や雰囲気制御用ガスを必要とするので、これらの費用が増大し、また雰囲気制御のための管理が煩雑になるという問題点がある。さらに、縞鋼板を製造する点あるいは優れたスケール密着性の縞鋼板を得る点について全く記載されていない。
【0014】
また、先行技術3、4に提案の方法は、縞鋼板のスケール密着性を改善する点についての考慮がなされていない。縞鋼板には縞目の突起があるため、この方法では、巻取り後のコイル冷却中に大気中の酸素との反応によりスケール生成が助長されるので、縞鋼板のスケールの密着性向上対策としては十分とはいえない。
【0015】
さらに、先行技術3による場合、仕上温度が低いので、後記するように、必要な縞目高さや形状を得ることができないという問題もある。
【0016】
また、先行技術5による場合、前記規定だけでは、比較的に条件変動しやすい縞鋼板の熱間圧延において、他の温度関連条件が変動した場合に、良好な縞目品質を確保しながら、スケール密着性の優れた縞鋼板を安定して量産することが困難である。
【0017】
すなわち、前記の先行技術による場合、必要な縞目品質を確保しながら、スケール密着性に優れる縞鋼板を安定して得ることができない。本発明は、このような事情を考慮したものであり、既存の熱間圧延設備に特殊な装置を設けることなく、縞鋼板として必要な良好な縞目品質を確保し、曲げ加工等の成形加工を行った場合においても、スケール密着性に優れるいわゆるタイトスケール縞鋼板の製造方法を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記の問題点を解決するため、縞目品質を確保しながら、スケール密着性に優れる縞鋼板をできるだけ安価に製造するために、現状の熱間圧延ラインにおいて、縞鋼板の縞目品質に及ぼす製造条件、スケール密着性に影響する製造条件について詳細な検討を進めた。その結果、圧延温度条件とその後の巻取りまでの冷却パターンを特定条件に制御すること、あるいはさらに巻取り前に十分な水切りを行うことにより、非常に優れたスケール密着性のタイトスケール縞鋼板が製造可能になることを知見した。
【0019】
本発明は、この知見に基づくものであり、その特徴とする構成は以下のとおりである。
(1)Cを0.20wt%以下含む鋼を熱間圧延して縞鋼板を製造するに際して、780〜840℃で仕上圧延を終了し、仕上圧延終了から1.5秒以内に水冷を開始して60℃/秒以上の冷却速度で570〜630℃の温度に強水冷し、次いで2秒以上水冷を中断して空冷した後、20〜30℃/秒の冷却速度で水冷により緩冷却した後、500℃以下の温度で巻取ることを特徴とするタイトスケール縞鋼板の製造方法。
(2)上記(1)において、緩冷却後、鋼板表面の水切りを行った後巻取ることを特徴とするタイトスケール縞鋼板の製造方法。
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0021】
本発明が対象とする縞鋼板には、JIS G3101に規定される引張強さが要求される用途が多い。そのため、必要な機械的強度を確保するために、本発明では、Cを0.20wt%以下含む鋼を対象とした。
【0022】
縞鋼板の一般的な縞目の一例を図2に示す。縞鋼板1の縞目2は、仕上圧延機の最終ロールスタンドの組み入れた縞目ロールで圧延して鋼板表面に成形される。縞鋼板においては、必要な縞目品質として、所要の縞目高さ、縞目形状を確保する必要がある。縞鋼板として求められる機能や品質を発揮するには、図2(b)において、縞目高さ(h)が1.0mm以上、縞目の短片の断面形状がほぼ台形であることが必要である。
【0023】
C含有量が0.06〜0.09wt%の鋼を用いて製造したサイズの異なる縞鋼板について、熱間圧延条件と縞目品質の関係を調査した一例を図1に示す。縞目高さ(h)はディップスゲージで測定し、縞目高さの平均値とそのバラツキ範囲を示した。縞目形状は縞目外観を目視観察して、縞目の短片に直角方向の形状が台形形状であるか否かを判定し、縞目の頂部が縞目のない鋼板表面にほぼ平行でほぼ台形の形状のものは縞目形状が良好(符号:○、△)、縞目の頂部が傾斜し、台形形状から外れるものは縞目形状が不良(符号:●、▲)と判定した。
【0024】
図1から、良好な縞目品質を確保するには、仕上温度を780℃以上で熱間圧延する必要がある。
【0025】
安定した縞目品質を確保するには、鋼スラブを1250〜1300℃で4時間以上加熱した後、熱間圧延することが望ましい。また、仕上圧延速度は通常の熱延鋼板の圧延のような高速通板を避け、それより低速の、例えば450〜500m/分の速度で圧延することが望ましい。
【0026】
スケール密着性は、一般的にスケール厚とスケール組成に大きく依存し、これらは仕上圧延終了温度、その後の巻取りまでの温度、冷却パターンや巻取り温度などの影響を受ける。本発明者らは、現状の熱間圧延ラインにおいて、仕上圧延出口から巻取りまでの温度、冷却パターンを変更して、種々の実機試験を行い、スケール密着性を調査した。
【0027】
その結果、仕上圧延出口から巻取りの間の冷却を、図3に示すように3つの領域、すなわち仕上圧延出口からランナウト前段で高温の鋼板を強水冷する領域(以下、高温・強水冷ゾーン)、中間温度で一旦水冷を中断して鋼板を空冷する領域(以下、中温・空冷保持ゾーン)、ランナウト後段で緩冷却する領域(以下、低温・緩冷却ゾーン)に区分して冷却した後巻き取るとともに、各領域の温度、冷却条件等を規定することにより、縞目品質を損なうことなく、優れたスケール密着性を得ることができることを知見した。この点についてさらに詳述する。
【0028】
(1)高温・強水冷ゾーン
仕上圧延出口からランナウト前段で、高温の鋼板を強水冷することにより鋼板表面のスケール生成を抑制することができる。C含有量が0.06〜0.09wt%の鋼スラブを1250℃以上で4時間以上加熱した後、熱間圧延して厚さ3.0mm×幅1219mmの縞鋼板を製造し、その際、仕上圧延温度、仕上圧延終了後水冷開始までの時間以外の条件は本発明範囲内の条件にして、仕上圧延温度、仕上圧延終了後水冷開始までの時間を変更した場合のスケール厚、スケール密着性を調査した。
【0029】
仕上圧延温度、仕上圧延終了後水冷開始までの時間以外の製造条件は、高温・強水冷ゾーンでは冷却速度60〜70℃/秒で570〜630℃まで水冷し、空冷・保持冷却ゾーンでは2〜4秒水冷を中断して空冷し、低温・緩冷却ゾーンでは20〜30℃/秒の冷却速度で水冷し、次いで水切り装置により、鋼板表面の冷却水をパージして十分に水切りし、巻取り温度は400〜500℃である。
【0030】
スケール厚は鋼板の断面組織を顕微鏡観察して求めた。スケール密着性は、縞目側の鋼板表面に粘着テープを貼付後剥離し、剥離後の鋼板表面のスケール剥離面積を目視観察して、剥離面積により評価し、ほぼ剥離のないものを良好(符号:○、△)、1割以上の剥離面積があるものを不良(符号:●、▲)と判定した。調査結果を図4に示す。
【0031】
図4から、優れたスケール密着性を得るには、スケール厚は7μm以下が望ましく、これを満たすためには、仕上圧延終了後の水冷開始を1.5秒以内とし、且つ仕上温度はバラツキも考慮し840℃以下にすることが適正である。図1の結果を考慮すると、縞目品質を確保し、優れたスケール密着性を得るには、仕上温度を780〜840℃にすることが必要である。
【0032】
また、高温・強水冷ゾーンでは、鋼板を60℃/秒以上の冷却速度で冷却し、冷却後の鋼板温度を570〜630℃にする必要がある。このように冷却することによって、その後の冷却において、スケールの共析変態(4FeO→Fe+Fe3O4)を促進することができる。一般的に、スケール組成による破断強度は、FeOの0.1kgf/mm2に対して、Fe3O4は4kgf/mm2と言われて、スケールをFe3O4化することにより、スケールにクラックが入りにくくなり、スケール密着性を格段に向上できる。
【0033】
(2)中温・空冷保持ゾーン
縞鋼板では、縞目の存在により、冷却水の当たり(流れ)具合が鋼板表面の位置により異なるため、強水冷を行うと平鋼板の場合よりも局部的な温度ムラが生じやすい。温度ムラが大きいと、その後の冷却においてスケール厚やスケール組成の変動が大きくなり、スケール密着性のバラツキが大きくなる。水冷を一旦中断して空冷することによって、前段の強水冷によるスケール表層部の過冷却の緩和および地鉄内部からスケール側への復熱効果により、スケール内部温度の均一化と板幅方向の温度分布を均一化することができるので、スケール厚やスケール組成の変動が小さくなり、スケール密着性のバラツキが小さくなる。
【0034】
C含有量が0.06〜0.09wt%の鋼スラブを1250℃以上で4時間以上加熱した後、熱間圧延して厚さ3.0mm×幅1219mmの縞鋼板を製造した。その際、強水冷後の空冷保持条件以外の条件は本発明範囲内にして、強水冷後の空冷有無、空冷時間とスケール密着性の関係を調査した。スケール密着性は、コイル長手方向、幅方向の30ケ所について、前記と同様の方法で評価した。調査結果を図5に示す。
【0035】
強水冷後の空冷保持条件以外の製造条件は、仕上圧延温度が820℃、仕上圧延終了後水冷開始までの時間が1.5秒以内、高温・強水冷ゾーンでは冷却速度60〜70℃/秒で570〜630℃まで水冷し、低温・緩冷却ゾーンでは20〜30℃/秒の冷却速度で水冷し、次いで水切り装置により、鋼板表面の冷却水をパージして十分に水切りし、巻取り温度は500℃である。
【0036】
図5から、空冷有無・空冷時間により、スケール密着性のバラツキが異なり、2秒以上の空冷保持により、非常に安定したスケール密着性が得られることが判明した。したがって、水冷を2秒以上中断して空冷することとした。
【0037】
(3)低温・緩冷却ゾーン
前段の中温・空冷保持ゾーンでの空冷に引き続いて、ランナウト後段で水冷により緩冷却を行い、20〜30℃/秒の冷却速度で、500℃以下に冷却することにより、570℃以下の共析変態領域での過冷却を防止して共析変態を抑制し、スケールをFe3O4化するとともにスケール生成を抑制する。また、巻取温度の目標温度に対する的中率を向上させる効果もある。
【0038】
C含有量が0.06〜0.09wt%の鋼スラブを1250℃以上で4時間以上加熱した後、熱間圧延して厚さ3.0mm×幅1219mmの縞鋼板を製造し、巻取温度とスケール密着性の関係を調査した。調査結果を図6に示す。図6において、仕上圧延〜緩冷却、水切りまでの製造条件を本発明範囲内の条件とした後巻取り温度500℃以下で巻き取った(a)の場合、スケール密着性は良好である。一方、前段強水冷までは前記(a)の場合と同様の条件で圧延、冷却した後、そのまま後段冷却無しで巻取温度600±50℃で巻き取った(b)の場合、スケール剥離無しの比率が、板幅方向のセンター部で83%、エッジ部で73%と悪化している。特に、エッジ部で悪化している状況から、高温巻取では、巻取後のコイル状態で大気中の酸素との反応によりスケール生成が進行しているためと推定される。
【0039】
(4)緩冷却後の水切り
冷却時の冷却水が溜まったまま巻取った縞鋼板は、スケール密着性の変動が大きくなる場合がある。したがって、縞鋼板は、冷却後、十分水切りをした後巻き取ることが好ましい。水切りの程度は、巻取り前の縞鋼板表面を目視観察して、水溜まりが認められない程度の水切りを行えば十分である。
【0040】
巻取前の縞鋼板に水濡れが有る場合にスケール密着性の変動が大きくなる理由は必ずしも明確ではないが、巻取り時に縞鋼板表面に冷却水があると、巻取った後にスケール組成が変化したり、スケールにヒートクラックの発生を助長すること等によるのではないかと推測している。
【0041】
【発明の実施の形態】
常法により、Cを0.20wt%以下含む鋼を溶製、鋳造して鋼スラブを製造し、本発明の請求項1に記載する条件で熱間圧延し、冷却した後、巻取りを行う。熱間圧延の際に、通常行われているように、最終仕上スタンドに凹状の縞目を有するロールを組み込んで圧延を行い、縞目を形成する。
【0042】
より安定した縞目品質を確保するには、鋼スラブを1250〜1300℃で4時間以上加熱した後、熱間圧延することが望ましい。また、仕上圧延速度は通常の熱延鋼板の圧延のような高速通板を避け、それより低速の、例えば450〜500/minの速度で圧延することが望ましい。
【0043】
また、巻取り前に、縞鋼板の水切りを行うことがより好ましい。巻取り前の水切りは、熱延ラインに一般的に設けられている水切り装置、例えばサイドパージ方式や全幅パージ方式等の水切り方式による水切り装置を用いて、目視で水溜まりの認められない程度まで十分に水切りパージを行えばよい。
【0044】
【実施例】
表1に記載の成分組成に溶製した鋼を連続鋳造して厚さ200mm×幅1250mmの鋼スラブを得、この鋼スラブを熱延加熱温度1280℃で4.5時間加熱後、粗圧延により、厚さ40mmの粗バーを得た。次いで、前記粗バーを最終スタンドの上側仕上圧延ロールに凸状の縞目付ロールを組み入れた仕上圧延機で、厚さ3.0mm×幅1219mmに圧延し、仕上圧延後巻取までの製造条件を種々に変更させた後、水切り装置により、目視で縞鋼板表面に冷却水溜まりが認められなくなるまで水切りを行った後、コイラーで巻取って縞鋼板を製造した。仕上圧延後巻取までの製造条件を表2に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
前記で得た縞鋼板について、下記に示す方法で、スケール密着性、および縞目高さと縞目形状を調査した。
【0048】
スケール密着性は、加工を行わない状態での密着性と加工後の密着性について調査した。加工を行わない状態での密着性は、縞目のある側の鋼板表面について、粘着テープを貼付後剥離し、剥離試験後の鋼板表面のスケール剥離状態を目視観察して、剥離面積に応じて表3により評価した。
【0049】
【表3】
【0050】
加工後の密着性は、縞鋼板から幅25mm×長さ80mmの試験片を採取し、カッターナイフで、その表面に約1mmの間隔で縦、横に各11本の切込みを入れ、碁盤目状に約1mm2の100個のマス目を形成し、次いで、マス目部分が曲げ部の外側になるようにして、試験片を90度曲げ加工し、スケールが剥離したマス目数をカウントし、表4により評価した。
【0051】
【表4】
【0052】
縞目の高さ:縞鋼板の縞目高さをディップスゲージで測定し、表5により評価した。
【0053】
【表5】
【0054】
縞目の形状:縞鋼板の縞目形状を目視観察し、縞目の頂部がほぼ平坦な台形状になっているものを縞目形状が良好(◎)、縞目の頂部が傾斜しているものを縞目形状が不良(×)と評価した。
【0055】
さらに、前記で得た各調査項目の調査結果の内で、最も劣る調査項目の評価を総合評価として採用した。調査結果および総合評価を表2に併せて記載した。
【0056】
表2から、本発明範囲を満足する発明例は、スケール密着性、縞目高さ、形状が良好であり、総合評価は、○、◎である。
【0057】
一方、本発明範囲を外れる比較例は、スケール密着性、縞目高さ、形状の少なくとも一つが劣っており、総合評価は、×である。
【0058】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、現在の一般的な熱延ライン設備条件下において、縞鋼板の縞目品質を確保しながら、極めて優れたスケール密着性を有するいわゆるタイトスケール縞鋼板を安定的に且つ量産製造が可能になる。本発明によって製造された縞鋼板を使用すると、曲げ加工などの加工を施した場合にもスケール剥離が低減できるので、品質、作業性の著しい改善効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】仕上圧延温度と縞目品質の関係を示す図。
【図2】縞鋼板の縞目の一例を示す図。
【図3】仕上圧延〜巻取間の冷却区分を示す図。
【図4】仕上温度、仕上圧延後の水冷開始時間とスケール厚、スケール密着性の関係を示す図。
【図5】空冷・保持条件とスケール密着性の関係を示す図。
【図6】巻取温度とスケール密着性の関係を示す図。
【符号の説明】
1 縞鋼板
2 縞目
Claims (2)
- Cを0.20wt%以下含む鋼を熱間圧延して縞鋼板を製造するに際して、780〜840℃で仕上圧延を終了し、仕上圧延終了から1.5秒以内に水冷を開始して60℃/秒以上の冷却速度で570〜630℃の温度に強水冷し、次いで2秒以上水冷を中断して空冷した後、20〜30℃/秒の冷却速度で水冷により緩冷却した後、500℃以下の温度で巻取ることを特徴とするタイトスケール縞鋼板の製造方法。
- 請求項1記載のタイトスケール縞鋼板の製造方法において、緩冷却後、鋼板表面の水切りを行った後巻取ることを特徴とするタイトスケール縞鋼板の製造方法。
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