JP3575055B2 - ファンモータの軸受部 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、焼結含油軸受(以下、スリーブメタルと指称する)を使用したファンモータの軸受部に関する。
【0002】
【従来の技術】
図8は従来のファンモータの軸受部を示すもので、ファンモータの断面正面図である。この図について説明する。
ケーシング1に圧入された軸受台2にスリーブメタル3を圧入して保持し、モータMにより駆動されるファンfの回転子軸4は、スリーブメタル3に挿入されており、その回転子軸4の下端には、回転子軸4の方向(図8の矢印X方向)の推力を受けるワッシャ5を入れるとともに、ファンfの抜け止めとしてグリップリング6が嵌め込まれる。さらにケーシング1には、例えばゴム,樹脂,フィルムなどによる蓋体7を被せることにより潤滑剤の流出(洩れ)を防止している。
【0003】
このようなスリーブメタルを使用したファンモータの軸受部は、回転子軸4が回転すると、スリーブメタル3の内部に含まれている油またはグリースなどの潤滑剤が軸受部の表面から湧出する。そして、周囲温度の上昇とか回転による摩擦熱などに起因して、潤滑剤はスリーブメタル3の内径部または端面から湧出するものである。
【0004】
そして、ファンfすなわち、回転子軸4の回転によりそのファンf自体には回転子軸4(図8中のX方向)の方向の推力が作用し、ワッシャ5とグリップリング6とがその推力を受けて湧出した潤滑剤とワッシャ5の働きにより回転子軸4の磨耗を軽減することにより、モータ回転時の騒音の低減と、ファンモータの寿命の伸長を図っている。なお、図中Yはファンfによる風力方向を示している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
このような従来のファンモータの軸受部では、スリーブメタル3から湧出した潤滑剤は必ずしも油溜部8に溜まるものではなく、回転子軸4及び軸受台2を伝わりながらファンf側に流れていく。こうして潤滑剤が流出することにより伝達流出路が形成されると、その伝達流出路を経由して潤滑剤の流出が盛んになる。
【0006】
そしてファンモータ製品のうち約半分は、伝達流出路を経由して潤滑剤が流出することになり、潤滑剤を必要とする回転子軸4の方向の推力を受けるワッシャ5とスリーブメタル3の端面部に潤滑剤が存在しない状態となり、金属接触を起こし、これが原因となってモータ回転時に騒音が発生したり、またファンモータの寿命を著しく低減させてしまうという問題がある。
【0007】
本発明によればこのような従来の問題点を解決できるもので、スリーブメタルを使用したファンモータの軸受部において、回転子軸の回転時に潤滑剤が外部に流出することを阻止して、モータ回転時の騒音を低減するとともに、ファンモータの寿命を向上することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
ケーシングに圧入された軸受台にスリーブメタルを圧入して保持し、スリーブメタルに挿入されているファンの回転子軸の下端には、その回転子軸の方向に推力を受けるワッシャを入れるとともに、グリップリングが嵌め込まれており、さらにケーシングには、蓋体を被せた構成のファンモータにおいて、上記の目的を達成するために本発明に係るファンモータの軸受部は、回転子軸の外表面に軸の長手方向に螺旋溝を形成し、スリーブメタルと回転子軸との間に湧出した潤滑剤を、その螺旋溝を経由してケーシング側の油溜部内に流出するとともに、軸受台とスリーブメタルとの間に、軸受台と一体に複数個の凸部を設けることで複数個の隙間を設けることを特徴とするものである。
【0010】
【作用】
次に、本発明に係るファンモータの軸受部の作用について述べる。ファンの回転、すなわち回転子軸の回転により、スリーブメタルと回転子軸との間に湧出した潤滑剤は、回転子軸の外表面の軸方向に形成された螺旋溝を経由してケーシング側の油溜部内に流出する。また、軸受台とスリーブメタルとの間に、軸受台と一体に複数個の凸部を設けることで複数個の隙間を設けることにより、動圧により油溜部の圧力が上昇することを防止している。
【0012】
【実施例】
以下に図面を参照しながら本発明の実施例を具体的に説明する。
図1は本発明に係るファンモータの軸受部を示すもので、ファンモータの断面正面図である。この図において従来例に対応した箇所には、従来例を示す図8に付した符号と同一の符号を使用して説明する。
【0013】
ケーシング1に圧入された軸受台2にスリーブメタル3を圧入して保持し、モータMにより駆動されるファンfの回転子軸4は、スリーブメタル3に挿入されており、その回転子軸4の下端には、回転子軸4の方向(図1の矢印Xの方向)に推力を受けるワッシャ5を入れるとともに、ファンfの抜け止め用としてグリップリング6が嵌め込まれている。さらにケーシング1には、例えばゴム,樹脂,フィルムなどによる蓋体7を被せて潤滑剤の流出(洩れ)を防いでいる。以上の構成は、図8に示す従来の構成と同様である。
【0014】
次に本発明では、回転子軸4の外表面に、軸方向に螺旋溝4′を形成し、ファンfの回転、すなわち回転子軸4の回転により、スリーブメタル3と回転子軸4との間に湧出した潤滑剤を、螺旋溝4′を経由してケーシング1側の油溜部8内に流出するようにする。
図2の軸受部の断面図に示すように、軸受台2と一体の複数個の凸部tを設けることにより、軸受台2とスリーブメタル3との間の複数ヶ所(例えば6ヶ所)に隙間g(図2中の斜線部分)を形成すると、動圧により油溜部8の圧力が上昇することを防止できる。なお、隙間gを例えば0.3mm以下に設定すると、毛細管現象によりスリーブメタル3と回転子軸4との間に湧出した潤滑剤は油溜部8内に流出し易くなる。しかも、油溜部8の圧力が上昇することを効率的に防止できる。
【0015】
さらに、図3に示すように、ファンf側のスリーブメタル3の端面に目つぶしaを形成したり、また目つぶしaに代えて、スリーブメタル3の端面にワッシャ(図示せず)を密着させて、これにより蓋をすることにより、スリーブメタル3の内部から潤滑剤が湧出しないようにして、その潤滑剤がファンf側に逃げることを軽減できる。
【0016】
なお、図3に示す構成を、図4のように一部切欠して内部を示した軸受台の構成に組み合わすことにより、油溜部8には常時、潤滑剤が存在するようにして、その潤滑剤をファンモータ機構内の金属摩擦箇所に能率的に循環させることも可能である。
図5は本発明に係るファンモータの軸受部の分解斜視図、図6はファンモータの分解斜視図、図7はファンモータの電気的機構部の分解斜視図である。
【0017】
なお、図5において、9はスリーブ,10はブッシュである。また図6において、11はモータMのヨーク,GはモータMのマグネット,EはモータMの電気的機構部である。また図7において、C,C′はモータMのコイルボビン,SはモータMのステータコア,HはモータMのコイルブロック,PはモータMのプリント基板ブロックである。
【0018】
【発明の効果】
本発明は前記のように、回転子軸の外表面に軸の長手方向に螺旋溝を形成し、スリーブメタルと回転子軸との間に湧出した潤滑剤を、その螺旋溝を経由してケーシング側の油溜部内に流出することにより、ワッシャとスリーブメタルの端面に、スリーブメタルから湧出してきた潤滑剤が存在することになり、そのため、ファンモータの軸受部の金属部分の回転部はこの潤滑剤を介して接触することになって、モータ回転時の騒音を低減するとともに、ファンモータの寿命を向上することができる利点がある。さらに、軸受台とスリーブメタルとの間に、軸受台と一体に複数個の凸部を設けることで複数個の隙間を設けて、その隙間により油溜部の圧力が上昇することを防止することにより、上記利点をさらに一段と向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のファンモータの軸受部を示すもので、ファンモータの断面正面図。
【図2】軸受部の断面図。
【図3】端面に目つぶしを形成したスリーブメタルの外観斜視図。
【図4】一部切欠して内部を示した軸受台の外観斜視図。
【図5】本発明のファンモータの軸受部の分解斜視図。
【図6】ファンモータの分解斜視図。
【図7】ファンモータの電気的機構部の分解斜視図。
【図8】従来のファンモータの軸受部を示すもので、ファンモータの断面正面図。
【符号の説明】
1 ケーシング
2 軸受台
3 スリーブメタル
4 回転子軸
4′螺旋溝
5 ワッシャ
6 グリップリング
7 蓋体
8 油溜部
Claims (1)
- ケーシングに圧入された軸受台にスリーブメタルを圧入して保持し、スリーブメタルに挿入されているファンの回転子軸の下端には、その回転子軸の方向に推力を受けるワッシャを入れるとともに、グリップリングが嵌め込まれており、さらにケーシングには、蓋体を被せた構成のファンモータにおいて、回転子軸の外表面には軸の長手方向に螺旋溝を形成し、スリーブメタルと回転子軸との間に湧出した潤滑剤を、その螺旋溝を経由してケーシング側の油溜部内に流出するとともに、軸受台とスリーブメタルとの間に、軸受台と一体に複数個の凸部を設けることで複数個の隙間を設けることを特徴とするファンモータの軸受部。
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