JP3593374B2 - モータ - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、軸受部分に流体潤滑剤による動圧軸受を用いたモータに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば光、磁気ディスク等の記録ディスク駆動装置に組み込まれるスピンドルモータ等の精密モータは、駆動負荷の性質上、回転部材を高精度に支持すると共に、振れやガタツキを極力抑えた精度良い回転支持を行なうことが要求される。こうした要求に応えるため、軸受部分には従来のボールベアリングから、流体潤滑剤を用いた動圧軸受手段へ置き換えられ、それに伴う構成が種々提案されている。特に上記の用途に用いられるモータは、ロータの軸方向(スラスト)ガタが極力あってはならず、従ってラジアル動圧軸受に加えてスラスト動圧軸受を併用した構成が採用されている。
【0003】
例えば特公昭63ー43606号公報に、スラスト動圧軸受の構成が示されている。スラスト軸受の鍔(スラストプレート)10の両端面に動圧発生溝13,13’が設けられ、このスラストプレート10を挟むようにハウジング11が構成されている。そしてスラストプレート10とハウジング11との間には、潤滑油12が充填されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、こうした構造にあっては、軸受周りの回転・停止動作や、周囲温度変化等により、潤滑油が外部へ押し出されて漏出してしまう欠点がある。また近時、モータが組み込まれる種々のOA装置等は、小型化と共に高速回転化が進みつつあり、このため、スラストプレートの両端面に保持される潤滑油等の流体潤滑剤保持量が小量化となる一方、ロータの高速回転による遠心力でスラストプレートの流体潤滑剤が流出され易くなる。流体潤滑剤の漏出により、動圧軸受部は安定で且つ高精度な軸受支持が維持できなくなり、軸受寿命を著しく低下させる要因となる。
【0005】
本発明は、従来技術に存した上記のような問題点に鑑み行われたものであって、その課題とするところは、小型化・高速回転化の対応が図れ、流体潤滑剤の漏出や枯渇のない高精度な軸受支持を維持することができる、信頼性の高いモータを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を達成するために、本発明に係るモータは、ハウジングと、前記ハウジングに対して相対回転支持されるロータと、前記ハウジングと前記ロータとの間に介在された流体潤滑剤による動圧軸受手段とを備えたモータにおいて;前記動圧軸受手段に連続するモータ外部側には、前記ハウジングと前記ロータとの半径方向間隙がモータ外方に従い大きくなるテーパ状間隙部を有し、前記テーパ状間隙部の流体潤滑剤は、モータ外部の大気圧と均衡保持され、前記ハウジング及び/または前記ロータの前記動圧軸受手段より半径方向外方には、流体潤滑剤が連通する環状間隙部が設けられ、前記環状間隙部には、大気と通気する通気孔が設けられ、前記動圧軸受手段で保持しきれない余剰の流体潤滑剤が前記環状間隙部に滞留保持されると共に、前記動圧軸受手段に介在される流体潤滑剤が不足した時は、前記環状間隙部の流体潤滑剤が前記動圧軸受手段へ供給されてなるものである。
【0007】
そして上記モータにおいては、テーパ状間隙部は、その開口が半径方向内方へ向けて設けられていることが望ましい。また、前記通気孔と前記環状間隙部との接続部位における横断面形状が、前記環状間隙部の半径方向断面形状よりも大きく設定されることが望ましい。さらに、前記通気孔は、前記環状間隙部よりも半径方向内方に位置付けられるようモータに設けられることが望ましい。
【0008】
【作用】
本発明のモータによれば、動圧軸受手段と連続するモータ外部側に、流体潤滑剤が保持されるテーパ状間隙部が設けられている。そして、このテーパ状間隙部に保持される流体潤滑剤は、動圧軸受手段に介在される流体潤滑剤と連通している。このため、もし万一、モータの昇温や外部からの衝撃等の原因により、モータ内部の動圧軸受手段における流体潤滑剤がモータ外部へ漏出しようとしても、テーパ状間隙部で保持された流体潤滑剤は大気圧による表面張力の作用を受けて漏出しようとする流体潤滑剤に対して抗するよう働く。このため、これら相反する作用力がテーパ状間隙部の所定部位において均衡し、流体潤滑剤が保持される。即ちテーパ状間隙部はモータ内部の流体潤滑剤がモータ外部へ漏出することを防止するシール手段をなす。そしてテーパ状間隙部に保持される流体潤滑剤は、間隙部がテーパ状、即ちモータ外方に従い間隙が大きくなるため、連続した任意の均衡する部位で保持されると共に、その均衡した位置において漏出に抗する作用力を受ける。
【0009】
一方、ハウジング及び/またはロータの前記動圧軸受手段より半径方向外方においては環状間隙部が設けられ、この環状間隙部は動圧軸受手段に介在される流体潤滑剤と連通し、しかも動圧軸受手段で保持きしれない余剰の流体潤滑剤が滞留保持される。従って、動圧軸受手段に介在される流体潤滑剤が不足した時は、環状間隙部の流体潤滑剤が動圧軸受手段へ供給されるため、軸受部分における流体潤滑剤の枯渇を未然に防止することができ、安定した信頼性の高い動圧軸受支持がなされる。
【0010】
なお、環状間隙部には、大気と連通する通気孔が設けられているため、環状間隙部内部とモータ外部とにおいて気圧差が生じない。このため、環状間隙内に滞留保持される流体潤滑剤の保持量に関係なく、或いは流体潤滑剤中に気泡が存在していても、モータ温度変化等によりモータ外部へ流体潤滑剤が押し出されることがない。また環状間隙部に保持される流体潤滑剤は、これと連通する動圧軸受手段、テーパ状間隙部のそれぞれ流体潤滑剤と連続しており、従ってテーパ状間隙部における表面張力と均衡状態が維持されている。これにより、動圧軸受手段と環状間隙部との間の流体潤滑剤との流通がより促進され、流体潤滑剤のスムーズな供給、貯留が実現できる。
【0011】
またテーパ状間隙部の開口が、半径方向内方へ向けて設けられていることにより、ロータの回転に伴う遠心力を受けても、テーパ状間隙部を形成する(半径方向外方側の)内周壁が流体潤滑剤を包囲するように保持されるから、テーパ状間隙部から流体潤滑剤の漏出がより防止される。
【0012】
次に、通気孔と環状間隙部との接続部位のおける横断面形状が、環状間隙部の半径方向断面形状よりも大きく設定されることにより、流体潤滑剤は表面張力の作用を受けて、通気孔から漏出することが防止される。さらに、通気孔が環状間隙よりも半径方向内方に位置付けられることにより、ロータの回転駆動に伴う遠心力の作用を受けても、流体潤滑剤が通気孔から漏出することが防止される。
【0013】
【実施例】
本発明に従うモータの実施例について、添付の図面を参照しながら説明する。する。図1は、例えば記録ディスクを回転駆動するためのモータであり、その全体断面図である。図2は図1の上部、スラストプレート5の周辺部位を示した拡大断面図であり、また図3は図1の下部、スリーブ4の下部の周辺部位を示してた拡大断面図である。これらの図において、同じ部材・部位には、同じ番号が付してある。
【0014】
図1において、ハウジング1はアルミ合金から形成され、その中心部には上方(モータ内部側)に隆起して形成されたボス部16が設けられている。ボス部16には、その中央部において孔部15が設けられ、シャフト2の下端部が嵌め込まれて固定されている。シャフト2はハウジング1の取付面に対して、実質上、垂直に取り付けられている。シャフト2は、例えば鉄基合金等から形成されており、上端部側には円板状をなすスラストプレート5が一体に設けられている。スラストプレート5は、シャフト2の長手(軸心)方向に対して、実質上、直角に形成されると共に、その上下端部33,34の面が実質上平行となるよう形成されている。
【0015】
シャフト2に回転支持されるロータ3は、略円筒状をなすスリーブ4と、スリーブ4の外周側に固定されたハブ10とを有している。ハブ10は、例えばアルミ合金から形成され、その外周部49に例えば回転負荷としての記録ディスク(図示省略)が外嵌して装着される。ハブ10の鍔41は記録ディスクを受け止めるためであり、孔部20はクランプ部材を取り付けるためのネジ孔、そして孔部21は記録ディスクを固定する際の回り止めのためのケレ孔である。
【0016】
スリーブ4はその全長の大部分を占める円筒状の周壁24と、その上部に一体に設けられた拡径部25とからなり、これらはシャフト2に対して同軸的に形成されている。スリーブ4は、例えば鉛青銅等の銅合金材料により形成されている。スリーブ4の拡径部25には、内周側に段部27が形成されている。スリーブ4の段部27の上部には、スラストカバー6が装着される。スラストカバー6は、リング形状をなし、その外周部がスリーブ4の上部内周側にて嵌め込まれ、上端部32が加締められてスリーブ4にきつく固定される。スラストカバー6の内周部57は、シャフト2の外周部19と僅かな隙間をもって対向している。これらスリーブ4、ハブ10及びスリーブ4に固定されたスラストカバー6がシャフト2に対して回転支持される。
【0017】
ハウジング1のボス部16には、その外周上部に段部17が形成され、段部17にステータ7が固定されている。ステータ7は、所定の磁極歯を有するステータコア12に、ステータコイル11が巻回されている。ステータコイル11から引き出されたコイルリード線13は、ハウジング1上に貼着されたフレキシブル回路基板14に接続され、さらに図示省略する接続線は絶縁ブッシュ23を介してモータ外部へ導出される。ステータ7と半径方向へ対向したハブ10側(ハブ10の内周部18)には、磁性ヨーク9を介してロータマグネット8が装着されている。従ってコイルリード線13に所定の電気信号が通電されると、ロータマグネット8とステータ7との電磁相互作用により、ロータ3(ハブ10)が回転駆動される。
【0018】
シャフト2に対するロータ3の回転支持は、潤滑油による流体潤滑剤を介した動圧軸受によっている。シャフト2の外周部19における略中央部には、外周部19の外径寸法より僅かに縮径して形成された縮径部35が設けられている。そしてその上下方向の両側には、所定の外径寸法で形成された外周面を有する外周部47,48が設けられている。外周部47,48は、これらと半径方向に外嵌して対面するスリーブ4とにより、ラジアル動圧軸受部A,Bが構成される。ラジアル動圧軸受部A,Bを構成するために、スリーブ4の内周部31の対応部には、図示省略するが周方向に所定間隔で形成されたヘリングボーン状の動圧発生溝が全周にわたり設けられている。なお、動圧発生溝はスリーブ4側と相対するシャフト2の外周部47,48側に設けられていてもよい。
【0019】
スラストカバー6の下端部52とこれに軸方向(上下方向)に対向するスラストプレート5の上端部33、そしてスラストプレート5の下端部34と同じく同方向に対向するスリーブ4の(周壁24の)上端部44により、スラスト動圧軸受部C,Dが構成される。スラスト動圧軸受部C,Dが構成されるために、スラストプレート5の上下両端部33,34には、図示省略するが周方向に所定間隔で形成されたヘリングボーン状或いはスパイラル状の動圧発生溝が全周にわたり設けられている。なお、それぞれの動圧発生溝は、相対するスラストカバー6の下端部52、スリーブ4の上端部44側に設けられていても構わない。
【0020】
図2及び図3を併せ参照して、更に本実施例のモータについて詳述する。図2は、スラストプレート5の部位を中心に示し、(a)は図1のモータのスラストカバー6側、即ち図1を上方から下方に向かってみた平面図であり、(b)はスラストプレート5の周辺部位の拡大断面図である。これら図2において、スラスト動圧軸受部C,Dには、流体潤滑剤がそれぞれ介在して設けられている。スラストプレート5の外周端部側には、スラストカバー6(下端部52)とスリーブ4(段部27の内周部61,周壁24の上端部44)とで規定される環状間隙60が設けられている。環状間隙60にはスラスト動圧軸受部C,Dに連通する流体潤滑剤が充填されている。
【0021】
スラストカバー6の下端部52と、スリーブ4の(段部27の)上端部71とが固定される接合部77には、断面形状が円弧状をなす環状間隙部75が設けられている。環状間隙部75は、スラストカバー6の下端部52が全周にわたり切り欠かれて形成されている。環状間隙部75には、流体潤滑剤が充填されると共に、比較的狭い隙間をなす接合部77を経て環状間隙60に連通している。接合部77は、流体潤滑剤が容易に連通するが、流体潤滑剤に含まれた空気(気泡)は通過しない微小な隙間であることが望ましい。環状間隙部75に保持される流体潤滑剤は、スラスト動圧軸受部C,Dに保持される流体潤滑剤及びこれと連通する環状間隙60の流体潤滑剤とに連通しており、これらの部位にて保持しきれない余剰の流体潤滑剤が環状間隙部75にて保持される。従って、これらの部位に保持されるべき流体潤滑剤が不足する事態が発生すると、環状間隙部75に保持された流体潤滑剤は接合部77を経て環状間隙60及びスラスト動圧軸受部C,Dに供給される。環状間隙60は、図2(b)では接合部77よりも大きい間隙幅を示しているが、接合部77と同じように狭い間隙幅でも対応できる。また図2(a)に示すように、環状間隙部75に保持される流体潤滑剤は、環状間隙部75に20乃至80パーセントが入っていればよく、環状間隙部75の断面に作用する表面張力とテーパ状間隙部78に作用する表面張力とが均衡されていればよい。
【0022】
環状間隙部75が設けられたスラストカバー6には、モータ外部へ通気する通気孔74が設けられている。通気孔74は、スラストカバー6上の周方向に一箇所形成されると共に、軸方向に貫通して形成されている。通気孔74は環状間隙75に連通するよう配置され、環状間隙75よりもシャフト2側、即ち内周側(半径方向内方)に位置付けられている。そして通気孔74と環状間隙部75との接続部76は、その横断面形状が環状間隙部75の断面形状よりも大きく設定されている。
【0023】
スラストカバー6の外周側の下端には、スリーブ4との間隙にOリング等のシール部材が嵌め込まれており、これにより接合部77からスラストカバー上部へ流体潤滑剤が漏出することはない。
【0024】
シャフト2とスラストカバー6とが対向する、スラスト動圧軸受部Cの上側(モータ外側)には、テーパ状間隙部78が設けられている。テーパ状間隙部78は、スラストカバー6の内周部57と、シャフト2の外周部19とで形成されており、その間隙部はモータ外方(図の上方)に従い、大きくなるよう形成され、スラスト動圧軸受部Cからの流体潤滑剤が連通して保持されている。テーパ状間隙部78を構成するスラストカバー内周部57の周面は、軸線方向へ実質上平行に形成される一方、シャフト2側では、外周部19が軸端(図の上方)に従い縮径するようテーパ状溝79が形成されている。
【0025】
テーパ状間隙部78に保持される流体潤滑剤は、モータ外部側の大気圧に臨んでいるため、表面張力の作用をうける。従って以上の構成に基づいた本実施例のモータによれば、もし万一、モータの昇温(例えばステータ7の発熱等による内部温度上昇)や外部からの衝撃等の原因により、モータ内部の流体潤滑剤がモータ外部へ漏出しようとしても、テーパ状間隙部78で保持された流体潤滑剤は大気圧による表面張力の作用を受けて漏出しようとする流体潤滑剤に対して抗するよう働く。このため、これら相反する作用力がテーパ状間隙部78の所定部位において均衡し、流体潤滑剤が保持される。即ちテーパ状間隙部78はモータ内部の流体潤滑剤がモータ外部へ漏出することを防止するシール手段をなす。そしてテーパ状間隙部78に保持される流体潤滑剤は、間隙部がテーパ状、即ちモータ外方に従い間隙が大きくなるため、連続した任意の均衡する部位で保持されると共に、その均衡した位置において流体潤滑剤漏出に抗する作用力を大きく受ける。これにより、流体潤滑剤がモータ外部へ漏出することが防止される。
【0026】
スラストカバー6とスリーブ4とにより形成された環状間隙部75は、動圧軸受手段C,D等に介在される流体潤滑剤と連通し、しかもこれらで保持きしれない余剰の流体潤滑剤が滞留保持される。従って、動圧軸受手段C,D等に介在される流体潤滑剤が不足した時は、環状間隙部75の流体潤滑剤が動圧軸受手段C,D等へ供給されるため、軸受部分における流体潤滑剤の枯渇を未然に防止することができ、安定した信頼性の高い動圧軸受支持がなされる。
【0027】
そして、環状間隙部75には、大気と連通する通気孔74が設けられているため、環状間隙部76内部とモータ外部とにおいて気圧差が生じない。このため、環状間隙内75に滞留保持される流体潤滑剤の保持量に関係なく、或いは流体潤滑剤中に気泡が存在していても、モータ温度変化等によりモータ外部へ流体潤滑剤が押し出されることがない。また環状間隙部75に保持される流体潤滑剤は、これと連通する動圧軸受手段C,D等と、テーパ状間隙部78のそれぞれ流体潤滑剤と連続しており、従ってテーパ状間隙部78における表面張力と均衡状態が維持されている。これにより、動圧軸受手段C,D等と環状間隙部75との間の流体潤滑剤との流通がより促進され、流体潤滑剤のスムーズな供給、貯留が実現できる。従って、環状間隙部75内は、通気孔74によりモータ内外気圧差が解消されていることに加え、環状間隙部75内の流体潤滑剤は、これと連通するテーパ状間隙部78における流体潤滑剤と均衡状態が維持される前提により、よりよく流体潤滑剤の供給、貯留が行なえる。そして環状間隙部75の間隙寸法または形状は、テーパ状間隙部78に流体潤滑剤が均衡保持されるよう設定することが望ましい。
【0028】
環状間隙部75に対する流体潤滑剤の供給・貯留の作用は、上述のように、環状間隙部75とテーパ状間隙部78との表面張力の均衡が図られている状態で、より円滑に行なわれるため、本実施例ではテーパ状間隙部78における流体潤滑剤の流体面幅を例えば0.2mm、環状間隙60の間隙幅を0.1mm、環状間隙部75の断面の内径を0.4mmと設定されている。即ち環状間隙60の幅を最も小さくし、環状間隙部75の断面幅を最も大きく設定することが望ましい。また図例に示すように、テーパ状間隙部78の開口が、半径方向内方へ向けて設けられていることにより、ロータ3の回転に伴う遠心力を受けても、テーパ状間隙部78を形成する(半径方向外方側の)スラストカバー6の内周部57が流体潤滑剤を包囲するように保持されるから、テーパ状間隙部78から流体潤滑剤の漏出がより防止される。
【0029】
さらに、通気孔74と環状間隙部75との接続部76における横断面形状が、環状間隙部75の半径方向断面形状よりも大きく設定されることにより、流体潤滑剤は表面張力の作用を受けて、通気孔74から漏出することが防止される。そしてさらには、通気孔74が環状間隙75よりも内周側(シャフト2側)に位置付けられているため、ロータ3の回転遠心力に対して、通気孔74から流体潤滑剤が漏出することがより防止される。
【0030】
スラストプレート5のシャフト2側近傍に設けられた貫通孔90は、スラスト動圧軸受部C,D間の通気を行ない、ラジアル動圧軸受A,Bに連通する流体潤滑剤に対する気圧差を解消するために設けられているものである。
【0031】
上述の通り、図1及び図2に示すモータの実施例では、環状間隙75がスラストカバー6側において切り欠かれて形成されているが、これとは逆に、図3に示すように、スリーブ4側(上端部71)に切り欠かれて形成(図3(a))されていてもよく、或いは両者に切り欠きが設けられて環状間隙部75が形成(図3(b))されても構わない。なお、実施図例では環状間隙75の断面形状は円弧状乃至円形であるが、スラストカバー6側或いはスリーブ4側の一方またはこれら両方の組み合わせにより、方形状やその他多角形状等種々採用することができる。
【0032】
通気孔74は図例ではスラストカバー上に一箇所設けられているが、180度回転対称状に2箇所或いはそれ以上設けられていてもよい。その際、ロータ3の回転動バランスを考慮して、スラストカバー上に回転対称状に配置することが望ましい。
【0033】
環状間隙部75とスラスト動圧軸受部C,Dに連通する接合部77は、図例では、スラストカバー6とスリーブ4との全周にわたる(軸方向)隙間で形成されているが、この他、図4に示すように接合部77に代えて、連通路80を設けるようにしてもよい。この場合、スラストカバー6側或いはスリーブ4側に切り欠き状により連通路80を形成する他、両者の組み合わせにより連通路80を形成するようにしてもよい。
【0034】
図5は、図1のモータにおける下部付近を拡大して示した断面図である。図5において、シャフト2の外周部19とスリーブ4の内周部31とのモータ外部側(図の下側)において、テーパ状間隙部82が形成されている。テーパ状間隙部82は、スリーブ4の内周部31が軸方向に実質上平行に形成されると共に、シャフト2側で順次縮径されて形成されている。そしてこの間隙部82に、ラジアル動圧軸受部Bに連通する流体潤滑剤が保持される。従ってこの場合も、前述のモータ上側に構成されたテーパ状間隙部78と同様に、流体潤滑剤がモータ外部(この場合、図の下方)へ漏出することを防止する。さらにテーパ間隙部82の開口がシャフト2側、即ち軸方向内側に向いて形成されているため、より漏出防止が図れることは言うまでもない。
【0035】
次に示す図6は本発明に従う別の実施例のモータを示す断面図であり、モータの左半分を示している。この実施例では、ロータ103がシャフト102と一体に形成されており、ハウジング101に形成された円筒部(スリーブ)104により回転支持される構成を示す。既に図1に示したモータでは、シャフト2がハウジング1に固定されていたのに対し、図6ではシャフト102とロータ103とがハウジング101に対して相対回転する。図6において、スリーブ104の内周部とシャフト102の外周部とが半径方向に対向する部位A,Bに流体潤滑剤が充填されたラジアル動圧軸受部が設けられている。
【0036】
シャフト102の下端部に固定されたスラストプレート105とスラストカバー106との間C、及びスラストプレート105とスリーブ104の下端部との間Dによりそれぞれ流体潤滑剤が充填されたスラスト動圧軸受部が設けられている。スリーブ104の外周側にはステータ107が装着され、これと半径方向へ対向するロータ103の内周部にロータマグネット108が装着されている。
【0037】
本実施例によれば、スラストカバー106がハウジング101の段部下端110に接合される接合部111に環状間隙部112が設けられている。そして、環状間隙部111の近傍に通気孔113が設けられている。一方、ラジアル動圧軸受部A側のモータ外側(図の上方)には、シャフト102の外周部119とスリーブ104の内周部131との間隙が、モータ外方に従い大きくなるテーパ状間隙部114が形成されている。テーパ状間隙部114には、ラジアル動圧軸受部Aと連通する流体潤滑剤が保持されている。
【0038】
テーパ状間隙部114に保持される流体潤滑剤はスリーブ内部の流体潤滑剤と均衡状態が維持されており、図1のモータと基本的に同様の作用をなす。即ち、流体潤滑剤がモータ外部へ漏出することを防止するシール機能を有している。そして図1のモータと同様、動圧軸受部の流体潤滑剤の保持量に応じて、環状間隙部112の流体潤滑剤が供給、貯留の機能をなす。また通気孔113により動圧軸受部とモータ外部との気圧差が解消される。更に環状間隙部112と通気孔113との接続部120は、その横断面形状が環状間隙部112の断面形状より大きく設けられている。これら構成は、図1に示したモータと同様の作用効果をそうする。そして、図1のモータに用いた種々の構成及びその組み合わせを本実施例のモータについても適用できることは言うまでもない。以上、本発明のモータの実施例について説明したが、本発明の主旨を逸脱しない範囲で設計変更等自由である。
【0039】
【発明の効果】
本発明のモータは、上述の構成を有しているので、次の効果を奏する。即ち、本発明の第1の請求項に係るモータによれば、回転部材であるロータ3側及び/または固定部材であるハウジング101側に、環状間隙部75または112が設けられ、この環状間隙部は動圧軸受部A乃至Cに介在される流体潤滑剤と連通し、しかもこれら動圧軸受で保持きしれない余剰の流体潤滑剤が滞留保持される。従って、動圧軸受手段に介在される流体潤滑剤が不足した時は、環状間隙部(75,112)の流体潤滑剤がこれら動圧軸受手段へ供給されるため、軸受部分における流体潤滑剤の枯渇を未然に防止することができる。また通気孔74,113によりモータ内部の気圧差が解消され、さらにテーパ状間隙部78,82,114等により、流体潤滑剤がモータ外部て漏出することを防止することができる。
【0040】
また本発明の第2の請求項に係るモータによれば、テーパ状間隙部78,82,114等がその開口を半径方向に向けて設けられているため、流体潤滑剤の漏出がより防止される。さらに第3の請求項に係るモータによれば、通気孔74,113と環状間隙部75,112との接続部76,120における横断面形状が、環状間隙部75,112の半径方向断面形状よりも大きく設定されているため、流体潤滑剤は表面張力の作用を受けて、通気孔74,113から漏出することが防止される。またさらに、第4の請求項に係るモータによれば、通気孔74,113が環状間隙部75,112よりも半径方向内方に位置付けられることにより、ロータ3の回転駆動に伴う遠心力の作用を受けても、流体潤滑剤が通気孔74,113から漏出することが防止される。
【0041】
このように、本発明のモータによれば、動圧軸受部に介在される流体潤滑剤の漏出や枯渇を防止し、高精度な軸受支持が実現できるから、信頼性の向上と共に、小型化・高速回転化の対応が図れるモータが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係るモータの全体を示す断面図である。
【図2】図1の電動機の要部拡大図であり(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図3】別の実施例を示すモータの部分断面図である。
【図4】さらに別の実施例を示すモータの部分平面図である。
【図5】図1のモータの要部拡大図である。
【図6】本発明の別の実施例に係るモータの断面図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 シャフト
3 ロータ
4 スリーブ
5 スラストプレート
6 スラストカバー
7 ステータ
8 ロータマグネット
10 ハブ
A,B ラジアル動圧軸受部
C,D スラスト動圧軸受部
Claims (4)
- ハウジングと、前記ハウジングに対して相対回転支持されるロータと、前記ハウジングと前記ロータとの間に介在された流体潤滑剤による動圧軸受手段とを備えたモータにおいて、
前記動圧軸受手段に連続するモータ外部側には、前記ハウジングと前記ロータとの半径方向間隙がモータ外方に従い大きくなるテーパ状間隙部を有し、
前記テーパ状間隙部の流体潤滑剤は、モータ外部の大気圧と均衡保持され、
前記ハウジング及び/または前記ロータの前記動圧軸受手段より半径方向外方には、流体潤滑剤が連通する環状間隙部が設けられ、
前記環状間隙部には、大気と通気する通気孔が設けられ、
前記動圧軸受手段で保持しきれない余剰の流体潤滑剤が前記環状間隙部に滞留保持されると共に、前記動圧軸受手段に介在される流体潤滑剤が不足した時は、前記環状間隙部の流体潤滑剤が前記動圧軸受手段へ供給される、ことを特徴とするモータ。 - 前記テーパ状間隙部は、その開口が半径方向内方へ向けて設けられた請求項1記載のモータ。
- 前記通気孔と前記環状間隙部との接続部位における横断面形状が、前記環状間隙部の半径方向断面形状よりも大きく設定された請求項1または請求項2記載のモータ。
- 前記通気孔は、前記環状間隙部よりも半径方向内方に位置付けられた請求項3記載のモータ。
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