JP3574330B2 - パターン化された導電膜の形成方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子機器の端末入力装置であるタッチパネルや、LCD、EL、PDP等の各種表示装置の電極等に使用するためのパターン化された導電膜の形成方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来におけるパターン化された導電膜の形成方法としては次のような方法があった。
▲1▼ 蒸着、スパッタリングにより得られたベタ導電膜にフォトレジストを塗布し、露光、現像後、強酸を用いたエッチングによりパターン化された導電膜を形成する方法。
【0003】
▲2▼ 加熱により導電性物質となる化合物と、印刷性等の向上のためのバインダ成分とを含有する導電膜形成用印刷ペーストをスクリーン印刷法等によりパターン印刷し、その後、焼成することによりパターン化した導電膜を形成する方法。
【0004】
▲3▼ 加熱により導電性物質となる化合物と、放射線(以下、放射線とは紫外線、可視光、赤外線等、樹脂を硬化または崩壊せしめることができる電磁波を指称するものとする)感応型樹脂と有機溶剤からなる導電膜形成用塗布液を塗布、乾燥し、その後、パターンマスクを介して放射線を照射して、現像、焼成することによりパターン化した導電膜を形成する方法。
【0005】
〔問題点〕
このような従来の技術においては、それぞれ以下のような問題点があった。
▲1▼の方法では、蒸着装置あるいはスパッタリング装置等の非常に高価な設備が必要となり、またエッチング液として強酸を使用するので作業安全面で注意が必要であり、更に廃液処理等で多くの設備が必要となり、コストアップになる。
【0006】
▲2▼の方法では、工程数および必要設備に関しては他の方法に比較して少なく、優位であるが、液状の導電膜形成用印刷ペーストを用いるため、印刷後のペーストのレベリングや滲み等により 100μm以下の繊細なパターンを設計値どおりに形成することが困難であり、また増粘効果のあるバインダ成分を含むため、得られる焼成膜の緻密性が低下し、低抵抗すなわち高導電性の膜が得られない。
【0007】
▲3▼の方法では、▲1▼の方法と比較して工程数および必要設備に関しては低減できるが、導電膜形成用塗布液成分中に放射線感応型樹脂成分を含むため、▲2▼の方法同様、得られる焼成膜の緻密性が低下し、低抵抗すなわち高導電性の膜が得られない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における問題点に鑑みて成されたものであり、この問題点を解消するため具体的に設定された課題は、安全で低コスト、高導電性(従来法により形成された導電膜と比較して比抵抗が数分の1以下)、かつラインの切れが良く、設計値どおりまたは設計値と略同等の微細で精緻なパターンを形成することができるパターン化された導電膜の形成方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明における請求項1に係るパターン化された導電膜の形成方法は、加熱により焼失する放射線感応型樹脂を含む塗布液を基板上に塗布し乾燥して樹脂乾燥膜を形成する工程▲1▼と、この樹脂乾燥膜上にフォトマスクを設置し、放射線を照射し現像して、前記樹脂乾燥膜をパターン化する工程▲2▼と、このパターン化された樹脂乾燥膜の各ライン間に、導電性成分と溶媒とからなり前記樹脂乾燥膜と相溶性がなくかつ撥液性を有する導電膜形成用塗布液を、塗布後の厚みが前記樹脂乾燥膜の膜厚と同等またはそれ以下となるように塗布し乾燥して、導電膜形成用乾燥膜を形成する工程▲3▼と、前記基板に形成された前記樹脂乾燥膜と前記導電膜形成用乾燥膜とを加熱して、前記樹脂乾燥膜を焼失させるとともにパターン化された導電膜を形成させる工程▲4▼とを少なくとも含むことを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2に係るパターン化された導電膜の形成方法は、加熱により焼失する樹脂を含むペーストを基板にパターン印刷し乾燥してパターン化された樹脂乾燥膜を形成する工程▲1▼と、このパターン化された樹脂乾燥膜の各ライン間に、導電性成分と溶媒とからなり前記樹脂乾燥膜と相溶性がなくかつ撥液性を有する導電膜形成用塗布液を、塗布後の厚みが前記樹脂乾燥膜の膜厚と同等またはそれ以下となるように塗布し乾燥して、導電膜形成用乾燥膜を形成する工程▲2▼と、前記基板に形成された前記樹脂乾燥膜と前記導電膜形成用乾燥膜とを加熱し、前記樹脂乾燥膜を焼失させるとともにパターン化された導電膜を形成する工程▲3▼とを少なくとも含むことを特徴とすることを特徴とするものである。
【0011】
そして、請求項3に係るパターン化された導電膜の形成方法は、前記導電膜形成用塗布液が、加熱により酸化物となるインジウム化合物と、加熱により酸化物となる錫化合物とを、導電性成分として少なくとも含むことを特徴とする。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、パターン化された導電膜の形成方法として放射線感応型樹脂を使用した場合と印刷用樹脂ペーストを使用した場合について具体的に説明する。
ただし、この実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるため具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、発明内容を限定するものではない。
【0013】
〔放射線感応型樹脂使用による形成方法〕
パターン化された導電膜の第1の形成方法として、放射線感応型樹脂を使用して導電膜を形成させる方法を、▲1▼樹脂乾燥膜の形成工程と、▲2▼パターン化された樹脂乾燥膜の形成工程と、▲3▼導電膜形成用乾燥膜の形成工程と、▲4▼焼成工程とに大別して以下に説明する。
【0014】
▲1▼ 樹脂乾燥膜の形成工程
放射線感応型樹脂として、加熱により焼失する放射線硬化型樹脂または放射線崩壊型樹脂を用いる。
放射線硬化型樹脂としては、例えば、エステルアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等のアクリル系の光重合型樹脂や環化ゴム−アジド系化合物、さらに、水現像可能なスチルバゾール変性ポリビニルアルコールが好適に用いられる。
【0015】
放射線崩壊型樹脂としては、例えば、ポリメチルビニルケトン、ポリビニルフェニルケトン、1,2ナフトキノン−2−ジアジド−5−スルホン酸イソプチルエステル等のキノンジアジド類等が好適に用いられる。
【0016】
これらの樹脂を有機溶剤または水と有機溶剤との混合溶剤に溶解または混合して塗布液とする。用いる有機溶剤は特に限定されないが、これら樹脂を充分に溶解または混合でき、基板に塗布した際に、均一な塗膜が形成できるものであればよい。
【0017】
これらの樹脂を含む塗布液を基板上に塗布して得られた乾燥膜は、後述する導電膜形成用塗布液に対して、相溶性を有していないことが必要である。
もし、この乾燥膜が導電膜形成用塗布液に溶解すると、形成されたパターンが変形、崩壊して、設計どおりの微細、精密なパターン化された導電膜が形成されない。
【0018】
また、これらの樹脂を含む塗布液を基板上に塗布して得られた乾燥膜は、後述する導電膜形成用塗布液に対して、撥液性を有していることが必要である。この乾燥膜が導電膜形成用塗布液に対して、濡れ性が良く付着すると、加熱、焼成した際に導電膜形成成分の分解した酸化物(以下、残渣という)が基板上に残り、良好にパターン化された導電膜が形成されない。
【0019】
上記塗布液の塗布法としては、特に制限されるものではなく、例えば、ロールコート法、ディップコート法、スピンコート法等が挙げられる。
乾燥温度は用いる放射線感応型樹脂、有機溶媒、基板により異なるが、通常は 120℃程度である。
【0020】
▲2▼ パターン化された樹脂乾燥膜の形成工程
通常のフォトリソグラフィ法と同様に乾燥膜上にフォトマスクを介して放射線を照射、現像して、パターン化された樹脂乾燥膜を形成する。
用いる放射線源としては、高圧水銀灯、低圧水銀灯、エキシマレーザ等が用いられる。
【0021】
▲3▼ 導電膜形成用乾燥膜の形成工程
次いで、パターン化された樹脂乾燥膜が形成された基板上に、導電膜形成用塗布液を塗布し、乾燥する。
この際、パターン化された樹脂乾燥膜は、導電膜形成用塗布液と相溶性がなく、かつ導電膜形成用塗布液に対して撥液性を有しているため導電膜形成用塗布液は、パターン化された樹脂乾燥膜のラインとラインとの間に形成された溝中に選択的に塗布される。
【0022】
また、塗布量はパターン化された樹脂乾燥膜の厚みと同等あるいはそれ以下とする必要がある。
塗布量がこれよりも多いと、パターン化された樹脂乾燥膜は導電膜形成用塗布液と相溶性がなく、かつ導電膜形成用塗布液に対して撥液性を有していても、パターン化された樹脂乾燥膜上に乗り上げ、加熱、焼成した後に残渣が基板上に残り、良好にパターン化された導電膜が形成されない。
【0023】
用いる導電膜形成用塗布液は、前記樹脂乾燥膜に対して相溶性がなく、撥液性を有しており、かつ加熱焼成後に得られる被膜が良好な導電性を有すれば特に限定されないが、高透明性、高導電性が得られる等の理由から、錫がドープされた酸化インジウム(以下、ITOと略記する)の導電膜が形成される塗布液が好ましい。
【0024】
また、ITOが形成される塗布液としては、樹脂乾燥膜を焼失させるための加熱工程でITOが合成されるように、加熱により酸化物となるインジウム化合物と、加熱により酸化物となる錫化合物とを含む塗布液が、好適に用いられる。
【0025】
加熱により酸化物となるインジウム化合物としては、分解温度が比較的低く、熱分解時に得られる酸化物の緻密性が高い等の理由から、例えば硝酸インジウム、塩化インジウム等の無機塩、酢酸インジウム等の有機酸塩、インジウムイソプロポキシド、インジウムブトキシド等のインジウムアルコキシド、および、インジウムの無機塩または有機酸塩と、α−ジケトン類、β−ジケトン類、α−ケトン類、β−ケトン類のいずれかとのキレート化物が用いられる。
【0026】
加熱により酸化物となる錫化合物としては、分解温度が比較的低く、熱分解時に得られる酸化物の緻密性が高い等の理由から、例えば硝酸錫、塩化錫、酢酸錫、蓚酸錫等の錫の無機塩、有機塩、錫メトキシド、錫プロポキシド等の錫アルコキシド、および錫の無機塩、または有機酸塩と、α−ジケトン類、β−ジケトン類、α−ケトン類、またはβ−ケトン類のいずれかとのキレート化物が用いられる。
【0027】
前記インジウム化合物と前記錫化合物との混合比は、インジウムと錫との原子比において、インジウム1原子当たり錫 0.01 〜0.2 原子の比率で用いることが好ましい。
この理由は、錫の量が不足すると、キャリア密度が低くなり、導電性が悪化し、一方、錫の量が多すぎるとキャリア移動度が低下して導電性が悪化するからである。
【0028】
用いられる導電膜形成用塗布液には、導電性成分のほかに溶剤を含むが、この溶剤は、特に制限されず、導電性成分を充分に溶解または混合でき、基板への塗布性に優れたものなら良い。
また、用いられる導電膜形成用塗布液は、前記従来例で印刷向上のために使用されていたセルロース化合物やガム系天然樹脂ロジン等の樹脂成分を含有していないため、焼成膜の緻密性が低下することがなく、もって、得られる導電膜は導電性に優れたものとなる。
【0029】
乾燥温度は、用いる導電膜形成用塗布液の組成や基板の種類により異なるが、通常 100〜140 ℃程度である。
【0030】
▲4▼ 焼成工程
次いで、パターン溝に選択的に埋め込まれた導電膜形成用乾燥膜とパターン化された樹脂乾燥膜とは、同時に加熱、焼成され、パターン化された樹脂乾燥膜は分解して消失する。
焼成温度は、樹脂乾燥膜が分解、消失し、かつ導電膜が形成される温度以上で、基板の変形温度以下であれば良く、通常、 400〜700 ℃程度である。
【0031】
以上の工程を経てパターン化された導電膜が形成される。
このパターン化された導電膜の形成方法にあっては、導電膜形成用塗布液のみがパターン化された導電膜を形成し、そのパターンは樹脂乾燥膜の印刷パターンで決まり、ラインの切れが良く、またスペース上に残渣が残らないため、設計値どおり又は略同等の微細で精緻なパターンとなる。
【0032】
〔印刷用樹脂ペースト使用による形成方法〕
次に、パターン化された導電膜の第2の形成方法として、印刷用樹脂ペーストを使用して導電膜を形成させる方法を、▲1▼樹脂乾燥膜の形成工程と、▲2▼導電膜形成用乾燥膜の形成工程と、▲3▼焼成工程とに大別して以下に説明する。
【0033】
▲1▼ 樹脂乾燥膜の形成工程
加熱により焼失する樹脂成分を含有する印刷用樹脂ペーストを作製し、スクリーン印刷法等により基板上にパターン印刷し、乾燥して、パターン化された樹脂乾燥膜を形成する。
樹脂ペーストの粘度は高粘度、例えば 10,000 cP以上であることが印刷時のライン太りを抑制でき、繊細な印刷が可能となる等の理由により好ましい。
【0034】
加熱により焼失する樹脂を含むペーストを基板上に塗布して得られた乾燥膜は、後述する導電膜形成用塗布液に対して、相溶性を有しないことが必要である。もしも、この乾燥膜が導電膜形成用塗布液に溶解すると、形成されたパターンが変形、崩壊して、設計値どおり又は設計値と略同等の微細で精細なパターン化された導電膜が形成されない。
【0035】
また、加熱により焼失する樹脂を含むペーストを基板上に塗布して得られた乾燥膜は、後述する導電膜形成用塗布液に対して、撥液性を有していることが必要である。
もしも、この乾燥膜が導電膜形成用塗布液に対して濡れ性が良く、付着することになると、加熱、焼成した際に残渣が残り、良好にパターン化された導電膜が形成されない。
【0036】
ペースト組成物中の加熱により焼失する樹脂としては、特に限定されるものではないが、比較的低温で分解し、残渣が残らない等の理由から、カルボキシメチルセルロース樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂等が好適に用いられる。
【0037】
また、これらの樹脂を溶解する溶剤としては、α−テルピネオール、ブチルカルビトールアセテート、エチルカルビトール、イソホロン等が溶解性、スクリーン印刷時のハンドリング性、比較的高い沸点を有している等の理由から好適に用いられる。
【0038】
▲2▼ 導電膜形成用乾燥膜の形成工程
次いで、パターン化された樹脂乾燥膜が形成された基板上に、導電膜形成用塗布液を塗布し、乾燥する。
この際、上述したように、パターン化された樹脂乾燥膜は、導電膜形成用塗布液と相溶性がなく、かつ導電膜形成用塗布液に対して撥液性を有しているため、導電膜形成用塗布液はパターン化された樹脂乾燥膜のラインとラインとの間に形成された溝中に選択的に塗布される。
【0039】
また、塗布量はパターン化された樹脂乾燥膜の厚みと同等あるいはそれ以下とする必要がある。
塗布量がこれより多いと、パターン化された樹脂乾燥膜は導電膜形成用塗布液と相溶性がなく、かつ導電膜形成用塗布液に対して撥液性を有しているものの、パターン化された樹脂乾燥膜上に乗り上げ、加熱、焼成した後に残渣が残り、良好にパターン化された導電膜が形成されない。
また、組成、乾燥条件等の導電膜形成用塗布液に係る条件は、放射線感応型樹脂使用による形成方法の場合に準ずるものとする。
【0040】
▲3▼ 焼成工程
ついで、パターン溝に選択的に埋め込まれた導電膜形成用乾燥膜とパターン化された樹脂乾燥膜とは、同時に加熱、焼成され、パターン溝に選択的に埋め込まれた導電膜形成用乾燥膜は、パターン化された導電膜として基板上に成膜され、一方、パターン化された樹脂乾燥膜は分解して焼失する。
その他、温度等の焼成条件については、放射線感応型樹脂使用による形成方法の場合に準ずるものとする。
【0041】
以上の工程を経てパターン化された導電膜が形成される。
この形成方法にあっても、導電膜形成用塗布液のみがパターン化した導電膜を形成し、そのパターンは樹脂乾燥膜の印刷パターンで決まり、ラインの切れが良く、またスペース上に残渣が残らないため、設計値どおり又は設計値と略同等の微細で精緻なパターンとなる。
【0042】
【実施例】
以下に実施例を詳説する。
〔実施例1〕
▲1▼ 紫外線感応型樹脂塗布液の調整
スチルバゾール変性ポリビニルアルコール(固形分: 50 %) 50 gを精製水 33 g、プチルセロソルブ 12 g、テトラヒドロフルフリルアルコール 3g、1−プロパノール 2gの混合溶液に溶解し、放射線感応型樹脂塗布液を得た。
【0043】
▲2▼ 透明導電膜形成用塗布液Aの調整
硝酸インジウム・3水和物 94.74g、蓚酸錫(II) 5.649gをアセチルアセトン 105.26 gに溶解させ、良く攪拌しながら 105℃で2時間還流させ、インジウムのキレート錯体と、錫のキレート錯体の混合物を得た。
酢酸−3−メトキシブチルを添加して良く攪拌し、固形分が酸化インジウム換算で 10 重量%の透明導電膜形成用塗布液Aを作製した。
【0044】
▲3▼ パターン加工した導電膜形成用塗布膜の作製
図1に示すように、紫外線感応型樹脂塗布液をスピンコータでソーダライムガラス基板2上に塗布後、ホットプレート上で乾燥( 70 ℃、 15 分)し、膜厚 2.5μmの樹脂塗布液乾燥膜1を得た。
その膜上にフォトマスク3を設置し、高圧水銀灯で紫外線を照射( 40 mJ/cm2 )した後、流水で1分間現像して、ライン/スペース比(以下、L/Sと略記)が 20 μm/ 50 μmの(樹脂塗布液乾燥膜1の)ネガパターン1aを得た。
【0045】
このスチルパゾール変性ポリビニルアルコール硬化膜(樹脂乾燥膜1)は、透明導電膜形成用塗布液Aには不溶であり、また同塗布液Aに対して撥水性を示した。
このネガパターン1aを温度 220℃で 10 分間乾燥した後、ネガパターン形成基板上に透明導電膜形成用塗布液Aを塗布し、塗布膜厚 2.5μmの透明導電膜形成用塗布膜4を得た。
【0046】
▲4▼ 乾燥・焼成工程
オーブンにより温度 120℃で5分間乾燥し、その後、大気中で温度 580℃で1時間焼成して、ポジパターン(L/S= 50 μm/ 20 μm)のITO透明導電膜4aを得た。
【0047】
得られたパターン化されたITO透明導電膜4aのラインは、切れが良く、スペース上には残渣が見られず、設計値どおりの良好なファインパターンであり、比抵抗は 1.0×10−2Ω・cmであった。
また、膜厚は 0.2μmであり、可視光線透過率は 98 %であった。
【0048】
〔比較例1〕
図2に示すように、実施例1と同様にして、膜厚 2.5μm、L/S= 20 μm/ 50 μmのネガパターン1aに形成されたスチルパゾール変性ポリビニルアルコール硬化膜(樹脂乾燥膜1)を得て、このネガパターン形成基板上に透明導電膜形成用塗布液Aを塗布し、塗布膜厚 4.0μmの透明導電膜形成用乾燥膜4を得た。
【0049】
そして、実施例1と同様の条件により乾燥、焼成し、ポジパターン(L/S= 50 μm/ 20 μm)のITO透明導電膜4aの作製を試みた。
しかし、ラインの切れは悪く、スペース上には残渣1bが多く見られ、設計値どおりの良好なファインパターンが得られなかった。
【0050】
〔比較例2〕
前記透明導電膜形成用塗布液Aにアクリル系光重合型の感光性樹脂を塗料中に4%添加し、溶解させて感光性塗布液Bを作製した。
この感光性塗布液Bをスピンコータで塗布し、ホットプレート上で乾燥(温度 120℃、15分)させ、次いで膜上にフォトマスク3を介して高圧水銀灯で紫外線を照射( 250mJ/cm2 )した後、現像液に浸漬して未露光部分を溶解除去して、L/S= 50 μm/ 20 μm、膜厚 1.5μmのパターン膜を得た。その後、大気中により温度 580℃で1時間焼成し、膜厚 0.2μmのITO透明導電膜を得た。
得られたITO透明導電膜の比抵抗は 5.0×10−2Ω・cm、可視光透過率は98%であった。
【0051】
〔実施例2〕
カルボキシメチルセルロース 10 gを精製水 90 gに溶解させた樹脂ペーストを、ソーダライムガラス基板上に、スクリーン印刷により、L/S= 180μm/ 100μmのマスクを介してパターン印刷し、オーブンで乾燥( 120℃、 30 分)させて膜厚 3μm、L/S= 200μm/ 80 μmのパターン形成膜を得た。
【0052】
このカルボキシメチルセルロース膜は透明導電膜形成用塗布液Aには不溶であり、また同塗布液Aに対して撥水性を示した。
その後、パターン形成基板上に前記透明導電膜形成用塗布液Aを塗布膜厚 3μmで同様に塗布した。その後、大気中にて温度 580℃で1時間焼成し、ポジパターン(L/S= 80 μm/ 200μm)のITO透明導電膜を得た。
【0053】
得られたパターン化されたITO透明導電膜のラインは、切れが良く、スペース上には残渣が見られず、設計値と略同等の良好なファインパターンであり、比抵抗は 1.0×10−2Ω・cmであった。
また、膜厚は 0.22 μmであり、可視光線透過率は 98 %であった。
【0054】
〔実施例3〕
アクリル系樹脂(共栄社化学株式会社製オリコックス1700S) 25 gをα−テルピネオール 75 gに溶解させた樹脂ペーストをソーダライムガラス基板上に、スクリーン印刷により、L/S= 180μm/ 100μmのマスクを介してパターン印刷し、オーブンで乾燥( 120℃、 30 分)させて膜厚 4μm、L/S= 200μm/ 80 μmのパターン形成膜を得た。
【0055】
このアクリル系樹脂硬化膜は、透明導電膜形成用塗布液Aには不溶であった。
その後、パターン形成基板上に前記透明導電膜形成用塗布液Aを塗布膜厚 4μmで同様に塗布した。その後、大気中にて温度 580℃で1時間焼成し、ポジパターン(L/S= 80 μm/ 200μm)のITO透明導電膜を得た。
【0056】
得られたパターン化されたITO透明導電膜のラインは、切れが良く、スペース上には残渣が見られず、設計値と略同等の良好なファインパターンであり、比抵抗は 1.0×10−2Ω・cmであった。
また、膜厚は 0.3μmであり、可視光線透過率は 98 %であった。
【0057】
〔比較例3〕
エチルセルロース 10 gをα−テルピネオール 90 gに溶解させた樹脂ペーストをソーダライムガラス基板上に、スクリーン印刷により、L/S= 180μm/ 100μmのマスクを介してパターン印刷し、オーブンで乾燥( 120℃、 30 分)させて膜厚 2μm、L/S= 200μm/ 80 μmのパターン形成膜を得た。
【0058】
その後、パターン形成基板上に前記透明導電膜形成用塗布液Aを同様に塗布したところ、相溶性を有し、撥液性を有していないので、浸食、溶解され、得られた膜はパターン形状を殆ど保持していないものであった。その後、大気中にて温度 580℃で1時間焼成して、膜厚 0.06 μmの透明導電膜を得た。
このITO透明導電膜の比抵抗は 6.0×10−1Ω・cm、可視光線透過率は 98 %であった。
【0059】
〔比較例4〕
50 gの前記透明導電膜形成用塗布液Aにエチルセルロース 25 重量%含むブチルカルビトールアセテート 20 gを混合溶解させて印刷用樹脂ペーストを作製した。
この樹脂ペーストをソーダライムガラス基板上に、スクリーン印刷により、L/S= 70 μm/ 210μmのマスクを介してパターン印刷し、オーブンで乾燥( 120℃、 30 分)させた。得られたパターン膜は、膜厚 2.8μm、L/S= 140μm/ 140μmであった。
【0060】
その後、大気中にて温度 580℃で1時間焼成して膜厚 0.16 μmのITO透明導電膜を得た。しかし、ラインの切れは悪く、良好なファインパターンが得られなかった。
なお、得られたITO透明導電膜の比抵抗は 3.5×10−2Ω・cm、可視光線透過率は 98 %であった。
【0061】
【発明の効果】
以上のように本発明では、請求項1に係るパターン化された導電膜の形成方法では、樹脂乾燥膜を形成する工程▲1▼と、この樹脂乾燥膜をパターン化する工程▲2▼と、このパターン化された樹脂乾燥膜と相溶性がなくかつ撥液性を有する導電膜形成用塗布液を塗布し乾燥して導電膜形成用乾燥膜を形成する工程▲3▼と、前記基板に形成された前記樹脂乾燥膜と前記導電膜形成用乾燥膜とを加熱して前記樹脂乾燥膜を焼失させるとともにパターン化された導電膜を形成させる工程▲4▼とを含むことにより、高価な装置やエッチング液として強酸を用いる必要がなく、また作業安全や廃液処理等の点でも優れており、コスト低減を実現でき、また、導電膜形成用塗布液が焼失させる樹脂乾燥膜とは相溶性がなくかつ撥液性を有するから、切れの良いラインが形成でき、簡便に精緻なパターンを形成できて、設計値どおり又は設計値と略同等の精緻なパターンを有する導電膜ができる。
【0062】
また、請求項2に係るパターン化された導電膜の形成方法では、ペーストを基板にパターン印刷し乾燥してパターン化された樹脂乾燥膜を形成する工程▲1▼と、このパターン化された樹脂乾燥膜と相溶性がなくかつ撥液性を有する導電膜形成用塗布液を塗布し乾燥して導電膜形成用乾燥膜を形成する工程▲2▼と、前記基板に形成された前記樹脂乾燥膜と前記導電膜形成用乾燥膜とを加熱し、前記樹脂乾燥膜を焼失させるとともにパターン化された導電膜を形成する工程▲3▼とを含むことにより、高価な装置やエッチング液として強酸を用いる必要がなく、また作業安全や廃液処理等の点でも優れており、コスト低減を実現でき、また、ペーストのレベリングや滲み等が防止できて、ラインの切れが良く、精緻なパターンを簡便に形成できて、設計値どおり又は設計値と略同等の精緻なパターンを有する導電膜ができる。
【0063】
また、請求項3に係るパターン化された導電膜の形成方法では、前記導電膜形成用塗布液が、加熱により酸化物となるインジウム化合物と、加熱により酸化物となる錫化合物とを導電性成分として少なくとも含むことにより、高い透明性、高導電性に優れた微細で精緻なパターンを容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1におけるパターン加工プロセスを示す工程説明図であって、(a)は紫外線感応型樹脂塗布工程、(b)は紫外線露光工程、(c)は現像工程、(d)は導電膜形成用塗布液の塗布工程、(e)は焼成工程である。
【図2】比較例1におけるパターン加工プロセスを示す工程説明図であって、(a)は紫外線感応型樹脂塗布工程、(b)は紫外線露光工程、(c)は現像工程、(d)は導電膜形成用塗布液の塗布工程、(e)は焼成工程である。
【符号の説明】
1 樹脂塗布液乾燥膜(樹脂乾燥膜)
1a (樹脂塗布液乾燥膜の)ネガパターン
1b 残渣
2 ガラス基板
3 フォトマスク
4 導電膜形成用乾燥膜
4a ITO透明導電膜
Claims (3)
- 加熱により焼失する放射線感応型樹脂を含む塗布液を基板上に塗布し乾燥して樹脂乾燥膜を形成する工程と、
この樹脂乾燥膜上にフォトマスクを設置し、放射線を照射し現像して、前記樹脂乾燥膜をパターン化する工程と、
このパターン化された樹脂乾燥膜の各ライン間に、導電性成分と溶媒とからなり前記樹脂乾燥膜と相溶性がなくかつ撥液性を有する導電膜形成用塗布液を、塗布後の厚みが前記樹脂乾燥膜の膜厚と同等またはそれ以下となるように塗布し乾燥して、導電膜形成用乾燥膜を形成する工程と、
前記基板に形成された前記樹脂乾燥膜と前記導電膜形成用乾燥膜とを加熱して、前記樹脂乾燥膜を焼失させるとともにパターン化された導電膜を形成させる工程と、
を少なくとも含むことを特徴とするパターン化された導電膜の形成方法。 - 加熱により焼失する樹脂を含むペーストを基板にパターン印刷し乾燥してパターン化された樹脂乾燥膜を形成する工程と、
このパターン化された樹脂乾燥膜の各ライン間に、導電性成分と溶媒とからなり前記樹脂乾燥膜と相溶性がなくかつ撥液性を有する導電膜形成用塗布液を、塗布後の厚みが前記樹脂乾燥膜の膜厚と同等またはそれ以下となるように塗布し乾燥して、導電膜形成用乾燥膜を形成する工程と、
前記基板に形成された前記樹脂乾燥膜と前記導電膜形成用乾燥膜とを加熱し、前記樹脂乾燥膜を焼失させるとともにパターン化された導電膜を形成する工程と、
を少なくとも含むことを特徴とするパターン化された導電膜の形成方法。 - 前記導電膜形成用塗布液が、加熱により酸化物となるインジウム化合物と、加熱により酸化物となる錫化合物とを、導電性成分として少なくとも含むことを特徴とする請求項1または2記載のパターン化された導電膜の形成方法。
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