JP3574255B2 - スクロール型圧縮機の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、一対のスクロール部材を、それぞれの渦巻体の位相をずらせて重ね合わせた状態で相対的に公転運動させることにより、前記両渦巻体の間に形成される密閉空間の容積を減少させて前記密閉空間内の流体の圧縮を行うスクロール型圧縮機の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一対の同一形状のスクロール部材を互いに組み合わせ、一方のスクロール部材を公転運動させて流体の圧縮を行うスクロール型圧縮機が、従来から広く使用されている。この種のスクロール型圧縮機を構成する各スクロール部材は、所望の機械的強度を確保するために、側板と渦巻体とが一体的に設けられているが、この渦巻体は、流体の圧縮力が作用する片持ち梁であり、特にその内端部根元部分に大きな応力が付与されて破損し易かった。
【0003】
そこで、実公平1−28315号公報に開示されているように、スクロール部材の渦巻体内終端部に、根元側の断面積が上部側の断面積より大きく形成されたリブを設け、このリブが渦巻体の渦巻曲線に沿う方向に延在するように構成されたスクロール圧縮機が知られている。
【0004】
ところが、上記の従来技術では、渦巻体の内終端部にリブを形成し、その他の部分を仕上げ加工する際に、エンドミルが3次元の複雑な動作を行わなければならない。このため、通常、荒加工用エンドミルで渦巻体根元部分に比較的大きなアール部を加工した後、旋回半径に比較的余裕がある渦巻体内終端部の根元のみを残して、仕上げ加工用エンドミルで他の部分により小さなアール部を加工することが行われている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、スクロール部材は、鋳造または鍛造素材であるために、離型性を確保すべく抜き勾配が設けられている。このため、根元側の取り代が大きなものとなっており、特にエンドミルの先端に大きな負荷が作用してしまう。しかも、エンドミルの径は、渦巻間の幅による制限を受けて大径化が困難であり、また、渦巻高さが大きい程、各エンドミルが細長くなってその剛性が低下する。これにより、荒加工時に、エンドミルの先端にチッピングが生じ易く、該エンドミルの寿命が短いという問題が指摘されている。
【0006】
本発明は、この種の問題を解決するものであり、エンドミルにチッピング等が生ずることがなく、簡単かつ効率的に加工することが可能なスクロール型圧縮機の製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決するために、本発明は、スクロール部材が1.5<高さ/幅<2.5の関係を有する第1エンドミルの第1面取り部で加工されることにより、1.5<渦巻体側の高さ方向/側板側の幅方向<2.5の関係を有する補強部が該渦巻体の内端部根元に設けられる。このため、先端が単一アール(R)のエンドミルを用いるものに比べて面取り部が大きくなり、特に荒加工時にエンドミル先端の負荷が軽減され、前記エンドミル先端にチッピングが生じることを確実に阻止することができる。
【0008】
また、補強部は、エンドミルの面取り部に対応して渦巻体側に連なる第1アール部と、側板側に連なる第2アール部とを備える。これにより、応力集中が有効に軽減されるとともに、耐チッピング性の向上が図られる。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の実施形態に係るスクロール型圧縮機10の一部縦断面斜視図である。スクロール型圧縮機10は、旋回スクロール12と固定スクロール14とを備え、この旋回スクロール12が回転駆動源(図示せず)に連結されたクランク軸16に係合する。クランク軸16は、フレーム18に回転自在に支持されており、このフレーム18にオルダムリング(自転防止機構)20が配設されている。
【0010】
図1および図2に示すように、旋回スクロール12は、側板22と、この側板22の一面上に一体的に形成された渦巻体24とを備える。渦巻体24の内端部根元にのみ補強部26が設けられ、この補強部26は、前記渦巻体24側の高さ方向H/側板22側の幅方向L>1の関係を有する(図3参照)。渦巻体24には、補強部26を除く根元部分に半径rの仕上げ加工が施されている。
【0011】
固定スクロール14は、前記旋回スクロール12と同様に構成されており、同一の構成要素には同一の参照符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0012】
固定スクロール14には、外周端縁部に吸い込み口28が設けられる一方、中央部に吐出口30が形成される(図1参照)。この固定スクロール14と旋回スクロール12とは、それぞれの渦巻体24が180°の位相ずれを有して互いに重ね合わされた状態で配置されている(図4参照)。
【0013】
このように構成されるスクロール型圧縮機10では、クランク軸16が図示しない回転駆動源の作用下に回転されると、このクランク軸16に係合する旋回スクロール12が所定の軌道上を公転運動する。このため、図4に示すように、旋回スクロール12と固定スクロール14のそれぞれの渦巻体24間に形成される密閉空間32は、その容積を減少しながら前記渦巻体24の中心部に向かって移動する。従って、外周端縁部の吸い込み口28から密閉空間32に取り込まれた流体は、圧縮された後に固定スクロール14の中央部に形成された吐出口30から排出される。
【0014】
その際、旋回スクロール12と固定スクロール14のそれぞれの渦巻体24には、内端部根元にのみ補強部26が設けられ、この補強部26は、渦巻体24側の高さ方向H/側板22側の幅方向L>1の関係を有している。このため、旋回スクロール12と固定スクロール14とが互いに干渉することがなく、しかも高温かつ高圧の流体による応力が集中し易い渦巻体24の内端部根元の強度を十分に確保することができるという効果がある。
【0015】
次に、旋回スクロール12を製造する作業について説明する。なお、固定スクロール14は、旋回スクロール12と同様に製造されるものであり、その詳細な説明は省略する。
【0016】
先ず、側板22上に渦巻体24が一体的に設けられたスクロール素材40が、鋳造成形または鍛造加工により製造される(図5参照)。このスクロール素材40には、特に鋳造成形される際、離型性の点から1°〜2°程度の抜き勾配が設けられており、渦巻体24は、根元24a側に向かって取り代が大きくなっている。
【0017】
そこで、第1エンドミル42によりスクロール素材40に荒加工が施される。この第1エンドミル42の先端には、高さ/幅>1の関係を有する第1面取り部44が設けられている。従って、第1エンドミル42を介してスクロール素材40の側板22および渦巻体24に荒加工が施されると、第1面取り部44により前記渦巻体24側の高さ方向H/側板22側の幅方向L>1の関係を有した補強部26が該渦巻体24の根元24aの全周にわたって形成される。
【0018】
次いで、図6に示すように、仕上げ加工用の第2エンドミル50が用意される。この第2エンドミル50の先端には、第1エンドミル42の第1面取り部44よりも小さな、すなわち半径rを有する第2面取り部52が設けられている。そして、第2エンドミル50によりスクロール素材40の前記荒加工された部分でかつ渦巻体24の内端部根元を除く部分に仕上げ加工が施される。これにより、スクロール素材40には、渦巻体24の内端部根元にのみ補強部26が設けられた状態で、仕上げ加工が施されて旋回スクロール12が製造される。
【0019】
この場合、本実施形態では、第1エンドミル42の先端に高さ/幅>1の関係を有する第1面取り部44が設けられるため、従来の単一アール(R)を有するエンドミル先端で荒加工するものに比べて、前記第1面取り部44での局部負荷が有効に低減される。従って、第1エンドミル42のチッピングが確実に阻止され、特にこの第1エンドミル42が細長く剛性が低い際にも、チッピングが発生することがない。
【0020】
しかも、第1エンドミル42の側面部の切削代が下端面部の切削代より大きい際、第1面取り部44が高さ/幅>1の関係を有することにより、前記第1面取り部44のチッピングを効果的に阻止することができる。ここで、第1面取り部44の高さ(H)/幅(L)を種々変更して加工を行ったところ、表1の結果が得られた。
【0021】
【表1】
【0022】
但し、○:スクロールの割れ、エンドミルのチッピング発生なし
×:スクロールの割れ、エンドミルのチッピッグ発生あり
これにより、第1面取り部44が高さ/幅≦1では、旋回スクロール12が渦巻体24側から破損し易く、かつ前記第1面取り部44が外周側コーナからチッピングした。一方、第1面取り部44が高さ/幅>2. 5では、逆に旋回スクロール12が側板22側から破損し、かつ前記第1面取り部44が先端面側コーナからチッピングした。このため、第1面取り部44は、面取り部位の横幅基準位置を相手側スクロール先端と干渉しない略ぎりぎりの寸法に設定したとき、高さ/幅>1、より好適には1. 5<高さ/幅<2. 5の範囲に設定される。
【0023】
これにより、旋回スクロール12の材料成分を代えたり、加工性を向上させるために鋳造性や鍛造性を犠牲にすることがなく、高速重切削作業が遂行可能になるとともに、材料費を安価にすることができるという効果が得られる。
【0024】
なお、本実施形態では、具体的には、図7に示すように、渦巻体24側に連なる第1アール部R1と、前記第1アール部R1の端部および側板22側に連なるとともに、該第1アール部R1より曲率半径の小さな第2アール部R2とを備える補強部26aを用いている。
【0025】
また、図8に示すように、渦巻体24側に連なる第1アール部R3と、側板22側に連なる曲率半径の小さな第2アール部R4と、前記第1アール部R3および前記第2アール部R4に一体的に連なる直線部Sとを備える補強部26bを採用することもできる。
【0026】
上記の補強部26a、26bでは、渦巻体24および側板22に連なる部位に応力集中が発生することを一層確実に阻止することが可能であり、応力集中軽減および耐チッピング性の向上が図られるという利点が得られる。
【0027】
【発明の効果】
本発明に係るスクロール型圧縮機の製造方法では、スクロール部材が1.5<高さ/幅<2.5の関係を有する第1エンドミルの第1面取り部で荒加工されるため、先端が単一アール(R)のエンドミルを用いるものに比べて幅方向の寸法を変えることなく面取り部が大きくなり、荒加工時にエンドミル先端の負荷が軽減される。これにより、エンドミル先端にチッピングが生じることを確実に阻止することができるとともに、製造作業全体の効率化が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るスクロール型圧縮機の一部縦断面斜視図である。
【図2】前記スクロール型圧縮機を構成する旋回スクロールの斜視説明図である。
【図3】前記旋回スクロールを構成する補強部の一部断面説明図である。
【図4】前記旋回スクロールと固定スクロールが組み合わされた状態の動作説明図である。
【図5】前記旋回スクロールを製造する際の一部拡大図である。
【図6】前記旋回スクロールを仕上げ加工する第2エンドミルの説明図である。
【図7】本実施形態に係る製造方法により荒加工される補強部の形状を示す一部断面説明図である。
【図8】前記旋回スクロールを構成する補強部のさらに別の形状を示す一部断面説明図である。
【符号の説明】
10…スクロール型圧縮機 12…旋回スクロール
14…固定スクロール 16…クランク軸
18…フレーム 22…側板
24…渦巻体 24a…根元
26、26a、26b…補強部 42、50…エンドミル
44、52…面取り部
Claims (1)
- 一対のスクロール部材を、それぞれの渦巻体の位相をずらして重ね合わせた状態で相対的に公転運動させることにより、前記両渦巻体の間に形成される密閉空間の容積を減少させて前記密閉空間内の流体の圧縮を行うスクロール型圧縮機の製造方法であって、
側板上に渦巻体が一体的に設けられたスクロール素材を製造する工程と、
前記渦巻体に接する第1アール部と、前記第1アール部の端部および前記側板に接するとともに、該第1アール部より曲率半径の小さな第2アール部とを有し、かつ、1.5<高さ/幅<2.5の関係を有する第1面取り部を先端に設けた第1エンドミルを用意し、前記第1エンドミルを介して前記スクロール素材の前記渦巻体および前記側板に荒加工を施す工程と、
前記第1面取り部よりも小さな第2面取り部を先端に設けた第2エンドミルを用意し、前記第2エンドミルを介して前記荒加工された部分でかつ前記渦巻体の内端部根元を除く部分に仕上げ加工を施す工程と、
を有することにより、
各スクロール部材は、前記渦巻体側の高さ方向Hと前記側板側の幅方向Lとが、1.5<H/L<2.5の関係を有する補強部を該渦巻体の内端部根元にのみ設けることを特徴とするスクロール型圧縮機の製造方法。
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- 1996-02-14 JP JP02699196A patent/JP3574255B2/ja not_active Expired - Lifetime
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