JP3573976B2 - マルチビームレーザダイオード - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数本のレーザビームを出力することができるマルチビームレーザダイオードに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のマルチビーム型のレーザは、図5(a)に示すように1つのチップの片面に複数個のレーザダイオードを形成したモノリシックタイプと、同図(b)に示すように1つのチップに1個のレーザダイオードを形成し、それらのチップを複数個並べたハイブリッドタイプがある。これらのいずれのタイプも、レーザビームの発光点Pが横方向に配列されるので、ビーム配列に自由度がない、あるいは素子分離を行うために必要な溝あるいは注入領域が必要なため、ビーム間隔が広くなりやすい等の問題が有った。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は上記の点を考慮し、ビーム配列に自由度があり、ビーム間隔を狭くすることができるマルチビームレーザダイオードを提供することを主な課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明のマルチビームレーザダイオードは、半導体基板の一方と他方の面にストライプ状のリッジを有したレーザダイオードを形成したマルチビームレーザダイオードにおいて、半導体基板の一方の面の前記ストライプ状のリッジを順メサ状とし、半導体基板の他方の面の前記ストライプ状のリッジを逆メサ状とし、前記逆メサ状のリッジを有するレーザダイオードの面積を前記順メサ状のリッジを有するレーザダイオードの面積よりも大きくしたことを特徴とする。
【0005】
また、本発明のマルチビームレーザダイオードは、前記順メサ状のリッジを有するレーザダイオードが配置された側の前記半導体基板の表面に共通電極を形成したことを特徴とする。
【0006】
また、本発明のマルチビームレーザダイオードは、前記半導体基板の一方の面に位置するレーザダイオードをGaAlAs系のレーザダイオードとし、他方の面に位置するレーザダイオードをAlGaInP系のレーザダイオードとしたことを特徴とする。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施例について、図面を参照して説明する。図1は、本発明のマルチビームレーザダイオードの一実施例を示す断面図である。このマルチビームレーザダイオード1は、基板2の一方の面2aと他方の面2bに第1、第2のレーザダイオード3,4を形成している。基板2は、例えばn型のGaAsで構成した半導体製の基板によって構成しているが、それ以外の基板を用いることもできる。第1のレーザダイオード3は、発振波長が635〜685nm程度のAlGaInP系の赤色半導体レーザダイオードによって構成し、第2のレーザダイオード4は、発振波長が780〜800nm程度のGaAlAs系の赤外半導体レーザダイオードによって構成している。
【0008】
第1のレーザダイオード3は、例えば活性層32の上下を第1、第2のクラッド層31,33によって挟み込んだダブルヘテロ構造を備えている。さらに、第2クラッド層33に形成したストライプ状のリッジ部分34の両側をブロック層35によって埋め込むとともに、その上にコンタクト層36、キャップ層37を形成した埋込リッジ構造を備えている。同様に第2のレーザダイオード4は、例えば活性層42の上下を第1、第2のクラッド層41,43によって挟み込んだダブルヘテロ構造を備えている。さらに、第2クラッド層43に形成したストライプ状のリッジ部分44の両側をブロック層45によって埋め込むとともに、その上にコンタクト層46、キャップ層47を形成した埋込リッジ構造を備えている。
【0009】
基板の一方の面2aには、第2のレーザダイオード4の片側に位置して共通電極5が形成され、第1のレーザダイオード3の一方の面と第2のレーザダイオード4の一方の面には個別電極6,7が形成されている。個別電極6はシリコンサブマウント等の取付部8にAu−Sn,Au−Ge,Pb−Sn等の半田材(図示せず)を用いて融着され、個別電極7と共通電極5は、リード端子(図示せず)に金線9を用いてワイヤボンド接続される。
【0010】
放熱特性が第2のレーザダイオード4に比べて悪い第1のレーザダイオード3は、放熱特性を改善するために、素子の横幅を第2のレーザダイオード4よりも長く設定しているとともに、基板2が上となるようにジャンクションダウンで配置される。
【0011】
次に、上記レーザダイオード1の製造方法について、図2、3を参照して説明する。GaAs基板2を所定面積のウエハ状態で準備し、その表面2aに有機金属熱分解法(MOCVD),分子線エピタキシー法(MBE)などを利用してAlGaInP系のダブルヘテロ構造を含む層の第1回目の結晶成長を行う(図2(a)参照)。この1回目の結晶成長によって、第1のクラッド層41、活性層42、第2のクラッド層43、コンタクト層46が順次形成される。
【0012】
次に、基板2の他方の面2bに有機金属熱分解法(MOCVD),分子線エピタキシー法(MBE)、液層エピタキシャル法(LPE)などを利用してGaAlAs系のダブルヘテロ構造層を含む層の第2回目の結晶成長を行う(図2(b)参照)。この2回目の結晶成長によって、第1のクラッド層31、活性層32、第2のクラッド層33、コンタクト層36が順次形成される。ここで、MOCVD法を用いる場合に、GaAlAs系よりも高温処理が必要とされるAlGaInP系の層を先に形成しているが、MOCVD法よりも低温処理が可能な分子線エピタキシー法(MBE)などの他の方法を併用して結晶成長させる場合は、GaAlAs系よりも後にAlGaInP系の層を形成することもできる。
【0013】
次に、第1回目の結晶成長層の最上層にSiO2等からなるストライプ状のマスクパターン12を形成し、これ用いてコンタクト層46、第2クラッド層43の大部分をエッチングして除去することにより、ストライプ状のリッジ44を形成する。同様にして、第2回目の結晶成長層の最上層にSiO2等からなるストライプ状のマスクパターン11を前記マスクパターン12のストライプ方向に一致させて形成し、これを用いてコンタクト層36、第2クラッド層33の大部分をエッチングして除去することにより、ストライプ状のリッジ34を形成する(図2(c)参照)。この例では、基板2を挟んで位置するリッジ34,44が上下方向に一致するように、上下のマスクパターン11,12の位置決めが行われているので、上下のレーザダイオード3,4のビーム間隔を最小に設定することができるが、上下のマスクパターン11,12の形状や配置を適宜変更することによって、上下のレーザダイオード3,4のビーム間隔やビームの配置を任意に設定することができる。
【0014】
次に、リッジ44の両側を埋め込むようにn型のGaAs等からなるブロック層45を形成する第3回目の結晶成長を行う。同様にして、リッジ34の両側を埋め込むようにn型のGaAs等からなるブロック層35を形成する第4回目の結晶成長を行う(図2(d)参照)。
【0015】
次に、基板の一方の面2a側のマスクパターン12を除去した後、リッジ44部分やブロック層45部分を覆うようにp型のGaAs等のキャップ層47を形成する第5回目の結晶成長を行う。同様に、基板裏面2b側のマスクパターン11を除去した後、リッジ34部分やブロック層35部分を覆うようにp型のGaAs等のキャップ層37を形成する第6回目の結晶成長を行う(図3(e)参照)。
【0016】
次に、半導体基板2の表面2aを露出させるように、リッジ44の長手方向に沿って溝48をエッチングもしくはダイシング処理して形成する(図3(f)参照)。
【0017】
次に、キャップ層37の上に個別電極6を形成し、キャップ層47の上に個別電極7を形成し、露出した基板2の一方の面2aに共通電極5を形成する(図3(g)参照)。
【0018】
次に、レーザの共振端面を形成するためのスクライブラインを、ダイヤモンドポイントなどを用いてウエハの裏面にリッジ34の長手方向と直交する方向に形成する。次に、ウエハを前記スクライブラインに沿って劈開することによってバー状に分割し、その両端面にAl2O3,もしくはAl2O3とSiの多層膜等をスパッタ法やEB蒸着法等を利用して形成する。バー状に分割されたウエハは、リッジ34の長手方向と同方向に順次分離され、レーザダイオード1が出来上がる。スクライブラインに沿った面は、劈開による鏡面をなし、この劈開面がレーザダイオードの共振端面として機能する。
【0019】
このように、基板2の上下にそれぞれ発振波長が相違するレーザダイオード3,4を形成することにより、上下のレーザダイオード3,4の配置自由度を高めることができ、レーザビーム間隔や配置を所望の状態に設定することができる。例えば、図1に示すようにレーザビームの発光点Pを上下の位置に配置すれば、レーザビーム間隔を最短の状態にすることができる。また、基板2を共用することができるので、レーザビーム間隔をさらに短く設定することができ、例えば1つの光源とみなせる50μm前後、より好ましくは50μm以下にレーザビーム間隔を設定することができる。
【0020】
上記のように、発振波長が相違するレーザダイオードの内、温度特性が悪いほうのレーザダイオード3の面積を大きく設定するとともに、そのダイオード3をジャンクションダウンによるチップボンディングに対応して形成しているので、ダイオードの温度特性の悪化を最小限にとどめることができる。
【0021】
尚、上記実施例は、基板2の両面に交互に結晶成長させて2種類のレーザダイオードを形成する例を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、基板2の一方の面に一方のレーザダイオードに必要な結晶成長を順次行った後、他方のレーザダイオードに必要な結晶成長を順次行う場合にも適用することができる。例えば、基板2の一方の面にGaAlAs系の赤外レーザダイオードに必要な結晶成長を液層エピタキシャル法(LPE)を用いて行った後、基板2の他方の面にAlGaInP系の赤色レーザ素子を前記液層エピタキシャルよりも低温の例えば有機金属熱分解法(MOCVD),分子線エピタキシー法(MBE)等を用いて形成することもできる。このように、基板の表裏の結晶成長温度に差がある場合は、高温処理が必要な結晶成長を先に行うようにすれば良い。
【0022】
また、上記実施例は、発振波長が相違する2つのレーザダイオード3,4を基板2の表と裏の両面に形成した場合を例示したが、他の実施例として、発振波長が同一のレーザダイオードを基板の表と裏の両面に形成することもできる。
【0023】
図4は、基板2の表と裏の両面に3つ以上のレーザダイオードを形成したマルチビームレーザダイオードの実施例を示している。この実施例は、基板2の一方の面に2つのレーザダイオード110,120を形成し、基板2の他方の面に1つのレーザダイオード130を形成した場合を示している。そして、平面的に見て前記一方の面の2つのレーザダイオード110,120の中間に他方の面のレーザダイオード130が位置し、レーザビームの発光点Pが2等辺三角形の頂点に位置するするように、各レーザダイオードを配置している。各レーザダイオードは同一波長のレーザダイオードによって構成しているが、上下のレーザダイオードで発振波長を変えることもできる。
【0024】
このように、3つ以上のレーザダイオードを基板2の表裏面に形成するとともに、平面的に見て一方の面のレーザダイオードの間に他方のレーザダイオードが位置するように配置しているので、マルチビームプリンタ等の光源として用いる場合に、各レーザビームの間隔を狭く設定することができ、印字品位の向上や、高速印字化への対応を図ることができる。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように本発明のマルチビームレーザダイオードによれば、ビーム配列の自由度を高めることができるとともに、ビーム間隔を狭くすることができる。また、従来のハイブリッドタイプ構成に比べて、チップの組み立て作業性を良好にすることができる。また、従来のモノリシックタイプ構成に比べて、ビーム間隔を狭くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図である。
【図2】同実施例の製造方法を説明するための、要部断面図である。
【図3】同実施例の製造方法を説明するための、要部断面図である。
【図4】本発明の他の実施例を示す断面図である。
【図5】従来例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 マルチビームレーザダイオード
2 基板
3 第1のレーザダイオード
4 第2のレーザダイオード
5 共通電極
6 個別電極
7 個別電極
Claims (3)
- 半導体基板の一方と他方の面にストライプ状のリッジを有したレーザダイオードを形成したマルチビームレーザダイオードにおいて、半導体基板の一方の面の前記ストライプ状のリッジを順メサ状とし、半導体基板の他方の面の前記ストライプ状のリッジを逆メサ状とし、前記逆メサ状のリッジを有するレーザダイオードの面積を前記順メサ状のリッジを有するレーザダイオードの面積よりも大きくしたことを特徴とするマルチビームレーザダイオード。
- 前記順メサ状のリッジを有するレーザダイオードが配置された側の前記半導体基板の表面に共通電極を形成したことを特徴とする請求項1に記載のマルチビームレーザダイオード。
- 前記半導体基板の一方の面に位置するレーザダイオードをGaAlAs系のレーザダイオードとし、他方の面に位置するレーザダイオードをAlGaInP系のレーザダイオードとしたことを特徴とする請求項1あるいは2に記載のマルチビームレーザダイオード。
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