JP3572811B2 - クロムを含有する廃触媒の処理方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、クロムを含有する廃触媒の処理方法に関する。さらに詳しくは、クロム系触媒の存在下にエチレンを三量化して1−ヘキセンを得、三量化反応終了後に不要となったクロムを含有する廃触媒の処理方法において、クロムを含有する廃触媒を反応生成液から効率よく分離し、高純度の1−ヘキセンを得、しかも有害なクロム金属を無害化処理して、製造プロセスから分離除去する工業的に有利なクロムを含有する廃触媒の処理方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エチレンを三量化して1−ヘキセンを製造することは公知である。例えば、米国特許第3347840号明細書及び特開昭62−265237号公報には、クロム化合物、アルミノキサンとジメトキシエタン等のエーテル化合物類からなる触媒系によるエチレンの三量化が、特開平6−239920号公報には、クロム化合物、ピロール含有化合物、金属アルキルからなる触媒系が、又特開平8−59732号公報には、クロム化合物、イミド化合物及び金属アルキルからなる触媒系によるエチレンの三量化が開示されている。
【0003】
これらの1−ヘキセンの製造プロセスは一般に大別して、三量化反応工程、未反応エチレン回収工程、触媒の失活工程および脱灰工程、1−ヘキセンおよび溶媒の分留工程から成っている。ところで、前記エチレンの三量化では何れの触媒系も有害なクロム金属やその他の金属成分を含有している。従って、これらの工程において、最も重要な技術課題の一つは使用したクロム金属やその他の金属成分の製造プロセスからの分離除去にある。即ち、目的生成物である1−ヘキセン中に、使用した触媒の金属成分が残存すると製品の品質に悪影響を及ぼしたり、1−ヘキセンおよび溶媒の分留工程における蒸留塔の閉塞の原因となる。また、クロムは水質汚濁防止法により有害物質に指定されているため、エチレンの三量化反応に使用した触媒の金属成分を無害化処理をして、製造プロセスから分離除去する必要がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、特開平7−149671号公報には、クロム系触媒を使用したエチレンの三量化反応による1−ヘキセンの製造方法において、三量化反応を特定の反応条件でコントロールすることにより反応液中の副生ポリマーの形状を特定のものとし、そして特定構造の固液分離装置を使用して副生ポリマーを系外に除去するプロセスが開示されている。しかしながら、使用したクロム系触媒の金属成分の大半は、反応終了後に副生した固形ポリマー中に含まれる。従って、有害なクロムやアルミニウムが混入したポリマーが製造プロセスから除去され、そのポリマーの後処理に時間と労力を要するという問題があった。またこのような方法では、副生ポリマーの除去に要する新たな装置を設置しなければならず、その費用や用役費が増大するのは免れない。その上、副生ポリマーの形状を特定のものとするため反応条件が制約され、触媒活性を高くすることができないという欠点もあった。
【0005】
また、特開平7−242701号公報には、エチレンの三量化反応による1−ヘキセンの製造方法において、
(a)エチレンの三量化反応工程からの反応生成液をアルコールと接触させて使用した触媒を失活させ、
(b)1−ヘキセンを蒸留により回収し、
(c)残りの1−ヘキセンを含有しない部分に水性の塩基を添加し、
(d) (c)の製造物から沈殿物を除去し、
(e) (d)の除去工程後に残った水相及び有機相を分離し、そして
(f) (e)の水相に酸を加える、ことを特徴とする製造プロセスが開示されている。しかしながら、クロム系触媒を用いたエチレンの三量化ではポリマーの副生は避けられず、また使用したクロム系触媒の金属成分の大半は、反応終了後に副生したポリマー中に含まれる。従って、前記方法によりクロム系触媒を失活させた後、蒸留を行い製品である1−ヘキセンを回収すると、製品の品質に悪影響を及ぼしたり、1−ヘキセンおよび溶媒の分留工程における蒸留塔の汚れや閉塞の原因となるという問題があった。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的はクロム系触媒の存在下にエチレンを三量化して1−ヘキセンを得、三量化反応終了後に不要となったクロムを含有する廃触媒を、反応生成液から効率よく分離し、高純度の1−ヘキセンを得、しかも有害なクロム金属を無害化処理して、製造プロセスから分離除去することのできるクロムを含有する廃触媒の処理方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、クロム系触媒の存在下にエチレンを三量化して1−ヘキセンを得、三量化反応終了後に不要となったクロムを含有する廃触媒の処理方法において、特定条件下でクロム系触媒を失活させ、次いで水を導入して反応生成液に含有される金属成分を脱灰すると、極めて低濃度にまで金属成分を除去することができ、高純度の1−ヘキセンが得られ、さらに残りの水相にアルカリ性化合物を接触させると使用した触媒の金属を無害の状態で、しかも効率よく製造プロセスから分離除去できることを見い出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち本発明は、クロム系触媒の存在下にエチレンを三量化して1−ヘキセンを得、三量化反応終了後に不要となったクロムを含有する廃触媒の処理方法において、
(1)エチレンの三量化反応終了後、副生したポリマーを温度が85〜180℃である反応生成液中に溶融した状態でクロム系触媒を失活させ、さらに水を導入して反応生成液に含有される金属成分を脱灰し、
(2)反応混合物中の油相と水相を二相分離して、
(3)油相を蒸留分離して1−ヘキセンを得、
(4)残りの水相をアルカリ性化合物と接触させてクロムを含有する金属成分を水酸化物として沈殿させて、水酸化物を水相から分離し、そして
(5) (4)の水相に酸性化合物を接触させてクロムを含有する金属成分を水酸化物として沈殿させて、水酸化物を水相から分離することを特徴とするクロムを含有する廃触媒の処理方法に関する。
【0009】
以下に、本発明について詳しく説明する。
【0010】
本発明において1−ヘキセンは、クロム系触媒の存在下にエチレンを三量化させることによって得られる。このクロム系触媒は、少なくとも(A)クロム化合物、(B)アルキル金属化合物から成るものである。
【0011】
本発明で使用される(A)クロム化合物としては、特に制限するものではないが、例えば、下記一般式(1)
CrAmBn (1)
(式中、mは1〜6の整数であり、nは0〜4の整数である。またAは炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アレーン、アルコキシ基、カルボキシレート基、β−ジケトナート基、β−ケトエステル基及びアミド基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、硝酸基、硫酸基、過塩素酸基、カルボニル並びに酸素からなる群より選ばれた1種以上を表し、Bは窒素含有化合物、リン含有化合物、ヒ素含有化合物、アンチモン含有化合物、酸素含有化合物及び硫黄含有化合物からなる群より選ばれた1種以上を表す)
で示される化合物が好適なものとして用いられる。
【0012】
上記一般式(1)において、炭素数1〜20のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、ブチル基、アリル基、ネオペンチル基、シクロペンタジエニル基、ペンタメチルシクロペンタジエニル基又はトリメチルシリルメチル基等が挙げられる。炭素数6〜20のアリール基としては、特に限定するものではないが、例えば、フェニル基又はトルイル基等が挙げられる。炭素数6〜20のアレーンとしては、特に限定するものではないが、例えば、ベンゼン、エチルベンゼン又はヘキサメチルベンゼン等が挙げられる。炭素数1〜20のアルコキシ基としては、特に限定するものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、ステアリルオキシ基又はフェノキシ基等が挙げられる。炭素数1〜20のカルボキシレート基としては、特に限定するものではないが、例えば、アセテート基、プロピオネート基、ブチレート基、ネオペンタノエート基、2ーエチルヘキサノエート基、オキシ−2−エチルヘキサノエート基、イソオクタネート基、ジクロロエチルヘキサノエート基、ラウレート基、ステアレート基、オレエート基、ベンゾエート基、又はナフテネート基等が挙げられる。炭素数1〜20のβ−ジケトナート基としては、特に限定するものではないが、例えば、アセチルアセトナート基、トリフルオロアセチルアセトナート基、ヘキサフルオロアセチルアセトナート基、2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート基、1,3−ブタンジオナート基、2−メチル−1,3−ブタンジオナート基、ベンゾイルアセトナート基等が挙げられる。炭素数1〜20のβ−ケトエステル基としては、特に限定するものではないが、例えば、アセチルアセテート基等が挙げられる。アミド基としては、特に限定するものではないが、例えば、ジメチルアミド基又はジシクロヘキシルアミド基が挙げられる。ハロゲン原子としては、特に限定するものではないが、例えば、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素が挙げられる。
【0013】
上記一般式(1)において、窒素含有化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、アミン、ピリジン、アミド、又はニトリル等が挙げられる。リン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、ホスフィン、ホスファイト、又はホスフィンオキシド等が挙げられる。ヒ素含有化合物としては、特に限定するものではなく、例えばトリアリールヒ素、トリアルキルヒ素等が挙げられる。アンチモン含有化合物は、特に限定するものではなく、例えばトリアリールアンチモン、トリアルキルアンチモン等が挙げられる。酸素含有化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、水、無水カルボン酸、エステル、エーテル、アルコール又はケトン等であり、硫黄含有化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、二硫化炭素、スルフォン、チオフェン、又はスルフィド等が挙げられる。
【0014】
上記一般式(1)で示されるクロム化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、クロム(II)ジメチル、クロム(III)トリメチル、クロム(IV)テトラメチル、クロム(III)トリス(η−アリル)、二クロム(II)テトラキス(η−アリル)、クロム(IV)テトラキス(ネオペンチル)、クロム(IV)テトラキス(トリメチルシリルメチル)、クロム(II)ビス (シクロペンタジエニル)、クロム(II)ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)、クロム(III)トリス(π−アリル)、クロム(IV)テトラキス(π−アリル)、クロム(II)ジフェニル、クロム(0)ビス(ベンゼン)、クロム(II)ジフェニル(ベンゼン)、クロム(0)ビス(エチルベンゼン)、クロム(0)ビス(ヘキサメチルベンゼン)、クロム(I)シクロペンタジエニル(ベンゼン)、クロム(IV)テトラメトキシド、クロム(IV)テトラエトキシド、クロム(IV)テトラプロポキシド、クロム(IV)テトラブトキシド、クロム(IV)テトラヘキシルオキシド、クロム(IV)テトラステアリルオキシド、クロム(IV)テトラフェノキシド、クロム(II)ビス(アセテート)、クロム(III)トリス(アセテート)、クロム(II)ビス(プロピオネート)、クロム(III)トリス(プロピオネート)、クロム(III)トリス(ブチレート)、クロム(II)ビス(2−エチルヘキサノエート)、クロム(III)トリス(2ーエチルヘキサノエート)、クロム(II)ビス(イソオクタネート)、クロム(III)トリス(イソオクタネート)、クロム(III)トリス(オキシ−2−エチルヘキサノエート)、クロム(III)トリス(ジクロロエチルヘキサノエート)、クロム(III)トリス(ネオペンタノエート)、クロム (II)ビス(ネオペンタノエート)、クロム(III)トリス(ラウレート)、クロム(II)ビス(ラウレート)、クロム(III)トリス(ステアレート)、クロム(II)ビス(ステアレート)、クロム(III)トリス(オレエート)、クロム(II)ビス(オレエート)、クロム(III)トリス(ベンゾエート)、クロム(II)ビス(ナフテネート)、クロム(III)トリス(ナフテネート)、クロム(II)オキザレート、クロム(II)ビス(アセチルアセトナート)、クロム(III)トリス(アセチルアセトナート)、クロム(III)トリス (トリフルオロアセチルアセトナート)、クロム(III)トリス(ヘキサフルオロアセチルアセトナート)、クロム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)、クロム(III)トリス(1,3−ブタンジオナート)、クロム(III)トリス(2−メチル−1,3−ブタンジオナート)、クロム(III)トリス(ベンゾイルアセトナート)、クロム(III)トリス(アセチルアセテート)、クロム(III)トリス(ジメチルアミド)、クロム(III)トリス(ジシクロヘキシルアミド)、フッ化第一クロム、フッ化第二クロム、塩化第一クロム、塩化第二クロム、臭化第一クロム、臭化第二クロム、ヨウ化第一クロム、ヨウ化第二クロム、塩化クロミル、過塩素酸クロム、二塩化ヒドロキシクロム、硝酸クロム、硫酸クロム等が挙げられる。
【0015】
さらに、トリクロロトリアニリンクロム(III)、ジクロロビス(ピリジン)クロム(II)、ジクロロビス(4−エチルピリジン)クロム(II)、トリクロロトリピリジンクロム(III)、トリクロロトリス(4−イソプロピルピリジン)クロム(III)、トリクロロトリス(4−エチルピリジン)クロム(III)、トリクロロトリス(4−フェニルピリジン)クロム(III)、トリクロロ(1,4,7−トリメチル−1,4,7−トリアザシクロノナン)クロム(III)、ジクロロジニトロシルビス(4−エチルピリジン)クロム(II)、ジクロロジニトロシルビス(トリフェニルホスフィンオキシド)クロム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィンオキシド)クロム(II)、トリクロロトリス(トリフェニルホスフィン)クロム(III)、トリクロロビス(トリブチルホスフィン)クロム(III)ダイマー、トリクロロトリス(ブチルアセテート)クロム(III)、トリクロロトリス(エチルアセテート)クロム(III)、トリクロロトリス(テトラヒドロフラン)クロム(III)、トリクロロトリス(ジオキサン)クロム(III)、トリクロロトリス(iso−プロパノール)クロム(III)、トリクロロトリス(2−エチルヘキサノール)クロム(III)、トリフェニルトリス(テトラヒドロフラン)クロム(III)、クロム(III)トリス(アセテート)無水酢酸付加物、ヒドリドトリカルボニル(η−シクロペンタジエニル)クロム(III)等が挙げられる。
【0016】
これらのうち取り扱いやすさ及び安定性の面から、カルボキシレート基を有するクロムカルボキシレート化合物及びβ−ジケトナート基を有するクロムβ−ジケトナート化合物が好ましく用いられる。より好ましくは、クロム(III)トリス(2−エチルヘキサノエート)、クロム(III)トリス(ナフテネート)、クロム(III)トリス(アセチルアセトナート)、クロム(III)トリス(トリフルオロアセチルアセトナート)、クロム(III)トリス(2,2,6,6−テトラメチル−3,5−ヘプタンジオナート)が用いられる。また、上記クロム化合物はそれぞれ単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。
【0017】
本発明において使用される(B)アルキル金属化合物は、特に限定するものではないが、例えば、下記一般式(2)
RpMXq (2)
(式中、pは0<p≦3の数であり、qは0≦q<3の数であって、しかもp+qは1〜3の数である。Mはリチウム、マグネシウム、亜鉛、ボロン又はアルミニウムを表し、Rは炭素数1〜10のアルキル基より選ばれた1種以上を表し、Xは水素原子、アルコキシ基、アリール基及びハロゲン原子からなる群より選ばれた1種以上を表す)
で示される化合物、又はアルミノキサンが好適なものとして挙げられる。
【0018】
上記一般式(2)において、炭素数1〜10のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、シクロヘキシル基、又はオクチル基等が挙げられる。アルコキシ基としては、特に限定するものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、又はフェノキシ基等が挙げられる。アリール基としては、特に限定するものではないが、例えば、フェニル基等が挙げられる。ハロゲン原子としては、特に限定するものではないが、例えば、フッ素、塩素、臭素、又はヨウ素が挙げられる。
【0019】
なお、上記一般式(2)において、MがAlで、pとqがそれぞれ1.5のとき、AlR1.5X1.5となる。このような化合物は、理論的には存在しないが、通常、慣用的にAl2R3X3のセスキ体として表現されており、これらの化合物も本発明に含まれる。
【0020】
上記一般式(2)で示されるアルキル金属化合物としては、例えば、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、s−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ジエチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、エチルクロロマグネシウム、エチルブロモマグネシウム、ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛、トリメチルボラン、トリエチルボラン、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ−n−ヘキシルアルミニウム、トリ−n−オクチルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、ジメチルエチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジシクロヘキシルフェニルアルミニウム、エチルアルミニウムエトキシクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、ジシクロヘキシルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド等が挙げられる。
【0021】
本発明において使用されるアルミノキサンとは、前記のアルキルアルミニウム化合物と水とを一定範囲内の量比で反応させて得られる加水分解生成物である。アルキルアルミニウム化合物を加水分解する方法については、特に限定するものではなく、公知の方法で合成できる。例えば、(1)アルキルアルミニウム化合物そのまま、又は有機溶媒の希釈溶液に水を接触させる方法、(2)アルキルアルミニウム化合物と塩化マグネシウム・6水塩、硫酸鉄・7水塩、硫酸銅・5水塩等の金属塩の結晶水と反応させる方法、等が採られる。具体的には、前記特開昭62−265237号公報や特開昭62−148491号公報に開示されている。加水分解を行う際のアルキルアルミニウム化合物と水とのモル比は1:0.4〜1:1.2、好ましくは1:0.5〜1:1.0である。
【0022】
これらのアルキル金属化合物のうち入手の容易さ及び活性の面からトリエチルアルミニウムやトリイソブチルアルミニウムが好ましく用いられる。これらのアルキル金属化合物は単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。
【0023】
さらに、必要に応じて、イミド化合物、ピロール含有化合物及びエーテル化合物からなる群より選ばれた少なくとも一種以上のヘテロ元素含有有機化合物を用いても良い。イミド化合物としては、イミド構造を有する化合物であればいかなる化合物でもよく、特に制限はないが、例えば、マレイミド、1−クロロエテン−1,2−ジカルボキシイミド、1−ブロモエテン−1,2−ジカルボキシイミド、1−フルオロエテン−1,2−ジカルボキシイミド、1−トリフルオロメチルエテン−1,2−ジカルボキシイミド、1,2−ジクロロエテン−1,2−ジカルボキシイミド、シトラコンイミド、2−ブテン−2,3−ジカルボキシイミド、1−シクロペンテン−1,2−ジカルボキシイミド、スクシンイミド、α,α−ジメチル−β−メチルスクシンイミド、α−メチル−α−プロピルスクシンイミド、グルタルイミド、3,3−ジメチルグルタルイミド、ベメグリド、フタルイミド、3,4,5,6−テトラクロロフタルイミド、1,2−シクロヘキサンジカルボキシイミド、1,2,3,6−テトラヒドロフタルイミド、1,2,3,4−テトラヒドロフタルイミド、3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、1,8−ナフタルイミド、2,3−ナフタレンジカルボキシイミド、シクロヘキシイミド、N−クロロスクシンイミド、N−ブロモスクシンイミド、N−ヨ−ドスクシンイミド、N−(メトキシカルボニル)マレイミド、N−(ヒドロキシ)マレイミド、N−(カルバモイル)マレイミド等のイミド類が挙げられる。
【0024】
さらに、N−(トリメチルシリル)マレイミド、N−(トリメチルシリル)コハクイミド、N−(トリメチルシリル)シトラコンイミド、N−(トリメチルシリル)−2−ブテン−2,3−ジカルボキシイミド、N−(トリメチルシリル)−1−シクロペンテン−1,2−ジカルボキシイミド、N−(トリメチルシリル)−3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミド、N−(トリメチルシリル)スクシンイミド、N−(トリエチルシリル)マレイミド、N−(トリ−n−プロピルシリル)マレイミド、N−(トリ−n−ブチルシリル)マレイミド、N−(トリ−n−ヘキシルシリル)マレイミド、N−(トリベンジルシリル)マレイミド、N−(n−ブチルジメチルシリル)マレイミド、N−(t−ブチルジメチルシリル)マレイミド、N−(ジメチルゼキシルシリル)マレイミド、N−(n−オクチルジメチルシリル)マレイミド、N−(n−オクタデシルジメチルシリル)マレイミド、N−(ベンジルジメチルシリル)マレイミド、N−(メチルジブチルシリル)マレイミド、N−(フェニルジメチルシリル)マレイミド、N−(p−メトキシフェニルジメチルシリル)マレイミド、N−(p−トルイルジメチルシリル)マレイミド、N−(トリフェニルシリル)マレイミド、N−(トリブチルチン)マレイミド、N−(トリオクチルチン)マレイミド、N−(ジイソブチルアルミニウム)マレイミド、N−(ジエチルアルミニウム)マレイミド、水銀マレイミド、銀マレイミド、カルシウムマレイミド、カリウムマレイミド、ナトリウムマレイミド、リチウムマレイミド等の金属イミド類が挙げられる。
【0025】
ここで、金属イミドとは、イミドから誘導される金属イミド、あるいはこれらの混合物であり、具体的にはイミドとIA族、IIA族、IB族、IIB族、IIIB族及びIVB族から選択される金属との反応により得られるイミド化合物である。この金属イミド化合物の合成法は、特に限定するものではなく、公知の方法で合成できる。例えば、IA及びIIA族金属のイミド化合物は、リチウム、ブチルリチウム、ナトリウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、臭化メチルマグネシウム、塩化ブチルマグネシウム等のIA及びIIA族金属化合物とイミド化合物を反応させることで合成できる。又、IB及びIIB金属のイミド化合物は、硝酸銀、塩化銀、塩化水銀等のIB及びIIB金属化合物とイミド化合物をアルカリの存在下で反応させることで合成できる。IIIB及びIVB族金属のイミド化合物は、トリメチルシリルクロリド、トリブチルシリルクロリド、トリブチルチンクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド等のIIIB及びIVB族の金属塩化物とイミド化合物をアルカリの存在下で反応させたり、前記のIIIB及びIVB族の金属塩化物とIA、IIA、IB、IIB族の金属イミド化合物を反応させたり、又、トリブチルチンヒドリド、トリイソブチルアルミニウムヒドリド等のIIIB及びIVB族の金属ヒドリドとイミド化合物を反応させることで合成できる。具体的には、Polymer Journal,24,679(1992)によれば、N−(トリアルキルシリル)マレイミドは、マレイミド又は銀マレイミドとトリアルキルシリルクロリドを3級アミン化合物存在下で反応させ、次いで蒸留または再結晶して合成される。また、Journalof Organic Chemistry,39,21(1974)によれば、銀マレイミドは、マレイミドと硝酸銀をエタノール/ジメチルスルホキシド中で苛性ソーダ存在下で反応させて合成される。
【0026】
ピロール含有化合物としては、ピロール環構造を有する化合物であればいかなる化合物でもよく、特に制限はないが、例えば、ピロール、2,5−ジメチルピロール、3,4−ジメチルピロール、2,4−ジメチル−3−エチルピロール、3,4−ジクロロピロール、2,3,4,5−テトラクロロピロール、2−アセチルピロール、3−アセチル−2,4−ジメチルピロール、ピロール−2−カルボン酸、ピロール−2−カルボキサルデヒド、エチル−2,4−ジメチル−5−(エトキシカルボニル)−3−ピロール−プロピオネート、エチル−3,5−ジメチル−2−ピロールカルボキシレート、テトラヒドロインドール等のピロール、リチウムピロリド、ナトリウムピロリド、カリウムピロリド、セシウムピロリド、ジエチルアルミニウムピロリド、エチルアルミニウムジピロリド、アルミニウムトリピロリド、ジイソブチルアルミニウムピロリド、ナトリウム−2,5−ジメチルピロリド、カリウム−2,5−ジメチルピロリド、セシウム−2,5−ジメチルピロリド、ジエチルアルミニウム−2,5−ジメチルピロリド、エチルアルミニウムビス(2,5−ジメチルピロリド)、アルミニウムトリス(2,5−ジメチルピロリド)、ジイソブチルアルミニウム−2,5−ジメチルピロリド等の金属ピロリドが挙げられる。
【0027】
エーテル化合物としては、エーテル結合を有する化合物であればいかなる化合物でもよく、特に制限はないが、例えば、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ピラン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0028】
これらヘテロ元素含有有機化合物の内、活性の面から、マレイミド、N−(トリメチルシリル)マレイミド、ピロール、2,5−ジメチルピロール、ジメトキシエタンが好ましく用いられる。また、これらヘテロ元素含有有機化合物はそれぞれ単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。
【0029】
本発明における、前記(A)クロム化合物、(B)アルキル金属化合物、及び必要に応じて用いる(C)ヘテロ元素含有有機化合物の混合割合は、(A)クロム化合物1モルに対して、(B)アルキル金属化合物は通常、0.1〜10,000当量であり、好ましくは3〜3,000当量、より好ましくは10〜2,000当量である。また、必要に応じて用いる(C)ヘテロ元素含有有機化合物の使用量は、(A)クロム化合物1モルに対して通常、0.1〜1,000当量であり、好ましくは0.5〜500当量、より好ましくは1〜300当量である。
【0030】
本発明のクロム系触媒は、前記の(A)クロム化合物、(B)アルキル金属化合物、及び必要に応じて(C)ヘテロ元素含有有機化合物を原料として、溶媒中で接触させることにより調製できる。接触方法は特に制限されないが、例えば、三量化反応原料であるエチレンの存在下に(A)クロム化合物、(B)アルキル化合物、及び必要に応じて(C)ヘテロ化合物を接触させて触媒を調製し、接触と同時に三量化反応を開始する方法、または(A)クロム化合物、(B)アルキル化合物、及び必要に応じて(C)ヘテロ化合物を前もって接触させて触媒を調製した後、エチレンと接触させて三量化反応を行う方法が採られる。なお、これらの原料の混合順序は特に制限はされない。
【0031】
この触媒系を調製する際の、クロム化合物の濃度は特に制限されないが、通常溶媒1 lあたり、0.001μmol〜100mmol、好ましくは0.01μmol〜10mmolの濃度で使用される。またここで用いられる溶媒としては、例えば、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、イソオクタン、ノナン、デカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロオクタン、デカリン等の脂肪族炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族炭化水素類及び塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタン等の塩素化炭化水素類が挙げられる。また反応原料のオレフィンそのもの、あるいは反応生成物、例えば、ブテン、1−ヘキセン、オクテン、デセン、ドデセン等のオレフィン類を溶媒として用いることもできる。これらの溶媒はそれぞれ単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。ここで、触媒調製時の触媒濃度をコントロールする目的で、必要に応じて濃縮や希釈しても差し支えない。
【0032】
また、クロム化合物、アルキル金属化合物及びヘテロ元素有機化合物を接触させる際の温度は通常−100〜250℃、好ましくは0〜200℃である。触媒系の調製時間は特に制限されず、0分〜24時間、好ましくは0分〜2時間である。なお、触媒調製のすべての操作は、空気と水分を避けて行なうことが望ましい。また、触媒調製原料および溶媒は十分に乾燥しておくことが好ましい。
【0033】
本発明によれば、上記の如く調製されたクロム系触媒に、所望に応じて更に、塩素、臭素、ヨウ素、ブチルクロリド、アミルクロリド、ヘキシルクロリド、ヘプチルクロリド、オクチルクロリド、ノニルクロリド、デシルクロリド、ラウリルクロリド、メチルブロミド、プロピルブロミド、ブチルブロミド、アミルブロミド、ヘキシルブロミド、エチルヘキシルブロミド、ノニルブロミド、セチルブロミド、ジブロモメタン、ジクロロエタン、ジブロモエタン、ジクロロブテン、シクロヘキシルブロミド、クロロホルム、四塩化炭化水素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジブロモベンゼン、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化セシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、ヨウ化亜鉛、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、四塩化ケイ素、四塩化ゲルマニウム、四臭化ゲルマニウム、塩化第一スズ、塩化第二スズ、ヨウ化スズ、三塩化リン、五塩化リン、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三臭化アンチモン、三フッ化アンチモン、五フッ化アンチモン、ジメチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムアイオダイド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムアイオダイド、エチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジアイオダイド、ジイソプロピルアルミニウムクロリド、ジイソブチルアルミニウムクロリド、イソブチルアルミニウムジクロリド、ジヘキシルアルミニウムクロリド、ジシクロヘキシルアルミニウムクロリド、ジオクチルアルミニウムクロリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、トリメチルシリルクロリド、トリメチルシリルブロミド、ジメチルシリルジクロリド、メチルシリルトリクロリド、フェニルシリルトリクロリド、ジフェニルシリルジクロリド、メチルジクロロシラン、トリブチルチンクロリド、ジブチルチンジクロリド、ブチルチントリクロリド、トリフェニルチンクロリド、ジフェニルチンジクロリド、フェニルチントリクロリド等のハロゲン化物やトリス(2−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3−フルオロフェニル)ボロン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(2,4−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(2,5−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(2,6−ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(2,4,5−トリフルオロフェニル)ボロン、トリス(2,4,6−トリフルオロフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、ビス(ペンタフルオロフェニル)亜鉛、トリス(ペンタフルオロフェニル)アルミニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ゲルマニウム、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)スズ、トリス(4−トリフルオロメチルフェニル)ボロン等のルイス酸を添加し、クロム系触媒として供される。ハロゲン化物やルイス酸の共存により触媒活性の向上やポリマーの副生を抑制する等の効果が認められる。
【0034】
このようにして調製されたクロム系触媒を用いてエチレンの三量化反応が行なわれる。本発明においてクロム系触媒の使用量は特に制限されないが、通常、前記溶媒で希釈し、三量化反応液1 lあたり、クロム化合物が0.001μmol〜100mmol、好ましくは0.01μmol〜10mmolの濃度で使用される。これより小さい触媒濃度では十分な活性が得られず、逆にこれより大きい触媒濃度では、触媒活性が増加せず経済的でない。
【0035】
本発明における三量化反応の温度は、通常−100〜250℃であるが、好ましくは0〜200℃である。反応圧力は、絶対圧で通常0〜300kg/cm2であり、好ましくは0〜150kg/cm2である。また、反応時間は温度や圧力に左右され、一概に決めることはできないが、通常5秒〜6時間である。また、エチレンは、前記の圧力を保つように連続的に供給してもよいし、反応開始時に前記圧力で封入して反応させてもよい。原料ガスであるエチレンには、反応に不活性なガス、例えば窒素、アルゴン、ヘリウム等が含まれても何ら差し支えない。なお、三量化反応のすべての操作は、空気と水分を避けて行うことが望ましい。また、エチレンは十分に乾燥しておくことが好ましい。
【0036】
本発明においては、このようにしてエチレンを三量化して得られた反応生成液を先ず85〜180℃に保持し、副生したポリマーを反応生成液中に溶融させて、そのままの状態で失活剤を導入して、活性なクロム系触媒を失活させる処理を行う。ここにおいて三量化反応終了後の反応生成液の温度を85〜180℃に保持することが必要である。好ましくは100〜130℃である。反応生成液の温度が85℃より低い場合は、三量化反応で副生したポリマーが析出し、失活処理時の反応器、制御弁や配管等の装置を詰まらせたり、それに起因するトラブルの発生を招く。反応生成液の温度が180℃より高い場合では、ポリマーは実質的に完全に溶融しており、これ以上の効果はなく、経済的でない。この三量化反応によって副生するポリマーの生成量は反応条件によって一律ではないが、通常は1−ヘキセン生成量に対して0.01〜5重量%であり、反応生成液を85〜180℃に保持することによって溶融し、安定した運転を続行できる。失活処理の圧力は、反応生成液が液状態を維持できれば、特に制限されないが、通常2kg/cm2以上、好ましくは5kg/cm2以上である。また失活処理時間は温度や圧力に左右され、一概に決めることはできないが、通常5秒〜1時間である。
【0037】
本発明において使用される失活剤は、前記クロム系触媒の三量化活性を失わせるものであり、特に限定するものではないが、プロトン性化合物、例えば、水、及びメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ベンジルアルコール等のアルコ−ル類、フェノール、クレゾール等のフェノール類及び酢酸、プロピオン酸、オクチル酸、2−エチルヘキサン酸等のカルボン酸類が挙げられる。これらのうち取り扱い易さの面から、水やアルコールが好ましく用いられ、より好ましくは水が用いられる。この失活剤は単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。
【0038】
失活剤の使用量は、三量化反応の触媒として用いるクロム系触媒を失活処理させるに十分な量であれば、特に制限されないが、通常、触媒に含有される金属の合計モル数に対して、3モル当量以上であり、好ましくは5〜1,000当量である。失活剤の使用量がこれより小さい量では活性なクロム系触媒を完全に失活することができず、生成した1−ヘキセンはさらに三量化反応の原料として消費され、C10やC14オレフィンに変換されて1−ヘキセン選択率の低下につながる。
【0039】
また所望に応じて失活剤に含窒素化合物や無機化合物を添加することができる。触媒中にハロゲンが含まれる場合、失活処理時に触媒中のハロゲンの一部が生成オレフィンに付加して有機ハロゲン化物を少量生成することがあるが、含窒素化合物や無機化合物の共存によりこの有機ハロゲン化物の生成を抑制する等の効果が認められる。
【0040】
含窒素化合物としては、特に限定するものではないが、例えばアンモニア又はメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、オクチルアミン、アニリン、ジメチルアミン、シエチルアミン、ジフェニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ジエチルアニリン等のアミン類、ピリジン、ピコリン等の複素環式窒素化合物が挙げられる。これらのうち取り扱い易さや経済性の面から、アンモニアが好ましく用いられ、より好ましくはアンモニア水溶液として用いられる。この含窒素化合物は単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。また無機化合物としては、特に限定するものではないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが挙げられる。これらのうち取り扱い易さや経済性の面から、水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。
【0041】
本発明においては、このようにして触媒を失活処理して得られた反応生成液も85〜180℃に保持し、副生したポリマーを反応生成液中に溶融させて、そのままの状態で水を導入して、クロム系触媒に含有される金属成分の脱灰処理を行う。ここで、クロム系触媒に含有される金属成分の脱灰処理とは、反応生成液中のクロム系触媒に含有されるクロムやアルミニウム等の金属を水により抽出し、その水を反応生成液と分離して、金属成分を反応生成液から除去することを意味する。反応生成物と水との接触は、公知の抽出装置を用いればよく、例えば、撹拌槽と静置式分離槽を組み合わせて使用することが好ましい。これらの装置は1段でも多段でもよく、また回分式でも連続式でもよい。
【0042】
本発明において水の添加量は、反応生成液に対して20容量%以上、好ましくは30容量%以上である。水の添加量が反応生成液に対して20容量%より少ない場合には、反応生成液中に含まれる金属成分が十分に除去できない。この水の添加にあたり、触媒中の金属成分が水酸化物、即ち水酸化クロムや水酸化アルミニウムの形で析出することを防ぐことが重要である。これらの水酸化物の析出を防ぐには、水に硫酸や硝酸等の酸性化合物、または水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のアルカリ性化合物を共存させることが望ましい。これらのうち取り扱い易さや経済性の面から、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムが好ましく用いられる。アルカリ性化合物の添加量は、特に制限されるものではないが、好ましくは水溶液のPHが11以上、さらに好ましくはPH12以上になるように添加される。アルカリ性化合物を添加する場合、水溶液のPHが11より小さいとクロムが水酸化物として析出し、クロムの脱灰が実質的に行うことができない。
【0043】
ここにおいて失活処理終了後の反応生成液の温度は、85〜180℃であり、好ましくは100℃以上に保持することが必要である。脱灰処理時の反応生成液の温度は85℃以上であれば、特に制限されないが、通常100〜180℃、好ましくは100〜150℃である。反応生成液の温度が85℃より低い場合は、三量化反応で副生したポリマーが固形状態で析出し、失活処理時の反応器、制御弁や配管等の装置を詰まらせたり、それに起因するトラブルの発生を招く。また、使用したクロム系触媒の金属成分の大半は固形ポリマー中に含まれるため、金属成分は固形ポリマーから除去されず、反応生成液中に残存する結果となる。この三量化反応によって副生するポリマーの生成量は反応条件によって一律ではないが、通常は1−ヘキセン生成量に対して0.01〜5重量%であり、反応生成液を85〜180℃に保持することによって溶融し、安定した運転を続行できるとともに、ポリマー中の金属成分も効率よく除去できる。脱灰処理の圧力は、反応生成液が液状態を維持できれば、特に制限されないが、通常2kg/cm2以上、好ましくは5kg/cm2以上である。また脱灰処理時間は温度や圧力に左右され、一概に決めることはできないが、通常5秒〜1時間である。
【0044】
本発明の脱灰処理においては、このように加熱して、さらに撹拌して脱灰処理することが好ましい。ここで、脱灰処理は反応生成液中の金属成分の水による抽出であるから、水の液滴分散、即ち接触界面積の大小が重要な因子となる。この撹拌条件は、特に制限はされないが、反応生成液と水との接触界面積を大きくして、脱灰効率を向上させるため、反応生成液と水の混合物の単位容積当たり1KW/m3以上の撹拌所要動力で処理系を撹拌することが好ましい。さらに好ましくは2KW/m3以上にすることが好ましい。撹拌所用動力が1KW/m3より小さい場合、反応生成液中の金属成分が十分に脱灰されない。
【0045】
このように加熱条件下で反応生成液に水を導入して、撹拌した後に、反応生成液と水の混合物は、静置され油相と水相に二相分離される。静置時間は通常1分〜1時間で十分である。静置後、油水分離して油相中の金属成分は極めて低濃度にまで除去され脱灰処理が完了する。
【0046】
本発明においては、このようにして得られた油相を蒸留分離し、極めて高純度の1−ヘキセンを回収する。蒸留法としては、特に限定されず公知の方法でよい。
【0047】
残りの水相はアルカリ性化合物と接触させて、使用した触媒の金属成分を無害の水酸化物として沈殿させ、これら金属水酸化物の水相からの分離除去を行なう。ここにおいて水相をアルカリ性化合物と接触させて、実質的にクロムの全てを水酸化物として沈殿させて分離除去することが重要である。ここで、アルミニウムの一部は水酸化物として沈殿し分離除去されるが、この処理では完全には除去できない。
【0048】
本発明において使用されるアルカリ性化合物としては、特に限定するものではないが、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム等の無機アルカリ性化合物が挙げられる。これらのうち取り扱い易さや経済性の面から、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムが好ましく用いられる。このアルカリ性化合物は単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。アルカリ性化合物の使用量は、水相中の存在するクロムを水酸化物にするに十分な量であれば、特に制限されないが、通常、クロムとアルミニウムの合計モル当たり、1〜100モル当量であり、好ましくは5〜50モル当量である。アルカリ性化合物の使用量が1モル当量より小さい量では実質的にクロムの全てを沈殿させることができない。アルカリ性化合物の種類によってはPHが11以上になると水酸クロム錯体となって再び溶解する。従って、クロムが水酸クロム錯体となり再溶解した場合にはPHが11より小さくなるように処理系のPHをコントロールしたり、水相に塩化カルシウム等のカルシウム化合物を添加して水酸化クロムを再形成させる。
【0049】
本発明における水相とアルカリ性化合物の接触時の温度は、特に制限されないが0〜90℃、好ましくは10〜50℃である。反応圧力は、特に制限されないが絶対圧で0〜10kg/cm2であり、好ましくは0〜3kg/cm2である。また、接触時間は特に制限されないが通常5秒〜6時間である。
【0050】
このようにして得られたクロムを含有する金属成分の水酸化物は公知の方法により水相から分離除去される。ここで、水酸化クロムの沈降速度は非常に遅く、量的に多くなってくると沈殿分離が非常に難しくなる。そのため、凝集剤や凝集助剤を加えることによって沈降速度を速めると分離は容易になる。
【0051】
本発明においては水酸化クロムを除去して得られた水相に酸性化合物を接触させて、水相中に残存するアルミニウムの分離除去を行なう。本発明における酸性化合物としては、特に限定するものではないが、例えば硫酸、硝酸、塩酸、リン酸が挙げられる。これらのうち取り扱い易さや腐食性の面から、硫酸が好ましく用いられる。この酸性化合物は単独で使用し得るのみならず、二種以上を混合して用いることも可能である。酸性化合物の使用量は、水相中の存在するアルミニウムを水酸化物にするに十分な量であれば、特に制限されない。また、硫酸を水酸化カリウムの存在下でアルミニウムと接触させて、KAl(SO4)2、または通常明礬と知られているKAl(SO4)2・12H2Oを結晶化して沈殿させてもよい。水相と酸性化合物の接触時の温度は、特に制限されないが0〜90℃、好ましくは10〜50℃である。反応圧力は、特に制限されないが絶対圧で0〜10kg/cm2であり、好ましくは0〜3kg/cm2である。また、接触時間は特に制限されないが通常5秒〜6時間である。このようにして得られたアルミニウムを含有する沈殿物は公知の方法により水相から分離除去される。
【0052】
【実施例】
以下に、本発明を実施例を用いて更に詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の概要を示すもので、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
1 lシュレンク管にマレイミド14.5mg(0.15mmol)を秤取り乾燥シクロヘキサン400mlに溶解させ、0.01mol/lのクロム(III)トリス(2−エチルヘキサノエート)/シクロヘキサン溶液5.0mlを入れ混合した。0.12mol/lのトリエチルアルミニウム/シクロヘキサン溶液11.0mlと0.04mol/lのエチルアルミニウムジクロリド/シクロヘキサン溶液5.0mlの混合物を加え、室温で1時間撹拌して、触媒溶液を調製した。
【0053】
反応装置として、三量化反応器(1 l)と脱灰槽(2 l)をオーバーフロー管で接続した装置を使用した。
【0054】
温度計、触媒溶液フィード管及び撹拌装置を備えた内容積1 lのステンレス製耐圧反応容器を90℃で加熱真空乾燥したのち窒素ガスで十分置換した。前記の触媒溶液を全量容器に仕込んだ。撹拌速度を1,000rpmに調整し、反応容器を120℃に加熱後、反応容器内の絶対圧力を40kg/cm2となるようにエチレンガスを吹き込みエチレンの三量化反応を開始した。以後、前記圧力を維持するように導入し続け、これらの反応条件を保った状態で10分反応を行なった。10分後、反応容器中に水を窒素で圧入することによって触媒を失活させて反応を停止した。反応生成液の一部を抜き出し、反応液中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。その結果、触媒活性は93.1kg/g−Cr・時間、オレフィンの選択率はC4;0.1重量%、C6;90.3重量%、C8;0.3重量%、C10;7.6重量%、C12以上のオレフィン;1.7重量%であった。
【0055】
失活処理して得られた反応生成液は100℃を保持した状態で、オーバーフロー管を通して別途配置された温度計、サンプリング管、撹拌装置、4枚邪魔板 (幅1.1cm)および4枚ファンタービン(翼径7cm、リボン幅1.2cm、撹拌翼の取り付け角度90度)を備えた内容積2 lのステンレス製耐圧反応容器(槽径10.5cm、槽高さ24cm)に圧送した。反応生成液が700mlになるようにシクロヘキサンを新たに必要量加え、さらにPH12に調整した水酸化ナトリウム水溶液210mlを加えた後、100℃、5kg/cm2の条件で500rpmで20分撹拌して脱灰処理を行った。反応混合物を30分静置した後、油相と水相を二相分離し、水相に含まれる金属量を高周波プラズマ発光分光法(ICP)により分析し、反応生成液(油相)中の金属成分の脱灰率(脱灰処理前の反応生成液中に含まれる金属量に対する脱灰処理後の反応生成液中に含まれる金属量の重量%)を計算した。その結果を表1示すが、水相中のクロム濃度は11.8wtppmであり、使用したCrの92.8重量%が水相に抽出され、油相中に含まれたクロムは極めて低濃度にまで除去された。
【0056】
油相は、柴田科学製HP−1000B型簡易蒸留装置を用いて蒸留分離して、1−ヘキセンを得、蒸留装置への金属分による汚染は見られなかった。
【0057】
二相分離された水相の一部(100ml)を撹拌装置を備えた1 l三ツ口フラスコに入れてイオン交換水400mlを加えて500mlに希釈した。この水溶液に塩化カルシウムを20mg添加して約10分間撹拌してクロムを水酸化物として沈殿させた。その後、約3時間静置し、上澄み液を濾紙No.6Aで濾過した。濾液に含まれるクロム溶解量をICPにより分析した。その結果、クロム溶解量は0.2wtppm以下であり、大半のクロムは無害な水酸化クロムとして水相から分離除去された。次いで、この水相に硫酸を用いて中和し、その後水分を蒸発させて、アルミニウムを水酸化物の形で水相から分離した。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例2
脱灰処理時の温度を120℃に、また撹拌翼の回転数を600rpmにしたこと以外、実施例1と同様にして三量化反応および各処理を行なった。結果を表1に示す。
【0060】
実施例3
温度計、触媒溶液フィード管及び撹拌装置を備えた内容積1 lのステンレス製耐圧反応容器を90℃で加熱真空乾燥したのち窒素ガスで十分置換した。0.01mol/lのクロム(III)トリス(2−エチルヘキサノエート)/シクロヘキサン溶液5.0ml、0.10mol/lの2,5−ジメチルピロール1.5ml及びシクロヘキサン350mlを反応容器胴側に仕込み、エチレンで十分置換した。一方、触媒フィード管に0.50mol/lのトリエチルアルミニウム/シクロヘキサン溶液3.0ml、0.10mmol/lの四塩化ゲルマニウム/シクロヘキサン溶液1.0mlを仕込んだ。
【0061】
反応容器を120℃に加熱し、撹拌速度を1,000rpmに調整後、触媒フィード管にエチレンを導入し、エチレン圧によりトリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロリドの混合溶液が反応容器胴側に導入され、エチレンの三量化反応を開始した。反応容器内の絶対圧力を40kg/cm2Gとなるようにエチレンガスを吹き込み、以後、前記圧力を維持するように導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分間、エチレンの三量化反応を行なった。30分後、反応容器中に水酸化ナトリウム水溶液を窒素で圧入することによって触媒を失活させて反応を停止した。反応生成液の一部を抜き出し、反応液中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。その結果、触媒活性は66.6kg/g−Cr・時間、オレフィンの選択率はC4;0.1重量%、C6;95.0重量%、C8;0.5重量%、C10;3.7重量%、C12以上のオレフィン;0.7重量%であった。
【0062】
失活処理して得られた反応生成液は100℃を保持した状態で、オーバーフロー管を通して別途配置された温度計、サンプリング管、撹拌装置、4枚邪魔板 (幅1.1cm)および4枚ファンタービン(翼径7cm、リボン幅1.2cm、撹拌翼の取り付け角度90度)を備えた内容積2 lのステンレス製耐圧反応容器(槽径10.5cm、槽高さ24cm)に圧送した。反応生成液が700mlになるようにシクロヘキサンを新たに必要量加え、さらにPH12に調整した水酸化ナトリウム水溶液210mlを加えた後、140℃、10kg/cm2Gの条件で600rpmで20分撹拌して脱灰処理を行った。反応混合物を30分静置した後、油相と水相を二相分離し、水相に含まれる金属量を高周波プラズマ発光分光法(ICP)により分析し、反応生成液(油相)中の金属成分の脱灰率(脱灰処理前の反応生成液中に含まれる金属量に対する脱灰処理後の反応生成液中に含まれる金属量の重量%)を計算した。その結果を表1示すが、使用したCrの99.2重量%が水相に抽出され、油相中に含まれたクロムは極めて低濃度にまで除去された。
【0063】
油相は、柴田科学製HP−1000B型簡易蒸留装置を用いて蒸留分離して、1−ヘキセンを得、蒸留装置への金属分による汚染は見られなかった。
【0064】
二相分離された水相の一部(100ml)を撹拌装置を備えた1 l三ツ口フラスコに入れてイオン交換水400mlを加えて500mlに希釈した。この水溶液に塩化カルシウムを20mg添加して約10分間撹拌してクロムを水酸化物として沈殿させた。その後、約3時間静置し、上澄み液を濾紙No.6Aで濾過した。濾液に含まれるクロム溶解量をICPにより分析した。その結果、クロム溶解量は0.2wtppm以下であり、大半のクロムは無害な水酸化クロムとして水相から分離除去された。次いで、この水相に硫酸を用いて中和し、その後水分を蒸発させて、アルミニウムを水酸化物の形で水相から分離した。
【0065】
実施例4
撹拌装置を備えたシュレンク管を加熱真空乾燥して、次いで窒素ガスで十分置換したのち、0.195mol/lのトリイソブチルアルミニウム/シクロヘキサン溶液98.3mlを入れ、氷水浴で冷却した。氷冷下、撹拌しながら、259mgの水をゆっくり滴下し、1時間撹拌を継続しながら保持して、0.195mol/lのイソブチルアルミノキサン/シクロヘキサン溶液を合成した。
【0066】
1 lシュレンク管に前記0.195mol/lイソブチルアルミノキサン/シクロヘキサン溶液30.8ml(Al換算6.0mmol)、1,2−ジメトキシエタン0.27g(3.0mmol)と乾燥シクロヘキサン550mlを入れ、次いで0.1mol/lのクロム(III)トリス(2−エチルヘキサノエート)/シクロヘキサン溶液2.0mlを入れ混合し、室温で1時間撹拌して、触媒溶液を調製した。
【0067】
温度計、触媒溶液フィード管及び撹拌装置を備えた内容積1 lのステンレス製耐圧反応容器を90℃で加熱真空乾燥したのち窒素ガスで十分置換した。前記の触媒溶液を全量容器に仕込んだ。撹拌速度を1,000rpmに調整し、反応容器を100℃に加熱後、反応容器内の絶対圧力を35kg/cm2Gとなるようにエチレンガスを吹き込みエチレンの三量化反応を開始した。以後、前記圧力を維持するように導入し続け、これらの反応条件を保った状態で30分反応を行なった。30分後、反応容器中に水酸化ナトリウム水溶液を窒素で圧入することによって触媒を失活させて反応を停止した。反応生成液の一部を抜き出し、反応液中に含まれる生成物をガスクロマトグラフィーにより分析した。その結果、触媒活性は5.2kg/g−Cr・時間、オレフィンの選択率はC4;1.1重量%、C6;86.8重量%、C8;5.2重量%、C10;6.0重量%、C12以上のオレフィン;0.9重量%であった。
【0068】
失活処理して得られた反応生成液は100℃を保持した状態で、オーバーフロー管を通して別途配置された温度計、サンプリング管、撹拌装置、4枚邪魔板 (幅1.1cm)および4枚ファンタービン(翼径7cm、リボン幅1.2cm、撹拌翼の取り付け角度90度)を備えた内容積2 lのステンレス製耐圧反応容器(槽径10.5cm、槽高さ24cm)に圧送した。反応生成液が700mlになるようにシクロヘキサンを新たに必要量加え、さらにPH12に調整した水酸化ナトリウム水溶液210mlを加えた後、140℃、10kg/cm2Gの条件で900rpmで20分撹拌して脱灰処理を行った。反応混合物を30分静置した後、油相と水相を二相分離し、水相に含まれる金属量を高周波プラズマ発光分光法(ICP)により分析し、反応生成液(油相)中の金属成分の脱灰率(脱灰処理前の反応生成液中に含まれる金属量に対する脱灰処理後の反応生成液中に含まれる金属量の重量%)を計算した。その結果を表1示すが、使用したCrの95.3重量%が水相に抽出され、油相中に含まれたクロムは極めて低濃度にまで除去された。
【0069】
油相は、柴田科学製HP−1000B型簡易蒸留装置を用いて蒸留分離して、1−ヘキセンを得、蒸留装置への金属分による汚染は見られなかった。
【0070】
二相分離された水相の一部(100ml)を撹拌装置を備えた1 l三ツ口フラスコに入れてイオン交換水400mlを加えて500mlに希釈した。この水溶液に塩化カルシウムを20mg添加して約10分間撹拌してクロムを水酸化物として沈殿させた。その後、約3時間静置し、上澄み液を濾紙No.6Aで濾過した。濾液に含まれるクロム溶解量をICPにより分析した。その結果、クロム溶解量は0.2wtppm以下であり、大半のクロムは無害な水酸化クロムとして水相から分離除去された。次いで、この水相に硫酸を用いて中和し、その後水分を蒸発させて、アルミニウムを水酸化物の形で水相から分離した。
【0071】
比較例1
脱灰処理時の温度を40℃にしたこと以外、実施例1と同様にして三量化反応及び各処理を行なった。結果を表1に示すが、油相からのクロムの脱灰率は45.3重量%にとどまり、クロムを系から完全に除去できなかった。
【0072】
比較例2
三量化反応および失活処理時の温度を80℃にしたこと以外、実施例1と同様にして三量化反応及び各処理を行なった。結果を表1に示すが、失活後の反応器にポリマーが付着し、ポリマー中のクロム量を分析した結果、使用したクロムの約50%がポリマー中に含まれており、クロムを系から完全に除去できなかった。
【0073】
【発明の効果】
本発明によれば、クロム系触媒の存在下にエチレンを三量化して1−ヘキセンを得、三量化反応終了後に不要となったクロムを含有する廃触媒の処理方法において、クロムを含有する金属成分を反応生成液から効率よく分離し、高純度の1−ヘキセンを得、しかも有害なクロム金属を無害化処理して、製造プロセスから分離除去することができる。
Claims (2)
- クロム系触媒の存在下にエチレンを三量化して1−ヘキセンを得、三量化反応終了後に不要となったクロムを含有する廃触媒の処理方法において、(1)エチレンの三量化反応終了後、副生したポリマーを温度が85〜180℃である反応生成液中に溶融した状態でクロム系触媒を失活させ、さらに水を導入して反応生成液に含有される金属成分を脱灰し、
(2)反応混合物中の油相と水相を二相分離して、
(3)油相を蒸留分離して1−ヘキセンを得、
(4)残りの水相をアルカリ性化合物と接触させてクロムを含有する金属成分を水酸化物として沈殿させて、水酸化物を水相から分離し、そして
(5) (4)の水相に酸性化合物を接触させてクロムを含有する金属成分を水酸化物として沈殿させて、水酸化物を水相から分離することを特徴とするクロムを含有する廃触媒の処理方法。 - クロム系触媒が少なくとも(A)クロム化合物、(B)アルキル金属化合物からなる触媒であることを特徴とする請求項1に記載のクロムを含有する廃触媒の処理方法。
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