JP3572742B2 - スタータ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンを始動させるスタータに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のスタータでは、特開平1─92573号公報に示す如く、モータと、モータの軸方向前方にて、回転自在に配設されると共に、モータにより駆動されるピニオンと、モータの後部に隣接して配設されるマグネットスイッチとを備える同軸形のスタータが記載されている。
【0003】
このスタータでは、マグネットスイッチのプランジャは、モータの回転軸内を貫通して、モータ前方のピニオンを軸方向に付勢する同軸構造を採用している。
これによれば、モータの後方にマグネットスイッチが配設できるので、スタータの軸方向から見た必要面積を、従来のマグネットスイッチをスタータモータと並列に配置したスタータに比較して、格段に削減することができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来のものでは、軸方向から見た必要面積は、少なくすることができるものの、マグネットスイッチのプランジャをモータのシャフトと、同軸上に配置したため、プランジャの軸方向の移動のための距離を所定量、確保するためには、当然ながら軸方向の長さが、非常に長くなってしまうという問題点がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、軸方向からみた必要面積を少なくしつつ、かつ軸方向長も大幅に増加させることのないスタータを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために請求項1記載の手段を採用することができる。この手段によると、マグネットスイッチをスタータモータの反ピニオン側の近傍で、スタータモータの軸に対してプランジャが直交し、かつプランジャの移動範囲がスタータモータ外周面より内側に配設され、さらに、マグネットスイッチは、アーマチャの軸の反ピニオン側の端部よりさらに反ピニオン側に配置され、かつアーマチャの軸の軸方向の延長線上に配置されたコイルを備えることにより、プランジャの移動は、スタータモータの直径分を有効に利用することができるので、スタータモータから径方向外周側に突出する部分をできる限り少なくして、スタ−タの全体の体格を押さえることができる。
【0007】
また上記課題を解決するために請求項2記載の手段を採用することができる。この手段によると、マグネットスイッチの外周をスタータモータの外周と実質的に同一とすることができ、スタータモータから径方向外周側に突出する部分を極力少なくして、スタ−タの径方向の体格を小さくすることができる。
【0008】
請求項3の手段によれば、プランジャの移動により、伝達手段を介して、前記ピニオン規制手段を前記ピニオン側に移動させ、ピニオンに当接させることで、ピニオンのリングギヤ側への移動を行うことができるので、ピニオンにピニオン規制手段を当接させるための伝達手段は、簡単な構成とすることができる。請求項4の手段によれば、伝達手段は、ピニオンにピニオン規制手段を当接させるためでよいことから、簡単な構成であるワイヤとすることができ、かつワイヤのために、取り回しも容易とすることができる。
【0009】
請求項5の手段によれば、前記ピニオン規制手段は、前記ピニオンの溝部に係合する規制部を有し、この規制部により、前記ピニオンのみを移動させており、従って、マグネットスイッチは、ピニオン規制手段の規制部を移動させるための僅かの吸引力を必要とするのみであるので、マグネットスイッチの全体の大きさを最小限におさえることができ、スタータの全体の軸方向長を少なくすることができる。
【0010】
請求項6の手段によれば、マグネットスイッチは、僅かの吸引力でよいために、1つのコイルのみで、このコイルへの電流供給により、前記プランジャを移動させることができるので、コイルの径方向の体格を小さくすることができ、全体として、マグネットスイッチの径方向長をおさえて、スタータ全体の軸方向長を少なくすることができる。
【0011】
請求項7の手段によれば、前記マグネットスイッチのプランジャが、装着されるエンジンのピストン運動方向と略同じ方向に沿って配置されることで、エンジンのピストンによる振動方向と、プランジャの移動方向が一致することで、マグネットスイッチ内のプランジャを摺動させるためのコイル内周に設けられたスリーブへの振動を軽減させて、長期に安定したマグネットスイッチを提供することができる。なお、エンジンのピストンによる振動により、プランジャが振動されたとしても、プランジャを押圧するスプリングにより、この振動を押さえるようにすることができる。
【0012】
請求項8の手段によれば、バッテリが接続される端子ボルトは、前記マグネットスイッチを覆うカバーに、反スタータモータ側に、略軸方向に突出するように装着することにより、バッテリを固定接点に接続するためのバッテリケーブルを、スタータモータの界磁極から離すことができ、スタータ作動時における、バッテリケーブル周囲の磁界により、界磁極の磁束を変化させ、スタータの出力を低下させることはなく、さらに、バッテリケーブルの取り付け面を、前記カバーの反スタータモータ側の端面より突出させることにより、バッテリケーブルを、周囲約360度方向から、固定端子に、容易に組付け可能であり、配線性に優れている。
【0013】
請求項9の手段によれば、マグネットスイッチの外周に設けられた突起部を、マグネットスイッチを覆うカバー、もしくはスタータモータに給電するブラシを保持するブラシ保持体に係合させて固定するので、マグネットスイッチが位置ずれすることはなく、強固に固定でき、マグネットスイッチ耐振性が向上する。請求項10の手段によれば、マグネットスイッチとブラシ保持体との間にマグネットスイッチを保持するマグネットスイッチ保持体を配設し、マグネットスイッチ保持体に凹部を設け、凹部にマグネットスイッチの外周を嵌着させるので、特に、垂直方向及び水平方向の振動に対して、耐振性が向上する。
【0014】
請求項11の手段によれば、マグネットスイッチの外周をブラシ保持体に固定された帯状係止部材で覆うので、マグネットスイッチを簡単に固定できるとともに、帯状係止部材でマグネットスイッチに加わる振動を吸収できる。請求項12の手段によれば、マグネットスイッチとブラシ保持体との間に弾性部材を配設したので、マグネットスイッチに加わる振動が容易に吸収できる。
【0015】
請求項13の手段によれば、マグネットスイッチは、エンドフレ−ムが、スタ−タモ−タのヨ−クの開口端に取り付けられ、さらにマグネットスイッチは、アーマチャの軸の反ピニオン側の端部よりさらに反ピニオン側に配置され、かつアーマチャの軸の軸方向の延長線上に配置されたコイルを備えることで、スタータモータの反ピニオン側の近傍に設けられるので、マグネットスイッチの外周をスタータモータの外周と実質的に同一とすることができ、スタータモータから径方向外周側に突出する部分を極力少なくして、スタ−タの径方向の体格を小さくすることができる。
【0016】
請求項14の手段によれば、マグネットスイッチの非作動時において、プランジャがスタータモータ外周より径方向内側に配設されているので、マグネットスイッチ内の重量物であるプランジャの重心が、ア−マチャの軸の中心方向に位置しており、スタータをハウジングのみを介してエンジンに取り付けていても、エンジンの振動がプランジャによって増幅されることを少なくすることができ、エンジンへの取り付けをなすスタータのハウジングや、マグネットスイッチを収納するエンドフレ−ムに至るまでの筒体全体への応力を低減することができる。
【0017】
また、請求項15の手段によれば、マグネットスイッチの外周をスタータモータの外周と実質的に同一とすることができ、スタータモータから径方向外周側に突出する部分を極力少なくして、スタ−タの径方向の体格を小さくすることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
次に、本発明装置スタータを、図1ないし図22に示す一実施例に基づき説明する。
スタータは、エンジンに配設されたリングギヤ100に噛み合うピニオン200や遊星歯車機構300を内包するハウジング400と、モータ500と、マグネットスイッチ600を内包するエンドフレーム700とに大別される。また、スタータの内部では、ハウジング400とモータ500との間がモータ隔壁800によって区画され、モータ500とエンドフレーム700との間がブラシ保持部材900によって区画されている。
【0019】
(ピニオン200の説明)
図1または図3に示すように、ピニオン200には、エンジンのリングギヤ100に噛合するピニオンギヤ210が形成されている。
ピニオンギヤ210の内周面には、出力軸220に形成されたヘリカルスプライン221に嵌まり合うピニオンヘリカルスプライン211が形成されている。
【0020】
ピニオンギヤ210の反リングギヤ側には、ピニオンギヤ210の外径寸法よりも大径なフランジ213が環状に形成されている。このフランジ213の外周には、全周に亘ってピニオンギヤ210の外歯枚数よりも多い凹凸214が形成されている。この凹凸214は、後述するピニオン回転規制部材230の規制爪231が嵌まり合うためのものである。ワッシャ215は、ピニオンギヤ210の後端に形成した円環部216を外周側へ曲げ込むことにより、フランジ213の後面において回転自在で、且つ軸方向へ抜けない構造としている。
【0021】
一方、ピニオンギヤ210は、圧縮コイルバネよりなるリターンスプリング240により、常に出力軸220の後方へ付勢されている。リターンスプリング240は、直接ピニオンギヤ210を付勢するのではなく、本実施例では、ハウジング400の開口部410を開閉する後述するシャッタ420のリング体421を介してピニオンギヤ210を付勢する。
【0022】
(ピニオン回転規制部材230の説明)
ピニオン回転規制部材230は、図2および図3(a),(b)に示すように、約3/2巻回した板バネ部材で、そのうち、約3/4巻回は、軸方向の板長の長い高いバネ定数の回転規制部232で、残りの約3/4巻回は、軸方向の板長の短い低いバネ定数の付勢手段をなす復帰バネ部233である。
【0023】
回転規制部232の一端には、ピニオンギヤ210のフランジ213に形成された多数の凹凸214に嵌まり合う軸方向にのびる規制部をなす規制爪231が設けられている。この規制爪231は、ピニオンギヤ210の凹凸214に嵌合するとともに、規制爪231の剛性を向上するために、軸方向に長く形成されるとともに、径方向内側に折り曲げられ、断面L字状に形成されている。(棒状となっている)
回転規制部232は、上下方向へ伸びる直線部235を備える。この直線部235は、センターブラケット360の前面に突出して設けられた2本の支持腕361によって上下方向へ摺動自在に支持される。つまり、直線部235が上下方向へ移動することにより、回転規制部232も上下方向へ移動する。
【0024】
また、回転規制部232の途中の曲率の下端(規制爪231の180°反対側の位置)には、後述するマグネットスイッチ600の作動を伝える後述する紐状部材680(例えば、ワイヤ)の前端の球体601が係合されている。
復帰バネ部233の端部側は、巻の曲率が大きく設けられ、復帰バネ部233の一端部236がセンターブラケット360の下部前面に突出して設けられた規制棚362の上面に当たっている。
【0025】
ピニオン回転規制部材230の作動を説明する。紐状部材680は、マグネットスイッチ600の作動を規制爪231に伝達する伝達手段で、マグネットスイッチ600の作動によって、回転規制部232を下方へ引き、規制爪231と、ピニオンギヤ210のフランジ213の凹凸214とを係合させる。その際、復帰バネ部233の一端部236が、位置の規制のための規制棚362に当接されており、復帰バネ部233がたわむこととなる。規制爪231がピニオンギヤ210の凹凸214に係合しているので、モータ500のアーマチャシャフト510及び遊星減速機構300を介して、ピニオンギヤ210を回転させようとすると、ピニオンギヤ210が出力軸220のヘリカルスプライン221に沿って、前進する。ピニオンギヤ210が、リングギヤ100に当接し、ピニオンギヤ210の前進が防止されると、出力軸210の更なる回動力により、ピニオン回転規制部材230自身がたわんで、ピニオンギヤ210がわずかに回動し、リングギヤ100に噛み合う。そして、ピニオンギヤ210が前進すると、規制爪231が凹凸214から外れ、規制爪231がピニオンギヤ210のフランジ213の後方に落ち込み、規制爪231の前端がワッシャ215の後面に当たり、ピニオンギヤ210がエンジンのリングギヤ100の回転を受けて後退するのを防ぐ。
【0026】
マグネットスイッチ600の作動が停止し、紐状部材680が回転規制部232を下方へ引くのを停止すると同時に、復帰バネ部233の作用で、回転規制部232が元の位置に復帰する。
ピニオン回転規制部材230は、単にピニオンギヤ210の回転を規制するだけの少ない力で保持されればよいため、マグネットスイッチ600により、紐状部材680を使用して、ピニオンギヤ210側に移動されることができ、これにより、マグネットスイッチ600の配置の自由度を増すことができる。
【0027】
(ピニオン係止リング250の説明)
ピニオン係止リング250は、出力軸220の周囲に形成された断面矩形の環状溝内に固定されている。このピニオン係止リング250は、断面矩形の鋼材を丸め加工して形成したもので、両端のそれぞれには、略S字状の凹凸251(係合手段の一例)が形成され、一方の凸部が他方の凹部に係合し、他方の凸部が一方の凹部に係合している。
【0028】
(遊星歯車機構300の説明)
遊星歯車機構300は、図1に示すように、後述するモータ500の回転数を減速して、モータ500の出力トルクを増大する減速手段である。遊星歯車機構300は、モータ500のアーマチャシャフト510(後述する)の前側外周に形成されたサンギヤ310と、このサンギヤ310に噛合し、このサンギヤ310の周囲で回転する複数のプラネタリーギヤ320と、このプラネタリーギヤ320をサンギヤ310の周囲で回転自在に支持し、出力軸220と一体形成されたプラネットキャリア330と、プラネタリーギヤ320の外周においてプラネタリーギヤ320と噛合する筒状で、かつ樹脂からなるインターナルギヤ340とからなる。
【0029】
(オーバーランニングクラッチ350の説明)
オーバーランニングクラッチ350は、インターナルギヤ340を、一方向のみ(エンジンの回転を受けて回転する方向のみ)回転可能に支持されている。オーバーランニングクラッチ350は、インターナルギヤ340の前側に一体形成された第1の円筒部をなすクラッチアウタ351と、遊星歯車機構300の前方を覆う固定側をなすセンターブラケット360の後面に形成され、クラッチアウタ351の内周と対抗して配置された第2の円筒部をなす環状のクラッチインナ352と、クラッチアウタ351の内周面に傾斜して形成されたローラ収納部に収納されるローラ353とを有している。
【0030】
オーバランニングクラッチ350は、出力軸220を軸受370を介して回転自在に支持するセンターブラケット360を利用しているので、軸方向長も長くすることをなし、小型化を計ることができる。
(センターブラケット360の説明)
センターブラケット360は、図4ないし図6に示すもので、ハウジング400の後側の内部に配置されている。ハウジング400とセンターブラケット360とは、一端がハウジング400に係止され、他端がセンターブラケット360に係止されたリングバネ390によって連結され、オーバーランニングクラッチ350を構成するクラッチインナ352の受ける回転反力をリングバネ390で吸収し、反力が直接ハウジング400に伝わらないように設けられている。
【0031】
また、センターブラケット360の前面には、ピニオン回転規制部材230を保持する2本の支持腕361と、ピニオン回転規制部材230の下端が搭載される規制棚362が設けられている。さらに、センターブラケット360の周囲には、ハウジング400の内側の凸部(図示しない)と嵌まり合う切欠部363が複数形成されている。なお、上側の切欠部363は、ハウジング400内の空気をヨーク501内へ導くための空気通路としても利用される。また、センターブラケット360の下端には、紐状部材680(後述する)を軸方向に挿通する凹部364が形成されている。
【0032】
プラネットキャリア330は、後端に、プラネタリーギヤ320を支持するために径方向に伸びるフランジ形突出部331を備える。このフランジ形突出部331には、後方に伸びるピン332が固定されており、このピン332がメタル軸受333を介してプラネタリーギヤ320を回転自在に支持している。
また、プラネットキャリア330は、前側端部がハウジング400の前端内部に固定されたハウジング軸受440と、センターブラケット360の内周の内側筒部365内に固定されたセンターブラケット軸受370とによって、回転自在に支持されている。
【0033】
このプラネットキャリア330は、内側筒部365の前端位置に環状溝334を備え、この環状溝334には、止め輪335が嵌め合わされている。この止め輪335と内側筒部365の前端との間には、プラネットキャリア330に対して回転自在に装着されたワッシャ336が設けられており、止め輪335がワッシャ336を介して内側筒部365の前端に当接することにより、プラネットキャリア330が後方に移動することが規制される。また、プラネットキャリア330の後側を支持するセンターブラケット軸受370の後端は、内側筒部365の後端と、フランジ形突出部331との間に挟まれるフランジ部371を備え、フランジ形突出部331がフランジ部371を介して内側筒部365の後端に当接することにより、プラネットキャリア330が前方に移動することが規制される。
【0034】
なお、プラネットキャリア330の後面には、軸方向に伸びる凹部337を備え、この凹部337内に配置されるプラネットキャリア軸受380を介してアーマチャシャフト520の前端を回転自在に支持している。
(ハウジング400の説明)
ハウジング400は、ハウジング400の前端内部に固定されたハウジング軸受440で出力軸220を軸支するとともに、開口部410からの雨水等の進入を極力低減するために、開口部410の下部においてハウジング400とピニオンギヤ210の外径との隙間を極力小さくする遮水壁460を備えている。また、ハウジング400の前端の下部には、軸方向に伸びる2つのスライド溝が設けられ、このスライド溝に後述するシャッタ420が配設される。そして、ハウジング400の取り付け部401が、エンジンブロックに取り付けら、結果としてスタ−タがエンジンに固定されることになる。
【0035】
(シャッタ420の説明)
シャッタ420の作動は、スタータが起動してピニオンギヤ210が出力軸220に沿って前方へ移動すると、リング体421がピニオンギヤ210とともに前方へ移動する。すると、リング体421と一体の遮水部422が前方へ移動し、ハウジング400の開口部410を開く。スタータの作動が停止してピニオンギヤ210が出力軸220に沿って後方へ移動すると、リング体421もピニオンギヤ210とともに後方へ移動する。すると、リング体421と一体の遮水部422も後方へ移動し、ハウジング400の開口部410を閉じる。この結果、開閉手段をなすシャッタ420は、スタータの非作動時には、リングギヤ100の遠心力等によって飛散する雨水等が遮水部422によってハウジング400内に進入するのを防ぐ。
【0036】
(シール部材430の説明)
シール部材430は、出力軸220の周囲をシールするもので、ハウジング400の開口部410より進入した雨水や塵等が、ハウジング400の前端のハウジング軸受440へ進入するのを阻止している。
(モータ500の説明)
モータ500は、ヨーク501、モータ隔壁800、後述するブラシ保持部材900に囲まれて構成される。なお、モータ隔壁800は、センターブラケット360との間で遊星歯車機構300を収納するもので、遊星歯車機構300内の潤滑油がモータ500に進入するのを防ぐ役目も果たす。
【0037】
モータ500は、図1に示すように、アーマチャシャフト510、このアーマチャシャフト510に固定されて一体に回転する電機子鉄心520および電機子コイル530から構成されるアーマチュア540と、アーマチュア540を回転させる固定磁極550とから構成され、固定磁極550はヨーク501の内周に固定される。
【0038】
(アーマチャシャフト510の説明)
アーマチャシャフト510は、プラネットキャリア330の後内部のプラネットキャリア軸受380、およびブラシ保持部材900の内周に固着されたブラシ保持部材軸受564によって回転自在に支持される。このアーマチャシャフト510の前端は、遊星歯車機構300の内側に挿通されるとともに、上述のように、アーマチャシャフト510の前端外周には遊星歯車機構300のサンギヤ310が形成されている。
【0039】
(電機子コイル530の説明)
電機子コイル530は、本実施例では複数(例えば25本)の上層コイルバー531と、この上層コイルバー531と同数の下層コイルバー532とを用い、それぞれの上層コイルバー531と下層コイルバー532とを径方向に積層した2層巻コイルを採用する。そして、各上層コイルバー531と各下層コイルバー532とを組み合わせ、各上層コイルバー531の端部と各下層コイルバー532の端部とを電気的に接続して環状のコイルを構成している。
【0040】
(上層コイルバー531の説明)
上層コイルバー531は、電導性に優れた材質(例えば銅)よりなり、固定磁極550に対して平行に伸び、スロット524の外周側に保持される上層コイル辺533と、この上層コイル辺533の両端から内側に曲折され、アーマチャシャフト510の軸方向に対して垂直方向に伸びる2つの上層コイル端534とを備える。なお、上層コイル辺533および2つの上層コイル端534は、冷間鋳造によって一体成形したものであっても、プレスによってコ字状に曲折して形成したものであっても、別部品で形成した上層コイル辺533と2つの上層コイル端534とを溶接等の接合技術で接合して形成したものであっても良い。
【0041】
上層コイル辺533は、図8ないし図10に示すように、断面矩形の直線状の棒で、図11に示すように、周囲が上層絶縁フィルム(例えばナイロン等の樹脂薄膜や紙)に覆われた状態で、後述する下層コイル辺536とともに、スロット524内に強固に収容される。
図10に示す如く、2つの上層コイル端534のうち、一方の上層コイル端534は、回転方向に対して前進側に傾斜して設けられ、他方の上層コイル端534は、回転方向に対して後退側に傾斜して設けられている。2つの上層コイル端534の径方向に対する傾斜角は、上層コイル辺533に対して同一の傾斜角で、且つ2つの上層コイル端534は、同一の形状に設けられている。これによって、上層コイルバー531を中心に180°反転させても、上層コイルバー531は反転前と同一の形状となる。つまり、2つの上層コイル端534には区別がないため、上層コイルバー531を電機子鉄心520に組付ける際の作業性に優れる。
【0042】
2つの上層コイル端534のうち、マグネットスイッチ600側に位置する上層コイル端534は、後述するブラシ910と直接当接して電機子コイル86を通電する。そのため、少なくともブラシ910が当接する上層コイル端534の表面は、平滑に処理されている。本実施例のスタータは、電機子コイル530を通電するための独立した整流子を設ける必要がない。つまり、独立した整流子が不要となるため、部品点数を低減することができるとともに、スタータの製造工程を少なくでき、製造コストを抑えることができる。また、独立した整流子をスタータ内に配置する必要がなくなることにより、スタータの軸方向の体格を小型化できる効果も生じる。
【0043】
(下層コイルバー532の説明)
下層コイルバー532は、上層コイルバー531と同様、電導性に優れた材質(例えば銅)よりなり、固定磁極550に対して平行に伸び、スロット524の内側に保持される下層コイル辺536と、この下層コイル辺536の両端から内側に曲折され、シャフト510の軸方向に対して垂直方向に伸びる2つの下層コイル端537とを備える。なお、下層コイル辺536および2つの下層コイル端537は、上層コイルバー531と同様、冷間鋳造によって一体成形したものであっても、プレスによってコ字状に曲折して形成したものであっても、別部品で形成した下層コイル辺536と2つの下層コイル端537とを溶接等の接合技術で接合して形成したものであっても良い。
【0044】
なお、各上層コイル端534と各下層コイル端537との絶縁は、絶縁スペーサ560によって確保され、各下層コイル端537と電機子鉄心520との絶縁は、樹脂製(例えばナイロンやフェノール樹脂)の絶縁リング590によって確保される。
下層コイル辺536は、図8および図11に示すように、断面矩形の直線状の棒で、図7に示すように、上層コイル辺533とともに、スロット524内に強固に収容される。なお、下層コイル辺536は、上層絶縁フィルムで覆われた上層コイル辺533とともに、下層絶縁フィルム(例えばナイロンや紙)で覆われた状態で、スロット524内に収容される。
【0045】
両端の下層コイル端537の内周端部には、軸方向に伸びる下層内部延長部539を備える。この下層内部延長部539の外周面は、絶縁スペーサ560の内周に形成された凹部562に嵌まり合うとともに、上層コイル端534の端部の上層内部延長部538の内周に重ね合わされ、溶接等の接合技術で電気的、且つ機械的に接続される。なお、下層内部延長部539の内周面は、アーマチャシャフト510に対して離れて絶縁配置される。
【0046】
また、2つの上層コイル端534の内周端部には、軸方向に伸びる上層内部延長部538を備える。この上層内部延長部538の内周面は、前述した下層コイルバー532の内端に設けられた下層内部延長部539の外周に重ね合わされ、溶接等の接合技術で電気的、且つ機械的に接続される。また、上層内部延長部538の外周面は、アーマチャシャフト510に圧入固定された固定部材570の外周環状部571の内面に、絶縁キャップ580を介して当接する。
【0047】
(絶縁スペーサ560の説明)
絶縁スペーサ560は、樹脂製(例えばエポキシ樹脂、フェノール樹脂、ナイロン)の薄板リングで、図12に示すように、外周側に各上層コイル端534の突起534aが嵌め合わされる複数の穴561が形成されている。また、絶縁スペーサ560の内周には、下層コイル端537の内側の下層内部延長部539が嵌め合わされる凹部562が形成されている。この絶縁スペーサ560の穴561および凹部562は、後述するように、電機子コイル530の位置決め、および固定に用いられる。
【0048】
(固定部材570の説明)
固定部材570は、鉄製の環状体で、図13に示すように、アーマチャシャフト510に圧入される内周環状部572と、上層コイル端534および下層コイル端537が軸方向に広がるのを阻止する軸方向に垂直に伸びる規制リング573と、上層コイル端534の上層内部延長部538を内包して、電機子コイル530の内径が、遠心力によって広がるのを防ぐ外周環状部571とから構成される。なお、この固定部材570は、上層コイル端534および下層コイル端537との絶縁を確保するために、上層コイル端534および下層コイル端537との間に、図14に示す樹脂製(例えばナイロン)の円盤状の絶縁キャップ580を介在させている。
【0049】
アーマチャ540においては、電機子コイル530を構成する上層コイルバー531の両端の上層コイル端534、および下層コイルバー532の両端の下層コイル端537が、それぞれアーマチャシャフト510の軸方向に対して、垂直に設けられているため、アーマチャ540の軸方向寸法を短くできるため、モータ500の軸方向寸法も短くでき、この結果、スタータを従来に比較して小型化できる。
【0050】
そして、本実施例では、モータ500の軸方向寸法の短縮スペースと、独立した整流子を廃止することによって生じた短縮スペースとに、マグネットスイッチ600を配置したため、従来に比較してスタータの軸方向寸法は大して変わらないものの、従来ではモータ500の上方に搭載されていたマグネットスイッチ600のスペースが不要となるため、スタータの占める体積を、従来に比較して飛躍的に小さくすることができる。
【0051】
(固定磁極550の説明)
固定磁極550は、本実施例では永久磁石を用いたもので、図15に示すように、複数(例えば6つ)の主磁極551と、この主磁極551の各間に配置される極間磁極552とから構成される。なお、固定磁極550として永久磁石の代わりに通電によって磁力を発生するフィールドコイルを用いても良い。
【0052】
主磁極551は、上述したヨーク501の凹溝502の内側の両端によって、位置決めがなされ、各主磁極551の間に極間磁極552を配置した状態で、固定磁極550の内周に配置される固定スリーブ553によって、ヨーク501の内部に固定される。
(マグネットスイッチ600の説明)
マグネットスイッチ600は、図1、図16および図17に示すように、後述するブラシ保持体900に保持されて、後述するエンドフレーム700内に配置され、アーマチャシャフト510に対して略垂直方向になるように固定されている。
【0053】
マグネットスイッチ600は、通電によって、プランジャ610を上方へ駆動し、プランジャ610と一体に移動する2つの接点(下側可動接点611と上側可動接点612)を、順次、端子ボルト620の頭部621および固定接点630の当接部631に当接させるものである。なお、端子ボルト620には、図示されないバッテリケーブルが接続されている。
【0054】
マグネットスイッチ600は、磁性体製(例えば鉄製)の有底筒状のマグネットスイッチカバー640の内側に構成されている。マグネットスイッチカバー640は例えば軟鋼板をカップ状にプレス成形したもので、マグネットスイッチカバー640の底の中央には、プランジャ610を上下方向に移動自在に挿通する穴641を備える。また、マグネットスイッチカバー640の上側開口は、磁性体製(例えば鉄製)のステーショナリコア642によって塞がれている。
ステーショナリコア642は、上側の大径部643と、下側の中径部644と、さらに下側の小径部645とからなり、大径部643の外周が、マグネットスイッチカバー640の上端を内側へカシメることによって、ステーショナリコア642がマグネットスイッチカバー640の上側開口内に固定されている。中径部644の周囲には、吸引コイル650の上端が装着されている。ステーショナリコア642の小径部645の外周には、プランジャ610を下方に付勢する圧縮コイルバネ660の上端が装着されている。
【0055】
吸引コイル650は、通電を受けると磁力を発生して、プランジャ610を引きつける吸着手段で、吸引コイル650は、上端がステーショナリコア642の中径部644に装着され、プランジャ610を上下方向に摺動自在に覆うスリーブ651を備える。このスリーブ651は、非磁性体(例えば銅板、真鍮、ステンレス)の薄板を丸めて加工したもので、このスリーブ651の上端および下端には、樹脂等よりなる絶縁ワッシャ652が設けられている。この2つの絶縁ワッシャ652の間のスリーブ651の周囲には、薄い樹脂(例えばセロハン、ナイロンフィルム)や紙などよりなる絶縁フィルム(図示しない)が巻かれ、さらにその絶縁フィルムの周囲に細いエナメル線を所定回数、巻いて吸引コイル650が構成されている。図1、図19、および図21の図示から明らかに理解されるように、マグネットスイッチ600が備える吸引コイル(コイル)650は、アーマチャ540のアーマチャシャフト(軸)510の反ピニオン側の端部よりさらに反ピニオン側に配置され、かつアーマチャ540のアーマチャシャフト(軸)510の軸方向の延長線上に配置されている。
【0056】
プランジャ610は、磁性体製金属(例えば鉄)で、上側の小径部613と下側の大径部614とを備える略円柱形状を呈する。小径部613は、圧縮コイルバネ660の下端が装着され、比較的軸方向に長い大径部614は、スリーブ651内において上下方向に移動可能に保持される。
プランジャ610の上側には、プランジャ610の上方へ伸びるプランジャシャフト615が固定されている。このプランジャシャフト615は、ステーショナリコア642の中央に設けられた貫通穴から上方に突出している。このプランジャシャフト615のステーショナリコア642の上側には、上側可動接点612がプランジャシャフト615に沿って上下方向に摺動自在に挿通されている。この上側可動接点612は、図16に示すように、プランジャシャフト615の上端に取り付けられた止め輪616によって、プランジャシャフト615の上端より上方に移動しないように規制されている。この結果、上側可動接点612は、止め輪616とステーショナリコア642の間においてプランジャシャフト615に沿って上下方向に摺動自在とされている。なお、上側可動接点612は、プランジャシャフト615に取り付けられた板バネよりなる接点圧スプリング670によって、常に上方へ付勢されている。
【0057】
上側可動接点612は、銅など導電性に優れた金属よりなり、上側可動接点612の両端が上側に移動した際、固定接点630に設けられた2つの当接部631に当接する。また、上側可動接点612には、一対のブラシ910の各リード線910aが、カシメや溶接等によって、電気的、且つ機械的に固定されている。さらに、上側可動接点612の溝部には、複数(本実施例では2つ)の制限手段をなす抵抗体617の端部が、挿入され、電気的、且つ機械的に固定されている。
【0058】
なお、上側可動接点612には、ブラシ910の各リード線910aが、カシメや溶接等によって電気的、且つ機械的に固定されているが、上側可動接点612とブラシ910の各リード線910aとを一体形成しても良い。
抵抗体617は、スタータの起動初期時に、モータ500の回転を低速回転させるためのもので、抵抗値の大きな金属線を複数巻いて構成されている。抵抗体617の他端には、端子ボルト620の頭部621の下側に位置する下側可動接点611がカシメ等によって固定されている。
【0059】
下側可動接点611は、銅など導電性に優れた金属よりなり、マグネットスイッチ600が停止して、プランジャ610が下方に位置する際にステーショナリコア642の上面に当接し、抵抗体617がプランジャシャフト615の移動に伴って上方に移動する際、上側可動接点612が固定接点630の当接部631に当接する前に、端子ボルト620の頭部621に当接するように設けられている。
【0060】
プランジャ610の下面には、紐状部材680(例えば、ワイヤ)の後端に設けられた球体681を収容する凹部682を備える。この凹部682の内周壁には、雌ネジ683が形成されている。この雌ネジ683は、凹部682内に球体681を固定する固定ネジ684が螺合される。この固定ネジ684は、雌ネジ683へのねじ込み量を調節することにより、紐状部材680の長さの調節も行うものである。なお、紐状部材680の長さ調節は、プランジャシャフト615が上方へ移動して、下側可動接点611が端子ボルト620に当接する際に、ピニオン回転規制部材230の規制爪231が、ピニオンギヤ210の外周の凹凸214に嵌まり合うように調節される。なお、雌ネジ683と固定ネジ684は調整機構をなす。
【0061】
このような構成にすれば、マグネットスイッチ600のプランジャ610の移動に対し、紐状部材680を介して、ピニオン回転規制部材230をピニオンギヤ210側に移動させているので、従来のリンク機構及びレバー等を必要とせず、部品点数を少なくすることができ、さらに、ピニオン規制部材230がピニオンギヤ210の後方から移動できなくなったとしても、紐状部材680自身のたわみにより、プランジャ610が元の位置に戻り、上側可動接点612及び下側可動接点611が固定接点630から離れることができる。
【0062】
また、ピニオン回転規制部材230の規制爪231を、ピニオンギヤ210に設けた凹凸214に係合させるのみでよいので、紐状部材680によって、確実にこの規制爪231を移動させることができる。
紐状部材680をワイヤとすることで、耐久性を高めることができる。
また、雌ネジ683と固定ネジ684からなる調整機構をプランジャ610と紐状部材680との間に配置し、固定ネジ684を雌ネジ683にねじ込むことにより、紐状部材680の長さを容易に決定することができる。
【0063】
さらに、マグネットスイッチ600のプランジャシャフト615が略垂直方向に配設されているので、マグネットスイッチ600のプランジャシャフト615を軸方向に配設した場合に比較して、スタータの軸方向寸法を短縮することができるとともに、紐状部材680を引っ張るのに必要なプランジャシャフト615のストロークが小さく設定でき、さらなるマグネットスイッチ600の小型化が図れる。
【0064】
また、マグネットスイッチ600は、プランジャシャフト615の軸方向に対し、直交して配置されているため、マグネットスイッチ600の径方向長のみが、スタータ全体の軸方向長に加算されるのみで、スタータ全体の体格を大きくすることもない。
なお、上側可動接点612、及び下側可動接点611とプランジャ610との間にはステーショナリコア642が配設されているので、上側可動接点612、及び下側可動接点611が固定接点630に当接する時、即ち、接点開閉時、発生する接点粉がプランジャ610とスリーブ651との間に侵入することを防止して、プランジャ610の摺動性を良好に保ち、その結果、スタータの耐久性を向上させることができる。
【0065】
なお、スタータがエンジンに取付けられた際、マグネットスイッチカバー640の底の中央に設けられた穴641、即ち、プランジャ610を上下方向に移動自在に挿通する穴641を、天方向側より少なくとも地方向側に向ければ、例え、プランジャ610とステーショナリコア642間に、接点粉、その他の異物が侵入したとしても、排出されやすい。
【0066】
(エンドフレーム700の説明)
エンドフレーム700は、図18に示すように、樹脂製(例えばフェノール樹脂)のマグネットスイッチカバーで、内部にマグネットスイッチ600を収容する。エンドフレーム700の後面には、ブラシ910を前方へ付勢する圧縮コイルバネ914を保持するバネ保持柱710が、ブラシ910の位置に応じて前方に突出して設けられている。
【0067】
さらに、圧縮コイルバネ914は、図1に示すように、マグネットスイッチ600のプランジャ610の軸方向に対し、径方向の外周側に配置されている。
端子ボルト620は、エンドフレーム700の内部から挿入され、エンドフレーム700の後方に突出する鉄製のボルトで、前側にはエンドフレーム700の内面に当接する頭部621を備える。そして、エンドフレーム700の後方に突出した端子ボルト620にカシメワッシャ622が取りつけられることによって、端子ボルト620がエンドフレーム700に固定される。端子ボルト620の前端には、銅よりなる固定接点630がカシメによって固定されている。固定接点630は、エンドフレーム700の内部上端に位置する1つまたは複数(本実施例では2つ)の当接部631を備え、この当接部631の下面は、マグネットスイッチ600の作動によって上下する上側可動接点612の上面が当接可能に設けられている。
【0068】
さらに、圧縮コイルバネ914のスプリング長が、マグネットスイッチ600の径方向の長さ分まで利用することができ、適正なバネ応力および荷重を設定することができ、圧縮コイルバネ914の寿命を大幅に向上することができる。
さらに、圧縮コイルバネ914は、マグネットスイッチ600の外周側のスペースを有効に利用しているので、圧縮コイルバネ914の長さが、スタータの軸方向長に付加されることなく、スタータ全体の短縮を図ることができる。
【0069】
(ブラシ保持体900の説明)
ブラシ保持体900は、ヨーク501の内部とエンドフレーム700の内部とを区画してアーマチャシャフト510の後端をブラシ保持体軸受564を介して回転自在に支持する役目のほか、ブラシホルダの役目、マグネットスイッチ600を保持する役目、および紐状部材680を案内する滑車690を保持する役目を果たす。なお、ブラシ保持体900には、紐状部材680が通る図示されない穴部を有している。
【0070】
ブラシ保持体900は、アルミニウム等の金属を鋳造技術によって成形した隔壁で、図19ないし図21に示すように、ブラシ910を軸方向に保持するブラシ保持穴911、912を複数(本実施例では上側に2つ、下側に2つ)備える。上側のブラシ保持穴911は、プラス電圧を受けるブラシ910を保持する穴で、この上側のブラシ保持穴911は、樹脂製(例えばナイロン、フェノール樹脂)の絶縁筒913を介してブラシ910を保持する(図20は図19のAーA断面図であり、図21は図19のBーB断面図である)。また、下側のブラシ保持穴912は、アース接地されるブラシ910を保持する穴で、この下側のブラシ保持穴912は、穴の内部で直接ブラシ910を保持する。
【0071】
このように、ブラシ保持体900によって、ブラシ910を保持させることにより、スタータに独立したブラシホルダを設ける必要がない。このため、スタータの部品点数を低減し、組付工数を低減することができる。
ブラシ910は、圧縮コイルバネ914によって、前端面が電機子コイル530の後側の上層コイル端534の後面に付勢される。
【0072】
なお、上側のブラシ910のリード線910aは、マグネットスイッチ600によって移動する上側可動接点612に溶接やカシメ等の接合技術で電気的、且つ機械的に結合されている。また、下側のブラシ910のリード線910aは、ブラシ保持体900の後面に形成された凹部920内にカシメられて、電気的、且つ機械的に結合されている。なお、本実施例では、下側のブラシ910が1対設けられており、1本のリード線910aに1対の下側のブラシ910が接合されており、リード線910aの中央がブラシ保持体900の後面の凹部920内にカシメられている。
【0073】
ブラシ保持体900の後面には、マグネットスイッチ600の前面側が当接する2つの台座930と、マグネットスイッチ600の周囲を抱え込む2本の固定柱940が形成されている。
台座930は、外径が円筒形状を呈するマグネットスイッチ600と当接するために、マグネットスイッチ600の外形形状と一致するように設けられている。また、2本の固定柱940は、マグネットスイッチ600を台座930に当接した状態で、それぞれの後端を内側にカシメることで、マグネットスイッチ600を保持している。
【0074】
ブラシ保持体900の後面の下側には、紐状部材680の移動方向を、マグネットスイッチ600の上下方向から軸方向に変換する滑車690を保持する滑車保持部950が形成されている。
〔実施例の作動〕
次に、上記スタータの作動を図22(a)ないし(c)の電気回路図に従い、説明する。
【0075】
乗員によって、キースイッチ10がスタート位置に設定されると、バッテリ20から、マグネットスイッチ600の吸引コイル650に通電される。吸引コイル650が通電されると、吸引コイル650の発生する磁力にプランジャ610が引き寄せられ、プランジャ610が下方位置から上方へ上昇する。
プランジャ610が上昇を開始すると、プランジャシャフト615の上昇に伴って上側可動接点612および下側可動接点611が上昇するとともに、紐状部材680の後端も上方に上昇する。紐状部材680の後端が上昇すると、紐状部材680の前端は下方に引かれ、ピニオン回転規制部材230が下降する。ピニオン回転規制部材230の下降によって、規制爪231がピニオンギヤ210の外周の凹凸214に嵌まり合う時点で、下側可動接点611が端子ボルト620の頭部621に当接する(図22(a)参照)。端子ボルト620には、バッテリ20の電圧が印加されており、端子ボルト620の電圧が、下側可動接点611→抵抗体617→上側可動接点612→リード線910aを介して上側のブラシ910に伝えられる。つまり、抵抗体617を介した低電圧が上側のブラシ910を介して電機子コイル530に伝えられる。そして、下側のブラシ910は、ブラシ保持体900を介して常にアース接地されているため、各上層コイルバー531と各下層コイルバー532とを組み合わせてコイル状に構成された電機子コイル530が低電圧で通電される。すると、電機子コイル530が比較的弱い磁力を発生し、この磁力が固定磁極550の磁力に作用(吸着あるいは反発)して、アーマチャ540が低速回転する。
【0076】
アーマチャシャフト510が回転すると、遊星歯車機構300のプラネタリーギヤ320が、アーマチャシャフト510の前端のサンギヤ310によって回転駆動される。プラネタリーギヤ320がプラネットキャリア330を介してリングギヤ100を回転駆動する方向の回転トルクをインターナルギヤ340に与える場合は、オーバーランニングクラッチ350の作動によって、インターナルギヤ340の回転が規制される。つまり、インターナルギヤ340は回転しないため、プラネタリーギヤ320の回転によって、プラネットキャリア330が減速回転する。プラネットキャリア330が回転すると、ピニオンギヤ210も回転しようとするが、ピニオンギヤ210はピニオン回転規制部材230によって回転が規制されているため、ピニオンギヤ210は出力軸220のヘリカルスプライン221に沿って前進する。
【0077】
ピニオンギヤ210の前進に伴い、シャッタ420も前進し、ハウジング400の開口部410を開く。そして、ピニオンギヤ210の前進によって、ピニオンギヤ210がエンジンのリングギヤ100に完全に噛合し、その後、ピニオン係止リング250に当接する。また、ピニオンギヤ210が前進すると、規制爪231がピニオンギヤ210の凹凸214から外れ、その後、規制爪231の前端が、ピニオンギヤ210の後面に設けられたワッシャ215の後側に落ち込む。
【0078】
一方、ピニオンギヤ210が前進した状態で、上側可動接点612が固定接点630の当接部631に当接する。すると、端子ボルト620のバッテリ電圧が、上側可動接点612→リード線910aを介して直接上側のブラシ910に伝えられる。つまり、各上層コイルバー531および各下層コイルバー532よりなる電機子コイル530に高い電流が流れ、電機子コイル530が強い磁力を発生し、アーマチャ540を高速回転する。
【0079】
アーマチャシャフト510の回転は、遊星歯車機構300によって減速されて回転トルクが増大し、プラネットキャリア330を回転駆動する。このとき、ピニオンギヤ210は、前端がピニオン係止リング250に当接して、プラネットキャリア330と一体に回転する。そして、ピニオンギヤ210は、エンジンのリングギヤ100に噛合しているため、ピニオンギヤ210は、リングギヤ100を回転駆動して、エンジンの出力軸を回転駆動する。
【0080】
次に、エンジンが始動し、エンジンのリングギヤ100がピニオンギヤ210の回転よりも速く回転すると、ヘリカルスプラインの作用によって、ピニオンギヤ210に後退力が生じる。しかるに、ピニオンギヤ210の後方に落ち込んだ回転規制爪231によって、ピニオンギヤ210の後退が阻止され、ピニオンギヤ210の早期離脱を防止して、エンジンを確実に始動することができる(図22(b)参照)。
【0081】
また、エンジンの始動によって、エンジンのリングギヤ100がピニオンギヤ210の回転よりも速く回転されると、リングギヤ100の回転によってピニオンギヤ210が回転駆動される。すると、リングギヤ100からピニオンギヤ210に伝えられた回転トルクは、プラネットキャリア330を介してプラネタリーギヤ320を支持するピン332に伝えられる。つまり、プラネットキャリア330によってプラネタリーギヤ320が駆動される。すると、インターナルギヤ340には、エンジン始動時とは逆回転のトルクがかかるため、オーバーランニングクラッチ350がリングギヤ100の回転を許す。つまり、インターナルギヤ340にエンジン始動時とは逆回転のトルクがかかると、オーバーランニングクラッチ350のローラ353が、クラッチインナ352の凹部355の外側へ離脱し、インターナルギヤ340の回転が可能になる。
【0082】
つまり、エンジンが始動して、エンジンのリングギヤ100がピニオンギヤ210を回転駆動する相対回転は、オーバーランニングクラッチ350で吸収され、エンジンによってアーマチャ540が回転駆動されることがない。
エンジンが始動すると、乗員によってキースイッチ10がスタート位置から外され、マグネットスイッチ600の吸引コイル650への通電が停止される。吸引コイル650の通電が停止されると、プランジャ610が圧縮コイルバネ660の作用によって、下方に戻される。
【0083】
すると、上側可動接点612が固定接点630の当接部631から離れるとともに、その後下側可動接点611も端子ボルト620の頭部621から離れ、上側のブラシ910への通電が停止する。
また、プランジャ610が下方に戻されると、ピニオン回転規制部材230の復帰バネ部236の作用によって、ピニオン回転規制部材230が上方に復帰し、規制爪231がピニオンギヤ210の後方から離脱する。すると、ピニオンギヤ210は、戻しバネ240の作用によって後方に戻され、ピニオンギヤ210とエンジンのリングギヤ100との噛み合いが外れるとともに、ピニオンギヤ210の後端が出力軸220のフランジ形突出部222に当接する。つまり、ピニオンギヤ210が、スタータの始動前に戻される(図22(c)参照)。
【0084】
さらに、プランジャ610が下方に戻されることにより、下側可動接点611が、マグネットスイッチ600のステーショナリコア642の上面に当接し、上側のブラシ910のリード線が、上側可動接点612→抵抗体617→下側可動接点611→ステーショナリコア642→マグネットスイッチカバー640→ブラシ保持体900の順に導通する。つまり、上側のブラシ910と下側のブラシ910とが、ブラシ保持体900を介して短絡する。一方、アーマチャ540の惰性回転により電機子コイル530には、起電力が生じる。そして、この起電力が、上側のブラシ910、ブラシ保持体900、下側のブラシ910を介して短絡するため、アーマチャ540の惰性回転に制動力が与えらえる。この結果、アーマチャ540は急速に停止する。
(実施例の効果)
本実施例のスタータは、マグネットスイッチ600を、スタータモータ500の反ピニオンギヤ210側の近傍で、かつスタータモータ500のアーマチャシャフト510に対してプランジャ610を直交して配置することにより、プランジャ610の移動について、スタータモータ500の直径分を有効に利用することができ、スタータモータ500の直径内で収納することができる。それによって、スタータモータ500からのマグネットスイッチ600の径方向への突出量を著しく低減することができ、スタ−タ全体の径方向の体格を最小限に押さえることができる。また、スタ−タの軸方向長は、マグネットスイッチ600の直径のみでよく、スタータ全体の軸方向長も少なくすることができる。
【0085】
そして、マグネットスイッチ600のプランジャ610自身の重心が、スタータモータ500の中心方向に位置しているため、エンジンからの振動がスタ−タに加わったときでも、エンジンの振動がプランジャ610、しいてはマグネットスイッチ600によって増幅されることを押さえることができ、エンジンへの取り付けをなすスタータのハウジング400の取り付け部401への応力を低減することができる。
【0086】
また、ピニオンギヤ210をリングギア100側に移動させるワイヤ680の一部を、モータの界磁極550間で軸方向に延びて配置することにより、構造が簡単で、かつ径方向への体格の広がりを防止することができる。
なお、本実施例では、上述したように、ワイヤ680の一部をモータの界磁極550間に配置したが、ヨーク501の外側、例えば、凹溝502の溝内に軸方向に延びて配置しても良く、同様な効果が得られる。
【0087】
さらに、プランジャ610の移動により、ワイヤ680を介して、ピニオン回転規制部材230をピニオンギヤ210側に移動させることで、ワイヤ680を利用する簡単な構成でピニオン回転規制部材230を移動させることができ、かつワイヤ680の取り回しも容易とすることができる。
また、ピニオン回転規制部材230は、ピニオンギヤ210の溝部213に係合する規制爪231を有し、この規制爪231により、ピニオンギヤ210のみを移動させていることで、マグネットスイッチ600の吸引力は、僅かで済み、そのために、吸引コイル650のターン数をおさえることができ、マグネットスイッチ600の径方向の大きさを最小限におさえることができ、スタータの全体の軸方向長を少なくすることができる。
【0088】
さらに、1つの吸引コイル650のみで、このコイル650への電流供給により、プランジャ610を移動させているので、コイルの直径を小さくすることができ、全体として、マグネットスイッチの径方向長をおさえて、スタータ全体の軸方向長を少なくすることができる。
そして、マグネットスイッチ600のプランジャ610が、装着されるエンジンのピストン方向と略同じ方向に沿って配置されることで、エンジンのピストンによる振動方向と、プランジャ610の移動方向が一致することで、マグネットスイッチ600内のプランジャ610を摺動させるためのコイル内周に設けられたスリーブ651への振動を軽減させて、長期に安定したマグネットスイッチを提供することができる。
【0089】
また、バッテリが接続される端子ボルト620は、マグネットスイッチ600を覆うカバー700に、反スタータモータ500側に、略軸方向に突出するように装着することにより、バッテリを端子ボルト620に接続するためのバッテリケーブルを、スタータモータ500の界磁極550から離すことができ、スタータ作動時における、バッテリケーブル周囲の磁界により、界磁極550の磁束を変化させ、スタータの出力を低下させることはない。
【0090】
さらに、端子ボルト620を略軸方向に突出させることで、バッテリケーブルの取り付け面を、カバー700の反スタータモータ側の端面より突出させることができ、バッテリケーブルを、周囲約360度方向から、固定端子に、容易に組付け可能であり、配線性に優れている。
(他の実施例)
図23、図24は、実施例2であり、図23は実施例2を示すマグネットスイッチ600の固定状態を表す正面図であり、図24は、図23のXXIVーXXIV矢視断面図である。
【0091】
実施例2では、マグネットスイッチ600の外周に係合溝600aを設け、この係合溝600aに固定柱940を係合させ、固定柱940の先端部940aをマグネットスイッチ600の係合溝600a方向に割りかしめすることにより、マグネットスイッチ600がブラシ保持体900に固定させている。
次に、図25、図26は、実施例3であり、図25は実施例3を示すマグネットスイッチ600の固定状態を表す正面図であり、図26は、図25のXXVIーXXVI矢視断面図である。
【0092】
実施例3では、マグネットスイッチ600は、ブラシ保持体900の台座930に抱きかかえられるとともに、帯状係止部材1000により固定されている。この帯状係止部材1000は、帯状係止部材1000の側面から内周方向内側に向かって突出する位置決め突起1000aが設けられており、この位置決め突起1000aが、マグネットスイッチ600の外周に設けられたマグネットスイッチ位置決め係合溝600bに係合し、帯状係止部材1000(例えば、小径な鉄)のそれぞれの先端部1000bが台座930に設けたそれぞれの貫通穴930aに挿入され、内側に折り曲げてかしめられ、マグネットスイッチ600が帯状係止部材1000により固定されている。
【0093】
この構成によれば、マグネットスイッチ600の外周をブラシ保持体900
固定された帯状係止部材1000で巻装しているので、マグネットスイッチ600を簡単に固定できるとともに、帯状係止部材1000でマグネットスイッチ600に加わる振動を吸収できる。
次に、図27、図28は、実施例4であり、図27は実施例4を示すマグネットスイッチ600の固定状態を表す側面図であり、図28は、図27のマグネットスイッチ600の固定状態を示す断面図である。
【0094】
実施例4では、マグネットスイッチ600は、エンドフレーム700の内面に設けられたエンドフレーム位置決め係合溝700a(この場合4つの係合溝)に、マグネットスイッチ600の外周に設けられた第1の突起部600dを係合するとともに、マグネットスイッチ600の外形形状と一致するように形成したエンドフレーム台座700bにより固定され、さらに、マグネットスイッチ600とブラシ保持体900との間に弾性部材1100(例えば、ゴム)を配設することにより、強固にマグネットスイッチ600が固定される。
【0095】
マグネットスイッチ600とブラシ保持体900との間に弾性部材1100を配設したので、マグネットスイッチ600に加わる振動が容易に吸収できる。
次に、図29、図30は、実施例5であり、図29は実施例5を示すマグネットスイッチ600の固定状態を表す正面図であり、図30は、図29のXXXーXXX矢視断面図である。
【0096】
実施例5では、マグネットスイッチ600は、ブラシ保持体900の台座930に抱きかかえられるとともに、マグネットスイッチ600の外周に設けられた第1の突起部600dが台座930の貫通穴930aに係合し、さらに、エンドフレーム700側のマグネットスイッチ600の外周の一部が、エンドフレーム700側に向かって突出する第2の突起部600e(この場合、2つの第2の突起部)がエンドフレーム700の内面に当接し、第2の突起部600e自身の弾性により、マグネットスイッチ600が強固に固定されている。なお、この第2の突起部600eは、マグネットスイッチ600をエンドフレーム700に固定する際、各部材の寸法公差を吸収するものである。
【0097】
次に、図31ないし図33は、実施例6であり、図31は実施例6を示すマグネットスイッチ600の固定状態を表す側面図であり、図32は、図31のマグネットスイッチ600の固定状態を表す正面図であり、図33は、図32のXXXIII ーXXXIII 矢視断面図である。
実施例6では、エンドフレーム700側のマグネットスイッチ600の外周には、実施例5と同様にエンドフレーム700側に向かって突出する第2の突起部600eが設けられ、また、ブラシ保持体700側のマグネットスイッチ600の外周には、マグネットスイッチ保持体1200に設けられた溝部1200bと係合する第1の突起部600d(この実施例では、4つの第1の突起部)が配設されている。
マグネットスイッチ保持体1200は、ブラシ保持体700の環状部700cの外周に圧入固定されている。マグネットスイッチ600の外周はマグネットスイッチ保持体1200の凹部1200cに嵌合されている。
【0098】
マグネットスイッチ600は、マグネットスイッチ保持体1200に抱きかかえられ、マグネットスイッチ600の第1の突起部600dがマグネットスイッチ保持体1200の溝部1200bと係合するとともに、マグネットスイッチ600の第2の突起部600eがエンドフレーム700の内面に当接することにより、マグネットスイッチ700が強固に固定される。
【0099】
この構成によれば、マグネットスイッチ600とブラシ保持体900との間にマグネットスイッチ保持体1200を配設し、マグネットスイッチ600の外周をマグネットスイッチ保持体1200の凹部1200cで嵌着したので、特に、垂直方向及び水平方向の振動に対して、耐振性が向上する。
なお、この実施例では、マグネットスイッチ600に第2の突起部600eを設けたが、この第2の突起部600eのかわりに、マグネットスイッチ600とエンドフレーム700との間に、弾性部材を配設してもよい。
【0100】
上記実施例2ないし6のような構成にすることにより、マグネットスイッチ600が上記各種の部材に確実に固定されるので、マグネットスイッチ600の耐振性が大幅に向上できる効果がある。
(変形例)
上述した実施例1ないし6のように、マグネットスイッチ600の近傍には、モータ500に給電するブラシ910が配設され、このブラシ910とマグネットスイッチ600とを覆うエンドフレーム700(本発明で言うカバー)の内周面に向かって、ブラシ910に接続されたリード線910aが延びており、このリード線910aは、マグネットスイッチ600とエンドフレーム700の内周面との間のあいたスペースに配設されている。また、ブラシ910は、略矩形形状を有しており、リード線910aも含めた状態ですべて同一形状であり、リード線910aは、エンドフレーム700の径方向内周面に対向するブラシ910の端面に接続固定されている。
【0101】
上記構成により、マグネットスイッチ600の近傍には、モータ500に給電するブラシ910が配設され、このブラシ910とマグネットスイッチ600とを覆うエンドフレーム700の内周面に向かって、ブラシ910に接続されたリード線910aが延びているので、リード線910aがマグネットスイッチ600に干渉することなく、組み付けが容易である。
【0102】
さらに、リード線910aは、マグネットスイッチ600とエンドフレーム700の内周面との間のあいたスペースに配設されているので、このあいたスペースを有効に利用でき、カバーの径方向の体格も小型にできる。
また、ブラシ900はリード線910aも含めた状態ですべて同一形状であるので、正極、負極側によってブラシの形状を変更する必要はない。
【0103】
なお、上述した実施例においては、スタ−タモ−タ500のヨ−ク501と、マグネットスイッチ600のエンドフレーム700と同じ径としているが、マグネットスイッチ600の非作動時に、プランジャ610がスタ−タモ−タ500のヨ−ク501の外周よりも内側に配置されていれば、マグネットスイッチ600のプランジャ610自身の重心が、スタータモータ500の中心方向に位置することになり、エンジンからの振動がスタ−タに加わったときでも、エンジンの振動がプランジャ610、しいてはマグネットスイッチ600によって増幅されることを押さえることができ、エンジンへの取り付けをなすスタータのハウジング400の取り付け部401への応力を低減することができる。
【0104】
また、移動量の大きいプランジャ610の作動範囲が、スタ−タモ−タ500のヨ−ク501の外周よりも内側に配置されていれば、プランジャ610の移動はヨ−ク501の径を有効に利用することができ、よってマグネットスイッチ600の一部もしくはエンドフレーム700が、スタ−タモ−タ500のヨ−ク501から突出したとしても、突出する量をできる限り押さえることができる。
【0105】
さらに、上述した実施例においては、スタ−タモ−タ500のア−マチャシャフト510に対してプランジャ610が直交して配置されていたが、プランジャ610とア−マチャシャフト510とが、必ずしも交わる位置関係で配置されている必要はなく、ア−マチャシャフト510の軸方向の延長線から、プランジャ610がはずれて設けられてもよいことは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明スタータの実施例1を示す側面断面図である。
【図2】ピニオン回転規制部材の斜視図である。
【図3】(a)及び(b)は、ピニオン回転規制部材をピニオン部に組付けた際の正面図及び一部断面側面図である。
【図4】センターブラケットの後面図である。
【図5】センターブラケットの側面断面図である。
【図6】センターブラケットの正面図である。
【図7】アーマチャの側面断面図である。
【図8】上層コイルバーの側面図である。
【図9】上層コイルバーの正面図である。
【図10】上層コイルバーおよび下層コイルバーの配置状態を示す概略斜視図である。
【図11】スロット内に収容される上層コイル辺および下層コイル辺の断面図である。
【図12】絶縁スペーサの正面図である。
【図13】固定部材の側面断面図である。
【図14】絶縁キャップの正面図である。
【図15】ヨークの側面断面図である。
【図16】マグネットスイッチのプランジャーおよび固定接点の分解斜視図である。
【図17】マグネットスイッチのプランジャーを示す斜視図である。
【図18】エンドフレームおよびブラシスプリングを示す断面図である。
【図19】ブラシ保持体を示す正面図である。
【図20】図19のA−A線に沿う断面図である。
【図21】図19のB−B線に沿う断面図である。
【図22】(a)、(b)及び(c)は、ピニオンの作動状態を示してある、電気回路図である。
【図23】実施例2を示すマグネットスイッチ600の固定状態を表す正面図である。
【図24】図23のXXIVーXXIV矢視断面図である。
【図25】実施例3を示すマグネットスイッチ600の固定状態を表す正面図である。
【図26】図25のXXVIーXXVIIV矢視断面図である。
【図27】実施例4を示すマグネットスイッチ600の固定状態を表す側面図である。
【図28】図27のマグネットスイッチ600の固定状態を示す断面図である。
【図29】実施例5を示すマグネットスイッチ600の固定状態を表す正面図である。
【図30】図29のXXXーXXX矢視断面図である。
【図31】実施例6を示すマグネットスイッチ600の固定状態を表す側面図である。
【図32】図31のマグネットスイッチ600の固定状態を表す正面図である。
【図33】図32のXXXIII ーXXXIII 矢視断面図である。
【符号の説明】
1 ハウジング
2 モータ
3 ピニオン
5 マグネットスイッチ
6 リンク機構
7 リターンスプリング
24 回転軸
51a プランジャー
64 アーム
100 リングギア
210 ピニオン
214 凹凸部
220 出力軸
230 ピニオン回転規制部材
231 規制爪
233 復帰バネ部
400 ハウジング
500 モータ部
510 シャフト
550 固定磁極
600 マグネットスイッチ
600 第1の突起部(突起部)
600a 第2の突起部(突起部)
610 プランジャー
680 ワイヤ
682 凹部
684 固定ネジ
700 エンドフレーム(カバー)
900 ブラシ保持体
910 ブラシ
1000 帯状係止部材
1100 弾性部材
1200 マグネットスイッチ保持体
1200c 凹部
Claims (15)
- 複数の界磁極と、これら界磁極の内周に回転自在に設けられたスタータモータのアーマチャと、
このスタータモータのアーマチャの回転を伝えられる出力軸と、
この出力軸上に設けられ、エンジンのリングギアと噛み合うピニオンと、
固定接点と、この固定接点に当接する可動接点を有するプランジャとを有し、このプランジャの移動より、前記可動接点を前記固定接点に当接させて、前記スタータモータのアーマチャヘの通電を行うマグネットスイッチとを備え、
前記マグネットスイッチは、前記スタータモータの反ピニオン側の近傍で、前記スタータモータのアーマチャの軸に対して前記プランジャが直交し、かつ前記プランジャが前記スタータモータ外周より径方向内側において移動自在に配設され、さらに、
前記マグネットスイッチは、前記アーマチャの前記軸の前記反ピニオン側の端部よりさらに前記反ピニオン側に配置され、かつ前記アーマチャの前記軸の軸方向の延長線上に配置されたコイルを備えたことを特徴とするスタータ。 - 請求項1に記載のスタータにおいて、
前記マグネットスイッチが前記スタータモータ外周面より内側に配設されていることを特徴とするスタータ。 - 請求項1もしくは2に記載のスタータにおいて、
前記移動機構は、前記出力軸にヘリカルスプライン結合された前記ピニオンに当接し、前記ピニオンの回動を規制することで、前記出力軸の回転により、前記ピニオンを前記リングギア側に移動させるためのピニオン規制手段と、前記プランジャと前記ピニオン規制手段との間に設けられた伝達手段とを有し、前記プランジャの移動により、前記伝達手段を介して、前記ピニオン規制手段を前記ピニオン側に移動させることを特徴とするスタータ。 - 請求項3に記載のスタータにおいて、
前記伝達手段は、ワイヤであることを特徴とするスタータ。 - 請求項3に記載のスタータにおいて、
前記ピニオン規制手段は、前記ピニオンの溝部に係合する規制部を有し、この規制部により、前記ピニオンのみを移動させることを特徴とするスタータ。 - 請求項3ないし5のいずれかに記載のスタータにおいて、
前記マグネットスイッチには、前記プランジャの外周に配置された1つのコイルを有し、前記ピニオン規制手段を移動させるために、このコイルヘの電流供給により、前記プランジャを移動させ、前記可動接点を前記固定接点に当接させることを特徴とするスタータ。 - 請求項1ないし6のいずれかに記載のスタータにおいて、
前記マグネットスイッチのプランジャは、装着されるエンジンのピストン運動方向と略同じ方向に沿って配置されることを特徴とするスタータ。 - 請求項1ないし7のいずれかに記載のスタータにおいて、
前記固定接点を備えた、前記バッテリが電気的に接続される端子ボルトを有し、この端子ボルトは、前記エンドフレームの前記スタータモータの反ピニオン側に設けられていることを特徴とするスタータ。 - 請求項1ないし8のいずれかに記載のスタータにおいて、
前記マグネットスイッチの外周に設けられた突起部を、前記マグネットスイッチを覆うカバー、もしくは前記スタータモータに給電するブラシを保持するブラシ保持体に係合させて固定することを特徴とするスタータ。 - 請求項1ないし9のいずれかに記載のスタータにおいて、
前記マグネットスイッチと前記ブラシ保持体との間に前記マグネットスイッチを保持するマグネットスイッチ保持体を配設し、前記マグネットスイッチ保持体に凹部を設け、前記凹部に前記マグネットスイッチの外周を嵌着させることを特徴とするスタータ。 - 請求項1ないし9のいずれかに記載のスタータにおいて、
前記マグネットスイッチの外周を前記ブラシ保持体に固定された帯状係止部材で覆うことを特徴とするスタータ。 - 請求項1ないし9のいずれかに記載のスタータにおいて、
前記マグネットスイッチと前記ブラシ保持体との間に弾性部材を配設したことを特徴とするスタータ。 - 筒状のヨークと、このヨークの内周に設けられた複数の界磁極と、
これら界磁極の内周に回転自在に設けられたアーマチャとを有するスタータモータと、
このスタータモータのアーマチャの回転を伝えられる出力軸と、
この出力軸上に設けられ、エンジンのリングギアと噛み合うピニオンと、
励磁コイルと、この励磁コイルの内周に移動自在に設けられると共に、前記スタータモータの反ピニオン側の近傍で前記スタータモータのアーマチャの軸に対して直交して設けられたプランジャと、このプランジャに設けられた可動接点と、バッテリと接続された固定接点と、前記可動接点が当接する位置に前記固定接点が設けられると共に、前記励磁コイル、前記プランジャ、前記可動接点を収納するエンドフレームとを有するマグネットスイッチとを備え、
前記マグネットスイッチは、前記エンドフレームが、前記スタータモータのヨークの開口端に取り付けられることで、前記スタータモータの反ピニオン側の近傍に設けられると共に、前記プランジャの移動により、前記可動接点を前記固定接点に当接させて、前記バッテリから前記スタータモータのアーマチャヘの通電を行うように構成され、さらに、
前記マグネットスイッチは、前記アーマチャの軸の前記反ピニオン側の端部よりさらに前記反ピニオン側に配置され、かつ前記アーマチャの前記軸の軸方向の延長線上に配置されたコイルを備えることを特徴とするスタータ。 - 筒状のヨークと、このヨークの内周に設けられた複数の界磁極と、これら界磁極の内周に回転自在に設けられたアーマチャとを有するスタータモータと、
このスタータモータのアーマチャの回転を伝えられる出力軸と、
この出力軸上に設けられ、エンジンのリングギアと噛み合うピニオンと、
前記出力軸を回転自在に支持すると共に、前記ピニオンが前記リングギアと噛み合うための開口部と、前記エンジンに取り付けるための取り付け部とを有し、かつ前記スタータモータのヨークの開口端に取り付けられるハウジングと、
固定接点と、この固定接点に当接する可動接点を有するプランジャとを有し、このプランジャの移動より、前記可動接点を前記固定接点に当接させて、前記スタータモータのアーマチャヘの通電を行うマグネットスイッチとを備え、
前記マグネットスイッチは、前記スタータモータの反ピニオン側の近傍で、前記スタータモータのアーマチャの軸に対して前記プランジャが直交し、かつ前記マグネットスイッチの非作動時において、前記プランジャが前記スタータモータ外周より径方向内側に配設され、さらに、
前記マグネットスイッチは、前記アーマチャの前記軸の前記反ピニオン側の端部よりさらに前記反ピニオン側に配置され、かつ前記アーマチャの前記軸の軸方向の延長線上に配置されたコイルを備えたことを特徴とするスタータ。 - 請求項14に記載のスタータにおいて、
前記マグネットスイッチは、前記プランジャの可動接点が当接する位置に前記固定接点が設けられると共に、前記プランジャ、前記可動接点を収納するエンドフレームとを有し、
前記マグネットスイッチは、前記エンドフレームが、前記スタータモータのヨークの開口端に取り付けられることで、前記スタータモータの反ピニオン側の近傍に設けられることを特徴とするスタータ。
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