JP3572664B2 - 光学ガラス素子のプレス成形用型及び光学ガラス素子のプレス成形方法 - Google Patents
光学ガラス素子のプレス成形用型及び光学ガラス素子のプレス成形方法 Download PDFInfo
- Publication number
- JP3572664B2 JP3572664B2 JP12120794A JP12120794A JP3572664B2 JP 3572664 B2 JP3572664 B2 JP 3572664B2 JP 12120794 A JP12120794 A JP 12120794A JP 12120794 A JP12120794 A JP 12120794A JP 3572664 B2 JP3572664 B2 JP 3572664B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- thin film
- optical glass
- press
- mold
- alloy thin
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Images
Landscapes
- Re-Forming, After-Treatment, Cutting And Transporting Of Glass Products (AREA)
- Physical Vapour Deposition (AREA)
Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は光学ガラス素子の製造方法に関し、高精度な光学ガラス素子を、プレス成形する方法及びプレス成形する際に用いる光学ガラス素子のプレス成形用型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高精度な光学ガラス素子をプレス成形により、繰り返し成形するためには、型材料として高温でも安定で、耐酸化性に優れ、ガラスに対して不活性であり、プレスした時に形状精度が崩れないような機械的強度の優れたものが必要であるが、その反面、加工性に優れ、精密加工が容易にできなくてはいけない。
【0003】
以上のような光学ガラス素子のプレス成形用型に必要な条件を、ある程度満足する型材として、チタンカーバイド(TiC)及び金属の混合材料(例えば特開昭59−121126号公報)や超硬合金母材上に貴金属薄膜を形成したもの(例えば特開昭62−96331号公報)などが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の型材料では、上記の条件を全て満足するものは得られていない。
【0005】
例えば型材としてTiC及び金属の混合材料を用いた場合では、非常に硬く、機械的強度は優れているものの、加工性に劣り、高精度な加工が困難である。さらには、光学ガラス素子の構成成分である鉛(Pb)やアルカリ元素と反応しやすいという欠点を有している。
【0006】
また、超硬合金母材上に貴金属薄膜を形成した型では、超硬合金をダイヤモンド砥石を用いて加工を行うと、ダイヤモンド砥石の摩耗が激しく、精密な形状加工が困難であり、特別な加工装置が必要である。また、加工時間も長く、金型コストが非常に高いという問題があった。
【0007】
これらの改善策として超硬合金母材上に母材と密着性が良好な薄膜を形成し、さらに該薄膜上に容易に精密加工できる膜として例えば無電解Ni−Pめっき膜を形成し、保護膜として合金薄膜を形成する方法(例えば特開平3−23230号公報)が検討されている。
【0008】
しかしながらこの方法では無電解Ni−Pめっき膜の耐熱性が低く、高融点ガラスを成形することができないといった問題があった。
【0009】
以上のように、従来の型材料では前述の型材料としての必要条件を全て満足するには至っていない。
【0010】
本発明はこのような従来の課題を解消し、従来の研削加工では実現できなかった多種多様の形状を持った高融点光学ガラス素子を、繰り返しプレス成形することが可能なプレス成形用型及び光学ガラス素子のプレス成形方法を提供することを目的とする。
【0011】
この目的を達成するために、本発明ではWCを主成分とする超硬合金、TiCあるいはTiNを主成分とするサーメット、またはWC焼結体からなる母材上に切削加工層として、含有率が20〜80at%のSiと残りがNi、Co、Fe、Cu、Ti、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Osから選ばれる金属との合金薄膜を形成し、該加工層を切削加工により所望の形状に精密加工した後、該薄膜上に保護層としてPt、Pd、Ir、Rh、Os、Ru、Re、W、Taから選ばれる少なくとも1種類以上の金属を含む貴金属系合金薄膜を形成して構成される金型を作製することによって、多種多様な形状を持った高融点光学ガラス素子のプレス成形用型を提供し、この型を用いて高融点光学ガラスを繰り返しプレス成形することによって、従来プレス成形できなかった多種多様な形状を持った高融点光学ガラス素子を安価に、かつ大量に製造することを可能にしたものである。
【0012】
本発明では、型母材にWCを主成分とする超硬合金、TiCあるいはTiNを主成分とするサーメット、またはWC焼結体を用いることにより、プレス成形に充分耐える強度を持たせ、またこの母材表面に形成される切削加工層に含有率が20〜80at%のSiと残りがNi、Co、Fe、Cu、Ti、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Osから選ばれる金属との合金薄膜を用いることによって、耐熱性に優れ、容易に所望の形状に精密切削加工することを可能とした。
【0013】
さらに、この切削加工層上に形成される保護層としてPt、Pd、Ir、Rh、Os、Ru、Re、W、Taから選ばれる少なくとも1種類以上の金属を含む貴金属系合金薄膜を用いることによって、ガラスとの融着を防止したものである。
【0014】
従って、本発明の型は、前記した型材料として要求される必要条件を全て満足したものとなる。
【0015】
このようにして作製した本発明の型を用いて、ガラスをプレス成形すると、従来の研削加工では実現できなかった多種多様な形状を持った高融点光学ガラス素子を大量に製造することが可能となる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の一実施例について図1を参照しながら説明する。
【0017】
直径6mm、厚さ10mmのWCを主成分とする超硬合金を曲率半径が1mmの凹形状のプレス面を有する光学ガラスレンズのプレス成形用型13に放電加工により荒加工した。
【0018】
次に、このプレス面上に切削加工層12としてSi−Niをスパッタ法により15μmの厚みで形成した。Si−Niのスパッタ法としては、まず、10mm×10mmのSiチップを直径6インチのNiディスクターゲット上に72枚並べてSi−Niのターゲットとし、スパッタした。
【0019】
次にこのSi−Ni膜12をダイヤモンドバイトによる切削加工により非常に高精度な面に仕上げた。
【0020】
このようにSi−Ni合金薄膜を切削加工することによって、研削加工では従来作製が困難であった曲率半径1mmの凹面形状の金型を、容易に得ることができるようになった。
【0021】
次に該加工層上にスパッタ法により3μmの厚みでPt−Ir合金薄膜11をコーティングしてプレス成形用型を作製した。
【0022】
図1に示す成形型を図2に示したプレス成形機にセットする。図2において21は上型ヒーターブロック、22は上型用加熱ヒーター、23は図1で示す上型、24はガラス素材、25も同様に図1で示す下型、26は下型用加熱ヒーター、27は下型ヒーターブロック、28は覆い、29は胴型、210はプランジャー、211は位置決め用センサー、212はストッパーである。
【0023】
次に半径1mmの球状に加工した軟化点613℃の重クラウン系ガラス(SK−12)24を下型25の上に置き、その上に上型23を置いて、そのまま650℃まで昇温し、窒素雰囲気中で約40kg/cm2のプレス圧により2分間圧力を保持し、その後、そのままの状態で550℃まで冷却して、成形された光学ガラス素子を取り出して、光学ガラス素子のプレス成形の工程を完了する。
【0024】
光学ガラス素子を成形するには、以上の工程を1サイクル行う。以上の工程を繰り返して10000サイクル目のプレス時終了時に、上下の型23及び25をプレス成形機より取りはずして、プレス面の状態を光学顕微鏡で観察し、その時のプレス面の表面荒さ(RMS値、Å)を測定して、それぞれの型精度を評価した。Co、Fe、Cu、Ti、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Osについても同様の試料を作製し、同様の評価を行った。これらの結果を(表1)の試料No2〜37に示した。
【0025】
本実施例に対する比較例として、超硬合金母材上に切削加工層として無電解めっき法によってNi−P膜を形成し、保護膜としてPt−Ir合金薄膜をコーティングした型について図1と同様な形状の型を作製し、これを図2に示したプレス成形機にセットし、上述のプレス成形の工程を繰り返し行い、同様の型精度の評価を行った。この結果を(表2)に示した。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
比較例における試料No.1のように切削加工層に無電解Ni−Pめっき膜を成膜し、Pt−Ir合金薄膜でコーティングした型は、ガラス付着は起こらないが、100回のプレス成形によってめっき膜の亀裂が進行し、その亀裂がレンズに転写しそれ以上プレス成形することはできなかった。
【0029】
これは切削層のNi−Pの耐熱性が悪いために、高融点ガラスのプレス成形時の熱サイクルに、Ni−Pが耐えきれなくなるためである。
【0030】
一方、試料No2〜37の本実施例の型は、繰り返し10000回プレスした時でも、表面状態はほとんど変化せず、表面粗さはほとんどプレス前と変化がなく、SK−12のような高融点ガラスを繰り返し成形することがわかる。
【0031】
すなわち、本実施例の方法で得られたプレス成形用型を用いてガラスをプレス成形することによって、研削加工では困難な形状の高融点光学ガラス素子を大量にプレス成形することが可能となった。
【0032】
以上のように、本発明の型は前述した高精度な光学ガラス素子を直接プレス成形するための必要条件を全て満たし、これまで成形で作製できなかった形状の高融点光学ガラス素子を、大量にプレス成形することが可能となった。
【0033】
なお、本発明を説明するために、実施例においてプレス成形用型の母材として、WCを主成分とする超硬合金を用いたが、TiNあるいはTiCを主成分とするサーメットあるいはWC焼結体を母材に用いてもまったく同様の結果が得られた。
【0034】
また保護膜については、実施例においてPt−Irを用いたがその他のPt、Pd、Ir、Rh、Os、Ru、Re、W、Taから選ばれる少なくとも1種類以上の金属を含む貴金属系合金薄膜を用いてもまったく同様の結果が得られた。
【0035】
さらに、本実施例では曲率半径1mmの凹面形状の金型の作製について述べたが、従来研削では加工が困難な形状、例えば軸非対称レンズやマイクロプリズムアレイなどの金型も加工できるようになることは言うまでもない。
【0036】
【発明の効果】
以上のように、本発明は光学ガラス素子のプレス成形用型を作製するにあたり、母材として超硬合金、サーメット及びWC焼結体を用い、該母材上に切削加工層として、含有率が20〜80at%のSiと残りがNi、Co、Fe、Cu、Ti、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Osから選ばれる金属との合金薄膜を形成し、該加工層を切削加工により所望の形状に精密加工した後、該薄膜上に保護層としてPt、Pd、Ir、Rh、Os、Ru、Re、W、Taから選ばれる少なくとも1種類以上の金属を含む貴金属系合金薄膜を形成することにより、ガラス成形用型材料に要求される必要条件をすべて満たし、多種多様な形状の高融点光学ガラス素子のプレス成形用型を提供したものであり、この型を用いて光学ガラスを繰り返しプレス成形することによって、従来プレス成形では得られなかった形状の高融点光学ガラス素子を安価に、かつ、大量に製造することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例におけるプレス成形用型の構成を示す断面図
【図2】本発明の一実施例のプレス成形用型を用いたプレス成形機の概略図
【符号の説明】
11 Pt−Ir合金保護膜
12 Si−Ni合金切削膜
13 母材
21 上型ヒーターブロック
22 上型用加熱ヒーター
23 上型
24 ガラス素材
25 下型
26 下型用加熱ヒーター
27 下型ヒーターブロック
28 覆い
29 胴型
210 プランジャー
211 位置決め用センサー
212 ストッパー
【産業上の利用分野】
本発明は光学ガラス素子の製造方法に関し、高精度な光学ガラス素子を、プレス成形する方法及びプレス成形する際に用いる光学ガラス素子のプレス成形用型に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高精度な光学ガラス素子をプレス成形により、繰り返し成形するためには、型材料として高温でも安定で、耐酸化性に優れ、ガラスに対して不活性であり、プレスした時に形状精度が崩れないような機械的強度の優れたものが必要であるが、その反面、加工性に優れ、精密加工が容易にできなくてはいけない。
【0003】
以上のような光学ガラス素子のプレス成形用型に必要な条件を、ある程度満足する型材として、チタンカーバイド(TiC)及び金属の混合材料(例えば特開昭59−121126号公報)や超硬合金母材上に貴金属薄膜を形成したもの(例えば特開昭62−96331号公報)などが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の型材料では、上記の条件を全て満足するものは得られていない。
【0005】
例えば型材としてTiC及び金属の混合材料を用いた場合では、非常に硬く、機械的強度は優れているものの、加工性に劣り、高精度な加工が困難である。さらには、光学ガラス素子の構成成分である鉛(Pb)やアルカリ元素と反応しやすいという欠点を有している。
【0006】
また、超硬合金母材上に貴金属薄膜を形成した型では、超硬合金をダイヤモンド砥石を用いて加工を行うと、ダイヤモンド砥石の摩耗が激しく、精密な形状加工が困難であり、特別な加工装置が必要である。また、加工時間も長く、金型コストが非常に高いという問題があった。
【0007】
これらの改善策として超硬合金母材上に母材と密着性が良好な薄膜を形成し、さらに該薄膜上に容易に精密加工できる膜として例えば無電解Ni−Pめっき膜を形成し、保護膜として合金薄膜を形成する方法(例えば特開平3−23230号公報)が検討されている。
【0008】
しかしながらこの方法では無電解Ni−Pめっき膜の耐熱性が低く、高融点ガラスを成形することができないといった問題があった。
【0009】
以上のように、従来の型材料では前述の型材料としての必要条件を全て満足するには至っていない。
【0010】
本発明はこのような従来の課題を解消し、従来の研削加工では実現できなかった多種多様の形状を持った高融点光学ガラス素子を、繰り返しプレス成形することが可能なプレス成形用型及び光学ガラス素子のプレス成形方法を提供することを目的とする。
【0011】
この目的を達成するために、本発明ではWCを主成分とする超硬合金、TiCあるいはTiNを主成分とするサーメット、またはWC焼結体からなる母材上に切削加工層として、含有率が20〜80at%のSiと残りがNi、Co、Fe、Cu、Ti、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Osから選ばれる金属との合金薄膜を形成し、該加工層を切削加工により所望の形状に精密加工した後、該薄膜上に保護層としてPt、Pd、Ir、Rh、Os、Ru、Re、W、Taから選ばれる少なくとも1種類以上の金属を含む貴金属系合金薄膜を形成して構成される金型を作製することによって、多種多様な形状を持った高融点光学ガラス素子のプレス成形用型を提供し、この型を用いて高融点光学ガラスを繰り返しプレス成形することによって、従来プレス成形できなかった多種多様な形状を持った高融点光学ガラス素子を安価に、かつ大量に製造することを可能にしたものである。
【0012】
本発明では、型母材にWCを主成分とする超硬合金、TiCあるいはTiNを主成分とするサーメット、またはWC焼結体を用いることにより、プレス成形に充分耐える強度を持たせ、またこの母材表面に形成される切削加工層に含有率が20〜80at%のSiと残りがNi、Co、Fe、Cu、Ti、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Osから選ばれる金属との合金薄膜を用いることによって、耐熱性に優れ、容易に所望の形状に精密切削加工することを可能とした。
【0013】
さらに、この切削加工層上に形成される保護層としてPt、Pd、Ir、Rh、Os、Ru、Re、W、Taから選ばれる少なくとも1種類以上の金属を含む貴金属系合金薄膜を用いることによって、ガラスとの融着を防止したものである。
【0014】
従って、本発明の型は、前記した型材料として要求される必要条件を全て満足したものとなる。
【0015】
このようにして作製した本発明の型を用いて、ガラスをプレス成形すると、従来の研削加工では実現できなかった多種多様な形状を持った高融点光学ガラス素子を大量に製造することが可能となる。
【0016】
【実施例】
以下、本発明の一実施例について図1を参照しながら説明する。
【0017】
直径6mm、厚さ10mmのWCを主成分とする超硬合金を曲率半径が1mmの凹形状のプレス面を有する光学ガラスレンズのプレス成形用型13に放電加工により荒加工した。
【0018】
次に、このプレス面上に切削加工層12としてSi−Niをスパッタ法により15μmの厚みで形成した。Si−Niのスパッタ法としては、まず、10mm×10mmのSiチップを直径6インチのNiディスクターゲット上に72枚並べてSi−Niのターゲットとし、スパッタした。
【0019】
次にこのSi−Ni膜12をダイヤモンドバイトによる切削加工により非常に高精度な面に仕上げた。
【0020】
このようにSi−Ni合金薄膜を切削加工することによって、研削加工では従来作製が困難であった曲率半径1mmの凹面形状の金型を、容易に得ることができるようになった。
【0021】
次に該加工層上にスパッタ法により3μmの厚みでPt−Ir合金薄膜11をコーティングしてプレス成形用型を作製した。
【0022】
図1に示す成形型を図2に示したプレス成形機にセットする。図2において21は上型ヒーターブロック、22は上型用加熱ヒーター、23は図1で示す上型、24はガラス素材、25も同様に図1で示す下型、26は下型用加熱ヒーター、27は下型ヒーターブロック、28は覆い、29は胴型、210はプランジャー、211は位置決め用センサー、212はストッパーである。
【0023】
次に半径1mmの球状に加工した軟化点613℃の重クラウン系ガラス(SK−12)24を下型25の上に置き、その上に上型23を置いて、そのまま650℃まで昇温し、窒素雰囲気中で約40kg/cm2のプレス圧により2分間圧力を保持し、その後、そのままの状態で550℃まで冷却して、成形された光学ガラス素子を取り出して、光学ガラス素子のプレス成形の工程を完了する。
【0024】
光学ガラス素子を成形するには、以上の工程を1サイクル行う。以上の工程を繰り返して10000サイクル目のプレス時終了時に、上下の型23及び25をプレス成形機より取りはずして、プレス面の状態を光学顕微鏡で観察し、その時のプレス面の表面荒さ(RMS値、Å)を測定して、それぞれの型精度を評価した。Co、Fe、Cu、Ti、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Osについても同様の試料を作製し、同様の評価を行った。これらの結果を(表1)の試料No2〜37に示した。
【0025】
本実施例に対する比較例として、超硬合金母材上に切削加工層として無電解めっき法によってNi−P膜を形成し、保護膜としてPt−Ir合金薄膜をコーティングした型について図1と同様な形状の型を作製し、これを図2に示したプレス成形機にセットし、上述のプレス成形の工程を繰り返し行い、同様の型精度の評価を行った。この結果を(表2)に示した。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
比較例における試料No.1のように切削加工層に無電解Ni−Pめっき膜を成膜し、Pt−Ir合金薄膜でコーティングした型は、ガラス付着は起こらないが、100回のプレス成形によってめっき膜の亀裂が進行し、その亀裂がレンズに転写しそれ以上プレス成形することはできなかった。
【0029】
これは切削層のNi−Pの耐熱性が悪いために、高融点ガラスのプレス成形時の熱サイクルに、Ni−Pが耐えきれなくなるためである。
【0030】
一方、試料No2〜37の本実施例の型は、繰り返し10000回プレスした時でも、表面状態はほとんど変化せず、表面粗さはほとんどプレス前と変化がなく、SK−12のような高融点ガラスを繰り返し成形することがわかる。
【0031】
すなわち、本実施例の方法で得られたプレス成形用型を用いてガラスをプレス成形することによって、研削加工では困難な形状の高融点光学ガラス素子を大量にプレス成形することが可能となった。
【0032】
以上のように、本発明の型は前述した高精度な光学ガラス素子を直接プレス成形するための必要条件を全て満たし、これまで成形で作製できなかった形状の高融点光学ガラス素子を、大量にプレス成形することが可能となった。
【0033】
なお、本発明を説明するために、実施例においてプレス成形用型の母材として、WCを主成分とする超硬合金を用いたが、TiNあるいはTiCを主成分とするサーメットあるいはWC焼結体を母材に用いてもまったく同様の結果が得られた。
【0034】
また保護膜については、実施例においてPt−Irを用いたがその他のPt、Pd、Ir、Rh、Os、Ru、Re、W、Taから選ばれる少なくとも1種類以上の金属を含む貴金属系合金薄膜を用いてもまったく同様の結果が得られた。
【0035】
さらに、本実施例では曲率半径1mmの凹面形状の金型の作製について述べたが、従来研削では加工が困難な形状、例えば軸非対称レンズやマイクロプリズムアレイなどの金型も加工できるようになることは言うまでもない。
【0036】
【発明の効果】
以上のように、本発明は光学ガラス素子のプレス成形用型を作製するにあたり、母材として超硬合金、サーメット及びWC焼結体を用い、該母材上に切削加工層として、含有率が20〜80at%のSiと残りがNi、Co、Fe、Cu、Ti、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Osから選ばれる金属との合金薄膜を形成し、該加工層を切削加工により所望の形状に精密加工した後、該薄膜上に保護層としてPt、Pd、Ir、Rh、Os、Ru、Re、W、Taから選ばれる少なくとも1種類以上の金属を含む貴金属系合金薄膜を形成することにより、ガラス成形用型材料に要求される必要条件をすべて満たし、多種多様な形状の高融点光学ガラス素子のプレス成形用型を提供したものであり、この型を用いて光学ガラスを繰り返しプレス成形することによって、従来プレス成形では得られなかった形状の高融点光学ガラス素子を安価に、かつ、大量に製造することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例におけるプレス成形用型の構成を示す断面図
【図2】本発明の一実施例のプレス成形用型を用いたプレス成形機の概略図
【符号の説明】
11 Pt−Ir合金保護膜
12 Si−Ni合金切削膜
13 母材
21 上型ヒーターブロック
22 上型用加熱ヒーター
23 上型
24 ガラス素材
25 下型
26 下型用加熱ヒーター
27 下型ヒーターブロック
28 覆い
29 胴型
210 プランジャー
211 位置決め用センサー
212 ストッパー
Claims (2)
- 母材にタングステンカーバイド(WC)を主成分とする超硬合金、チタンカーバイド(TiC)あるいはチタンナイトライド(TiN)を主成分とするサーメット、またはWC焼結体を用い、該母材上に切削加工層としてシリコン(Si)を主成分とする合金薄膜を備え、該加工層上に白金(Pt)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、タングステン(W)、タンタル(Ta)から選ばれる少なくとも1種類以上の金属を含む貴金属系合金薄膜を形成し、
前記Siを主成分とする合金薄膜として、含有率が20〜80at%のSiと、残りがニッケル(Ni)、コバルト(Co)、鉄(Fe)、銅(Cu)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、ハフニウム(Hf)、レニウム(Re)、オスミウム(Os)から選ばれる金属との合金薄膜を用いることを特徴とする光学ガラス素子のプレス成形用型。 - 母材のタングステンカーバイド(WC)を主成分とする超硬合金、チタンカーバイド(TiC)あるいはチタンナイトライド(TiN)を主成分とするサーメット、またはWC焼結体上に、スパッタ法あるいは蒸着法によって含有率が20〜80at%のSiと残りがNi、Co、Fe、Cu、Ti、Zr、Ru、Rh、Pd、Hf、Re、Osから選ばれる金属との合金薄膜を形成し、該薄膜を切削加工により所望の形状に精密加工した後、該薄膜上に保護層としてPt、Pd、Ir、Rh、Os、Ru、Re、W、Taから選ばれる少なくとも1種類以上の金属を含む貴金属系合金薄膜を形成して作製された光学ガラス素子のプレス成形用型を用いて、軟化点が600℃以上の高融点ガラスをプレス成形することを特徴とする光学ガラス素子のプレス成形方法。
Priority Applications (13)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP12120794A JP3572664B2 (ja) | 1994-06-02 | 1994-06-02 | 光学ガラス素子のプレス成形用型及び光学ガラス素子のプレス成形方法 |
DE69421550T DE69421550T2 (de) | 1993-07-28 | 1994-07-28 | Pressform zum Pressen optischer Elementen und ihr Herstellungsverfahren und Verwendung |
EP96120391A EP0768282B1 (en) | 1993-07-28 | 1994-07-28 | Die for press-molding optical elements and methods of manufacturing the same |
EP94111781A EP0636585B1 (en) | 1993-07-28 | 1994-07-28 | Die for press-molding optical elements and methods of manufacturing and using the same |
DE69421414T DE69421414T2 (de) | 1993-07-28 | 1994-07-28 | Pressform zum Pressen optischer Elemente und ihr Herstellungsverfahren und Verwendung |
DE69421629T DE69421629T2 (de) | 1993-07-28 | 1994-07-28 | Pressform zum Pressen optischer Elemente und ihr Herstellungsverfahren und Verwendung |
EP96120390A EP0768281B1 (en) | 1993-07-28 | 1994-07-28 | Die for press-molding optical elements and methods of manufacturing and using the same |
DE69414655T DE69414655T2 (de) | 1993-07-28 | 1994-07-28 | Pressform zum Pressen von optischen Elementen sowie ihr Herstellungsverfahren und ihre Verwendung |
EP96120389A EP0768280B1 (en) | 1993-07-28 | 1994-07-28 | Die for press-molding optical elements and methods of manufacturing and using the same |
US08/281,690 US5700307A (en) | 1993-07-28 | 1994-07-28 | Die for press-molding optical elements |
US08/623,889 US6003336A (en) | 1993-07-28 | 1996-03-29 | Method of manufacturing a die for press-molding optical elements |
US08/847,987 US5759221A (en) | 1993-07-28 | 1997-04-21 | Method of press molding glass optical elements |
US08/855,830 US6009728A (en) | 1993-07-28 | 1997-05-12 | Die for press-molding optical elements |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP12120794A JP3572664B2 (ja) | 1994-06-02 | 1994-06-02 | 光学ガラス素子のプレス成形用型及び光学ガラス素子のプレス成形方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH07330350A JPH07330350A (ja) | 1995-12-19 |
JP3572664B2 true JP3572664B2 (ja) | 2004-10-06 |
Family
ID=14805530
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP12120794A Expired - Fee Related JP3572664B2 (ja) | 1993-07-28 | 1994-06-02 | 光学ガラス素子のプレス成形用型及び光学ガラス素子のプレス成形方法 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3572664B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
US20150115129A1 (en) * | 2013-10-29 | 2015-04-30 | Omnivision Technologies, Inc. | Coated Diamond-Turned Replication Master And Associated Process |
-
1994
- 1994-06-02 JP JP12120794A patent/JP3572664B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH07330350A (ja) | 1995-12-19 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
EP0768281B1 (en) | Die for press-molding optical elements and methods of manufacturing and using the same | |
KR900000622B1 (ko) | 광학유리소자의 성형방법 및 광학유리소자의 프레스 성형금형 | |
US6003336A (en) | Method of manufacturing a die for press-molding optical elements | |
JP3206845B2 (ja) | 光学ガラス素子の製造方法およびこれに用いる光学ガラス素子のプレス成形用型 | |
JPS6228091B2 (ja) | ||
JPH0725557B2 (ja) | 光学素子のプレス成形用金型の作製方法及び光学素子の作製方法 | |
JP3572664B2 (ja) | 光学ガラス素子のプレス成形用型及び光学ガラス素子のプレス成形方法 | |
JP2001302273A (ja) | 光学ガラス素子成形用型 | |
JP3149636B2 (ja) | 光学ガラス素子のプレス成形用型及びその作製方法並びに光学ガラス素子のプレス成形方法 | |
JP3221788B2 (ja) | 光学ガラス素子のプレス成形用型並びにその作製方法及び光学ガラス素子のプレス成形方法 | |
JPS623031A (ja) | 光学ガラス素子の製造方法 | |
JP2001302260A (ja) | 光学素子の成形方法 | |
JP2001114523A (ja) | 光学素子成形用金型、光学素子成形用金型の製造方法及び光学素子成形用金型の使用方法 | |
JPH0361614B2 (ja) | ||
JPH07277747A (ja) | 光学素子のプレス成形用型及びその作製方法並びに光学素子のプレス成形方法 | |
JPH08143320A (ja) | ガラス成形体の成形型 | |
JPH07138032A (ja) | 光学ガラス素子のプレス成形用型及びその作製方法 | |
JPH08133761A (ja) | 光学素子成形用金型の製造方法 | |
JPH07133123A (ja) | 光学素子成形用金型およびその製造方法 | |
JPS63166729A (ja) | 光学ガラス素子の製造方法 | |
JPS61242922A (ja) | 光学ガラス素子のプレス成形用型 | |
JPS62292637A (ja) | 光学ガラス素子の製造方法 | |
JPH08133760A (ja) | 光学ガラス素子のプレス成形用型及びその製造方法並びに光学ガラス素子のプレス成形方法 | |
JPS61256931A (ja) | 光学ガラス素子の成形方法 | |
JPS62292638A (ja) | 光学ガラス素子の製造方法 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20040608 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20040621 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20070709 Year of fee payment: 3 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080709 Year of fee payment: 4 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |