JPH08133761A - 光学素子成形用金型の製造方法 - Google Patents

光学素子成形用金型の製造方法

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JPH08133761A
JPH08133761A JP26870894A JP26870894A JPH08133761A JP H08133761 A JPH08133761 A JP H08133761A JP 26870894 A JP26870894 A JP 26870894A JP 26870894 A JP26870894 A JP 26870894A JP H08133761 A JPH08133761 A JP H08133761A
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JP
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die
optical element
transfer
mold
molding
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JP26870894A
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Hidenao Kataoka
秀直 片岡
Makoto Umetani
梅谷  誠
Kenji Inoue
健二 井上
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Matsushita Electric Industrial Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 高精度な光学素子成形用金型を安価に提供す
ることを目的とする。 【構成】 機械強度と塑性加工性に優れた金型素材1a
のプレス面2aを転写型3aの転写面4aによりプレス
加工することにより、転写面4aの光学素子形状をプレ
ス面2aに精密に転写させる。その後、金型素材1aの
表面全体に、耐酸化性と高温強度に優れ、光学素子材料
に対して不活性な貴金属系合金よりなる保護層6aを形
成する。そして、この金型素材を用いて、光学素子材料
を、加熱工程、プレス成形工程、冷却工程よりなる製造
方法により光学素子を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高精度で光学性能良好
な光学素子をプレス成形により製造するための光学素子
成形用金型の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】高精度な光学素子をプレス成形により直
接に製造し、光学素子を大量、安価に供給するために
は、プレス成形金型が重要なポイントとなる。
【0003】即ち、耐酸化性と高温強度に優れ、高温状
態の光学素子材料に対して不活性な光学素子成形用金型
を、加工ばらつきが少なく、高精度で、かつ、短時間、
安価に製造出来ることが要求される。また、金型が長寿
命であること、また、その金型を用いて成形する際に
は、成形のばらつきが少なく、歩留まり良く光学性能良
好な光学素子を製造出来なくてはならない。
【0004】このような光学素子成形用金型に必要な条
件をある程度満足する金型構成として、特公昭62−2
8091号公報には、WCを主成分とする超硬合金を金
型素材に用い、これに光学素子の成形に適用できるよう
に転写面を精密加工して形成し、この転写面上に白金系
合金薄膜をコーティングして得られる光学素子成形用金
型を用いることによって、光学素子のプレス成形による
量産が可能であると記載されている。
【0005】また、特開平1−239030号公報に記
載されているように、軟化したガラス材に、カーボンコ
ーティングされたマスター型の型面形状を転写させて、
ガラス材からなる光学素子用の成形型を得る方法や、特
開平2−102136号公報に記載されているように、
耐熱性を有する金属またはセラミックスから成る接合体
をガラスよりなる成形用型本体とともに成形用母型で、
プレス成形する方法により、一つのマスター型で複数個
の成形用金型を製造する方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
光学素子成形用金型並びにその製造方法では、上記の条
件をすべて満足する金型を得ることはできず、従って、
光学特性に優れた大量の光学素子を歩留まりよく得るこ
とについても十分ではない。
【0007】例えば、特公昭62−28091号公報に
記載のように、超硬合金または、サーメットを金型素材
に用い、この金型素材を精密加工した後、前記母材上に
貴金属系合金膜をコーティングすることにより製造され
る光学素子成形用金型では、金型素材として用いられる
超硬合金またはサーメットの精密加工が困難であり、特
別な加工装置が必要であり、加工後も場合によっては面
粗さ向上のため研磨加工の必要がある。
【0008】また、その加工は、主にダイヤモンド砥石
による研削加工によるため、成形用金型の加工形状も加
工工具の大きさに制限されるとともに、加工工具の寿命
が短い。その上、加工時間も長く、加工コストが非常に
高いという問題がある。
【0009】また、得られた光学素子成形用金型は、光
学素子を成形するための転写面の加工ばらつきが大き
く、得られる光学素子の形状にそのばらつきが反映し、
良好な光学素子を歩留まり良く得ることが困難である。
【0010】また、その加工ばらつきを有する光学素子
成形用金型を使用して、良好な光学素子を歩留まり良く
得るためには、個々の金型において、それらの加工ばら
つきを吸収するように、いちいち成形条件を変化させな
くてはならない。
【0011】また、特開平1−239030号公報に記
載のような、軟化したガラス材にカーボンコーティング
されたマスター型の型面形状を転写させることにより得
られる光学素子成形用金型は、金型材料であるガラス
が、高温強度が低く、かつ、脆性材料であるため、金型
製作時のマスター型によるプレス加工の際に、割れや欠
けといった問題が生じる。
【0012】また、ガラスは、冷却工程において大きな
ひけを生じ、高精度にばらつきなくマスター型の形状を
転写することが非常に難しい。
【0013】加えて、その金型を用いて光学素子をプレ
ス成形する際には、成形温度が高く出来ず、成形可能な
光学素子のガラス材料が大きく制限されるとともに、金
型の変形や、割れ、欠け等が大きな問題となり、その割
れや欠けが光学素子材料に転写され、良好な光学素子が
得られない。
【0014】同様に、特開平2−102136号公報に
記載されているような、耐熱性を有する金属またはセラ
ミックスから成る接合体をガラスよりなる成形用型本体
とともに成形用母型で、プレス成形することにより得ら
れる光学素子成形用金型は、特開平1−239030号
に関して述べた問題に加え、接合対とガラスとの密着強
度が弱く、その金型を用いて光学素子を成形する際に、
接合対とガラスとが分離するといった問題がある。
【0015】本願発明は、これら課題を解決することを
目的とするものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に光学素子成形用金型の構成、および、その製造方法と
して、金型素材上に、転写面が所望の光学素子形状に精
密に加工された転写型を設置した後、前記転写型により
前記金型素材に荷重を加え、前記転写型で前記金型素材
をプレス加工し、前記転写面の光学素子形状を前記金型
素材に精密に転写させる。
【0017】その後、前記金型素材の表面上にスパッタ
法、イオンプレーティング法等のPVD法や、CVD
法、メッキ法、溶射法等により耐酸化性、高温強度に優
れ、光学素子材料に対して不活性な白金(Pt)、パラ
ジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(R
h)、オスミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、レニ
ウム(Re)、タングステン(W)、タンタル(Ta)
のうち、少なくとも一種類以上の金属を含む合金よりな
る保護層を形成するという方法及び構成により光学素子
成形用金型を得るものである。
【0018】ここで、金型素材としては、ステンレス、
あるいは、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、コ
バルト(Co)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タ
ングステン(W)、タンタル(Ta)、銅(Cu)、ア
ルミニウム(Al)、ニオブ(Nb)、バナジウム
(V)、白金(Pt)、金(Au)、パラジウム(P
d)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)のうち、
少なくとも一種類以上の金属を含む合金を用いる。
【0019】また、プレス加工により容易に、また、高
精度に転写型の転写面形状を金型素材に転写するため
に、金型素材を前記転写型によりプレス加工する際に、
前記金型素材を加熱するものである。
【0020】
【作用】本発明の光学素子成形用金型の製造方法では、
従来例のように、特別な加工装置を用いて、WCを主成
分とする超硬合金またはサーメット等の金型素材を直
接、精密加工するという方法でなく、転写型により金型
素材を直接プレス加工するだけであるため、特別な加工
装置を必要としない。
【0021】また、一つの転写型により、多数個の光学
素子成形用金型を製作できるため、金型の加工ばらつき
が少なく、転写型製作時の加工工具の寿命、加工時間、
加工コストも問題にならない。
【0022】そして、転写型は、量産の必要が無いた
め、量産に対応した従来の加工方法にこだわることな
く、精密に加工する他の方法を選択することが可能で、
そのことにより、従来の光学素子成形用金型の製作にお
ける、加工形状の制限、加工精度の限界も大幅に緩和さ
れる。
【0023】また、金型素材の表面には、白金(P
t)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジ
ウム(Rh)、オスミウム(Os)、ルテニウム(R
u)、レニウム(Re)、タングステン(W)、タンタ
ル(Ta)のうち、少なくとも一種類以上の金属を含む
合金よりなる保護層を形成しているが、この保護層は、
接合とは異なる、スパッタ法、イオンプレーティング法
等のPVD法や、CVD法、メッキ法、溶射法等により
形成されているため、金型素材との密着性が良好であ
り、この金型を用いて光学素子材料を成形する際に、保
護層が、金型素材から剥離したりすることはない。
【0024】また、これら材料は、耐酸化性、高温強度
に優れ、光学素子材料に対して不活性なため、得られた
金型により光学素子材料を成形する際に、光学素子材料
が融着したり、金型が酸化したり、変形や割れ、欠けた
りすることがなく、光学性能良好な光学素子が、歩留り
良く製作できる。
【0025】また、金型素材は、ステンレス、あるい
は、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、コバルト
(Co)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タングス
テン(W)、タンタル(Ta)、銅(Cu)、アルミニ
ウム(Al)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、白
金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、ルテニ
ウム(Ru)、ロジウム(Rh)のうち、少なくとも一
種類以上の金属を含む合金を用いているため、ガラスに
比べて高温機械強度と塑性加工性に優れており、光学素
子成形用金型が、変形したり、割れ、欠けを生じること
が無いとともに、金型製作時の転写型によるプレス加工
を精密にまた、容易にすることができる。
【0026】そして、金型素材を前記転写型によりプレ
ス加工する際に、前記金型素材を加熱した場合には、金
型素材の塑性変形量(塑性歪)を小さく出来、転写型の
転写面形状を無理なく、低荷重で精密に転写できる。
【0027】この光学素子成形用金型を用いて、光学素
子を成形する場合、金型素材は、上記したように、高温
強度を有するため、使用可能な光学素子材料が制限され
たり、割れや、欠け、変形といった問題も発生せず、光
学性能良好な光学素子を歩留まり良く、また、長期間使
用できる。かつ、この金型は、加工ばらつきが少ないた
め、安定した成形条件で、形状のばらつきが少ない光学
素子が得られる。
【0028】
【実施例】以下、本発明の実施例について図面を参照し
ながら説明する。ここで、図1〜図4において、1a、
1b、1cは金型素材、2a、2b、2cは金型素材の
プレス面(以下、プレス面と記す)、3a、3b、3c
は転写型、4a、4b、4cは転写面、5a、5b、5
cは胴型、6a、6b、6cは保護層、7は光学素子材
料、8は加熱ヒーター、9は、光学素子である。
【0029】(実施例1)本実施例では、図1(a)に
示されるように、まず、金型素材1aとして、金型高さ
5.0mm、金型首径Φ4.5mm、金型つば径Φ5.
5mm、つば厚み2.0mmの大きさのステンレスを使
用した。
【0030】この時の金型素材1aのプレス面2aは、
予め、平面研磨加工により平面に鏡面加工されており、
その加工精度は、平面度1.0μm、表面粗さRmax
0.02μmであった。
【0031】一方、この金型素材1aのプレス面2aに
光学素子形状を転写するための転写型3aは、WCを主
成分とする超硬合金素材を使用し、転写面4aをダイヤ
モンド砥石による研削加工とダイヤモンドペーストを用
いた研磨加工により、所望の光学素子形状(溝深さ0.
3μm、溝ピッチ50μmの鋸歯形状)に精密加工し
た。この時の加工精度は、溝深さについては±0.01
μmの範囲内、溝ピッチについては±0.05μmの範
囲内であった。
【0032】そこで、この金型素材1aのプレス面2a
と転写型3aの転写面4aをWCを主成分とする超硬合
金素材の胴型5a(内径Φ4.5mm)内に対向させて
挿入した(図1(b))。
【0033】そして、この状態で転写型3aにプレス圧
力(4.8×104kgf/cm2)を加え、プレス加工
し、転写面4aの光学素子形状を金型素材1aのプレス
面2aに精密に転写させた(図1(c))。
【0034】転写後の金型素材1aのプレス面2aの形
状精度は、溝深さ±0.02μm、溝ピッチ±0.05
μmであった。
【0035】その後、プレス後の金型素材1aを胴型5
aより取り出し、保護層6aとして金型全体にスパッタ
法により、Ru−W−Re−Ta合金を膜厚2μmで形
成した(図1(d))。
【0036】この金型を用いて、図2に示すようにして
樹脂素材を用いて光学素子の成形を行った。
【0037】つまり、同図(a)に示すように、円柱形
状(Φ4.5mm、厚み3mm)の光学素子材料7(ポ
リオレフィン系樹脂、ガラス転移点140℃)を上下金
型間に設置する。
【0038】次に、同図(b)に示す様に、加熱ヒータ
ー8によりプレス温度170℃に加熱し、プレス圧力1
50kgf/cm2にてプレス成形を行う。
【0039】その後、同図(c)に示すように、冷却し
て光学素子9を金型より取り出すという製造方法により
成形を行った。
【0040】同図(e)には、図2の成形工程の成形温
度のプロフィールを示す。成形された光学素子の光学性
能は良好で、歩留まりが従来に比べ10%向上し、成形
回数2000ショット後も金型素材1aのプレス面2a
の酸化や、変形、保護層6aの剥離、また、金型の割
れ、欠け等の問題もなかった。
【0041】また、転写型3a一つにより22個の金型
を製作したが、金型の形状のばらつきは、従来の1/3
で、転写面4aの形状の変化等の問題もなく、金型製作
コストを従来のWCを主成分とする超硬合金製金型を直
接、研削加工と研磨加工により製作する方法に比べ20
%以下にすることを可能とした。
【0042】(実施例2)本実施例では、図3(a)に
示されるように、まず、金型素材1bとして、実施例1
と同一形状(金型高さ5.0mm、金型首径Φ4.5m
m、金型つば径Φ5.5mm、つば厚み2.0mm)
の、Ti−AlーV(Cu:18wt%)よりなるものを
使用した。
【0043】この時の金型素材1bのプレス面2bは、
予め、平面研磨加工により平面に鏡面加工されており、
その加工精度は、平面度1.1μm、表面粗さRmax
0.03μmであった。
【0044】一方、この金型素材1bのプレス面2bに
光学素子形状を転写するための転写型3bは、WCを主
成分とする超硬合金素材を使用し、転写面4bをダイヤ
モンド砥石による研削加工とダイヤモンドペーストを用
いた研磨加工により、実施例1に比べて、溝深さが3.
7μm深い所望の光学素子形状(溝深さ4.0μm、溝
ピッチ50μmの鋸歯形状)に精密加工した。この時の
加工精度は、溝深さ±0.02μm、溝ピッチ±0.0
5μmであった。
【0045】そこで、この金型素材1bのプレス面2b
と転写型3bの転写面4bをWCを主成分とする超硬合
金素材の胴型5b(内径Φ4.5mm)内に対向させて
挿入した(図3(b))。
【0046】そして、この状態で、窒素雰囲気中、80
0℃に加熱し、転写型3bにプレス圧力(5.0×10
4kgf/cm2)を加え、プレス加工し、転写面4bの
光学素子形状を金型素材1bのプレス面2bに転写させ
た(図3(c))。
【0047】転写後の金型素材1bのプレス面2bの形
状精度は溝深さ±0.03μm、溝ピッチ±0.05μ
mであった。
【0048】その後、プレス後の金型素材1bを胴型5
bより取り出し、保護層6bとして金型全体にイオンプ
レーティング法により、PtーW合金を膜厚2.5μm
形成した(図3(d))。
【0049】この金型を用いて、円柱形状(Φ4.5m
m、厚み3mm)の光学素子材料(ガラス材料:鉛系ガ
ラス、ガラス転移点425℃)を上下金型間に設置した
後、加熱ヒーターによりプレス温度500℃、プレス圧
力540kgf/cm2にてプレス成形し、冷却後、光
学素子を取り出すという実施例1と同様の製造方法によ
り成形したところ、成形された光学素子の光学性能は良
好で、歩留まりが従来に比べ15%向上し、成形回数2
500ショット後も金型素材1bのプレス面2bの酸化
や、変形、保護層6bの剥離、また、金型の割れ、欠け
等の問題もなかった。
【0050】また、転写型3b一つにより10個の金型
を製作したが、金型形状のばらつきは、従来の1/3
で、転写面4bの形状変化等の問題もなく、金型製作コ
ストを従来のWCを主成分とする超硬合金製金型を直
接、研削加工と研磨加工により製作する方法に比べ30
%以下にすることを可能とした。
【0051】(実施例3)本実施例では、図4(a)に
示されるように、まず、金型高さ5.0mm、金型首径
Φ6.6mm、金型つば径Φ8.0mm、つば厚さ2.
0mmのCu−Mo(Ni:24.0wt%)よりなる金
型素材1cを、放電加工により曲率半径5.2mm、加
工径5.6mmの球面形状に荒加工し、その後、Φ1
0.4mmの鋼球を使用してオスカー方式による研磨加
工で鏡面に加工した。
【0052】ここで、この時の放電加工後の形状精度は
±5.2μm、表面粗さRmax1.2μm、研磨加工後
の形状精度は±3.2μm、表面粗さRmax0.03μ
mであった。
【0053】一方、この金型素材1cのプレス面2cに
光学素子形状を転写するための転写型3cは、外径Φ
6.6mmのWCを主成分とする超硬合金素材を用い、
この転写型3cの転写面4cをダイヤモンド砥石による
研削加工と、ダイヤモンドペーストを用いた研磨加工に
より、所望の光学素子形状(非球面、近似半径5.5m
m)に精密に加工した。この時の転写面4cの形状精度
は±0.1μm、表面粗さはRmax0.01μmであっ
た。
【0054】そこで、この金型素材1cのプレス面2c
と転写型3cの転写面4cをセラミックス(アルミナ)
製の胴型5c(内径Φ6.6mm)内に対向させて挿入
した(図3(b))。
【0055】そして、この状態で、転写型3cにプレス
圧力6.2×104kgf/cm2を加え、プレス加工
し、転写面4cの光学素子形状を、金型素材1cプレス
面2cに転写させた(図3(c))。転写後の金型素材
1cのプレス面2cの形状精度は±0.12μm、表面
粗さはRmax0.02μmであった。
【0056】その後、プレス後の金型素材1cを胴型5
cより取り出し、保護層6cとして金型全体にスパッタ
法により、Pt−Irを膜厚1.5μmで形成した(図
1(d))。
【0057】この金型を用いて、球形状(Φ5.0m
m)の光学素子材料(ガラス材料:クラウン系ガラス、
ガラス転移点510℃)を上下金型間に設置した後、加
熱ヒーターによりプレス温度590℃に加熱し、プレス
圧力500kgf/cm2にてプレス成形し、冷却後、
光学素子を取り出すという実施例1と同様の製造方法に
より成形したところ、成形された光学素子の光学性能は
良好で、歩留まりが従来に比べ12%向上し、成形回数
3500ショット後も金型プレス面の酸化や、変形、保
護層6cの剥離、また、金型の割れ、欠け等の問題もな
かった。
【0058】また、転写型3c一つにより15個の金型
を製作したが、金型形状のばらつきは、従来の1/3
で、転写面4cの形状の変形等の問題もなく、かつ、金
型製作時間を大幅に短縮し、加工コストを従来のWCを
主成分とする超硬合金製金型を直接、研削加工により製
作する方法に比べ25%以下にすることを可能とした。
【0059】ここで、実施例1、実施例2、実施例3に
おいて、金型素材として、ステンレスやTi−Al−
V、Cu−Moを、保護層としてRu−W−Re−Ta
やPt−W、Pt−Irを用いたが、金型素材として、
その他の高温機械強度と塑性加工性に優れた、ニッケル
(Ni)、モリブデン(Mo)、コバルト(Co)、ク
ロム(Cr)、チタン(Ti)、タングステン(W)、
タンタル(Ta)、銅(Cu)、アルミニウム(A
l)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、白金(P
t)、金(Au)、パラジウム(Pd)、ルテニウム
(Ru)、ロジウム(Rh)のうち、少なくとも一種類
以上の金属を含む合金を使用しても、また、保護層とし
て、その他の耐酸化性、高温強度に優れ、光学素子材料
に対して不活性な白金(Pt)、パラジウム(Pd)、
イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、オスミウム
(Os)、ルテニウム(Ru)、レニウム(Re)、タ
ングステン(W)、タンタル(Ta)のうち、少なくと
も一種類以上の金属を含む合金よりなるものを使用して
も同様の効果を得られる。
【0060】また、保護層の成膜方法として、本実施例
では、イオンプレーティング法、スパッタ法を用いてい
るが、その他の、PVD法や、CVD法、メッキ法、溶
射法等を用いても金型素材に密着性良好に成膜可能で、
金型素材からの保護層の亀裂、剥離といった問題が生じ
ない。
【0061】そして、光学素子材料として、ポリオレフ
ィン系樹脂、鉛系ガラス、クラウン系ガラスを使用して
いるが、本発明の光学素子成形用金型の金型素材は、高
温強度を有する材料を使用しているため、その他の、高
温成形を必要とする光学素子材料を用いて成形しても、
何等問題ない。
【0062】
【発明の効果】本発明の光学素子成形用金型の製造方法
では、従来例のように、特別な加工装置を用いて、WC
を主成分とする超硬合金またはサーメット等の金型素材
を直接、精密加工するという方法でなく、転写型により
金型素材を直接プレス加工するだけであるため、特別な
加工装置を必要としない。
【0063】また、一つの転写型により、多数個の光学
素子成形用金型を製作できるため、金型の加工ばらつき
が少なく、転写型製作時の加工工具の寿命、加工時間、
加工コストも問題にならない。
【0064】そして、転写型は、量産の必要が無いた
め、量産に対応した従来の加工にこだわることなく、精
密に加工する他の方法を選択することが可能で、そのこ
とにより、従来の光学素子成形用金型の製作における、
加工形状の制限、加工精度の限界も大幅に緩和される。
【0065】また、金型素材の表面には、白金(P
t)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、ロジ
ウム(Rh)、オスミウム(Os)、ルテニウム(R
u)、レニウム(Re)、タングステン(W)、タンタ
ル(Ta)のうち、少なくとも一種類以上の金属を含む
合金よりなる保護層を形成しているが、この保護層は、
接合とは異なる、スパッタ法、イオンプレーティング法
等のPVD法や、CVD法、メッキ法、溶射法等により
形成されているため、金型素材との密着性が良好であ
り、保護層が、金型素材から剥離したりすることはな
い。
【0066】また、これら材料は、耐酸化性、高温強度
に優れ、光学素子材料に対して不活性なため、得られた
金型により光学素子材料を成形する際に、光学素子材料
が融着したり、金型が酸化したり、変形や割れ、欠けた
りしない。
【0067】また、金型素材は、ステンレス、あるい
は、ニッケル(Ni)、モリブデン(Mo)、コバルト
(Co)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タングス
テン(W)、タンタル(Ta)、銅(Cu)、アルミニ
ウム(Al)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、白
金(Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、ルテニ
ウム(Ru)、ロジウム(Rh)のうち、少なくとも一
種類以上の金属を含む合金を用いているため、ガラスに
比べて高温機械強度と塑性加工性に優れており、光学素
子成形用金型が、変形したり、割れ、欠けを生じること
が無いとともに、金型製作時の転写型によるプレス加工
を精密にまた、容易にすることができる。
【0068】そして、金型素材を前記転写型によりプレ
ス加工する際に、前記金型素材を加熱した場合には、金
型素材の塑性変形量(塑性歪)を小さく出来、転写型の
転写面形状を無理なく、低荷重で精密に転写できる。
【0069】この光学素子成形用金型を用いて、光学素
子を成形する場合、金型素材は、上記したように、高温
強度を有するため、使用可能な光学素子材料が制限され
たり、割れや、欠け、変形といった問題も発生せず、光
学性能良好な光学素子を歩留まり良く、また、長期間使
用できる。かつ、この金型は、加工ばらつきが少ないた
め、安定した成形条件で、形状のばらつきが少ない光学
素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光学素子成形用金型の製造方法の一実
施例を示す工程図
【図2】同実施例で製造された成形型を用いた光学素子
の成形工程の説明図
【図3】本発明の光学素子成形用金型の製造方法の他の
実施例を示す工程図
【図4】本発明の光学素子成形用金型の製造方法の更に
他の実施例を示す工程図
【符号の説明】
1a〜1c 金型素材 2a〜2c 金型素材プレス面 3a〜3c 転写型 4a〜4c 転写面 5a〜5c 胴型 6a〜6c 保護層 7 光学素子材料 8 加熱ヒーター 9 光学素子

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】所望の光学素子形状に精密に加工された転
    写型により、金型素材をプレス加工し、前記転写型の光
    学素子形状を前記金型素材表面に精密に転写させる工程
    と、前記金型素材の表面に白金(Pt)、パラジウム
    (Pd)、イリジウム(Ir)、ロジウム(Rh)、オ
    スミウム(Os)、ルテニウム(Ru)、レニウム(R
    e)、タングステン(W)、タンタル(Ta)のうち、
    少なくとも一種類以上の金属を含む合金よりなる保護層
    を形成する工程からなることを特徴とする光学素子成形
    用金型の製造方法。
  2. 【請求項2】金型素材が、ステンレス、あるいは、ニッ
    ケル(Ni)、モリブデン(Mo)、コバルト(C
    o)、クロム(Cr)、チタン(Ti)、タングステン
    (W)、タンタル(Ta)、銅(Cu)、アルミニウム
    (Al)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、白金
    (Pt)、金(Au)、パラジウム(Pd)、ルテニウ
    ム(Ru)、ロジウム(Rh)のうち、少なくとも一種
    類以上の金属を含む合金よりなることを特徴とする請求
    項1記載の光学素子成形用金型の製造方法。
  3. 【請求項3】金型素材を転写型によりプレス加工する際
    に、前記金型素材を加熱することを特徴とする請求項1
    または2記載の光学素子成形用金型の製造方法。
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