JP3572201B2 - 三部材接合部のガスケット構造 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロックとケースカバーの如くの三面合せ部の密封をなすガスケットに関し、具体的にはこれらの三部材接合部に対して高い密封性能を示す弾性体からなったガスケット構造に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来、エンジンのシリンダヘッドとシリンダブロックとフロントカバーの如くの三部材接合部の密封においては、図面によって説明すると図４に示すように、シリンダヘッド（２）とシリンダブロック（１）とフロントカバー（３）の間にヘッドガスケット（４）及びフロントカバーガスケット（５ａ）をそれぞれ配備してこれを締付け圧縮し、これらガスケット（４）（５ａ）の変形密着による密封作用を期待している。また、これらの三部材接合部では断差部とか互いのガスケット（１、２、３）との隙間部へ予め不定形の液状ガスケット（６）を塗布充填せしめ、締付けの不安定で不確実な部分の密封力を補っている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような二面合せ部は複数の締め込み方向と締込み力不均等により合せレベルが合難く、断差を生じ易いものであり、正しく平滑に組付けるには熟練と多くの作業手間が必要であって、そのためやむを得ず該隙間部へ前記のように液状ガスケット（６）を塗布充填せしめており、従って、液状ガスケット（６）の欠点である剥離による密封不良、さらには部分的に破断してエンジンに悪影響を及ぼすこととか、合せ面の断差が大きくなると適正な面圧が得られずシール性能が極端に低下するとか、あるいは前もって塗布部分の脱脂が必要なことなどの多くの問題を発生させる。
【０００４】
また、この液体ガスケット（６）では硬化しガスケットとして機能するまでに一定の経過時間を必要とするものであり、また、定形を持たないからそのフランジの締付けトルクに注意を要し、それでも食み出しとか充填料不足を簡単に起こすなど作業能率の劣悪なものであった。
本発明はこのような欠点を解消するためになされたもので、優れた組付け作業性と高いシール性を示す三部材接合部のガスケット構造を提供しようとするものである。
【０００５】
【課題を解決しようとする手段】
本発明は、図３に示すように、エンジンのシリンダヘッド（２）とシリンダブロック（１）とフロントカバー（３）の如くの三個の組付け部材が互いに突き合わされる三面合せ部のガスケット構造であって、前記シリンダブロック（１）とシリンダヘッド（２）の間にはヘッドガスケット（４）を装着し、前記シリンダブロック（１）及びシリンダヘッド（２）とフロントカバー（３）の間には前記ヘッドガスケット（４）に対して直角となるようにフロントカバーガスケット（５）を配備せしめ、図１に示すように前記ヘッドガスケット（４）は三部材接合部（Ａ）の側の端面をわずかに奥まる配置として、前記フロントカバーガスケット（５）の前記三部材接合部（Ａ）を図２に示すように両直角方向へ延出して略十字部（５１）を形成すると共に、該略十字部（５１）の接触面を部分的に突出させ凸部（５２）を形成せしめたことを特徴としている。
【０００６】
【発明の実施の形態】
本発明は、図３に示すように、エンジンにおける三個の組付け部材が互いに突き合わされる三面合せ部の密封を目的としたガスケット構造であって、フロントカバーガスケット（５）の前記三部材接合部（Ａ）へ略十字部（５１）を形成してこの接触面を部分的に突出させ凸部（５２）を形成せしめておき、三部材接合部（Ａ）の側の端面より奥まって配設されたシリンダヘッドガスケット（４）の端面へ図１に示すように前記略十字部（５１）及び凸部（５２）を圧着せしめ断差とか食い違いなどの面不均衡による面圧不足に対処している。
【０００７】
この作用を詳述すると、前記シリンダブロック（１）とシリンダヘッド（２）の間にて締付けられるヘッドガスケット（４）は三部材接合部（Ａ）の側の端面が奥まっており、該奥まった端面へフロントカバーガスケット（５）の略十字部（５１）及び凸部（５２）が挿着され圧縮されると、前記略十字部（５１）はガスケットの長手方向部に比して数倍の反発弾性質量を保有しているので横方向の変形量を最少として強くヘッドガスケット（４）にその面圧を向け、その上に凸部（５２）によって変形反発方向を正しく凹部へ導くからそれぞれの部材へぴったりと密着し、もって寸法不均等などの密封不良要因に全く影響されない強い密封効果をもたらす。
【０００８】
【実施例】
本発明のフロントカバーガスケット（５）は、フロントカバーに刻設されたガスケット挿入溝（例えば図１の点線部分）に装着されて相手部材へ密接せしめるのが変形応力を効果的に働かせるので好ましい構造となり、略十字部（５１）の形成においては、該フロントカバーガスケット（５）の長手方向部の断面形状とほぼ同形状に延出形成するのが造形的に容易であるが、圧縮流れの方向性を考慮した変形形状であっても差し支えないもので、勿論、該略十字部（５１）の接触面に設ける凸部（５２）の形状においては、図２に示した線条の他に図示していないが凹凸条あるいは格子条等さまざまな形状が造形可能であり、後述する材料の材質とあわせて選択の範囲となる。
その材質においては、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロブタジエンゴム、ブチルゴム、シリコーンゴム、あるいはフッ素ゴム等の強弾力性を有し密封に適するゴム材料が採用可能である。
【０００９】
【発明の効果】
以上のように本発明のガスケット構造は三部材接合部（Ａ）に対応する箇所に追設した圧縮に対して弾性の大きい反発方向の異なる略十字部（５１）及び凸部（５２）によって該三部材接合部（Ａ）付近に集中的に圧縮面圧を得さしめ、隙間、段差等のマイナス要因をものともしない高い密封力を示す。
この作用は充分な弾性体の質量によってもたらされるものであるので応力緩和の発生を防ぎ長期間の密封効果を約束する。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の一実施例を示す断面図である。
【図２】図１で示すフロントカバーガスケットの平面図である。
【図３】ガスケットの装着状態を示す略図である。
【図４】本発明を使用しない従来の装着状態を示す断面図である。
【符号の説明】
１ シリンダブロック
２ シリンダヘッド
３ フロントカバー
４ ヘッドガスケット
５ａ フロントカバーガスケット
５１ 略十字部
５２ 凸部
６ 液状ガスケット
Ａ 三部材接合部

Claims (1)

1. エンジンにおけるシリンダブロックとシリンダヘッドとフロントカバーとの三部材接合部へガスケット材として装着されるガスケット構造において、
   前記シリンダブロックと前記シリンダヘッドの間にはヘッドガスケットを装着し、前記シリンダブロック及びシリンダヘッドとフロントカバーの間には前記ヘッドガスケットに対して直角方向にフロントカバーガスケットを配備せしめており、
   前記ヘッドガスケットは前記三部材接合部の側の端面をわずかに奥まる配置として、
   前記フロントカバーガスケットの前記三部材接合部を両直角方向へ延出して略十字部を形成すると共に、該略十字部のヘッドガスケットの接触面を部分的に突出させ凸部を形成せしめたことを特徴とする三部材接合部のガスケット構造。

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