JP3572111B2 - 電気粘性流体用油状媒体及びそれを用いた電気粘性流体 - Google Patents

電気粘性流体用油状媒体及びそれを用いた電気粘性流体 Download PDF

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、電気粘性流体用油状媒体及びそれを用いた電気粘性流体に関し、詳しくは、特定不純物を殆ど含有しない高温時の安定性に優れた油状媒体及びそれを用いたパルス応答性、高温時の安定性に優れた電気粘性流体に関する。
【0002】
【従来の技術】
電気粘性流体は、電気制御によりその粘弾性特性を大きく、しかも、可逆的に変化させることができる流体で、電場の印加により流体の見掛けの粘度が大きく変わる現象がウインズロー効果として古くから知られており、クラッチ、バルブ、エンジンマウント、アクチュエーター、ロボットアーム等の装置や部品を電気的に制御するための構成要素としての応用が検討されてきた。しかしながら、初期の電気粘性流体は澱粉等の粉体を鉱油や潤滑油に分散させたにものであり、電気粘性効果は発現されるものの、再現性に劣るという欠点があった。
【0003】
このため、電気粘性効果が高く、再現性に優れた流体を得ることを目的として、分散質として用いる粉体を中心に多くの提案がなされている。例えば、特開昭53−93186号にはポリアクリル酸の如き酸基をもつ高吸水性樹脂が、特公昭60−31211号にはイオン交換樹脂が、特開昭62−95397号にはアルミナシリケートが記載されている。これらはいずれも親水性の固体粉体であり、これらを含水させて絶縁性の油状媒体等の液相中に分散させたものであり、外部から高電圧を印加したときに水の作用により粉体を構成する粒子に分極が生じ、この分極により粒子間に電場方向の架橋が生じるため粘度が増大するといわれている。液相としては、ハロゲン化ジフェニル、セバシン酸ブチル、炭化水素油、塩素化パラフィン、シリコーン油等が知られていた。しかしながら、前記含水粉体を用いた含水系電気粘性流体は、広い温度範囲において充分な電気粘性効果が得られず、水分の蒸発や凍結を招かないための使用温度の制限、温度上昇による使用電流の増大、水分の移行による不安定化、高電圧印加時の電極金属の腐食等の多くの問題があり、実用化は困難であった。
【0004】
この問題点を解決すべく、本発明者らは、先に特開平3−47896号等によって特定炭素質微粉末と、特定粘度の電気絶縁油とからなり、電気粘性効果が高く、消費電力が低い非水系電気粘性流体を提案した。これらに所定の電流を印加することにより所望の粘性効果を得るものである。ここに用いられる液相であるシリコーン油は、ゴムへの膨潤性が少ないため、防振ゴム等の応用に適していたが、自動車用のショックアブソーバーやクラッチ等への応用にはさらに大きな電気粘性効果が求められていた。これらをさらに改良し、本発明者らは特開平1−158082号において特定のシロキサン誘導体を液相として用いる、さらに電気粘性効果の大きい電気粘性流体を提案した。しかしながら、この電気粘性流体も、条件によっては所望の電気粘性効果を発現しえない場合があり、高温時の安定性及び定電圧を印加した場合のパルス応答性について未だ改良の余地があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記特定のシロキサン誘導体を液相として用いた電気粘性流体の特性を生かしつつ、電気粘性効果、パルス応答性、高温時の安定性等を一層向上すべく改良を加えたものである。すなわち、本発明の目的は、高温時の安定性に優れた電気粘性流体用油状媒体及びそれを用いた低い消費電力で、高い電気粘性流体効果を示し、高温時の安定性に優れ、特に電流を印加した場合の応力のゆらぎ幅が10Pa以下であるパルス応答性に優れた電気粘性流体を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の電気粘性流体用油状媒体は、0〜90モル%のジメチルシロキサン単位及び10〜100モル%のフルオロアルキルメチルシロキサン単位を含むシロキサン重合体を、加熱温度80〜160℃、加熱時間0.5〜10時間の条件で熱処理して得られた重合体からなる油状媒体であって、前記油状媒体に含まれるシロキサン重合体の数平均分子量が500〜1000、分子量分布の分散度が1.05〜1.25であり、前記油状媒体に含まれるイオン性の不純物が5ppm以下であり、且つ、前記油状媒体に変性シリコーンを含まないことを特徴とする。
【0007】
ここで、イオン性の不純物とは、電流を印加したときに正又は負の電荷を帯びる不純物を指すものである。
【0008】
本発明の請求項2に記載の電気粘性流体用油状媒体は、請求項1に記載の電気粘性流体用油状媒体であって、前記シロキサン重合体と、液状ジメチルポリシロキサンとの混合物を、加熱温度80〜160℃、加熱時間0.5〜10時間の条件で熱処理して得られた油状媒体であって、前記油状媒体に含まれるシロキサン重合体及び液状ジメチルポリシロキサンの数平均分子量が500〜1000、分子量分布の分散度が1.05〜1.25であり、前記油状媒体に含まれるイオン性の不純物が5ppm以下であり、且つ、前記油状媒体に変性シリコーンを含まないことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項に記載の電気粘性流体は、前記請求項1又は2記載の電気粘性流体用油状媒体中に、誘電体粒子を分散してなり、1kV以上の定電圧を印加した場合のパルス応答における応力のゆらぎ幅が40Pa以下であることを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項に記載の電気粘性流体用油状媒体は、請求項に記載の電気粘性流体であって、前記誘電体粒子が、炭素原子と水素原子との数の比が1.70〜3.50の範囲であるような炭素質粉末であることを特徴とする。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の電気粘性流体用油状媒体は、0〜90モル%のジメチルシロキサン単位及び10〜100モル%のフルオロアルキルメチルシロキサン単位を含むシロキサン重合体を、加熱温度80〜160℃、加熱時間0.5〜10時間の条件で熱処理して得られた重合体からなる油状媒体であって、前記油状媒体に含まれるシロキサン重合体の数平均分子量が500〜1000、分子量分布の分散度が1.05〜1.25であり、前記油状媒体に含まれるイオン性の不純物が5ppm以下であり、且つ、変性シリコーンを含まない油状媒体である
【0013】
シロキサン重合体としては、ジメチルシロキサン単位を0〜90モル%、さらに40〜80モル%、フルオロアルキルメチルシロキサン単位を10〜100モル%、さらに20〜60モル%からなる共重合体が好ましい。
【0014】
フルオロアルキル基としては、3,3,3−トリフルオロプロピル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル基等のパーフルオロアルキル基含有基が例示される。これらの基の中でも、合成が容易で良好な特性が得られることから、3,3,3−トリフルオロプロピル基が好ましい。
【0015】
電気粘性効果を増大させるにはフルオロシリコーンオイルの如き誘電率の高い液相を用いることが考えられ、その最適なものとして3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサンとジメチルシロキサンとの共重合体を用いることを提案したが、通常の方法で得られた共重合体においては、フルオロアルキルメチルシロキサン単位の割合が50モル%を超えると空気中の水分の影響を受け易くなり導電性が増して使用に適さないとされたが、本発明にある如く、熱処理を行って、前記の条件を満たすものであれば、フルオロアルキルメチルシロキサンの単独重合体をも、液相として使用しうることが明らかとなった。
【0016】
次に、本発明に用いられるシロキサン重合体の合成方法について説明する。この合成方法は公知の方法で行えばよく、例えば、フルオロアルキル基を含有する環状ポリシロキサンとヘキサメチルジシロキサン及び環状ポリアルキルシロキサンとを、トリフルオロメタンスルホン酸や活性白土のような酸性触媒下にて重合する方法(特公昭35−8345号、同47−47880号公報参照)などにより合成することができる。本発明に用いるフルオロシリコーン重合体を得る場合は、重合時の反応を、少なくとも80℃で2時間、130℃で2時間以上とすることが好ましい。重合体形成後、得られる重合体の均質化を図るため、12時間以上の平衡化反応を行うことが好ましい。また、反応中に十分攪拌を行うことによって、得られる重合体中のモノマー単位をランダム化することが好ましい。攪拌が十分でないと、ジメチルシロキサン単位とフルオロアルキルメチルシロキサン単位とがブロック化した共重合体が形成され、安定性、耐久性の観点から、好ましくない。
【0017】
電気粘性流体の液相に適する油状媒体を得るためには、原料及び反応容器中の水分を十分除去することが好ましい。水分が残存していると、末端のメチル基がシラノールとなる可能性があり、シラノールの存在は、電気粘性流体の応答性に悪影響を及ぼすためである。得られた重合体中にシラノールが認められた場合には、シリル化処理を施すことによって、応答性への影響を回避しうる。また、反応容器中に残存する界面活性剤の残留イオンが油状媒体の電導度を向上させる働きがあるため、反応容器の洗浄にも注意をはらうことが必要である。
【0018】
本発明においては、これらのシロキサン重合体又はこれらのシロキサン重合体とジメチルポリシロキサンとの混合物に熱処理を施して油状媒体を得るものであるが、熱処理は、80℃〜160℃の温度で、0.5時間以上、さらに1時間以上行うことが好ましい。加熱温度が80℃未満であると、重合体中に含まれる揮発成分の除去が十分に行えず、160℃を超えると所望の物性に到達した重合体分子をも揮発させる虞があるためいずれも好ましくない。加熱処理は、通常、重合反応終了後のシロキサン重合体又は前記シロキサン重合体とジメチルポリシロキサンとの混合物を反応容器中で、さらに、105℃で1時間保持することによって行われる。
【0019】
前記フルオロアルキルメチルシロキサン単位を含むシロキサン重合体とジメチルポリシロキサン、即ち、ジメチルシロキサンの単独重合体とを混合して用いる場合、前記シロキサン重合体に含まれるジメチルシロキサン単位とジメチルポリシロキサンに含まれるジメチルシロキサン単位の数の合計に対するフルオロアルキルメチルシロキサン単位の数の割合が0.1以上の範囲であることが好ましい。
【0020】
加熱処理後に得られた油状媒体中のシロキサン重合体又はジメチルポリシロキサンの数平均分子量は、500から1000であることが必要である。500未満であると、低分子量成分が多く揮発し易くなり、1000を超えると高粘度となるため、好ましくない。また、分子量分布の分散度が1.05〜1.25であることが必要であり、1.05〜1.20であることが好ましい。分子量分布の分散度は1に近づく程理想的であるが、工業的には1.05程度であれば、本発明の目的を達成しうるものである。一方、分子量分布の分散度が1.25を超えるとオイルの組成が不均一となるため、好ましくない。これら重合体の数平均分子量及び分子量分布は常法によって測定することができる。
【0021】
また、得られた油状媒体に含まれるイオン性の不純物が5ppm以下であることが必要である。前記したように、ここでイオン性の不純物とは、電流を印加したときに正又は負の電荷を帯びる不純物を指すものであり、例えば、シロキサン重合体の合成に用いられる反応容器に付着した界面活性剤の残存イオンや反応に用いられる触媒由来のイオン性不純物、具体的には、Na、K、Cl、CHCOO等が挙げられる。イオン性の不純物は、電気粘性効果の観点から0.1ppm以下であることが好ましく、原子吸光分析法や、ICP等を用いて分析した場合、検出限界以下であることがさらに好ましい。イオン性の不純物の定量方法としては、ICP−MASS等の質量分析計、質量分光器を用いて質量スペクトルを測定する方法が挙げられる。
【0022】
液相である前記油状媒体は、80℃における体積抵抗率が1011Ω・m以上のものが好ましく、特に1013Ω・m以上のものが好ましい。特に本発明の油状媒体は、シロキサン重合体を含むシリコーンオイルからなるため、ゴム状の弾性を有する材料や各種高分子材料と直接接触させて用いても劣化を起こさず、各種用途に好ましく用いられる。これらの油状媒体が前記イオン性の不純物を5ppmを超えて含有している場合、80℃における体積抵抗率が1011Ω・m以上の絶縁特性を得るのが困難となる。
【0023】
本発明の油状媒体は、その粘度が25℃において0.65〜500センチストークス、好ましくは5〜200センチストークス、さらに好ましくは10〜50センチストークスであることが好ましい。好適な粘度の液相を用いることにより、分散質である粉体を効率よく安定に分散させることができる。油状媒体の粘度が500センチストークスを超えると電気粘性流体の初期粘度が高くなり、電気粘性効果による粘度変化が小さくなる。また、0.65センチストークス未満であると、揮発しやすくなり、分散媒の安定性が悪化する。
【0024】
次に、第2の発明である電気粘性流体について説明する。
本発明の電気粘性流体は、前記の如き電気粘性流体用油状媒体を液相として、前記液相中に炭素質粉体等の誘電体粒子を分散させてなり、パルス応答性における応力のゆらぎ幅が10Pa以下のものである。
【0025】
分散質として好適な誘電体粒子としては、炭素含有量80〜97重量%の炭素質粉体が好ましく、特に好ましくは炭素含有量85〜95重量%である。また、炭素質粉体のC/H比(炭素原子/水素原子比)は、1.2〜5のものが好ましく、特に好ましくは1.70〜3.50である。粉体の形状は任意であるが、真球状の形状をなすものが好ましい。
【0026】
一般に電気粘性流体の分散相の電気抵抗は半導体領域にあることは古くから知られているが〔W.M.Winslow:J.Appl.Physics 第20巻、第1137頁(1949年)〕、炭素含有量が80重量%未満で、且つ、C/H比が1.2未満の炭素質粉体は絶縁体であり、電気粘性効果を示す液体は殆ど得られない。一方、炭素含有量が97重量%を超え、且つ、C/H比が5を超えるものは導電体に近く、電圧を印加しても過大電流を示し、電気粘性効果を示す流体は得られない。
【0027】
本発明の電気粘性流体用粉体として好適な前記C/H比を有する具体的材料としては、コールタールピッチ、石油系ピッチ、ポリ塩化ビニルを熱分解して得られるピッチ等を微粉砕したもの、それらのピッチ又はタール成分を加熱処理して得られる各種メソフェーズからなる微粉末、すなわち、加熱により形成される光学的異方性小球体(球晶又はメソフェーズ小球体)を溶剤でピッチ成分を溶解し、分別することによって得られる微粉末さらにそれを微粉砕したもの、ピッチ原料を加熱処理によりバルクメソフェーズ(例えば、特開昭59−30887号記載のもの)とし、それを微粉砕したもの、また、一部晶質化したピッチを微粉砕したもの、さらに、フェノール樹脂、フラン樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂を低温で炭化したものなどのいわゆる低温処理炭素微粉末が例示され、さらに、無煙炭、瀝青炭等の石炭類及びその熱処理物を微粉砕したもの、ポリエチレン、ポリプロピレン又はポリスチレン等の炭化水素系、ビニル系高分子とポリ塩化ビニル又はポリ塩化ビニリデン等の塩素含有高分子との混合物を加圧下で加熱することによって得られる炭素球、セルロース球、不飽和ポリエステル球等が挙げられる。これら誘電体粒子もまた、電気粘性流体に配合する前に、イオン性の不純物を予め除去することが好ましい。
【0028】
誘電体粒子の粒径は、平均直径が約0.01〜100μmであり、好ましくは0.1〜20μmさらに好ましくは0.5〜5μmの範囲である。100μmを超えると粒子の均一な分散状態を保持することが困難となり、0.01μm未満であると電気粘性流体の初期粘度が増加するため電気粘性効果の観点から好ましくない。
【0029】
前記誘電体粒子を分散質とし前記油状媒体からなる液相中に分散させることにより、電気粘性流体を得るものであるが、電気粘性流体中に、分散質である誘電体粒子は1〜60重量%、好ましくは20〜50重量%含有され、液相である油状媒体は99〜40重量%、好ましくは80〜50重量%含有される。分散質の量が1重量%未満であると電気粘性効果が小さく、60重量%を超えると電圧を印加しないときの初期粘度が著しく高くなる。
【0030】
本発明においては、電気粘性流体用油状媒体には、電流を印加したときに正又は負の電荷を帯びる不純物を0.05ppm以上含まないことが必要があるが、電気粘性流体から考えると、分散質である誘電体粒子中に含まれるイオン性の不純物、例えば、ナトリウム、カルシウム、錫、マンガン、白金等の量も少ないことが好ましい。誘電体粒子中に含まれる不純物は、誘電体粒子として汎用の炭素質粉体を合成するのに用いられる原料、触媒に由来するものが多い。また、添加物に混入している場合もあり、最終生成物である電気粘性流体中に含まれる総量が少ないことが好ましい。不純物を含有しない分散質粉体を得るには、(1)炭素質粉体の原料として前記不純物を含まない物質を用い、製造工程においても、触媒等の不純物が混入しないよう制御する方法、(2)炭素質粉体の合成時に電気泳動を利用して不純物を除去する方法、更に、(3)不純物の量が制御されていない通常の炭素質粉体を用いる場合、不純物を可溶化する溶媒で洗浄し、ろ過を行って不純物を除去する方法等が挙げられる。
【0031】
本発明の電気粘性流体には、本発明の効果を損なわない範囲において、前記炭素質粉体以外の誘電体粒子や、界面活性剤、分散剤、無機塩類等の添加物を併用または配合することができるが、これら、添加物についてもイオン性の不純物の含有量が5ppm以下のものを用いることが好ましい。
【0032】
また、本発明においてパルス応答性が良好であるとは、一定電圧を印加した際に、その印加時間内において、電気粘性流体の剪断力の増分すなわち電気粘性効果が一定値を示すことを指し、パルス応答性における応力のゆらぎ幅は、一定電圧を印加している時間内における応力の変化を測定して求める。本発明の電気粘性流体では、1kV以上の定電圧を印加した場合の応力のゆらぎ幅は40Pa以下、好ましくは10Pa以下であり、1kV未満の定電圧を印加した場合の応力のゆらぎ幅は30Pa以下、好ましくは5Pa以下である。
【0033】
【実施例】
以下に具体例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0034】
特性評価
(1)電気粘性流体の特性
初期並びに2kV電圧印加時の電気粘性流体の粘度を二重円筒型回転粘度計を使用して、室温(約25℃)で、剪断速度366/秒における見掛けの粘度として測定した。2kV電圧印加時の粘度は、内外円筒間に直流電場を印加したときの見掛けの粘度として測定した。
【0035】
2kV電圧印加時の電気粘性流体の電流密度をレオメトリックスファーイースト社製、RDS−II型装置を用いて、室温(約25℃)で測定した。
【0036】
(実施例1)
レゾール型フェノール樹脂1000gを、塩酸(粉体に対して1重量%相当量)とともに水中で混合し、100℃にて8時間攪拌した後、ろ過、洗浄、乾燥する。かくして得られた粉体を、アルゴン雰囲気中で600℃で5時間炭化して、炭素質球状粉体を得た。これを分級して平均粒径約7.8μmの電気粘性流体用粉体を得た。得られた炭素質粉体10.8g(30体積%)を、液相である25℃における粘度8.7センチストークスのジメチルシロキサンと3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサンとの共重合体(共重合体中の3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサン単位の割合が30モル%)を105℃で1時間熱処理して得られた油状媒体(体積抵抗率:3.5×1012Ω・m、比誘電率:4.5、平均分子量:900、分子量分布の分散度:1.13、イオン性の不純物含有量:0.1ppm)70体積%によく分散し、電気粘性流体を得た。
【0037】
得られた電気粘性流体の初期粘度及び電圧2kV/mm印加時の粘度並びに電流密度を測定し、その結果を表1に示した。
【0038】
(実施例2)
実施例1と同じ炭素質粉体10.8g(30体積%)を、液相である25℃における粘度10センチストークスのジメチルポリシロキサン35体積%と8.7センチストークスのジメチルシロキサンと3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサンとの共重合体(共重合体中の3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサン単位の割合が30モル%)35体積%との混合物を105℃で1時間熱処理して得られた油状媒体(体積抵抗率:1.0×1013Ω・m、比誘電率:3.6、平均分子量:950、分子量分布の分散度:1.13、イオン性の不純物含有量:0.1ppm)によく分散し、電気粘性流体を得た。
【0039】
得られた電気粘性流体を実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
(比較例1)
実施例1と同じ炭素質粉体10.8g(30体積%)を、液相である25℃における粘度8.7センチストークスの、ジメチルシロキサンと3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサンとの共重合体(共重合体中の3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサン単位の割合が30モル%)である油状媒体(体積抵抗率:1.2×1011Ω・m、比誘電率:4.4、平均分子量:860、分子量分布の分散度:1.18、イオン性の不純物含有量:6ppm)70体積%によく分散し、電気粘性流体を得た。
【0040】
得られた電気粘性流体を実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
(比較例2)
実施例1と同じ炭素質粉体10.8g(30体積%)を、液相である25℃における粘度10センチストークスのジメチルポリシロキサン35体積%と8.7センチストークスのジメチルシロキサンと3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサンとの共重合体(共重合体中の3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサン単位の割合が30モル%)35体積%との混合物である油状媒体(体積抵抗率:1.0×1012Ω・m、比誘電率:3.5、平均分子量:840、分子量分布の分散度:1.19、イオン性の不純物含有量:6ppm)によく分散し、電気粘性流体を得た。
【0041】
得られた電気粘性流体を実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
(比較例3)
実施例1と同じ炭素質粉体10.8g(30体積%)を、液相である25℃における粘度8.7センチストークスの、ジメチルシロキサンと3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサンとの共重合体(共重合体中の3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサン単位の割合が30モル%)である油状媒体(体積抵抗率:1.0×1011Ω・m、比誘電率:4.4、平均分子量:890、分子量分布の分散度:1.34、イオン性の不純物含有量:0.4ppm)70体積%によく分散し、電気粘性流体を得た。
【0042】
得られた電気粘性流体を実施例1と同様に評価し、その結果を表1に示した。
【0043】
【表1】
Figure 0003572111
【0044】
表1の結果より明らかなごとく、本発明の電気粘性流体はいずれも、電圧印加時に充分な粘度が得られ、初期粘度に比較して電圧印加時の粘度が高く、高い電気粘性効果を示し、応答性も良好であった。一方、熱処理せずイオン性の不純物を5ppm以上含有する比較例の電気粘性流体は、初期粘度と電圧印加時の粘度の差が小さく、充分な電気粘性効果は得られなかった。さらに、電圧印加時の粘度の変化を観察したところ、本発明の電気粘性流体は、応答性が良好であり、且つ、2kv/mmの定電圧を30秒間印加している間における応力の変化は2Paであり、安定であったが、比較例の電気粘性流体は、同様の定電圧印加を行っているにもかかわらず、粘度が経時的に変化し、30秒間の応力の変化が20〜55Paと電気粘性効果の安定性が悪いことがわかった。
【0045】
【発明の効果】
本発明の電気粘性流体用粉体は、前記構成としたので、高い電気粘性効果を示し、応答性、定電圧印加時の安定性に優れるという効果を示した。

Claims (4)

  1. 0〜90モル%のジメチルシロキサン単位及び10〜100モル%のフルオロアルキルメチルシロキサン単位を含むシロキサン重合体を、加熱温度80〜160℃、加熱時間0.5〜10時間の条件で熱処理して得られた重合体からなる油状媒体であって、前記油状媒体に含まれるシロキサン重合体の数平均分子量が500〜1000、分子量分布の分散度が1.05〜1.25であり、前記油状媒体に含まれるイオン性の不純物が5ppm以下であり、且つ、前記油状媒体に変性シリコーンを含まないことを特徴とする電気粘性流体用油状媒体。
  2. 前記シロキサン重合体と、液状ジメチルポリシロキサンとの混合物を、加熱温度80〜160℃、加熱時間0.5〜10時間の条件で熱処理して得られた油状媒体であって、前記油状媒体に含まれるシロキサン重合体及び液状ジメチルポリシロキサンの数平均分子量が500〜1000、分子量分布の分散度が1.05〜1.25であり、前記油状媒体に含まれるイオン性の不純物が5ppm以下であり、且つ、前記油状媒体に変性シリコーンを含まないことを特徴とする請求項1記載の電気粘性流体用油状媒体。
  3. 前記請求項1又は2記載の電気粘性流体用油状媒体中に、誘電体粒子を分散してなる、1kV以上の定電圧を印加した場合のパルス応答における応力のゆらぎ幅が40Pa以下であることを特徴とする電気粘性流体。
  4. 前記誘電体粒子が、炭素原子と水素原子との数の比が1.70〜3.50の範囲であるような炭素質粉末であることを特徴とする請求項記載の電気粘性流体。
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