JP3571788B2 - 角コラムの溶接裏当て用鋼板 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、角コラムを用いた鉄骨構造物において角コラムの角部を溶接する場合の溶接裏当て金に関わるものであり、角コラムとして代表的なものは、冷間成形角形鋼管が挙げられる。
【0002】
【従来の技術】
鉄骨建築の柱によく使用される角コラムは、梁との接合方法として図2に示されるような角コラム2を鋼板(ダイヤフラムと呼ばれる)に溶接接合し、そのダイアフラム鋼板3に梁4を溶接接合する、いわゆる通しダイアフラム接合形式と呼ばれる方法が多用される。この接合形式を採用する場合、柱である角コラムとダイアフラム鋼板の溶接は図3に溶接部の断面を示すように一般に突き合わせ溶接が用いられ、溶接に際して裏当て金1が用いられる。角コラムの4つの角部はある曲率をもった断面形状をなしており、このため裏当て金もその曲率に沿った形状のものが用いられる。
【0003】
角コラムの角部内面と裏当て金の間の隙間は、良好な溶接をするためにできるだけ密着させる必要があるが、角コラムの角部の曲率の大きさは角コラムの板厚によって異なることや、4つの角部で製造上のバラツキがあり、さらに、角コラムの製造メーカーによって角部曲率の狙い値が異なること等のため、鉄骨の加工業者は購入した角コラムの現物に合わせて裏当て金を製作するのが普通である。しかしながら、上記のような理由で、角コラムの角部内面曲率のバラツキがあること、および鋼板を曲げて裏当て金にするのに使用する治具では曲げ曲率の微妙な調整が難しいため、角コラムの角部内面に密着する裏当て金を製作することは極めて困難で、通常2mm程度までの隙間を許容しているが、裏当て金製作は技能を要する上、また隙間が大きい場合溶接に際し溶接欠陥の原因となり、角コラムを用いた鉄骨構造物の製作品質および経済性を損なう大きな問題となっている。
【0004】
このため角コラムへの裏当て金の取り付け方法についていくつかの提案がなされている。たとえば特開平4−284997号公報においては裏当て金とすべき長尺のスリット板をコラム内周長さに合わせた円筒状の巻き物に成型して切断し、これをコラム内の取り付け位置に持ち込み、コラムを転回しながらコラム内壁に端から順次ローラ等で押しつけてスポット溶接で固定していく方法が示されている。しかしながら、この方法はコラムの移送スキッドや転回装置など大がかりな設備が必要となり、適用できる場合が限られ現場作業には適さない。
【0005】
一方、このような大がかりな設備を要さずに適用できる方法として実開昭63−157497号に示されるような裏当て金とすべき平鋼に切り欠き溝をあらかじめ設けておき、使用するときに角コラムの内壁に合わせて曲げるようにするものがある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
前記の実開昭63−157497号の平鋼にあらかじめ溝を設けておく方法においては、角コラムのそれぞれのコーナー部に対応する位置に一定の幅を有する角形の溝を4個ずつ設けたものが示されている。本発明者等はこの考案の実施例に示された裏当て金について実験してみたが良好な結果は得られなかった。すなわち図4は上記考案の裏当て金の曲げた部分を示す斜視図であるが、溝を設けてあった部分20の背面に凹み21が生じ折れ線的な曲がりとなり、これらにより角コラムの内壁との間に隙間を生じ溶接不良すなわちルート部の欠陥の原因となることがわかった。この実開昭63−157497号には裏当て金の溝は形状、寸法、深さ、ピッチ数を適宜変化させると記載されているものの、具体的な場合に応じてどのような考え方でどのようにしたら良いのかといったことは一切示されていない。
【0007】
上記のような問題に対し、本発明は角コラムの内面側の曲率のバラツキがある場合でも、溶接上全く問題のない程度まで隙間を極力小さく抑えることができ、かつ加工し易い裏当て金用の鋼板を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するものであって、角コラムの突き合わせ溶接のための、真直な状態で提供され角コラムの内寸に合わせて曲げて用いる裏当て用鋼板において、角コラムそれぞれの角部内側の曲面部に当てるべき部分に一群の数が8個以上10個以下のV溝の群を設け、前記V溝の深さは前記裏当て用鋼板の板厚から1.7ないし4mm引いた値とし、V溝の角度は一群のV溝の数をnとしたとき90/n度以上110/n度以下であることを特徴とする角コラムの溶接裏当て用鋼板である。
【0009】
また上記の溶接裏当て用鋼板における少なくとも1つのV溝の群の片側または両側にそれぞれの側について2個以下のV溝を、角コラムの角部内側の曲面部に当てるべき部分の長さより長い範囲に亘って追加することも特徴とする。さらに前記の角コラムの角部内側の曲面部に当てるべき部分の長さは、角コラム角部内側の曲率半径をr、V溝の部分での裏当て用鋼板の残存厚さをtb とすると、π(r−tb )/2であること、裏当て用鋼板の全長の2個所または4個所にV溝の群を設けると共に、前記裏当て用鋼板のそれぞれの長さ方向の端から最初のV溝に至る長さに差を設けることも特徴とする。
【0010】
【作用】
本発明は溶接裏当て用鋼板に切り欠き溝を設けたものであるが、理論的解明と実験を繰り返すことにより最適の形状を見出したものである。本発明の溶接裏当て用鋼板は図1の斜視図を示すように裏当て用鋼板5の曲げるべき部分にそれぞれ複数のV溝6を設けたものである。このとき図5(a)に示す裏当て用鋼板のそれぞれのV溝の群の中央部間の距離mと図5(b)に示す角コラムの隣り合う角部内面の曲面部の中央部間距離とを一致させる。なお図5(b)の距離mは正確には角コラムの内面そのものではなく、後に説明するように図8(b)における裏当金1の溝の底を連ねる曲面10およびその延長上における距離となる。図1および図5(a)は2箇所にV溝の群があるが、4箇所にV溝を設けたものを使用して角コラム内周全部を1本の裏当て金で溶接を行なうこともできる。
【0011】
上記のように溝の形をV形にすることにより、裏当て用鋼板を曲げたとき溝の面同士がほぼ密着するようにでき、空間が残ることなく好ましい。これにより曲げるときの力を少なくするため溝の部分における裏当て用鋼板の残存板厚が小さく、溝のあった部分までも溶接時に溶けても溶融金属が空間に溶け落ちるおそれがなくなる。なおV溝の形状は底の部分が完全に鋭角でなく多少丸味を帯びていても実用上は差支えなく、加工の能率を上げるため、このようにすることもできる。
【0012】
本発明においてV溝は各群において8個以上10個以下とする。すなわち裏当て用鋼板を曲げたときに角コラム内側の曲面部に当たるべき部分の長さの範囲において8個以上10個以下のV溝を設ける。さらに角コラムの各辺の長さや曲率の誤差に対処するため上記長さの範囲の両側にそれぞれ1個ないし2個のV溝を追加してもよい。またV溝の深さは裏当て用鋼板の板厚から1.7ないし4mm引いた値とする。これらの条件は理論的考案と実験による検証によって定めたものであり、以下にその理由を述べる。
【0013】
V溝の深さは人力で曲げるためには裏当て用鋼板のV溝部分の残余板厚が3mm以下になるようにする必要がある。万力などの簡単な治具を用いて曲げることも考慮すると4mm以下とすべきである。この曲げに必要とする力は以下のようにして計算することができる。すなわち図6に示すように溝部の残余厚さをtb 、鋼板の板幅をw、引張り強さをσB とすれば応力分布7は図示したようになるから合力Tはtb ×w×σB となり、曲げモーメントMは曲げの支点がV溝の底、力点が残余板厚の半分の位置として下式のようになる。
M=T×tb /2=w・tb 2 ・σB /2
【0014】
たとえばσB =50kg/mm2 、w=25mm、tb =2mmなら250kg・cmとなり、曲げ位置から10cmずつ離れた位置を持って25kgの力で曲げられることとなり人力で容易に曲げられる。これがtb =4mmとなると1000kg・cmとなり万力などの工具を用いても限界となる。このため本発明においてはV溝の深さの下限は裏当て用鋼板の板厚から4mmを引いた値とした。一方上限は残余板厚があまりにも小さいと強度の点で取り扱い上好ましくないので裏当て用鋼板板厚から1.7mmを引いた値とした。
【0015】
本発明者は、裏当て用鋼板を使用に当たって曲げたときに図4に示したような凹み21が曲げ部の外面にできる原因について考察した。その結果曲げ部の外面の伸びがその材料の一様伸びの範囲内にあればよいことが判明した。すなわち材料の引張り試験において応力−歪曲線の最大応力に達するまでは材料が一様に伸びていくが、最大応力に達すると材料の一部分がくびれ始め、やがて断面の細くなった位置で破断する。すなわち上記の凹み21の発生は引張り試験における材料のくびれ発生に対応するものであって、一様伸びの範囲に止めればこのような凹みは発生しないことがわかった。
【0016】
この条件を満足するようなV溝の条件は以下のようにして求められる。すなわち図7(a)に示したV溝のある部分を図7(b)のように曲げると塑性変形部分8が生ずる。最大応力線での合計応力と降伏開始線での合計応力が等しいという条件から下記(1)式が成立する。
σy ×L1 ×w=σB ×tb ×w ・・・・・ (1)
【0017】
ただし、σy は降伏応力、σB は引張り強さ、wは板幅である。一方図7(b)の直角三角形において(2)式が成立する。
L1 2 =tb 2 +(LP /2)2 ・・・・・ (2)
【0018】
(1)式と(2)式からL1 を消去し、通常の軟鋼でのσb /σy =1/0.8=1.25の値を入れると(3)式の関係が求まる。
Lp =1.5tb ・・・・・・・・ (3)
【0019】
一方、表面の歪量eは元の長さsとすると伸び量は図7(a)における幾何的対称性よりほぼ(tb /ta )・g0 となるから(4)式のようになる。
e=(tb /ta )・g0 /s ・・・・・ (4)
【0020】
一方、歪量の定義により(5)式の関係が成立する。
Lp =(1+e)s ・・・・・・・・ (5)
【0021】
したがって(4)式と(5)式よりsを消去し、さらに(3)式の関係より(6)式が導ける。
【0022】
一方、一様伸びの範囲は軟鋼においてはe≦20%位であるから、これにより(6)式から(7)式が導き出せる。
g0 ≦0.25ta ・・・・・・・・ (7)
【0023】
つまり、図4に示したような曲げた部分の外側における深い凹みの発生を防止するには、V溝の幅は深さの4分の1以下、V溝の角度としては14.2度以下にする必要があるということになる。
【0024】
ところで、溝の深さta は先に述べたように曲げやすさと強度を確保するため裏当て用鋼板の残余厚さを1.7〜4mmとすべきという条件で定まり、さらに溝の幅g0 は上記のようにこの溝の深さta との関係で制限されるということになる。このことから以下のように裏当て用鋼板のそれぞれの曲げ部に設けるV溝の数に制限を生ずる。
【0025】
図8は(a)図に示す裏当て用鋼板を角コラムの一つのコーナー部で曲げて(b)図のようにした状況を示している。ここにおいて裏当て用鋼板板厚t、コラムの内面の曲率半径をrとすれば角コラムの内面の曲面部の長さはπr/2であり、また裏当て用鋼板を曲げたあとの内面部の長さはπ(r−t)/2となる。またV溝の底を連ねる平面9上においては中立面となり、裏当て用鋼板を曲げたとき長さが不変である。このV溝の底を連らねる曲面10の長さはπ(r−t+ta )/2となる。したがってV溝の幅と数をそれぞれg0 、nとすれば(8)式が成立する。
π(r−t+ta )/2−π(r−t)/2=g0 n ・・・ (8)
【0026】
(8)式を変形すれば(9)式になる。
g0 =πta /(2n) ・・・・・・・・ (9)
【0027】
(9)式を(7)式に代入すれば(10)式が成立する。
n≧2π ・・・・・・・・ (10)
【0028】
つまり必要なV溝の数は角コラムの角部の曲率や裏当て用鋼板の板厚、V溝の深さ等に無関係であって、7本以上あればよいという極めて単純な結論になる。実際に本発明者等は種々の実験を行なったが、曲げたときの外面に凹みのない良好な曲げを行なうにはV溝の数は9本以上が好ましく、限界は8本であり、7本では外面に凹みが現われやや不満足であった。
【0029】
本発明は上記のような理論的考案と実験とを繰り返すことによりなされたものであり、上記の結果からV溝の数は一つの曲がり個所について8個以上とする。一方、数が多くなると裏当て用鋼板の溝加工の手間も増え、その割りに利益が少ないので10個以下が適当である。またこの8個ないし10個のV溝の群を設ける区間の長さは以下のようにして求められる。
【0030】
図8(a)において隣り合うV溝の中心間の距離すなわちピッチをpとすると、両端のV溝の外側にp/2ずつ足した長さkの部分が、曲げたときに角コラムの角部内側の曲面部、すなわち四分円の円弧に当たれば最も円滑に曲げられることになる。
【0031】
ところで裏当て用鋼板を曲げたとき溝の底を連らねる面7より外側の部分は塑性変形により伸び、外側の表面での量は最大となる。そしてその量は(11)式のように計算できる。
πr/2−π(r−t+ta )/2=π(t−ta )/2=πtb /2・・・・・・・ (11)
【0032】
すなわち曲げたときの伸び量はV溝の底の部分における裏当て用鋼板の残存厚さtb にのみ依存するということであり、たとえば残存厚さが2mmであれば3.1mmの伸びになる。なお厳密には曲げることによって残存厚さtb 自身も小さくなるがここでは無視している。したがって溝をつけるべき区間の長さkはコラムの曲面部の長さから裏当て金を曲げたときの(11)式による外面部の伸びを引いて(12)式のようになる。
k=(πr−πtb )/2=π(r−tb )/2 ・・・・ (12)
【0033】
本発明における裏当て用鋼板の角コラムの角部内側の曲面部に当てるべき部分というのは上記kの長さの部分と定義されることになるが、図8(a)に示したようにこの区間をV溝の本数で割ったピッチでV溝を設ければよい。しかし図8(a)のようにkの区間内において両端のV溝の外側にp/2の長さを正確に両側に設けなくても、この区間内に8本ないし10本のV溝が入っていれば実用上差支えない。なお先に図5(b)のmの長さの測定位置に関して、角コラムの内面そのものでなく、図8(b)のV溝の底を連ねる曲面10およびその延長上であると述べた。このことはこの位置が中立面となり曲げたとき長さが不変ということから明らかである。
【0034】
一方、角コラムのコーナー部の曲率やコーナー部間の長さに誤差があることを考慮してV溝の数を増やし、一群のV溝の端から端までの長さを角部内側の曲面部の長さより長くすることもできる。この場合片側か両側にそれぞれの側について2個以下の溝を追加すればよい。したがって、たとえば曲面部における一群のV溝の数が9個のとき、さらに両側に追加する場合、V溝は最多で片側に2個ずつ増えて13個になる。追加するV溝の間隔は通常は曲面部と同じでよい。通常は全部のV溝の群に対して両側に同じように追加すればよいが、角コラムの寸法誤差の状況によっては一部のV溝の群に対してのみ追加してもよい。
【0035】
またこのV溝の角度の下限はコーナー部がV溝全体で直角に曲げるためにV溝の数をnとして90/n度以上にする必要がある。一方、角コラムの曲率の誤差やV溝加工の誤差などに対処するため上記90/n度より大きい方がよいが、110/n度を超えると曲げたときの隙間が全体に大きくなるので110/n度以下にするのが好ましい。一方、V溝の角度は先に述べたように曲げたとき裏当て材の外面に凹みが生じないためには理論上は14.2度以下にする必要がある。上記V溝の角度の上限110/nのときV溝が8本であれば13.7度になりこの条件を満足している。
【0036】
この裏当て用鋼板の使用手順をV溝の群が2ヵ所の場合で説明すると、鉄骨加工現場で図9に示すように、人手等でもってチャンネル状の裏当て金11にまず折り曲げ、角コラムの内部に挿入し、角コラムの内面にほぼ沿わせる。次に、チャンネル状の裏当て用鋼板の一部を万力等で角コラムに固定させ、次に角部を金槌等で叩くことによって容易に裏当て用鋼板の曲げ部を角コラムの角部内面に沿わせることができる。
【0037】
一つの裏当て用鋼板をチャンネル状に曲げ、角コラムの内面に沿わせることができれば、次にもう一つの裏当て用鋼板を用意し、同様の手順で角コラムの対辺側に沿わせる。このとき裏当て用鋼板のそれぞれの長さ方向の端から最初のV溝に至る長さに差を設けてあると、チャンネル状に曲げた部分の片方が長くなっているので、二つの裏当て用鋼板の端部同士が突き合わされるようにそれぞれの端部12を切断して寸法調整ができる。角コラムの内面全長に裏当て金を構成し、所定の溶接ルート間隔を確保して、当該裏当て金を仮付け溶接する。
【0038】
裏当て用鋼板の全長に4個所のV溝の群を設けてある場合も上記と同様な方法で曲げて図10のように裏当て金13とすればよい。このとき裏当て用鋼板のそれぞれの長さ方向の端から最初のV溝に至る長さに差を設けて、一方を十分に長くしておけば余計な部分14は切断することによって角コラムの内寸に正確に合わせることができる。なお1本の裏当て用鋼板におけるV溝の群の数は上記の2または4に限定されるものではなく、図11のように1個所のものを使用して裏当て金15とすることもできる。この場合はこの図のようにV溝をつけた本発明の裏当て用鋼板としては短いものを使用し、間は真直ぐな鋼板の裏当て金16を用いてもよい。
【0039】
【実施例】
厚さ6mmおよび9mm、幅25mmの鋼板を用いてV溝の数、形状を変えた裏当て用鋼板を製作して試験を行なった。対象とする角コラムの内側の曲率半径は23mmであって、曲線部分の四分円の弧の長さは36mmとなる。表1に試験の条件および結果を示す。
【0040】
【表1】
【0041】
この表に示すように本発明の条件においてはV溝部の残存厚さtb は2mm、3mmおよび4mmで行なった。裏当て用鋼板を曲げたときに角コラムの角部内側の曲面部に当てるべき部分の長さkは、前記(12)式によりV溝部の上記残存厚さが大きくなるにしたがって、それぞれ33.0mm、31.4mm、30.0mmと短くなる。V溝のピッチpは上記の長さkをV溝の本数で割ったもので、図8(a)のようなV溝の配置になる。また番号4は角コラムの寸法誤差に対応するように一群のV溝を設ける区間を上記kの長さより長くし、それに応じて片側に2個ずつV溝の数を増やしたものである。これら本発明の条件の裏当て用鋼板においては曲げたとき凹みは発生せず、すべて良好な結果が得られた。
【0042】
一方、比較例である番号12、13はV溝の数が少ないため曲げたとき外側に凹みが発生した。また番号14は一群のV溝の角度の合計が90度より小さいため、V溝がすべて閉じるまで曲げても直角に達せず、直角まで曲げようとすると、無理に大きな力を加えなければならなかった。一方、番号15は一群のV溝の角度の合計が126度と本発明の範囲の110度を超えているため90度よりかなり余計に曲がってしまい、いくつかのV溝の部分で外側に凹みが発生した。また比較例の番号16はV溝部分の残存厚さが4.5mmと厚過ぎるため万力を使用しても曲げるのがかなり困難であった。
【0043】
【発明の効果】
上記の説明から明らかなように、本発明は角コラムによる柱を溶接接合方法を用いて製作する場合の接合部の裏当て金に供する鋼板にかかわるもので、溶接裏当て用鋼板において溝をつけた場合の機能について理論的考察と実験を繰り返し、溝の本数、寸法、形状等についての法則性に着目し、最適のものを見出したのである。これによって従来から知られているただ単純に曲げやすくするために溝をつけるという考え方の範囲からは得られない優れた品質効果を最小限のコストで得ることができるものである。本発明に示された溝つき鋼板を用いれば、極めて容易に角コラムの溶接裏当て金を構成でき、品質の良い溶接が確保できるため、鉄骨構造物の品質確保と経済性の向上に役立つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶接裏当て用鋼板の例を示す斜視図
【図2】角コラムの使用方法の例を示す図
【図3】角コラムとダイヤフラム鋼板との溶接部の断面図
【図4】従来の裏当て用溝つき鋼板の曲げ部を説明する図
【図5】V溝の群の間の距離を説明する図で、(a)は裏当て用鋼板、(b)は角コラム
【図6】裏当て用鋼板を曲げるのに要する力の計算方法を説明する図
【図7】裏当て用鋼板を曲げたときの変形状況の計算方法を説明する図で、(a)は曲げる前、(b)は曲げた後の状態を示す
【図8】本発明における裏当て用鋼板のV溝の間隔を定めるための計算方法を説明する図で(a)は曲げる前、(b)は曲げた後の状態を示す
【図9】本発明の溶接裏当て用鋼板の適用方法を示す図
【図10】本発明の溶接裏当て用鋼板の適用方法を示す図
【図11】本発明の溶接裏当て用鋼板の適用方法を示す図
【符号の説明】
1 裏当て金
2 角コラム
3 ダイヤフラム鋼板
4 梁
5 裏当て用鋼板
6 V溝
7 応力分布
8 塑性変形部分
9 V溝の底を連らねる平面
10 V溝の底を連らねる曲面
11、13、15 裏当て金
16 真直な鋼板の裏当て金
20 溝を設けてあった部分
21 凹み
Claims (4)
- 角コラムの突き合わせ溶接のための、真直な状態で提供され角コラムの内寸に合わせて曲げて用いる裏当て用鋼板において、角コラムそれぞれの角部内側の曲面部に当てるべき部分に一群の数が8個以上10個以下のV溝の群を設け、前記V溝の深さは前記裏当て用鋼板の板厚から1.7ないし4mm引いた値とし、V溝の角度は一群のV溝の数をnとしたとき90/n度以上110/n度以下であることを特徴とする角コラムの溶接裏当て用鋼板。
- 請求項1における少なくとも1つのV溝の群の片側または両側にそれぞれの側について2個以下のV溝を、角コラムの角部内側の曲面部に当てるべき部分の長さより長い範囲に亘って追加することを特徴とする請求項1に記載の角コラムの溶接裏当て用鋼板。
- 前記の角コラムの角部内側の曲面部に当てるべき部分の長さは、角コラム角部内側の曲率半径をr、V溝の部分での裏当て用鋼板の残存厚さをtb とすると、π(r−tb )/2であることを特徴とする請求項1または2に記載の角コラムの溶接裏当て用鋼板。
- 裏当て用鋼板の全長の2個所または4個所にV溝の群を設けると共に、前記裏当て用鋼板のそれぞれの長さ方向の端から最初のV溝に至る長さに差を設けることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の角コラムの溶接裏当て用鋼板。
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