JP3571753B2 - 絞り乃至絞りしごき加工缶用高剛性表面処理薄鋼板 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、冷間圧延まま鋼板表面に錫めっき皮膜、錫めっき皮膜とその上にさらにクロメート皮膜、燐酸塩皮膜、クロムめっき皮膜とその上にさらにクロム水和酸化物皮膜、あるいは両表面に表面処理皮膜を施し、さらにその少なくとも片方の表面に樹脂皮膜、等の皮膜を施した、絞り乃至DI(絞りしごき)加工を受け、ビール、炭酸飲料、ジュース等の飲料缶に用いられる、容器用表面処理薄鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
絞り乃至絞りしごき加工を行う容器用の表面処理鋼板に求められる特性には、主として成形性、缶強度、耐食性があるが、近年では、省資源化および経済性の観点から、鋼板の薄手化・硬質化が指向されている。
また、資源リサイクル性の面からは鋼板表面のめっき金属(Sn,Ni,Cr等)の付着量が少ないことが望まれている。
【0003】
さらに、高度の耐食性が要求される内容物用途には2回の内面塗装(ダブルコート)が必要とされているが、このダブルコートは工程数が増え生産性が低下すると同時に缶コストが上がり経済的でない。また、内面塗装に先行して行われる脱脂・化成処理液の排水処理が煩雑である点、内面塗装焼付け時に発生する有機溶媒を含む廃棄ガス処理が必要である点等の環境問題対策が必要である。
これらのことから製缶工程で内面塗装を行わない製缶法で製造できる絞り乃至絞りしごき加工缶が望まれている。
【0004】
従来の容器用表面処理鋼板は、一般に、製銑−製鋼−熱延−酸洗−冷延−電解清浄−焼鈍−調質圧延−めっきという工程によって製造されている。特に、鋼板の薄手化・硬質化を図るためには、上記工程の焼鈍後再び二次冷間圧延する、いわゆるダブルレデュース(DR)により製造するのが一般的である。
【0005】
しかるに、従来のダブルレデュースによる材料は、鋼中のC含有量が0.01%程度含まれているため、製缶加工時の成形性に大きな劣化をきたすことが問題となっている。例えば、鋼板の硬度(HR30T)が75〜78のものに絞りしごき加工を行うと、鋼中Cの転移固着作用によって加工硬化を生じ降伏点が上昇する。そして硬度(HR30T)が80以上となると破断伸びが著しく低下する。この現象は特に加工量の大きい缶壁上部で顕著である。降伏点が上昇すると、ボトム成形時とネックイン成形時にシワが発生しやすくなり、また破断伸びが低下するとフランジ割れが発生しやすくなるため、絞りしごき(DI)加工用途には実用されていない。
【0006】
このような問題点を解消する目的で、より経済的に、より成形性の優れた鋼板を製造する方法として、特公昭41−18486号公報では冷延鋼板の加工硬化を除去するために、従来600℃以上で行われていた焼鈍工程を、再結晶組織を生じさせない歪み取り焼鈍とする方法が提案されている。歪み取り焼鈍を行うと鋼中Cによって固着されていた転移が開放され加工硬化が除去される。
【0007】
さらに、特公昭54−1244号公報では、「C:0.005〜0.03%、Mn:0.10〜1.00%、Si:0.05%以下で残部が実質的に鉄からなり、その鋼を80%以上の圧下率で冷間圧延し、冷間圧延後に焼鈍処理を行うことなしに冷間圧延ままで加工性に優れた製缶用鋼板が、製蓋等の浅絞り成形性が良好であることが報告されているが、未だ厳しい絞り乃至絞りしごき加工に耐えられる薄手鋼板は実用化されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、近年の製鋼技術の飛躍的な発展によって、鋼中の不純物元素含有量を超極低レベルにまで制御可能となったことを活用し、従来技術では全く不可能であった冷間圧延ままで非常に厳しい絞り乃至絞りしごき加工に耐えるとともに、薄手化しても缶強度を確保可能な高強度を併せ持つ容器用表面処理鋼板、前記表面処理鋼板表面に錫めっきをあるいはさらにクロメート処理を施した表面処理鋼板、前記表面処理鋼板表面にリサイクル性にも有利な燐酸塩皮膜を有する容器用表面処理鋼板、もしくは前記表面処理鋼板表面に環境問題にも有利な樹脂皮膜を有する容器用表面処理鋼板、等の表面処理薄鋼板を提供しようとするものである。
【0009】
本発明者らは、特公昭54−1244号公報でC含有量0.005〜0.03%の冷間圧延まま素材に関して、製蓋性が良好であるという実施例を開示したが、該素材のしごき加工性は実用には程遠く、その後しごき加工性が飛躍的に良好な高強度鋼板を求めて、長年研究を重ねてきた。その結果、鋼中C量が0.0040%以下の超極低レベルに制御した鋼板のC量と結晶粒の短径に対する長径の比すなわち結晶粒軸比のバランスを最適化することによって、しごき加工性と強度を両立できる領域があることを見出した。
【0010】
上記の本発明者らの製缶性に関する知見を示したのが図1である。図1は、超極低C領域における、C含有量と臨界アイアニング(しごき)率の関係を示したものである。この臨界アイアニング率とはアイアニング加工で破断が生じたときの缶壁厚と原板厚との比率、すなわち(to −tw )/to (ここでto :原板厚、tw :缶壁厚)である。図1から、超極低C鋼においては、C量が0.0040%以下、特に0.0020%以下では、結晶粒軸比によらず、臨界アイアニング率が飛躍的に上昇し90%近くにまで達することが明らかになった。
【0011】
通常の飲料缶(内容量350mlサイズ)のDI缶を製造するためには、約65%のアイアニング率が用いられ、80%程度以上の臨界アイアニング率があれば安定した製缶作業が可能である。また、超極低C領域では結晶粒軸比が臨界アイアニング率にほとんど影響を及ぼさなくなるという点も明らかにされた。
【0012】
また、本発明者らの強度に関する知見を示したのが表1である。本発明者らは薄手DI缶実用化の目的で、C量が0.0040%以下の低炭素鋼について鋼板強度を確保するために必要な結晶粒軸比の範囲を検討した結果、表1に示すような結晶粒軸比と引張強度および硬度との関係を得た。缶強度としては、引張強度70kg/mm2 以上、硬度(HR−30T)75以上が必要である。
【0013】
【表1】
【0014】
以上本発明者らは、図1および表1のように、高強度としごき加工性を両立可能な領域すなわち製缶性と缶強度の両立領域が存在することを見出すに至った。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記知見に基づいて完成したものであり、その要旨とするところは、質量%で、C:0.002%以下、S:0.02%以下、Al:0.08%以下、N:0.008%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分を含有し、かつ結晶粒の短径に対する長径の比が平均4以上の結晶組識を有し、表面の平均粗さが0.05〜3.0μRaである冷間圧延まま鋼板に表面処理を施したことを特徴とする、絞り乃至絞りしごき加工缶用高剛性表面処理薄鋼板である。
【0016】
【作用】
以下に本発明を詳細に説明する。まず本発明の数値限定理由を述べる。
C:Cの含有量は少ない程良い。C量の上限を0.004%としたのは、0.004%を超えると、DI加工後の缶壁のネックイン加工、フランジ加工時のシワが発生しやすくなり、またフランジ加工時のシワが発生しやすくなり、またフランジ割れも発生しやすくなるからである。また、より薄い板厚でネックイン加工、フランジ加工を行う場合はC量を0.002%以下とするとより効果が大きい。
S:Sはあえて添加する元素ではない。S量の上限を0.02%としたのは、Sが鋼中の硫化物系介在物として0.02%を超えて存在すると製缶時のDI加工性が劣化するからである。
【0017】
Al:Alは脱酸剤として添加され残存したものであり、その上限を0.2%としたのは、Alが0.2%を超えると延性が劣化してフランジ加工時に割れ発生率が高くなる等の悪影響を及ぼし、また経済的でないからである。Al量は加工時の安定性等より少ない方が好ましく、0.08%以下であればより望ましい。
N:Nはあえて添加する元素ではない。N量の上限を0.008%としたのは、Nが0.008%を超えて含有されるとフランジ加工時の割れ発生率が高くなるからである。
【0018】
結晶粒軸比:鋼板の結晶粒の短径に対する長径の比すなわち結晶粒軸比が平均4以上としたのは、これが4未満だと鋼板強度が低くなり、缶強度を確保するためには鋼板厚みを厚くする必要があり、経済的でないからである。より薄い板厚とする場合は結晶粒軸比が平均30以上であればより安定した缶強度の確保が可能である。
【0019】
上記本発明の鋼板は通常、熱間圧延し酸洗した後冷間圧延することによって製造されるが、熱延後急速冷却等の手段で熱延鋼板の結晶粒を細粒とするとより安定して鋼板強度を高く保つことができる。また、冷間圧延あるいは絞り加工、絞りしごき加工を受けた際の硬化代および降伏点上昇代が小さいため伸び特性が保持され加工性が良好である点が特徴である。そして、絞り乃至絞りしごき加工後の缶壁においても、ネックイン加工性、フランジ加工性が確保されることであり、従来不可能であった薄手鋼質材による絞り乃至絞りしごき缶を実現するものである。
【0020】
また、これらの優れた特徴により、通常冷間圧延後に必要とされている加工性および強度確保のための焼鈍および調質圧延を行わなくても加工性および強度に優れた素材を、極めて容易かつ経済的に製造することが可能である。但し、冷間圧延まま鋼板表面に圧延油や鉄粉が付着している場合は、表面処理を行う前に、電解清浄等で表面の付着物を取り除くことがあるのは言うまでもない。
【0021】
冷間圧延まま鋼板の厚みおよび粗度は特に規定するものではないが、厚みは製缶後の強度を確保しつつしかも軽量化を図る観点から0.6mm以下、望ましくは0.10〜0.25mm、表面粗度は製缶加工時に潤滑剤の微細な溜まりを確保するとともに製缶時にパンチが抜けなくなるストリップアウトを防止し、しかも不均一な摩擦および鉄粉発生がなく、安定した成形性が得られる平均粗さで0.05〜3.0μRaのものが用いられる。
【0022】
本発明の表面処理は、冷間圧延まま鋼板表面に錫めっき皮膜、錫めっき皮膜とその上にさらにクロメート皮膜、燐酸塩皮膜、クロムめっき皮膜とその上にさらにクロム水和酸化物皮膜、あるいは両表面に表面処理皮膜を施しさらにその少なくとも片方の表面に樹脂皮膜、等の皮膜を施すものである。以下にその例を述べる。
【0023】
まず、ベースとなる上記の冷間圧延まま鋼板にSnめっきあるいはさらにクロメート処理を施す場合について以下に述べる。
この場合、表面に施されるめっきは通常のDI缶用ぶりきに使用されているものと同様のものが用いられる。
Sn付着量としては0.5〜5.5g/m2 程度のものが用いられる。付着量は必ずしも両面が同一である必要はない。例えば、DI缶の場合は缶内面に用いられる側は必要とされる耐食性および内面のしごき加工に必要とされる潤滑性によりSn付着量が決まり、外面に用いられる側は外面のしごき加工時に必要とされる潤滑性および外面の仕上がり外観によりSn付着量が決められる。
【0024】
Snめっき皮膜の上にクロメート皮膜を施さない場合は、水に対する表面の濡れ性が良いため、製缶工程における缶の水洗浄工程で水質例えばSS、硬度に変動が発生した場合でも缶内面特に缶底部に水滴模様が発生しにくいという長所があるため、表面処理としてSnめっきのみでも良い。
また、Snの経時酸化による黄変を防止するためSnめっき皮膜の上にクロメート皮膜を施すのも有効である。クロメート皮膜の種類は特に制限するものではないが、例えばSnめっき鋼板を重クロム酸ソーダあるいはクロム酸水溶液中で浸漬あるいは電解処理することにより得られるものを用いる。Cr量換算のCr付着量としては0.1〜50mg/m2 程度のクロメート皮膜が施される。付着量は必ずしも両面が同一である必要はない。DI缶等のしごき加工用途に用いられる場合は耐かじり性の観点からクロメート皮膜中の金属クロム量は少ない方が良くゼロであることが望ましい。
【0025】
上記のような薄手硬質ぶりきを用いて絞り乃至絞りしごき加工によって得られた缶は、従来のぶりきを用いて製造された缶に比べて素材厚みが薄いため、缶重量が軽量でありまた素材使用量が少ないため経済的である。
【0026】
次に、ベースとなる前記の冷間圧延まま鋼板に燐酸塩による潤滑皮膜処理を施す場合について以下に述べる。
この場合、表面に施されるめっきは通常のDI缶用ぶりきに使用されているSnめっきではなく、潤滑皮膜処理として燐酸塩処理が用いられる。処理方法は特に規定するものではないが、例えば、燐酸鉄、燐酸亜鉛、燐酸カルシウム、燐酸ジルコニウム、燐酸クロメート等が用いられる。付着量としては皮膜の種類により異なるが、燐酸鉄系皮膜では0.05〜0.5g/m2 程度、燐酸亜鉛系皮膜では0.5〜4g/m2 程度である。
【0027】
また、付着量は必ずしも両面が同一である必要はない。例えば、DI缶の場合は、缶内面に用いられる側はその後施される脱脂・化成処理性および内面塗装性と内面のしごき加工に必要とされる潤滑性により付着量が決まり、外面に用いられる側は外面のしごき加工時に必要とされる潤滑性および外面印刷性等により付着量が決められる。
これらの表面処理鋼板は表面に潤滑および冷却を目的に水溶性の合成潤滑油あるいは鉱油等をエマルジョン化したものを塗布された後、絞りしごき加工を施される。
【0028】
上記のような薄手硬質潤滑鋼板を用いて絞り乃至絞りしごき加工によって得られた缶は、従来のぶりきを用いて製造された缶に比べて素材厚みが薄いため、缶重量が軽量でありまた素材使用量が少ないため経済的であるとともに、鋼板表面にSnが付着していないため、再利用時の制約が少なく、リサイクル性にも優れている。
【0029】
また、ベースとなる前記の冷間圧延鋼板に表面処理を施した後さらにその上に片面あるいは両面に樹脂皮膜を施す場合について以下に述べる。表面処理皮膜および樹脂皮膜はその種類および量が必ずしも同一である必要はない。
表面に施される表面処理皮膜は特に制限するものではなく、ぶりき、ティンフリースティール等の容器用鋼板に用いられる皮膜、すなわち電解クロム酸処理皮膜、必要に応じてクロメート皮膜あるいは燐酸皮膜を有するSnめっき皮膜、必要に応じてクロメート皮膜を有するNiめっき皮膜、必要に応じてクロメート皮膜を有するアルミめっき皮膜、燐酸塩皮膜等が用いられる。
【0030】
ここで電解クロム酸処理皮膜とは、ティンフリースティールの皮膜として用いられているもので、クロム酸水溶液中の電解処理で得られる下層が金属クロム、上層がクロム水和酸化物の2層構造を持つものである。またクロメート皮膜とはクロム酸水溶液あるいは重クロム酸ソーダ水溶液中での電解処理あるいは浸漬処理等により得られる皮膜である。
【0031】
燐酸塩皮膜としては、特に規定するものではないが、燐酸鉄、燐酸亜鉛、燐酸カルシウム、燐酸ジルコニウム、燐酸クロメート等が用いられる。付着量としては皮膜の種類により異なるが、燐酸鉄系皮膜では0.05〜0.5g/m2 程度、燐酸亜鉛系皮膜では0.5〜4g/m2 程度である。
【0032】
表面が樹脂被膜にて被覆される側は、樹脂被膜との密着性に優れたものが望ましく、電解クロム酸処理被膜あるいはSn被膜上に電解クロム酸被膜を有するもの、Niめっき被膜上に電解クロム酸処理被膜を有するもの等が用いられる。密着性を確保するために電解クロム酸処理膜としては上層のクロム水和酸化物被膜量がクロムとして5〜50 mg/m2 、下層の金属クロム量がクロムとして1〜150 mg/m2 であればより望ましい。
【0033】
DI缶外面に使用される側はしごき加工時の潤滑性確保の観点から、Snめっき皮膜、Snめっき皮膜上にさらにクロメート皮膜を有するもの、あるいは燐酸皮膜等が望ましい。この場合のSnめっき皮膜上のクロメート皮膜は耐かじり性の観点からクロメート皮膜中の金属クロム量は少ない方が良くゼロであることが望ましい。
【0034】
表面処理皮膜の上の樹脂皮膜は特に制限するものではなく、エポキシ系、フェノール系、ポリエステル系、アクリル系等の熱硬化性樹脂を適当な溶剤に溶解または分散させたものを塗布後加熱して溶剤の除去および樹脂層の硬化を図り樹脂皮膜形成を行うタイプのものと、ポリエステル系、ポリオレフィン系、ポリアミド系等の熱可塑性樹脂フィルムを直接熱接着するか必要に応じて接着層を介して接着し、樹脂皮膜形成を行うタイプがあるが、両タイプとも製缶時の塗装が省略可能であり製缶効率向上に有効である。
前者の例としては、エポキシフェノール系硬化性樹脂が挙げられる。また後者の例としては、樹脂の結晶融解温度が180〜265℃のポリエステル系熱可塑性樹脂が製缶工程における絞り乃至絞りしごき成形に耐えられると同時に、缶の乾燥や外面塗装印刷時の熱にも耐えられるものとして挙げられる。
【0035】
上記のような、薄手硬質樹脂被覆鋼板を用いて、絞り乃至絞りしごき加工によって得られた缶は、従来のぶりきを用いて製造された缶に比べて素材厚みが薄いため、缶重量が軽量でありまた素材使用量が少ないため経済的であるとともに、塗装工程およびそれにともなう脱脂、化成処理、排水処理、廃棄ガス処理の一部を省略できるため、省資源面、環境面に優れている。
あるいは、ベースとなる前記の冷間圧延まま鋼板表面にクロムめっき皮膜とその上にさらにクロム水和酸化物皮膜を施す(ティンフリースティール)等の表面処理を行っても良い。
【0036】
ここで述べる製缶加工とは飲料缶等に一般に用いられる加工で、1段あるいは2段以上の多段絞り加工、あるいは1段以上の絞り加工に続いて1段以上の絞り加工を行った後、必要に応じてボトム成形、ネックイン成形、フランジ成形、張出成形等を行うものであり、それらの工程の途中で必要に応じた内外面への脱脂、化成処理および塗装・印刷を施すこともある。
【0037】
【実施例】
〔実施例1〕
本実施例の冷間圧延まま鋼板は、製鋼工程で成分組成を調整した鋼を連続鋳造でスラブとし、熱間圧延後酸洗工程で表面スケールを除いた後、冷間圧延を行い製造したものを使用した。
表2は本発明と比較例の鋼成分組成および結晶粒軸比(結晶粒の短径に対する長径の比の平均値)を示したものである。
【0038】
【表2】
【0039】
表3は表2の鋼を用い、下記の条件で本発明と比較例のベースとなる前記の冷間圧延まま鋼板にSnめっきとさらにクロメート処理を施した場合について評価した結果である。
【0040】
【表3】
【0041】
表3のNo.1〜4、11〜15が本発明の鋼板である。No.5〜7のようにCが0.004%を超えるものは、ボトムシワ、ネックインシワ、フランジ割れ性に劣ることがわかる。No.8のようにSが0.02%を超えるものはDI加工性が劣化する。No.9,10はNが0.008%を超えており、フランジ割れ性の劣化が認められる。No.16は結晶粒軸比が4以下で耐圧強度が劣っている。
【0042】
〔実施例2〕
表4は表2の鋼を用い、下記の条件で本発明と比較例のベースとなる前記の冷間圧延まま鋼板に燐酸塩による潤滑皮膜処理を施した場合について評価した結果である。また、鋼板製造条件、製缶条件、板厚、表面粗度、耐圧強度評価方法については「実施例1」と同じである。
【0043】
【表4】
【0044】
表4のNo.1〜4、11〜15が本発明の鋼板である。No.5〜7のようにCが0.004%を超えるものは、ボトムシワ、ネックインシワ、フランジ割れ性に劣ることがわかる。No.8のようにSが0.02%を超えるものはDI加工性が劣化する。No.9,10はNが0.008%を超えており、フランジ割れ性の劣化が認められる。No.16は結晶粒軸比が4以下で耐圧強度が劣っている。
【0045】
〔実施例3〕
表5は表2の鋼を用い、下記の条件で本発明と比較例のベースとなる前記の冷間圧延まま鋼板に燐酸塩による潤滑皮膜処理を施した場合について評価した結果である。また、鋼板製造条件、製缶条件、板厚、表面粗度、耐圧強度評価方法については「実施例1」と同じである。
【0046】
【表5】
【0047】
表5のNo.1〜4、11〜15が本発明の鋼板である。No.5〜7のようにCが0.004%を超えるものは、ボトムシワ、ネックインシワ、フランジ割れ性に劣ることがわかる。No.8のようにSが0.02%を超えるものはDI加工性が劣化する。No.9,10はNが0.008%を超えており、フランジ割れ性の劣化が認められる。No.16は結晶粒軸比が4以下で耐圧強度が劣っている。
【0048】
〔実施例4〕
表6は表2の鋼を用い、下記の条件で本発明と比較例のベースとなる前記の冷間圧延まま鋼板に表面処理を施した後さらにその上に片面あるいは両面に樹脂皮膜を施す場合について以下に述べる。また、鋼板製造条件、製缶条件、板厚、表面粗度、耐圧強度評価方法については「実施例1」と同じである。
【0049】
【表6】
【0050】
表6のNo.1〜4、11〜15が本発明の鋼板である。No.5〜7のようにCが0.004%を超えるものは、ボトムシワ、ネックインシワ、フランジ割れ性に劣ることがわかる。No.8のようにSが0.02%を超えるものはDI加工性が劣化する。No.9,10はNが0.008%を超えており、フランジ割れ性の劣化が認められる。No.16は結晶粒軸比が4以下で耐圧強度が劣っている。
【0051】
【発明の効果】
本発明により、冷間圧延ままの鋼板に表面処理を施し、厳しい絞り乃至絞りしごき加工に耐えるとともに剛性の高い表面処理鋼板を提供できるため、缶用素材を薄くでき軽量で様々な形態の、さらに、資源リサイクル性、製缶工程での環境問題対策にも優れた缶を経済的かつ容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】超極低C領域における臨界アイアニング率と結晶粒軸比との関係を示す。
Claims (1)
- 質量%で
C :0.002%以下、 S:0.02%以下、
Al:0.08%以下、 N:0.008%以下
を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分を含有し、かつ結晶粒の短径に対する長径の比が平均4以上の結晶組識を有し、表面の平均粗さが0.05〜3.0μRaである冷間圧延まま鋼板に表面処理を施したことを特徴とする、絞り乃至絞りしごき加工缶用高剛性表面処理薄鋼板。
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JP11009494A JP3571753B2 (ja) | 1994-05-24 | 1994-05-24 | 絞り乃至絞りしごき加工缶用高剛性表面処理薄鋼板 |
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JPH07316734A JPH07316734A (ja) | 1995-12-05 |
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Country Status (1)
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Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2010101074A1 (ja) | 2009-03-05 | 2010-09-10 | Jfeスチール株式会社 | 曲げ加工性に優れた冷延鋼板、その製造方法およびそれを用いた部材 |
-
1994
- 1994-05-24 JP JP11009494A patent/JP3571753B2/ja not_active Expired - Lifetime
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2010101074A1 (ja) | 2009-03-05 | 2010-09-10 | Jfeスチール株式会社 | 曲げ加工性に優れた冷延鋼板、その製造方法およびそれを用いた部材 |
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JPH07316734A (ja) | 1995-12-05 |
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