JP5251272B2 - 塗装後耐食性に優れた自動車部材及び熱間プレス用Alめっき鋼板 - Google Patents
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(1)鋼成分として質量%で、C:0.1〜0.4%、Si:0.01〜0.6%、 Mn:0.5〜3%、Ti:0.01〜0.1%、B:0.0001〜0.01%、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、体積%で90%以上がマルテンサイトである鋼材の表面に、複数の相からなるAl−Fe金属間化合物層を有し、更にその表面に厚みが0.05〜1μmの酸化膜を有し、Al−Fe金属間化合物層と鋼材の界面にAlを含有し厚みが2.5〜10μmのbcc層を有することを特徴とする、塗装後耐食性に優れた自動車部材。
(2)鋼成分として質量%で、C:0.1〜0.4%、Si:0.01〜0.6%、 Mn:0.5〜3%、Ti:0.01〜0.1%、B:0.0001〜0.01%、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板の表面に片面当たり20〜100g/m2のAlめっき層を有し、更にその表面に0.1〜1g/m2の油が付着していることを特徴とする、熱間プレス用Alめっき鋼板。
[本発明に係るホットプレス用Alめっき鋼材の概要]
上述したように、上記特許文献1〜3に記載された技術では、成形時のめっきの脱離を抑制することに着目し、これにより優れた塗装後耐食性が得られるとしているが、実際にはめっきの脱離による耐食性低下はこの材料においては顕著でなく、寧ろ脱離が多少起こりえても、合金化しためっき層中のAl濃度を最大限高く保つことがより重要であるとの結論を得た。
(鋼材について)
ホットプレスが金型によるプレスと焼入を同時に行うものであることから、本発明に係るホットプレス鋼材としては、焼入されやすい成分である必要がある。具体的には、鋼板中の鋼成分として、質量%で、C:0.1〜0.4%、Si:0.01〜0.6%、Mn:0.5〜3%、Ti:0.01〜0.1%、B:0.0001〜0.01%であることが好ましい。C量については、焼入性の向上という観点から0.1%以上であることが好ましく、また、C量が多過ぎると鋼板の靭性の低下が著しくなるため、0.4質量%以下であることが好ましい。また、Siを0.6%超添加するとAlめっき性が低下し、0.01%未満とすると疲労特性が劣るため好ましくない。また、Mnは焼入性に寄与する元素で0.5%以上の添加が有効であるが、焼入後の靭性の低下という観点からは3%を超えることは好ましくない。また、Tiはアルミめっき後の耐熱性を向上させる元素で0.01%以上の添加が有効であるが、過剰に添加するとCやNと反応して鋼板強度を低下させてしまうため、0.1%を超えることは好ましくない。また、Bは焼入性に寄与する元素で0.0001%以上の添加が有効であるが、熱間での割れの懸念があるため、0.01%を超えることは好ましくない。また、鋼板中の成分として、他に、P、S、Al、N、Mo、Cr、Nb、Ni、Cu、V、Sn、Sb等が含有されうる。好ましい範囲は、質量%で、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下、Mo:0.5%以下、Cr:2%以下、Nb:0.1%以下、Ni:1%以下、Cu:1%以下、V:0.1%以下、Sn,Sb:0.1%以下であり、残部はFe及び不可避的不純物からなる。
(Alめっきについて)
本発明に係るAlめっき鋼材のめっきの方法については特に限定するものでなく、溶融めっき法を初めとして電気めっき法、真空蒸着法、クラッド法等が可能である。現在工業的に最も普及しているのは溶融めっき法であり、通常、めっき浴として、Alに3質量%〜15質量%のSiを含有するものを使用することができ、これに不可避的不純物のFe等が混入している。これ以外の添加元素として、Mn、Cr、Mg、Ti、Zn、Sb、Sn、Cu、Ni、Co、In、Bi、ミッシュメタル等があり得るが、めっき層がAlを主体とする限り、適用可能である。Zn、Mgの添加は赤錆を発生し難くするという意味で有効であるが、蒸気圧の高いこれら元素の過剰な添加はZn、Mgのヒューム発生、表面へのZn、Mg起因の粉体状物質の生成等があり、Zn:60質量%以上、Mg:10質量%以上の添加は好ましくない。
(ホットプレス前の加熱工程について)
なお、上述したようにして得られたAlめっき鋼材は、その後のホットプレス工程においてオーステナイト領域まで加熱され、しかる後に金型で急冷されてマルテンサイト組織となる。このときの加熱条件、冷却条件については特に限定するものではないが、本発明の趣旨は拡散によって生成するAlを含有するbcc層の厚みを規定するもので、加熱条件もある範囲に制約される。また先述したように加熱速度が大きいと塗装後耐食性上は有利となる。通常の電気炉あるいはガス加熱炉を用いた輻射加熱、近赤外線を使用したような加熱法、通電加熱、高周波誘導加熱を用いるような電気的な加熱法のいずれを使用することも可能である。通常は850〜1000℃程度に加熱され、600〜700℃付近で急冷されることが多い。加熱雰囲気についても先述したような雰囲気を使用可能である。
(ホットプレス後の酸化膜およびホットプレス前の塗油量)
次に、Al含有bcc層と酸化膜の関係について述べる。Alを含有するbcc層も、酸化膜も加熱により生じるものであるため、一般には両者は加熱条件に依存してある相関を持つ筈である。ところが加熱条件を適正に保っても塗装後耐食性が劣位となる場合があり、この原因を検討したところ塗油に起因した酸化皮膜が成長し、この酸化皮膜が塗料密着性を弱めることで塗装後耐食性を低下させていた。通常電着塗装前に化成処理と呼ばれるリン酸塩処理が施され、塗料との適合性を確保するが、この材料は化成処理液に対して極めて不活性で、リン酸塩が付着しないことが分かっている。それでも電着塗装との適合性には優れるが、塗油によって成長する酸化皮膜は電着塗装との馴染みが悪いものと推察している。従って塗油の管理は重要であり、0.1〜1g/m2とする。塗油はAlめっき鋼板を鉄鋼会社から出荷した後、プレス会社にて熱間プレスを行うまでの一次防錆の役割を担っている。0.1g/m2より少ないとその所定の役割を果たすことができず、1g/m2を超えるような塗油を施すと、先述した理由により塗装後耐食性が低下する。このため上記の量に制限する。
実施例
(実施例1)
通常の熱延、冷延工程を経た、表1に示すような鋼成分の冷延鋼板(板厚1.2mm)を材料として、溶融Alめっきを行った。溶融Alめっきは無酸化炉−還元炉タイプのラインを使用し、めっき後ガスワイピング法でめっき付着量を両面80〜160g/m2まで調節し、その後冷却した。この際のめっき浴組成としてはAl−9%Si−2%Feであった。浴中のFeは浴中のめっき機器やストリップから供給される不可避のものである。めっき外観は不めっき等なく良好であった。
( 実施例2 )
表1に示した鋼成分を持つ冷延鋼板(厚1.6mm)に実施例1と同じ要領で溶融Alめっきを施した。めっき付着量は両面160g/m2とした。これらのAlめっき鋼板に防錆油を塗布した。油は出光興産(株)製のダフニーオイルコートZ−3とし、付着量を変動させた。大気炉輻射加熱により到達温度900〜950℃、保定時間1〜5分で加熱し、その後金型焼入した。この試料の酸化膜厚及び塗装後耐食性を評価した結果を表3にまとめた。
( 実施例3 )
表4に示した様々な鋼成分を持つ冷延鋼板(厚1.2mm)に実施例1と同じ要領で溶融Alめっきを施した。めっき付着量は両面160g/m2とした。これらのAlめっき鋼板を、大気炉輻射加熱により到達温度900℃、保定時間1.5分で加熱し、その後金型焼入した。焼入後の硬度(ビッカース硬度、荷重10kg)を測定した結果も表4に示しているが,鋼中C量が低いと焼入後の硬度が低下するため,C量として0.1%以上あることが好ましい。
Claims (2)
- 鋼成分として質量%で、
C:0.1〜0.4%、
Si:0.01〜0.6%、
Mn:0.5〜3%、
Ti:0.01〜0.1%、
B:0.0001〜0.01%、
P:0.05%以下、
S:0.02%以下、
Al:0.1%以下、
N:0.01%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
体積%で90%以上がマルテンサイトである鋼材の表面に、複数の相からなるAl−Fe金属間化合物層を有し、
更にその表面に厚みが0.05〜1μmの酸化膜を有し、Al−Fe金属間化合物層と鋼材の界面にAlを含有し厚みが2.5〜10μmのbcc層を有することを特徴とする、塗装後耐食性に優れた自動車部材。 - 鋼成分として質量%で、
C:0.1〜0.4%、
Si:0.01〜0.6%、
Mn:0.5〜3%、
Ti:0.01〜0.1%、
B:0.0001〜0.01%、
P:0.05%以下、
S:0.02%以下、
Al:0.1%以下、
N:0.01%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板の表面に片面当たり20〜100g/m2のAlめっき層を有し、
更にその表面に0.1〜1g/m2の油が付着していることを特徴とする、熱間プレス用Alめっき鋼板。
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