JP5251272B2 - 塗装後耐食性に優れた自動車部材及び熱間プレス用Alめっき鋼板 - Google Patents

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本発明は、塗装後耐食性に優れた自動車部材及び熱間プレス用Alめっき鋼板に関し、特に、塗装後耐食性及び生産性に優れるホットプレス用Alめっき鋼板及びそれにより製造された自動車部材に関する。
近年、自動車用鋼板の用途(例えば、自動車のピラー、ドアインパクトビーム、バンパービーム等)などにおいて、高強度と高成形性を両立する鋼板が望まれており、これに対応するものの1つとして、残留オーステナイトのマルテンサイト変態を利用したTRIP(Transformation Induced Plasticity)鋼がある。このTRIP鋼により、成形性の優れた1000MPa級程度の強度を有する高強度鋼板を製造することは可能であるが、さらに高強度、例えば1500MPa以上といった超高強度鋼で成形性を確保することは困難である。
このような状況で、高強度及び高成形性を両立するものとして最近注目を浴びているのが、ホットプレス(熱間プレス、ホットスタンプ、ダイクエンチ、プレスクエンチ等とも呼称される。)である。このホットプレスは、鋼板を800℃以上のオーステナイト域で加熱した後に熱間で成形することにより高強度鋼板の成形性を向上させ、成形後の冷却により焼きを入れて所望の材質を得るというものである。
ホットプレスは、超高強度の部材を成形する方法として有望であるが、通常は大気中で鋼板を加熱する工程を有しており、この際、鋼板表面に酸化物(スケール)が生成するため、スケールを除去する工程が必要であった。ところが、このような後工程には、スケールの除去能や環境負荷等の観点からの対応策の必要性等の問題があった。
これを改善する技術として、ホットプレス用の鋼板としてAlめっき鋼板を使用することにより、加熱時のスケールの生成を抑制する技術が提案されている(例えば、特許文献1〜3を参照)。
特開2000−38640号公報 特開2003−181549号公報 特開2003−49256号公報 特許第3738754号公報
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載された技術は、塗装後耐食性という観点で、十分でなく、更なる改善が求められていた。
すなわちこれらの公知例によれば、成形時の合金化しためっき層の剥離が問題とされ、これを抑制するために拡散を進行させるような技術が開示されていたが、更なる検討の結果、このような条件においては、塗装後耐食性が低下することが判明した。これは拡散を進行させることで合金化しためっき層中のFe濃度が高まり、耐食性に寄与するAl濃度が低下したためと推定される。
また、特許文献4には、酸化物重量が500mg/dm以下である電着塗装用アルミニウムめっき構造部材が開示されている。しかし、酸化物重量が500mg/dmを酸化膜厚さに換算すると約13μmになるが、これほど酸化膜が厚いと塗料と反応しない酸化膜が厚く残存してしまい、塗膜が剥離しやすい場合があることがあった。
そこで、本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、塗装後耐食性に優れた自動車部材及び熱間プレス用Alめっき鋼板を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ホットプレス工程直前の加熱条件を適正化することで塗装後耐食性を確保できることを見出し、このような知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の要旨とするところは、特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
(1)鋼成分として質量%で、C:0.1〜0.4%、Si:0.01〜0.6%、 Mn:0.5〜3%、Ti:0.01〜0.1%、B:0.0001〜0.01%、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、体積%で90%以上がマルテンサイトである鋼材の表面に、複数の相からなるAl−Fe金属間化合物層を有し、更にその表面に厚みが0.05〜1μmの酸化膜を有し、Al−Fe金属間化合物層と鋼材の界面にAlを含有し厚みが2.5〜10μmのbcc層を有することを特徴とする、塗装後耐食性に優れた自動車部材。
(2)鋼成分として質量%で、C:0.1〜0.4%、Si:0.01〜0.6%、 Mn:0.5〜3%、Ti:0.01〜0.1%、B:0.0001〜0.01%、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板の表面に片面当たり20〜100g/m2のAlめっき層を有し、更にその表面に0.1〜1g/m2の油が付着していることを特徴とする、熱間プレス用Alめっき鋼板
本発明によれば、塗装後耐食性に優れ、かつ強度の高い自動車用部材及びそれに用いるホットプレス用Alめっき鋼板を提供することができるなど、産業上有用な著しい効果を奏する。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。
[本発明に係るホットプレス用Alめっき鋼材の概要]
上述したように、上記特許文献1〜3に記載された技術では、成形時のめっきの脱離を抑制することに着目し、これにより優れた塗装後耐食性が得られるとしているが、実際にはめっきの脱離による耐食性低下はこの材料においては顕著でなく、寧ろ脱離が多少起こりえても、合金化しためっき層中のAl濃度を最大限高く保つことがより重要であるとの結論を得た。
ここで、Alめっき鋼材を加熱することにより得られる合金層の構造について説明する。なお、図1は、Alめっき鋼板を加熱合金化した後の断面組織の構造例を示す光学顕微鏡写真である。
図1に示すように、Alめっき鋼板を加熱合金化した後のFe−Al合金層は、一般に5層構造となることが多い。これら5層を図1では、めっき鋼板表面から順に、1層〜5層で表している。第1層、第3層の層中のAl濃度は約50質量%、第2層中のAl濃度は約30質量%、第4層、第5層中のAl濃度はそれぞれ15〜30質量%、1〜15質量%の幅を持つ組成となる。残部はFe及びSiである。第4層と第5層の界面付近にボイドの生成が観察されることもある。なお、第5層の下部の組織は鋼素地であり、マルテンサイトを主体とする焼入組織となっている。
図2に、Fe−Alの二元系状態図を示す。この図2を参照すれば、第1層、第3層はFeAlを主成分とし、第4層、第5層はそれぞれFeAl、αFeに対応するものと判断できる。また、第2層はFe−Al二元系状態図から説明できないSiを含有する層でその詳細な組成は明らかではないが、本発明者らは、FeAlとFe−Al−Si化合物が微細に混じりあったようなものであると推定している。
本願で規定するAlを含有するbcc層とは、ここで言う第5層に相当する。この層は、Alを固溶したαFeで、Alはフェライト安定化元素であるため、Alめっき層よりAlが拡散した結果としてホットプレス工程の加熱時にオーステナイト変態しなかったものと解釈できる。この層の厚みはAlめっき層から拡散するAl量に依存し、Alめっき層から拡散するAl量はホットプレス工程の熱履歴に依存するため、結果としてこの層の厚みはホットプレスでの熱履歴をよく反映している。
本願において、このAlを含有するbcc層厚みを2.5〜10μmに限定するものとする。これは即ちホットプレス工程における鋼板への熱負荷をある一定の範囲に限定することに相当する。熱履歴は昇温、保定、降温の3ステップ、あるいはこれらの複合から成るが、詳細な履歴は規定せず、熱負荷のみを規定する。塗装後耐食性に影響するのは、結果として生成した合金層構造に依存するためである。このような被覆層の組成や結晶構造は、電子線マイクロアナライザ(EPMA)、走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析装置(SEM−EDS)、透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いて分析することにより特定することができる。
Alを含有するbcc層厚みが2.5μm以下では、Alめっきと鋼板との拡散が十分に進行せず、金属間化合物に変化しないAl層が表面に残存する懸念がある。表面に金属間化合物に変化しないAl層が残存すると、スポット溶接性、塗装後耐食性を大きく劣化させる。これはAl自体が電極の銅と反応しやすいこと、あるいはAlが塩害環境において優先的に腐食して塗膜膨れが起こりやすくなるためである。
一方で10μmを超えるような場合には、鋼板への熱負荷が大きいことを意味する。図1の5層構造において、第1、3層のAl濃度は約50%と高く、第2、4、5層のAl濃度は30%以下と低い。加熱によりFeとAlの相互拡散が進行すると、表層のFe濃度は高まり、第1、3層のAl濃度の高い層が厚みを減じ、替わって第2、4、5層のAl濃度の低い層の厚みが増大する。図1において、第5層の厚みは15μm程度に成長し、このときには第1、3層の厚みは全体の半分以下まで減じている。先述したようにこの合金層の塗装後耐食性はAlで確保されているもので、このAl量の高い第1、3層の厚みが塗装後耐食性に大きく寄与する。従ってAlを含有するbcc層、つまり5層が10μm以上に成長するような場合、第1、3層厚みが減じて塗装後耐食性の確保が困難となる。
4層は図2でFeAlに対応する。FeAlはbcc構造のFeの一部をAlで置換した構造に相当し、bcc構造と構造的な親和性が高い。従って第4層の厚みも第5層の厚みと相関が高く、通常第4層の厚みは第5層の1/4〜1/5程度となる。
なお、本願発明はAl−Fe金属間化合物の表面の酸化膜厚みも規定する。ホットプレス工程における鋼板熱負荷により当然表面には酸化膜が生成するが、この厚みも塗料密着性に寄与し、結果として塗装後耐食性に影響するためである。酸化膜厚みは鋼板熱履歴に加え、雰囲気に依存する。加熱時の雰囲気としては、大気、窒素、燃焼ガス等がありえ、酸化濃度が高い方が、熱負荷が高い方が酸化膜は成長する。
酸化膜厚みが0.05に満たないことは熱負荷が極端に小さいことを意味し、Al−Fe合金層が表面まで形成されていない可能性がある。このときには塗装後耐食性、スポット溶接性が低下する。また1μmを超える酸化膜が生成すると、電着塗装時に塗膜欠陥を形成したり、電着塗装の密着性が低下したりするため、望ましくない。このため酸化皮膜厚はこの範囲とする。
Al−Fe合金層表面の粗度はRaとして1〜3μmを示す。Alめっきの付着量にも依存するが、Alめっき段階よりも粗度は大きくなる傾向にある。本発明は粗度については特に規定はしない。
以下、上述したような被覆層を有するホットプレス用のめっき鋼材の製造に用いられる本発明に係るAlめっき鋼材の構成について詳細に説明する。
(鋼材について)
ホットプレスが金型によるプレスと焼入を同時に行うものであることから、本発明に係るホットプレス鋼材としては、焼入されやすい成分である必要がある。具体的には、鋼板中の鋼成分として、質量%で、C:0.1〜0.4%、Si:0.01〜0.6%、Mn:0.5〜3%、Ti:0.01〜0.1%、B:0.0001〜0.01%であることが好ましい。C量については、焼入性の向上という観点から0.1%以上であることが好ましく、また、C量が多過ぎると鋼板の靭性の低下が著しくなるため、0.4質量%以下であることが好ましい。また、Siを0.6%超添加するとAlめっき性が低下し、0.01%未満とすると疲労特性が劣るため好ましくない。また、Mnは焼入性に寄与する元素で0.5%以上の添加が有効であるが、焼入後の靭性の低下という観点からは3%を超えることは好ましくない。また、Tiはアルミめっき後の耐熱性を向上させる元素で0.01%以上の添加が有効であるが、過剰に添加するとCやNと反応して鋼板強度を低下させてしまうため、0.1%を超えることは好ましくない。また、Bは焼入性に寄与する元素で0.0001%以上の添加が有効であるが、熱間での割れの懸念があるため、0.01%を超えることは好ましくない。また、鋼板中の成分として、他に、P、S、Al、N、Mo、Cr、Nb、Ni、Cu、V、Sn、Sb等が含有されうる。好ましい範囲は、質量%で、P:0.05%以下、S:0.02%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下、Mo:0.5%以下、Cr:2%以下、Nb:0.1%以下、Ni:1%以下、Cu:1%以下、V:0.1%以下、Sn,Sb:0.1%以下であり、残部はFe及び不可避的不純物からなる。
(Alめっきについて)
本発明に係るAlめっき鋼材のめっきの方法については特に限定するものでなく、溶融めっき法を初めとして電気めっき法、真空蒸着法、クラッド法等が可能である。現在工業的に最も普及しているのは溶融めっき法であり、通常、めっき浴として、Alに3質量%〜15質量%のSiを含有するものを使用することができ、これに不可避的不純物のFe等が混入している。これ以外の添加元素として、Mn、Cr、Mg、Ti、Zn、Sb、Sn、Cu、Ni、Co、In、Bi、ミッシュメタル等があり得るが、めっき層がAlを主体とする限り、適用可能である。Zn、Mgの添加は赤錆を発生し難くするという意味で有効であるが、蒸気圧の高いこれら元素の過剰な添加はZn、Mgのヒューム発生、表面へのZn、Mg起因の粉体状物質の生成等があり、Zn:60質量%以上、Mg:10質量%以上の添加は好ましくない。
また、本発明において、Alめっきのめっき前処理、後処理等については特に限定するものではない。めっき前処理としてNi、Cu、Cr、Feプレめっき等もありうるが、これも適用可能である。また、めっき後処理としては一次防錆、潤滑性を目的としてクロメート処理、樹脂被覆処理等を施してもよい。ただし、クロメート処理については、近年の6価クロム規制を考慮すると、電解クロメート等の3価の処理皮膜が好ましい。その他、無機系のクロメート以外の後処理も適用可能である。潤滑性を付与するため、アルミナ、シリカ、MoS等を用いて予め表面処理することも可能である。
本発明に係るAlめっき鋼材の、Alめっきの付着量について説明する。通常のAlめっき鋼材の付着量は両面で60〜200g/m2程度とされており、本発明においてもこの程度の付着量が適している。但し、塗装後耐食性がAlに依存する以上、付着量が多い方が耐食性優位であることは自明であり、炉加熱を使用する場合には望ましくは120〜180g/m2である。しかし加熱方法によってはこれ以下の付着量でも塗装後耐食性を確保しうる場合もあり、20℃/秒以上の急速加熱を適用する前提においては、60g/m2以上で塗装後耐食性を確保しうる。
溶融めっき法でめっきする場合には極端な薄目付けは困難で、一方めっき付着量が多いと、外観不良を惹起したり、エッジ部の過剰な付着量に起因するコイルの形状不良を起こしたりする。両面60〜200g/m2を膜厚に換算すると、片面10〜33μmに相当する。Alめっきをホットプレス工程で加熱する際にAlめっきがAl−Fe金属間化合物に変化する。熱負荷が大きいと、当初の膜厚よりも厚くなる傾向にあるが、本発明は比較的熱負荷が小さい場合を規定しており、10〜42μmとなる。
(ホットプレス前の加熱工程について)
なお、上述したようにして得られたAlめっき鋼材は、その後のホットプレス工程においてオーステナイト領域まで加熱され、しかる後に金型で急冷されてマルテンサイト組織となる。このときの加熱条件、冷却条件については特に限定するものではないが、本発明の趣旨は拡散によって生成するAlを含有するbcc層の厚みを規定するもので、加熱条件もある範囲に制約される。また先述したように加熱速度が大きいと塗装後耐食性上は有利となる。通常の電気炉あるいはガス加熱炉を用いた輻射加熱、近赤外線を使用したような加熱法、通電加熱、高周波誘導加熱を用いるような電気的な加熱法のいずれを使用することも可能である。通常は850〜1000℃程度に加熱され、600〜700℃付近で急冷されることが多い。加熱雰囲気についても先述したような雰囲気を使用可能である。
(ホットプレス後の酸化膜およびホットプレス前の塗油量)
次に、Al含有bcc層と酸化膜の関係について述べる。Alを含有するbcc層も、酸化膜も加熱により生じるものであるため、一般には両者は加熱条件に依存してある相関を持つ筈である。ところが加熱条件を適正に保っても塗装後耐食性が劣位となる場合があり、この原因を検討したところ塗油に起因した酸化皮膜が成長し、この酸化皮膜が塗料密着性を弱めることで塗装後耐食性を低下させていた。通常電着塗装前に化成処理と呼ばれるリン酸塩処理が施され、塗料との適合性を確保するが、この材料は化成処理液に対して極めて不活性で、リン酸塩が付着しないことが分かっている。それでも電着塗装との適合性には優れるが、塗油によって成長する酸化皮膜は電着塗装との馴染みが悪いものと推察している。従って塗油の管理は重要であり、0.1〜1g/m2とする。塗油はAlめっき鋼板を鉄鋼会社から出荷した後、プレス会社にて熱間プレスを行うまでの一次防錆の役割を担っている。0.1g/m2より少ないとその所定の役割を果たすことができず、1g/m2を超えるような塗油を施すと、先述した理由により塗装後耐食性が低下する。このため上記の量に制限する。
ホットプレス後の鋼材は、溶接、化成処理、電着塗装等を経て最終製品となる。板厚は通常1〜2.5mm程度、590〜980MPa程度の高強度鋼と溶接で組み合わされて部品となることが多いが、ホットプレス材同士で接合されることもある。また3枚の板組み合せとなることもある。塗装については、通常カチオン電着塗装が用いられることが多く、その膜厚は1〜30μm程度である。電着塗装の後に中塗り、上塗り等の塗装が施されることもある。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。
実施例
(実施例1)
通常の熱延、冷延工程を経た、表1に示すような鋼成分の冷延鋼板(板厚1.2mm)を材料として、溶融Alめっきを行った。溶融Alめっきは無酸化炉−還元炉タイプのラインを使用し、めっき後ガスワイピング法でめっき付着量を両面80〜160g/m2まで調節し、その後冷却した。この際のめっき浴組成としてはAl−9%Si−2%Feであった。浴中のFeは浴中のめっき機器やストリップから供給される不可避のものである。めっき外観は不めっき等なく良好であった。
次にこの鋼板を大気中で850℃以上に加熱し、約700℃の温度まで大気中で冷却して、その後厚さ50mmの金型間で圧着することで急冷した。このときの金型間での冷却速度は約150℃/秒であった。加熱方法は電気炉での輻射加熱と近赤外線加熱(NIR)の2種類を使用した。このときの加熱速度は炉加熱で約5℃/秒、NIRで約20℃/秒であった。加熱条件を種々変化させたときの組織並びに特性を評価した。なお加熱前に脱脂して、油を除去して評価した。
Al含有bcc層厚みに関しては、断面研磨、3%ナイタールエッチング後、光学顕微鏡撮影して測定した。酸化膜厚は高周波GDSを用いて酸素のピークが低下するまでの時間とその間のスパッタリング深さより厚みに換算した。
Figure 0005251272
塗装後耐食性の評価に当たっては、日本パーカライジング(株)製化成処理液PB−SX35Tで化成処理を施し、その後日本ペイント(株)製カチオン電着塗料パワーニクス110を約20μm厚みで塗装した。その後、カッターで塗膜にクロスカットを入れ、自動車技術会で定めた複合腐食試験(JASO−M609)を180サイクル(60日)行ない、クロスカットからの膨れ幅(片側最大膨れ幅:mm)を測定した。
表2に加熱条件と組織並びに特性評価結果をまとめた。
Figure 0005251272
付着量、加熱温度、保定時間を変化させて第5層(Al含有bcc層)厚み並びに酸化膜厚を変化させた。付着量が厚いにも関わらず加熱温度が低く、保定時間も短いような場合には、表面までの合金化が不十分で、このような場合(番号1)では塗装後耐食性は劣位であった。また熱負荷が高すぎるような番号5においても、第5層厚みが厚く、耐食性は低下した。一方付着量が少ない時にはNIRのようなより急速加熱の可能な手段を適用した。このような方法を用いることで昇温過程での熱負荷を小さくでき、かつ合金化後の組織も炉加熱の場合と異なり、塗装後耐食性は改善される。付着量が80g/m2でも加熱条件を適当に選定することで、十分な塗装後耐食性が得られた。
( 実施例2 )
表1に示した鋼成分を持つ冷延鋼板(厚1.6mm)に実施例1と同じ要領で溶融Alめっきを施した。めっき付着量は両面160g/m2とした。これらのAlめっき鋼板に防錆油を塗布した。油は出光興産(株)製のダフニーオイルコートZ−3とし、付着量を変動させた。大気炉輻射加熱により到達温度900〜950℃、保定時間1〜5分で加熱し、その後金型焼入した。この試料の酸化膜厚及び塗装後耐食性を評価した結果を表3にまとめた。
Figure 0005251272
表3に示されているように、同じ熱履歴でも塗油量によって酸化膜厚は変化する。過剰な塗油を施すと酸化膜が成長し過ぎて、塗料密着性を低下さしめ、塗装後耐食性も低下する。酸化膜厚は塗油量以外にも、炉の雰囲気等の影響も受けるが、0.05〜1μmの範囲とすることが必要である。
( 実施例3 )
表4に示した様々な鋼成分を持つ冷延鋼板(厚1.2mm)に実施例1と同じ要領で溶融Alめっきを施した。めっき付着量は両面160g/m2とした。これらのAlめっき鋼板を、大気炉輻射加熱により到達温度900℃、保定時間1.5分で加熱し、その後金型焼入した。焼入後の硬度(ビッカース硬度、荷重10kg)を測定した結果も表4に示しているが,鋼中C量が低いと焼入後の硬度が低下するため,C量として0.1%以上あることが好ましい。
Figure 0005251272
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
Alめっき鋼板を加熱合金化した後の断面組織の構造の例を示す光学顕微鏡写真である。 Fe−Alの二元系状態図を示す説明図である。

Claims (2)

  1. 鋼成分として質量%で、
    C:0.1〜0.4%、
    Si:0.01〜0.6%、
    Mn:0.5〜3%、
    Ti:0.01〜0.1%、
    B:0.0001〜0.01%、
    P:0.05%以下、
    S:0.02%以下、
    Al:0.1%以下、
    N:0.01%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり
    体積%で90%以上がマルテンサイトである鋼材の表面に、複数の相からなるAl−Fe金属間化合物層を有し、
    更にその表面に厚みが0.05〜1μmの酸化膜を有し、Al−Fe金属間化合物層と鋼材の界面にAlを含有し厚みが2.5〜10μmのbcc層を有することを特徴とする、塗装後耐食性に優れた自動車部材。
  2. 鋼成分として質量%で、
    C:0.1〜0.4%、
    Si:0.01〜0.6%、
    Mn:0.5〜3%、
    Ti:0.01〜0.1%、
    B:0.0001〜0.01%、
    P:0.05%以下、
    S:0.02%以下、
    Al:0.1%以下、
    N:0.01%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼板の表面に片面当たり20〜100g/m2のAlめっき層を有し、
    更にその表面に0.1〜1g/m2の油が付着していることを特徴とする、熱間プレス用Alめっき鋼板。
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