JP3571583B2 - 光ケーブルの成端部 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、いわゆるスロット形光ケーブルの端末の成端部に係り、特に、端末から光ファイバが引き出されている光ケーブルの成端部に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
いわゆるスロット形光ケーブルにあっては、光ケーブル端末に口出ししたスロットロッドのスロット溝から光ファイバを引き出し、この光ファイバ先端を別の光ファイバとコネクタ接続等によって接続するようになっている。このスロット形光ケーブルでは、スロット溝内に光ファイバが保護収納されているので、牽引布設しても、光ファイバを傷めない等の利点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記スロット形光ケーブルの場合、スロット溝内での光ファイバの移動が許容されている特性がある。例えば、このスロット形光ケーブルの牽引布設作業では、光ケーブルの伸び、しごき、曲げ等によって、光ケーブル端末に引き出されている光ファイバが次第に光ケーブル内に呑み込まれてゆき、口出し長が短くなる現象が知られている(以下、「呑み込み現象」)。特に、光ケーブル端末の光ファイバ先端が予め光コネクタによってコネクタ接続可能に成端されている場合には、前記呑み込み現象によって光コネクタが光ケーブルに到達して損傷したり、接続作業用の余長が不足することを防止するべく、光ファイバに予め十分な口出し長を確保しておく対策が採られる。しかし、口出し長が長大であると、例えば、牽引布設用の牽引具では、光ファイバの余長を収納するべく大型化する必要が生じ、牽引抵抗の増大、狭隘な管路の通過性の低下等の問題が生じてしまう。特に、対応心数の多い光ケーブルでは、前記問題は一層顕著になってしまう。牽引具以外であっても、長大な口出し長は、湾曲処理に手間が掛かるとともに、しかも、呑み込み現象に伴って光ファイバ同士の絡み合い等を防止する必要もあり、処理が大変であった。
前記呑み込み現象に係る問題は、牽引布設時に限定されず、各種架体での取り回しに伴って光ケーブルに屈曲部や湾曲部が形成されたり、接続後の光ケーブルに屈曲部や湾曲部が形成されること等によっても発生する。
【0004】
ところで、スロット形光ケーブルの光ファイバの呑み込み現象を防止する技術として、例えば、光ケーブル端末を覆うようにして取り付けたケース内に充填した樹脂によって、光ケーブル端末の光ファイバを固定して呑み込み現象を防止する構造の成端部が提案されている。そこで、この構造の成端部を、牽引布設されるスロット形光ケーブル端末にも適用することが考えられる。しかしながら、前記構造の成端部は、布設後の光ケーブルあるいは高張力の作用しない布設方法(すなわち、牽引を伴わない布設方法)で布設される光ケーブルについて適用されるものであり、ケースの使用によって大型化が避けられないものであるから、これを牽引布設される光ケーブル端末に適用したのでは、牽引抵抗の増大、狭隘な管路の通過性の低下等を招いてしまう。また、前述の樹脂充填用のケースは、剛性の高いものが一般的であり、これを牽引布設に適用したのでは、狭隘な管路等の通過性が大幅に低下する可能性がある。ケース内に大量に充填される樹脂によって重量が大きくなることも、布設作業性の低下の原因となる上、コスト上昇を招くといった問題もある。
このようにスロット形光ケーブルの成端部としては、牽引端末に適用した場合であっても、光ファイバの呑み込み現象を確実に防止できるとともに、牽引布設の作業性を維持できる技術の開発が求められていた。
【0005】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、光ケーブル端末に引き出された光ファイバの呑み込み現象を確実に防止することができ、しかも、小型化や低コストが可能な光ケーブルの成端部を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明では、光ファイバを収納するスロット溝が外周部に形成されたスロットロッドを外皮内に収納してなる光ケーブルの端末から、前記光ファイバが引き出されてなる光ケーブルの成端部であって、前記光ケーブル端末の外皮を除去して露出させたスロットロッド先端の外周部を全周にわたって除去して形成した縮径部の周囲に、前記スロット溝から引き出された光ファイバが添わせるようにして配置されるとともに、この光ファイバをスパイラルチューブによって形成した補強チューブによって収納、補強した部分を含んで前記スロットロッドの縮径部近傍にて接着剤中に埋設固定してなる接着固定部が前記スロット溝に収納されない大きさに形成されており、前記接着固定部が、光ケーブル端末に露出させた吸水テープを含むようにして形成されて、スロットロッドからの引き抜きや、スロットロッドの軸回りの回転力に対して引き留められていることを特徴とする光ケーブルの成端部を前記課題の解決手段とした。
また、本発明では、光ファイバを収納するスロット溝が外周部に形成されたスロットロッドを外皮内に収納してなる光ケーブルの端末から、前記光ファイバが引き出されてなる光ケーブルの成端部であって、前記光ケーブル端末の外皮を除去して露出させたスロットロッド先端の外周部を全周にわたって除去して形成した縮径部の周囲に、前記スロット溝から引き出された光ファイバが添わせるようにして配置されるとともに、この光ファイバを補強チューブによって収納、補強した部分を含んで前記スロットロッドの縮径部近傍にて、前記スロットロッドに対して難接着性の接着剤中に埋設固定してなる接着固定部が前記縮径部の周囲を取り囲むようにして形成されており、前記接着固定部は、スロットロッド軸方向へ移動することが可能であり、該接着固定部がスロットロッドの縮径部とそれ以外の部分との間の境界の段差に突き当たることで、スロット溝への光ファイバの呑み込み現象が防止されるようになっていることを特徴とする光ケーブルの成端部を提供する。
また、本発明では、前記補強チューブの外面に、接着固定部との接着力を高める凹凸が形成されている構成、前記接着固定部は、スロットロッド先端面を含むように形成されている構成も採用可能である。
この発明によれば、光ケーブル端末に引き出された光ファイバに、光ケーブル内部方向への引き込み力が作用しても、光ファイバを埋設固定した接着固定部が、スロットロッドの縮径部とそれ以外の部分との間の境界に突き当たることで、スロット溝に収納されずに、スロット溝の入口で引き留められるため、光ファイバの呑み込み現象が防止される。また、前記接着固定部内に埋設固定されている光ファイバが、補強チューブに収納、補強されていると、補強チューブによって接着固定部との接着面積が増大して、より大きい接着力が得られるため、呑み込み現象による引き込み力に対して、光ファイバを効果的に引き留めることができるとともに、光ファイバの補強によって光ファイバを傷める心配が無い。
【0007】
また、前記接着固定部が、前記縮径部の周囲を取り囲むようにして形成されていると、光ケーブル内部方向への引き込み力を広範囲にわたって分散支圧することができ、引き込み耐力を向上できる。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下本発明の光ケーブルの成端部の1実施の形態を、図1から図3を参照して説明する。
図1において、光ケーブル1は、いわゆるスロット形光ケーブルであり、外皮2内に収納されたスロットロッド3を備え、このスロットロッド3の外周部に当該スロットロッド3の長手方向に沿って延在形成されたスロット溝4内に光ファイバ5(主として、単心または多心の光ファイバ心線)を収納している。この光ケーブル1端末の外皮2を除去して露出させたスロットロッド3先端には、その外周部を除去した形状の縮径部6が形成されている。この縮径部6の周囲には、前記スロットロッド3のスロット溝4から引き出された複数本の光ファイバ5が、当該縮径部6外面に添わせるようにして配置され、さらに、この光ファイバ5を前記縮径部6の近傍にて接着剤7中に埋設固定してなる接着固定部8が形成されている(図1中では、複数本の光ファイバ5の内、1本のみを例示)。
【0009】
光ファイバ5の先端は、光コネクタ9によってコネクタ接続可能に成端されている。また、光ファイバ5は、スロットロッド3の近傍では、スパイラルチューブ等の補強チューブ10に収納して補強されている。スロット溝4の入口4a近傍では、補強チューブ10内に収納されないで露出されている光ファイバ5が、直接、前記接着固定部8内に埋設固定されている。
【0010】
光ケーブル1端末に口出しされたスロットロッド3先端には、このスロットロッド3の中央部に収納されているテンションメンバ11が露出され、この口出しされたテンションメンバ11には、当該テンションメンバ11を収納するようにして挿入されたテンションメンバスリーブ12がカシメ等により固定されている。
図1に例示した接着固定部8を詳述すると、この接着固定部8は、縮径部6のみならず、光ケーブル1端末に口出しされているスロットロッド3全体、スロットロッド3近傍の光ファイバ5(補強チューブ10を含む)、前記テンションメンバスリーブ12の前記スロットロッド3先端に当接された当接部12aを含むようにして、これらを一体的に接着剤7中に埋設固定したものである。
光ケーブル1端末に構成される成端部13の外側は、保護材14によって覆われる。この保護材14は、例えば、防水性を有する保護テープや自己収縮チューブ(熱収縮チューブなど)等からなり、光ケーブル1端末近傍の外皮2から、テンションメンバスリーブ12の当接部12aに至る領域を覆うことで、成端部13全体を結束して一体化するとともに、防水性を維持する。また、この保護材14は、接着固定部8を外部からの衝撃等による傾きや、スロットロッド3から引き抜く方向への外力から保護する機能を果たす。
【0011】
図1中、符号15は、牽引具であり、例えば、先端のアイナット16に与えられた矢印A方向への牽引力を、テンションメンバスリーブ12に伝達することで、光ケーブル1に牽引力を伝達して牽引できるようになっている。牽引力をテンションメンバスリーブ12に伝達するための構成としては、牽引具15の外側を覆う外装ホース17内に配置した連結ワイヤ等を牽引力伝達体として、アイナット16とテンションメンバスリーブ12との間を連結した構成(いわゆる中心テンションメンバ牽引)や、前記外装ホース17自体を牽引力伝達体として、これに連結したテンションメンバスリーブ12に牽引力を伝達する構成等が採用される。なお、光ファイバ5先端をコネクタ接続可能に成端する光コネクタ9は、光ファイバ5の余長とともに、牽引具15の外装ホース17内に確保された収納空間17a内に収納する。
【0012】
次に、この成端部13の組み立て手順を説明する。
まず、光ケーブル1端末の外皮2を除去してスロットロッド3を露出させて、スロット溝4から光ファイバ5を取り出し、目的口出し長の光ファイバ5を得る。さらに、このスロットロッド3の先端を除去して、テンションメンバ11を目的口出し長で露出させる。この段階で、外皮2から露出されているスロットロッド3は、全てを切断せずに、縮径部6を形成可能な程度の寸法を残しておく。
次いで、図2に示すように、この光ケーブル1端末に露出されているスロットロッド3先端の外周部を除去して、縮径部6を形成する。スロットロッド3は、例えば、ポリエチレン等の樹脂から形成され、このスロットロッド3外周部の除去は、機械的切削が一般的である。
なお、図2(a)においては、単心または多心の光ファイバテープ心線である光ファイバ5をスロット溝4に収納しているが、本発明はこれに限定されず、光ファイバ5としては、光コード等、各種構成が採用可能である。
【0013】
次に、図3に示すように、スロット溝4から引き出されている光ファイバ5に補強チューブ10を被せて収納、補強し、縮径部6外面に添わせるようにして配置する。そして、縮径部6を含むスロットロッド3の周囲全体に接着剤7を盛り、光ケーブル1端末に口出しされているスロットロッド3全体、スロットロッド3近傍の光ファイバ5(補強チューブ10を含む)、前記テンションメンバスリーブ12の当接部12aを含むようにして、これらを一体的に埋設固定して、接着固定部8を形成する。したがって、接着固定部8は、スロットロッド3の周囲を取り囲むようにして形成される。そして、外側を保護材14(図1参照)で覆う。
スロットロッド3の周囲全体に盛った接着剤7によって、各スロット溝4から引き出された複数本の光ファイバ5を一括して埋設固定して形成される接着固定部8は、光ファイバ5毎やスロット溝4毎に複数の接着固定部を形成する場合に比べて、形成が容易である。
【0014】
光ファイバ5の補強チューブ10に収納された部分は縮径部6に収まり、補強チューブ10のスロットロッド3からの突出寸法が抑えられるため、接着固定部8は、光ケーブル1外径から外側に出ない程度、あるいは、光ケーブル1外径範囲内とすることができる(図1等では、接着固定部8外径は、光ケーブル1外径よりも小さい)。好ましくは、縮径部6周囲に配置された補強チューブ10端部の口が、スロットロッド3の各スロット溝4とほぼ一致するように配置され、スロット溝入口4aから引き出された光ファイバ5が急激に曲げること無く、補強チューブ10に到達されるようにする。
【0015】
補強チューブ10としては、例えば、ナイロン製スパイラルチューブ等が採用される。スパイラルチューブの素材としては、ナイロン以外、可撓性を有する各種素材が採用可能である。スパイラルチューブは、前記ナイロン等からなる厚手のテープ材を光ファイバ5に螺旋状に巻き付けることで、光ファイバ5を保護するようになっている。
接着固定部8を形成する接着剤7としては、例えば、アクリレート系接着等が用いられる。ここで、光ケーブル1端末には、塩化ビニルなどの樹脂製不織布等からなる周知の吸水テープ18を露出しておき、前記接着固定部8は、この吸水テープ18を含むようにして形成することがより好ましい。
また、光ファイバ5は、接着固定部8内に埋設固定される全長を補強チューブ10に収納、補強しても良いが、図3に示すように、スロット溝4近傍では補強チューブ10に収納せずに、直接、接着固定部8内に埋設固定しても良い。これにより、接着固定部8内での、補強チューブ10を含む光ファイバ5全体の定着性を向上できるとともに、スロット溝4とこのスロット溝4から離間された補強チューブ10との間に入り込んで、光ファイバ5を埋設固定する接着固定部5によって、補強チューブ10の特に端部が引き留められることで、光ケーブル1内部方向への引き込み力に対する光ファイバ5の引き込み耐力を向上できる。補強チューブ10は、例えば、外面に凹凸を形成すること等によって、接着固定部8との接着力を高めることも可能である。
【0016】
例えば、光ファイバ5としての光ファイバ心線の外装被覆として多用されているポリアミド樹脂(ナイロン)、ナイロン製補強チューブ10、金属製テンションメンバスリーブ12、塩化ビニル製の吸水テープ18は、アクリレート系接着剤7に対して十分な接着性が得られる反面、ポリエチレン製のスロットロッド3は難接着性である。塩化ビニル製の吸水テープ18を含んで形成された接着固定部8は、主として、吸水テープ18との接着力や保護材14による結束によって、スロットロッド3から引き抜かれる方向の力や、スロットロッド3軸回りの回転力に対して、安定に引き留められるため、これらの力によって光ファイバ5を傷める心配が無い。
【0017】
この成端部13では、光ケーブル1の牽引布設時の伸び、しごき、曲げ等によって、光ファイバ5に光ケーブル1内部方向への引き込み力が生じても、スロット溝4に入り込まない大きさである接着固定部8に作用した引き込み力が、スロットロッド3の縮径部6とそれ以外の部分との間の境界の段差19に支圧され、そこから移動しないため、光ファイバ5の呑み込み現象を防止できる。接着固定部8と接している外皮2先端面も、引き込み力を支圧する。また、接着固定部8を縮径部6の先端面6aにまで回り込ませ、テンションメンバスリーブ当接部12aを含んで埋設した部分も、引き込み力の支圧に寄与する。引き込み力は、外皮2先端、段差19、スロットロッド3先端(詳細には縮径部6先端)の広範囲に分散して支圧されるので、接着固定部8に局所的な変形や破壊等を生じること無く、効率良く支圧される。また、スロットロッド3の全周にわたって形成された接着固定部8が、スロットロッド3の全周にわたって形成された段差19に均等に当接することも、接着固定部8での引き込み力の偏在防止に寄与する。
【0018】
ポリエチレン製スロットロッド3の周囲に、アクリルレート系接着剤7を用いて形成された接着固定部8は、両者間の難接着性により接着固定されないか、あるいは、仮固定状態であり、前記引き込み力が作用することで、スロットロッド3軸方向へ移動することが可能になる。例えば、接着固定部を、縮径部先端面6aや吸水テープ18等を含まないで、縮径部6の周囲にのみ、当該縮径部6を取り囲むようにしてリング状に形成し、しかも、段差19から若干の離間距離を確保すれば、光ファイバ5の呑み込みに伴って段差19に当接するまで、接着固定部の移動が許容される。接着固定部は、縮径部6をガイドとして移動する。段差19から接着固定部までの間に引き出されている光ファイバ5が、光ケーブル1内に引き込み可能な余長として機能するため、接着固定部が段差19に当接するまでは、光ファイバ5には引張応力が作用しない。したがって、過剰な引き込み力によって、光ファイバ5を傷める等の不都合を防止できる。接着固定部が段差19に突き当たって、それ以上の移動が規制されれば、光ファイバ5の呑み込み現象が防止されることは言うまでも無い。
【0019】
以上のように、この成端部13では、光ファイバ5の呑み込み現象を確実に防止でき、光ファイバ5に目的の口出し長を維持できる。また、呑み込み現象によって、光ファイバ5先端の光コネクタ9を破損する等の問題が生じないため、呑み込み現象に備えて、光ファイバ5の口出し長を過剰に大きく確保するといった必要がなくなり、光ファイバ5に目的の口出し長を得るための作業労力の軽減等も可能になり、成端部13の組み立て作業性を向上できる。この結果、光ケーブル1の牽引布設される端末に、この成端部13を適用すれば、牽引具15の収納空間17a内への光ファイバ5余長の収納量を減少できるから、牽引具15の小型化によって、牽引布設の作業性を向上できるといった効果が得られる。
【0020】
さらに、光ケーブル1端末に口出ししたスロットロッド3の周囲にのみ、接着剤7を盛って接着固定部8を形成すれば良いので、接着剤充填用のケース等は不用であり、部品点数の削減、接着剤の使用量の削減、全体の小型化、低コスト化が可能であるといった利点もある。縮径部6の形成により、接着固定部8全体を小型化できることも、成端部13の小型化、接着剤7の使用量の削減による低コスト化に寄与する。
【0021】
本発明者は、この成端部13について、各種試験を行っている。表1は、その結果をまとめたものである。なお、光ファイバ5としては、光ファイバテープ心線を採用した。接着固定部8は、吸水テープ18やテンションメンバスリーブ12の当接部12aにも接着固定している。
表1中、「湿熱HC」は、湿熱ヒートサイクル試験であり、多湿環境下で温度変化を繰り返し与えることで、接着固定部8の接着剤の劣化を想定した加速劣化試験として行っている。
【表1】
Figure 0003571583
【0022】
光ケーブル1端末の成端架等への取り回しや、光ファイバ5のコネクタ接続時に、光ファイバ5に作用する張力を調査すると、最大で5Nであったが、表1に示すように、30Nの引張試験を行った場合でも、光ファイバ5の移動が無いことが確認できた。また、湿熱ヒートサイクル試験前後の機械試験によっても、光ファイバ5の移動が無いことが確認されている。さらに、ヒートサイクル試験後や湿熱ヒートサイクル試験後、成端部13における光ファイバ5の損失変動を調べたところ、0.05dB以下であり、良好な結果が得られている。なお、各種試験において、光ファイバ5には、外傷等は確認されず、光学特性の劣化は認められなかった。
【0023】
以上のことから、この成端部13では、光ケーブル1の伸びや曲げ等に対応して当該光ケーブル1内部方向への引き込み力が光ファイバ5に作用しても、光ファイバ5の移動を確実に防止でき、その光学特性も変動しないため、優れた信頼性が得られる。光ケーブル1の牽引布設時や成端作業時等に生じる光ケーブル1の伸びや曲げ等に限定されず、布設後の光ケーブル1の伸びや曲げ等に起因する光ファイバ5の引き込み力に対しても、同様に、光ファイバ5の呑み込み現象を確実に抑えることができ、長期信頼性が得られる。
【0024】
なお、本発明は、牽引布設される光ケーブルに限定されず、牽引以外の、高張力が作用しない布設方法で布設される光ケーブルについても適用可能であることは、言うまでも無い。この場合、光ケーブル端末に口出ししたスロットロッド先端にテンションメンバを口出ししたり、このテンションメンバにテンションメンバスリーブ12を取り付ける必要は無い。
前記実施の形態では、接着固定部は、光ケーブル端末に露出させた吸水テープや、スロットロッド先端面を含むように形成したが、本発明は、これに限定されず、吸水テープやスロットロッド先端面を含まないで形成した接着固定部も採用可能である。また、接着固定部は、スロットロッドの全周を取り囲む形状に限定されず、例えば、複数に分割されている構成も採用可能であり、スロット溝毎に光ファイバを埋設固定する構成も採用可能である。要は、本発明は、スロット溝に入り込まない大きさに形成された接着固定部をストッパの如く機能させることにより、光ファイバの呑み込み現象を防止するものであり、接着固定部の形状は、各種採用可能である。スロット溝単位等の少ない本数の光ファイバ毎に形成され、スロットロッド縮径部を取り囲まない形状の接着固定部は、成端部外側に装着される保護材等によって押え込んで、縮径部外面近傍に配置する。
接着固定部を形成する接着剤や、スロットロッド、補強チューブの材質等は、適宜変更可能であり、例えば、接着固定部の接着剤によりスロットロッドが接着可能である構成も採用可能である。
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の光ケーブルの成端部によれば、光ケーブル端末に引き出された光ファイバに、光ケーブル内部方向への引き込み力が作用しても、光ファイバを埋設固定した接着固定部が、スロット溝に収納されずに、スロット溝の入口で引き留められるため、光ファイバの呑み込み現象を確実に防止できるといった優れた効果を奏する。また、前記接着固定部内に埋設固定されている光ファイバが、補強チューブに収納、補強されていると、光ファイバに作用する引き込み力によって光ファイバを傷める心配が無く、光ファイバの光学特性を安定に維持できるとともに、接着固定部との接着面積の増大により、引き込み耐力を向上できる。また、前記接着固定部が、前記縮径部の周囲を取り囲むようにして形成されていると、光ケーブル内部方向への引き込み力を広範囲にわたって分散支圧することができ、引き込み耐力を向上でき、光ファイバの呑み込み現象を一層確実に防止できる。しかも、スロットロッドのスロット溝から引き出された複数本の光ファイバを接着剤中に一括埋設固定することで接着固定部を簡単に短時間で形成でき、成端部の組み立て作業性を向上できるといった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の光ケーブルの成端部の1実施の形態を示す側面図である。
【図2】図1の光ケーブルの成端部の組み立て手順を示す図であって、(a)は、光ケーブル端末に口出しされたスロットロッド先端に縮径部を形成した状態を示す側面図、(b)は縮径部側から見た正面図である。
【図3】図1の光ケーブルの成端部の組み立て手順を示す図であって、光ケーブル端末に口出しされたスロットロッドの周囲に盛った接着剤により接着固定部を形成した状態を示す側面図である。
【符号の説明】
1…光ケーブル(スロット形光ケーブル)、2…外皮、3…スロットロッド、4…スロット溝、5…光ファイバ、6…縮径部、7…接着剤、8…接着固定部、10…補強チューブ、13…成端部。

Claims (4)

  1. 光ファイバ(5)を収納するスロット溝(4)が外周部に形成されたスロットロッド(3)を外皮(2)内に収納してなる光ケーブル(1)の端末から、前記光ファイバが引き出されてなる光ケーブルの成端部であって、前記光ケーブル端末の外皮を除去して露出させたスロットロッド先端の外周部を全周にわたって除去して形成した縮径部(6)の周囲に、前記スロット溝から引き出された光ファイバが添わせるようにして配置されるとともに、この光ファイバをスパイラルチューブによって形成した補強チューブ(10)によって収納、補強した部分を含んで前記スロットロッドの縮径部近傍にて接着剤(7)中に埋設固定してなる接着固定部(8)が前記スロット溝に収納されない大きさに形成されており、
    前記接着固定部が、光ケーブル端末に露出させた吸水テープ(18)を含むようにして形成されて、スロットロッドからの引き抜きや、スロットロッドの軸回りの回転力に対して引き留められていることを特徴とする光ケーブルの成端部(13)。
  2. 光ファイバ(5)を収納するスロット溝(4)が外周部に形成されたスロットロッド(3)を外皮(2)内に収納してなる光ケーブル(1)の端末から、前記光ファイバが引き出されてなる光ケーブルの成端部であって、前記光ケーブル端末の外皮を除去して露出させたスロットロッド先端の外周部を全周にわたって除去して形成した縮径部(6)の周囲に、前記スロット溝から引き出された光ファイバが添わせるようにして配置されるとともに、この光ファイバを補強チューブ(10)によって収納、補強した部分を含んで前記スロットロッドの縮径部近傍にて、前記スロットロッドに対して難接着性の接着剤(7)中に埋設固定してなる接着固定部(8)が前記縮径部の周囲を取り囲むようにして形成されており、
    前記接着固定部は、スロットロッド軸方向へ移動することが可能であり、該接着固定部がスロットロッドの縮径部とそれ以外の部分との間の境界の段差に突き当たることで、スロット溝への光ファイバの呑み込み現象が防止されるようになっていることを特徴とする光ケーブルの成端部(13)。
  3. 前記補強チューブの外面に、接着固定部との接着力を高める凹凸が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の光ケーブルの成端部。
  4. 前記接着固定部は、縮径部の周囲から縮径部先端面側にまで回り込ませた形状に形成されていることを特徴とする請求項記載の光ケーブルの成端部。
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