JP3571199B2 - 蓄光印刷物及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は磁気記録媒体を収納したカセットテープや、光記録ディスクまたはこれらを保護するケースに貼付する記入ラベルやインデックスカードに関するものであり、さらに詳しくは、蓄光性で筆記可能な蓄光層を有する蓄光印刷物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より磁気記録媒体を収納したカセットテープや、光記録ディスクなどの製品にその曲目や必要な事項を記入するラベルやインデックスカードは、昼間の明かりのあるところでは筆記項目等の確認ができるが、暗い室内や夜間の車内等ではその内容の確認が不可能であった。
この問題を解決するために若干の提案がなされている。特開平8−77746号では、暗所でも光を発することができる顔料である蓄光顔料を分散した蓄光インキを用いてラベル等の必要な部分に蓄光層の印刷を行うことが提案されている。さらに蓄光層に筆記受理性を付与するために蓄光インキにプロテインや炭酸カルシウム等を混入する場合がある。その印刷方法としてはパッド印刷やスクリーン印刷を用いる。
特願平8−87136号では、蓄光顔料を混ぜた蓄光インキをラベル等にスクリーン印刷し、次に蓄光顔料からくる筆記性の悪さをカバーするために筆記受理層を印刷することを提案している。この時の印刷方法もスクリーン印刷で行う。このように従来の技術で蓄光顔料を含有する蓄光インキをスクリーン印刷法で印刷したのは、蓄光インキ層が厚くないと充分な蓄光性が得られず、通常40〜100μmの厚さが必要であるのに対してパッド印刷やスクリーン以外の印刷方法は厚みが出しにくいからである。
従来の典型的な蓄光インキ層を設けたラベル蓄光印刷物を図2により説明する。図において、蓄光層を有する筆記受理ラベルは、裏面に剥離性のセパレート紙3を接着層2により接着したプラスチックまたは紙製のフィルム基材ないし原紙1に、蓄光層4をスクリーン印刷により形成したものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように何れの提案もスクリーン印刷にて蓄光部を設けているが、下記のような不具合がある。
1.スクリーン印刷は枚葉印刷で行なうのが一般的で、ある一定の大きさにある原反に蓄光印刷を行ない乾燥させた後、更に筆記受理用の印刷層を再度スクリーン印刷にて行なう。ほとんどの場合イラストや文字といった通常の色印刷も行なうため、印刷工程だけで2〜3回の工程が必要となり非常に効率が悪い。
2.ラベルを製造する場合、スクリーン印刷等の枚葉印刷は、通常一枚の原反シート上に目的にあった大きさのラベルを多面付けするので、ラベル一枚の大きさにカットするために印刷機とは別の機械でさらに抜き加工をするので印刷から抜き加工の工程を中断しないで一貫生産することができない。
3.枚葉印刷は多面付け印刷を行なうため原反シートの大きさが比較的大きく、コストの高い蓄光インキを効率良く印刷するのが難しい。蓄光インキは、印刷厚みが厚いほど残高輝度は高いのであるが、コストと残光機能を満足するための印刷厚みとしては40〜100μm前後が必要である。
通常のデザイン等の色印刷は、印刷厚みよりデザインや文字判読といった機能を重視するが、蓄光印刷のように厚みの厚い印刷を求めるスクリーン印刷は、一回でその目標厚みを印刷するため図2に誇張して示した蓄光層4のように厚みのバラツキが発生しやすく、規格外れを防止するために必要な厚さ以上の厚さを選択しておく必要があり、その分だけコストアップになってしまうことがある。
4.スクリーン印刷は比較的大粒径の蓄光顔料を含有する蓄光インキも印刷できるが、それゆえ図2のように蓄光層4の表面が粗くなり筆記性に劣ることになるので、さらに筆記受理剤をインキ内に混ぜたり、印刷するといった対策が必要となり作業効率及びコストアップにつながる。
5.通常の蓄光インキは溶剤型のインキであり、前述のように蓄光印刷は厚みが厚いために乾燥に時間がかかり作業効率の悪化及びコストアップにつながる。また原紙の収縮による抜き位置のずれが発生し、歩留まりの低下要因にもなる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明では、前述の不具合である印刷の多工程化、印刷工程と抜き工程の連続化、印刷厚みの安定化を改善することを目的とし、フレキソ印刷を用いて蓄光印刷を行なうことを提案するものである。
すなわち、記録媒体を収納するカートリッジ等に同封された曲目等の記入が可能な蓄光印刷物を製造する方法において、紫外線硬化型の蓄光インキを用いて、蓄光印刷層をフレキソ印刷方式にて一層以上印刷することを特徴とする蓄光印刷物の製造方法及びこのようにして得られた曲目等の記入が可能な蓄光印刷物を提供する。蓄光インキは印刷のつど紫外線により硬化される。
【0005】
一般に印刷は、平版を用いたオフセット印刷、凸版を用いた凸版印刷、凹版を用いたグラビア印刷、紗とよばるれる糸状のものを格子状に組み合わせた印刷版を使うスクリーン印刷、そしてグラビア印刷と凸版印刷の両印刷を組み合わせたような印刷がフレキソ印刷である。この中で、通常オフセット印刷とスクリーン印刷が枚葉印刷であり、その他がロール状の原反に印刷を行なう方式で、ロール印刷は原反が流れるのに従い印刷から抜き加工まで同時に行うことができることから本発明ではこのロール印刷を選択するわけだが、各々の印刷にも問題がある。
1.グラビア印刷
グラビア印刷は、ドブ付けになったインクパンから凹版にデザインされたシリンダーにインキが転写し回転しながら印刷するものだが、1回の印刷の厚み(インキの)が2〜3μmと薄く、蓄光印刷に必要な厚みを得るのに10回以上の繰り返し印刷(重ね塗り)が必要となり、効率が良くない。
2.凸版印刷
凸版印刷は、インキ壷から転写ロールを数本経たインキを印刷版に転写させ印刷物を印刷する方式だが、前述のように蓄光顔料の粒径が通常使用される顔料の粒径より大きい(通常の色顔料の粒径0.2〜0.5μm)ので、蓄光顔料が残留してしまい印刷物まで蓄光顔料が転写しない。
3.フレキソ印刷
フレキソ印刷は、インキ壷からアニロックスロールと呼ばれる細かな凹状になったロールにインキを転写し、次に印刷版に転写し、それをさらに被印刷物に転写して印刷する方法である。このため凹状部に転写した蓄光インキが直接に印刷版に転写するため顔料残留が少なく確実な印刷ができる。又印刷の厚みも20μm前後で安定して印刷できなお且つ必要な厚みになるまで工程を中断しないで連続して数層印刷した後、筆記受理層の印刷、又はデザインにあった色印刷まで行なった後、最後に抜き加工を行なうことから一工程で印刷から製品まで製造することができる。
また蓄光印刷を連続で行なうことから溶剤使用の自然硬化型のインキでは連続印刷が不可能なため紫外線照射にて硬化させる紫外線(UV)硬化型のインキを用いることで連続した印刷が可能となる。
【0006】
【作用】
上記のように蓄光インキをフレキソ印刷することで、
1.蓄光顔料が確実に転写して必要な厚みになるまで数回印刷できる工程を一工程でできることから厚みの安定した蓄光印刷層を有したラベルを効率よく製造することができる。
2.UV硬化型のインキを用いることで、フレキソ印刷から凸版印刷までの多色印刷が一度に行なうことができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
原反の基材としては、紙でもプラスチックフィルムをベースとしたラベルのどちらでもかまわないがロール状の原反を用いることを前提とする。
本発明の好ましい蓄光印刷物の例を図3に示す。この図において、筆記受理性の蓄光層ラベル5は、裏面に剥離性のセパレート紙3を接着層2により接着したプラスチックまたは紙製のフィルム基材ないし原紙1に、蓄光層4をフレキソ印刷により形成したものである。蓄光層4はフレキソ印刷により1層目4−1、2層目4−2及び3層目4−3を形成する。これにより、表面が平坦化し、蓄光性が均一化するとともに筆記性が向上する。必要に応じて筆記性を付与するための公知の筆記受理剤あるいは木材系の粉末材料を混合しても良い。
【0008】
印刷機としてはフレキソ印刷のユニットと凸版印刷のユニットが同一の印刷機に搭載できる印刷機が望ましい。この印刷機の代表として三起機械(株)の凸版輪転印刷機を用いることができる。この印刷機は一工程で7色まで印刷でき更に抜き加工まで同時に行なうもので、フレキソ印刷ユニットと、凸版印刷ユニットを7色内で用途にあった配置に印刷ユニットを変更できることから、今回のようなラベルの印刷には最も適した印刷機である。
本発明で使用される印刷機の概要は図1に示す通りである。例として印刷機はフレキソ印刷部Aと、凸版印刷部Bとよりなり、フレキソ印刷部Aを構成するフレキソ印刷ユニット11、12、13と、凸版印刷部Bを構成する凸版印刷ユニット14、15、16とは、圧胴の周りにその回転方向に順に配置されている。フレキソ印刷ユニット11、12、13の各々は、循環ポンプ18により循環ホース19を経て循環されている筆記及び蓄光インキを収容したインキ壺20から、インキを正確に計量できる表面性状を有するアニロックスロール21を経て、フレキソ印刷版22に筆記受理及び蓄光インキを転写し、圧胴の周りに送給されているラベル等の印刷用紙に転写する。
一方、凸版印刷ユニット14、15、16の各々はインキ壺24から、振動ロールを一部に含んでいる複数個の転写ロール25を経て均一にされたインキ層が、凸版輪転印刷版26に転写され、最後に回転圧胴10と凸版輪転印刷版26の間に供給されているプラスチックフィルム上に転写される。これらの凸版印刷ユニットは通常の意匠、図形、文字の印刷を行うだけにとどめる。
さらに、各フレキソ印刷ユニットの直ぐ下流側には、UV乾燥機(紫外線を照射することにより蓄光印刷層を硬化する装置)30、31、32が配置され、各フレキソ印刷による蓄光層が印刷された直後に印刷層を硬化する。また、各凸版印刷によるデザイン印刷部BでUV硬化型樹脂を使用する場合には、同様なUV乾燥機33、34、35をそれぞれ凸版印刷ユニット14、15、16の直ぐ下流側に配置する。
以上のように蓄光顔料を含有する蓄光インキ(あるいはさらに筆記受理剤を添加したもの)をフレキソ印刷を用いた方法で印刷することで、蓄光層を均一化し且つ筆記性を向上する。
【0009】
次にインキ関係であるが、蓄光顔料は技術的、市場性から見て根本特殊化学(株)の「N夜光」を用いる。顔料配分は残高輝度等を考慮して蓄光インキの総和100%に対して蓄光顔料の占める割合は50〜80%が望ましい。又、蓄光顔料の粒径だが転写性を考慮してMAX20μmとし、D50=5〜12μm及びD90=14〜18μmと粒径の小さな顔料を使用し、インキの硬化を早めるため光重合開始剤を添加したUV蓄光インキを用いる。印刷の厚みだが、蓄光印刷をフレキソ印刷で行なうと1回の厚みが15〜20μm位であり、この厚みでも残光は十分あるのだが、蓄光印刷に筆記した文字を判読することを目標とすると40〜100μm前後の厚みが必要となることから蓄光印刷を目標厚みになるよう多層印刷することが望ましい。
【0010】
次にデザインに応じた色印刷を行なうが、この時のインキもUV硬化型のインキで印刷し、最後に抜き加工を行なって蓄光ラベルの完成となる。
但し、印刷する順番はこの限りではなく、デザイン等に応じていろいろな組み合わせが可能である。
【0011】
筆記受理剤としては、吸水性(親水性)にすぐれ、インキ化に可能であれば良い。例えば木材系セルロースやプロテイン等を挙げることができる。
ここに、木材系セルロースの好ましい調整方法は、木材、木綿、麻類等の繊維を脱脂し、希アルカリ溶液と煮沸した後、インキ化し易いように粉末化したものである。木材系セルロースは繊維を脱脂してあるため、吸水性(親水性)に優れており、筆記受理性を向上する。上に述べたように、凸版輪転印刷において印刷版によるインキ転移性が不十分であるが、本発明ではフレキソ印刷法を使用するので木材系セルロースやプロテイン等を含有するインキ転移性を改善でき、輪転印刷機の採用により連続印刷が可能になり量産性を確保できる。
吸水性が向上することにより万年筆、水性サインペン、等のインクによる記入が可能になるだけでなく、油性ペンによる筆記性も確保でき、更に印刷領域が木材系のセルロース等により適度な凹凸ができて鉛筆による筆記性が向上する。
【0012】
【実施例】
図3に例示した構造を有する蓄光ラベルを製造した。
1.印刷原反として基材には紙1を用いた。紙1の裏面には接着層2を有し更にセパレート紙3を貼り付けてなる蓄光ラベル5を用いた。
2.蓄光インキは、蓄光顔料の配合比をインキの総和100%に対して50%添加し、インキ内の配合比は表1の通りで行なった。顔料粒径はD50=9〜11μm、D90=15〜17μmであった。印刷の厚みは目標を60μmとした。このことからフレキソ印刷での蓄光印刷の回数は3回で行なった。蓄光顔料の粒径は通常の色顔料より大きいので、従来のように1回の印刷で必要な厚みを印刷すると、表面の凹凸が大きくなるが(図2)、今回のように複数回印刷することで、凹凸がならされて従来のものより凹凸が小さくなった(図3)。
より具体的に示すと、表面粗さ(10点平均粗さRz)及び各種筆記具による筆記の結果を表2に示す。明らかに従来のものに比べて筆記性が良好になった。表2においても○は良好、△は筆記時に多少ざらつきがあるが書かれたものは問題がない、▲は筆記時にざらつき感があり書きにくい、及び×はうまく書けない(鉛筆が削れる。紙やすりに文字を書いているような感じである)。
3.最後にデザインにあった色印刷を凸版印刷法で3回塗り、抜き加工を行なって蓄光ラベルとした。
4.印刷は蓄光印刷から色印刷を含めて6回を一工程の印刷で行なった。
なお、今回の実施例では蓄光印刷層の上に筆記受理層を設けていないが、フレキソ印刷で同時に筆記受理層を印刷することも可能である。
【0013】
【表1】
Figure 0003571199
【0014】
【表2】
Figure 0003571199
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば、蓄光印刷を行なったラベルにおいて、UV硬化性の蓄光インキを使用して、フレキソ印刷にてラベルを製造することにより従来とほぼ同等レベルの製品を各工程に分けずに一工程で安定した厚みのレベルで効率良く製造できる。又、これにより安価にて蓄光印刷物を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】フレキソユニット搭載の凸版輪転印刷機の図である。
【図2】従来の蓄光印刷ラベル断面図である。
【図3】本発明のフレキソ印刷による蓄光印刷ラベル断面図である。
【符号の説明】
1 原紙
2 接着層
3 セパレート紙
4 蓄光層
5 蓄光ラベル
11、12、13 フレキソ印刷ユニット
14、15、16 凸版印刷ユニット
30、31、32、33、34、35 UV乾燥機

Claims (4)

  1. 記録媒体を収納するカートリッジ等に同封された曲目等の記入が可能な蓄光印刷物において、紫外線硬化型の蓄光インキを用いて、多層の蓄光印刷層をフレキソ印刷方式にて印刷し、各印刷ごとに紫外線硬化したことを特徴とする蓄光印刷物。
  2. さらに凸版印刷により印刷された印刷層を有する請求項1蓄光印刷物。
  3. 記録媒体を収納するカートリッジ等に同封された曲目等の記入が可能な蓄光印刷物を製造する方法において、紫外線硬化型の蓄光インキを用いて、蓄光印刷層をフレキソ印刷方式にて多層印刷し、各印刷の直後に紫外線硬化する蓄光印刷物の製造方法。
  4. さらに凸版印刷により印刷された印刷層を印刷する請求項の蓄光印刷物の製造方法。
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