JP3570732B2 - 塩素ガスの濃縮方法および装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は圧力スイング吸着法を利用した塩素ガスの濃縮精製方法および装置に係わり、特に排出処理廃ガス中の塩素濃度を低く且つ製品濃縮塩素ガスの純度を高くするように構成された塩素ガスの濃縮精製方法及び装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
今まで知られている塩素ガスの濃縮方法は、塩素系の溶剤に塩素ガスを吸収させ、つぎに塩素ガスを蒸発させる方法、ガスを加圧・冷却して液体塩素として分離する方法、塩素をシリカゲルに吸着させる方法(米国特許第1,617,305号)等である。しかし、塩素系の溶剤を使用する方法は環境に与える影響等により今後、規制を受ける方向にあり好ましい方法ではない。
【0003】
一方、加圧・冷却して液化する方法も圧縮機や冷凍機を必要とし有利な方法とは言い難い。シリカゲルに吸着させる方法も効率が悪く工業的に有利な方法でなく今まで利用されてきていない。特に低濃度から高濃度までの塩素ガスを濃縮する際に排ガス中に塩素ガスを排出しないで処理出来る工業的に有効な方法および装置が無かった。
【0004】
このように、不純物を含む塩素ガスを濃縮精製する場合、工業的に有効な方法および装置は無かった。また、塩素ガスを含む混合ガス中の塩素を分離する場合、特に塩素濃度が比較的低く水分を含有したガスから塩素を分離し濃縮する際に有効な方法がなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は不純物を含有した塩素ガスを濃縮精製する際に、溶媒を使用せず、また塩素の液化も必要としないで高純度塩素を得、しかも排出処理廃ガス中の塩素をほとんど無くすことができる塩素ガス濃縮精製のための工業的方法および装置を提供することを目的とする。
【0006】
また、本発明は塩素を含むガス中より塩素を分離・濃縮し、残ガス(処理廃ガス)中の塩素を実質上ゼロとする圧力スイング吸着法において、特に残ガス中の塩素濃度を実質上ゼロとする操作条件を自動的に制御する方法および装置を提供することを目的とする。
【0007】
一般に圧力スイング吸着システムでは、吸着塔(複数)への吸着剤充填量、吸着性能、処理ガス中吸着成分量、ガス量、運転時間をもとに吸着サイクル、脱着サイクルを計算し、運転操作条件に反映させている。しかしこの方法では、吸着剤の経時劣化,処理ガス条件(温度,圧力,流量等)の変化に対しては最適操作条件からの逸脱が起きる。特に残ガス中への特定ガス濃度を実質上ゼロとする運転操作は困難であった。
【0008】
本発明者らは、圧力スイング吸着法により塩素を含むガス中から塩素を分離・濃縮する方法を発明したが、この方法により操作条件を適切に選択すると塩素を含むガスより塩素を分離・濃縮し、その残ガス中の塩素濃度を実質上ゼロとすることができるが、この方法においても吸着剤の経時劣化,処理条件(温度,圧力,流量等)の変化に対しては最適操作条件からの逸脱が起き、残ガス中への塩素ガス濃度を実質上ゼロとする長期間の運転操作は非常に困難であった。
【0009】
さらに、本発明は塩素濃度が比較的低く水分を含有したガスから塩素を分離し濃縮する際に、溶媒を使用せずまた塩素の液化も必要とせず吸着剤の寿命が長く且つ装置の腐食を防止できる工業的装置を提供することをも目的とするものである。
【0010】
【発明を解決するための手段】
本発明は塩素ガスを吸着する吸着剤が充填された吸着塔に不純物を含む塩素ガスを供給し塩素ガスを吸着させる吸着操作と、吸着剤に吸着された塩素ガスを脱着させる脱着操作を交互に繰り返すことによって、吸着塔に供給する不純物を含む塩素ガス中の不純物を取り除き高純度塩素ガスを得る塩素ガス濃縮方法において、前記1段目の吸着塔を出た処理ガスを次の2段目の吸着塔に導くことにより排ガス中の塩素をほとんど無くさんとするものであり、さらに、脱着操作の前に製品塩素ガスを吸着塔に還流させて系内の滞留ガスをパージすることにより製品塩素ガスの純度を高めようとするものである。
【0011】
1段目の吸着塔と2段目の吸着塔を直列に結ぶ事により、1段目の吸着塔では吸着剤が破過するまで原料ガス(被処理ガス)を供給でき、また2段目の吸着塔では1段目の吸着塔で漏れた塩素ガスを完全に吸着することができる。
また脱着操作の前に製品塩素ガスを吸着塔に還流させることにより吸着塔中の純度の低い滞留原料ガスをパージすることができる。その結果、製品塩素ガスの純度は高められ、且つ排出処理廃ガス中の塩素をほとんど無くすことが出来る。
【0012】
また、塩素を含むガスより塩素を分離・濃縮する圧力スイング吸着法において、残ガス中の塩素濃度を実質上ゼロとする運転操作条件を自動的に設定できないかという点について鋭意検討し、吸着塔出口付近に塩素ガスの存在を感知するセンサーを設置し、吸着操作の終了を感知することにより自動制御が可能であることを見出し、本発明に至った。すなわち、本発明は吸着操作中の吸着塔の吸着剤充填層の吸着状態を、塩素ガスの存在を感知するセンサーによって検出し吸着操作の終了を感知することにより、該吸着塔への不純物を含む塩素ガスの供給を停止し、該吸着塔を吸着操作から脱着操作へ移行せしめることを特徴とする塩素ガスの濃縮精製法である。
【0013】
ここでセンサーとして温度計を使用する場合は、吸着塔内の処理廃ガス出口付近の吸着剤(充填層)の温度変化を連続的に測定し、その吸着剤温度の微分値が所定値となった時にその吸着塔への被処理ガスの導入を中止し、その吸着塔の再生操作を開始することになる。
【0014】
本発明の方法で使用する塩素を含有するガスには塩素以外のガスとしては酸素、窒素、二酸化炭素、一酸化炭素、アルゴン、メタンなどの存在が考えられるが、圧力スイング吸着法でこれらのガスより塩素を分離するには、これらのガスと吸着剤との吸着親和力に塩素の場合より充分な差があり、センサーとして温度計を使用する場合においては尚且つ、塩素の吸着熱が他のガスに比して充分に大きなものを選択する必要がある。そこで本発明に使用する塩素の吸着剤としては、ゼオライト、非ゼオライト系多孔質酸性酸化物、活性炭または分子ふるいカーボンを使用することができる。
【0015】
本発明の方法で使用する塩素を含有するガスの塩素濃度は特に制限はないが、通常5容量%〜98容量%である。以下、センサーとして温度計を使用した場合について説明する。
本発明の吸着剤の温度変化を測定するには、吸着操作中の処理廃ガス出口にある吸着剤の先端から、吸着剤の全充填高さの1/2以内の位置において温度を測定することが好ましい。
【0016】
一般に圧力スイング吸着法において、特定ガスの吸着分離を行う場合、吸着熱が発生し吸着剤の温度上昇が起こることが知られている。本発明者らが塩素を含むガスを、吸着剤として、ゼオライト、非ゼオライト系多孔質酸性酸化物、活性炭または分子ふるいカーボンを使用し、吸着剤の温度変化を測定した結果、塩素の吸着熱は他のガス成分の吸着熱に比して充分大きいことを確認した。また、吸着剤の急激な温度変化の起こっている吸着剤(充填層)の部位は大略塩素ガスの吸着の進行している部位であることも確認した。
【0017】
塩素を含有するガスの吸着熱による吸着剤の温度変化は、原料ガス(被処理ガス)中の塩素濃度に依存し、吸着に依る温度変化は塩素濃度が高いほど大きくなる。従って、原料ガス中の塩素濃度における吸着熱による吸着剤の温度変化の微分値と温度変化の検知部位を特定し、残ガス中への塩素漏出をなくすことが可能となった。
【0018】
図4には塩素濃度15容量%の原料ガスを用いた吸着熱の温度変化と残ガス中の塩素濃度の関係を示した。図4からも明らかなように塩素濃度15容量%の原料ガスを用い、温度変化を測定する部位を特定し、残ガス中への塩素の漏出を防ぐには、吸着熱による温度変化の微分値が1.5℃/分(所定値)となった時点でガス導入弁を切換える操作を行えば良い。
【0019】
これらのことより、吸着塔上部の吸着剤の温度変化を連続的に測定し、塩素の吸着熱を検知した瞬間に、即ち温度変化の微分値が所定値となった瞬間に、吸着操作から自動的に自動弁を切り換えることにより、残ガス中への塩素漏出を完全に無くすことが出来る。即ち、吸着塔上部の吸着剤中に設置した熱電対その他の手段で温度変化を測定すれば、容易に塩素の吸着を検知することができ、その検知方法は塩素ガスを含むガスの入口温度等に左右されないように温度の微分変化により検知し、その結果により適宜の変換手段によって吸着操作の終了を決定するとともにそれを電気出力に変換して、吸着塔の工程を切り換える自動弁の開閉を行うことを可能とする。
【0020】
即ち、本発明は安価な温度測定手段によって吸着塔上部の吸着剤の温度変化を連続的に測定し、その温度上昇の微分値が所定値になったときに、吸着操作を自動的に切り換えることにより、残ガス中の塩素濃度をゼロとすることを可能とし、残ガス中の塩素濃度が実質上ゼロとなるため除害の措置が簡略化でき、工業的に非常に有効である。
【0021】
さらに、本発明は上記の圧力スイング吸着法に依る塩素ガスの濃縮精製装置において、前記吸着塔の前に塩素ガスを含む混合ガス中の水分を除去するために脱水装置を具備するものでもある。
塩素ガスを含む混合ガス中の水分を除去するために脱水装置を備えることにより吸着剤の寿命を長くし、また装置の腐食を防止することができる。
【0022】
本発明の塩素ガス精製装置の一例を図1に示す。
管1は原料ガス導入管であり、塩素純度が比較的低いガスが導入され、圧縮機2により所定の圧力まで昇圧され、切替弁3aを経て4基の吸着塔4a,4b,4c,4dの内の第1塔4aに導入される。
【0023】
4基の吸着塔4a,4b,4c,4dには塩素を優先的に吸着する吸着剤、例えば、合成または天然ゼオライト、非ゼオライト系多孔質酸性酸化物や活性炭および分子ふるいカーボンが充填されており、加圧状態で導入された原料ガス中の塩素が優先的に吸着される。所定量原料ガスが導入された後、切替弁1a,1bの切替えにより圧縮機14で圧力を高められた製品塩素ガスが導入され吸着塔4a内の原料ガスがパージされる。
【0024】
吸着塔4aの出口を出た塩素濃度が低くなったガスは、切替弁5a,6bを経て第2塔4bに導入される。第2塔4bで残りの塩素を吸着された処理ガスは切替弁7bを経て排出される。この時、第3の吸着塔4cでは第2の塔4bから吐出したガスの一部が流量調節機構11、切替弁10cを経て導入され、この塔の圧力が高められる充圧工程が実施される。
【0025】
また第4の吸着塔4dでは、切替弁8dを経て常圧脱着、さらに切替弁9bを経て真空ポンプ12と塔内が接続され、濃縮された塩素ガスを回収するとともに塔内の吸着剤が再生される再生工程が実施されている。そして所定量の塩素を吸着し製品ガスでパージされた吸着塔4aは切替弁3aの切替えによりガスの導入が停止されるとともに、切替弁8aの切替えにより塔内が減圧され、さらに真空ポンプ12で排気されて減圧状態となり、吸着剤に吸着された塩素が脱着され吸着剤が再生される。この再生工程で純度の高い塩素ガスを製品としてバッファータンク13に貯められ圧縮機14で昇圧されて製品導出管15より得ることが出来る。
【0026】
この時、第2の吸着塔4bでは原料ガスが切替弁3bを経て導入され、原料ガス中の塩素が優先的に吸着される。吸着塔4bの出口から塩素濃度の低いガスが得られ、切替弁5b,6cを経て排出され第3の吸着塔4cに導入され、残りの塩素が吸着され切替弁7cを経て排出される。原料ガスの吸着が終わった後切替弁1a,1bの切替えにより圧縮機14で圧力を高められた製品塩素ガスが導入され吸着塔4b内の原料ガスがパージされる。パージされたガスは切替弁5b,6cを経て排出され第3の吸着塔4cに導入され、塩素が吸着され、切替弁7cを経て排出される。
また第4の吸着塔4dでは、第3の塔4cから吐出したガスの一部が流量調節機構11、切替弁10dを経て導入され、この塔の圧力が高められる充圧工程が実施される。
【0027】
その後、第3の吸着塔4cでは、原料ガスが切替弁3cを経て導入され、原料ガス中の塩素が優先的に吸着される。吸着塔4cの出口では塩素濃度の低いガスが得られ、切替弁5c,6dを経て第4の吸着塔4dに導入される。これと同時に第1の吸着塔4aでは、第4の塔4dから吐出したガスの一部が流量調節機構11、切替弁7aを経て導入され、この塔の圧力が高められる充圧工程が実施される。
【0028】
第2の吸着塔4bでは、切替弁3bの切替えにより原料ガスおよびパージガスの導入が停止されると共に、切替弁8bの切替えによって塔内が減圧され、さらに切替弁9bの切替え及び真空ポンプ12で排気されて減圧状態となり、吸着剤に吸着された塩素が脱着され吸着剤が再生される。
【0029】
以下同様に、この一連の操作を4基の吸着塔4a,4b,4c,4dについて交互に繰り返すことによって、不純物を含有する塩素ガスより高純度塩素を連続的に製造できる。
【0030】
本発明法を実施するための装置の一例を図2により説明すると、以下のようである。
図2に於いて、(1),(2)は内部に吸着剤を充填した吸着塔、(3)は塩素を含むガスの圧縮機、(4)は吸着圧力制御装置、(5)は脱着再生用真空ポンプ、(6)〜(11)は切換弁である。
【0031】
いま、吸着塔(1)に於いて吸着工程が行われ、吸着塔(2)では脱着再生工程が行われているとすると、切換弁(7),(8),(10)が開、同じく(6),(9),(11)が閉の状態にあり、塩素を含むガスの圧縮機(3)からの塩素を含むガスは切換弁(8)を通って吸着塔の下部より供給され、主に塩素を吸着されて残ガスとなり、塔上部から塔外へ排出され、切換弁(10)を通って系外へ排出される。
【0032】
一方、吸着塔(2)に於いては、主に塩素が吸着された吸着成分を真空ポンプを用いて、吸着剤より脱着させ、吸着塔下部より排気され切換弁(7)を通して真空ポンプ(5)により系外に排出される。この排出ガスは塩素が濃縮されたガスであり、他の工程等にて処理される。
【0033】
従来の装置では、切換弁は設計仕様に合わせてタイマー等で切換えられていたが、塩素を含むガスの塩素濃度,温度,圧力等の変化が生じた場合に、残ガス中の塩素濃度を長期間を通じて実質上ゼロとするような運転は困難であった。そこで本発明は、吸着塔内の吸着剤の温度を連続的に測定し、任意の温度の微分変化を検知し、それによって任意の吸着時間を選定できるようにし、脱着工程に切り換えるようにした。
【0034】
本発明を実施するのに、前記装置の吸着塔(1),(2)の上部に熱電対(12),(13)を設置し、吸着剤の温度変化を連続的に検知し、出力された電気信号は(14)の増幅器へ入力され、増幅された電気信号は(15)の計算制御器へ入力され、温度の微分変化を計算する。温度の微分変化が、(15)の計算機にあらかじめ設定された任意の温度の微分変化以上となった場合、その電気信号を(16)の出力部へ入力し、(16)の出力部は(17)の電磁弁の開閉を指令し、(6)〜(11)の切換弁切の開閉を行うようにするものである。
つまり、本発明の主要点は、塩素を含むガスの処理ガス条件(組成,流量,圧力,温度)等が変化しても、残ガス中の塩素濃度を常に実質上ゼロとすべく、圧力スイング吸着法における吸着工程の時間設定を監視させることにある。
【0035】
即ち、吸着塔を塩素を含むガスが通過して主に塩素が吸着剤に吸着されると吸着熱により吸着剤の温度上昇が見られ、塔内部では塩素の吸着帯の進行に対して略等しく昇温帯域が移動するから、この昇温帯域を塔の出口付近で連続的に検知すれば塩素の破過時間の正確な予測に使用できるため、これにより塔の切換え時間の設定を監視できる。しかし、ただ単に温度を検出するだけでは塩素を含むガスの入口温度との関係から不十分であるため、温度の微分変化を常にチェックすることにより吸着工程の時間設定の監視を行うことにより正確に判断できる。
【0036】
この発明は塩素ガスが吸着剤に吸着される場合の吸着熱が他のガス成分が吸着される場合の吸着熱よりもはるかに大きい場合に有効であり、その特徴を有する吸着剤はゼオライト、非ゼオライト系多孔質酸性酸化物、活性炭または分子ふるいカーボンが挙げられる。
【0037】
この発明によれば、残ガス中の塩素濃度を常に実質上ゼロとする運転が長期間に渡り実現され、常に残ガス中に塩素を漏出させないように監視できるため信頼性も高く、工業的に非常に有効な手段が提供されうる。
【0038】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
実施例1
実施例に使用した塩素を含むガスより塩素を分離・濃縮する圧力スイング吸着装置2塔式の吸着塔は、直径50mm,高さ2000mmの耐圧鋼管製で、吸着剤としてY型ゼオライト(Zecohem社製)を用い、その3kgを充填した。実施例で使用した塩素を含むガスは塩素15容量%,酸素50容量%,窒素15容量%,二酸化炭素20容量%からなり、図2に示す圧縮器(3)を用いて2Nm3/hの流量で供給し、吸着圧力は(4)に示す圧力制御装置により1〜7kg/cm2ゲージ圧力まで任意に設定可能である。脱着圧力は真空ポンプ(5)の最大能力である100torrの真空度に3分間で達するものを選定し使用した。
【0039】
上記の圧力スイング吸着装置を用い、運転に必要な基礎データを得る際に、塩素の吸着の際に得られる吸着剤の温度変化を測定した。図3に吸着操作中のガス出口にある吸着剤の先端から、吸着剤の全充填高さの1/10と1/3の距離における、吸着剤の温度変化の経時変化を示す。
【0040】
その結果、塩素の吸着が開始されると吸着剤の温度変化は2℃/分の昇温速度であり、他のガス成分の通過(吸着)の際の温度変化0.5℃/分と比較して明らかに昇温速度が充分大きいことを確認した。この結果をコンピュータに入力し、吸着剤の温度変化が1.5℃/分以上になった瞬間に吸着工程を打切り、吸着塔の切換えを行うようにプログラムした。
【0041】
表1に示す如く、運転条件にて2週間の連続運転を行ったが、残ガス中の塩素濃度は期間中不検出であった。濃縮ガスの塩素濃度は60容量%の一定であった。尚、濃縮ガス及び残ガス中の塩素濃度はガスクロマトグラフィーにより測定した。
【0042】
【表1】
【0043】
実施例2
実施例1と同じ条件で塩素を含むガスから塩素を分離・濃縮する圧力スイング吸着法を開始し、実験途中で処理ガスの吸着塔入口温度15℃から40℃へ変化させた。処理ガスの吸着塔入口温度を上昇させた場合、吸着時間は初期設定の5分間から4分50秒となったが、残ガス中の塩素濃度は不検出であり、濃縮ガスの塩素濃度は60容量%と一定であった。
【0044】
実施例3
実施例1と同じ条件で塩素を含むガスから塩素を分離・濃縮する圧力スイング吸着法を開始し、実験途中で吸着圧力を6.0kg/cm2Gから2.0kg/cm2Gへ低下させた場合、吸着時間は初期設定の5分間から4分20秒となったが、やはり残ガス中の塩素濃度は不検出であった。尚、この場合精製塩素ガスの濃度は60容量%であり、実施例1と大差なかった。
【0045】
実施例4
実施例1と同じ条件で塩素を含むガスから塩素を分離・濃縮する圧力スイング吸着法を開始し、実験途中で塩素を含むガスの流量を2Nm3/hから3Nm3/hに変更した場合、吸着時間は初期設定の5分間から4分00秒となった。この時、残ガス中の塩素濃度は数100ppmとなった。これは、処理ガスの線速度が増加したため、吸着剤の温度変化の微分値1.5℃/分を検出している間に吸着塔上部まで塩素ガスが進行した為と考えられた。そこで、温度測定箇所を吸着操作中のガス出口にある吸着剤の先端から、吸着剤の全充填高さの1/5の距離に変更し、同様の実験を行ったところ、吸着時間は初期設定の5分間から4分30秒となったが、残ガス中の塩素濃度は不検出であった。ただし、精製塩素ガスの濃度は55容量%となった。
【0046】
実施例5
以下、本発明の一実施例説明する。
図1に本発明の塩素ガス濃縮装置の一例を示す。
管0は、原料ガス導入管であり、塩素濃度が比較的低く水分を含有したガスが導入される。18は脱水塔であり、ポンプ19により濃硫酸が循環されている、管20は新しい濃硫酸の供給口であり、管21は比較的濃度が薄くなった濃硫酸の排出口である。
【0047】
水分を含有したガスは、18の脱水塔を通過して水分を除去されたのち、圧縮機2により所定の圧力まで昇圧され、切替弁3を経て、3基の吸着塔4a, 4b,4cの内の第1塔4aに導入される。3基の吸着塔4a,4b,4cには塩素を優先的に吸着するゼオライト、活性炭等の吸着剤が充填されており、加圧状態で導入された原料ガス中の塩素が優先的に吸着される。
【0048】
吸着塔4aの出口では、ほとんど塩素を含まないガスが得られ、切替弁7aを経て排出される。この時第2の吸着塔4bでは、第1の塔4aから吐出したガスの一部が圧力調節機構11、切替弁10bを経て導入され、この塔の圧力が高められる充圧工程が実施される。
また第3の吸着塔4cでは、切替弁8c,9bを経て真空ポンプ12と塔内が接続され、濃縮された塩素ガスを回収するとともに、塔内の吸着剤が再生される再生工程が実施されている。
【0049】
そして所定量の塩素を吸着した吸着塔4aは切替弁3aの切替えにより、原料ガスの導入が停止されるとともに、切替弁8aの切替えにより塔内が真空ポンプ12で排気されて減圧状態となり、吸着剤に吸着された塩素が脱着され吸着剤が再生される。この再生工程で、濃度の高い塩素ガスを製品として、真空ポンプ12の吐出口から得ることができる。
【0050】
この時第2の吸着塔4bでは、原料ガスが切替弁3bを経て導入され、原料ガス中の塩素が優先的に吸着される。吸着塔4bの出口では、ほとんど塩素を含まないガスが得られ、切替弁7bを経て排出される。
また第3の吸着塔4cでは、第2の塔4bから吐出したガスの一部が圧力調節機構11、切替弁10cを経て導入され、この塔の圧力が高められる充圧工程が実施される。
【0051】
その後第3の吸着塔4cでは、原料ガスが切替弁3cを経て導入され、原料ガス中の塩素が優先的に吸着される。吸着塔4cの出口では、ほとんど塩素を含まないガスが得られ、切替弁7cを経て排出される。これと同時に第1の吸着塔4aでは、第3の塔4cから吐出したガスの一部が圧力調節機構11、切替弁10aを経て導入され、この塔の圧力が高められる充圧工程が実施される。
【0052】
第2の吸着塔4bでは、切替弁3bの切替えにより原料ガスの導入が停止されると共に、切替弁8bの切替えによって、塔内が真空ポンプ12で排気されて減圧状態となり、吸着剤に吸着された塩素が脱着され、吸着剤が再生される。
【0053】
以下同様に、この一連の操作を3基の吸着塔4a,4b,4cについて交互に繰り返すことによって、塩素を含有する原料ガスより、塩素を連続的に分離濃縮できるシステムが構築されている。
この際、この装置を構成する機器の材質としては、高価な耐食材料を必要とせず比較的安価な材料でよい。
上記のように、本発明によれば圧力スイング吸着法により不純物を含有した塩素を排ガス中にほとんど漏らすことなく精製して高純度の製品を得ることができる。
【0054】
また本発明は、吸着塔内のガス出口付近の吸着剤の温度変化を連続的に測定し、その吸着剤温度の微分値が所定値となった時にその吸着剤へのガスの導入を中止し、その吸着塔の再生作業を開始することにより、処理ガス条件が変動しても常に残ガス中の塩素濃度を実質上ゼロとする操作を可能とするものであり、工業的に極めて有効な制御手段である。
さらに、本発明は塩素を含有し、かつ水分を含有したガスから塩素を分離し濃縮する装置を比較的安価に提供できる。
【0055】
【発明の効果】
本発明によれば、吸着塔を複数用いることにより排ガス中の塩素をほとんど無くすことができ、脱着操作の前に製品塩素ガスを吸着塔に還流させることにより、製品塩素ガスの純度を高めることができ、吸着塔にセンサーを設けることにより、自動制御が可能となり、さらに吸着塔の前に塩素ガスを含む混合ガス中の水分を除去する脱水装置を備えることにより吸着剤の寿命を長くし、装置の腐食を防止することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実施する圧力スイング吸着装置の一例の系統図である。
【図2】本発明方法を実施する圧力スイング吸着装置の一例の系統図である。
【図3】表1の条件下での吸着操作中のガス出口にある吸着剤の先端から、吸着剤の全充填高さの1/10と1/3の位置における、吸着剤の温度上昇の経時変化である。縦軸は温度(℃)であり、横軸は吸着時間を示す。
【図4】温度上昇と残ガス中の塩素濃度の関係図である。
【符号の説明】
0,1 原料ガス受入れ配管
2 原料ガス圧縮機
3a,3b,3c,3d 原料ガス受入れ切替弁
4a,4b,4c,4d 塩素ガス吸着塔
5a,5b,5c,5d 処理ガス排出切替弁
6a,6b,6c,6d 処理ガス受入切替弁
7a,7b,7c,7d 処理ガス排出切替弁
8a,8b,8c,8d 製品ガス排出切替弁
9a,9b 製品ガス排出切替弁
10a,10b,10c,10d 加圧ガス受入切替弁
11 圧力調整機構
12 真空ポンプ
13 製品タンク
14 製品ガス圧縮機
15 製品ガス排出配管
16 バッファータンク
17 処理ガス排出管
18 脱水塔
19 ポンプ
20 硫酸供給管
21 硫酸排出管
(1),(2) 吸着塔
(3) 塩素を含むガスの圧縮機
(4) 吸着圧力制御装置
(5) 真空ポンプ
(6),(7),(8),(9),(10),(11) 切換弁
(12),(13) 熱電対
(14) 増幅器
(15) 計算制御器
(16) 出力部
(17) 電磁弁
Claims (15)
- 塩素ガスを吸着する吸着剤が充填された複数の吸着塔に、不純物を含む塩素ガスを供給し塩素ガスを優先的に吸着させ、その後、ガスの供給を停止し、ガス供給時よりも低い圧力下で脱着を行い、供給ガスの塩素濃度よりも高い塩素濃度のガスを得る操作を交互に繰返すことによって、吸着塔に供給される不純物を含む塩素ガスを高純度に濃縮精製する圧力スイング吸着式塩素ガス濃縮精製法において、吸着操作中の吸着塔から排出される処理廃ガスを、次に吸着操作を行う吸着塔に導入することにより吸着操作を二段以上に行うことを特徴とする塩素ガスの濃縮精製法。
- 吸着操作を二段以上に行い、更に脱着操作の開始前に、濃縮済みの高純度塩素ガスを、吸着操作の終了した吸着塔に還流させて、系内の該不純物を含む塩素ガスを置換することを特徴とする請求項1記載の塩素ガスの濃縮精製法。
- 塩素ガス中に含まれる不純物が酸素ガスであることを特徴とする請求項1記載の塩素ガスの濃縮精製法。
- 吸着操作中の吸着塔の吸着剤充填層の吸着状態を、塩素ガスの存在を感知するセンサーによって検出し、吸着熱による温度上昇の所定値が一分間に1.5℃になった時、該吸着塔への不純物を含む塩素ガスの供給を停止し、該吸着塔を吸着操作から脱着操作へ移行せしめることを特徴とする請求項1記載の塩素ガスの濃縮精製法。
- 塩素ガスの存在を感知するセンサーが、温度計であることを特徴とする請求項4記載の塩素ガスの濃縮精製法。
- 吸着操作中の吸着塔の温度上昇の検出を、吸着剤充填層の処理廃ガス排出口から、全充填高さの1/2以内の位置において行うことを特徴とする請求項5記載の塩素ガスの濃縮精製法。
- 塩素ガスを吸着する吸着剤がゼオライト、非ゼオライト系多孔質酸性酸化物、活性炭または分子ふるいカーボンの何れかであることを特徴とする請求項1記載の塩素ガスの濃縮精製法。
- 塩素ガスを吸着する吸着剤がY型ゼオライトであることを特徴とする請求項7記載の塩素ガスの濃縮精製法。
- 下記の(a)〜(f)の各要素、
(a)被処理ガス導入口および処理廃ガス排出口を具備し、且つ塩素ガスを吸着する吸着剤が充填された複数の吸着塔、
(b)各吸着塔の被処理ガス導入口を連結する管路、各吸着塔の処理廃ガス排出口を連結する管路、各吸着塔から濃縮塩素ガスを脱着させて取り出すために配設された各吸着塔の被処理ガス導入口を連結する管路、一の吸着塔の処理廃ガス排出口と他の吸着塔の被処理ガス導入口を連絡する管路、濃縮塩素ガスを吸着塔へ還流するために配設された各吸着塔の被処理ガス導入口と製品ガスタンク又は濃縮精製塩素ガス圧縮機の排気口を連結する管路、
(c)上記各管路のうち特定の管路を、随時特定のガスが流通できるよう流路設定するための切替弁、
(d)塩素ガス脱着吸着のため、系内を減圧するための真空ポンプ、
(e)濃縮精製塩素ガスの圧力を均一化するための製品タンクおよび
(f)濃縮精製塩素ガスを昇圧するための圧縮機
を具備することを特徴とする塩素ガスの濃縮精製装置。 - 吸着塔に充填された吸着剤の充填層の上部に、塩素ガスの存在を感知するセンサーを配設し、吸着操作中の該充填層の吸着操作の終了を検出し、該吸着塔への不純物を含む塩素ガスの導入を停止して、該吸着塔を吸着操作から脱着操作へ移行せしめるよう作動する機構を具備することを特徴とする請求項9記載の塩素ガスの濃縮精製装置。
- 塩素ガスの存在を感知するセンサーが、温度計である請求項10記載の塩素ガスの濃縮精製装置。
- 下記の(a)〜(f)の各要素、
(a)被処理ガス導入口および処理廃ガス排出口を具備し、且つ塩素ガスを吸着する吸着剤が充填された充填層の上部に温度計が配設された複数の吸着塔、
(b)各吸着塔の被処理ガス導入口を連結する管路、各吸着塔の処理廃ガス排出口を連結する管路、各吸着塔から濃縮塩素ガスを脱着させて取り出すために配設された各吸着塔の被処理ガス導入口を連結する管路、一の吸着塔の処理廃ガス排出口と他の吸着塔の被処理ガス導入口を連結する管路、濃縮塩素ガスを吸着塔へ還流するために配設された各吸着塔の被処理ガス導入口と製品ガスタンク又は濃縮精製塩素ガス圧縮機の排気口を連結する管路、
(c)上記各管路の内の特定の管路を、随時特定のガスが流通できるよう流路設定するための切替弁、
(d)塩素ガス脱着吸着のため、系内を減圧にするための真空ポンプ、
(e)吸着操作中の吸着塔の吸着剤充填層の温度上昇を検出する計測装置および
(f)上記温度上昇が所定値の範囲を超えると被処理ガスの導入を停止するように仕切弁を作動させる調節機構
を具備することを特徴とする請求項11記載の塩素ガスの濃縮精製装置。 - 吸着操作中の吸着塔の温度上昇を検出する温度検出端の配設位置が吸着剤充填層の処理廃ガス排出口から全充填高さの1/2以内の位置であることを特徴とする請求項12記載の塩素ガスの濃縮精製装置。
- 不純物を含む塩素ガス中の水分を除去するため、吸着塔の前に脱水装置を具備することを特徴とする請求項9記載の塩素ガスの濃縮精製装置。
- 脱水装置が濃硫酸を循環し被処理ガスと接触させて水分を吸収させる脱水塔であることを特徴とする請求項14記載の塩素ガスの濃縮精製装置。
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