JP3569778B2 - 多項目尿試験紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、尿の検査・分析に用いられる多項目尿試験紙に関する。特にその検査結果を人間が目視等で読み取る尿試験紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
臨床検査における、尿検査に代表される各種液体試料の初期診断情報としてのスクリーニング検査や集団検診等の現場では、分析対象に対応した各種の試薬を含み分析対象物との反応により呈色反応といった応答を示す試薬パッドを、支持体に1つ又は2つ以上設置した構造の尿試験紙が用いられる。
【0003】
これら尿試験紙は、検査を簡便に行うために所謂ディップ・アンド・リード方式が主流である。ディップ・アンド・リード方式とは、被検査尿に尿試験紙を浸した後に引き上げて、試験紙上の試薬パッドの呈色応答を目視で読み取り、予め別に用意された標準色調表(色見本)とを目で見て対比することにより測定結果を判定するという方式である。
【0004】
この種の目視検査は、古くから実用化され普及している。それゆえ測定項目の数も日々増加しており、PH,グルコース,蛋白,ビリルビン,ケトン体,潜血,ウロビリノーゲン等の従来からの項目に加えて、亜硝酸塩,白血球,比重,アスコルビン酸等の測定項目が次々と実用化されている。よって、今では1つの尿試験紙で10項目以上の検査ができる多項目尿試験紙も実用化されている。
【0005】
同時に使用される標準色調表には、測定項目名と数段階の標準色と、それに対応する濃度が記されている。試験紙上の試薬パッドの順序と標準色調表の項目の順序は読みやすいように一致させるのが普通で、試験紙の先端を標準色調表に合わせると、各々の項目における試薬パッドと色見本が隣接するようになっているものが多い。
【0006】
ディップ・アンド・リード方式において多項目尿試験紙を用いる場合、判定時間(尿へ浸漬して引き上げてから、反応終了するまでの時間)も各試薬パッド毎に異なるものが多い。そのため一本の多項目尿試験紙上に各々判定時間の異なる試薬パッドが並ぶことになり、測定者は各々の時間が経過すれば該当する試薬パッドの呈色を観察する。
【0007】
一般に、尿試験紙で使用される試薬の呈色は、ある一定時間後で呈色が終了するのではなく、終了しているように思えても(つまり色がそれ以上変化しないように思えても)実はゆっくりと反応を続けている場合が多い。その中で最も呈色が見やすい時間を「判定時間」と規定している。また、本当に反応が終了して色が変化せずとも、判定時間を過ぎると尿中の他の物質による作用のためにせっかくの呈色が減退することもある。
【0008】
従って、多項目尿試験紙の試薬パッドをあらかじめ規定された判定時間に則って観察することは非常に大切で、必ず行わなければならない。しかし、先述のように一本の多項目尿試験紙上の項目数が多くなってくると、ある時間に観察しなければならない試薬パッドが複数個になる可能性が生じてくる。例えば、同じ30秒後に「グルコース」と「ビリルビン」と「比重」を同時に観察しなければならない事態が生じる。
つまり、一番目に「グルコース」を観察している間に数秒が経過してしまい、次の「ビリルビン」と「比重」は最適のタイミングを逃し、正しい色調で観察できない危険性がある。
【0009】
この問題を回避するために、試薬パッド中の経時的試薬反応を遅らせる処理を施すことにより、『30秒から60秒の間に観察すればよい』という多項目尿試験紙が考案されている。しかしこの様な処理は、最適な判定時間に観察すれば必要のないことであり、しかも経時的試薬反応を遅らせる処理の一つとしてしばしば使用される「試薬の量を減らす」手段は、検出感度を鈍らせる要因となる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、複数の項目を有する多項目尿試験紙において、各項目の試薬パッドの呈色を最適の判定時間で観察できるようにすることである。
【0011】
【課題を解決する手段】
上記目的は、各試薬パッドの表面を各試薬パッド毎に厚さの異なる水溶性ポリマー層で被覆することにより各試薬パッドにおける判定時間を調節し、各試薬パッドに対応する判定時間が全ての試薬パッドで異なっていることを特徴とする多項目尿試験紙で解決できる。本発明によれば、ある試薬パッドを観察する間は、次に観察するべき試薬パッドの判定時間に未だ到達していないために、各々の各項目の試薬パッドの呈色を最適の判定時間で観察できる。本発明にかかわる多項目尿試験紙の正面概略図を図1に示す。
【0012】
【発明の実施の形態】
測定者の視線は、標準色調表の表示時間を見てから尿試験紙に移り、尿試験紙上の該当する項目の試薬パッドを探し、その試薬パッドの色を覚えてから標準色調表の色見本に移り、一致する色調を判断して観察を終える。これだけの作業をこなすためには最低5秒は必要で、つぎの項目を探したり、結果を記帳している時間を含めると、少なくとも5秒ごとに判定時間が異なるように試薬パッドが配置されていることが望ましい。
すでに公知の多項目尿試験紙における判定時間でも、知られている比較的短い判定時間は0秒(すなわち引き上げて直ちに観察するもの)を除いては5秒後、長い判定時間では120秒後なので、10項目を有する尿試験紙ですら5秒〜15秒ごとに判定時間が異なるように試薬パッドを配置することができ、本発明は作動する。項目数が少ないと30秒以上の間隔でも可能である。
【0013】
また、図2のように判定時間の長さの順序に従って試薬パッドが配置されていると、次に観察するべき項目を目で追うことができるので、さらに観察しやすくなる。
【0014】
公知公用の試薬を使うと、どうしても判定時間が同時になってしまう項目が生じてしまう。試薬の量を加減して判定時間を変えるのが一つの解決策だが、これは検出感度を低下させるために好ましくない。そこで本発明では、各試薬パッドの表面に厚さの異なる水溶性ポリマー層を有することで、多項目尿試験紙の試薬パッドにおいて判定時間を調節した。これは、特開平6−222057号に記載されているものと同じような水溶性の層を設けて試薬パッドを保護することにより、尿と試薬パッドとの接触を遅らせるものである。一方の試薬パッドには水溶性ポリマー層を設けず他方にのみ設けてもよいし、両方とも水溶性層を設けて、層の厚みを変えることで判定時間を調節してもよい。(図4参照)
【0015】
【実施例】
以下、添付図面に示す実施例に基づいて本発明の多項目尿試験紙を詳細に説明する。図1は本発明に係わる多項目尿試験紙(6項目のもの)の正面図であり、図2はさらに好ましい態様の正面図である。図3は従来の一般的な多項目尿試験紙の正面図である。図4は、水溶性ポリマー層で尿と試薬パッドとの接触を遅らせた状態を示した長方向の断面図である。
【0016】
図1と図2に示すように、本発明の多項目尿試験紙1は支持体2と試薬パッド3〜8とから構成される。
尿試験紙1は支持体2の先端から一列に、例えば四角形の試薬パッド3〜8が設置された構成となっている。支持体2はその一端が手で持ち易いように長くなっており、把持部を形成している。図1と図2とも、試薬パッド3〜8は、尿試験紙の把持部でない方の先端から把持部へ一列に設置されている。
ただし図2での試薬パッド3〜8は、尿試験紙の把持部でない方の先端から把持部へ、各試薬パッドの判定時間の短い方から長い方へという順序で設置されている。
【0017】
試薬パッド3〜8は、検査目的に応じた所要量の試薬を紙類,布類,またはその他の繊維等よりなるマトリックス媒体に担持せしめた試験紙として構成される。多項目尿試験紙の場合、前記試薬の種類はその検査項目によって異なる。例えば、尿中ブドウ糖検査であれば、グルコースオキシダーゼ,ペルオキシダーゼといった酵素と色源体の他に、必要であれば呈色安定剤としてアニオン性界面活性剤が用いられ、また尿中蛋白質検査であれば、緩衝剤とPH指示薬(例えばテトラブロモフェノールブルー等)が用いられる。
【0018】
試薬パッド3〜8の支持体2への設置方法は、尿試験紙1を尿へ浸してから標準色調表等の見本と対比するまでの間、試薬パッド3〜8を支持体2に固定し続けられる方法ならば何でも良く、例えば両面粘着テープにより粘着させても良い。尚、試薬パッド3〜8の支持体2への設置方法は、上記粘着テープによる粘着に限らず、例えば支持体2の一部分に試薬を含有した液体を塗布,乾燥する事によって直接設けても良いし、また、他の方法によることも可能である。
【0019】
支持体2は、例えばポリスチレン,ポリエステル,ポリ塩化ビニル,ポリカーボネイト等のプラスチック材料、紙等の材料または、これらにアルミ等の金属薄層を蒸着したもので構成されるが、液体に浸されるという使用条件から考えて耐水性を有するもので構成されるのが望ましい。形状は短冊状が多用される。
【0020】
図3に示した多項目尿試験紙は従来の一般的なものである。この尿試験紙も図2と同様に判定時間の長さの順序に従って試薬パッドが配置されているが、同時に観察する項目がある(項目▲1▼〜▲3▼)。これでは項目▲1▼を観察している間に数秒が経過してしまい、項目▲2▼と項目▲3▼は最適のタイミングを逃し、正しい色調で観察できない危険性がある。
【0021】
図4は、図2に示した多項目尿試験紙の試薬パッドのうち隣接する任意の二つを断面的に見た概略図である。判りやすくするために、各層の厚さは適当にしてある。両方の試薬パッドは水溶性ポリマー層を持たない状態では同時に判定するが、一方の試薬パッドは薄めの水溶性ポリマー層で覆われ、隣の試薬パッドは一方よりも厚めの水溶性ポリマー層で覆われている。よって薄めの水溶性ポリマー層で覆われている方が、隣の厚めの試薬パッドよりも早く判定時間が到達する。もちろん、どの程度の厚さが何秒で溶けるか等の条件設定は、あらかじめ行っておくことは言うまでもない。
【0022】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明を用いると、複数の項目を有する多項目尿試験紙において、各項目の試薬パッドの呈色をあらかじめ規定された最適の判定時間で観察できる。つまり、多項目尿試験紙の試薬パッドを最適のタイミングで判定できるので、正しい色調で観察できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】と
【図2】は、本発明に関わる多項目尿試験紙の正面図である。
【図3】は、従来の多項目尿試験紙の正面図である。
【図4】は、本発明における多項目尿試験紙の断面図の一例である。
Claims (3)
- 尿中の複数の分析対象物を測定するために1個の支持体上に複数の試薬パッドを有して該複数の試薬パッドは支持体上に一列に配置されている多項目尿試験紙において、各試薬パッドの表面を各試薬パッド毎に厚さの異なる水溶性ポリマー層で被覆することにより各試薬パッドにおける判定時間を調節し、各試薬パッドに対応する判定時間が全ての試薬パッドで異なることを特徴とする多項目尿試験紙。
- 少なくとも5秒ごとに判定時間が異なるように試薬パッドが配置されていることを特徴とする請求項1に記載の多項目尿試験紙。
- 判定時間の長さの順序に従って試薬パッドが配置されていることを特徴とする請求項2に記載の多項目尿試験紙。
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