JP3569566B2 - 画像処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は画像処理装置に関し、詳しくは、医療用放射線画像において、経時変化部分の診断に適した画像情報を与え得る画像処理技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線画像のような放射線画像は、病気診断用などに多く用いられており、このX線画像を得るために、被写体を透過したX線を蛍光体層(蛍光スクリーン)に照射し、これにより可視光を生じさせてこの可視光を通常の写真と同様に銀塩を使用したフィルムに照射して現像した、所謂、放射線写真が従来から多く利用されている。
【0003】
そして、前記放射線写真の観察に基づく診断においては、例えば同一被検者について異なる時期に撮影された複数のフィルムを、シャウカステン(フィルム観察器)等の観察装置上に並べ、医師がそれらの画像(時系列画像)を相互に見比べて、自己の経験知識に基づいて経時変化部分を認識することにより診断に利用する場合があった。
【0004】
上記のように、時系列的な画像を互いに比較参照する手法は、新たに発生した病変を発見したり、既に知られている病変の進行又は改善の様子を知る上で重要である。
一方、エネルギー差分処理によって被写体の特定部分を抽出した画像を得ることで、病変陰影を発見しやすくすることが従来から行われている。
【0005】
前記エネルギー差分処理とは、被写体の特定部分が互いに異なるエネルギーを有する放射線に対して異なる放射線吸収率を有することを利用して、同一の被写体に対して互いに異なるエネルギーを有する各放射線による複数の放射線画像を得、これらの複数の放射線画像を適当に重み付けしてその差を演算することによって、放射線画像から骨部或いは軟部を除去して、軟部組織を主体として表す軟部画像と、前記被写体中の骨部を主体として表す骨部画像との2種類の画像を生成し得るものである(特開昭58−163338号公報等参照)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前述のように時系列的なフィルム画像の比較読影をシャウカステン等の観察装置を用いて行っても、新たに発生した病変陰影などの経時変化部分は、人体の複雑な正常構造と重なりあって現れることが多いので、前記経時変化部分の認識が難しく、見落としが生じる場合があった。
【0007】
また、上記のようなフィルム画像の比較読影では、経時変化部分が検出された場合でも、その正確な位置や範囲又は変化の程度を認識するには、複数のフィルムの互いに対応する領域を観察と知識とに基づいて選択し、それらの領域をかわるがわる見比べて判断しなければならないので、診断効率が悪いという問題があった。
【0008】
更に、フィルム画像の比較読影では、目的のフィルムをフィルム保管庫等から選び出して読影室に運びシャウカステンに掛ける作業がその都度必要で、作業効率が悪いという問題もあった。
一方、エネルギー差分処理を行った場合でも、病変陰影と正常構造とを完全に分離することはできないため、やはり病変陰影を見落とす可能性があった。例えば肋骨と重なった腫瘍は、骨部を除去して軟部を主として表す軟部画像で見つけやすくなるが、軟部画像であっても血管や気管支の陰影と腫瘍との区別は難しいため、病変陰影を見落とす可能性があった。
【0009】
また、エネルギー差分処理画像には、病変陰影の経時変化に関する情報がないため、たとえ病変陰影が認識できたとしても、それが新しく発生した陰影なのか、慢性病変なのかを判別できず、また、病変の進行の速さを判断することもできないという問題があった。
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、新たに発生した病変陰影などの経時変化部分を効果的に強調した処理画像を生成できる画像処理装置を提供することにより、診断精度及び診断効率を向上させることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
そのため請求項1の発明にかかる画像処理装置は、同一被写体を透過しかつ相互に異なるエネルギー分布をもつ少なくとも2種類の放射線により形成された複数のオリジナル放射線画像間での差分処理によって生成された複数のエネルギー差分処理画像間で画像間演算処理を行って処理画像を生成する画像処理装置であって、
前記複数のエネルギー差分処理画像間で共通の被写体部分の位置合わせ処理を行い、該位置合わせ処理が行われた複数のエネルギー差分処理画像間で画像間演算処理を行う画像処理装置において、
前記被写体が軟部組織及び骨部を含み、前記エネルギー差分処理画像として、前記被写体の軟部組織を主体として表す軟部画像と、前記被写体中の骨部を主体として表す骨部画像との2種類の画像が生成され、
前記位置合わせ処理において、前記骨部画像を用いて大まかな位置合わせ処理を行った後、前記軟部画像を用いて細かな位置合わせを行い、前記画像間演算処理を行うエネルギー差分処理画像として、前記位置合わせ処理が行われた軟部画像を用いる構成とした。
【0011】
請求項2の発明にかかる画像処理装置では、前記骨部画像から解剖学的構造を抽出し、該抽出した解剖学的構造の位置を対比して大まかな位置合わせを行う構成とした。
請求項3の発明にかかる画像処理装置では、前記被写体が人体の胸部であり、前記解剖学的構造として脊椎線又は胸郭を抽出する構成とした。
【0015】
請求項の発明にかかる画像処理装置では、前記画像間演算処理手段において生成された処理画像を少なくとも表示する画像表示手段を有する構成とした。
請求項の発明にかかる画像処理装置では、前記画像表示手段が、前記画像間演算処理手段において生成された処理画像と、前記オリジナル画像とエネルギー差分処理画像との少なくとも一方とを同時又は切り換えて表示する構成とした。
【0016】
【作用】
請求項1〜3の発明にかかる画像処理装置によると、病変陰影の発見に障害となる人体の正常構造の一部を、エネルギー差分処理によって除去した上で、更に、画像間演算処理によってエネルギー差分処理画像間での変化部分を選択的に強調することが可能となる。
【0017】
具体的には、例えば、エネルギー差分処理によって骨陰影を低減する一方、血管陰影をエネルギー差分処理画像間での演算処理で低減することが可能であるので、骨と血管との位置関係が、撮影時の放射線の入射方向の差異等によって異なっている場合であっても、骨陰影及び血管陰影をそれぞれ高精度に打ち消すことができ、以て、偽画像の発生なく変化部分を選択的に強調できるので、骨や血管に影響されることなく、腫瘍などの病変陰影で変化のあった部分を容易に読影できる。
【0018】
また、軟部画像を用いて画像間演算処理を行うので、腫瘍陰影などの臨床的重要度の高い異常陰影の変化を効果的に強調でき、更に、位置合わせ処理において、複雑な軟部組織が消去され然も輪郭が明確な骨部画像を用いて大まかな位置合わせを行ってから、軟部画像で細かな位置合わせを行うので、比較的大きな位置ずれがあっても位置合わせが可能で、かつ、軟部画像を用いた位置合わせ処理を簡便かつ高精度に行わせることができる。
【0021】
請求項の発明にかかる画像処理装置によると、エネルギー差分処理画像間における画像間演算によって変化部分が選択的に強調された処理画像を表示させることができ、画面上で変化部分を観察できる。
請求項の発明にかかる画像処理装置によると、変化部分が選択的に強調された処理画像と、オリジナル画像とエネルギー差分処理画像との少なくとも一方とを同時又は切換えて表示させることで、処理画像上で観察された変化部分の位置や詳細をオリジナル画像又はエネルギー差分処理画像上で容易に確認できる。
【0022】
【実施例】
以下に本発明の実施例を説明する。
本発明にかかる画像処理装置の一実施例のシステム構成を示す図1において、画像記憶部1(記憶手段)は、医療診断用として撮影された人体の放射線画像のデータを複数格納するものであり、光磁気ディスク等から構成される。
【0023】
前記放射線画像データは、放射線画像を記録した銀塩フィルムに、レーザ・蛍光灯などの光源からの光を照射して、銀塩フィルムの透過光を得て、かかる透過光を光電変換して得たもの、或いは、被写体を透過した放射線を蛍光体を有する平板状検出器(イメージングプレート)に吸収せしめ、その後、この蛍光体を例えば光又は熱エネルギーで励起することにより、蛍光体が上記吸収により蓄積している放射線エネルギーを蛍光として放射せしめ、この蛍光を光電変換して得たものであっても良い。或いは、放射線量子計数型検出器を用いて、放射線エネルギーを直接電気信号に変換して得たものであっても良いし、蛍光体などにより放射線を可視光に変換した後に、該可視光をCCD等の光電変換素子に導くことにより得たものであっても良い。
【0024】
ここで、それぞれの放射線画像データに対応させて、例えば撮影日時,撮影部位,撮影条件,画像処理条件,被検者等についての情報、更に、同じ被検者の同じ部位を撮影した画像間における位置合わせ処理の情報や異常陰影の検出結果などの各種情報を記憶させるようにすると良い。
尚、前記画像記憶部1に記憶される放射線画像データとしては、放射線撮影装置2での撮影で得られたオリジナル画像データの他、後述する画像処理部5で各種演算処理が施された画像データが含まれる。
【0025】
前記画像記憶部1の記憶データは、操作卓4によって被検者や撮影日時などの検索情報を入力することで任意に選択され、画像管理部3によって随時読み出されるようになっており、読み出された画像データは、必要に応じて画像処理部5における画像処理を経た後、放射線画像の読影を行わせるべく、CRTからなる画像表示部6に表示される。
【0026】
従って、放射線フィルムをシャウカステンを用いて読影を行う場合に行われるような、目的フィルムを探し出し、これをシャウカステンに掛けるといった作業が必要でなく、作業効率の良い読影作業が可能である。
本実施例のシステムでは、それぞれに画像表示部6を有する2つの画像表示ユニットA,B(画像表示手段)が設けられており、各画像表示ユニットA,Bには、それぞれ画像表示部6の他に、画像メモリ7,表示制御部8が設けられている。
【0027】
前記画像記憶部1から読み出された画像データは、一旦画像表示ユニットAの画像メモリ7aに記憶され、画像表示ユニットBをも用いて画像を表示させる場合には、転送制御部9によって制御されて前記画像メモリ7aから画像メモリ7bに画像データが転送される構成としてある。即ち、2つの表示ユニットA,Bを備える構成としたことで、少なくとも異なる2画像を同時に表示することを可能としており、表示ユニットを3つ以上備える構成であっても良い。
【0028】
転送制御部9は、操作卓4を介して行われる表示フォーマットの指示に従って画像データの転送を行うが、前記表示フォーマットの指示は、画像表示ユニットAの表示制御部8aにも送られた後、前記転送制御部9によって制御されて他方の表示制御部8bにも指示されるようになっている。そして、表示制御部8では、指定された表示フォーマットに従って画像を表示すべく、画像表示部6に出力する画像データの加工を行う。
【0029】
前記画像データの加工には、画像を指定された表示サイズに適合させるための拡大,縮小処理や、画像の階調を表示装置の輝度特性に適合させるためのウィンドウ処理などの階調変換も含まれる。尚、前記拡大縮小処理や階調変換等は、画像が画像メモリに転送される以前に画像処理部5において施されるような構成としても良い。
【0030】
ところで、本実施例の前記放射線撮影装置2では、エネルギー差分処理を実現する撮影が行えるようになっている。
前記エネルギー差分処理(エネルギーサブトラクション処理)とは、同一被写体でX線エネルギーの分布が異なる2種類の画像を用いて、骨を消去した軟部画像や、逆に、軟部組織を消去した骨部画像を得るなど、放射線吸収係数の異なる物質をそれぞれ別々に画像化する手法である(放射線医療技術学叢書(6)「CRの実用画像処理」1993年3月31日 社団法人 日本放射線技術学会 発行 等参照)。かかるエネルギー差分処理により、例えば胸部画像上で肋骨に重なって発見しにくい結節影が、肋骨を除去することにより発見しやすくなる。
【0031】
異なるエネルギー分布を持つX線による2種類の画像を得るための撮影法には、1ショット法又は2ショット法がある。
前記2ショット法は、X線管電圧を切換えて2回曝射することで行う。具体的には、例えば、初めに60kVで低エネルギー像を撮影して、次にイメージングプレートを入れ換えると共に、管電圧を120kV に切換えて高エネルギー像を撮影するものである。
【0032】
一方、前記1ショット法は、2枚のイメージングプレートの間にフィルター(例えば銅板)を挟んで重ね、例えば100kV 程度の管電圧で曝射し、2枚のイメージングプレートをそれぞれ別に読み取って画像化するものである。
前記1ショット法又は2ショット法による撮影で得られた高エネルギー,低エネルギー画像に対して、特開昭58−163338号公報に開示されるような加重減算処理を行うことにより、軟部画像(骨部消去画像)と骨部画像(軟部消去画像)とを生成することができる。しかし、単純な加重減算処理に基づく処理画像には診断上有用な情報以外のノイズ成分が多量に含まれているので、より診断しやすいエネルギー差分処理画像を生成するためには、図2に示す原理図で表されるようなノイズ除去機能を有する画像間演算処理を適用することが好ましい。
【0033】
まず、高エネルギー画像Hr,低エネルギー画像Lから単純な加重減算で軟部(骨部消去)画像B0を生成する。
次に、骨部画像B0に対して、数画素のマスクの平均をとる平滑化フィルタFb1をかける。
ここで、前記平滑化処理された軟部画像Fb1(B0)をオリジナル画像から減算すれば、骨部画像S1が得られるが、ノイズをできるだけ減らす観点から、オリジナル画像として高エネルギー,低エネルギー画像のいずれか一方を使うよりも、2つのオリジナル画像を加算平均した画像Aを使う方が有利である。
【0034】
一方、軟部画像B1は、前記加算平均画像Aから、前記骨部画像S1を平滑化フィルタFs1で平滑化した画像Fs1(S1)を減算することで生成される。尚、前記平滑化フィルタFs1では、エッジを劣化させることなく中高周波成分をカットするようなエッジ保存平滑化フィルタを用いると良い。
また、前記平滑化フィルタがノイズのみでなく信号まで劣化させると、軟部画像には骨信号の一部が偽画像として重畳し、骨部画像には軟部信号の一部が偽画像として重畳してしまうので、マスクのサイズ等を変えながら、軟部画像と骨部画像とを交互に求める処理を数回繰り返し、充分ノイズを除去した後に、軟部画像と骨部画像とを出力する構成としても良い(特開平3−285475号公報等参照)。
【0035】
ところで、高エネルギー,低エネルギー画像を得る撮影においては、高エネルギー画像Hと低エネルギー画像Lとの間で被写体像に幾何学的なずれが生じることがある。前記ずれの発生原因は、1ショット法と2ショット法に共通なものとして、撮影時における2枚のイメージングプレートの位置ずれがあり、また、1ショット法に特有なものとしては、上側のイメージングプレートと下側のイメージングプレートとの距離によって生じる2枚の画像の拡大率の差がある。かかるずれをそのまま残して加重減算を行うと、例えば骨のエッジが偽画像として減算結果の軟部画像に残ることになる。
【0036】
そこで、図3のフローチャートに示すように、高エネルギー,低エネルギー画像(オリジナル画像)の重み付き差分処理(加重減算)を行う前に、高エネルギー,低エネルギー画像間で被写体の相対的な位置ずれを合わせる位置合わせ処理を行うようにすると良い。
前記位置合わせ処理としては、例えばリング状の金属マーカーを用いる方法がある(特開昭58−163338号公報等参照)。この方法は、各イメージングプレート上のマーカーの位置を検出して、該検出結果を比較することで、2枚のイメージングプレート間のずれ量を算出し、前記算出されたずれ量に基づき、オリジナル画像の少なくとも一方について回転,平行移動,拡大縮小処理(座標変換処理)を施し、その後に減算処理を行うものである。
【0037】
また、前記マーカーを用いずに位置合わせ処理を行う方法として、低エネルギー画像,高エネルギー画像においてそれぞれ被写体上の相互に対応する部分(輪郭やエッジ点など)を検出し、該検出結果を比較することでずれ量を算出する方法がある(特開平6−215108号公報等参照)。
具体的には、例えば、オリジナル画像それぞれについてフィルタリング処理をしてエッジ点(例えば鎖骨と肋骨が交差する点)を求め、低エネルギー画像から各エッジ点を中心とする所定領域を取り出す。次いで、該領域を高エネルギー画像上でずらしながら、2つの画像間の相関値が最大になる点を見つけ、このときのずれ量をそのエッジ点における2画像間におけるずれ量とするものである。そして、各エッジ点毎に求められたずれ量から画像全体の回転,平行,拡大量を算出する。
【0038】
尚、高エネルギー,低エネルギー画像間の位置合わせ処理における座標変換は、前記回転,平行,拡大の組み合わせからなる線型変換を用いる構成とする方が、計算量が少なく処理速度が速いので好ましい。
上記のエネルギー差分処理画像によれば、例えば、骨部を消去した軟部画像に基づいて肋骨と重なった腫瘍を見つけやすくなる。しかしながら、軟部画像であっても血管陰影と腫瘍との区別は難しいため、病変陰影を見落とす可能性があり、また、病変陰影の経時変化に関する情報がないため、たとえ病変陰影が認識できたとしても、それが新しく発生した陰影なのか、慢性病変なのかを判別できず、病変の進行の速さを判断することもできない。
【0039】
そこで、本実施例では、オリジナル放射線画像を得る撮影を異なる時期(例えば異なる年度)に複数回行った結果として、各撮影時期に対応して生成される同一被写体に関わるエネルギー差分処理画像間において、画像間演算処理(例えば差分処理)を行うことで(画像間演算処理手段)、同一被写体における経時変化部分を選択的に強調した画像を得るようにしてある。以下、異なる撮影時期に対応して生成される同一被写体に関わるエネルギー差分処理画像間における画像間演算処理を、時系列処理と言う。
【0040】
例えば、軟部画像どうしでの時系列処理を行えば、腫瘍や炎症など、人体の軟部組織に近い放射線吸収率をもつ病変の経時的変化を強調することができ(図4参照)、また、骨部画像どうしでの時系列処理を行えば、骨折,軟骨の化骨,石灰化など、人体の骨に近い放射線吸収率をもつ構造の経時変化を強調することができる。従って、前記時系列処理画像によれば、新たに発生した病変や病状の変化した病変を見落としなく容易に発見することができ、診断精度及び診断効率を向上できる。
【0041】
尚、時系列処理は、軟部画像どうし或いは骨部画像どうしのいずれであっても良いが、軟部画像どうしの方が臨床的重要度が高く、診断情報として有用である。
前記エネルギー差分処理画像間における時系列処理の流れを図5のフローチャートに示してある。
【0042】
図5のフローチャートにおいて、まず、異なる撮影時期に対応する2つのエネルギー差分処理画像間1,2(骨部画像どうし又は軟部画像どうし)において、共通の被写体部分を位置合わせする位置合わせ処理を行う(位置合わせ処理手段)。
即ち、相互に異なる時期に撮影されたオリジナル画像に基づく2つのエネルギー差分処理画像間では、撮影時のポジショニングや放射線入射方向の差異などに起因して、被写体の位置ずれが生じるので、画像間演算処理(差分処理)を行う前に、エネルギー差分処理画像間で被写体の相対的な位置ずれを合わせる処理を行わせるものである。
【0043】
尚、エネルギー差分処理画像間において、撮影時のX線露光量のばらつきなどにより、濃度や階調が異なる仕上がりになっている場合があるので、位置合わせ処理の前処理として、画像全体の濃度・階調を標準的な濃度・階調特性に合わせる濃度・階調補正処理を行わせても良い。具体的には、例えば胸部放射線画像において、関心領域である肺野領域内の画像データの分散値を合わせたり、また、最大値と最小値との差を合わせる処理を行わせると良い。また、米国特許5224177号に開示されるような濃度・階調補正処理を行わせるようにしても良い。
【0044】
位置合わせ処理が終了すると、2つのエネルギー差分処理画像の対応する画素間で画像データの差分をとる画像間演算処理としての差分処理(時系列処理)を実行することで、2つのエネルギー差分処理画像間での経時変化部分を選択的に強調した処理画像(時系列処理画像)を得る(差分処理手段)。
前記画像間演算処理(差分処理)の後処理として、ウィンドウ処理などの階調処理、診断に不必要な部分を削除するトリミング処理などを行っても良い。また、エネルギー差分処理と経時差分処理とを合成して、1段階の処理で行っても良い。
【0045】
ここで、エネルギー差分処理画像間における位置合わせ処理について述べる。前記エネルギー差分処理画像間における位置合わせ処理では、前述したエネルギー差分処理におけるオリジナル画像間における位置ずれよりも複雑な位置ずれの発生が予測されるので、画像を歪ませることにより、人体の複雑な位置ずれを精度良く位置合わせすることができる非線型変換を用いることが好ましい。
【0046】
更に、位置合わせ処理を、粗位置合わせ処理と精位置合わせとの2段階で行わせる構成とし、かつ、前記粗位置合わせ処理を解剖学的構造に基づいて行うのが好ましい。解剖学的構造の位置を対比して位置合わせを行う構成であれば、比較的大きな位置ずれがあっても、これを大まかに合わせる処理が可能であり、更に、予め大まかな位置合わせが行われていれば、位置ずれ量は充分に小さくなっているから、次段階の精位置合わせ処理において比較的簡便に高精度な位置合わせ処理が可能である。
【0047】
例えば、胸部放射線画像においては、経時的な形状変化が比較的少ない肺や脊椎を解剖学的構造として抽出させることが好ましく、特に、骨部画像においては脊椎線や胸郭、軟部画像においては肺野輪郭や縦隔を抽出させるようにすると良い。
胸部放射線画像における肺野部の輪郭抽出は、例えば特開昭63−240832号公報に開示される方法を用いて行える。具体的には、画像データの1つの行又は列についてのみ注目し、その1次元の画像データ列の中で前後のデータとの関係が予め定めた特定のパターンとなる点を、その行或いは列における輪郭点とし、必要な範囲の行或いは列について前記輪郭点を求めてそれらの点を結んだ線を肺野の輪郭とするものであり、前記特定のパターンとしては極小となる点,傾きが最大となる点,傾きが最小となる点などを用いる。
【0048】
また、胸部放射線画像において肺野を含む矩形領域を抽出する方法としては、例えば特開平3−218578号公報に開示されるような方法がある。具体的には、画像の縦方向についてプロジェクション値(画像データの一方向の累積値)を求める。そして、前記プロジェクション値が最小値となる点を正中線とし、該正中線から外側に向けて移動しながらプロジェクション値と所定の閾値とを比較して、プロジェクション値が最初に閾値以下になった左右それぞれの点を、肺野の左端及び右端として決定する。同様に画像の横方向についてもプロジェクション値を求めて、肺野の上端及び下端を決定する。
【0049】
また、胸部放射線画像において肺野輪郭や肋骨位置を抽出する方法としては、特開平2−250180号公報に開示されるようなものがある。このものは、縦横のプロファイル情報に基づいて肺野輪郭や肋骨位置を抽出するものであり、特に肋骨の抽出においては、背景部分の影響を多項式近似により排除する構成となっている。
【0050】
一方、腹部の放射線画像において、解剖学的構造として腰椎,腸骨,骨盤などの骨部を抽出する方法としては、特開平4−341246号公報に開示される方法がある。例えば、腹部放射線画像において腸骨部を抽出するには、画像の横方向における信号変化を示すプロファイルを作成し、かかるプロファイルにおいて極小値をとる部位の個数・位置に基づいて、腸骨部を囲む上下2つの線分を求めて、腸骨部領域を抽出する。また、骨部と骨以外の部分との境界信号値をヒストグラム等から求めて、かかる境界信号を閾値として画像信号の2値化を行うことで、腰椎,腸骨,骨盤などの骨部領域とそれ以外の領域とに区分して骨部領域を抽出することが可能である。
【0051】
尚、上記に示す解剖学的構造の抽出方法に限定されるものではなく、公知の種々の抽出方法を用いることができることは明らかである。
上記のようにして、共通の被写体部分を含む複数の画像それぞれにおいて、共通する解剖学的構造を抽出すると、該抽出結果に基づいて複数の画像の解剖学的構造の位置を大まかに合わせるように、少なくとも1つの画像を座標変換するか、或いは、該粗位置合わせにおける座標変換を表す式,係数等を決定する。即ち、複数画像中の1画像を基準画像として設定し、かかる基準画像における解剖学的構造(例えば肺,脊椎など)の位置に、他の画像の同じ解剖学的構造の位置が一致するように大まかな位置合わせを行う。
【0052】
前記粗位置合わせにおける座標変換は、回転,拡大・縮小,平行移動の組み合わせからなる線型変換を用いることが、計算量が少なく処理速度が速いので好ましい。
例えば脊椎や肺野輪郭を抽出した場合には、該脊椎や肺野輪郭を示す線が重なるように、一方の画像の回転角,拡大・縮小率,平行移動量のうちの少なくとも1つを決定する。また、肺野を含む矩形領域を抽出した場合には、矩形の上辺及び左右辺が重なるように、一方の画像の回転角,拡大・縮小率,平行移動量のうちの少なくとも1つを決定する。
【0053】
また、解剖学的構造の輪郭線で囲まれる領域の画像データを用いて、SSDA法(Sequential Similarity Detection Algorithm),相互相関法,フーリエ変換位相相関法等を用いて、回転角,拡大・縮小率,平行移動量のうちの少なくとも1つを決定する構成としても良い。ここで、前記粗位置合わせ処理においては、画像の画素数を間引き或いは平均化処理によって減少させた縮小画像を用いることが、処理速度を向上させる上で好ましい。
【0054】
精位置合わせ処理においては、粗位置合わせ処理を施した画像データ又は粗位置合わせ処理における位置合わせ情報に基づき、画像間における共通の被写体部分の構造を相対的により精細に合わせるように、少なくとも1つの画像について座標変換を行うか、或いは、座標変換を表す式,係数等を決定する。
ここで、前記座標変換においては、非線型変換を用いることが好ましい。即ち、非線型変換では、画像を歪ませることが可能であるから、人体の複雑な位置ずれを精度良く位置合わせすることが可能である。
【0055】
非線型変換における係数の決定においては、複数の点においてそれぞれローカルマッチングの手法を用いて求めた複数の移動量を総合することにより定めると良い。
前記ローカルマッチングとは、画像の大きさよりも小さい部分領域を選択し、該部分領域内の特徴に基づいて該領域の中心点に対応する移動量を求めるものである。
【0056】
例えば胸部放射線画像においては、肺野領域の輪郭を抽出し、複数の画像それぞれについて画像の肺野領域全体にわたって多数の点をマトリックス的に配置する。次いで、それぞれの点を中心として、一定の大きさの部分領域を設定する。このとき、座標変換を行う画像における部分領域の大きさを、基準画像(座標変換を行わない画像)の部分領域の大きさに比べて大きく設定し、小さい方の部分領域をテンプレート、大きい方の部分領域をサーチ領域と呼ぶ。
【0057】
そして、肺野内でおおよそ対応する位置にあるテンプレートとサーチ領域とのペアを用いて、サーチ領域に含まれる、テンプレートAと同形の副領域を少しずつ移動しながら、その中でテンプレートAと最も良く類似した副領域Bを探索する。副領域Bが探索されると、中心座標に基づいてテンプレートAの中心座標に対する移動量を計算する。ここで、ある副領域がテンプレートとどの程度類似しているか(類似度)を評価する手段としては、SSDA法,相互相関法,フーリエ変換位相相関法などを使用することができる。
【0058】
複数のテンプレートについて決定された移動量のx成分及びy成分、即ち、Δx及びΔyの分布に基づいて、x,yを変数とする2次元n次の多項式で表される座標変換式が決定され、かかる変換式に基づいて一方の画像の変換を行うか、或いは、前記座標変換式又は係数の情報を精位置合わせ情報として、画像間演算処理に与え、差分処理などの画像間演算を行うときに、前記精位置合わせ情報に基づいて対応画素を決定して差分処理を行わせる。
【0059】
ところで、前記位置合わせ処理において、例えば軟部画像の時系列処理を行う場合に、位置合わせ処理の全段階を軟部画像を用いて行う必要はなく、オリジナル画像を用いて粗位置合わせ処理を行った後、軟部画像を用いて精位置合わせ処理を行わせたり、また、骨部画像を用いて粗位置合わせ処理を行った後、軟部画像を用いて精位置合わせ処理を行わせたりしても良い。特に、骨部画像においては、複雑な軟部組織が消去されている一方、骨は単純な構造で明確な輪郭を有するので、軟部画像間で差分処理を行う場合であっても、骨部画像を用いて粗位置合わせを行う構成とすることで、粗位置合わせを簡便且つ精度良く行わせることが可能であり、以て、差分処理画像における偽画像の発生を防止できる。
【0060】
また、粗位置合わせ処理は、前記エネルギー差分処理におけるオリジナル画像間での位置合わせ情報を利用しても良いし、エネルギー差分処理における位置合わせ処理が、エネルギー差分処理画像間における粗位置合わせを兼ねるようにしても良い。
前述のようにして、エネルギー差分処理画像間で画像間差分処理(差分処理)を行うことで、エネルギー差分処理画像間での経時変化部分を選択的に強調した処理画像(時系列処理画像)を得ると、これを、前記画像表示ユニットA又はBに表示させて、経時変化部分の詳細を画像上で容易に観察できるようにする。
【0061】
前記エネルギー差分処理画像間での差分処理で得た処理画像は、比較読影に障害となる人体の正常構造の一部をエネルギー差分処理によって除去されており、更に、画像間演算処理により経時変化部分が選択的に強調されるので、新たに発生した病変や病状の変化した病変の見落としを防ぐことができる。また、経時変化のない場合の確信度を高め、擬陽性を低減できる。更に、骨陰影と血管陰影とをそれぞれ別の画像処理によって低減するので、撮影時の放射線入射方向の差異により骨と血管との位置関係が異なっている場合でも、両方の構造が打ち消され、偽画像が発生しない。
【0062】
ここで、エネルギー差分処理画像を前記画像記憶部1に記憶させておき、該記憶データを読み出してエネルギー差分処理画像間での演算処理を行わせる構成であっても良いし、また、オリジナル画像を記憶部1に記憶させておいて、該オリジナル画像に基づいてエネルギー差分処理画像を生成してから、該生成されたエネルギー差分処理画像間での演算処理を行わせる構成であっても良い。
【0063】
前記エネルギー差分処理画像間での差分処理で得た処理画像(時系列処理画像)は、経時変化部分が生じている部分の発見のために表示させるものであり、経時変化部分が発見されたらオリジナル画像又はエネルギー差分処理画像上で、前記経時変化部分を詳細に読影することが必要になる。このため、前記画像表示ユニットA,Bに時系列処理画像のみを表示させる構成であると、時系列処理画像において観察された経時変化部分をオリジナル画像やエネルギー差分処理画像上で直ちに確認できず、診断精度,診断効率が悪い。
【0064】
そこで、本実施例では、前記時系列処理画像とオリジナル画像又はエネルギー差分処理画像とを同一表示画面上又は異なる表示画面上に同時に表示する構成として、時系列処理画像とオリジナル画像又はエネルギー差分処理画像との対比を容易にし、以て、時系列処理画像において観察された経時変化部分をオリジナル画像又はエネルギー差分処理画像上で直ちに確認することができるようにした。
【0065】
具体的には、例えば、図6に示すように、画像表示ユニットAの画像表示部6aには、最新の撮影時に対応するエネルギー差分処理画像をその表示画面に表示させる一方、前記画像表示部6aに並べて配設される他方のユニットBの画像表示部6bには、最新の撮影時に対応するエネルギー差分処理画像と前回の撮影時に対応するエネルギー差分処理画像との間での差分処理で得られた時系列処理画像をその表示画面に表示させ、同時にエネルギー差分処理画像と時系列処理画像とを異なる表示画面上に表示させて見比べることができるようにしている。これにより、時系列処理画像に基づいて経時変化部分が観察されると、隣に表示されているエネルギー差分処理画像上でその部分を直ちに確認できる。
【0066】
尚、前記最新のエネルギー差分処理画像に代えて、最新の撮影時に対応する高エネルギー画像又は低エネルギー画像を表示させる構成としても良い。
ここで、オリジナル画像又はエネルギー差分処理画像を表示させる画像表示部6aの解像度は、オリジナル画像の画素数相当か或いはそれ以上として、画像を劣化なく表示させることが望ましいが、時系列処理画像については経時変化部分の有無及びその位置を概略的に知るために表示させるものであるため、オリジナル画像を表示させる表示画面に要求されるような高解像度が必要ではない。
【0067】
そこで、オリジナル画像又はエネルギー差分処理画像を表示させるものとして予め設定された画像表示部6aの解像度は、オリジナル画像の画素数相当か或いはそれ以上とするが、時系列処理画像を表示させるものとして予め設定された画像表示部6bについては画像表示部6aよりも解像度の低いもの、或いは、画像表示部6aよりも画面サイズの小さいものを用いても良い。
【0068】
画像表示部6aが高解像度を有するものであれば、画像の精細な表示が可能になると共に、同一画面に複数の縮小画像を並べて表示しても画質の損失が小さい。また、比較的低解像度の表示画面に時系列処理画像を表示させることで、細かな正常構造物の陰影に影響されることなく、経時変化部分を検知できる。更に、画像表示部6bに不必要に過剰な解像度を要求しないことで、コスト低減を図れる。
【0069】
具体的には、画像表示部6aとしてCRTを用いることが、階調表現性能の点から好ましく、更に、医療用高精細CRTとして知られている走査線1000本系以上のCRTを用いることがより好ましい。画像表示部6bとしては、CRT,プラズマディスプレイ,液晶ディスプレイなどを用いることが好ましい。
ところで、表示の形態としては、一方の画像表示部6aの同一表示画面上にオリジナル画像又はエネルギー差分処理画像と時系列処理画像とを同時に表示させる構成であっても良い。
【0070】
同一表示画面上に同時に表示させる場合には、2つの画像を同じサイズに縮小して同一の表示画面上に上下又は左右に並べて表示させたり、オリジナル画像又はエネルギー差分処理画像に対して時系列処理画像の縮小率を相対的により大きくし、画像表示部6aの同一表示画面上に上下又は左右に並べて表示させても良い。
【0071】
時系列処理画像については、細かな陰影の読影は必要でなく、高解像度での表示はかえって経時変化部分の検知の妨げになる場合もあるので、上記のようにより大きな縮小率で縮小表示しても問題はなく、また、縮小率を大きくすることで経時変化部分の観察に不要な細かな陰影が潰れて経時変化部分の検知が容易となる。
【0072】
上記実施例では、時系列処理画像とオリジナル画像又はエネルギー差分処理画像を同一表示画面上又は異なる表示画面上に同時に表示することで、これらの画像の比較読影による経時変化の検知を容易とし、以て、診断効率,診断精度を向上させる構成としたが、例えば比較したい同一被写体の画像が3枚以上ある場合などでは、複数の画像を同一表示面上の同一位置に切り換えて表示する方が、読影に好都合な場合がある。
【0073】
従って、同一被写体の複数画像について、前述のように同時に表示するモードの他に、同一被写体の複数画像を同一表示面上の同一位置に切り換えて表示するモードを備えるようにすることが好ましい。
前記切り換え表示モードでは、複数の画像(例えば時系列処理画像,最新のエネルギー差分処理画像,過去のエネルギー差分処理画像)が、一方の画像表示部6aの同一位置に順次切り換え表示される。
【0074】
前記切り換えの間隔は、予め設定された一定時間であっても良いが、任意に切り換え時間を変更できるようにすることが好ましく、また、切り換えタイミングをその都度医師等が操作卓4を介して指示する構成とすることもでき、更に、一定時間で切り換えを行わせる場合であっても、画像切り換えの一時停止を任意に行えるようにすると良い。
【0075】
ところで、上記のように複数の画像を同時に表示させ、これらの画像を見比べて経時変化部分の正確な位置や範囲又は変化の程度を観察するには、表示された複数の画像から相互に対応する小さな領域を経験と知識とに基づいて選択し、それらの小さな領域をかわるがわる見比べて判断しなければならず、高い診断精度や診断効率を安定的に発揮させることが困難である。
【0076】
そこで、以下に示すような表示が行える構成とすることが好ましい。
即ち、操作卓4等の操作によって表示画面上の画像における任意の領域を座標指定できるようにし、例えば、2つの画像を各表示部6a,6bに同時に表示させた場合に、一方の画像上での関心領域を基準領域として設定すると、他方の画像上で前記設定された関心領域と同じ被写体部分に対応する領域が参照領域として自動的に設定され、前記基準領域と参照領域とを示す窓枠状の図形表示が、表示画面上の画像に重ねて表示されるようにする(図7参照)。尚、図7においては、表示部6a側に基準領域が指定される場合を示したが、表示部6b側に基準領域が指定される構成であっても良い。
【0077】
前記基準領域の設定は、操作卓4に設けられたマウス等のポインティングデバイスを用いて指定するようにしても良いし、操作卓4に設けられたキーボードを用いて座標入力しても良い。また、各表示部にタッチパネルが設けられていて、表示画像上の任意の点に直接触れることにより指定できるような構成にしても良い。
【0078】
かかる構成によれば、経時変化を観察したい関心領域があるときに、例えばエネルギー差分処理画像(基準画像)上でその領域(基準領域)を指定することで、時系列処理画像(参照画像)上での対応する領域が参照領域として窓枠で囲まれて表示されるから、それぞれの窓枠内の画像のみに注目すれば良く、関心領域内に経時変化があるか否かを容易に観察でき、また、観察された経時変化部分をエネルギー処理画像又はオリジナル画像上で詳細に観察できる。
【0079】
また、逆に、時系列処理画像上で観察した経時変化部分を含む領域を指定することで、オリジナル画像又はエネルギー差分処理画像上の対応する領域が参照領域として自動設定されるから、時系列処理画像上で観察した経時変化部分をオリジナル画像又はエネルギー差分処理画像上で詳細に観察することが容易に行える。
【0080】
更に、最新のエネルギー差分処理画像と過去のエネルギー差分処理画像とを同時に表示させた場合に、一方の画像で基準領域を指定することで、同じ領域の対比観察が容易に行え、経時変化の様子を容易に観察できる。
ここで、基準領域は前述のように操作卓4による任意の設定を行わせても良いが、例えば経時変化部分が強調されることになる時系列処理画像とオリジナル画像又はエネルギー差分処理画像とを表示させる場合には、前記時系列処理画像から経時変化の部分を検出し、該検出部分を含む領域を基準領域として自動設定させる一方、オリジナル画像又はエネルギー差分処理画像上で前記基準領域に対応する参照領域を設定して、これら基準領域,参照領域を識別できる図形をそれぞれの画像上に重ねて表示させる構成としても良い。
【0081】
更に、過去に自動検知又は医師による診断により異常陰影部として検知された領域を記憶させておき、かかる記憶データに基づいて基準領域の初期設定を行わせる構成としても良い。前記自動検知の手段としては、例えば特開平3−133430号公報に示す方法等がある。
また、基準領域と参照領域とが設定されると、画像間の対比は専ら前記領域内の画像について行われることになるから、基準領域と参照領域との少なくとも一方について表示画面上に設定された領域のみを拡大表示させることができるようにすると良い(図7参照)。上記のように注目すべき領域が拡大表示されれば、経時変化のより詳細な観察が可能になる。
【0082】
また、基準領域を示す図形(窓枠表示)又は拡大表示された基準領域の画像を表示画面に対して操作卓4の操作によって上下左右にスクロールできるようにすると共に、かかる基準領域のスクロール量,方向に対応して、参照領域を示す図形又は拡大表示された参照領域の画像を、基準領域のスクロールに同期してスクロールさせる構成とすることが好ましい。
【0083】
この場合には、基準画像上において、経時変化が観察された領域又は関心領域のみならず、周辺領域の詳細な観察が容易に行えるようになる。また、かかる基準画像でのスクロールに同期して参照領域のスクロールも行われるから、周辺領域の対比観察が容易に行える。
ところで、前述のように、異なる撮影時期に対応する2つのエネルギー差分処理画像間における差分処理で得られる時系列処理画像では、経時的変化部分が強調されて経時変化部分の検出が容易であるものの、経時変化の生じていない構造物についてはその読影が困難になるから、時系列処理画像の観察によって経時変化部分が検出されても、正常構造物内におけるその正確な位置,領域を同じ時系列処理画像から認識することが困難である。
【0084】
そこで、前記時系列処理画像にオリジナル画像(低エネルギー画像又は高エネルギー画像)を加算する処理を行い、かかる処理によって生成された加算画像を表示させることで、画像内の経時的な変化部分を、変化していない構造部分との位置関係を明確にして読影者に提示できるようにしても良い。
即ち、差分処理画像(時系列処理画像)にオリジナル画像を加算すれば、変化のない正常構造物を表示しつつ、経時変化部分を選択的に強調した画像を得ることが可能となり、経時変化部分を経時変化のない正常構造物を背景として認識できることになる。
【0085】
図8に前記加算処理の例を示してある。
図8に示す例は、オリジナル画像を階調変換テーブルを用いて階調処理することでコントラストを低下させた後、かかる画像処理が施されたオリジナル画像を差分処理画像に加算し、かかる加算画像を表示させるものである。
オリジナル画像のコントラストを低下させることによって、差分処理画像で強調される経時変化部分が、加算画像において経時変化のない構造部分の細かな陰影に埋もれて、経時変化部分の検出が行い難くなることを防止するようにしたものであり、これにより、差分処理画像で強調される経時変化部分を見やすい形のまま、経時変化のない構造物の画像上に重ねて表示させることができる。そして、前記加算画像の観察によって、経時変化していない構造物との位置関係を明確にした上で経時変化部分を容易に検出することが可能となる。
【0086】
加算画像において経時変化のない構造部分の細かな陰影に埋もれて経時変化部分の検出が行い難くなることを防止するための画像処理としては、前記階調処理の他、非鮮鋭化処理,高周波抽出処理などであっても良い。
また、図9に示すように、オリジナル画像から構造物の輪郭(肺野輪郭,肋骨輪郭,脊椎線など)を抽出する処理を行うと共に、該輪郭を線画表現する図形を生成し、前記輪郭を示す図形に差分処理画像を加算し、構造物の輪郭上に経時変化部分が強調された画像が重ねられるようにしても良い。
【0087】
尚、輪郭を線画表現する代わりに、輪郭の抽出結果に基づいて肺野領域や心臓領域を塗り潰しパターンで表現する図形を生成させる構成としても良い。
また、図10に示す実施例では、差分処理画像(時系列処理画像)の各画素の画像データと所定の閾値との比較によって差分処理画像を2値化し、経時変化部分に対応する閾値以上の画素が複数連続する領域を求め、各領域を弁別するラベリング処理を用いることによりかかる領域の中で所定以上の大きさを持つ領域(島)を抽出し、該抽出した領域を塗り潰しパターンで表現する。そして、経時変化部分を塗り潰しパターンで表現する前記画像をオリジナル画像に加算し、該加算画像を表示させている。
【0088】
ここで、経時変化部分を塗り潰しパターンで表現する代わりに、経時変化部分を示す特定の図形(例えば×印)をオリジナル画像上の対応する部分に重ねて表示させるようにしても良い。
また、前記加算処理において、差分処理画像(時系列処理画像)及びオリジナル画像の少なくとも一方を色操作手段を用いて着色表示する構成としても良い。更に、差分処理画像(時系列処理画像)の画素値に対して色相を変化させるようにしても良い。
【0089】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1〜3の発明にかかる画像処理装置によると、軟部画像を用いて画像間演算処理を行うので、腫瘍陰影などの臨床的重要度の高い異常陰影の変化を効果的に強調することができ、更に、軟部画像について画像間演算処理を行うときに、複雑な軟部組織が消去され然も輪郭が明確な骨部画像を用いて大まかな位置合わせを行ってから、軟部画像で細かな位置合わせを行うので、比較的大きな位置ずれがあっても位置合わせが可能で、然も、軟部画像を用いた位置合わせ処理を簡便かつ高精度に行わせることができるという効果がある。
【0093】
請求項の発明にかかる画像処理装置によると、エネルギー差分処理画像間における画像間演算によって変化部分が選択的に強調された処理画像を表示させることで、画面上で経時変化部分を観察できるという効果がある。
請求項の発明にかかる画像処理装置によると、変化部分が選択的に強調された処理画像と、オリジナル画像とエネルギー差分処理画像との少なくとも一方とを同時又は切換えて表示させることで、処理画像上で観察された変化部分の位置や詳細をオリジナル画像又はエネルギー差分処理画像上で容易に確認できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のシステム構成ブロック図。
【図2】エネルギー差分処理のアルゴリズムを示すブロック図。
【図3】エネルギー差分処理の流れを示すフローチャート。
【図4】オリジナル画像,エネルギー差分処理画像及び時系列処理画像を示す図。
【図5】エネルギー差分処理画像間での演算処理を示すフローチャート。
【図6】時系列処理画像の表示形態の例を示す図。
【図7】画像内における領域表示の例を示す図。
【図8】時系列処理画像とオリジナル画像との加算処理を示す図。
【図9】時系列処理画像とオリジナル画像との加算処理を示す図。
【図10】時系列処理画像とオリジナル画像との加算処理を示す図。
【符号の説明】
1 画像記憶部
2 放射線撮影装置
3 画像管理部
4 操作卓
5 画像処理部
6a,6b 画像表示部
7a,7b 画像メモリ
8a,8b 表示制御部
9 転送制御部
A,B 画像表示ユニット

Claims (5)

  1. 同一被写体を透過しかつ相互に異なるエネルギー分布をもつ少なくとも2種類の放射線により形成された複数のオリジナル放射線画像間での差分処理によって生成された複数のエネルギー差分処理画像間で画像間演算処理を行って処理画像を生成する画像処理装置であって、
    前記複数のエネルギー差分処理画像間で共通の被写体部分の位置合わせ処理を行い、該位置合わせ処理が行われた複数のエネルギー差分処理画像間で画像間演算処理を行う画像処理装置において、
    前記被写体が軟部組織及び骨部を含み、前記エネルギー差分処理画像として、前記被写体の軟部組織を主体として表す軟部画像と、前記被写体中の骨部を主体として表す骨部画像との2種類の画像が生成され、
    前記位置合わせ処理において、前記骨部画像を用いて大まかな位置合わせ処理を行った後、前記軟部画像を用いて細かな位置合わせを行い、前記画像間演算処理を行うエネルギー差分処理画像として、前記位置合わせ処理が行われた軟部画像を用いることを特徴とする画像処理装置。
  2. 前記骨部画像から解剖学的構造を抽出し、該抽出した解剖学的構造の位置を対比して大まかな位置合わせを行うことを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
  3. 前記被写体が人体の胸部であり、前記解剖学的構造として脊椎線又は胸郭を抽出することを特徴とする請求項2記載の画像処理装置。
  4. 前記画像間演算処理で生成された処理画像を少なくとも表示する画像表示手段を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の画像処理装置。
  5. 前記画像表示手段が、前記画像間演算処理において生成された処理画像と、前記オリジナル画像とエネルギー差分処理画像との少なくとも一方とを同時又は切り換えて表示することを特徴とする請求項記載の画像処理装置。
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