JP3569347B2 - ポリエステル極細繊維の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、単糸繊度が 1.0デニール未満のポリエステル極細繊維を良好な巻き姿のパッケージとして得ることのできるポリエステル極細繊維の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステル、ポリアミド等を代表とする合成繊維のうち、単糸繊度の小さい極細繊維を製造する方法は、種々提案されている。
特公昭48−25362号公報や特開昭51−130317号公報には、 0.3デニール以下の極細繊維を製造する方法として、2種のポリマーを用いて複合紡糸し、得られた複合繊維を溶剤等を用いて処理することにより1成分を溶出、割繊させて極細繊維を得る方法が記載されている。
しかしながら、この方法は、2種のポリマーを溶融したり複合紡糸するための複雑な装置が必要となり、技術的、経済的に課題が多い。
【0003】
上記のような課題を解決するものとして、特開昭54−30924号公報には、単一のポリマーを多数の吐出孔をもつ紡糸口金を用いて溶融紡糸し、2500m/分以上の高速で巻き取ることによって、高度に配向された極細繊維を得る方法が提案されている。
このように高速で紡糸する場合、紡糸線上に発生する空気抵抗が大きくなるため、必然的に紡糸張力が高くなり、紡糸張力が高くなるほど、繊維の内部に発生する歪みが増大する。このような繊維内部に発生した歪みは、糸条を伸長させたときに元に戻ろうとする力に変わるので、繊維内部に歪みの発生した糸条をパッケージに巻き取ると、巻き締まりが起き、巻き姿の悪いパッケージとなる。
【0004】
特に、単糸デニールが 1.0デニール未満の極細繊維を高速紡糸法で巻き取る場合、紡糸線上に発生する空気抵抗が大きくなる。
紡糸された糸条をゴデッドローラを介せずに直接巻取機で巻き取る場合、紡糸張力がそのまま巻き取り張力となるため、繊維内部に歪みが発生し、得られるパッケージは巻き姿の悪いものとなる。
したがって、紡糸された糸条を一旦1対のゴデッドローラで引き取り、ゴデッドローラや巻取機の速度を調整して糸条の張力を制御した後、巻取機で巻き取る方法が採用されている。
【0005】
この方法では、用いられる1対のゴデッドローラは、同一の駆動源で駆動されており、ゴデッドローラの外径に差をつけることによって、ローラ間で速度差をつけ、ローラ間での糸揺れや巻き付きを防いでいる。
すなわち、ローラ間での糸揺れや巻き付きを防ぐために、第1ゴデッドローラの速度よりも第2ゴデッドローラの速度を高くしている。このため、張力がかかり、繊維内部に歪みが発生した糸条を緩和させて巻き取るためには、巻取速度を第2ゴデッドローラの速度より低くする必要がある。
【0006】
しかしながら、巻き取り前に過度に弛緩すると、糸条が巻取機やローラに巻き付いたり、切り替え時にミスが多発し、操業性が悪化し、また、弛緩率を多少抑えて巻き取れたとしても、巻き取られたパッケージは、端面のふくらみが大きく、巻き姿の悪いものとなるという問題があった。
単糸デニールが 1.0デニール未満の極細繊維糸条を熱処理を施すことなく、2500m/分以上の高速で巻き取る場合は、特に、繊維の内部構造が不安定であるため、上記のような問題が多発していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、溶融紡出した糸条を2500m/分以上の高速で巻き取り、熱処理を施さずに単糸デニールが 1.0デニール未満の極細繊維を得る場合に、操業性よく、良好な巻き姿のパッケージとして得ることができるポリエステル極細繊維の製造方法を提供することを技術的な課題とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究の結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、溶融紡出した糸条を1対のゴデッドローラで熱処理をせずに一旦引き取り、2500m/分以上の速度で連続的に巻き取って、単糸繊度が 1.0デニール未満のポリエステル極細繊維を製造するに際し、第1ゴデッドローラの速度(V)と第2ゴデッドローラの速度(V)と巻取速度(V) をそれぞれ下記式(1)、(2)を満足するように設定することを特徴とするポリエステル極細繊維の製造方法を要旨とするものである。
0.9≦V/V<1.0 (1)
0.9≦V/V<1.1 (2)
【0009】
以下、本発明を図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の製造方法を適用する紡糸巻取装置の一実施態様を示す概略図である。
まず、ポリエステル樹脂は、1のホッパーから押出し機2で加熱溶融されつつ押し出され、紡糸頭3に送られ、さらに、紡糸頭3に取り付けられた紡糸口金4から押し出されて糸条Yとなる。糸条Yは、冷却装置5で冷却、固化された後、油剤付与装置6で油剤を付与されながら集束され、第1ゴデッドローラ7、第2ゴデッドローラ8に引き取られ、巻取機9でパッケージ10として連続的に巻き取られる。
【0010】
本発明においては、巻き取り後の単糸繊度が1.0 デニール未満となる極細繊維を、巻き取り速度を2500m/分以上とし、ゴデッドローラ7、8間で糸条を加熱することなく巻き取る場合において、第1ゴデッドローラ7の速度(V)と第2ゴデッドローラ8の速度(V)が(1)式を、第2ゴデッドローラの速度(V)と巻取速度(V) が(2)式を満足するものとする必要がある。
すなわち、従来、1対のゴデッドローラのうち、第2ゴデッドローラ8と巻取機9との間でのみ糸条を弛緩させていたものを、第1ゴデッドローラ7と第2ゴデッドローラ8との間で弛緩させ、さらに、第2ゴデッドローラ8と巻取機9との間でも弛緩又は定長状態で走行させることによって、紡糸張力がかかって緊張した糸条を弛緩し、繊維内部の歪みを十分に緩和させることができる。また、適正な巻き取り張力から逸脱させることなく弛緩させるので、この糸条をパッケージに巻き取ると、巻き締まりが軽減されて巻き姿の良好なパッケージを操業性よく得ることが可能となる。
【0011】
(1)式を満足しない場合、第2ゴデッドローラの速度(V)が第1ゴデッドローラの速度(V)に対して 0.9倍未満の場合は、糸条がローラ間で緩み過ぎ、第1ゴデッドローラ7や第2ゴデッドローラ8に糸条が巻き付き、断糸が発生する。また、この比率が 1.0倍以上の場合、繊維内部の歪みを緩和させることができない。
【0012】
(2)式を満足しない場合、第2ゴデッドローラの速度(V)が巻取速度(V) に対して 0.9倍未満の場合は、糸条が第2ゴデッドローラ8と巻取機9間で緩み過ぎ、第2ゴデッドローラ8や巻取機9に糸条が巻き付き、断糸が発生したり、切り替え時にミスが多発し、操業性が悪化する。また、この比率が 1.1倍以上の場合、繊維内部の歪みを緩和させることができないので、巻き取り時に巻き締まりが発生し、巻き姿の良好なパッケージを得ることができない。
【0013】
なお、本発明においては、1対のゴデッドローラで引き取るが、第1ゴデッドローラと第2ゴデッドローラの間に、第1又は第2ゴデッドローラと同じ速度のローラを設けてもよい。
また、第1ゴデッドローラと第2ゴデッドローラの速度を容易に調整できるようにするために、ゴデッドローラの駆動源を分離させることが好ましい。
【0014】
本発明におけるポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートが代表的なものであるが、これを主成分として、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ポリエチレングリコール等を共重合したコポリエステルでもよく、また、これらのポリエステルにポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリプロピレン等の他の重合体をブレンドしたものであってもよい。
さらに、前記したポリエステルに艶消し剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤等を含有させたものでもよい。
【0015】
本発明は、巻取速度が2500m/分以上の高速紡糸法での適用が有効であり、特に、繊維内部の構造が不安定となりやすい、2500〜4000m/分の巻取速度の場合において有効である。
本発明の方法で巻き取られる極細繊維としては、単糸繊度が1.0 デニール未満のものであるが、0.3 〜0.8 デニールのものが好ましく、さらに、0.3 〜0.5 デニールのものが好ましい。
また、極細繊維の断面形状は特に限定されるものではなく、丸、三角、十字断面形状等が挙げられる。
【0016】
【作用】
本発明の製造方法では、第1ゴデッドローラの速度(V)と第2ゴデッドローラの速度(V)が(1)式を満足し、第2ゴデッドローラの速度(V)と巻取速度(V) が(2)式を満足するように設定するので、紡糸張力がかかって緊張した糸条を弛緩し、繊維内部の歪みを十分に緩和させることができる。また、このとき、適正な巻き取り張力から逸脱させることなく弛緩させるので、弛緩させ過ぎてローラや巻取機に糸条が巻き付くことがなく、巻き姿の良好なパッケージを操業性よく得ることが可能となる。
【0017】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
なお、実施例中の測定、評価等は次の方法で実施した。
▲1▼ 張力
ロッシェルド社製のテンションメータR−3192型を使用し、次の測定点で測定した。
・紡糸張力 第1ゴデッドローラの直前
・ローラ間張力 第1、第2ゴデッドローラの間
・巻き取り張力 第2ゴデッドローラと巻取機の間
▲2▼ 巻き姿
得られたパッケージ(12kg巻)の巻き姿を目視で次の基準で判定した。
◎ 端面のふくらみがなく良好
○ 端面のふくらみがややある
× 端面のふくらみが大きく不良
×× 端面のふくらみが極端に大きく、実用として使用できない
▲3▼ 自動切り替え成功度
パッケージ巻量を3kg巻とし、4糸条巻の巻取機にて、各条件につきそれぞれ10回ずつ自動切り替えを実施し、その糸切れ発生回数で評価した。
◎ 0回
○ 1回
× 2〜4回
×× 5回以上
▲4▼ 総合評価
▲2▼、▲3▼の評価をもとに次の基準で判定した。
Figure 0003569347
【0018】
実施例1、比較例1
極限粘度〔η〕(フェノールと四塩化エタンの等重量混合溶媒を用い、20℃で測定した。)が0.68で、艶消し剤として二酸化チタンを 0.4重量%添加したポリエチレンテレフタレートチップを押出し装置に供給し、温度 290℃で加熱溶融しながら押し出し、紡糸温度 298℃、孔径0.15mmφ、孔数 168個の口金から糸条として紡糸した。このとき、図1に示す紡糸巻取装置を用いて行った。
この糸条を冷却風にて冷却、固化後、1対のゴデッドローラを介して、50デニール/ 168フィラメントのパッケージ(12kg巻)として巻き取った。このとき、表1に示したように、第1ゴデッドローラの速度(V)、第2ゴデッドローラの速度(V)、巻取速度(V) を種々変更して実施した。
糸条の張力、巻き姿、自動切り替え成功度の評価結果を併せて表1に示す。
【0019】
実施例2、比較例2
孔径 0.2mmφ、孔数 144個の紡糸口金に変更し、80デニール/ 144フィラメントの糸条を得た以外は、実施例1と同様に行った。
糸条の張力、巻き姿、自動切り替え成功度の評価結果を併せて表1に示す。
【0020】
【表1】
Figure 0003569347
【0021】
本発明の速度の設定範囲を満足した実施例1、2では、良好な巻き姿のパッケージを得ることができ、かつ自動切り替え成功度も高かった。
比較例1では、(1)式を満足せず、第2ゴデッドローラと巻取機の間でのみ弛緩し、巻き取り張力が低くなり過ぎたため、巻取機の切り替え成功度が低かった。比較例2でも(1)式を満足しなかったため、繊維内部の歪みが緩和されず、端面のふくらみが極めて大きいパッケージとなり、実用として使用できなかった。
【0022】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、繊維内部の構造が不安定な糸条においても、紡糸張力がかかって生じた繊維内部の歪みを十分に緩和し、かつ、ローラや巻取機に糸条の巻き付きを生じさせることなく、良好な巻き姿のパッケージを操業性よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造方法を適用する紡糸巻取装置の一実施態様を示す概略図である。
【符号の説明】
4 紡糸口金
5 冷却装置
7 第1ゴデッドローラ
8 第2ゴデッドローラ
9 巻取機
10 パッケージ
Y 糸条

Claims (1)

  1. 溶融紡出した糸条を1対のゴデッドローラで熱処理をせずに一旦引き取り、2500m/分以上の速度で連続的に巻き取って、単糸繊度が 1.0デニール未満のポリエステル極細繊維を製造するに際し、第1ゴデッドローラの速度(V)と第2ゴデッドローラの速度(V)と巻取速度(V) をそれぞれ下記式(1)、(2)を満足するように設定することを特徴とするポリエステル極細繊維の製造方法。
    0.9≦V/V<1.0 (1)
    0.9≦V/V<1.1 (2)
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