JP3569135B2 - 電界放出陰極の製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、パワー用スイッチ素子、ディスプレイなどに適用される電界放出陰極の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電界放出型の微小冷陰極はその高速応答の可能性や耐放射線、耐熱性、大電流化の可能性等によって非常に多くの研究がなされている。提案者はこれまでに本素子をパワースイッチング用デバイスに応用することを目的にした提案(特願平9−236046号等)を行っており、大電流・高電圧のスイッチングデバイスとしての可能性を提唱している。
【0003】
この微小冷陰極を用いた電子放出素子は、電界集中を起こしやすい先鋭な先端を有する冷陰極と、この冷陰極の近傍に配置した制御電極、さらに放出した電子を受ける電子捕獲電極(陽極)からなる。通常、冷陰極に対して近傍に設けた制御電極に正の電圧を印加し、近接効果と冷陰極先端での電界集中効果により、冷陰極先端に10−7V/cm以上の強電界を印加し、トンネル効果によってその先端から電子を放出させる。放出した電子は冷陰極に対向して配置された陽極に印加された正の電圧によって陽極に引き寄せられ、冷陰極・陽極間に電流が流れる。
【0004】
電界放出陰極として、上記に示す応用への適用を図る上で、低電界での電子放出、および安定した大電流放出が要となる。これらの実現に向けた多くの提案がなされているが、そのひとつとしてカーボンナノチューブを用いた低電界電子放出の試みがある。カーボンナノチューブは近年、ようやくその存在と特異な物性が知られるようになってきた物質で、シングルウォールのものでは、直径が10nm以下という極めて細い径を有している。この極めて細くアスペクト比の大きい形状は電界集中効果が期待でき、これまでにも見かけの平均電界(印加電圧/距離)としては非常に低い値から電子放出が得られることが確認されている。
【0005】
しかしながら、カーボンナノチューブを用いた電界放出陰極も以下に示す問題がある。
図3はカーボンナノチューブを用いた従来の電界放出陰極の一例を示す図である。図3に示すように、これまでの主なるナノチューブを用いた電界放出陰極はアーク法等で得られた混合物を適宜生成し、グラファイト等を除去した後、束状のマクロ形状で得られたものを、切り出したり、あるいは引き抜いたりしたナノチューブ束71を、基板4上に導電性ペースト等の導電性樹脂72で接着して作製される。このような手法で作製された素子も低電界動作は実現できるものの、ナノチューブ束71はランダムな紛状あるいは細線束状のマクロ形状で得られるため、ゲートを再現性よくナノチューブ束71に近接して形成することが困難であったため、ゲートを設ける3極構成や多数のアレイを同時形成する等の微細加工は困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したようにカーボンナノチューブを用いた従来の電界放出陰極によれば、そのアスペクト比の大きさより電界集中効果が実現でき、低電界動作が可能であるが、ゲートを設けて3極構成にする等の微細構造デバイスへの適用は困難である。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、大量に再現性よく作成可能な電界放出陰極の製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電界放出陰極の製造方法は、導電性極細物質を有機樹脂に懸濁させて該有機樹脂中に分散させる工程と、前記有機樹脂を少なくとも一部が導電性を有する基板上にコートする工程と、前記有機樹脂にアルゴンイオンを注入して該有機樹脂の電気抵抗を減少させる工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明において、有機樹脂の電気抵抗を減少させることには、有機樹脂がリークを生じる程度の電気抵抗とする場合も含み、電気抵抗を減少させて導体にする程度の減少は必ずしも必要とされない。
【0015】
本発明の望ましい形態を示す。
有機樹脂を硬化する工程の前後で、有機樹脂のマトリクス層の表面を導電性極細物質を残して選択的にエッチバックすることにより、導電性極細物質の先端を突出させる。
【0016】
(作用)
本発明では、電界放出用の導電性極細物質を有機樹脂に懸濁し、有機樹脂中に導電性極細物質を分散させる。従って、有機樹脂中に均一に導電性極細物質が分散し、また半導体微細プロセスを用いることができるため、均一な膜厚、平滑な表面構造のマトリクス層を得ることができ、微細な構造の電界放出陰極を容易にかつ再現性よく作成することができる。また、均一に電界放出陰極を形成できるため、電界集中効果も高く、低い印加電圧で安定に電子を放出する電界放出陰極が得られ、さらに素子の大面積化・大電流化も容易となる。
【0017】
また、有機樹脂を硬化して水素結合を多く含む非晶質のマトリクス層を形成するため、マトリクス層として重要な靱性に富む強固な電界放出陰極を形成することができる。従って、導電性基板との確実な接触が得られ、安定した低電圧動作が可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る電界放出陰極の製造方法を示す図である。まず、アーク放電法等公知の方法により、細線束状のカーボンナノチューブ1を作製する。この際、必要に応じて精製を行ってもよい。そして、得られたカーボンナノチューブ1をレジスト2中に分散及び懸濁させる(図1(a))。具体的には、予め有機溶剤で分散させたカーボンナノチューブ1をポジレジスト2(東京応化製OFPR)と混合し、ナノチューブ1を十分に分散させるため、超音波等を併用して攪拌する。このようにして得られた懸濁液3を導電性基板4上にスピンコータを用いて塗布し、懸濁樹脂層5を形成する(図1(b))。次いで、この懸濁樹脂層5の予備硬化を行う(図1(c))。具体的には80℃で30分間の熱処理を行う。
【0020】
この予備硬化の後に、酸素ガスを用いたCDE(Chemical Dry Etching)や、有機溶剤による表面層エッチング等を用いて、膜表面から懸濁樹脂層5中のレジスト2を選択的にエッチバックする(図1(d))。このエッチバックにより、懸濁樹脂層5の表面にはカーボンナノチューブ1の先端が突出し、陰極として用いた場合に十分な電界集中効果を得ることができる。
【0021】
このエッチバックの後に、追加の硬化のための熱処理を行い、さらに、Arイオンをイオン注入することにより懸濁樹脂層5に導電性を付与する(図1(e))。熱処理は一例として300℃、3時間、イオン注入は一例としてAr+ を200keVで5×1016cm−2注入する。このArイオンの注入により懸濁樹脂層5中のC−H結合が切断され、徐々に懸濁樹脂層5の抵抗が下がり、導電性を有する。これにより、従来のナノチューブ束により形成された電界放出陰極の場合のように、カーボンナノチューブ同士が接触し、基板とナノチューブ束の先端が電気的に接続された構成をとらなくても、導電性を有する炭素系マトリクスを介して電子の注入経路を確保することができる。
【0022】
なお、懸濁液3中のカーボンナノチューブ1の密度を上げることによりナノチューブ同士が接触して形成されたマトリクス層であってももちろんよい。
このようにして形成された炭素系マトリクス層は非晶質であり、水素結合を多く含む。従って、マトリクス層として重要な靱性に富む強固な電界放出陰極を得ることができる。また、マトリクス中には多数のポアを有し、製造された電界放出陰極の表面にはカーボンナノチューブ1の先端が突出した構造となる。
【0023】
また、導電性極細物質として用いられる材料と懸濁液として用いられる材料とを炭素系として同じものを用いることにより、両者の熱膨張係数が同一で膜として安定した構造を得ることができる。また、導電性極細物質と懸濁液が近似した電子構造をとるため、障壁が少なく低損失であり、電荷注入の際、マトリクスからチューブへの電子注入が容易となる。
【0024】
以上に示した工程により形成された電界放出陰極に真空中で平面型のアノードを対向配置して電圧を印加したところ、見かけの平均電界で2V/μm以下の低い電界から電子放出が観測され、安定で低電圧動作の可能な電界放出陰極が得られた。
【0025】
(第2実施形態)
図2は本発明の第2実施形態に係る電界放出陰極の製造方法を示す工程断面図である。以下、第1実施形態と重複する部分については詳細な説明は省略する。
【0026】
まず、レジスト2にカーボンナノチューブ1を懸濁させて懸濁液3を作成し、基板4上にこの懸濁液3をコートして懸濁樹脂層5を形成する(図2(a))。そして、この懸濁樹脂層5の予備硬化を行う(図2(b))。ここまでは第1実施形態と同様である。
【0027】
次いで、公知のリソグラフィ工程を用いて懸濁樹脂層5をパターニングする(図2(c))。次いで、パターニングされた懸濁樹脂層5中のレジスト2を選択的にエッチバックして懸濁樹脂層5の表面にカーボンナノチューブ1の先端を突出させる(図2(d))。さらに、追加の硬化のための熱処理及びArイオン等のイオン注入を行い、懸濁樹脂層5に導電性を付与し、非晶質の炭素系マトリクス層を形成する(図2(e))。
【0028】
このように、パターニングにより基板4表面の一部に懸濁樹脂層5を残存させることにより、基板4上の必要な部分にのみ所望の形状の電界放出陰極を形成することができる。また、アレイ状の多数の電界放出陰極を形成することができる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本実施形態で用いるカーボンナノチューブ1は極細線状導電性物質の一例であり、それ以外の類似物質を用いても良く、例えば、各種のウィスカー等を用いることもできる。さらに、本実施形態で用いたレジストも一例であり、基本的には、何らかの操作で膜化可能な液状有機物質あるいはその混合液であれば用いることができる。硬化の処理も上記に限定されるものではなく、熱・イオン注入・プラズマ処理等の他に、電子線照射、真空や各種雰囲気中での加熱、光照射、各種放射線照射等を用いてもよい。また、基板も全面が導電性のものを用いる必要はなく、部分的に導電性を付与したパターン電極付基板、透明電極付ガラス基板、低抵抗半導体基板、金属基板等各種を用いることができる。また、本実施形態では、エッチバックを行ったが、エッチバックなしでも行うこともできる。エッチバックなしで行う場合には、予備硬化・硬化等の工程を分けることなく、連続的に行ってもよい。また、有機溶剤に付与する導電性は、有機溶剤中にリークを生じる程度でよく、導体と呼ばれるほど高い導電性は必要とされない。
【0042】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、導電性極細物質が導電性樹脂由来炭素系マトリクス層に分散して形成され、また半導体微細プロセスを用いて作成できるため、微細な構造の電界放出陰極を再現性よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電界放出陰極の製造方法を示す図。
【図2】本発明の第2実施形態に係る電界放出陰極の製造方法を示す工程断面図。
【図3】従来の電界放出陰極の全体構成を示す図。
【符号の説明】
1…カーボンナノチューブ
2…レジスト
3…懸濁液
4…導電性基板
5…懸濁樹脂層
【発明の属する技術分野】
本発明は、パワー用スイッチ素子、ディスプレイなどに適用される電界放出陰極の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電界放出型の微小冷陰極はその高速応答の可能性や耐放射線、耐熱性、大電流化の可能性等によって非常に多くの研究がなされている。提案者はこれまでに本素子をパワースイッチング用デバイスに応用することを目的にした提案(特願平9−236046号等)を行っており、大電流・高電圧のスイッチングデバイスとしての可能性を提唱している。
【0003】
この微小冷陰極を用いた電子放出素子は、電界集中を起こしやすい先鋭な先端を有する冷陰極と、この冷陰極の近傍に配置した制御電極、さらに放出した電子を受ける電子捕獲電極(陽極)からなる。通常、冷陰極に対して近傍に設けた制御電極に正の電圧を印加し、近接効果と冷陰極先端での電界集中効果により、冷陰極先端に10−7V/cm以上の強電界を印加し、トンネル効果によってその先端から電子を放出させる。放出した電子は冷陰極に対向して配置された陽極に印加された正の電圧によって陽極に引き寄せられ、冷陰極・陽極間に電流が流れる。
【0004】
電界放出陰極として、上記に示す応用への適用を図る上で、低電界での電子放出、および安定した大電流放出が要となる。これらの実現に向けた多くの提案がなされているが、そのひとつとしてカーボンナノチューブを用いた低電界電子放出の試みがある。カーボンナノチューブは近年、ようやくその存在と特異な物性が知られるようになってきた物質で、シングルウォールのものでは、直径が10nm以下という極めて細い径を有している。この極めて細くアスペクト比の大きい形状は電界集中効果が期待でき、これまでにも見かけの平均電界(印加電圧/距離)としては非常に低い値から電子放出が得られることが確認されている。
【0005】
しかしながら、カーボンナノチューブを用いた電界放出陰極も以下に示す問題がある。
図3はカーボンナノチューブを用いた従来の電界放出陰極の一例を示す図である。図3に示すように、これまでの主なるナノチューブを用いた電界放出陰極はアーク法等で得られた混合物を適宜生成し、グラファイト等を除去した後、束状のマクロ形状で得られたものを、切り出したり、あるいは引き抜いたりしたナノチューブ束71を、基板4上に導電性ペースト等の導電性樹脂72で接着して作製される。このような手法で作製された素子も低電界動作は実現できるものの、ナノチューブ束71はランダムな紛状あるいは細線束状のマクロ形状で得られるため、ゲートを再現性よくナノチューブ束71に近接して形成することが困難であったため、ゲートを設ける3極構成や多数のアレイを同時形成する等の微細加工は困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したようにカーボンナノチューブを用いた従来の電界放出陰極によれば、そのアスペクト比の大きさより電界集中効果が実現でき、低電界動作が可能であるが、ゲートを設けて3極構成にする等の微細構造デバイスへの適用は困難である。
【0007】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、大量に再現性よく作成可能な電界放出陰極の製造方法を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電界放出陰極の製造方法は、導電性極細物質を有機樹脂に懸濁させて該有機樹脂中に分散させる工程と、前記有機樹脂を少なくとも一部が導電性を有する基板上にコートする工程と、前記有機樹脂にアルゴンイオンを注入して該有機樹脂の電気抵抗を減少させる工程とを含むことを特徴とする。
【0014】
本発明において、有機樹脂の電気抵抗を減少させることには、有機樹脂がリークを生じる程度の電気抵抗とする場合も含み、電気抵抗を減少させて導体にする程度の減少は必ずしも必要とされない。
【0015】
本発明の望ましい形態を示す。
有機樹脂を硬化する工程の前後で、有機樹脂のマトリクス層の表面を導電性極細物質を残して選択的にエッチバックすることにより、導電性極細物質の先端を突出させる。
【0016】
(作用)
本発明では、電界放出用の導電性極細物質を有機樹脂に懸濁し、有機樹脂中に導電性極細物質を分散させる。従って、有機樹脂中に均一に導電性極細物質が分散し、また半導体微細プロセスを用いることができるため、均一な膜厚、平滑な表面構造のマトリクス層を得ることができ、微細な構造の電界放出陰極を容易にかつ再現性よく作成することができる。また、均一に電界放出陰極を形成できるため、電界集中効果も高く、低い印加電圧で安定に電子を放出する電界放出陰極が得られ、さらに素子の大面積化・大電流化も容易となる。
【0017】
また、有機樹脂を硬化して水素結合を多く含む非晶質のマトリクス層を形成するため、マトリクス層として重要な靱性に富む強固な電界放出陰極を形成することができる。従って、導電性基板との確実な接触が得られ、安定した低電圧動作が可能となる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態に係る電界放出陰極の製造方法を示す図である。まず、アーク放電法等公知の方法により、細線束状のカーボンナノチューブ1を作製する。この際、必要に応じて精製を行ってもよい。そして、得られたカーボンナノチューブ1をレジスト2中に分散及び懸濁させる(図1(a))。具体的には、予め有機溶剤で分散させたカーボンナノチューブ1をポジレジスト2(東京応化製OFPR)と混合し、ナノチューブ1を十分に分散させるため、超音波等を併用して攪拌する。このようにして得られた懸濁液3を導電性基板4上にスピンコータを用いて塗布し、懸濁樹脂層5を形成する(図1(b))。次いで、この懸濁樹脂層5の予備硬化を行う(図1(c))。具体的には80℃で30分間の熱処理を行う。
【0020】
この予備硬化の後に、酸素ガスを用いたCDE(Chemical Dry Etching)や、有機溶剤による表面層エッチング等を用いて、膜表面から懸濁樹脂層5中のレジスト2を選択的にエッチバックする(図1(d))。このエッチバックにより、懸濁樹脂層5の表面にはカーボンナノチューブ1の先端が突出し、陰極として用いた場合に十分な電界集中効果を得ることができる。
【0021】
このエッチバックの後に、追加の硬化のための熱処理を行い、さらに、Arイオンをイオン注入することにより懸濁樹脂層5に導電性を付与する(図1(e))。熱処理は一例として300℃、3時間、イオン注入は一例としてAr+ を200keVで5×1016cm−2注入する。このArイオンの注入により懸濁樹脂層5中のC−H結合が切断され、徐々に懸濁樹脂層5の抵抗が下がり、導電性を有する。これにより、従来のナノチューブ束により形成された電界放出陰極の場合のように、カーボンナノチューブ同士が接触し、基板とナノチューブ束の先端が電気的に接続された構成をとらなくても、導電性を有する炭素系マトリクスを介して電子の注入経路を確保することができる。
【0022】
なお、懸濁液3中のカーボンナノチューブ1の密度を上げることによりナノチューブ同士が接触して形成されたマトリクス層であってももちろんよい。
このようにして形成された炭素系マトリクス層は非晶質であり、水素結合を多く含む。従って、マトリクス層として重要な靱性に富む強固な電界放出陰極を得ることができる。また、マトリクス中には多数のポアを有し、製造された電界放出陰極の表面にはカーボンナノチューブ1の先端が突出した構造となる。
【0023】
また、導電性極細物質として用いられる材料と懸濁液として用いられる材料とを炭素系として同じものを用いることにより、両者の熱膨張係数が同一で膜として安定した構造を得ることができる。また、導電性極細物質と懸濁液が近似した電子構造をとるため、障壁が少なく低損失であり、電荷注入の際、マトリクスからチューブへの電子注入が容易となる。
【0024】
以上に示した工程により形成された電界放出陰極に真空中で平面型のアノードを対向配置して電圧を印加したところ、見かけの平均電界で2V/μm以下の低い電界から電子放出が観測され、安定で低電圧動作の可能な電界放出陰極が得られた。
【0025】
(第2実施形態)
図2は本発明の第2実施形態に係る電界放出陰極の製造方法を示す工程断面図である。以下、第1実施形態と重複する部分については詳細な説明は省略する。
【0026】
まず、レジスト2にカーボンナノチューブ1を懸濁させて懸濁液3を作成し、基板4上にこの懸濁液3をコートして懸濁樹脂層5を形成する(図2(a))。そして、この懸濁樹脂層5の予備硬化を行う(図2(b))。ここまでは第1実施形態と同様である。
【0027】
次いで、公知のリソグラフィ工程を用いて懸濁樹脂層5をパターニングする(図2(c))。次いで、パターニングされた懸濁樹脂層5中のレジスト2を選択的にエッチバックして懸濁樹脂層5の表面にカーボンナノチューブ1の先端を突出させる(図2(d))。さらに、追加の硬化のための熱処理及びArイオン等のイオン注入を行い、懸濁樹脂層5に導電性を付与し、非晶質の炭素系マトリクス層を形成する(図2(e))。
【0028】
このように、パターニングにより基板4表面の一部に懸濁樹脂層5を残存させることにより、基板4上の必要な部分にのみ所望の形状の電界放出陰極を形成することができる。また、アレイ状の多数の電界放出陰極を形成することができる。
【0041】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本実施形態で用いるカーボンナノチューブ1は極細線状導電性物質の一例であり、それ以外の類似物質を用いても良く、例えば、各種のウィスカー等を用いることもできる。さらに、本実施形態で用いたレジストも一例であり、基本的には、何らかの操作で膜化可能な液状有機物質あるいはその混合液であれば用いることができる。硬化の処理も上記に限定されるものではなく、熱・イオン注入・プラズマ処理等の他に、電子線照射、真空や各種雰囲気中での加熱、光照射、各種放射線照射等を用いてもよい。また、基板も全面が導電性のものを用いる必要はなく、部分的に導電性を付与したパターン電極付基板、透明電極付ガラス基板、低抵抗半導体基板、金属基板等各種を用いることができる。また、本実施形態では、エッチバックを行ったが、エッチバックなしでも行うこともできる。エッチバックなしで行う場合には、予備硬化・硬化等の工程を分けることなく、連続的に行ってもよい。また、有機溶剤に付与する導電性は、有機溶剤中にリークを生じる程度でよく、導体と呼ばれるほど高い導電性は必要とされない。
【0042】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、導電性極細物質が導電性樹脂由来炭素系マトリクス層に分散して形成され、また半導体微細プロセスを用いて作成できるため、微細な構造の電界放出陰極を再現性よく得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電界放出陰極の製造方法を示す図。
【図2】本発明の第2実施形態に係る電界放出陰極の製造方法を示す工程断面図。
【図3】従来の電界放出陰極の全体構成を示す図。
【符号の説明】
1…カーボンナノチューブ
2…レジスト
3…懸濁液
4…導電性基板
5…懸濁樹脂層
Claims (4)
- 導電性極細物質を有機樹脂に懸濁させて該有機樹脂中に分散させる工程と、
前記有機樹脂を少なくとも一部が導電性を有する基板上にコートする工程と、
前記有機樹脂にアルゴンイオンを注入して該有機樹脂の電気抵抗を減少させる工程と
を含むことを特徴とする電界放出陰極の製造方法。 - 前記コートの後、アルゴンイオン注入の前に、前記有機樹脂の表面を前記導電性極細物質を残して選択的にエッチバックすることにより、前記導電性極細物質の先端を突出させる工程をさらに有することを特徴とする請求項1に記載の電界放出陰極の製造方法。
- 前記エッチバックの後に、前記コートされた有機樹脂を熱処理により硬化する工程をさらに有することを特徴とする請求項2に記載の電界放出陰極の製造方法。
- 前記エッチバックの前に、前記有機樹脂を熱処理により予備硬化する工程をさらに有することを特徴とする請求項2又は3に記載の電界放出陰極の製造方法。
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