JP3568692B2 - ゴム製品補強用スチールコードの製造方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車用ラジアルタイヤや搬送用コンベアベルト等のゴム製品の補強材として使用されるスチールコードの製造方法および装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
自動車用ラジアルタイヤや搬送用コンベアベルトなどのゴム製品の補強材としてスチールコードが汎用されている。
このようなスチールコードは一般に複数本のスチールワイヤを撚り合わせて構成されるが、ゴムマトリックスとよく一体化していないと使用時に複合体としての機能を十分に発揮することができなくなる。また、ゴムマトリックスがコードの内部までよく浸透しないと、ゴムマトリックスで満たされていないコード内部の空間を水が伝わり、その結果、錆がひろがってゴム複合体自体の寿命も低下してしまう。
【0003】
こうした問題点を解消するための一つとして特開平5−186978号公報には波形形付けを施した1本の芯素線の周りに6〜8本の素線を巻き付け、コード全体の断面形状を楕円形状とした構造のスチールコードが開示されているが、かかるスチールコードの製造法については開示されていない。
このような構造のスチールコードは、通常の場合、筒型(チューブラー式)撚線機を用いて製造される。すなわち、予め一対の歯車を用いて二次元的な波形の形付けを芯素線に施し、この周りに所定量の形付けをぞれぞれ施した側素線を筒型撚り線機で巻き付けるように撚り合わせ(この時、各素線には捻りが入らない)、その後、矯正ローラー等の偏平化装置を通して断面形状を楕円状に整えることにより製造されるのが一般である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし筒型(チューブラー式)撚線機を使用する方法は生産性が低く、それによりコストアップを招くのが大きな難点である。この対策としては、1回転で2回の撚りを入れることができるため製造能率のよい二度撚り(バンチャー式)撚線機でコード製造を行えると好都合である。
しかし、二度撚り撚線機での撚り線工程は素線を束ねて捻って撚り合わせるので、断面形状が崩れて偏平面(長径側)が一定方向に揃わなかったり、側素線間の隙間が均等にならず偏ってしまってゴムの浸透性が不安定になったり、波形の屈曲加工部近傍に二度撚り撚線時に発生する1回/1撚のねじりが集中するため、引張り強度の低下や耐久性の低下を引き起こすなどの問題が生じ、従って実用化が困難であった。
【0005】
本発明は前記のような問題点を解消するために研究して創案されたもので、その第1の目的は、波形をもつ1本の芯素線の周りに5〜8本の素線を巻き付け、コード全体の断面形状が楕円形状をなすスチールコードを、二度撚り撚線機によって筒型撚線機によるものと同等以上の品質で安価に製造することができる方法を提供することにある。
また、本発明の第2の目的は上記方法の実施に好適な装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記第1の目的を達成するため本発明は、1本の芯素線に螺旋状の連続小波くせを施した後、これを5〜8本の側素線と撚り合わせる前に圧縮して螺旋偏平状にし、この螺旋偏平状の芯素線の周りに側素線を配して撚り合わせ、さらに撚り合わせた粗コードを張力付加下で再度圧縮して偏平化することで二度撚り撚線機の利点を生かしつつ前記した不具合の発生を抑止したものである。
すなわち、本発明の特徴とするところは、略二次元的な連続小波くせを有する1本の芯素線とその周りの5〜8本の側素線とを有し、コード断面形状が略同一向きの楕円形状となっているスチールコードを二度撚り撚線機で製造する方法であって、芯素線1を一つのサプライボビンより引き出し、撚り合わせ前に予め芯素線に螺旋の連続小波くせを施した後圧縮して螺旋偏平形状にする一方、5〜8本の側素線を各サプライボビンから引き出してそれぞれ形付けを施し、それら側素線を前記1本の螺旋偏平形状の芯素線の周りに集めて束とし、その素線束を仮撚機によって仮撚りした後、二度撚り撚線機本体内に導いて撚り合わせ、形付けを強化した後、コードを圧縮して最終の形状を調整した上でリールに巻取ることにある。
【0007】
また第2の目的を達成するため本発明は、略二次元的な連続小波くせを有する1本の芯素線とその周りの5〜8本の側素線とを有し、コード断面形状が略同一向きの楕円形状となっているスチールコードを製造するための装置であって、巻取リールの上流に第2偏平化装置と過捻機を配した二度撚り撚り線機本体と、二度撚り撚り線機本体の導入側から上流に向かって順次配された仮撚機とボイスと配線板と、サプライボビンから配線板への芯素線パスライン上に配され芯素線に螺旋状の小波くせを連続的に形成するための螺旋状小波くせ付け装置と、該装置の下流に配され、螺旋状小波くせを偏平化するための第1偏平化装置と、各サプライボビンから配線板への側素線パスライン上に配された形付け装置とを備えている構成としたものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について図面に基づいて説明する。
図1は本発明によるスチールコードの製造方法と装置の一例を示しており、1は1本の芯素線、2は側素線であり、それら芯素線1と側素線2はそれぞれ表面にゴムとの接着性のよいめっきが施された直径が0.14〜0.4mmの高炭素スチールワイヤからなっている。側素線2は芯素線1と直径が同じ場合には、素線間の隙間からの芯素線1の飛び出しを避けるため通常6〜8本が用いられるが、芯素線1に対して側素線2の径が相対的に大きい場合には、側素線2の最少本数は5本でもよい。
【0009】
5は二度撚り撚線機本体であり、原動機50で回転される左右の中空軸52,52’に軸受により揺動自在に支持されたクレードル51を有し、クレードル51と同軸上には回転ガイド(弓)53,53’を取り付けており、中空軸52,52’付近の回転ガイド53,53’にはこれらと一体に回転可能な第1ターンロール57と第2ターンロール58が配されている。
クレードル51には第2ターンロール58よりも下流側にコードの回転性を矯正するとともに形付けを強化するための過捻機54が配され、この過捻機54の下流には第2の偏平化装置55と引取りキャプスタン56が設けられ、さらに下流に巻取リール59が設けられている。引取りキャプスタン56は前後一対からなり、コードが数回巻き付けられるようになっている。
【0010】
6aは芯素線1を巻収したサプライボビン、6b〜6gは側素線2をそれぞれを巻収したサプライボビンであり、前記二度撚り撚線機本体5から離間した位置に配されている。
各サプライボビン6a〜6gには図示しないがブレーキ装置が付属されており、該ブレーキ装置により芯素線1と5〜8本の側素線2は所定の張力を付与された状態で引き出されるようになっている。
【0011】
8は芯素線1のサプライボビン6aの下流のワイヤパスライン上に配置した螺旋状小波くせ付け装置であり、この実施例では、図1の矢印で示すように、芯素線1の長手軸に対して駆動機構(図示せず)により公転可能になっている。
螺旋状小波くせ付け装置8は、芯素線1に螺旋状の小波くせを連続してほどこすためのもので、図2に示すように板状、円錐状または円筒状の基体84に複数本たとえば3〜5本のピン80、81、82、83を一定の間隔をおいて千鳥状又は直線状に配しており、各ピン80、81、82、83は基体84に対して固定であってもよいが、ベアリングを取り付けて自軸に対して回転自在であってもよい。
【0012】
9は前記螺旋状小波くせ付け装置8の下流側のワイヤパスライン上に位置固定された第1偏平化装置であり、図4に示すように、板状またはブロック状の基体90,90に一定の間隔をおいてそれぞれ自軸に対して回転自在の複数個(たとえば5〜10個程度)のロール91aおよび91bを交互に配置しており、各ロール91aおよび91bは基体90,90の接近後退またはロール軸自体の移動によりワイヤパスライン方向に押し込み調整可能となっている。
前記クレードル51内の第2偏平化装置55はコード全体を圧縮して偏平状態を整えるするためのもので、図4に示す第1偏平化装置9と構造は同じとなっている。この第2偏平化装置55はコードに張力がかかっている状態で機能させることが必要であり、そこで、この例では引取りキャプスタン56を構成する一対のロール体の間のコード移動経路に配置されている。
【0013】
10は前記第1偏平化装置9の下流に設けた芯素線用の張力均等化装置であり、たとえばパウダーブレーキ付きキャプスタン10aと駆動キャプスタン10bからなっている。10cは位置制御センサであり、このセンサからの変位信号により、前記駆動キャプスタン10bを制御して芯用素線1の張力変動を抑えるようになっている。
10’はサプライボビン6b〜6gの下流のワイヤパスライン上に配置した側素線用の張力均等化装置であり、前記芯素線用のものと同様にパウダーブレーキ付きキャプスタン10a’と駆動キャプスタン10b’からなっており、位置制御センサ10c’により駆動キャプスタン10b’の駆動が制御されるようになっている。
張力均等化装置10’は各側素線2ごとに設けられてもよいが、簡素化のため、少なくともブレーキ付きキャプスタン10a’と駆動キャプスタン10b’あるいはさらに位置制御センサ10c’を軸方向に長く構成して各側用素線2を並列状にパスさせる(共通化する)ことが好ましい。
【0014】
11は前記張力均等化装置10’よりも下流側に設けた形付け装置であり、側素線2のパスライン上に設けられている。
形付け装置11は螺旋状小波くせ付け装置8と基本的に同じ構造を採用することができる。すなわち、図5のように板状、円錐状または円筒状の基体114に複数本たとえば3〜5本の形付けピン110,111,112,113を一定の間隔をおいて千鳥状又は直線状に配している。
各形付けピンは基体に対して固定であってもよいが、ベアリングを取り付けて自軸に対して回転自在であってもよい。しかし、この形付け装置11では螺旋状小波くせ付け装置8と異なり、芯用素線1の長手軸に対して公転可能になっておらず、位置固定されている。
かかる形付け装置11は各側素線2ごとに設けられてもよいが、装置の簡素小型化を図る点から好ましくは基体114を共通化し、側素線と同数のセット数の形付けピンを並列状に設けるようにするのも推奨される。
【0015】
12は張力均等化装置10,10’の下流に設けられた配線板で、芯素線1と側素線2をそれぞれ通す孔を配設している。13は配線板12で集合された芯素線1と側素線2を集合させるためのボイスである。
14は上記素線束3を仮撚りするための仮撚機であり、該仮撚機14は素線束3を巻き付ける一対の仮撚りローラ14a,14aを備え、素線束軸線上を回転ガイド53,53と同方向に回転されるようになっている。
【0016】
図3は螺旋状小波くせ付け装置8の別の実施例を示している。この実施例では螺旋状小波くせ付け装置8は、公転しない固定小波くせ付け部8aと公転するワイヤツイスト部8bとを直列状に配置することで構成されている。固定小波くせ付け部8aは図2と同じ構造となっている。ワイヤツイスト部8bは板状、円錐状または円筒状の基体84’に入口側ローラ80’と出口側ローラ82’とその間の太径な中央ローラ81’を設け、中央ローラ81’に芯用素線1を少なくとも1回巻き付けるようになっている。
この場合には、芯素線1は入口側ローラ80’にガイドされて中央ローラ81’に導かれ、ここで巻き付けられ、更に出口側ローラ82’でガイドされて、第1偏平化装置9に導かれるが、この時にワイヤツイスト部8bをワイヤの長手軸に対して撚線機本体5の回転方向と同方向に公転させるもので、これにより、固定小波くせ付け部8aの各ピン80〜83を芯用素線1が通過することにより、螺旋状の波くせが施される。
【0017】
本発明による製造法を説明する。
まず、素線の経路を説明すると、芯素線1はサプライホビン6aから引き出され、螺旋状小波くせ付け装置8のピン80,81,82,83に順次経由させられ、対で第1偏平化装置9を構成する交互配置のロール91a,91b間を経由し、張力均等化装置10のキャプスタン10a、10bに巻き付けられて引き出され、制御センサ10cを経た後、配線板12に導かれてその下流のボイス13にて芯素線1と集合されて束となる。
これに対して、側素線2はそれぞれのサプライボビン6b〜6gから引き出され、各素線共通の張力均等化装置10’のキャプスタン10a’、10b’に巻き付けられて引き出され、制御センサ10c’を経た後、各素線は形付け装置11に導かれ、さらに配線板12に導かれてその下流のボイス13にて前記芯素線1と集合されて束となる。
その後、前記素線束は仮撚機14の一対のローラ14aにたすき状に巻回された後、中空軸52を通して撚線機本体5内に導かれ、第1ターンロール57から回転ガイド53、第2ターンロール58および中空軸52’を通り、過捻機54を経た後、引取りキャップスタン56と第2偏平化装置55を経て、巻取リール59に巻収される。
【0018】
製造に際しては、螺旋状小波くせ付け装置8及び形付け装置11におけるピン間隔やその変位量等を設定し、また第1,第2偏平化装置9,55においてローラの押し込み量を調整し、仮撚機14及び過捻機54においてはその回転数の設定等を行う。
そして、原動機を駆動して撚線機本体5(中空軸52,52’と回転ガイド53)を図1のようにたとえば反時計方向に回転させ、仮撚機14を素線束のパスラインを軸として反時計方向に回転させ、螺旋状小波くせ装置8を芯素線1のパスラインを軸として撚線機本体と反対方向すなわちこの例では時計方向に回転させ、過捻機54を撚線機本体と反対方向すなわちこの例では時計方向に回転させるものである。
【0019】
こうすれば、螺旋状小波くせ付け装置8が撚線機の回転方向と逆方向に公転されることにより芯素線1はピン80,81,82,83でしごかれつつ捩じられるため、螺旋状の波くせが連続的に施され、この状態で下流の第1偏平化装置9を通過する。
この第1偏平化装置9はパスラインを軸として回転しておらず、交互配置の複数組のロール91a,91bがパスライン方向に所要量突出しているため、螺旋状小波くせ付き芯素線のスパイラルがそれらロール91a,91bによる押圧で真円状から楕円ないしそれに類する形状に圧偏化される。
これにより芯素線1は螺旋偏平状連続小波くせ付芯素線とされ、張力均等化装置10により張力の変動を抑制されながら一定の張力で配線板12の中心通孔に挿通される。
【0020】
一方これと同時に6〜8本の側素線2はそれぞれ何も波くせが付けられぬまま張力均等化装置10’のキャプスタン10a’、10b’に巻き付けられて引き出され、制御センサ10c’を経た後、それぞれ形付け装置11に導かれる。それら形付け装置11は公転されないが、各側素線2は螺旋波付け装置と同様な配列の複数のピンによってしごかれ、また同時に仮撚りの影響で捩じられながら通過するので、撚り合わせ状態にほぼ則した螺旋状のくせが付けられる。こうして形付けされた各側素線2は配線板12に向かい、中心通孔の外周に配されている通孔に挿通される。
これにより前記螺旋偏平状連続小波くせ付芯素線の周りに5〜8本のくせ付き側素線が集められてボイス13に導かれて素線束3となり、その状態で仮撚機14に到る。この仮撚機14はパスラインを軸として撚線機本体5と同方向に回転していることから、素線束は強制的に捩りが入れられ、形付けが強化されるとともに螺旋偏平状連続小波くせ付芯素線とくせ付き側素線の撚り込み長さのバランスが適正化される。
【0021】
すなわち、二度撚撚線機は機械1回転で2回の撚り生ずるため第1ターンロール57(第1ツイストポイント)での撚りピッチは通常製品コードの撚りピッチの2倍程度の長さである。したがって、芯素線と側素線の長さの比(λ=側/芯)は第1ターンロール領域での比λ1<第2ターンロール領域での比λ2となり、第1ターンロール領域で芯素線と側素線の撚り込まれる比が決まるので、第2ターンロール領域で芯が余って飛び出す現象が生ずる。これは本発明のように芯素線に波くせ加工を施すとさらに著しくなる。
そこで本発明は仮撚機14を使用しこれを回転(本体回転数の2倍以上が好適)させることにより撚りピッチを最終コードより短くするものであり、これにより仮撚機領域での芯素線と側素線の長さの比λ3>第2ターンロール領域での比λ2の関係となるため、仮撚機14通過後側素線に対して芯素線が余って飛び出すということがなくなる。
また、仮撚機14を使用することにより強制的に撚りピッチを短くするため、大きくかつバラツキが少ない形付け率を得ることができ、これにより素線間隔が大きく均等になるため、安定した高水準のゴム浸透性が得られることになる。
【0022】
その後、前記素線束は中空軸52を通して撚線機本体5内に導かれ、第1ターンロール57から回転ガイド53及び第2ターンロール58を通過する間に2回の撚りが入れられて撚り合わされる。このようにして撚り合わされた粗コード4は、続いて過捻機54に導かれ、この過捻機54は撚線機本体5の回転方向と逆方向に公転されているため、粗コード4はここで強制的に捩じりが入れられ、それにより回転性が矯正される。
図6は過捻機54を通過した時点で張力を除荷したコードの状態を示しており、(a)は側素線2を6本とした場合、(b)は側素線2を8本とした場合である。但しこの状態ではコードの長手において芯素線1の楕円の向きは一方向に揃っておらず、コード長手で捩じられて図6の仮想線のように回転している。この時点でコード断面形状は図示のように円形であり、これはコード形状の安定性およびゴムゲージ厚さ薄くするという点から適当でない。
【0023】
そこで、本発明は第2偏平化装置55を用いるもので、この実施例では過捻機54を通過した粗コードは引き取りキャプスタン56を構成する対のロールに複数回巻回されて張力が付与された状態で第2偏平化装置55を通過する。この第2偏平化装置55は図4の第1偏平化装置9と同じようにパスラインを軸として回転されず、交互配置の複数組のロール91a,91bがパスライン方向に所要量突出しているため、粗コードはロール91a,91bによって180度対称方向から押圧される。
これにより偏平形状が調整され、撚撚り線工程に伴う断面形状の崩れが防止され、偏平面が一定方向に揃ったものとなるとともに、図7(a)と(b)に示すように、連続小波くせ付芯素線は二次元波に近い若干の楕円形状に変化させられ、それに対応して側素線2も連続小波くせ付芯素線に近づくように寄せられる。このような製品コードCは巻取リール59に巻取られる。
【0024】
芯素線を歯車などを使用して二次元的な波付け加工を施した場合には、間欠的な加工であり、加工部分に傷が発生しやすく、またこの加工部分が撚り工程で伸ばされたり捩じられたりの繰り返し加工でもろくなり耐久性が低下する。これに対して、本発明では芯素線1に連続的に一方向に曲げと捩じりを与えて螺旋状を呈するように波付し、それを第1偏平化装置9によって180度対称で圧縮して偏平螺旋状波に造形している。
このため、捩じり合せ時に生ずる1回/1撚のねじれが素線全長に分布し局部に集中することがないため、良好な耐久性を得ることができる。また、本発明のスチールコードは、波くせ自体に捩じり要素が加わっており、張力が負荷されたときに伸びにくい特性がある。そのため波のピッチと高さのバラツキが少なく、安定した形状を保つことができる。しかも、二度撚り撚線機で造られるため生産性が良好である。
【0025】
なお、芯素線1に対する螺旋状波くせ付けは、図3に示すように波くせ付け装置を用いてもよい。すなわち、この場合には、固定小波くせ部8aの複数のピン81〜84を経由させることにより芯素線1がしごかれるが、その直後のワイヤツイスタ部8bが撚線機の回転方向と同方向にワイヤパスラインに対して公転させられているため捩じられ、したがって、固定小波くせ部8aのピン81〜84を通過する芯素線1には螺旋状の小波くせが連続して施される。
【0026】
【実施例】
直径0.35mmのスチールワイヤ7本を用いて、1+6構造のスチールコードを製造した。
螺旋小波くせ付け装置8及び形付け装置11のピン80、81、82、83は直径2mmの超硬合金のピンを用い、それらを千鳥状に配置した。螺旋小波くせ付け装置8は撚線機本体と逆方向に本体:螺旋小波くせ付け装置=1:4.6の比で公転させ、形付け装置11は固定とした。
第1偏平化装置9と第2偏平化装置55のロール91a〜97a,91b〜97bは直径16mmのものを使用し、それれぞれ基体に対して回転自在に取付け、片側7個、向かい側に8個の7+8配置にした。
このようにして本発明により製造したスチールコードの撚りピッチは18mm、撚り方向はS、小波くせのピッチは5.00mm、高さは0.48mmであった。該スチールコードと従来の筒型撚線機によるスチールコードの特性を比較した。
【0027】
まず、スチールコードの生産性は筒型撚線機に対して2倍/機械回転数であった。また、スチールコードを分解して芯ワイヤの波くせの形状安定性を観察した結果、従来品より波のピッチ及び高さともバラツキは8〜12%減少していた。これは、従来の二次元的な波くせは張力により伸びやすく形状にバラツキが生じやすいが、本発明により製造したスチールコードの芯素線は螺旋偏平状波くせであり、くせ自体に捻りが入っているため、張力に対して伸び難くなっているためと考えられる。
また、コードを一定荷重の下でゴム中で加硫した後、コードをゴム中から取り出して長手方向に分解し、コード内部へのゴム浸透度合いを目視検査したところ、従来法のコードの70〜85%に対し、本発明によるものは85〜90%とむしろ良好範囲に安定していた。これも前記の理由によるものと考えられる。
一方、コードの断面形状についても長手で向きがほぼ一定しており、従来法のコードに比べ遜色のないものであった。
【0028】
【発明の効果】
以上説明した本発明の請求項1によれば、波形形付けを施した1本の芯素線の周りに5〜8本の素線を巻き付け、コード全体の断面形状を楕円形状とした構造のスチールコードを高い生産性で製造することが可能となり、しかも、芯素線の波くせの形状もよく、コードの断面形状も安定しており、ゴム浸透性も良好な範囲に安定したこの種のスチールコードとすることができるというすぐれた効果が得られる。
請求項2によれば、請求項1の効果を比較的簡単な構造によって達成することができるというすぐれた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明によるゴム製品補強用スチールコードの製造方法および装置の概要を示
す説明図である。
【図2】
本発明における螺旋状小波くせ付け装置の一例を示す側面図である。
【図3】
本発明における螺旋状小波くせ付け装置の他例を示す側面図である。
【図4】
本発明における第1、第2偏平化装置の部分切欠側面図である。
【図5】
本発明における側素線への形付け装置の一例を示す側面図である。
【図6】
本発明によるスチールコードの中間品を模式的に示す断面図であり、(a)は
側素線を6本用いた例、(b)は側素線を8本用いた例を示す。
【図7】
本発明により得られたスチールコードを模式的に示す断面図であり、(a)は
側素線を6本用いた例、(b)は側素線を8本用いた例を示す。
【図8】
従来の筒型撚線機により製造されたスチールコードを模式的に示す断面図であ
り、(a)は側素線を6本用いた例、(b)は側素線を8本用いた例を示す。
【符号の説明】
1 芯素線
2 側素線
5 二度撚り撚り線機本体
6a〜6g サプライボビン
8 螺旋状小波くせ付け装置
9 第1偏平化装置
10,10’ 張力均一化装置
11 形付け装置
13 ボイス
14 仮撚機
54 過捻機
55 第2偏平化装置
Claims (2)
- 略二次元的な連続小波くせを有する1本の芯素線とその周りの5〜8本の側素線とを有し、コード断面形状が略同一向きの楕円形状となっているスチールコードを二度撚り撚線機で製造する方法であって、芯素線1を一つのサプライボビンより引き出し、撚り合わせ前に予め芯素線に螺旋の連続小波くせを施した後圧縮して螺旋偏平形状にする一方、5〜8本の側素線を各サプライボビンから引き出してそれぞれ形付けを施し、それら側素線を前記1本の螺旋偏平形状の芯素線の周りに集めて束とし、その素線束を仮撚機によって仮撚りした後、二度撚り撚線機本体内に導いて撚り合わせ、形付けを強化した後、コードを圧縮して最終の形状を調整した上でリールに巻取ることを特徴とするゴム製品補強用スチールコードの製造方法。
- 略二次元的な連続小波くせを有する1本の芯素線とその周りの5〜8本の側素線とを有し、コード断面形状が略同一向きの楕円形状となっているスチールコードを製造するための装置であって、巻取リール59の上流に第2偏平化装置55と過捻機54を配した二度撚り撚り線機本体5と、二度撚り撚り線機本体5の導入側から上流に向かって順次配された仮撚機14とボイス13と配線板12と、サプライボビン6aから配線板12への芯素線パスライン上に配され芯素線1に螺旋状の小波くせを連続的に形成するための螺旋状小波くせ付け装置8と、該装置の下流に配され、螺旋状小波くせを偏平化するための第1偏平化装置9と、各サプライボビン6b〜6gから配線板12への側素線パスライン上に配された形付け装置11とを備えていることを特徴とするゴム製品補強用スチールコードの製造装置。
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JP17704796A JP3568692B2 (ja) | 1996-06-17 | 1996-06-17 | ゴム製品補強用スチールコードの製造方法および装置 |
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