JP3567829B2 - ロッカーの断面構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車両の前面衝突時にフロントタイヤを介してロッカーに加わる衝撃によって、ロッカーの断面が変形することを抑制するロッカーの断面構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車等の車両は、前面衝突時にフロントタイヤが後退し、フロントピラーを後方に押圧することにより、フロントピラーを倒すようなモーメントが作用する。この結果、フロントピラーに接続されたロッカーの断面に上部から圧縮力が作用する。この圧縮力によってロッカーの断面が変形するおそれがあった。
【0003】
特に、ロッカーを構成するロッカーインナとロッカーアウタとが接合されている上下の接合部(フランジ)の位置が車幅方向にオフセットされている場合には、圧縮力に対するロッカーの剛性が低く、変形しやすかった。
【0004】
このようなロッカーの断面変形を抑制するために、様々な提案がされている。例えば、図8に示すように、ロッカー100を構成するロッカーアウタ102とロッカーインナ104の上下の接合部106、108が車幅方向にオフセットされている場合には、ロッカーアウタ102の内側にロッカーアウタリインフォースメント110を配設すると共に、フロントピラーインナ112を上部の接合部106から下部の接合部108へ直線的に、すなわち斜めに配設してロッカー100を補強するものが提案されている(以下、従来例1という)。
【0005】
また、図9に示すように、上記と同様にオフセットされている場合に、ロッカーアウタリインフォースメント110に沿ってバックヘッド114を配設することにより補強して、断面変形の抑制を図るものが提案されている(以下、従来例2という)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来例1の構造では、前面衝突によるタイヤの後退によってロッカー100に対して下方に力Fが作用した場合、フロントピラーインナ112が斜めに配設されているため、上記力Fを十分に支持することができず、図8に仮想線(2点鎖線)で示すように撓んでしまい、ロッカー100の断面変形を十分に抑制することができないという不都合があった。
【0007】
また,従来例2の構造では、ロッカーアウタリインフォースメント110に沿ってバルクヘッド114を配設することにより十分な強度を確保することはできるが、部品点数が増加し、溶接打点数が増加する等の不都合があった。
【0008】
本発明は、上記事実を考慮し、部品点数を増加させることなく、ロッカーの断面変形を抑制するロッカーの断面構造を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明では、ロッカーアウタとロッカーインナを上下で接合することにより構成されるロッカーにおいて、上部と下部の接合部が車幅方向においてオフセットされたロッカーの断面構造であって、ロッカー断面内において上部の接合部から下部の接合部に向かって直線的に配設されたフロントピラーインナにおいて、フロントピラーからロッカーに向かって下向きの力が入力される入力部に下側に突出形成された凹部を備え、前記凹部は前記ロッカー断面内のみで上部の接合部から鉛直下方に延在する垂直面を有することを特徴とする。
【0010】
請求項1記載の発明の作用について説明する。
【0011】
ロッカーアウタとロッカーインナの上部と下部の接合部が車幅方向にオフセットされた場合、フロントピラーインナを上部の接合部から下部の接合部に向かって直線的に、すなわち斜めに配設するだけでは、上部からの入力に対して十分に支持することができない。しかしながら、フロントピラーインナにおいて、フロントピラーからロッカーに向かって下向きの力が作用する入力部に下側に突出する凹部を形成したことにより、フロントピラーインナの水平断面形状を直線から略コの字型に変形させているため、断面積を増加させて強度を増加させている。したがって、ロッカーの断面変形を抑制することができる。
【0012】
すなわち、部品点数を増加させることなく、既存のフロントピラーインナの形状を一部改造することによりロッカーの断面変形を抑制することができる。
【0015】
フロントピラーの斜面の一部に下側に突出する凹部を設け、ロッカー断面内のみで上部の接合部から鉛直下方に延在する垂直面を形成したため、上部の接合部から作用する入力(圧縮力)に対して一層確実に支持することができる。
【0016】
請求項に記載の発明では、ロッカーアウタとロッカーインナを上下で接合することにより構成されるロッカーにおいて、上部と下部の接合部が車幅方向においてオフセットされたロッカーの断面構造であって、
ロッカー断面内において上部の接合部から下部の接合部に向かって直線的に配設されたフロントピラーインナにおいて、フロントピラーからロッカーに向かって下向きの力が入力される入力部に車幅方向内側に突出する凹部と車幅方向外側に突出する凹部が、前記ロッカー断面内のみで交互に3箇所以上形成され、前記車幅方向内側に突出する凹部は前記ロッカインナの縦壁と離間していることを特徴とする。
【0017】
請求項記載の発明の作用について説明する。
【0018】
ロッカーアウタとロッカーインナの上部と下部の接合部が車幅方向にオフセットされた場合、上部の接合部から下部の接合部へ斜めにフロントピラーインナを配設するだけでは、上部からの入力に対して十分に支持することができない。しかしながら、フロントピラーインナの斜面の一部に車幅方向内側に突出する凹部と車幅方向外側に突出する凹部をロッカー断面内のみで交互に3箇所以上形成したため、力(圧縮力)作用方向と垂直な断面積を増加させてフロントピラーインナの強度を増加させている。したがって、フロントピラーインナが前記力を支持してロッカーの断面変形を抑制することができる。
【0019】
なお、車幅方向内側と外側に交互に突出する凹部を2個設けるだけでは、それぞれの凹部を突出させる方向に力が作用し、平面視においてフロントピラーインナに回転モーメントが作用して、ロッカー断面を変形させる(捩じる)おそれがある。しかしながら、交互に突出する凹部を3箇所以上設けることによって上述の回転モーメントが作用することも抑制できロッカー断面の変形を、一層確実に抑制できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
先ず、本発明の第1実施形態に係るロッカー構造について図1〜図3を参照して説明する。
【0021】
図1に模式的に示すように、本実施形態ではロッカー10は、フロントピラー12の下部に連続的に設けられている。
【0022】
ロッカー10は、図2および図3に示すように、ロッカーアウタ14とロッカーインナ16とから構成されている。ロッカーアウタ14とロッカーインナ16とから構成される閉断面内には、ロッカーアウタリインフォースメント18とフロントピラーインナ20が配設されている。ロッカーアウタ14とロッカーインナ16の上部フランジ14A、16A間に、ロッカーアウタリインフォースメント18とフロントピラーインナ20の上部フランジ18A、20Aが挟持されて接合されている(以下、接合された部分を接合部22という)。また、下部フランジ14B、16B間に下部フランジ18B、20Bが挟持されて接合されている(以下、接合された部分を接合部24という)。
【0023】
ここで、ロッカーアウタ14は、車両のデザインなどの要請から形状が特定されるため、接合部22、24が車幅方向(矢印W方向)においてオフセットされている。
【0024】
また、ロッカー10の閉断面内に配設されるフロントピラーインナ20は、接合部22から接合部24に向かって直線状に配設されている。すなわち、フロントピラーインナ20は、接合部22から車幅方向内側へ傾斜して配設されている(傾斜している面を傾斜面20Cという)。このフロントピラーインナ20は、フロントピラー12からロッカー10に向かって湾曲する上部フランジのRの終端位置P(図1参照)の近傍(入力部)に、すなわち終端位置Pに対して車両前方と後方の2箇所に、傾斜面20Cから車幅方向外側(矢印W1方向)(下側)に突出する凹部26が設けられている。
【0025】
すなわち、凹部26は、図2および図3に示すように、フランジ20Aから鉛直方向下方に延在する垂直面26Aと、垂直面26Aの下端部からフランジ20Bに至る傾斜面26B、さらに、垂直面26Aの車両前後方向の端部から傾斜面20Cに至る傾斜面26C、26Dから構成される。
【0026】
このように設けられたロッカーの断面構造の作用について説明する。
【0027】
上記ロッカー10を備えた車両が前面衝突を起こした際、タイヤ40が後退してフロントピラー12を押圧する(図1、実線→2点鎖線参照)。この結果、フロントピラー12が倒れる方向にモーメントが作用し、ロッカー10の終端位置Pにおいて、ロッカー10の上部から力(圧縮力)Fが作用する。
【0028】
すなわち、ロッカー10には接合部22から鉛直下方に力(圧縮力)Fが作用するが、フロントピラーインナ20の終端位置P近傍には傾斜面20Cに凹部26が設けられているため、フロントピラーインナ20の水平断面が直線形状から略コの字型となっており、断面積が増加して剛性を向上させている。したがって、フロントピラーインナ20が入力Fを支持することができ、ロッカー10の断面変形を抑制することができる。
【0029】
また、凹部26に接合部22から鉛直下方に延在する垂直面26Aを有するため、上部からの入力F(圧縮荷重)を十分に支持することができるので、ロッカー10の断面変形を一層抑制することができる。
【0030】
次に、本発明の第2実施形態に係るロッカー構造について図4〜図7を参照して説明する。第1実施形態と同様の構成要素は同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0031】
第1実施形態の凹部に換えて終端位置Pの近傍(入力部)にフロントピラーインナ20の傾斜面20Cに、車幅方向外側に突出する凹部28、32と車幅方向内側に突出する凹部30を交互に3個形成したものである(図4、図5参照)。
【0032】
すなわち、凹部28は、図6に示すように、傾斜面20Cから車幅方向外側(矢印W1方向)に突出している。具体的には、傾斜面20Cと略平行な底面28Aと、底面28Aの上下の端部から接合部22、24に至る側面28B、28Cと、底面28Aの車両前後方向の端部から傾斜面20Cに至る側面28D、28Eとから構成されている。なお、凹部32も同様の形状である。
【0033】
一方、凹部30は、図7に示すように、傾斜面20Cから車幅方向内側(矢印W2方向)に突出している。具体的には、傾斜面20Cと略平行な底面30A、底面30Aの上下の端部から接合部22、24に至る側面30B、30C、底面28Aの車両前後方向の端部から傾斜面20Cに至る側面30D、30Eとから構成されている。
【0034】
このように形成された凹部28、30、32は終端位置Pよりも車両前方に凹部28が配置され、車両後方に凹部30、32が配置されている。
【0035】
このように構成されるロッカー構造について説明する。
【0036】
第1実施形態と同様に、前面衝突時に終端位置Pから下向きの力Fが作用した場合、接合部22から下方に力(圧縮力)が作用するが、フロントピラーインナ20の当該位置近傍に凹部28、30、32が設けられているため、フロントピラーインナ20の水平断面がコの字型となり断面積が増加して剛性が向上している。したがって、上記圧縮力を支持することができ、ロッカー10の断面変形を抑制することができる。
【0037】
また、各凹部28、30、32には、力Fによって凹部28、30、32をさらに突出させる方向に力が作用するが、傾斜面20Cに対して凹部28、30、32を交互に逆方向に突出した形状とされているため、凹部28、30、32に作用する力を相殺する。すなわち、凹部を3個以上設けることにより、凹部に作用する力によってフロントピラーインナ20に回転モーメントが作用して捩じれることも防止できる。
【0038】
ところで、フロントピラーインナ20に設ける凹部が2個では、フロントピラーインナ20に回転モーメントを発生させてしまい、上記作用を達成することができない。
【0039】
なお、本実施形態では、凹部28、30、32の突出方向をぞれぞれ車幅方向外側、内側、外側としたが、反対(車幅方向内側、外側、内側)でも良い。また、本実施形態では、凹部28、30、32の突出方向を交互に反対方向にして形成したが、これに限定されるものではない。例えば、凹部28、30、32を同一方向に形成してもロッカーの断面変形を抑制する効果がある。
【0040】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明では、ロッカーアウタとロッカーインナを上下で接合することにより構成されるロッカーにおいて、上部と下部の接合部が車幅方向においてオフセットされたロッカーの断面構造であって、ロッカー断面内において上部の接合部から下部の接合部に向かって直線的に配設されたフロントピラーインナにおいて、フロントピラーからロッカーに向かって下向きの力が入力される入力部に下側に突出形成された凹部を備え、凹部はロッカー断面内のみで上部の接合部から鉛直下方に延在する垂直面を有するため、部品点数を増加させることなく、ロッカー断面の変形を抑制することができるという優れた効果を有する。
請求項2に記載の発明では、ロッカーアウタとロッカーインナを上下で接合することにより構成されるロッカーにおいて、上部と下部の接合部が車幅方向においてオフセットされたロッカーの断面構造であって、ロッカー断面内において上部の接合部から下部の接合部に向かって直線的に配設されたフロントピラーインナにおいて、フロントピラーからロッカーに向かって下向きの力が入力される入力部に車幅方向内側に突出する凹部と車幅方向外側に突出する凹部が、ロッカー断面内のみで交互に3箇所以上形成され、車幅方向内側に突出する凹部は前記ロッカインナの縦壁と離間しているため、部品点数を増加させることなく、ロッカー断面の変形を抑制することができるという優れた効果を有する。
【0041】
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態に係るロッカー断面構造を示す概略模式図である。
【0042】
【図2】本発明の第1実施形態に係るロッカー断面構造を示す分解斜視図である。
【0043】
【図3】図1におけるA−A線断面図である。
【0044】
【図4】本発明の第2実施形態に係るロッカー断面構造を示す概略模式図である。
【0045】
【図5】本発明の第2実施形態に係るロッカー断面構造を示す分解斜視図である。
【0046】
【図6】図4におけるB−B線断面図である。
【0047】
【図7】図4におけるC−C線断面図である。
【0048】
【図8】従来技術に係るロッカー断面構造を示す断面図である。
【0049】
【図9】従来技術に係るロッカー断面構造を示す断面図である。
【0050】
【符号の説明】
10 ロッカー
12 フロントピラー
14 ロッカーアウタ
16 ロッカーインナ
20 フロントピラーインナ
22 接合部
24 接合部
26 凹部
28 凹部

Claims (2)

  1. ロッカーアウタとロッカーインナを上下で接合することにより構成されるロッカーにおいて、上部と下部の接合部が車幅方向においてオフセットされたロッカーの断面構造であって、
    ロッカー断面内において上部の接合部から下部の接合部に向かって直線的に配設されたフロントピラーインナにおいて、フロントピラーからロッカーに向かって下向きの力が入力される入力部に下側に突出形成された凹部を備え、前記凹部は前記ロッカー断面内のみで上部の接合部から鉛直下方に延在する垂直面を有することを特徴とするロッカーの断面構造。
  2. ロッカーアウタとロッカーインナを上下で接合することにより構成されるロッカーにおいて、上部と下部の接合部が車幅方向においてオフセットされたロッカーの断面構造であって、
    ロッカー断面内において上部の接合部から下部の接合部に向かって直線的に配設されたフロントピラーインナにおいて、フロントピラーからロッカーに向かって下向きの力が入力される入力部に車幅方向内側に突出する凹部と車幅方向外側に突出する凹部が、前記ロッカー断面内のみで交互に3箇所以上形成され、前記車幅方向内側に突出する凹部は前記ロッカインナの縦壁と離間していることを特徴とするロッカーの断面構造。
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