JP3567387B2 - 地下躯体の構築方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばビルの地下部等、地下躯体を構築するときに用いて好適な地下躯体の構築方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、ビルの地下部等の地下躯体を構築する方法として、地盤を掘削しつつ地下躯体を上方から下方に向けて構築していく、いわゆる逆打ち工法が多用されている。
【0003】
しかしながら、この逆打ち工法においては、柱等、上下に連続する部材を上方から下方に構築していくときに、既に形成した部分とその下方に新たにコンクリートを打設して形成する部分との接合部で品質を確保するため、コンクリートを確実に打ち継ぎしなければならず、これによって施工に手間がかかるという問題がある。
【0004】
近年、このような問題を解決するため、以下のような方法が開発されている。この方法では、図6に示すように、まず、地盤G中に構築した基礎杭1、1、…に、鉄骨からなる仮設構真柱2、2、…を建て込む。そして、この仮設構真柱2、2、…上に、ビルの地上部の基準階、例えば1階部分の床梁鉄骨3を架設し、この床梁鉄骨3上に床4を先行構築する。この後、この床4を乗入れ構台として用い、その下方において地盤を所定深さまで根切りして、その底部に地下躯体の基礎5を構築する。しかる後に、この基礎5上に柱6等を下方から上方に向けて順打ちで形成することによって、地下躯体7を構築するようになっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来の地下躯体の構築方法には、以下のような問題が存在する。
地下躯体7の内周部においては、この基礎杭1と仮設構真柱2とが同心状に位置するようになっている。ところが、図7に示すように、地下躯体7の外周部においては、基礎杭1と仮設構真柱2とが偏心した配置となることがある。この場合、図8に示すように、基礎杭1の鉄筋8と、仮設構真柱2とが干渉してしまうために前記構築方法を採用することができず、地下躯体の効率的な施工を行うことができないという問題がある。
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、地下躯体を効率よく施工することのできる地下躯体の構築方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、構築すべき地下躯体の外周側の地盤中にモルタルまたはコンクリートからなる壁体を形成するとともに、上下方向に延在する鉄骨をその上端部を上方に突出させて前記壁体中に埋設した後、前記地下躯体の上方に構築される地上躯体の基準階を構成する本設の床躯体を前記鉄骨上に架設し、該床躯体の下方にて前記壁体の内側の地盤を定められた深さまで根切りして、ここに前記地下躯体を下方から上方に向けて積み上げ構築していき、しかる後に前記床躯体に接続する地下躯体の構築方法であって、前記床躯体の両端部に、側方に突出する支持ブラケットを着脱自在に取り付けておき、該支持ブラケットを前記鉄骨上に載置することによって前記床躯体を架設し、前記地下躯体を構築した後には、前記支持ブラケットを前記床躯体から取り外すことを特徴としている。
【0008】
請求項に係る発明は、請求項1記載の地下躯体の構築方法において、前記床躯体または前記支持ブラケットを、前記鉄骨上にレベル調整部材を介して架設することを特徴としている。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る地下躯体の構築方法の実施の形態の一例を、図1ないし図5を参照して説明する。
図1に示すように、ビル10は、基礎杭11、11、…上に構築されており、地上部10Aが鉄骨鉄筋コンクリート造、地下部(地下躯体)10Bが鉄筋コンクリート造とされている。
【0010】
このようなビル10を構築するには、図2に示すように、まず、地盤G中に基礎杭11、11を所定位置に構築する。その後、構築すべきビル10の地下部10Bの外周側の地盤G中に、コンクリート造またはモルタル造の土留壁12を形成する。
これには、この土留壁12を形成すべき位置に、削孔機で多数の立坑を掘削形成して、これら立坑を周方向に連続させることによって溝を形成し、この溝内にコンクリートやソイルモルタル(以下、単にソイルモルタルと称する)14を打設する。続いて打設したソイルモルタル14中に、芯材となるH型の鉄骨15、15、…を挿入する。このとき、ソイルモルタル14の打設レベルは、構築すべきビル10の基準階、例えば1階部分の床躯体レベルよりも所定寸法下方レベルまでにとどめ、各鉄骨15の上端部をソイルモルタル14よりも上方に突出させるようにする。
このようにして、打設したソイルモルタル14が硬化することによって、ここに土留壁12が構築されることになる。
【0011】
次いで、土留壁12から突出した鉄骨15上に、ビル10の基準階である1階部分の床躯体20を架設する。
床躯体20は、ビル10の1階部分の床を支持する大梁を構成する梁鉄骨21と、所定長の柱鉄骨22、22と、前記梁鉄骨21上に形成された床23とで構築される。図3に示すように、床23は、梁鉄骨21に一体に取り付けられたプレート受け24上にデッキプレート25が架設され、該デッキプレート25上に床鉄筋26が配筋されて、さらに床コンクリート28が打設された鉄筋コンクリート造となっている。
【0012】
図2および図4に示すように、このような床躯体20の梁鉄骨21には、その両端部に接続フランジ21a、21aが一体に設けられているので、各接続フランジ21aには、水平方向外方に延出する所定長の鉄骨材からなる支持ブラケット30を例えばボルト・ナット等によって着脱自在に接続しておく。
【0013】
一方、図2および図5に示すように、この支持ブラケット30を載置する位置の各鉄骨15には、上端部にL字状のアングル材からなるレベル調整部材31を取り付ける。さらに互いに隣接する3本の鉄骨15、15、15のレベル調整部材31、31、…上に、これらが隣接する方向に延在するH型鋼からなる支持部材32を架設する。
そして、図2に示したように、この支持部材32上に前記支持ブラケット30の端部を載置することによって、床躯体20を土留壁12に埋設されている鉄骨15で支持した状態とする。このとき、レベル調整部材31の高さを適宜調整することによって、床躯体20のレベル調整が行えるようになっている。
【0014】
次いで、このようにして架設した床躯体20の下方において、土留壁12の内方の地盤Gを掘削して所定深さまで根切りしていく。
【0015】
そして、ビル10の地下部10Bを順打ち工法で構築していく。
これには、まず、基礎梁35を鉄筋コンクリート造で形成した後、地下部10Bの柱36を鉄筋コンクリート造で構築する。さらに、図3に示したように、外周壁37を鉄筋コンクリート造で構築するが、このときには、床躯体20の梁鉄骨21の周囲にもコンクリートを打設して、ビル10の基準階の梁38を同時に形成する。
このようにして、地下部10Bが構真柱を用いることなく構築される。
【0016】
地下部10Bの構築が完了した後、その外周面から突出した状態となっている支持ブラケット30を梁鉄骨21の接続フランジ21aから取り外す。さらに、支持部材32およびレベル調整部材31を撤去した後、図1に示したように、地表部まで土を埋め戻す。
【0017】
なお、ビル10の地上部10Aの構築作業は、床躯体20を乗り入れ構台として用いて、地下部10Bの構築作業と並行して行う。
【0018】
上述したビル10の地下部10Bの構築方法では、土留壁12を構築するとともに、鉄骨15、15、…をこの土留壁12に上端部を突出させて埋設した後、ビル10の地上部10Aの基準階を構成する床躯体20を、前記鉄骨15、15、…上に架設し、該床躯体20の下方において、地盤Gを所定深さまで根切りした後、地下部10Bを下方から上方に積み上げ構築していく構成となっている。このようにして、土留壁12に埋設した鉄骨15、15、…上に床躯体20を架設し、その下方で地下部10Bを構築することによって、従来のように構真柱を用いることなく、地下部10Bを構築することができる。したがって、当然のことながら地下部の外周部において構真柱と杭の鉄筋とが干渉するということは起こり得ず、したがって地下部10Bを効率よく構築することができる。もちろん、床躯体20の下方で地下部10Bを構築するに際しては、逆打ち工法ではなく順打ち工法で構築することができるので、その施工を容易かつ確実に行うことができる。さらには、地下部10Bの構築作業と並行して床躯体20上で地上部10Bの構築作業を行うこともできる。
【0019】
また、床躯体20を構成する梁鉄骨21の両端部に支持ブラケット30を取り付けておき、該支持ブラケット30を鉄骨15、15、…上に載置することによって床躯体20を架設するようにし、地下部10Bの構築後には支持ブラケット30を取り外す構成とした。このようにして、支持ブラケット30を地下部10Bの構築中のみ用い、地下部10Bの完成後に取り外すことによって、地下部10Bから側方に突出するこの支持ブラケット30が錆びて外観を損なったりすることを防ぐことができる。
【0020】
さらに、床躯体20をレベル調整部材31を介して鉄骨15、15、…上に架設する構成とした。レベル調整部材31を用いずに床躯体20を所定レベルに架設しようとすると鉄骨15、15、…を高い精度で建て込まなければならないが、前記したようにレベル調整部材31を用いることによって床躯体20の建て込みレベルを調整することができ、これによって鉄骨15、15、…を土留壁12に埋設するに際して特に高い精度が要求されることなく、したがって、床躯体20の建て込み精度を確保した上で施工の容易化を図ることができる。
【0021】
加えて、床躯体20を支持するための各支持ブラケット30を、支持部材32を介して、例えば3本の鉄骨15、15、15で支持するようにした。これにより、床躯体20からの軸力を分散させることができる。
【0022】
なお、上記実施の形態において、土留壁12をソイルモルタルで形成する構成としたが、これをコンクリート造等としてもよい。
また、地下部10Bを支持する基礎は、上記の杭基礎以外の、例えばベタ基礎等であってもよい。
さらに、床23を鉄筋コンクリート造としたが、これをハーフプレキャスト造等としてもよい。
また、地下部10Bについては、その階数は限定するものではなく、地下2階以上のものであっても、上記と全く同様にして構築することが可能である。
加えて、上記実施の形態において、地盤Gの掘削前に基礎杭11を構築する構成としたが、もちろん、床躯体20の下方において地盤Gを根切りした後に基礎杭11を施工するようにしてもよい。
また、基礎杭11、11を施工した後に土留壁12を構築する構成としたが、土留壁12を先行施工するようにしてもよい。
さらに、床躯体20の設置レベルが、地表面より下方の地盤中である例を用いたが、土留壁12に埋設した鉄骨15、15、…上で支持するのであれば、床躯体20の設置レベルは、地表面あるいはそれ以上であってもよい。
【0023】
【発明の効果】以上説明したように、請求項1に係る地下躯体の構築方法によれば、地盤中に壁体を形成するとともに、該壁体中に鉄骨を上方に突出させて埋設した後、地上躯体の基準階を構成する本設の床躯体を前記鉄骨上に架設し、該床躯体の下方にて地盤を定められた深さまで根切りして、ここに地下躯体を下方から上方に向けて積み上げ構築していく構成とした。このようにして、構築すべき壁体の外周側に形成した壁体に埋設された鉄骨上に床躯体を架設し、その下方で地下躯体を構築することによって、従来のように構真柱を用いることなく地下躯体を構築することができる。したがって、当然のことながら地下躯体の外周側においても構真柱と杭の鉄筋とが干渉するということは起こり得ず、地下躯体を効率よく構築することができる。もちろん、床躯体の下方で地下躯体を構築するに際しては、逆打ち工法ではなく、地下躯体を下方から上方に向けて順打ち工法で構築することができるので、その施工を容易かつ確実に行うことができる。さらには、地下躯体の構築作業と並行して床躯体上で地上躯体の構築作業を行うこともできる。
【0024】
また、床躯体の両端部に支持ブラケットを着脱自在に取り付けておき、該支持ブラケットを鉄骨上に載置することによって床躯体を架設し、地下躯体を構築した後に支持ブラケットを床躯体から取り外す構成とした。このようにして、支持ブラケットを地下躯体の構築中のみ用い、地下躯体の完成後に取り外すことによって、この支持ブラケットが錆びて外観を損なうことを防ぐことができる。
【0025】
請求項2に係る地下躯体の構築方法によれば、床躯体または支持ブラケットをレベル調整部材を介して鉄骨上に架設する構成とした。これにより、床躯体の建て込みレベルをレベル調整部材によって調整することができるので、床躯体を支持する鉄骨を壁体に建て込むに際して、特に高い精度が要求されることなく、したがって施工が困難になることなく床躯体の建て込み精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る地下躯体の構築方法を適用して構築した地下躯体の一例を示す立断面図である。
【図2】前記構築方法で構築途中の地下躯体を示す立断面図である。
【図3】前記構築方法において地下躯体を構築するに際し、その上方に架設する基準階の床躯体の一部を示す立断面図である。
【図4】前記床躯体の他の一部およびこれに取り付ける支持ブラケットを示す立断面図である。
【図5】前記床躯体を壁体に埋設した鉄骨上で支持した状態を示す側断面図である。
【図6】従来の地下躯体の構築方法の一例を示す立断面図である。
【図7】前記地下躯体の基礎の外周部を示す平断面図である。
【図8】図7の部分拡大図である。
【符号の説明】
10B 地下部(地下躯体)
12 土留壁(壁体)
15 鉄骨
20 床躯体
30 支持ブラケット
31 レベル調整部材
G 地盤

Claims (2)

  1. 構築すべき地下躯体の外周側の地盤中にモルタルまたはコンクリートからなる壁体を形成するとともに、上下方向に延在する鉄骨をその上端部を上方に突出させて前記壁体中に埋設した後、
    前記地下躯体の上方に構築される地上躯体の基準階を構成する本設の床躯体を前記鉄骨上に架設し、
    該床躯体の下方にて前記壁体の内側の地盤を定められた深さまで根切りして、ここに前記地下躯体を下方から上方に向けて積み上げ構築していき、
    しかる後に前記床躯体に接続する地下躯体の構築方法であって、
    前記床躯体の両端部に、側方に突出する支持ブラケットを着脱自在に取り付けておき、該支持ブラケットを前記鉄骨上に載置することによって前記床躯体を架設し、
    前記地下躯体を構築した後には、前記支持ブラケットを前記床躯体から取り外すことを特徴とする地下躯体の構築方法。
  2. 請求項1記載の地下躯体の構築方法において、
    前記床躯体または前記支持ブラケットを、前記鉄骨上にレベル調整部材を介して架設することを特徴とする地下躯体の構築方法。
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