JP3566892B2 - 化粧用塗布具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は化粧用塗布具、特にファンデーションの塗布に適した化粧用塗布具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ファンデーションを塗布するための化粧用塗布具としては、NBR発泡体や、その他合成ゴムの発泡体や或いはポリウレタン発泡体などが多用されている。
【0003】
このような化粧用塗布具は肌に対する感触や風合などの改善が求められており、種々の提案がなされている。
【0004】
例えば、発泡体表面を柔軟な合成樹脂で被覆することが実公昭57−29687号公報において提案されている。
【0005】
また、発泡体にシリコンオイルを含有させる方法が特開平6−311909号公報に提案されている。
【0006】
また、化粧料の乗りをよくするために、発泡体に植毛をしたり、或いはミクロポーラスなシートを貼合わせることも提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の提案されている方法や塗布具においては、肌に対する感触や風合などが未だ充分に改善されていない。特に、化粧料の肌への付着量などの塗布機能面と併せて考慮すると更なる改善が求められている。
【0008】
従来の市販されているパフにおいては、頬などの広い面積の部分や凹凸のあまりない箇所に化粧料を塗布するのには問題なく行うことができるが、鼻、特に小鼻の付近および目の周辺、特に目と鼻の間や瞼に化粧料を綺麗に塗布するには高度のテクニックが必要である。このような箇所は凹凸が大きく、化粧料が全く付かなかったり、塗布具(パフ)を肌に軽く接触させると、凹部、例えば小鼻のつけ根の部分はパフの表面から離れた状態であり、そのため化粧料が塗布されないまま残ってしまう。このため、後で化粧料が塗布されなかった箇所を再度化粧料を塗ろうとするが、化粧料がその箇所だけ余分に付いたりして、斑になったりするので綺麗に化粧料を塗布することが難しい。このため綺麗に化粧料を塗布するためには、化粧料を塗布する方向や、塗布する順番或いは塗布具のどこの部分を使用するかなどと細くまた高度なテクニックが必要である。塗る場合の力加減も重要であり、高度のテクニックが必要である。また朝の忙しい時間に綺麗に化粧をすることはなかなか困難なことである。
【0009】
【発明の目的】
本発明は、このような従来の問題点を解消するためになされたもので、非常にソフトで肌当りのよい感触と塗布機能性の両性能を具備した化粧用塗布具を提供することを目的としている。すなわち、マシュマロのような感触を有し、そして高度のテクニックがなくても簡単に綺麗に化粧料(ファンデーション)を塗布できるように、鼻の付近などのように凹凸が激しい部分でも、肌の表面に沿うように変形可能な塗布具を提供することを目的とする。
【0010】
更に、最近ではファンデーションの入ったコンパクトが持ち運びに便利なように薄型のものが求められている。このような薄型のコンパクトに入れるためにパフも薄いものとなっているが、あまり薄いと腰がなさすぎて化粧料を塗布し難いという問題がある。本発明は、このような点を解決し、ある程度の厚みを持たせ、圧縮され易く且つ圧縮永久歪みが少なく、薄型のコンパクトに圧縮した状態で収納することが可能であるような化粧用塗布具を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、柔軟性と低反撥弾性を有する発泡体をパフの基体としており、該基体となる発泡体が硬度100N以下の柔軟性と、反撥弾性率25%以下の低反撥弾性を有しており、常温で無加重状態のパフの厚みに対して20%の厚みになるまで加重してそのままの圧縮状態で1分間置いた後、加重を除去して元の厚みに復元するまでの時間を測定する回復性試験において、復元時間が2秒間以上であり、且つ30秒以下を要して徐々に回復し、肌に当てたときに鼻付近などの凹凸が激しい部分にも肌の凹凸に沿って形状が変化する特性を示すことを特徴とする化粧用塗布具、前記目的を達成した。
【0013】
請求項2の記載によれば、請求項1の発明において基体の少なくとも片面に微細な気泡を有するシートを貼着したものを特徴としている。
【0014】
請求項3の発明によれば、基体の少なくとも片面に柔軟な薄膜層を形成したことを特徴としている。また、請求項4の発明では、基体の少なくとも片面に接着剤を介して繊維を植毛したことを特徴としている。なお、請求項3および請求項4によれば、基体の表面を両面とも同じ状態の面としてもよいし(例えば両面に微細な気泡を有するシートを貼着した面とする)、或いは基体の表面をそれぞれ異なった状態の面としてもよい(例えば、片面は微細な気泡を有するシートを貼着した面とし、反対側の面は植毛した面とする)。
【0015】
【実施例】
以下、本発明の実施例に基き、本発明を詳細に説明する。本発明の化粧用塗布具は、主としてファンデーションを塗布するためのパフの形態をしている。そして、本発明の化粧用塗布具は柔軟性と低反撥弾性を有する発泡体を基体としており、塗布具を厚さ方向に押さえて圧縮した後に、元の厚みに戻るまでが、従来のパフのように瞬時に戻るのではなく、ゆっくりと徐々に戻るものである。
【0016】
本発明の化粧用塗布具の基体を構成する柔軟性と低反撥弾性を有する発泡体としては、JIS K 6401に基づく硬度が100N(ニュートン)以下の柔軟性と、反撥弾性率が25%以下の低反撥弾性とを有する発泡体を使用することがが好ましいが、材質は特に限定されない。
【0017】
例えば、発泡体を形成する材料としては、天然ゴム、合成ゴム、例えばジエン系(ブタジエンゴム、イソプレンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、クロロプレンゴム)、オレフィン系(エチレン・プロピレンコポリマー、エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー、塩素化ポリエチレン)、有機ケイ素化合物系(シリコーンゴム)、フッ素化合物系、ポリウレタン系(ポリエーテルタイプ、ポリエステルタイプなど)、ビニル系(アクリルゴム)あるいは合成樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレンコポリマー、ポリビニルクロライドなどが挙げられる。
【0018】
これらの中でも、ポリウレタン系発泡体が化粧用具として要求される柔軟性やボリューム感および肌へのフィット感など感性と機能性とを併有させることができるので最も適している。
【0019】
本発明の化粧用塗布具は、上述したような基体をそのまま化粧用塗布具として使用することも可能であるが、化粧用塗布具として化粧料の乗り或いは肌への感触などを考慮して基体の片面または両面に基体よりも微細な気泡を有するシートを貼着してもよい。
【0020】
この微細な気泡を有するシートとしては、基体よりも微細な気泡を有するシートであれば、前記基体形成材料と同種または異種の材料が任意に使用できる。特に、ポリウレタン系樹脂のジメチルホルムアミド溶液に気泡調節剤その他の種々の添加剤を混合した配合液を使用し、水に浸漬して凝固させる所謂湿式凝固法によって製造したポリウレタン系微細多孔質シートが好ましい。該シートの厚みは特に限定されないが2mm以下が望ましい。
【0021】
また、リキッドファンデーション用などの塗布具には、基体の表面に柔軟な皮膜を接着して貼合せて、基体の中にリキッドファンデーションが浸透しないようにすることが好ましい。ここに使用する被膜は、前記の基体に使用した合成ゴムあるいは合成樹脂のうち、柔軟性に富むものを使用できる。
【0022】
また、パウダリーファンデーション用塗布具としては、薄いシート状の発泡体やフィルムに植毛したものを前記基体に貼合せたり、或いは基体に直接接着剤を塗布して静電植毛により微細な繊維を植毛したりすることができる。
【0023】
なお、植毛の接着剤としてはアクリル系エマルジョン、NBRラテックス、ポリウレタン系エマルジョンなど、通常使用される接着剤を使用できる。また、基体に被膜やシートを貼合せる方法としては、通常の接着剤による接着またはフレーミングによって容易に貼合せることができる。貼合せのために使用する接着剤としては、一般に使用される各種のエマルジョンタイプ、溶剤タイプおよびホットメルトタイプなど任意のものを使用できる。
【0024】
化粧用塗布具の両側の表面を同じ面状態としておいてもよいし、或いは異なった面状態としておいてもよい。異なった面状態としておくことにより、2種類の化粧料(例えば、パウダリーファンデーションとリキッドファンデーション)に対応することができる。
【0025】
本発明における回復性試験(すなわち、化粧用塗布具を厚さ方向に押さえて圧縮した後に、元の厚みに戻るまでの時間を測定する試験)は下記のように行う。なお、本発明の回復性試験は、JIS K 6401 5.5「圧縮残留ひずみ試験」を参考にしているが、化粧用塗布具(パフ)の測定に適するように修正を加えた。
【0026】
1.試料:
一辺が40mm以上の正方形または直方形もしくは直径が40mm以上の円形(短径が40mm以上有する楕円形であっても差し支えない)で、厚さは7mm以上の化粧用塗布具を試料1とする。この試料1を25℃の温度で6時間以上静置する。
2.試験方法:
試料1の厚さを正確に測定した後、図1(a)示すように平滑なガラス板2の上に設置する。一方、このガラス板2上には試料1の元の厚みHの20%の高さS(すなわち、S=0.2H)のストッパー3を設けておき、試料1の上面にガラス板(シャレーを利用した)4を乗せて、その上に重錘5を乗せて荷重を順次かけてストッパー3の高さまで圧縮する(圧縮率=(H−S)/H×100で表現すると圧縮率80%)。図1(b)示すように、この状態で1分間圧縮を行った後、重錘5とともに上面のガラス板4を取り除き、元の厚みHに復元するまでの時間を測定する。測定する試料1は3点とし、その平均値で示す。
【0027】
なお、後述する実施例1における本発明の製品と市販品との比較試験においては、圧縮率80%以外に圧縮率50%、圧縮時間を1分と3分を行っている。その結果、従来品は圧縮率および圧縮時間を変化させても瞬時に回復してしまうこと、一方、本発明実施品は徐々に回復することが分った。また、回復時間と圧縮率または圧縮時間との関係では圧縮率の方が回復時間に影響が大きいことが分った。更に、化粧を実際に行う際にはパフを肌に強く押し付ける可能性があることなどをも考慮して、本発明においては化粧用塗布具の回復性を測定するに際して圧縮率80%、圧縮時間1分を採用した。
【0028】
本発明の化粧用塗布具は、上述のような回復性試験を行った場合に、その回復に掛かる時間が2秒以上を要し徐々に回復するものである。また、薄型のコンパクトに圧縮状態で収納することを考慮した場合、その元に戻る時間は2秒以上であり、なお且つ30秒以下であることが好ましい。
【0029】
本発明のように圧縮状態から元の状態に徐々に回復する化粧用塗布具は、従来からあるパフには存在しておらず、従来一般的に市販されているパフでは上述のような回復性試験を行った場合、瞬時に回復するものである。
【0030】
〔実施例1〕
ポリウレタン系発泡体“EGR−5”[株式会社イノアックコーポレーション製のクッション用ポリウレタンフォーム]を厚さ10ミリメートルにスライスして基体11として使用する(図2(a)参照)。この発泡体は硬度65N、反撥弾性率2%の低反撥性発泡体である。
【0031】
この基体11の両面の表面に、微細多孔質ポリウレタン“ルビセル”[トーヨーポリマー株式会社の製品]を1.5ミリメートル厚さにスライスしたシート12を接着剤を用いて貼合わせる(図2(b)参照)。その後、80℃にて10分間加熱乾燥し、所望する形状に裁断して上下の周縁が接合した化粧用スポンジパフ1を得た(図2(c)参照)。
【0032】
この化粧用スポンジパフ1は圧縮が極めて容易であり、前述のような回復性試験を行ったところ80%圧縮して1分後の復元時間は10秒間を要して徐々に回復する特性を示した。このパフは従来のパフには見られないマシュマロのような独特の感触と肌へのフィット性を有し、塗布機能性に優れた化粧用スポンジパフであった。
【0033】
市販の一般的なNBRパフとこの実施例のパフについて、圧縮条件、すなわち、圧縮時間(1分、3分)と圧縮率(80%圧縮、50%圧縮)を変えて、回復時間(sec)を測定したところ、表1の結果となった。
【0034】
【表1】
また、現在市販されているポリウレタン発泡体に植毛したパウダーファンデーション用パフに同様に回復性試験を行った。この市販のパフは、ポリウレタン発泡体“MF−50P”「株式会社イノアックコーポレーションの製品」を用いたものであり、この発泡体は硬度が110N、反撥弾性率が32%以上のものである。表面に接着剤により静電植毛してあるものである。この市販のポリウレタン発泡体を基体としたパフは、80%圧縮を行い1分後の回復率は0.2秒以下で瞬時に元の厚みに回復した。このものは、回復率に関して従来のNBRスポンジのパフと同様の性質を示している。
【0035】
〔実施例2〕
厚さ2mmのポリウレタン系発泡体“MF−50P”「株式会社イノアックコーポレーションの製品」に太さ0.8デニール、長さ0.8mmのナイロンパイルをアクリル系エマルジョンを接着剤として静電植毛した。
【0036】
厚さ10mmのポリウレタン系発泡体“EGR−3”「株式会社イノアックコーポレーションの製品で、硬度47N、反撥弾性率5%の低反撥性発泡体」を基体として、この両面に前記静電植毛したシートを接着剤で貼合わせた後、80℃にて10分間加熱乾燥し、所望する形状に裁断して化粧用スポンジパフを得た。
【0037】
この化粧用スポンジパフは圧縮が極めて容易であり、80%圧縮1分後の復元時間は7秒間を要して徐々に回復する特性を示した。このパフは従来のパフにはみられない極めて柔軟で、独特の感触と肌へのフィット性を有し、塗布機能性にすぐれた化粧用スポンジパフであった。
【0038】
〔実施例3〕
基体として実施例1で使用した厚さ10mmのポリウレタン系発泡体“EGR−5”「株式会社イノアックコーポレーション」を使用した。
【0039】
この発泡体片面の表面に、実施例1で使用した厚さ1.5mmにスライスした微細多孔質のポリウレタン系シート“ルビセル”「トーヨーポリマー株式会社の製品」を接着剤を用いて貼合わせた後、80℃にて10分間加熱乾燥した。
【0040】
発泡体の他の表面には、厚さ0.5mm厚さのポリウレタン系皮膜を接着剤を用いて貼合わせた。その後、80℃にて10分間加熱乾燥した。
【0041】
次いで、このようにして得られた発泡体を所望の形状に裁断して、化粧用スポンジパフを得た。
【0042】
この化粧用スポンジパフは圧縮が極めて容易であり、80%圧縮1分後の復元時間は12秒間を要して徐々に回復する特性を示し、従来のパフにはみられないマシュマロのような独特の感触と肌へのフィット性を有し、塗布機能性にすぐれた化粧用スポンジパフであった。
【0043】
【発明の効果】
本発明の化粧用塗布具は非常に硬度が低く柔軟なもので且つ反撥弾性率が低い発泡体を基体として使用しており、パフ(塗布具)となった形状において、その圧縮した後の回復が徐々に回復する性質を示すものであり、マシュマロのような極めてソフトな感触であり、しかも肌に当てたときに肌の凹凸に沿ってその形状が変化する特性を示している。そのため小鼻の付近などのように凹凸の激しい部分にも、よくその形状に沿い化粧料を肌に乗せることが容易にでき、化粧料を塗布するという機能性にも優れたものである。
【0044】
特に、その表面にミクロポーラスなシートを貼ったりすることにより基体の柔軟性を維持するとともに、化粧料を塗布具に移すことや肌へ移らせることが適切にできるようになるとともに、基体の表面も保護する役目を行うことができる。
また、従来のパフでは圧縮してもすぐに戻る性質があるため、薄型のコンパクトに入れるにはパフ自体も薄くしなければならなかった。しかし、本発明の塗布具によれば、圧縮が容易にできるので薄型のコンパクトに収納することが容易にできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明における回復性試験の方法を示す概略図であり、(a)は重錘を乗せる前の状態を示す正面図であり、(b)は重錘を乗せたときの状態を示す断面図であり、ガラスおよびストッパーを断面として表した。
【図2】(a)〜(c)は実施例1のパフを製造する手順を順番に示す断面図である。
【符号の説明】
1 化粧用塗布具
2 ガラス
3 ストッパー
4 ガラス
5 重錘
11 基体
12 微細孔を有するシート
13 接着剤
Claims (4)
- 柔軟性と低反撥弾性を有する発泡体をパフの基体としており、該基体となる発泡体が硬度100N以下の柔軟性と、反撥弾性率25%以下の低反撥弾性を有しており、常温で無加重状態のパフの厚みに対して20%の厚みになるまで加重してそのままの圧縮状態で1分間置いた後、加重を除去して元の厚みに復元するまでの時間を測定する回復性試験において、復元時間が2秒間以上であり、且つ30秒以下を要して徐々に回復し、肌に当てたときに鼻付近などの凹凸が激しい部分にも肌の凹凸に沿って形状が変化する特性を示すことを特徴とする化粧用塗布具。
- 基体の少なくとも片面に、該基体よりも微細な気泡を有するシートを積層したことを特徴とする請求項1記載の化粧用塗布具。
- 基体の少なくとも片面に、柔軟な薄膜層を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載の化粧用塗布具。
- 基体の少なくとも片面に、接着剤を介して微細繊維を静電植毛したことを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の化粧用塗布具。
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