JP3566735B2 - Al合金板の点溶接電極用合金 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、自動車産業等で使用されるアルミ合金板を点溶接する際の長寿命の電極用銅合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
アルミ合金板の点溶接における電極の寿命低下は、自動車生産において大きな問題であり、長寿命の点溶接電極が要望されている。この点溶接電極の寿命を改善する手段として、電極材の導電率、熱伝導率、耐熱性等の特性向上が必要と考えられる。例えば、Cu中に 0.8wt%程度のCrを含有させ、析出硬化を利用して強化させたCu−Cr合金、或いは、Cu中にAl2 O3 やTiO2 等の酸化物粒子を約1wt%程度添加し、分散させた粒子分散型Cu合金が使用されている。
【0003】
しかしながら、これらの合金は上記要請を十分満足するまでには至っていない。殊に、アルミ合金板の点溶接において、AlとCuが反応して、脆い合金層が形成され、この合金層が剥離していく現象が生じる為、電極の消耗が著しくなるという問題がクローズアップされている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
そこで、このような現象を解明するために、Al合金板と1%Cr−Cu合金電極(キャップチップタイプDR型)の溶接状況を調べた。先ず、電極の温度分布を調べるために断面硬さ分布を測定した結果、電極先端において極表層の数10μmだけが軟化し、内部は連続打点前と同等であることが確認された。この結果を基に発熱温度を推定すると 500〜600 ℃となる。
【0005】
また、電極表面にはAlとCuの反応層が検出され、一方、電極に付着したAl合金層においてAl−Cu,Al−Crの反応層が検出されている(特にAlとCuの反応が顕著)。この反応層から、Al−Cu系の包晶反応温度(548℃以上)、Al中へのCu拡散、Al中へのCr拡散性から発熱温度を推定すると550 〜600 ℃となる。以上のことを踏まえて、電極先端部の発熱温度は550〜600 ℃と推定された。
【0006】
また、電極表面を詳細に調査すると電極表面の粒界及び浮遊Cr粒子が、ピックアップ時にAl合金板側に引き剥されて電極表面から脱離しているのが認められる。
【0007】
以上の結果、Al合金板の点溶接において、電極表面が 550〜600 ℃に発熱して、AlとCu及びCrとの反応が進行して反応層が生成され、溶接終了時のピックアップにより、この反応層が電極表面の粒界及び浮遊Cr粒子を引き剥す形で脱落して表面の損耗が進行するものと推定された。
【0008】
本発明はこれに鑑み検討の結果、溶接電極として要求される熱伝導性、導電性が良好で高温強度、高温耐熱性に優れた長寿命のAl合金板の点溶接電極用合金を開発したものである。
【0009】
即ち、本発明の第1の合金は、Cr: 5.0 〜 20wt% と、重量比で0.05≦O 2 /Cr≦5の酸素を含有し、残部Cuと不可避的不純物からなる銅合金のインゴットを溶製後、熱間加工又は冷間加工し、次に 800 〜 1050 ℃で溶体化処理を行った後、 400 〜 550 ℃で時効処理を行うことにより得られ、かつ晶出Crの粒径が 0.1 〜 70 μmであって、マトリックスの結晶粒径が 0.1 〜 50 μ m であることを特徴とするものである。
【0010】
また本発明の第2の合金はCr: 5.0 〜 20wt% を含有し、さらにSi,P,Mg,Co,Ag,Ni,Be,Al,Sn,Zrの内の 1 種又は 2 種以上をそれぞれ 3wt% 以下と、重量比で0.05≦O 2 /Cr≦5の酸素を含有し、残部Cuと不可避的不純物からなる銅合金のインゴットを溶製後、熱間加工又は冷間加工し、次に 800 〜 1050 ℃で溶体化処理を行った後、 400 〜 550 ℃で時効処理を行うことにより得られ、かつ晶出Crの粒径が 0.1 〜 70 μmであって、マトリックスの結晶粒径が 0.1 〜 50 μ m であることを特徴とするものである。
【0011】
また本発明の電極は上記高強度、導電性銅合金の棒状電極の外周を、内径/外径の比が 0.4〜0.7 となる銅又は銅合金外皮で被覆してもよい。
【0012】
さらに本発明銅合金の製造方法は、インゴットを溶製後、熱間加工又は冷間加工し、次に800〜1050℃で溶体化処理を行った後、400〜550℃で時効処理を行うものである。
【0013】
【作用】
本発明の電極用銅合金は上記の如く、Cr:5.0〜20%と、重量比で0.05≦O 2 /Cr≦5の酸素を含有し残部Cuと不可避的不純物からなるものを主な構成要素としており、晶出したCrが溶接熱により電極表面で酸化して被溶接材であるアルミ又はアルミ合金板との反応を防止し、溶接中に酸化物が離脱しても、溶接熱で電極表面のCrが酸化して再生機能を有することに特徴がある。
【0014】
そして第1の本発明合金はCr:5.0〜20%と、重量比で0.05≦O 2 /Cr≦5の酸素を含むCu基合金であり、これはCrがCuマトリックス中に晶出して分散されていれば、熱伝導性及び電気伝導性を余り低下させずに高強度と高温耐熱性を持つことが可能であることを見いだしたからである。
【0015】
即ち、本来Cu−Cr合金のCr固溶限界量は 0.8%で、それ以上添加しても析出硬化には寄与しないものである。そこで、本発明合金はCrを固溶限以上に添加し、Cuマトリックス中にCrを晶出分散させることにより、このCrが溶接熱により電極表面で酸化するので、表面においてCu−Cr析出硬化型合金のマトリックス中にCr酸化物が分散した複合材料となっているものである。従って、電極と被溶接材であるアルミ又はアルミ合金板との反応を防止し、溶接中に酸化物が脱離しても溶接熱で電極表面のCrが酸化して再生機能を有するものである。
【0016】
しかして、Crの添加量を5.0〜20%と限定したのは、Cr:5.0%未満では析出硬化にだけ使用され、Cr酸化物形成量が微量のため再生機能の効果が不十分となり、20%を超えるとCu本来の熱伝導率と導電率を低下させるためてある。尚、この合金は必要に応じて酸素雰囲気下で熱処理を施しても良い。
【0017】
次に第2の本発明合金であるCr:5.0〜20%と、重量比で0.05≦O 2 /Cr≦5の酸素を含有し、さらにSi,P,Mg,Co,Ag,Ni,Be,Al,Sn,Zrの内1種又は2種以上をそれぞれ3%以下含有したCu基合金における成分組成範囲を限定した理由を以下に説明する。
【0018】
・Cr:上記と同様の理由による。
【0019】
・Si:強度向上に寄与する元素であり、3%を越えると導電率が低下すると共に熱間加工性が悪くなる。0.01%以上含有することが好ましい。
【0020】
・P:焼き入れ処理を容易にする効果があり、3%を越えると粒界に偏析して耐食性を低下させると同時に導電率が悪くなる。0.01%以上含有することが好ましい。
【0021】
・Mg:不可避的に混入してくるSを、安定したMgとの化合物MgSとして母相中に固定し熱間加工性を向上させる元素である。しかして3%を越えると鋳塊中にCu+MgCu2 の共晶を生成し、 722℃以上の温度に加熱すると割れを生じ、熱間加工性が劣化する。0.01%以上含有することが好ましい。
【0022】
・Co:導電率の向上と温度上昇に伴う結晶粒の粗大化を防止して耐熱性にも寄与する。しかして3%を越えると特性的に大きな変化が無く経済的に劣る。
0.01%以上含有することが好ましい。
【0023】
・Ag:スパーク発生を防止する効果があり、3%を越えると導電率の低下と融点の低下が生じる。0.01%以上含有することが好ましい。
【0024】
・Ni:強度向上の効果があり、3%を越えると導電率の低下をもたらす。0.01 %以上含有することが好ましい。
【0025】
・Be:強度向上の効果があり、3%を越えると強度向上に大きな変化がなく経済的に劣る。0.01%含有することが好ましい。
【0026】
・Al:電極母材の酸化を抑制する効果があり、3%を越えると導電率が低下して電極寿命が短くなる。0.01%以上含有することが好ましい。
【0027】
・Sn:Cu−Cr合金基地中に固溶し、高温強度を改善し電極の寿命を向上する効果がある。しかして3%を越えると上記効果に大きな変化がなく導電率が低下する。0.01%以上含有することか好ましい。
【0028】
・Zr:Cu中に微細なCu3 Zrとして析出し強度の向上に寄与し、耐熱性の向上にも寄与する。しかして3%を越えると強度向上に大きな変化がなく導電率の低下を生じる。0.01%以上含有することが好ましい。
【0029】
次に、上記第1又は第2の本発明合金における重量比で0.05≦O2/Cr≦5の酸素を含むCu基合金は、Cu−Cr析出硬化型合金をマトリックスとして、Cr酸化物とCr晶出物を分散させたもので、この複合材料は鋳造滋に酸素量を制御して作るものであり、その後必要に応じて酸素雰囲気下で熱処理を行うものである。
【0030】
しかして、酸素含有量として重量比で0.05≦O2/Cr≦5と限定したのは、O2/Crが5を超えるとCr晶出物が全て酸化物になると共にCu母材及びCu−Cr析出物の酸化を生じるため再生機能特性の劣化を生じるからである。好ましくは、O2/Cr≧0.05を満足する酸素を含有するのがよい。
【0031】
次に、上記第1〜第2の本発明合金の合金は、さらに晶出Crの粒径が0.1〜70μmであるCu基合金であるが、その晶出Crの粒径を0.1〜70μmと限定したのは、この範囲外ではCrによる再生機能特性が不十分であり点溶接における電極の長寿命化の効果が認められないためである。
【0032】
次に、上記第1〜第2の本発明合金は、さらにマトリックスの結晶粒径が0.1〜50μmであるCu基合金であるが、結晶粒径をこのように限定したのは、0.1μm未満の結晶粒径は製造上困難であり、50μmを越えるとマトリックスがAlと反応する面積が増えると共に結晶粒が点溶接時にピックアップされる現象が生じて電極の消耗が進むためである。
【0033】
上記本発明銅合金はそのままでも点溶接用電極の形状に加工して用いることができるものでものであるが、本発明はさらに上記本発明の高強度、導電性銅合金の棒状電極の外周を、内径/外径の比が0.4〜0.7となる銅又は銅合金外皮で被覆した電極をとしてもよい。
【0034】
従来の電極においては溶接時の打点中に、その先端に割れが発生することがあり、このため被溶接材であるアルミ又はアルミ合金板の外観が損なわれしまう問題がある。このような割れが発生した電極を用いても溶接上問題はないが、外観を良好にするためには、電極の先端を再研磨して割れ深さ分だけ除去する必要がある。然し、工数が増えるだけでなく、電極そのものの寿命が短くなってしまうために、耐割れ性及び打点寿命も優れたものにする必要がある。
【0035】
そこで、種々検討を重ねた結果、良好な耐熱性及び耐溶着姓を有しつつ先端割れのない打点寿命の長い抵抗溶接電極とするためには、内部電極の径と外皮層の厚さをコントロールしなければならないことが判った。そして、外皮層である銅又は銅合金の内径/外径の比を 0.4〜0.7 となるように被覆すれば良いことを知見したものである。しかして、内径/外径の比が 0.4未満では外皮層が被溶接材であるアルミ又はアルミ合金板と接触するため、外皮層と被溶接材のアルミ又はアルミ合金板との反応が進み、溶着が生じたり、ナゲット形状が不安定になる。又、内径/外径の比が 0.7を越えると熱伝導性の低下及び外皮層による内部電極の保護効果が弱くなり割れが発生し易くなる。
【0036】
次に、上記本発明合金の製造方法は、インゴットを溶接後、熱間加工又は冷間加工し、次に 800〜1050℃で溶体化処理を行った後、 400〜550 ℃で時効処理する製造方法であるが、その溶製方法及び条件は特に限定するものではない。溶体化処理は 800℃未満では、その後の時効処理をしても所要の強度が得られず、1050℃を越える温度では、結晶粒が粗大化するため好ましくない。時効処理は、 400℃未満では、マトリックスの析出硬化が不十分で所要の硬度が得られず、 550℃を越えると過時効となり所要の硬度が得られない。
この発明による製造方法では、溶体化処理後の結晶粒は極めて微細で均一となり、次の時効処理を加えることにより極めて安定した強度の得られる効果がある。
【0037】
【実施例】
以下本発明について実施例と参考例および比較例で説明する。
【0038】
表1に示す各組成の合金を用いて、それぞれ下記の方法により直径16mm、キャップチップタイプDR型の点溶接用電極を作製した。
【0039】
参考例1;高周波溶解炉を用いて大気中で溶製したCu− 1.5 %Cr合金の鋳塊を 900 ℃で熱間押出しにより直径 16mm の棒材とした後、 1000 ℃の溶体化処理を行い、次に 450 ℃で時効処理行った。
【0040】
参考例2;参考例1と同様にしてCu−7%Cr合金の直径16mmの棒材とした。
【0041】
参考例3;高周波溶解炉を用いて窒素雰囲気中で溶製したCu−14%Cr合金の鋳塊を冷間引き抜き加工により直径16mmの棒材とした後、1000℃の溶体化処理を行い、次に 450℃で時効処理行った。
【0042】
参考例4;参考例3と同様にしてCu−20%Cr合金を直径16mmの棒材とした。
【0043】
参考例5;ガスアトマイズ法で作製したCu−14%Cr合金の急冷凝固粉を
800 ℃でHIP処理した後、 700℃で熱間押出しにより直径16mmの棒材とし、次に1000℃の溶体化処理を行った後、 450℃で時効処理を行った。
【0044】
参考例6;参考例5と同様にしてCu−20%Cr合金を直径16mmの棒材とした。
【0045】
比較例1;参考例1と同様にしてCu− 0.8%Cr合金を直径16mmの棒材とした。
【0046】
比較例2;参考例3と同様にしてCu−25%Cr合金を直径16mmの棒材とした。
【0047】
上記方法で作製した電極を用い、厚さ1mmのアルミ合金板(JIS,AA5052;Al− 2.5%Mg−0.25%Cr)について、連続点溶接を行い、電極の寿命(打点数)を調べた。その結果を表1に併記した。尚、溶接条件としては、条件1(溶接電流2KA、加圧力200kgf、通電時間5サイクル)と条件2(溶接電流23KA、加圧力300kgf、通電時間5サイクル)で行った。電極寿命の評価はナゲット径を測定し、直径 4.5mmをきる時点を寿命とした。
また材料特性として各電極の初期硬さと導電率を測定した。
【0048】
【表1】
・表中、硬さ(室温):Hv5kg 、EC(導電率):%IACS
【0049】
表1から参考例による電極は、Crの含有量が本発明の範囲から外れる比較例に比べて倍以上の寿命を有していることが判る。
【0050】
上記参考例2の合金を用いた電極について、溶接条件2で4000連続打点後の断面組織を図1及び図2に示す。
図1及び図2によればAl合金板との反応層(1)中にはCuはほとんど含まれていないことが判る。これはクロム銅合金のマトリックス(2)中に晶出分散したCr(3)がアルミ合金板とマトリックス(2)との反応を抑制しているからである。
これ対して比較例1のクロム銅合金を用いた電極の、条件2で1600連続打点後の断面組織を図3及び図4に示すが、これらによればAl合金板との反応層
(1′)中にCuが含まれており、クロム銅合金のマトリックス(2)とAl合金板とが容易に反応することが判る。
従って本発明合金を用いれば、電極表面とAl合金板との反応は緩やかであって電極表面の脱離の進行はより緩慢であるといえる。
【0051】
また、参考例2と比較例1の溶接条件2における連続打点回数と電極先端径の関係を調べると図5のようになっており、参考例2は電極先端の脱離が少なく有効であることが判る。
【0052】
さらに、参考例2と比較例1の高温硬さ特性を調べた結果を図6に示す。この結果を見ると参考例2のマトリックスはCu− 0.8%Cr合金と推定され、電極の寿命に好ましい影響を与える第1の作用効果は反応抑制と考えられる。
【0053】
上記の結果を基に、さらに参考例2の合金について電極寿命に影響を与える各種因子について検討した結果を以下に示す。
【0054】
参考例7;高周波溶解炉を用いて大気中でSiを 0.005%添加した溶製した
Cu−7%Cr− 0.005%Si合金の鋳塊を熱間押出しにより直径16mmの棒材とした後、1000℃の溶体化処理を行い、次に 450℃で時効処理を行った。
【0055】
参考例8;参考例7と同様にしてSiを0.01%添加したCu−7%−0.01%Si合金を直径16mmの棒材とした。
【0056】
参考例9;参考例7と同様にしてSiを3%添加したCu−7%Cr−3%Si合金を直径16mmの棒材とした。
【0057】
参考例10;参考例7と同様にしてNiを 0.005%添加したCu−7%Cr−0.005 %Ni合金を直径16mmの棒材とした。
【0058】
参考例11;参考例7と同様にしてNiを0.01%添加したCu−7%Cr−
0.01%Ni合金を直径16mmの棒材とした。
【0059】
参考例12;参考例7と同様にしてNiを3%添加したCu−7%Cr−3%Ni合金を直径16mmの棒材とした。
【0060】
参考例13;参考例7と同様にしてSnを 0.005%添加したCu−7%Cr−0.005 %Sn合金を直径16mmの棒材とした。
【0061】
参考例14;参考例7と同様にしてSnを0.01%添加したCu−7%Cr−
0.01%Sn合金を直径16mmの棒材とした。
【0062】
参考例15;参考例7と同様にしてSnを3%添加したCu−7%Cr−3%Sn合金を直径16mmの棒材とした。
【0063】
比較例3;参考例7と同様にしてSiを4%添加したCu−7%Cr−4%
Si合金を直径16mmの棒材とした。
【0064】
比較例4;参考例7と同様にしてNiを4%添加したCu−7%Cr−4%
Ni合金を直径16mmの棒材とした。
【0065】
比較例5;参考例7と同様にしてSnを4%添加したCu−7%Cr−4%
Sn合金を直径16mmの棒材とした。
【0066】
以上の各合金から得られた電極を用いて、材料特性としてその硬さと導電率を測定し、さらに実施例1の条件2にて同様の連続点溶接を行い電極寿命を比較した。これらの結果を表2に示した。
【0067】
【表2】
・表中、硬さ(室温):Hv5kgf,EC(導電率):%IACS
【0068】
表2によれば、参考例による電極はいずれも副成分添加元素の含有量の多すぎる比較例による電極より寿命は大きいといえる。
【0069】
参考例16;高周波溶解炉を用いて酸素雰囲気量をコントロールしてCu−7%Cr−0.007 %O2 合金の鋳塊を作製し、冷間スウェージング加工により直径16mmの棒材とした。
【0070】
本発明例17;参考例16と同様にしてCu−7%Cr−0.35%O2 合金を直径16mmの棒材とした。
【0071】
本発明例18;参考例16と同様にしてCu−7%Cr−10%O2 合金を直径16mmの棒材とした。
【0072】
本発明例19;参考例16と同様にしてCu−7%Cr−20%O2 合金を直径16mmの棒材とした。
【0073】
本発明例20;参考例16と同様にしてCu−7%Cr−35%O2 合金を直径16mmの棒材とした。
【0074】
本発明例21;参考例2と同様にして作製したCu−7%Cr合金電極の接触面中央部に、O2 アシストガスを吹き付けながらレーザーを照射、直径5mm、深さ2mmの急冷凝固部(Cu−7%Cr−20%O2 )を形成した。
【0075】
本発明例22;本発明例21と同様にして点溶接電極の接触面中央に、直径5mm、深さ2mmの急冷凝固部(Cu−7%Cr−35%O2 )を形成した。
【0076】
参考例23;参考例16と同様にしてCu−7%Cr−0.003 %O2 合金を直径16mmの棒材とした。
【0077】
比較例6;参考例16と同様にしてCu−7%Cr−40%O2 合金を直径16mmの棒材とした。
【0078】
以上の各合金から得られた電極を用いて、それらの材料特性及び実施例1の条件2にて同様の連続点溶接を行って求めた電極寿命を測定して、その結果を表3に示した。なお表中にO2 /Crの含有量比も示した。
【0079】
【表3】
・表中、硬さ(室温);Hv5kgf、EC(導電率):%IACS
【0080】
表3によれば本発明例による電極は、O2 の含有量の多すぎる比較例によるものに比べて大幅に寿命が向上することが判る。
【0081】
参考例24;高周波溶解炉を用いて窒素雰囲気中で溶解したCu−7%Cr合金溶湯を鋳造時に冷却速度をコントロールしてCr晶出物のサイズを 0.1〜1μmにした鋳塊を冷間スウェージング加工して直径16mmの棒材とした後、1000℃で溶体化処理、 450℃で時効処理を行った。
【0082】
参考例25;参考例24と同様にしてCr晶出物のサイズを1〜10μmとした
Cu−7%Cr合金を直径16mmの棒材とした。
【0083】
参考例26;参考例24と同様にしてCr晶出物のサイズを10〜40μmとした
Cu−7%Cr合金を直径16mmの棒材とした。
【0084】
参考例27;参考例24と同様にしてCr晶出物のサイズを40〜70μmとした
Cu−7%Cr合金を直径16mmの棒材とした。
【0085】
比較例7;参考例24と同様にしてCr晶出物のサイズを 0.1μm未満とした
Cu−7%Cr合金を直径16mmの棒材とした。
【0086】
比較例8;参考例24と同様にしてCr晶出物のサイズを70μm超としたCu−7%Cr合金を直径16mmの棒材とした。
【0087】
以上の合金から得られた電極を用いて、上記と同様に材料特性と電極寿命を測定した結果を表4に示す。
【0088】
【表4】
・表中、硬さ(室温):Hv5kgf、EC(導電率):%IACS
【0089】
表4によれば本発明の参考例による電極はいずれも、比較例においてCr晶出物の大きさが本発明の範囲外であるものに比べて寿命が大きいことが明らかである。
【0090】
参考例28;高周波溶解炉を用いて窒素雰囲気中で溶解したCu−7%Cr合金の溶湯を鋳造時に冷却速度をコントロールしてCr晶出物のサイズを1〜10μmとした鋳塊を冷間スウェージング加工した後、1000℃で溶体化処理し、次に冷間加工率と時効処理条件を適正に組み合わせてマトリックスの結晶粒径が 0.1〜1μmの直径16mmの棒材とした。
【0091】
参考例29;参考例28と同様にしてマトリックスの結晶粒径が1〜10μmの直径16mmのCu−7%Cr合金の棒材を作製した。
【0092】
参考例30;参考例28と同様にしてマトリックスの結晶粒径が10〜30μmの直径16mmのCu−7%Cr合金棒材を作製した。
【0093】
参考例31;参考例28と同様にしてマトリックスの結晶粒径が30〜50μmの直径16mmのCu−7%Cr合金棒を作製した。
【0094】
比較例9;参考例28と同様にしてマトリックスの結晶粒径が70μmの直径16mmのCu−7%Cr合金棒材を作製した。
【0095】
以上の合金から得られた電極を用いて上記と同様に材料特性と電極寿命を測定した結果を表5に示す。
【0096】
【表5】
・表中、硬さ(室温):Hv5kgf、EC(導電率):%IACS
【0097】
表5より、本発明参考例による合金の電極は、マトリックスの結晶粒径が大きすぎる比較例によるものに比べて電極寿命が大きいことが判る。
【0098】
表6に示す組成の内部電極用銅合金と外皮を用い、さらに外皮の内径/外径比を表のように調整した電極を下記の方法により作製した。
【0099】
参考例33:参考例2と同様にして作製した内部電極組成Cu−7%Cr合金ビレットと銅製パイプ(外皮)を用い、本発明例32と同様にして、外皮の内径/外径の比が0.55の直径16mmの棒状電極に加工した。
【0100】
参考例34:参考例3と同様にして作製した内部電極組成Cu−14%Cr合金ビレットと銅製パイプ(外皮)を用い、本発明例32と同様にして、外皮の内径/外径の比が0.55の直径16mmの棒状電極に加工した。
【0101】
参考例35:参考例4と同様にして作製した内部電極組成Cu−20%Cr合金ビレットと銅製パイプ(外皮)を用い、本発明例32と同様にして、外皮の内径/外径の比が0.55の直径16mmの棒状電極に加工した。
【0102】
参考例36:ガスアトマイズ法により、内部電極組成Cu−7%Cr合金の急冷凝固粉を、外皮である銅製のパイプに充填し、 800℃でHIP(熱間静水圧加圧)処理した後、 700℃で熱間押出しにより、外皮の内径/外径の比が0.55の直径16mmの棒材とした後、1000℃の溶体化処理、 450℃の時効処理を行った。
【0103】
参考例37:内部電極組成Cu−20%Cr合金の粉末を用い、本発明例36と同様にして、外皮の内径/外径の比が0.55の直径16mmの棒状電極に加工した。
【0104】
参考例38:参考例16と同様にしてCu−7%Cr−5%O2 (O2 /Cr=0.71)のビレットを作製した後、外皮である銅製パイプに挿入し、 700℃で熱間押出により、外皮の内径/外径の比が0.55の直径16mmの棒材とした後、1000℃の溶体化処理、 450℃の時効処理を行った。
【0105】
参考例39:参考例16と同様にしてCu−7%Cr−15%O2 (O2 /Cr=2.1)のビレットを作製した後、本発明例38と同様にして、外皮の内径/外径の比が0.55の直径16mmの棒状電極に加工した。
【0106】
参考例40:内部電極組成Cu−7%Cr合金の粉末をアトライターで酸素雰囲気中で調整してCu−7%Cr−30%O2 (O2 /Cr=4.3)粉末とし、外皮となる銅製のパイプに充填して 800℃でHIP処理した後、 700℃で熱間押出しにより、外皮の内径/外径の比が0.55の直径16mmの棒材とした後、1000℃で溶体化処理、 450℃で時効処理を行った。
【0107】
参考例41:参考例2と同様にしてCu−7%Cr合金のビレットを作製した後、これを外皮である銅製のパイプに挿入し、 700℃で熱間押出しにより、外皮の内径/外径の比が 0.4の直径16mmの棒材とした。その後、1000℃で溶体化処理、 450℃の時効処理を行った。
【0108】
参考例42:参考例41と同様にして、外皮の内径/外径の比が 0.7の直径16mmの棒状電極に加工した。
【0109】
参考例43:参考例2と同様にして内部電極組成Cu−7%Cr合金のビレットを作製した後、外皮であるCu− 0.8%Cr合金のパイプに挿入し、 700℃で熱間押出しにより、外皮の内径/外径の比が0.55の直径16mmの棒材とした。その後、1000℃で溶体化処理、 450℃で時効処理を行った。
【0110】
比較例10:溶製法で内部電極組成Cu− 0.8%Cr合金のビレットを作製した後、外皮である銅製のパイプに挿入し、 700℃で熱間押出しにより、外皮の内径/外径の比が0.55の直径16mmの棒材とした。その後、1000℃で溶体化処理、 450℃で時効処理を行った。
【0111】
比較例11:高周波溶解炉を用いて窒素雰囲気中で溶製したCu−25%Cr合金のビレットを作製した後、外皮である銅製のパイプに挿入し、 700℃で熱間押出しにより、外皮の内径/外径の比が0.55の直径16mmの棒材とした。その後、1000℃で溶体化処理、 450℃で時効処理を行った。
【0112】
比較例12:内部電極組成Cu−7%Cr−40%O2 (O2 /Cr=5.7)の粉末を用い、本発明例40と同様にして、外皮の内径/外径の比が0.55の直径16mmの棒材電極に加工した。
【0113】
比較例13:参考例41と同様にして外皮の内径/外径の比が 0.3の直径16mmの棒状電極に加工した。
【0114】
比較例14:参考例41と同様にして外皮の内径/外径の比が 0.9の直径16mmの棒状電極に加工した。
【0115】
以上の内部電極合金と外皮とで構成された電極を用いて、実施例1で示した条件1及び条件2にて同様の連続点溶接を行い、その結果を表6に併記した。
【0116】
【表6】
【0117】
表6によれば、本発明参考例の電極は、比較例によるものに比べて明らかに電極寿命は良好である。
【0118】
参考例44;高周波溶解炉を用いて大気中で溶製したCu−7%Cr合金の鋳塊を 900℃で熱間押出しにより直径16mmの棒材とした後、 800℃の溶体化処理を行い、次に 400℃の時効処理を行った。
【0119】
参考例45:参考例44と同様にして棒材とした後、 800℃の溶体化処理を行い、次に 450℃の時効処理を行った。
【0120】
参考例46:参考例44と同様にして棒材とした後、 800℃の溶体化処理を行い、次に 550℃の時効処理を行った。
【0121】
参考例47:参考例44と同様にして棒材とした後、 950℃の溶体化処理を行い、次に 400℃の時効処理を行った。
【0122】
参考例48:参考例44と同様にして棒材とした後、 950℃の溶体化処理を行い、次に 450℃の時効処理を行った。
【0123】
参考例49:参考例44と同様にして棒材とした後、 950℃の溶体化処理を行い、次に 550℃の時効処理を行った。
【0124】
参考例50:参考例44と同様にして棒材とした後、1050℃の溶体化処理を行い、次に 400℃の時効処理を行った。
【0125】
参考例51:参考例44と同様にして棒材とした後、1050℃の溶体化処理を行い、次に 450℃の時効処理を行った。
【0126】
参考例52:参考例44と同様にして棒材とした後、1050℃の溶体化処理を行い、次に 550℃の時効処理を行った。
【0127】
参考例53:高周波溶解炉を用いて大気中で溶製したCu−7%Cr合金の鋳塊を冷間で引き抜き加工を行い、直径16mmの棒材とした後、 950℃の溶体化処理を行い、次に 400℃の時効処理を行った。
【0128】
参考例54:参考例53と同様にして棒材とした後、 950℃の溶体化処理を行い、次に 450℃の時効処理を行った。
【0129】
参考例55:参考例53と同様にして棒材とした後、 950℃の溶体化処理を行い、次に 550℃の時効処理を行った。
【0130】
比較例15:高周波溶解炉を用いて大気中で溶製したCu−7%Cr合金の鋳塊を900 ℃で熱間押出しにより、直径16mmの棒材とした後、 750℃の溶体化処理を行い、次に 450℃の時効処理を行った。
【0131】
比較例16:比較例15と同様にして棒材とした後、1100℃の溶体化処理を行い、次に時効処理を 450℃で行った。
【0132】
比較例17:比較例15と同様にして棒材とした後、 950℃の溶体化処理を行い、次に 350℃の時効処理を行った。
【0133】
比較例18:比較例15と同様にして棒材とした後、 950℃の溶体化処理を行い、次に 600℃の時効処理を行った。
【0134】
以上の合金から得られた電極を用いて、上記と同様に材料特性と電極寿命を測定した結果を表7に示す。
【0135】
【表7】
【0136】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば電極寿命が従来のCu− 0.8%Cr合金(クロム銅合金)に比べて2〜3倍の連続打点寿命を示し、著しく優れていることが判る。一方、本発明の範囲から外れる比較例によるものは、従来のクロム銅合金と同等で本発明より寿命が劣る。
従って本発明によれば、熱伝導性、電気伝導性が良好で、高温強度、高温耐熱性に優れ、アルミ又はアルミ合金板の点溶接電極の寿命を著しく向上できるなど工業上顕著な効果を奏するものである。
Claims (2)
- Cr:5.0〜20wt%と、重量比で0.05≦O2/Cr≦5の酸素を含有し、残部Cuと不可避的不純物からなる銅合金のインゴットを溶製後、熱間加工又は冷間加工し、次に800〜1050℃で溶体化処理を行った後、400〜550℃で時効処理を行うことにより得られ、かつ晶出Crの粒径が0.1〜70μmであって、マトリックスの結晶粒径が0.1〜50μmであることを特徴とする再生機能に優れたAl合金板の点溶接電極用銅合金。
- Cr:5.0〜20wt%を含有し、さらにSi,P,Mg,Co,Ag,Ni,Be,Al,Sn,Zrの内の1種又は2種以上をそれぞれ3wt%以下と、重量比で0.05≦O2/Cr≦5の酸素を含有し、残部Cuと不可避的不純物からなる銅合金のインゴットを溶製後、熱間加工又は冷間加工し、次に800〜1050℃で溶体化処理を行った後、400〜550℃で時効処理を行うことにより得られ、かつ晶出Crの粒径が0.1〜70μmであって、マトリックスの結晶粒径が0.1〜50μmであることを特徴とする再生機能に優れたAl合金板の点溶接電極用銅合金。
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