JP2001049366A - 耐熱性に優れた高強度高導電性銅合金 - Google Patents

耐熱性に優れた高強度高導電性銅合金

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JP2001049366A
JP2001049366A JP11225663A JP22566399A JP2001049366A JP 2001049366 A JP2001049366 A JP 2001049366A JP 11225663 A JP11225663 A JP 11225663A JP 22566399 A JP22566399 A JP 22566399A JP 2001049366 A JP2001049366 A JP 2001049366A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 高強度且つ高導電率を有し、更に耐熱性にも
優れた銅合金を提供する。 【解決手段】 Cr:0.1〜0.4%(重量%,以
下、同じ)及びMg:0.03〜0.5%を含有する銅
合金において、Ti:0.005〜0.2%であり、T
iと、Fe,Co及びNiよりなる群から選択される少
なくとも一種の元素との原子比を Ti/(Fe+Co+Ni)=0.7〜3.0 の範囲に制御することにより耐熱性が高められたもので
ある。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は耐熱性に優れた高強
度高導電性銅合金に関する。本発明の銅合金は、高強度
および高導電性で、且つ耐熱性にも優れているので、半
導体機器のリード材および端子、コネクタなどの電気・
電子部品に好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】近年における電子機器の軽薄短小化傾向
に伴い、リードフレーム、端子、コネクタなどの電気・
電子部品についても小型化、軽量化が進められている。
これらの電気・電子部品に使用される銅合金には、設計
上、高強度で且つ高い熱放散性が要求される他、その製
造工程においても変形しない、強度や熱履歴に耐え得る
優れた耐熱性も要求されている。また、自動車エンジン
の電子制御化に伴い、自動車などに搭載される電気・電
子部品のうち特にエンジン回りの端子コネクタ類は、1
00℃を超える高温下、及び過酷な振動環境下に常に曝
されていることから耐熱性及び耐応力緩和性が要求され
ると共に、それに伴う高強度化、更には、駆動系回路用
途に代表される比較的大電流用途にあっては高導電性も
要求されている。
【0003】従って、電気・電子部品用銅合金として、
高強度、高導電率及び耐熱性の全ての特性を兼ね備えた
銅合金の提供が切望されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記事情に鑑
みてなされたものであり、その目的は、高強度(強度5
50N/mm2以上)且つ高導電率(導電率65%以
上)を有し、更に耐熱性にも優れた銅合金;好ましく
は、更に浴湯状態での流動性(湯流れ性)も良好で歩留
まり良く鋳塊が得られる銅合金を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決し得た本
発明の高強度高導電性銅合金は、Cr:0.1〜0.4
%(重量%,以下、同じ)及びMg:0.03〜0.5
%を含有する銅合金において、Ti:0.005〜0.
2%であり、Tiと、Fe,Co及びNiよりなる群か
ら選択される少なくとも一種の元素との原子比を Ti/(Fe+Co+Ni)=0.7〜3.0 の範囲に制御することにより耐熱性が高められたもので
あるところに要旨を有するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明者らは、高強度・高導電性
で、且つ耐熱性にも優れた銅合金を提供すべく、Cu−
Cr−Mg系合金を中心に鋭意検討してきた。Cu−C
r−Mg系合金は、強度及び導電率のバランスが比較的
良いことが知られているからである。一方、Tiは強
度、導電率及び耐熱性を向上させる元素として周知であ
るが、過剰に添加すると導電率が極端に低下する点で、
その添加量には充分留意する必要のある元素である。本
発明者らは、上記Ti添加による作用効果を有効に発揮
させながら、更に耐熱性も向上し得るCu−Cr−Mg
系合金を提供することができないか検討を重ねてきた。
その結果、Ti量を適切に調整することにより高導電性
を維持しつつ耐熱性及び高強度化を達成し得ると共に、
Ti量を鉄族元素(Fe,Co及びNi)量との関係で
制御することにより耐熱性が著しく高められることを見
出し、本発明を完成した。Tiと鉄族元素の比を適切に
制御すれば耐熱性が著しく向上することは本発明者らに
よって始めて見出された知見であり、本発明はこの点に
技術的意義を有するものである。
【0007】尚、従来においても、高強度・高導電性
で、且つ耐熱性に優れた銅合金の提供を目的として、T
iや鉄族元素を含有するCu−Cr−Mg系合金が開示
されている。しかしながら、従来提案されている銅合金
には、上述した本発明の技術的思想については全く開示
されていない。
【0008】例えば特開昭62−50428は、本発
明と同じ課題のもとでなされた電子機器用銅合金である
が、上記公報を精査しても「Tiと鉄族元素の比を適切
に制御することにより耐熱性が向上する」という本発明
特有の技術的思想は開示も示唆もされていない。この点
については、上記公報の実施例には、Tiと鉄族元素の
比が本発明の範囲を下回るものしか開示されていないこ
とからも確認することができる。
【0009】また、特公平7−84631には、Cu
−Cr−Mg合金に、Ti,Ni,Co,Fe等の少な
くとも一種の元素を含有する電子機器用銅合金が開示さ
れている。上記公報によれば、Tiや鉄族元素等は強度
及び耐熱性向上の目的で添加されるが、本発明の如く、
Tiと鉄族元素の両方を添加させた実施例は一例もな
く、このことからも上記公報には本発明の技術的思想は
全く認識されていなかったことを確認することができ
る。
【0010】以下、本発明の銅合金を構成する各要件に
ついて説明する。
【0011】上述した通り、本発明は、Cu−Cr−M
g系合金にTi及び鉄族元素の両方を含むものであり、
Ti量を適切に制御しつつ、Tiと鉄族元素の比[Ti
/(Fe+Co+Ni)]を特定することにより耐熱性
を著しく向上させた点に特徴を有するものである。
【0012】即ち、本発明のCr−Mg系銅合金は、T
iと鉄族元素を必須成分として含有することが必要であ
る。本発明では、Tiと鉄族元素の両方を添加すること
により、Crの析出強化(後記する)をアシストさせよ
うというものであり、この点でも、「Ti及び鉄族元素
からなる化合物による析出強化」を意図する上記の従
来技術とは相違するものである。
【0013】このうちTi量は0.005〜0.2%の
範囲に制御することが必要である。Tiは金属間化合物
形成元素であり、強度、導電率及び耐熱性を向上させ
る。しかしながら、0.005%未満では上記効果を有
効に発揮させることができない。好ましくは0.01%
以上である。尚、0.2%を超えると導電率が極端に低
下する他、鋳造性が低下する様になる。好ましくは0.
1%以下である。
【0014】また、本発明では、Ni,Co,Feの鉄
族元素を少なくとも一種含有することが必要である。上
記元素とTiの共添により微細な金属間化合物が形成さ
れる結果、析出硬化ピークの現れる温度が高温側に移動
し、耐熱性が改善されるからである(後記する図1を参
照)。
【0015】更に本発明では、Tiと、鉄族元素との原
子比[Ti/(Fe+Co+Ni)]を0.7〜3.0
の範囲に制御することが必要である。
【0016】図1は、後記する実施例を基に、Tiと鉄
族元素の比[Ti/(Fe+Co+Ni)]と、時効ピ
ーク温度との関係をグラフ化したものである。ここで、
「時効ピーク温度」とは、或る熱処理温度で強度がピー
クになる温度を意味する。この時効ピーク温度は耐熱性
と密接に関係しており、耐熱性の指標となるものであ
る。図1より、Tiと鉄族元素の比が大きい程、時効ピ
ーク温度も上昇するが、原子比換算でTiが過剰域とな
る0.7以上になると、それ以上時効ピーク温度は上昇
せず、450℃付近で飽和することが分かる。従って、
本発明で目標とする耐熱性レベル(時効ピーク温度で4
40℃)を得るためには上記比を0.7以上にすること
が必要であり、Ti,Co,Feの総量とは無関係であ
ることが分かる。
【0017】また、上記比が0.7未満では上記鉄族元
素がTiと金属間化合物を形成せず、マトリクッスに固
溶してしまい、所望の効果が得られない。但し、上記比
が3.0を超えるとTi量が過剰になり過ぎ、導電率が
著しく低下してしまう。好ましくは2.0以下である。
【0018】この様に本発明では、Tiと鉄族元素の両
方をうまく組合わせることにより、Ti添加による導電
率等の向上作用を有効に発揮させつつ、Tiと鉄族元素
の比を制御することによる耐熱性向上作用をも具備する
ことができるのである。
【0019】尚、本発明合金はCu−Cr−Mg合金を
ベースとするものである。
【0020】このうちCrは、析出強化元素であり、且
つその析出効果も高いため、導電率と強度バランスに優
れた合金が得られる点で極めて有効である。この様な効
果を有効に発揮させるためには、0.1%以上添加する
ことが必要である。好ましくは0.2%以上である。但
し、0.4%を超えて添加しても析出強化効果が飽和す
るのみならず、過剰に添加すると粗大な晶出物や析出物
が出現し、板の打抜き加工時に金型摩耗を促進するなど
の悪影響を及ぼす他、鋳造性が極端に悪くなる等の弊害
をもたらす。
【0021】また、Mgは固溶して加工硬化能を高める
一方、導電率の低下が比較的小さい元素である。この様
な作用を有効に発揮するためには0.03%以上の添加
が必要である。好ましくは0.2%以上である。但し、
0.5%を超えると導電率が低下する他、鋳造性も低下
してしまう。好ましくは0.4%以下である。
【0022】本発明は上記元素を必須成分とし、残部:
Cuからなる銅合金であるが、これらの元素の他、本発
明の作用を損なわない範囲で、析出強化に悪影響を及ぼ
さない固溶元素であるZn,Sn,In,Ag等を添加
することができる。これらの固溶元素は、強度上昇、加
工性改善、耐はんだ剥離性などに効果があることから、
製造上許容される範囲で、且つ導電率を著しく低下させ
ない範囲で添加することが推奨される。
【0023】その他、本発明では、Pを積極的に添加す
ることができる。Pは、主として湯流れなど鋳塊の健全
性を保持する作用を有すると共に、Crと析出物を形成
し、析出強化に寄与するからである。この様な作用を有
効に発揮させるためには、0.002%以上添加するこ
とが好ましく、0.005%を超えて添加することが一
層好ましい。但し、過剰に添加すると導電率や半田付け
性の低下を招くのみならず、析出強化に最も有効なCr
単体の析出量を低減させる恐れがあることから、その上
限を0.05%にすることが推奨される。より好ましく
は0.003%以下である。本発明では、P添加による
浴湯時の湯流れ性向上作用を有効に発揮させる範囲での
添加が可能になった点で、前記の従来技術と相違する
ものである。即ち、前記に開示されたCu−Cr−M
g系合金は、高い導電性を得るためにP含有量を50p
pm以下に制限しており、そのため、浴湯時の湯流れ性
が十分でなく、連続鋳造時に破断が発生するなど、生産
性に問題がある。これに対し、本発明合金ではP添加に
よる湯流れ性向上作用を具備させるべくPを積極的に添
加するものであり、これにより、強度、導電性及び耐熱
性の全てに優れるのみならず、P添加による湯流れ性向
上作用も得られ、良好な鋳塊が製造される点で、P添加
による導電率低下を回避すべく、Pを積極的に排除する
前記の従来技術とは基本的に技術的思想を異にするも
のである。後記する実施例に示す通り、本発明によれ
ば、P添加により強度が若干低下することになるが、T
iと鉄族元素の共添効果により、P添加による強度低下
を充分補って余りある程の効果が得られる一方、懸念さ
れたP添加による導電性や半田付け性の低下は特に認め
られなった。その理由は詳細には不明であるが、PがC
rとCr3Pの析出物を形成することにより無毒化された
からではないかと思料される。
【0024】尚、本発明の銅合金を製造する方法は特に
限定されず、一般に、銅合金の製造方法として使用され
ている方法を適宜選択すれば良く、鋳造→熱延→冷延→
析出処理といった基本工程を経て製造することができ
る。
【0025】以下、実施例に基づいて本発明を詳細に述
べる。ただし、下記実施例は本発明を制限するものでは
なく、前・後記の趣旨を逸脱しない範囲で変更実施する
ことは全て本発明の技術的範囲に包含される。
【0026】
【実施例】実施例 表1に示す種々の組成からなる合金を溶解し、厚さ50
mm、幅70mmの鋳塊を得た。この鋳塊を970℃で
30分加熱保持した後、厚さ18mmまで熱延してから
直ちに水冷してから冷間圧延することにより1mm厚の
板を得た。この様にして得られた板につき、300〜6
00℃まで50℃間隔で2時間熱処理した後、時効ピー
ク温度を測定した。尚、Tiと鉄族元素の比[Ti/
(Fe+Co+Ni)]と、時効ピーク温度との関係を
グラフ化したのが図1である。
【0027】また、夫々の時効ピーク温度における強
度、導電率、及び耐熱性を調べた。このうち耐熱性は、
5分間加熱により初期強度の80%となる温度をもって
定義した。表2に、各合金の強度、導電率および耐熱性
を示す。
【0028】
【表1】
【0029】
【表2】
【0030】表より以下の様に考察することができる。
【0031】まず、No.1〜10は本発明の要件を満
足する本発明例であるが、いずれも、強度が550N/
mm2で且つ65%以上の導電率を有しており、更に耐
熱性についても、いずれも600℃を超えていることか
ら優れた耐熱性を示すことが分かる。
【0032】これに対し、本発明の要件を満足しないN
o.11〜25は、以下の様な不具合を抱えている。こ
のうちNo.11はCrが少ない例であり、引張強度及
び耐熱性の点で所望の効果が得られない。No.12は
Crが過剰な例であり、鋳塊としたとき、割れが観察さ
れた。No.13はMgが少ない例であり、引張強度及
び導電率が低下した。No.14はTiのみを単独添加
した例;No.15はTi及び(Ni,Co,Fe)の
両方とも含有しない例;No.17はTiとNiを共に
含有しているが、Tiの量が少ない例であり、TiとN
i,Co、Feの共添効果が発揮されず、引張強度及び
耐熱性が低下した。No.16はCr及びMgを含有し
ない例であり、引張強度及び耐熱性が低下した。No.
18はTiが多い例、No.19及び20は[Ti/
(Co+Fe+Ni)]の比が本発明の範囲を外れる
例、No.21はMgが多い例であり、いずれも所望の
導電率が得られなかった。尚、No.19では耐熱性も
低下した。また、No.22はPが本発明の好ましい範
囲を下回る例であり、鋳塊としたときに割れが観察され
た。No.23はPが本発明の好ましい範囲を超える例
であり、引張強度、導電率及び耐熱性が低下した。N
o.24および25は従来合金であるが、いずれも所望
の耐熱性が得られなかった。
【0033】
【発明の効果】本発明は上記の様に構成されており、高
強度(強度550N/mm2以上)且つ高導電率(導電
率65%以上)を有し、更に耐熱性にも優れた銅合金;
好ましくは、更に浴湯状態での流動性(湯流れ性)も良
好で歩留まり良く鋳塊が得られる銅合金を提供すること
ができた。本発明合金は、強度、導電率及び耐熱性の諸
特性をバランス良く兼ね備えているため、電子機器用銅
合金や端子コネクタ用合金として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】[Ti/(Fe+Co+Ni)]と、時効ピー
ク温度との関係を示すグラフ。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Cr:0.1〜0.4%(重量%,以
    下、同じ)及びMg:0.03〜0.5%を含有する銅
    合金において、 Ti:0.005〜0.2%であり、 Tiと、Fe,Co及びNiよりなる群から選択される
    少なくとも一種の元素との原子比を Ti/(Fe+Co+Ni)=0.7〜3.0 の範囲に制御することにより耐熱性が高められたもので
    あることを特徴とする高強度高導電性銅合金。
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Cited By (4)

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