JP3566670B2 - 熱電交換モジュール用セラミック基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、光通信分野等に使用される半導体レーザ(LD),フォトダイオード(PD)等の光半導体素子を作動時に冷却するための熱電交換モジュール用セラミック基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の光通信分野等に使用される半導体レーザ(LD),フォトダイオード(PD)等の光半導体素子を作動時に冷却するための熱電交換モジュールは、光半導体素子の作動時に発する熱を外部へ伝えることにより光半導体素子を常に一定の温度に保持する熱電冷却装置として機能する。この熱電変換モジュール、即ち熱電冷却装置は、セラミック基板の主面においてp型とn型の熱電素子を電気的に直列または並列に接続して一体構造とした状態で、ペルチェ効果を利用して高温端の電極および低温端の電極に印加した電圧に依存して温度差を生じさせることにより一端を冷却するものである。
【0003】
そして、従来の熱電交換モジュール用セラミック基板は、図3に電極周辺部の断面図を示すように、アルミナ(Al2O3)セラミックスや窒化アルミニウム(AlN)セラミックス等のセラミック基板101の一方の主面に、複数の電極となる銅(Cu)層102bが被着されて成る。このCu層102bは、セラミック基板101の一方の主面の全面に無電解メッキによるCu層を被着させた後、Cu層102bを形成しない部位にメッキレジストを施し、さらに電解メッキによるCu層をメッキレジストの高さよりも低い位置まで被着させ、その後メッキレジストを剥離するとともにメッキレジスト直下の無電解メッキによるCu層をエッチング等により除去することにより、それぞれ独立した(電気的に絶縁された)複数の電極と成る。
【0004】
さらに、Cu層102bの上面にニッケル(Ni)メッキ層と金(Au)メッキ層を順に被着させ、錫(Sn)−銀(Ag)系,Sn−アンチモン(Sb)系,Sn−ビスマス(Bi)系,Sn−鉛(Pb)系等の半田を介して、p型,n型の熱電素子103を固着することにより、製品としての熱電交換モジュールが作製される。
【0005】
上記の熱電交換モジュールにより、光半導体素子等の発熱体が作動時に発する熱は、熱電素子103からCu層102b、セラミック基板101を介して外部へ効率良く伝えられる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、発熱体の作動時における熱量が非常に大きいため、より大きな電流を流してペルチェ効果をさらに発揮させなければならない場合、セラミック基板101がより高温となりセラミック基板101とCu層102bとの熱膨張差による熱応力がより大きくなり、Cu層102bの外周端のセラミック基板101と接合されている部位を起点として、それらの間で剥がれが発生することがある。そのため、発熱体が作動時に発する熱が、Cu層102bからセラミック基板101に効率良く伝わらず、その結果、発熱体が作動時に発する熱が外部に効率良く伝達し難くなり発熱体の作動性が損なわれるという問題があった。
【0007】
そこで、図4(a)に電極部の拡大断面図を示すように、セラミック基板101の一方の主面に、モリブデン(Mo),マンガン(Mn),タングステン(W)等の粉末に有機溶剤,溶媒を添加混合して得た金属ペーストをスクリーン印刷法により印刷塗布し焼結することによりメタライズ層102aを形成し、このメタライズ層102aをセラミック基板101とCu層102bとの強固な接合媒体として機能させる構成もある。なお、この場合、メタライズ層102aとCu層102bとで電極102が構成されることと成る。
【0008】
しかしながら、図4(b)に図4(a)の要部拡大断面図を示すように、メタライズ層102aの外周端の形状は、その厚さ,印刷塗布条件,焼結等の製造条件によって、セラミック基板101と電極102との熱膨張差による熱応力を、メタライズ層102aの外周端が十分に吸収し緩和させることが困難な形状となる。即ち、従来、メタライズ層102aの外周端は外側に向かって凸の曲面、またはセラミック基板101に対してほぼ垂直な面と成っており、図3の場合よりもセラミック基板101と電極102との接合強度は向上するが、熱応力が発生した際に吸収し緩和させ難い。つまり、メタライズ層102aの外周端の接合部がセラミック基板101に対してほぼ垂直になっているため、セラミック基板101と電極102との間で発生した面方向の熱応力によって、メタライズ層102aの外周端が剥離し易くなっていると考えられる。
【0009】
従って、セラミック基板101と電極102との間で発生した熱応力により、最も熱応力の集中するセラミック基板101とメタライズ層102aとの間で剥がれが発生し、発熱体が作動時に発する熱を外部に効率良く伝達し難くなり、発熱体の作動性が損なわれるという問題点があった。
【0010】
従って、本発明は上記問題点に鑑み完成されたものであり、その目的は、セラミック基板と電極との熱膨張差により発生する熱応力を十分に吸収し緩和させることにより、電極の剥がれを防ぎ、その結果光半導体素子等の発熱体から発する熱を外部に効率良く伝達させ得る熱電交換モジュール用セラミック基板を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の熱電交換モジュール用セラミック基板は、セラミック基板の一方の主面に、外周端が全周にわたってくぼんだ曲面から成る裾野状とされた厚さ5〜40μmのメタライズ層上に銅層が積層されて成る複数の電極がそれぞれ独立して形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記の構成により、セラミック基板と電極との熱膨張差により発生する熱応力を十分に吸収し緩和させて、電極の剥がれを防ぐことができる。その結果、光半導体素子等の発熱体から発する熱を外部に効率良く伝達できる。
【0013】
本発明において、好ましくは、前記メタライズ層の裾野状部の幅が5〜70μmであることを特徴とする。
【0014】
本発明は、上記の構成により、セラミック基板と電極との熱膨張差により発生する熱応力を、より十分に吸収緩和させ得、電極の剥がれを防ぐ効果がさらに向上する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の熱電交換モジュール用セラミック基板を以下に詳細に説明する。図1および図2は、本発明の熱電交換モジュール用セラミック基板について実施の形態の一例を示すものであり、図1は熱電交換モジュール用セラミック基板の電極周辺部の断面図、図2は図1の要部拡大断面図を示す。
【0016】
図1において、1はセラミック基板、2はメタライズ層2aと銅層2bとから成る電極、3は熱電素子であり、これらセラミック基板1,電極2,熱電素子3とで、光半導体素子等の発熱体が作動時に発する熱を外部に効率良く伝える熱電交換モジュールが構成される。また、本発明の熱電交換モジュール用セラミック基板は、セラミック基板1と電極2とにより構成される。
【0017】
セラミック基板1は、Al2O3セラミックスやAlNセラミックス等のセラミックから成り、その作製方法としては、原料粉末に適当な有機バインダや溶剤等を添加混合しペースト状と成すとともに、このペーストをドクターブレード法やカレンダーロール法によってセラミックグリーンシートと成し、しかる後セラミックグリーンシートに適当な打ち抜き加工を施し、これを約1600℃の高温で焼結する方法である。
【0018】
セラミック基板1の一方の主面には、ペルチェ効果を利用してセラミック基板1を高温側または低温側にするための電圧印加用の複数の電極2が形成される。これらの電極2はそれぞれ独立しており、外周端が全周にわたってくぼんだ曲面から成る裾野状とされた厚さ5〜40μmのメタライズ層2aとその上面に積層されたCu層2bとから構成される。このような電極2は、例えば以下の工程[1]〜[4]のようにして作製される。
【0019】
[1]セラミック基板1の一方の主面に、メタライズ層2aとなるW,Mo,Mn等の粉末に有機溶剤,溶媒を添加混合して得た金属ペーストを予め従来周知のスクリーン印刷法により、5〜40μmの厚さで全面に印刷塗布し、約1300℃の高温で焼結する。
【0020】
[2]焼結した金属ペーストの上面に、Cu層2bを形成しない部位にメッキレジストを約300μm程度の厚さで施した後、電解Cuメッキをメッキレジストの高さ(厚さ)よりも低い位置まで被着させ、その後メッキレジストを剥離する。この工程により、全面がメタライズ層2aから成る上面に、複数の独立したCu層2bが形成されることと成る。
【0021】
[3]複数の独立したCu層2bの周縁下端の周辺部のみにメタライズ層2aが残存するように、即ちCu層2bが互いに電気的に絶縁されるように、それぞれのCu層2b間のメタライズ層2aを、ブラスト研磨により除去する。ブラスト研磨は、ブラスト材として粒径25μm程度のAl2O3,SiC等のセラミックスから成る砂を、ノズル距離100mm,噴射圧力0.3MPa,噴射量160g/分,ノズル移動速度50mm/秒の条件で吹き付けることにより成される。
【0022】
[4]その後、水洗によりブラスト材を洗浄し乾燥する。
【0023】
この電極2は、その外周端が全周にわたってくぼんだ曲面から成る裾野状とされているため、即ち、メタライズ層2aの外周端が外側に向かって凸もしくはセラミック基板1に対してほぼ直角な面とは成らないため、ペルチェ効果によりセラミック基板1が高温となっても、最も熱応力の集中するセラミック基板1と銅層2bとの間の熱膨張差により発生した熱応力を十分に吸収し緩和させる。そのため、セラミック基板1とメタライズ層2aとの間で剥がれが発生しない。その結果、発熱体が作動時に発する熱を外部に効率良く伝達し、発熱体の作動性を非常に良好なものとし得る。
【0024】
なお、メタライズ層2aの厚さが5μm未満の場合、厚さが非常に薄いため、メタライズ層2aの外周端をくぼんだ曲面から成る裾野状とすることが困難であり、また焼結後にメタライズ層2a中にボイド(空隙)等が発生しセラミック基板1との接合強度を十分なものとし難いという問題点がある。一方、40μmを超える場合、熱電交換モジュールの高さを高くすることとなり、近時の熱電交換モジュールの小型軽量化といった動向から外れる。また、この場合、熱伝導率がそれほど高くないメタライズ層2aの厚さを厚くすることとなるため、発熱体の作動時における熱の伝達性を損なわせるという問題点がある。
【0025】
また、電極2は、Cu層2bの厚さが5〜300μm程度の場合に十分に熱応力を吸収し緩和させる機能を発揮できる。5μm未満では、熱伝導性の低下や電気抵抗の上昇により、大電流を流すのが困難になる。300μmを超えると、セラミック基板1とCu層2bとの間に発生する熱膨張差による熱応力をメタライズ層2aが十分に吸収し緩和させ難くなる。
【0026】
また、上記ブラスト研磨により、メタライズ層2aの裾野状部の幅を5〜70μmとすることがよく、その場合最も熱応力の集中するセラミック基板1と銅層2bとの間の熱膨張差により発生した熱応力を、より十分に吸収し緩和させ得る。裾野状部の幅が5μm未満の場合、大きな電流を流すために、熱伝導性の向上や電気抵抗の低下を目的として、特にCu層2bの高さを300〜500μm程度とした際、熱応力を十分に吸収し緩和させることが困難となる。一方、70μmを超えると、近接する電極2との電気的な絶縁を十分なものとできないといった問題点が発生する。即ち、電気的な絶縁を十分なものとするために各々の電極2の間隔を大きくしてしまうと近時の熱電交換モジュールの小型軽量化といった動向から外れる。従って、特にCu層2bの高さを300〜500μm程度まで高くする場合、裾野状部の幅を5〜70μm程度としておくことが良い。
【0027】
また、電極2間の間隔は0.1〜2mmがよく、0.1mm未満では、電極2間の間隔が狭すぎるため、メタライズ層2a同士が接触し電気的に接続される場合がある。2mmを超えると、熱電交換モジュールが大型化する。
【0028】
電極2の上面には、酸化防止および半田接合性を向上させるためにNiメッキ層,Auメッキ層が被着され、Sn−Ag系,Sn−Sb系,Sn−Bi系,Sn−Pb系等の半田を介して、p型,n型の熱電素子3が固着される。熱電素子としては、Bi2Te3,PbTe等の金属間化合物や、Si−Ge系合金、Bi−Te系合金等を用いる。また、熱電素子3と電極2との接合を強固なものとするために、熱電素子3の表面にNiメッキ層、Snメッキ層、半田メッキ層等を被着させておいても良い。
【0029】
さらに、熱電素子3の上面に、電極の形成されたセラミック基板を、低温端(熱電素子3の下面のセラミック基板1が高温端の場合)として接合することにより、外部の発熱体の作動時に発する熱を低温端のセラミック基板から熱電素子3を介して高温端のセラミック基板1、そして外部へと効率良く伝えることのできる熱電交換モジュールが作製される。
【0030】
かくして、本発明は、電極2は外周端が全周にわたってくぼんだ曲面から成る裾野状とされた厚さ5〜40μmのメタライズ層2a上にCu層2bが積層されて成ることにより、メタライズ層2aの端の接線方向がセラミック基板1の表面に対して略平行になり、かつメタライズ層2aの下面の面積が外周端の裾野状部の分増大することになることから、メタライズ層2aのセラミック基板1に対する接合強度が大幅に増加する。即ち、図4に示した従来のメタライズ層102aの垂直上方への引っ張り強度(ピール強度)は約500g/cm2であったのに対して、本発明のメタライズ層2aの垂直上方への引っ張り強度は約1000g/cm2と非常に大きいものであった。
【0031】
また、本発明の小型軽量の熱電交換モジュールは、その上面に非常に発熱量の大きい発熱体を載置固定し作動させた場合でも、本発明の電極2を有する熱電交換モジュール用セラミック基板により、発熱体から発せられる熱を低温端のセラミック基板から熱電素子3、電極2、セラミック基板1を介して外部に効率良く放散し得る信頼性の非常に高いものと成る。
【0032】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を施すことは何等差し支えない。
【0033】
【発明の効果】
本発明は、セラミック基板の一方の主面に、外周端が全周にわたってくぼんだ曲面から成る裾野状とされた厚さ5〜40μmのメタライズ層上に銅層が積層されて成る複数の電極がそれぞれ独立して形成されていることにより、メタライズ層のセラミック基板に対する接合強度が大幅に増大し、セラミック基板と電極との熱膨張差により発生する熱応力を十分に吸収し緩和し得、熱サイクルにより電極の剥離等が発生することが殆どなくなる。その結果、熱電交換モジュールの上面に載置固定された発熱体の発する熱量が非常に大きい場合であっても、セラミック基板と電極との熱膨張差により発生する熱応力を十分に吸収し緩和できる。従って、発熱体の発する熱を外部に効率良く伝達させ、発熱体の作動性を非常に良好なものとできる。
【0034】
また本発明は、好ましくはメタライズ層の裾野状部の幅を5〜70μmとすることにより、セラミック基板と電極との熱膨張差により発生する熱応力を、より十分に吸収し緩和し得る。また、例えば、大電流を流してペルチェ効果をさらに発揮させるために、熱伝導性の向上や電気抵抗の低下を目的として、銅層を300〜500μm程度まで厚くした場合であっても、セラミック基板と電極との熱膨張差により発生する熱応力を十分に吸収し緩和し得る。その結果、発熱体の発する熱を外部に効率良く伝達させ、発熱体の作動性を非常に良好なものとできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の熱電交換モジュール用セラミック基板について実施の形態の一例を示す電極周辺部の断面図である。
【図2】図1の熱電交換モジュール用セラミック基板の電極の要部拡大断面図である。
【図3】従来の熱電交換モジュール用セラミック基板の電極周辺部の断面図である。
【図4】(a)は図3の電極周辺部の拡大断面図であり、(b)は(a)の電極の要部拡大断面図である。
【符号の説明】
1:セラミック基板
2:電極
2a:メタライズ層
2b:銅層
Claims (2)
- セラミック基板の一方の主面に、外周端が全周にわたってくぼんだ曲面から成る裾野状とされた厚さ5〜40μmのメタライズ層上に銅層が積層されて成る複数の電極がそれぞれ独立して形成されていることを特徴とする熱電交換モジュール用セラミック基板。
- 前記メタライズ層の裾野状部の幅が5〜70μmであることを特徴とする請求項1記載の熱電交換モジュール用セラミック基板。
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