JP3565565B2 - インクジェットヘッド及びそれを搭載したインクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェットヘッド及びそれを搭載したインクジェット記録装置 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、インク滴を紙等に吐出して印字するためのインクジェットヘッド及びそれを搭載したインクジェット記録装置に関する。
背景技術
近年、インクジェット記録装置は、多ノズル化による高速印字及び装置の小型化のため、微小な大きさのアクチュエータが求められるようになってきている。そのようなことから、アクチュエータに静電気力を利用したインクジェット記録装置(例えば特開平6−71882号公報)が提案されている。このインクジェット記録装置は、アクチュエータが平行平板電極で構成されており、アクチュエータが小型化でき、多ノズル化が可能であるという特徴がある。
この静電アクチュエータによって駆動されるインクジェットヘッドの概要を図21の断面図及び図22の平面図に基づいて説明する。図21及び図22のインクジェットヘッドは、電極ガラス基板100、振動板基板200及びノズルプレート300を重ねて接合した積層構造となっている。電極ガラス基板100に開けられたインク供給口104からリザーバ204に供給されたインク400は、オリフィス302によって複数のキャビティ203に均等に分配される。キャビティ203の下面は変形可能な振動板201になっており、短絡防止用の絶縁膜202を挟んで対向電極10と対向して静電アクチュエータ50を構成している。そして、共通電極(GND)20により振動板201と対向電極10との間に電圧を印加し、静電引力を発生させて、振動板201を下方に変形させた後に、印加電圧を除去した時に発生する振動板201のバネ力による圧力でインク滴401をノズル301より吐出させている。
しかしながら、個々の対向電極10に電圧を直接印加する直接駆動方式では、図23の回路図に示されるように、n個の静電アクチュエータ(Cl〜Cn)50を設けた場合には、制御回路からの総配線数は、対向電極10への配線n本と、共通電極(GND)20への配線1本と合わせて(n+1)本必要であり、配線接続部の空間が増大するとともに、信頼性の確保が困難となる。特に、静電アクチュエータ50の静電容量は、極めて小さいため、共通電極(GND)20からの個々の配線が持っている静電容量と結合し、電気特性にバラツキが生じる可能性があった。また、アクチュエータ駆動用ICの個数がアクチュエータの個数と同じだけ必要になるため、駆動回路のコストが増加することになる。
このようなことから、配線接続部の空間の減少を図るために、アクチュエータに接続されるラッチ回路と、それを制御する集積回路とをヘッド内に組み込み、配線数を減らす方式が提案されている。しかしながら、この方式では接続部の信頼性は向上できるものの、ヘッドに集積回路を組み込むため、ヘッド自体が複雑で高価なものとなる。
発明の開示
本発明の目的は、総配線数及び駆動用ICを少なくして配線接続部の空間の減少を図るとともに、安価にして高い実信頼性を有するインクジェットヘッドを提供することにある。
本発明の他の目的は、上記に加えて、印字精度を向上させたインクジェットヘッドを提供することにある。
本発明の更に他の目的は、上記のインクジェットヘッドを搭載したインクジェット記録装置を提供することにある。
(1)本発明に係るインクジェットヘッドは、複数のノズル孔と、ノズル孔の各々に連通する複数の独立した吐出室と、吐出室の少なくとも一方の壁を構成する振動板と、振動板に空隙をもって対向する対向電極と、振動板と対向電極間に電気パルスを印加して充放電させることにより振動板を変形させ、ノズル孔からインク滴を吐出させる制御回路とを備え、振動板と対向電極によって構成される静電アクチュエータを電気的にマトリックス状に配置したものである。
(2)本発明に係るインクジェットヘッドは、上記(1)のインクジェットヘッドにおいて、振動板には、それぞれ個々に電位が制御される電極が形成される。
(3)本発明に係るインクジェットヘッドは、上記(2)のインクジェットヘッドにおいて、制御回路は、振動板に形成された電極又は対向電極のいずれか一方の電位を順次走査するものである。
(4)本発明に係るインクジェットヘッドは、上記(3)のインクジェットヘッドにおいて、制御回路は、対向電極に対して、振動板に形成された電極に印加する電圧とは逆極性の電圧を印加するものである。
本発明においては、振動板と対向電極とから構成される静電アクチュエータをマトリックス状に配置して、そして、静電アクチュエータ自体の非線型特性を利用することにより、時分割駆動が可能になっている。このため、複雑高価な集積回路等を用いることなく、配線数及び駆動工Cの個数を減少させることができる。
(5)本発明に係るインクジェットヘッドは、上記(2)〜(4)のインクジェットヘッドにおいて、制御回路は、振動板に形成された電極と対向電極との間に加えられる電気パルスの極性を周期的に反転するものである。
(6)本発明に係るインクジェットヘッドは、上記(5)のインクジェットヘッドにおいて、制御回路は、振動板に形成された電極と対向電極との間に加えられる電気パルスの極性を、走査対象の電極を走査する度に反転するものである。
(7)本発明に係るインクジェットヘッドは、上記(5)のインクジェットヘッドにおいて、制制御回路は、複数の振動板に形成された電極と対向電極との間に加えられる電気パルスの極性を、走査対象の全ての電極の走査が終了する度に反転するものである。
上述のように、本発明においては、静電アクチュエータに対する充電の方向を正方向及び逆方向に交互に切り替えていることから、吐出後の残留電荷が消去され、印刷時の振動板と電極との相対変位量が安定したものとなり、高精度な印刷が可能になっている。
(8)本発明に係るインクジェットヘッドは、上記(3)〜(7)のインクジェットヘッドにおいて、制御回路は、走査対象となる電極に対してインクの色をそれぞれ割り振って制御するものである。このため、1ヘッドでカラー印字が可能になっている。
(9)本発明に係るインクジェットヘッドは、上記(1)のインクジェットヘッドにおいて、静電アクチュエータは4列・n行(nは整数)に配置され、前記4列の静電アクチュエータにより1ドット分の印字をするものである。
(10)本発明に係るインクジェットヘッドは、上記(9)のインクジェットヘッドにおいて、4列の静電アクチュエータは、赤、緑、青及び黒のインクをそれぞれ吐出するものである。
(11)本発明に係るインクジェットヘッドは、上記(1)のインクジェットヘッドにおいて、静電アクチュエータは一列に配置され、そして、電気的にマトリックス駆動されるものである。
(12)本発明に係るインクジェットヘッドは、上記(11)のインクジェットヘッドにおいて、対向電極は複数本の電極が蛇行して形成され、また、振動板側に走査電極が形成され、そして、走査電極は複数本の対向電極の蛇行にそれぞれ対応して複数個配置されてなるものである。
(13)本発明に係るインクジェットヘッドは、上記(1)のインクジェットヘッドにおいて、振動板は、その振動板を形成するための基板自体を切断して、電気的に隔離された複数の領域に分割されているものである。
(14)本発明に係るインクジェットヘッドは、上記(13)のインクジェットヘッドにおいて、振動板は4分割され、そして、4列の静電アクチュエータが構成されているものである。
(15)また、本発明に係るインクジェット記録装置は、上記のインクジェットヘッドを搭載したものであり、高品質な印刷を可能にしたインクジェット記録装置を実現している。
【図面の簡単な説明】
図1は静電駆動式インクジェットにおける一定電圧印加時の振動板変位と振動板の反力及び静電引力の関係を示す特性図である。
図2は静電駆動式のインクジェットにおける印加電圧と振動板変位と の関係を示した特性図である。
図3A〜図3Cは本発明における時分割駆動時の静電アクチュエータの電位図である。
図4は本発明の第1の実施形態に係るインクジェットヘッドの電気的接続図である。
図5は前記第1の実施形態に係るインクジェットヘッドの動作を示すタイミングチャートである。
図6は前記第1の実施形態に係るインクジェットヘッドの断面図である。
図7は図6のインクジェットヘッドの平面図である。
図8は本発明の第2の実施形態に係るインクジェットヘッドの断面図である。
図9は図8のインクジェットヘッドの配線部の平面図である。
図10は図9の配線部のうち、対向電極を抽出した平面図である。
図11は図9の配線部のうち、走査電極を抽出した平面図である。
図12A〜図12Cは本発明の第3の実施形態に係る静電アクチュエータの電位図である。
図13は本発明の第4の実施形態に係るインクジェットヘッドの制御回路の例を示した回路図である。
図14は図13の制御回路の一部を詳細に示した回路図である。
図15は図13の制御回路の動作を示したタイミングチャートである。
図16は本発明の第5の実施形態に係るインクジェットヘッドの制御回路の例を示した回路図である。
図17は図16の制御回路の一部を詳細に示した回路図である。
図18は図16の制御回路の動作を示したタイミングチャートである。
図19は第1の実施形態〜第5の実施形態のインクジェットヘッドの周辺の機構を示した説明図である。
図20は図19の機構を内蔵したインクジェット記録装置の外観図である。
図21は従来の静電アクチュエータで駆動されるインクジェットヘッドの断面図である
図22は図21のインクジェットヘッドの平面図である。
図23は図21のインクジェットヘッドの回路図である。
発明を実施するための最良の形態
実施形態1.
本発明の実施形態の説明に先だって、静電アクチュエータの駆動原理について説明する。静電アクチュエータは、次式に示されるように、その振動板が変位し、電極間距離が狭くなると、電極間距離の逆数の2乗に比例して静電引力Pが強まる。
P=0.5×e×(V/d)
e:空気の誘電率
d:電極間距離
V:印加電圧
ここで、電極間には空気層と絶縁膜が存在するため、絶縁膜の厚さを空気の厚さに換算すると、
d=da+(e/ei)×di
da:空気層の厚さ
ei:絶縁層の誘電率
di:絶縁層の厚さ
となる。
振動板が変位することによって生じる反発力である振動板反力は変位に単純に比例し、電極間距離dに対する振動板の反力Fは次式で与えられる。
F=k×(d1−d)
d1:初期状態における振動板と対向電極間の距離
k :振動板のバネ定数
印加電圧が一定の場合で、振動板を電極間距離dが減少する方向に変位させた場合には、振動板に生じる反力と静電引力との関係は図1の特性図に示されるとおりである。振動板に加わる静電引力は、図1の特性から、変位が増加してdが減少するに連れて急激に増大することが分かる。
また、駆動電圧と実際の振動板の変位量との関係は、図2に示されるとおりである。例えば昇圧時、0Vから徐々に電圧を上げていくと当初静電引力の増加は穏やかであるから、振動板の反力と釣り合った位置で振動板の変位は釣り合う。図1では静電引力と振動板反力とが釣り合う場合がないように見えるが、印加電圧が図1の場合よりも小さい場合には静電引力と振動板反力とが釣り合う場合がある。しかし、やがて静電引力が急激に増大し、振動板反力の増加を上回って変位が発散する。発散後には、振動板が対向電極に当接するため、電圧が上昇しても変位は一定となる。次に、降圧時について考えると、当接により電極間距離が極小となっているため、昇圧時の発散点を過ぎた後でも当接状態が維持され、より低電圧の位置で当接が解除される。この結果、図2のような非線型の履歴曲線を生じる。前記の説明は印加電圧を0Vからプラス側に増加させた場合であるが、0Vからマイナス側に増加させた場合においても同様な現象が得られる。
図3A〜図3Cは上記の動作原理基づいてアクチュエータ50を時分割駆動する際の静電アクチュエータの電位図である。対向電極10と走査電極60とを交差して配置することで、図3A〜図3Cに示されるように、静電アクチュエータ50は電気的にマトリックス状に配置される。静電アクチュエータ50の振動板は、電圧±Vで対向電極10に当接する程度に変位し、±1/2Vでその当接が解除となるように設定されている。走査電極60に+1/2Vの電圧を順次印加し、任意の対向電極10に−1/2V(走査電極60の印加電圧に対して逆極性となる)を印加する。
走査電極60と対向電極10の電位差が+Vとなる静電アクチュエータ50の振動板は当接状態となり、一方、対向電極10に電圧が印加されていない静電アクチュエータ50の振動板は電位差が+1/2V又は0Vのため、当接しない(図3A)。そして、次の走査電極60に電位が移ると、当接状態の静電アクチュエータ50の電位は+1/2Vか0Vとなり、当接が解除され初期状態に復帰する(図3B、図3C)。このように走査電極60の電圧を走査することにより任意の静電アクチュエータ50を駆動することができる。なお、対向電極10に−1/2Vを印加するタイミングは、走査電極60の走査電圧と同期させるものとする。
なお、図3Aは2行目の走査電極60を走査し、1列目と3列目の対向電極10に電圧を印加することで(印字データを出力する)、静電アクチュエータC21,C23を駆動している例である。また、図3B及び図3Cは3行目の走査電極60を走査した場合の例であり、図3Bでは1列目と3列目の対向電極10を電圧を印加することで静電アクチュエータC31,C33を駆動し、図3Cでは2列目と4列目の対向電極10の電圧を印加することで静電アクチュエータC32,C34を駆動している。
マトリックス状に配置された静電アクチュエータ50の動作原理が明らかになところで、次に、本発明の第1の実施形態に係るインクジェットヘッドついて説明する。
図4は本発明の第1の実施形態における電気的接続図であり、図5はその動作のタイミングチャート図である。以下に4×n個の静電アクチュエータ(C11〜C4n)50を駆動する場合について説明する。本実施形態では、インク滴を基板の面部に設けたノズル孔から吐出させるフェイス・イジェクトタイプの例を示す。走査電極60は4個の走査電極61〜64からなり、対向電極10はn個の対向電極11、12〜1nから成っているものとする。図5に示されるように、走査電極61〜64には制御クロックに同期した電位+20Vの行走査パルス61a〜64aが順次入力される。この時、任意の対向電極11〜1nには、走査パルスと逆電位でやはり制御クロックに同期した−20Vの駆動パルスが印字データ11a〜1naとして入力される。
図6及び図7は本実施形態のインクジェットヘッドの断面図及び平面図である。本実施形態のインクジェットヘッドでは、単結晶シリコン基板から成るノズルプレート300と、振動板基板200と、硼珪酸ガラスから成る電極ガラス基板100とを積層した構造となっている。電極ガラス基板100と振動板基板200とは陽極接合により接合されており、振動板基板200とノズルプレート300とはエポキシ系接着剤により接合されている。また、走査線接続電極161〜164が電極ガラス基板100から露出しており、これは走査電極61〜64の繋がっている。
また、本実施形態の静電アクチュエータ50は、ヘッド内にn行・4列のマトリックス状に配置されている。静電アクチュエータ50が4列に配置されていることから、RGB及び黒インクをそれぞれの列に割り振ることにより、1ヘッドでフルカラー印字が可能になっている。単結晶シリコンから成る振動板基板200は、陽極接合後、異方性乾式エッチングにより4組に切り出し、それぞれに走査電極61〜64を形成することにより、個々に電位を制御できるように構成されている。
電極ガラス基板100上に形成された対向電極11〜1nは、4列の静電アクチュエータ50に亘って繋がっており、振動板基板200を切り出した後に、切り出した溝に沿ってエポキシ接着剤によるシール103で封止されている。キヤビティ203にインク400を充填した状態での振動板201の固有抜動数は50kHzであるが、ノズル301のインクメニスカスの振動が減衰し、初期状態に復帰するまで80マイクロ秒必要であるため、実際のインク吐出は10kHzで行われる。このため、静電アクチュエータ50の各列を40kHzで時分割駆動することが可能となる。
実施形態2.
図8は本発明の第2の実施形態に係るインクジェットヘッドの断面図であり、図9は対向電極と走査電極の平面図である。そして、図10は図9の対向電極を抽出した平面図であり、図11は図9の対向電極を抽出した平面図である。レシート印字等の幅の狭い用紙に印字する用途では、用紙幅と同じ幅に多数のノズルを並べ、ヘッドを固定することにより、ヘッドの送り機構を省いた所謂ツインベッドが用いられる。これらの用途には180DPI(Dot Per Inch)の場合でも、最低256ノズル以上が求められるため、共通電極と個々のアクチュエータの配線総数は個別配線方式(図23)では257本となり、配線部の信頼性が確保できにくく、アクチュエータ駆動ICの個数の増加する等望ましいものではない。次の表1に示されるように、走査電極と対向電極の総数は、走査電極の本数16本、対向電極の本数16本の場合が最小となることが分かる。この場合には、走査周期は走査電極数が多くなるにつれて長くなるが、ラインプリンターの場合はノズル数が極めて多いため、印字速度は低下しない。
Figure 0003565565
しかしながら、ラインプリンターでは、ライン状に細密なピッチで並んでいるキャビティ203を16本ごとに切り出し、各々を電気的に独立させるのは困難であるため、走査電極60をキャビティ203と独立して形成しなければならない。
図9(図10、図11)の例においては、簡略化のために走査電極60の本数8本、対向電極10の本数が8本の場合を示している。対向電極10は左右に蛇行しながら、走査電極60と立体交差して、静電アクチュエータ50をマトリックス状に形成している。本実施形態では、走査電極60をキャビティ203に対し電気的に独立して形成するため、単結晶シリコンから成る振動板基板200下面に、振動板201となる絶縁性を有する窒化珪素膜をCVCにより成膜している。成膜後にKOH水溶液によりシリコンを異方性エッチングしてキャビテイ203及びリザーバ204を形成している。振動板201下面にはAuのスパッタ後フォトリソグラフィーで走査電極60が形成され、二酸化珪素から成る絶縁膜202により、対向電極10に対して絶縁されている。蛇行している対向電極10を形成した、電極ガラス基板100と、振動板基板200及びノズルプレート300を積層し、シート103で封止して、インクジェットヘッドが完成する。
実施形態3.
図12A〜図12Cは本発明の第3の実施形態の電位図である。本実施形態では走査電極の本数を奇数に設定し、クロックに同期して走査電極60及び対向電極10の極性を切り替えている。走査電極63の電位が+1/2V、対向電極11,13の電位が−1/2Vの場合には、静電アクチュエータC31,C33の電位(駆動電圧)は+Vであるが(図12A)、次列の静電アクチュエータ50の走査時に走査電極64の電位が−1/2V、対向電極11,13の電位が+1/2Vとなるので静電アクチュエータC41,C43の電位は−Vとなる(12B,図12C)。走査電極60の本数が奇数のため、各列の静電アクチュエータ50の極性が1周期毎に反転し、静電アクチュエータ50に生じる帯電を除去することができる。走査電極60と対向電極10の電位の極性の反転は、走査1周期毎に行っても良く、この場合、走査電極60の本数は偶数でも可能である。
なお、図12Aは走査電極63を走査し、対向電極11,13に電圧を印加することで(印字データを出力する)、静電アクチュエータC31,C33を駆動している例である。また、図12B及び図12Cは走査電極64を走査した場合の例であり、図12Bでは対向電極11,13に電圧を印加することで静電アクチュエータC41,C43を駆動し、図12Cでは対向電極12,14に電圧を印加することで静電アクチュエータC42,C44を駆動している。
実施形態4
図13は走査電極が奇数(ここでは5個の例について示す)の場合について行毎に静電アクチュエータ50の電界方向を反転する場合の制御回路の例を示した回路図であり、図14は図13の一部を詳細に示した回路図である。そして、図15はその動作を示したタイミングチャートである。なお、以下の説明においてフリップフロップ回路をFFと略称するものとする。
クロック30aはプルキャリ方式同期5進カウンタ501によりカウントされる。この同期5進カウンタ501は、論理IC502,503、インバータ504〜506、アンド回路507及びナンド回路508から構成されている。論理IC502はJK−FF509,510を、そして、論理IC503はJK−FF回路511,512をそれぞれ含んでいる。
JK−FF510,511,512の各段の出力QA,QB,QCは1/2ずつ分周されていき、2進コードでカウントされていく。ここで、カウントが「5」(2進では100)になったとき、ナンド回路508からLレベルの出力がJK−FF510,511,512の各リセット端子に出力され、各段の出力QA、QB,QCは「0」にリセットされる。なお、本実施形態において同期カウンタを用いているが、これは、非同期方式ではリセット時に各段の出力の遅れによるハザードが生じるが、それを避けるためである。
次に、このようにして発生させた5クロック周期のパルスQCを論理IC513に入力する。論理IC513はD−FF514〜518を含んでおり、(なお、論理IC513には上記の他にD−FFが含まれているが本実施形態においては使用されないので符号を付記していない。)クロック30aに同期してパルスQCをD−FF514〜518により5段に亘って順次遅らせる。このパルスをD−FF514〜518の各段ごとに取り出して行走査パルス61a,62a,63a,64a,65aとして、後述のように、各々のヘッド5行分(走査電極61,62,63,64,65)を走査する。
次に、行ごとに電界を逆転させる動作について説明する。前述の論理IC502のJ−FF509は1/2に分周されたパルスQD及びその反転パルスを発生させている(これらのパルスが電界を逆転させるための信号となる)。これらパルスの立ち上がりを行走査パルス61aと同じくするために、クロック30aをインバータ504で反転してから、JK−FF509に入力している。
パルスQDの反転パルスは、最初の1行目の走査のタイミングでは、Hレベルである。ナンド回路37において、パルスQDの反転パルスと行走査パルス61aとのNAND論理を求めているが、パルスQDの反転パルスがHレベルであるから、そのNAND出力P1はLレベルとなる。この出力P1により+1/2Vに接続されているトランジスタ(PNP型)41がONとなり、走査電極61に+1/2Vが印加されることになる。このとき、アンド回路38においてはパルスQDと行走査パルス61aとのAND論理を求めているが、パルスQDはLレベルであるため、そのAND出力P2はLレベルとなる。このため、出力P2に接続されトランジスタ(NPN型)42はOFFとなり、走査電極61に−1/2Vが印加されることはない。
他方、入力手段22はパルスQCの立ち上がりから、走査周期の始まりを検知して、印字データ11a,12a〜1naをラッチ回路21に入力する。ラッチ回路21に保持された印字データ11a,12a〜1naはクロック30aに同期して出力される。具体的には、上記の行走査パルス61aに対応した印字データ出力されることになる。このとき、アンド回路40においては、パルスQDの反転パルスと印字データとのアンド論理を求めているが、パルスQDの反転パルスがHレベルであるから、そのAND出力P4はHレベルとなる(但し、印字データがある場合である)。この出力P4により−1/2Vに接続されているトランジスタ(NPN型)44がONとなり、対向電極(11〜1n)に−1/2Vが印加されることになる。このとき、ナンド回路39においてはパルスQDと印字データとのナンド論理を求めているが、パルスQDはLレベルであるため、そのNAND出力P3はHレベルとなる。このため、この出力P3に接続されたトランジスタ(PNP型)43はOFFとなっており、対向電極(11〜1n)に+1/2Vが印加されることはない。
以上のようにして、走査電極61に+1/2V電圧が印加され、また、走査電極61に対応した印字データに相当する対向電極(11〜1n)に−1/2V電圧が印加されると、両印加電圧の差電圧がVになった静電アクチュエータ50が作動してインク滴が吐出される。
次に、2行目の走査で電界を反転させる動作について説明する。論理IC502のJK−FF509のパルスQDは、2行目の走査に相当するタイミングでは、Hレベルになる。アンド回路38においては、パルスQDと行走査パルス62aとのAND論理を求めるが、パルスQDがHレベルであるから、そのAND出力P2はHレベルとなる。この出力P2により−1/2Vに接続されているトランジスタ(NPN型)42がONとなり、走査電極62に−1/2Vが印加されることになる。なお、ナンド回路37のNAND出力P1はHレベルとなっており、トランジスタ(PNP型)41はOFFとなっている。
他方、行走査パルス62aに対応した印字データ11a〜1naが1行目の走査の場合と同じようにラッチ回路21から出力される。そして、ナンド回路39においてパルスQD(Hレベル)と印字データとのNAND論理が求められ、NAND出力P3が出力される。この出力P3はLレベルであり、この出力P3により+1/2Vに接続されているトランジスタ(PNP型)43がONとなり、対向電極(11〜1n)に+1/2Vが印加されることになる。このとき、アンド回路40においてはパルスQDの反転パルスと印字データとのAND論理を求めるが、そのAND出力P4はLレベルとなり、その結果、トランジスタ(NPN型)44はOFFとなっており、対向電極(11〜1n)に−1/2Vが印加されない。
以上のようにして、走査電極62に−1/2Vが印加され、また、走査電極62に対応した印字データに相当する対向電極(11〜1n)に、+1/2Vが印加されると、両印加電圧の差電圧が−Vになった静電アクチュエータ50が作動してインク滴が吐出される。
次に、走査電極63〜65についても同様な動作を繰り返し、各行の静電アクチュエータ50にはその走査方向に従って+V,−Vの駆動電圧が交互に印加される。そして、1周期分の走査が終了して、2周期目の走査を開始すると、行数が奇数であるため、次の周期の1行目が走査される時には、クロック30aの1/2に分周されたパルスQD及びその反転パルスのH,Lレベルが1周期の場合に対して逆転するから、その駆動電圧も逆転することとなる。即ち、各アクチュエータ50には、その走査方向に従って−V,+Vの駆動電圧が交互に印加されることになる。このため、各アクチュエータ50に対する充電の方向が正方向及び逆方向に交互に切り換えられることから、吐出後の残留電荷が消去され、印刷時の振動板と電極との相対変位量が安定したものとなっている。
実施形態5
図16は走査1周期毎に静電アクチュエータ50の電界方向を反転する場合の制御回路の例を示した回路図であり、図17は図16の一部を詳細に示した回路図である。そして、図18はその動作を示したタイミングチャートである。
クロック30aは3桁ダウンカウンタ525により分周される。このダウンカウンタ525はJK−FF回路526〜528及びナンド回路529から構成されている。カウンタ525において2段目に分周されたパルスQBをインバータ531により反転し、論理IC532及びアンド回路533に入力する。
論理IC532は2個のD−FF534,535から構成されており、D−FF535がインバータ531の出力を入力するとクロック30aに同期してその反転出力はLレベルになる。この反転出力とインバータ531の出力がアンド回路533に入力することで、アンド回路533の出力にはクロック30aのパルス幅に等しい、インバータ531の出力に対する同期微分出力31aが得られる。この同期微分出力31aを論理IC536に入力する。この論理IC536は4個のD−FF537〜539から構成されており、同期微分出力31aはクロック30aに同期して各段ごとに遅れる。このパルスをD−FF537〜539の各段ごとに取り出して行走査パルス61a,62a,63a,64aとして各々のヘッドの4行分(走査電極61,62,63,64)を走査する。
次に、走査周期ごとに電界を逆転させる動作について説明する。前述のダウンカウンタ525のJK−FF538は3段目の分周パルスQcを発生させている。このパルスQcの立ち上がりを行走査パルス61aと同じくするために、論理IC532のD−FF534により遅らせた後に、パルスQ10及びその反転パルスを取り出している(これらのパルスが走査周期ごとに電界を逆転させるための信号となる)。
パルスQ10の反転パルスは、最初の周期の走査のタイミングはHレベルである。ナンド回路36においては、パルスQ10の反転パルスと行走査パルス61aとのNAND論理を求めているが、パルスQ10の反転パルスがHレベルであるため、そのNAND出力P1はLレベルとなる。この出力P1により+1/2Vに接続されているトランジスタ(PNP型)41がONとなり、走査電極61に+1/2Vが印加されることになる。このとき、アンド回路38のAND出力P2はLレベルとなっており、トランジスタ(NPN型)42はOFFとなっている。
他方、入力手段22はパルスQcの立ち上がりから、走査周期の始まりを検知して印字データ11a〜1naをラッチ回路21に入力する。ラッチ回路21に保持された印字データ11a〜1naはクロック30aに同期して出力される。具体的には、上記の行走査パルス61aに相当した印字データが出力されることになる。このとき、アンド回路40においては、パルスQ10の反転パルスと印字データ11a〜1naとのAND論理を求めているが、パルスQ10の反転パルスがHレベルであるため、そのAND出力P4はHレベルとなる。この出力P4により−1/2Vに接続されているトランジスタ(NPN型)44がONとなり、対向電極(11〜1n)に−1/2Vが印加されることになる。
以上のようにして、走査電極61に+1/2V電圧が印加され、また、走査電極61に対応した印字データに相当する対向電極(11〜1n)に−1/2V電圧が印加されると、両印加電圧の差電圧がVになった静電アクチュエータ50が作動してインク滴が吐出される。
そして、走査電極62〜64についても順次走査されて同様な動作が繰り返される。
次に、2周期目の走査で電界を反転させる動作を説明する。論理IC532のD−FF534のパレスQ10は、2周期目の走査のタイミングでは、Hレベルとなる。アンド回路38においては、パルスQ10と行走査パレス61aとのAND論理を求めているが、パルスQ10がHレベルであるため、そのAND出力P2はHレベルとなる。この出力P2により−1/2Vに接続されているトランジスタ(NPN型)42がONとなり、走査電極61に−1/2Vが印加されることになる。このとき、ナンド回路37のNAND出力P1はHレベルとなっており、トランジスタ(PNP型)41はOFFとなっている。
他方、行走査パルス61aに対応した印字データ11a〜1naが第1周期目の走査の場合と同じようにラッチ回路21から出力される。そして、ナンド回路39においてパルスQ10(Hレベル)と印字データとのNAND論理が求められ、NAND出力P3が出力される。この出力P3はLレベルとなり、出力P3により+1/2Vに接続されているトランジスタ(NPN型)43がONとなり、走査電極61に+1/2Vが印加されることになる。このとき、アンド回路40においてはパルスQ10と印字データとのAND論理を求めているが、そのAND出力P4はLレベルであり、トランジスタ(NPN型)44はOFFとなっており、対向電極(11〜1n)に−1/2Vが印加されることはない。
以上のようにして、走査電極61に−1/2Vが印加され、また、走査電極61に対応した印字データに相当する対向電極(11〜1n)に+1/2Vが印加されると、両印加電圧の差電圧が−Vになった静電アクチュエータ50が作動してインク滴が吐出される。
そして、走査電極62〜64についても順次走査されて上記と同様な動作が繰り返される。
実施形態6.
ところで、上述の実施形態に係るインクジェットヘッド500は、図19に示されるようにキャリッジ501に取り付けられ、そして、このキャリッジ501はガイドレール502に移動自在に取り付けられており、ローラー503により送り出される用紙504の幅方向にその位置が制御される。この図190の機構は図20に示されるインクジェット記録装置510に装備される。なお、このインクジェットヘッド500はラインプリンターのラインヘッドとして搭載することもできる。その場合にはキャリッジは不要となる。
実施形態7.
なお、上述の実施形態においては、振動板側に形成された電極を走査電極とした例について説明したが、その反対に、対向電極を走査電極とし、振動板側に形成された電極に印字データを供給するようにしてもよい。

Claims (4)

  1. 複数のノズル孔と、該ノズル孔の各々に連通する複数の独立した吐出室と、該吐出室の少なくとも一方の壁を構成する振動板と、該振動板に空隙をもって対向する対向電極を有し、前記振動板と前記電極簡に電気パルスを印加して充放電させることにより前記振動板を変形させ、前記ノズル孔からインク滴を吐出させる制御回路とを備え、前記振動板と前記対向電極とから構成される静電アクチュエータを電気的にマトリックス状に配置したインクジェットヘッドであって、前記振動板にはそれぞれ個々に電位が制御される電極が形成され、前記制御回路は前記振動板に形成された電極又は対向電極のいずれか一方の電位を順次走査するものにおいて、
    前記制御回路は、前記振動板に形成された電極と対向電極との間に加えられる電気パルスの極性を、走査対象の電極を走査する度に反転する、ことを特徴とするインクジェットヘッド。
  2. 複数のノズル孔と、該ノズル孔の各々に連通する複数の独立した吐出室と、該吐出室の少なくとも一方の壁を構成する振動板と、該振動板に空隙をもって対向する対向電極を有し、前記振動板と前記電極簡に電気パルスを印加して充放電させることにより前記振動板を変形させ、前記ノズル孔からインク滴を吐出させる制御回路とを備え、前記振動板と前記対向電極とから構成される静電アクチュエータを電気的にマトリックス状に配置したインクジェットヘッドであって、前記振動板にはそれぞれ個々に電位が制御される電極が形成され、前記制御回路は前記振動板に形成された電極又は対向電極のいずれか一方の電位を順次走査するものにおいて、
    前記制御回路は、前記振動板に形成された電極と対向電極との間に加えられる電気パルスの極性を、走査対象の全ての電極の走査が終了する度に反転する、ことを特徴とするインクジェットヘッド。
  3. 前記制御回路は、4つの振動板にそれぞれ形成された各電極に対して、赤、緑、青、黒のインクの色をそれぞれ割り振って制御することを特徴とする請求項1又は2記載のインクジェットヘッド。
  4. 請求項1乃至3の何れかに記載のインクジェットヘッドを搭載したことを特徴とするインクジェット記録装置。
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