JP3564979B2 - パーフルオロアルキルカルボン酸の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、パーフルオロアルキルカルボン酸、例えばパーフルオロオクチルカルボン酸の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
パーフルオロアルキルカルボン酸は、界面活性剤、撥水撥油剤、医・農薬等の原料として産業上有用な化合物である。この種の化合物の従来の一般的な製造方法としては、
(1)炭化水素化合物を原料とする、電解フッ素化法、
(2)パーフルオロアルキルヨウ素化合物を原料とする発煙硫酸法、
(3)パーフルオロアルキルヨウ素化合物を原料とする炭酸ガス法、
(4)パーフルオロアルキルオレフィン類を原料として重クロム酸塩、過マンガン酸塩などの酸化剤を用いる酸化分解法(特公昭44−7691号等)、
(5)パーフルオロアルキルオレフィン類を原料とするオゾン分解法(特開昭49−64051号等)
(6)フロン溶媒中においてルテニウム触媒を用いる酸化分解法(ジャーナル・オブ・フルオライン・ケミストリー(Journal of Fluorine Chemistry)、(1979年)第13号、第175〜177頁)
等が知られている。
【0003】
しかし、これらの従来の方法においては、反応収率が低いこと、反応に−70〜−40℃の低温や150〜200℃の高温等の過酷な条件を要したり、腐食性試薬や危険性の多い試薬を用いる必要があったりすること、金属化合物を用いるために後処理または回収が困難であること等の問題点を有しており、工業的にみて必ずしも効率の良い方法とは言えなかった。また、特に上記(6)の方法においては、反応系に水が共存する場合に反応速度が著しく低下してしまうという問題点があり、水性相が共存する系については実用的でなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、上述のような問題点を解決して、パーフルオロアルキルカルボン酸を製造する新たな方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、一般式:Rf−CH=CH2
[式中、Rf基はC2−14のパーフルオロアルキル基である。]
で示されるパーフルオロアルキルエチレンを酸化的に分解する反応を行い、
一般式:Rf−COOH
[式中、Rf基はC2−14のパーフルオロアルキル基である。]
で示されるパーフルオロアルキルカルボン酸を製造する方法において、
水に対して相溶性を有し、上記反応に対して実質的に不活性である有機溶媒、触媒としてのルテニウム化合物および次亜塩素酸またはその塩の水溶液の存在下において反応を実施することを特徴とする方法を提供する。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明の方法においては、一般式:Rf−CH=CH2
[式中、Rf基はC2−14のパーフルオロアルキル基である。]
で示されるパーフルオロアルキルエチレンを反応の原料として用いる。
そのようなパーフルオロアルキルエチレン、例えばパーフルオロオクチルエチレン(C8F17−CH=CH2)は、対応するパーフルオロアルキル基を含む化合物、例えばパーフルオロアルキル基がハロゲン化エチル基、例えばヨウ化エチル基に結合している化合物(Rf−CH2CH2I、例えばC8F17−CH2CH2I)を、メタノールまたはエタノール還流下において水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムと接触させることによって定量的に得られる。これらの製造方法は、ジャーナル・オブ・ケミカル・ソサイエティー(JOURNAL OF CHEMICAL SOCIETY)、第3041頁(1950年)およびジャーナル・オブ・オーガニック・ケミストリー(JOURNAL OF ORGANIC CHEMISTRY)、第23巻、第1166頁(1958年)等に記載されており、本発明においてはこれらを参照できる。
【0007】
本発明の方法によって製造するパーフルオロアルキルカルボン酸(Rf−COOH)としては、パーフルオロアルキル基の炭素原子数2〜14のものが工業的に有用であり、パーフルオロアルキル基の炭素原子数が6〜10のものがより有用である。特に有用なパーフルオロアルキルカルボン酸は、パーフルオロアルキル基の炭素原子数が7または8のパーフルオロアルキルカルボン酸である。パーフルオロアルキル基には、直鎖のものも分枝を有するものも含む。
【0008】
本発明の方法において、原料であるパーフルオロアルキルエチレン(Rf−CH=CH2)のパーフルオロアルキル基(Rf基)は、反応中に分解されたりすることはほとんどなく、本発明の目的生成物であるパーフルオロアルキルカルボン酸(Rf−COOH)においても実質的に保持される。従って、本発明の方法において使用するパーフルオロアルキルエチレンとしては、反応生成物として所望するパーフルオロアルキルカルボン酸のパーフルオロアルキル基を有するものを使用する。
本発明において用いる触媒としてのルテニウム化合物は、例えば、ルテニウム金属、三二酸化ルテニウム、二酸化ルテニウム、四酸化ルテニウム、水酸化ルテニウム、塩化ルテニウム、臭化ルテニウム、ヨウ化ルテニウム、硫酸ルテニウムまたはそれらの水和物等を混合物としてまたは単独で使用することができる。
【0009】
本発明の方法を何ら拘束するものではないが、本発明の方法において、以下の反応が主として進行するものと推定され得る。
上記のルテニウム化合物の中で四酸化ルテニウム以外の化合物を使用すると、共酸化剤として作用する次亜塩素酸またはその塩によって反応系内で四酸化ルテニウムの形態に転化される。その結果、本発明の方法の反応系において四酸化ルテニウムの形態で存在する触媒は、その酸化力によって、パーフルオロアルキルエチレン(Rf−CH=CH2)の二重結合を酸化的に開裂させて、対応するパーフルオロアルキル基を有するカルボン酸およびギ酸を生成する(反応式(I)参照)。
反応式(I):
【化1】
Rf−CH=CH2+2RuO4 → Rf−COOH+HCOOH+2RuO2
【0010】
四酸化ルテニウムの形態で存在する触媒は、反応式(I)で示される反応において生成するギ酸を、更に二酸化炭素(CO2)および水(H2O)に分解する(反応式(II)参照)。
反応式(II):
【化2】
HCOOH+1/2RuO4 → H2O+CO2+1/2RuO2
これらのルテニウム化合物は、通常、原料として用いるパーフルオロアルキルエチレン(Rf−CH=CH2)100モルに対して0.01〜2モルの割合で使用することが好ましい。使用量をこの範囲より少なくすれば反応速度が低下し、一方、使用量をこの範囲より多くすれば高価なルテニウム化合物を多量に使用することになり、共に工業的見地から好ましいとは言えない場合が多い。
【0011】
本発明において用いる次亜塩素酸またはその塩は、反応式(I)で示される酸化反応に直接寄与することは実質的にないと考えられるが、いわゆる共酸化剤としての作用、例えば反応式(I)で示される主たる酸化反応において触媒として作用する四酸化ルテニウムを反応系内で生成または再生させる作用を有すると考えることができる。従って、本発明の方法においては、触媒として用いるルテニウム化合物から四酸化ルテニウムを生成または再生させる作用を有する他の化合物、例えば過酢酸、過ヨウ素酸もしくは臭素酸またはそれらの塩等を次亜塩素酸もしくはその塩またはそれらの水溶液の代わりに用いることもできるが、一般的に水溶液の形態で入手することが容易である次亜塩素酸またはその塩の水溶液、例えば次亜塩素酸ナトリウム水溶液を用いることが好ましい。
【0012】
本発明の方法において、共酸化剤として作用する次亜塩素酸またはその塩は、上述したように反応系に供給されるルテニウム化合物が四酸化ルテニウム以外のものである場合は、このルテニウム化合物を反応系内で四酸化ルテニウムの形態に転化するという作用を有する他、パーフルオロアルキルエチレンの二重結合を酸化的に開裂させた結果として生成する酸化数がより低い二酸化ルテニウムを、再び酸化して四酸化ルテニウムへ再生するという作用も有すると考えられる(反応式(III)参照)。
反応式(III):
【化3】
5/2RuO2+5NaClO → 5/2RuO4+5NaCl
以上の反応式(I)〜(III)を総括すると、本発明の方法は、反応式(IV):
【化4】
Rf−CH=CH2+5NaClO → Rf−COOH+H2O+CO2+5NaCl
で示すことができる。
【0013】
本発明の方法において用いるルテニウム化合物は、総括反応式(IV)に現れないが、触媒量で反応系に存在して反応式(IV)で示される反応を進行させるので、本発明の方法においてはいわゆる触媒として作用すると言うことができる。
【0014】
本発明の方法においては、次亜塩素酸またはその塩の水溶液に関して、濃度はそれほど重要ではなく、反応系に添加する次亜塩素酸またはその塩の総量が重要である。従って、本発明においては、次亜塩素酸またはその塩の水溶液はどのような濃度のものであっても使用することができるが、好ましくは有効塩素量で5〜20重量%、より好ましくは10〜15重量%の濃度のものを使用する。使用する次亜塩素酸またはその塩、特に次亜塩素酸ナトリウムの総量は、原料化合物のパーフルオロアルキルエチレン1モルに対して少なくとも5モル、好ましくは6モルまで、より好ましくは5.2モルまでである。
また、本発明の方法の反応は発熱反応であるので、反応系への次亜塩素酸またはその塩の水溶液の供給は、通常は、その水溶液を適当な少量ずつに分割して複数回で添加したり、または例えば滴下ロートやポンプ供給装置等によって連続的に添加する等の既知の方法によって行う。
【0015】
本発明において用いる有機溶媒としては、触媒および共酸化剤等を含む水性相に対して相溶性を有すると共に、本発明の方法において用いる反応においては実質的に不活性な、従って実質的に酸化または分解されない溶媒を選択する。本発明において、水に対して相溶性を有するとは、有機溶媒が存在する水の少なくとも一部を溶解する場合、水が存在する有機溶媒の少なくとも一部を溶解する場合、または水および有機溶媒が存在する有機溶媒および水をそれぞれ溶解する場合(従って、これらの3つの場合は不均一液相となる)、ならびに有機溶媒および水が相互に溶解する場合(従って、均一液相となる)のいずれかを意味する。換言すれば、有機溶媒および水が相互に全く溶解しない場合が除かれることを意味する。
【0016】
そのような有機溶媒の例としては、アルコール類、例えば第三ブチルアルコール、ニトリル類、例えばアセトニトリル、またはエーテル類、例えばエチレングリコールジメチルエーテル、もしくは1,3−ジオキサン等の溶媒を挙げることができる。これらは、単独で使用してもよいし、混合物の系で使用してもよい。溶媒は、原料として用いるパーフルオロアルキルエチレン1重量部に対して、0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜1.0重量部、特に好ましくは0.5〜5重量部の割合で使用する。
【0017】
本発明の方法の反応において次亜塩素酸またはその塩を用いる場合、これらは通常水溶液の形態で供給するため、反応系に水が存在する。その場合、反応系の液性はpH5〜10の範囲、特に好ましくは6〜8の範囲に保たれるように調節する。特に、共酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを使用する場合、pH値がこの範囲よりも低くなると次亜塩素酸ナトリウムの分解が起こり、次亜塩素酸ナトリウムの消費量が増加すると共に、有害な塩素ガスが発生することになる。また、pH値がこの範囲より高くなると、反応速度が低下することになり、いずれも反応を行ううえで好ましくない。
【0018】
従って、反応系が上記の範囲内のpH値を保つように、反応式(IV)で示される反応を阻害したりしない塩基性物質を、いわゆるpH調節剤として水溶液の形態で反応系に添加してpH値を調節することが好ましい。そのための塩基性物質としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の種々の化合物を使用することができる。コストおよび入手の容易性等の点から、水酸化ナトリウムを使用することが好ましい。塩基性物質の水溶液を反応系に添加するには、適当な少量ずつに分割して複数回で添加したり、または例えば滴下ロートやポンプ送り装置等によって連続的に添加する等の既知の方法を用いることができる。
【0019】
反応が終了するまでに供給する塩基性物質、例えば水酸化ナトリウムの量は、原料となるパーフルオロアルキルエチレン1モルに対して、1.8〜2.2モルであり、通常は約2モルである。
本発明の方法の反応系は、有機相および水性相の液相どうしの均一系、従って相互溶解度が無限である系、または不均一系、従って相互溶解度が有限である系で進行するが、触媒が液相に完全に溶解しない場合には、更に固相が存在して固相−液相の混合状態の系も含み得る。
【0020】
本発明の方法の反応において適用する温度は好ましくは10〜50℃、より好ましくは20〜40℃の範囲である。例えばパーフルオロオクチルカルボン酸を製造する場合は、20〜40℃の範囲の温度を適用することが好ましい。反応温度がこの範囲よりも低い場合には反応速度が低下し、またこの範囲よりも高い場合には共酸化剤の分解が起こり、いずれも不利になる場合が多い。
【0021】
本発明の方法における反応は発熱反応であるため、冷却により反応温度を一定に保つことができる反応装置を使用することが一般的に望ましい。そのような装置としては、例えば内部または外部に冷却水等の冷媒を通すことができる装置を用いることができる。反応は、連続式またはバッチ式のいずれによっても行うことができる。また、共酸化剤の供給速度を制御することによって、温度上昇を避けることもできる。反応に適用する圧力は特に限定されないが、通常は常圧である。反応を行う時間は、通常は1〜20時間、好ましくは2〜15時間、特に好ましくは2〜10時間である。
【0022】
反応が終了した時点で、反応の停止剤として、次亜塩素酸ナトリウムおよび四酸化ルテニウムに対して還元性を有する(従って、それら2種の化合物によって容易に酸化され得る)物質を反応溶液に少量添加する。この操作によって、反応系内に存在している過剰分の次亜塩素酸ナトリウムを消費(分解)し、即ち還元し、反応系内において四酸化ルテニウムが再生または生成することがないようにして、触媒としてのルテニウム化合物の酸化力を失わせ、更に四酸化ルテニウムを黒色固体の二酸化ルテニウムとして析出させる。そのような反応の停止剤としては、例えば、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレン、ヒドラジン等を使用することができる。
【0023】
析出した二酸化ルテニウムの黒色固体は既知の手段、例えば濾過、遠心分離等によって分離および回収することができ、所望によりその後再使用することもできる。反応終了後の溶液中において本発明の目的物であるパーフルオロアルキルカルボン酸は、使用する次亜塩素酸塩またはpH調節剤に応じて塩の形態で通常存在する。例えばpH調節剤として水酸化ナトリウムを使用した場合にはナトリウム塩(−COONa)の形態で存在するが、これは硫酸等の強酸を添加することによって容易に酸形態(−COOH)に戻すことができる。
本発明の目的物であるパーフルオロアルキルカルボン酸を反応系から分離および精製するには、通常用いられる操作、例えば抽出、蒸留、再結晶、またはカラムクロマトグラフィー等を用いることができる。
【0024】
【発明の効果】
本発明の方法は、常温、常圧付近の極めて温和な反応条件において行うことができるので、方法の実施に要する設備、操作およびエネルギー等に関して従来の方法よりも容易かつ低コストで実施することができる。
また、本発明の方法によれば、後述の実施例からも判るように、出発原料の転化率が従来の方法よりも良好であり、目的物のパーフルオロアルキルカルボン酸の収率を従来の方法よりも更に向上させることができる。
本発明の方法においては、使用する触媒の取扱いおよび回収操作も従来の方法に比べて容易であるので、方法の実施に要する設備や操作等を無理なく簡略化することができる。
【0025】
【実施例】
以下、パーフルオロアルキルカルボン酸としてパーフルオロオクチルカルボン酸(炭素原子数が8のRf基を有するカルボン酸、即ちC8F17COOH)を製造する場合を例に挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されず、種々の炭素原子数のパーフルオロアルキル基を有するカルボン酸の製造に同様に用いることができる。
【0026】
実施例1
撹拌機、温度計、および2個の滴下ロートを備えた500ml四つ口フラスコに、パーフルオロオクチルエチレン(C8F17CH=CH2)40g(約0.09モル)、第三ブチルアルコール50ml、二酸化ルテニウム7水和物0.1g(C8F17CH=CH2に対して0.43モル%)を入れ、常圧にて、水浴上で反応系の温度を30℃に保ちながら激しく撹拌した。一方の滴下ロートより濃度2.1モル/lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液213ml(C8F17CH=CH2に対して5当量のNaClO)を毎分5mlで滴下し、もう一方の滴下ロートより濃度1モル/lの水酸化ナトリウム水溶液179ml(C8F17CH=CH2に対して2当量のNaOH)を反応系の液性がpH5〜10に保たれるように確認しながら少量ずつ間欠的に滴下した。
【0027】
次亜塩素酸ナトリウム水溶液および水酸化ナトリウム水溶液の滴下が終了した後、温度を30℃に保ちながら更に2時間撹拌し、反応を完結させた。反応終了後、イソプロピルアルコール0.5mlを加えて、過剰な次亜塩素酸ナトリウムおよび存在する四酸化ルテニウムを消費し、触媒を二酸化ルテニウムの黒色固体として析出させた。析出した二酸化ルテニウムは、孔径0.5ミクロンのPTFE濾紙を備えた加圧濾過器にて濾別し、濾液424gを得た。トリフルオロ酢酸を内部標準として19F NMRを用いて定量した結果、この濾液は目的物であるパーフルオロオクチルカルボン酸(C8F17COOH)を40.8g(収率98%)含有していた。
目的とするパーフルオロオクチルカルボン酸は、この濾液中にナトリウム塩の形態で存在しているので、例えばエバポレータを用いて溶媒および場合により水を蒸発させて濃縮した後、硫酸等の酸を加えるとパーフルオロオクチルカルボン酸が沈殿し、濾過等の操作を行うことによってパーフルオロオクチルカルボン酸を回収することができる。
【0028】
実施例2
滴下ロートを1個だけ使用すること、ならびに濃度2.1モル/lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液213ml(C8F17CH=CH2に対して5当量のNaClO)および濃度24重量%の水酸化ナトリウム水溶液29.9g(C8F17CH=CH2に対して2当量のNaOH)を共にその1個の滴下ロートに入れ、pH値を確認しながら毎分5mlで滴下すること以外は、実施例1と同様にして、二層に分離した濾液(上層201g、下層137g)を得た。その濾液の上層は水相であり、下層は第三ブチルアルコール相であった。実施例1と同様にして定量した結果、目的物であるパーフルオロオクチルカルボン酸(C8F17COOH)が、上層には0.2g(収率0.5%)、下層には41.4g(収率99.5%)含まれていた。
【0029】
実施例3
パーフルオロオクチルエチレン(C8F17CH=CH2)を20g、第三ブチルアルコールを244ml、濃度2.1モル/lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液を107ml(C8F17CH=CH2に対して5当量のNaClO)および濃度1モル/lの水酸化ナトリウム水溶液を90ml(C8F17CH=CH2に対して2当量のNaOH)を用いること以外は、実施例1と同様にして、二層に分離した濾液(上層301g、下層133g)を得た。実施例1と同様に定量した結果、目的物であるパーフルオロオクチルカルボン酸(C8F17COOH)が上層(第三ブチルアルコール相)には20.2g(収率97%)含まれていたが、下層(水相)には含まれていなかった。
【0030】
実施例4
実施例1と同じ装置にパーフルオロオクチルエチレン(C8F17CH=CH2)20g、アセトニトリル300ml、二酸化ルテニウム7水和物0.1g(C8F17CH=CH2に対して0.86モル%)を入れ、常圧にて、水浴上で30℃に保ちながら激しく撹拌した。一方の滴下ロートより濃度2.1モル/lの次亜塩素酸ナトリウム水溶液107ml(C8F17CH=CH2に対して5当量のNaClO)を毎分0.6mlで滴下し、他方の滴下ロートより濃度1モル/lの水酸化ナトリウム水溶液90ml(C8F17CH=CH2に対して2当量のNaOH)を系の液性をpH5〜10の範囲に保つように確認しながら毎分0.4mlで滴下した。滴下終了後は実施例1と同様の処理を行い、二層に分離した濾液(上層269g、下層175g)を得た。実施例1と同様に定量した結果、目的物であるパーフルオロオクチルカルボン酸(C8F17COOH)が上層(アセトニトリル相)には19.8g(収率95%)含まれており、下層(水相)には0.1g(収率0.5%)含まれていた。また、上層には未反応のパーフルオロオクチルエチレンが0.2g含まれていた。
【0031】
比較例1
溶媒として第三ブチルアルコールの代わりに1,1,2−トリクロロトリフルオロエタンを用いること以外、その他の原料および触媒ならびに反応装置については実施例1と同様にして比較実験を行った。同様に反応を開始し次亜塩素酸ナトリウム水溶液10mlおよび水酸化ナトリウム水溶液5mlを滴下した後、4時間撹拌を続けたが、水相の次亜塩素酸ナトリウムはほとんど消費されなかった。20%ヒドラジン水溶液3gを加え、過剰な次亜塩素酸ナトリウムを消費して二酸化ルテニウムの黒色固体を析出させた。
【0032】
孔径0.5ミクロンのPTFE濾紙を備えた加圧濾過器にて、析出した二酸化ルテニウムを濾過し、フラスコを洗浄した水も同様に濾過して、2層に分離した濾液を得た。下層(1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン相)をガスクロマトグラフィーによりパーフルオロオクチルエチレンの転化率を求めたところ0.5%であり、反応はほとんど進行していなかった。
【0033】
比較例2
溶媒として第三ブチルアルコールの代わりに1,1,2−トリクロロトリフルオロエタンを用いる以外は実施例1と同様にして反応を行った。この時も次亜塩素酸ナトリウムは消費されなかったが、全量加えた。但し、水酸化ナトリウム水溶液は最初に5ml加えただけで系のpHを8〜10に維持することができた。10時間反応した後過剰な次亜塩素酸ナトリウムを消費するため20%ヒドラジン水溶液を少量ずつゆっくりと加えたが、36gを要した。
【0034】
孔径0.5ミクロンのPTFE濾紙を備えた加圧濾過器にて、析出した二酸化ルテニウムを濾過し、2層に分離した濾液を得た。比較例1と同様に下層(1,1,2−トリクロロトリフルオロエタン相)を分析した結果、パーフルオロオクチルエチレン(C8F17CH=CH2)の転化率は0.5%以下であり、反応はほとんど進行していなかった。
Claims (5)
- 一般式:Rf−CH=CH2
[式中、Rf基はC2−14のパーフルオロアルキル基である。]
で示されるパーフルオロアルキルエチレンを酸化的に分解する反応を行い、
一般式:Rf−COOH
[式中、Rf基はC2−14のパーフルオロアルキル基である。]
で示されるパーフルオロアルキルカルボン酸を製造する方法において、
水に対して相溶性を有し、上記反応に対して実質的に不活性である有機溶媒、触媒としてのルテニウム化合物および次亜塩素酸またはその塩の水溶液の存在下において反応を実施することを特徴とする方法。 - 有機溶媒が、第三ブチルアルコール、アセトニトリル、エチレングリコールジメチルエーテルおよび/または1,3−ジオキサンであることを特徴とする請求項1記載の方法。
- 反応の系の液性をpH5〜10の範囲に維持することを特徴とする請求項1または2記載の方法。
- パーフルオロアルキル基が、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基、パーフルオロノニル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロウンデシル基およびパーフルオロドデシル基の群から選ばれることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
- ルテニウム化合物が、ルテニウム金属、三二酸化ルテニウム、二酸化ルテニウム、四酸化ルテニウム、水酸化ルテニウム、塩化ルテニウム、臭化ルテニウム、ヨウ化ルテニウム、硫酸ルテニウムおよびそれらの水和物の群から選ばれることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
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