JP3564838B2 - シクロアルカノールとシクロアルカノンの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シクロアルカンを分子状酸素で酸化してシクロアルカノールとシクロアルカノンを高い反応速度及び高い選択率で製造する方法に関する。シクロアルカノール及びシクロアルカノンは、ナイロン等のポリアミド系高分子用モノマーの製造原料、化学品の合成中間体及び有機溶剤などとして非常に有用な化合物である。
【0002】
【従来の技術】
シクロアルカンの分子状酸素による酸化は、工業的にはナフテン酸コバルトのような遷移金属触媒の存在下で行われている。しかしながら、この場合、シクロアルカンの酸化速度やシクロアルカノール及びシクロアルカノンの選択率は充分なものではなく、酸化方法の改良が望まれている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、シクロアルカンを分子状酸素で酸化して、シクロアルカノールとシクロアルカノンを高反応速度及び高選択率で製造できる、工業的に好適なシクロアルカノールとシクロアルカノンの製造方法を提供することを課題とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の課題は、シクロアルカンを、遷移金属化合物の存在下、N−置換イミダゾールを添加して、分子状酸素で酸化することを特徴とするシクロアルカノールとシクロアルカノンの製造方法によって達成される。
【0005】
【発明の実施の形態】
シクロアルカンとしては、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロドデカン、シクロペンタデカン、シクロヘキサデカン等の炭素数5〜20のシクロアルカンが用いられる。
【0006】
N−置換イミダゾ−ルは、一般式(I)で表される化合物である。
【化1】
Figure 0003564838
(式中、Rは炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数7〜11のアラルキル基を示す)
【0007】
N−置換イミダゾ−ルとしては、窒素原子上の置換基Rが、(1)メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等の炭素数1〜8のアルキル基、(2)シクロヘキシル基等の炭素数5〜8のシクロアルキル基、(3)フェニル基等の炭素数6〜10のアリール基、(4)ベンジル基等の炭素数7〜11のアラルキル基であるN−置換イミダゾールが挙げられる。これらのN−置換イミダゾールでは、窒素原子上の置換基Rが炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数6〜10のアリール基であるものが好ましく、中でもN−メチルイミダゾール及びN−フェニルイミダゾールが特に好ましい。
N−置換イミダゾールの添加量は、シクロヘキサンに対して通常0.1〜10000重量ppm、好ましくは1〜1000重量ppmである。
【0008】
遷移金属化合物としては、コバルト、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、ルテニウム、オスミウム、セリウム、バナジウム等のシクロアルカンの酸素酸化反応を触媒することができる遷移金属の化合物が用いられる。これら遷移金属化合物の中では、コバルト、クロム及びマンガンの化合物が好ましく、中でもコバルトの化合物が最も好ましい。
【0009】
遷移金属化合物の具体例をコバルト化合物について挙げれば、例えば以下のものが挙げられる。また、コバルト以外の遷移金属についても、コバルトと同様にそれぞれハロゲン化物、有機酸塩、アセチルアセトナト錯体やトリフェニルホスフィン錯体がその化合物として挙げられる。
コバルト化合物としては、(1)塩化コバルト、臭化コバルト等のコバルトのハロゲン化物、(2)酢酸コバルト、ヘキサン酸コバルト、オクチル酸コバルト、ステアリン酸コバルト、ナフテン酸コバルト等の炭素数2〜12のコバルトの有機酸塩、(3)ビス(アセチルアセトナト)コバルト、トリス(アセチルアセトナト)コバルト、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)コバルト等のコバルトのアセチルアセトナト錯体やトリフェニルホスフィン錯体、(4)これらの混合物などが用いられる。これらコバルト化合物の中では、コバルトの有機酸塩やコバルトの錯体が好ましく、中でもオクチル酸コバルトやトリス(アセチルアセトナト)コバルトが特に好ましい。なお、これらのコバルト錯体は公知の化合物であり、塩化コバルトを出発原料として容易に合成することができる。
【0010】
遷移金属化合物は触媒として使用されるので、その使用量は微量でよく、シクロアルカンに対して、遷移金属として通常0.001〜100重量ppm、好ましくは0.01〜10重量ppmである。
また、遷移金属化合物は単独で使用されても混合されて使用されてもよく、更にヘテロポリ酸、シリカゲル、アルミナ、チタニア、ジルコニア、ゼオライト、カーボン粉末及び高分子等の担体に担持、吸着又は化学的に結合させて使用されてもよい。
【0011】
溶媒は特に必要とされないが、この反応においてシクロアルカンより不活性なものであれば使用することができる。用いられる溶媒としては、例えばジクロロメタン、クロロホルム、エチレンジクロリド等の脂肪族ハロゲン化炭化水素、酢酸エチル等のエステル、アセトニトリル等のニトリル、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン等の芳香族炭化水素が挙げられる。溶媒を用いる場合、その使用量はシクロアルカンに対して通常1〜10000容量倍である。
【0012】
分子状酸素としては、純粋の酸素ガスや、窒素ガス等の不活性ガスで希釈された酸素ガス(例えば空気)など、分子状酸素を含有するガスが用いられる。その供給方法は特に制限されず、例えば反応液に該ガスを吹き込む方法や単に反応系を該ガス雰囲気下におく方法によって分子状酸素が供給される。
【0013】
本発明の酸化反応は、シクロアルカン、遷移金属化合物及びN−置換イミダゾールそして必要であれば溶媒を含む反応液に、上記の方法で分子状酸素を供給することによって行われる。遷移金属化合物やN−置換イミダゾールがシクロアルカン又は溶媒に不溶である場合、本発明では懸濁床や充填床のような不均一系で反応を行うこともできる。
酸化反応の反応温度は通常25〜200℃、好ましくは50〜180℃であり、反応圧はゲージ圧で通常大気圧から20気圧(atm)の範囲である。なお、反応中に生じる熱を放出して反応温度を適切に制御するため、反応は、例えば還流冷却器及び攪拌装置を備えた反応器で実施される。
【0014】
反応終了後、目的のシクロアルカノールとシクロアルカノンは、得られたシクロアルカンの酸化反応液が必要に応じて水又はアルカリで洗浄されて酸が除去された後、通常の蒸留等により分離精製される。未反応のシクロアルカンは蒸留分離されて酸化反応に循環再使用される。
【0015】
【実施例】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
なお、シクロアルカン転化率、シクロアルカノール選択率及びシクロアルカノン選択率は次式によりそれぞれ求めた。
【0016】
【数1】
Figure 0003564838
【0017】
【数2】
Figure 0003564838
【0018】
【数3】
Figure 0003564838
【0019】
実施例1
還流冷却器、温度計、水分離器、ガス導入管、攪拌装置及び反応液取り出し口を備えた内容積500mlの耐圧ガラス製オートクレーブに、シクロヘキサン(以下、Cxと称する)300g、オクチル酸コバルト1.746mg(Cxに対してコバルト金属として1.0重量ppm)及びN−メチルイミダゾール41.8mg(Cxに対して139重量ppm)を仕込んだ。攪拌下(800rpm)、窒素ガス(圧力:10atmG、流量:60L/hr)を流しながら加温して温度が160℃に達した後、窒素ガスを空気(圧力:10atmG、流量:60L/hr)に切り換えてCxの酸化を開始した。13分間反応を行った後、空気を窒素ガス(圧力:10atmG、流量:60L/hr)に切り換えて、新たにオクチル酸コバルト1.746mgを添加し、酸化反応液中に存在するシクロヘキシルヒドロペルオキシド(以下、CHPと称する)の分解を160℃で行った。なお、酸化反応液1g中に0.0549mmol存在していたCHPを完全に分解するには10分を要したので、Cx酸化からCHP分解までの全反応時間は23分であった。
【0020】
得られた反応液を蒸留及びガスクロマトグラフィーによって分析したところ、Cx転化率が3.9%で、シクロヘキサノール(以下、アノールと称する)選択率が60.1%、シクロヘキサノン(以下、アノンと称する)選択率が22.8%、アノールとアノンの合計選択率は82.9%であった。
【0021】
実施例2
実施例1において、N−メチルイミダゾール使用量を8.4mg(Cxに対して28重量ppm)に変えて、Cx酸化を17分間行って、次いでCHP分解を12分間行ったほかは、実施例1と同様にCxの酸化を行って得られた反応液を分析した。
その結果、Cx転化率が4.5%で、アノール選択率が57.5%、アノン選択率が24.1%、アノールとアノンの合計選択率は81.6%であった。
【0022】
実施例3
実施例1において、N−メチルイミダゾールをN−フェニルイミダゾール8.4mg(Cxに対して28重量ppm)に変えて、Cx酸化を17分間行って、次いでCHP分解を12分間行ったほかは、実施例1と同様にCxの酸化を行って得られた反応液を分析した。
その結果、Cx転化率が4.3%で、アノール選択率が57.8%、アノン選択率が23.2%、アノールとアノンの合計選択率は81.0%であった。
【0023】
比較例1
実施例1において、N−メチルイミダゾールを添加することなく、Cx酸化を20分間行って、次いでCHP分解を21分間行ったほかは、実施例1と同様にCxの酸化を行って(全反応時間:41分)得られた反応液を分析した。なお、この場合、CHP分解前の酸化反応液1g中にはCHPが0.1388mmol存在していた。
その結果、Cx転化率が4.2%で、アノール選択率が53.0%、アノン選択率が23.3%、アノールとアノンの合計選択率は76.2%であった。
実施例及び比較例の結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
Figure 0003564838
【0025】
【発明の効果】
本発明により、シクロアルカンを分子状酸素で酸化してシクロアルカノールとシクロアルカノンを高反応速度及び高選択率で製造することができる。即ち、本発明の方法によれば、シクロアルカノールとシクロアルカノンの合計選択率を著しく向上させることができるだけでなく、シクロアルカンの酸化速度を大幅に向上させることができ、更にシクロアルキルヒドロペルオキシドの蓄積量が少ないためにその分解に要する時間も著しく短縮することができるので、工業的に好適なシクロアルカノールとシクロアルカノンの製造方法を提供することができる。

Claims (3)

  1. シクロアルカンを、遷移金属化合物の存在下、N−置換イミダゾールを添加して、分子状酸素で酸化することを特徴とするシクロアルカノールとシクロアルカノンの製造方法。
  2. 遷移金属化合物がコバルト、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、ルテニウム、オスミウム、セリウム又はバナジウムの化合物であることを特徴とする請求項1記載のシクロアルカノールとシクロアルカノンの製造方法。
  3. 遷移金属化合物がコバルトの化合物であることを特徴とする請求項1記載のシクロアルカノールとシクロアルカノンの製造方法。
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