JP3564277B2 - 油中水型乳化組成物及び皮膚外用剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は油中水型乳化組成物(W/O型乳化組成物)及びこれを含有する皮膚外用剤に関する。さらに詳しくは、優れた温度安定性を有し外相となる油分として極性油から非極性油まで幅広く用いることが出来る油中水型乳化組成物及びこれを含有する温度安定性及び使用性に極めて優れた皮膚外用剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、水膨潤性粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤と非イオン性界面活性剤とで処理して得られる有機変性粘土鉱物を乳化剤として用いた油中水型乳化組成物は知られている(特許公報平2−14098号)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者は、上記有機変性粘土鉱物を乳化剤として用いた油中水型乳化組成物においてさらに鋭意研究を行った結果、この系に低分子ベタインとしてトリメチルグリシンまたはγ−ブチロベタインを加えると驚くべきことに予期し得ないほど一段と安定性が向上し、この油中水型乳化組成物を利用した皮膚外用剤は伸びが軽くべたつきがない優れた使用感触を与えるという予期せぬ効果を見出だし、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0004】
本発明の目的は、極めて優れた温度安定性を有する油中水型乳化組成物及びこれを用いた温度安定性及び使用性に極めて優れた皮膚外用剤を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、水膨潤性粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤と非イオン性界面活性剤とで処理して得られる有機変性粘土鉱物と、トリメチルグリシンまたはγ−ブチロベタインと、油分と水とを含有することを特徴とする油中水型乳化組成物を提供するものである。
【0006】
また、本発明は、前記有機変性粘土鉱物の配合量が0.5〜3重量%であって、前記トリメチルグリシンまたはγ−ブチロベタインの配合量が0.1〜1.0重量%であることを特徴とする前記の油中水型乳化組成物を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、前記低分子ベタインが、油中水型乳化組成物全量に対して0.01〜20重量%含有されていることを特徴とする前記の油中水型乳化組成物を提供するものである。
【0011】
さらに、本発明は、前記油中水型乳化組成物を含有することを特徴とする皮膚外用剤を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に乳化剤として用いる有機変性粘土鉱物とは、水膨潤性粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤と非イオン性界面活性剤とで処理して得られるものである。水膨潤性粘土鉱物は、三層構造を有するコロイド性含水ケイ酸アルミニウムの一種で、一般に下記一般式「化3」
【化3】
(X,Y)2〜3(Si,Al)4O10(OH)2Z1/3・nH2O
但し、X=Al、FeIII、MnIII、CrIII
Y=Mg、FeII、Ni、Zn、Li
Z=K、Na、Ca
で表され、具体的には、モンモリロナイト、パイデライト、ノントロナイト、サポナイトおよびヘクトライト等があり、これらは天然または合成品のいずれであってもよい。市販品では、クニピア(クニミネ工業社製)、スメクトン(クニミネ工業社製)、ビーガム(バンダービルト社製)、ラポナイト(ラポルテ社製)、フッ素四ケイ素雲母(トピー工業社製)等がある。
【0013】
この水膨潤性粘土鉱物を処理するために用いる第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤は、下記一般式「化4」
【化4】
(式中、R1 は炭素数10〜22のアルキル基またはベンジル基、R2 はメチル基または炭素数10〜22のアルキル基、R3 とR4 は炭素数1〜3のアルキル基またはヒドロキシアルキル基、Xはハロゲン原子またはメチルサルフェート残基を表す。)
で表されるものである。
【0014】
例えば、ドデシルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルトリメチルアンモニウムクロリド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、アラキルトリメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロリド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロリド、セチルジメチルアンモニウムクロリド、ステアリルジメチルアンモニウムクロリド、アラキルジメチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジメチルアンモニウムクロリド、セチルジエチルアンモニウムクロリド、ステアリルジエチルアンモニウムクロリド、ステアリルジエチルアンモニウムクロリド、アラキルジエチルアンモニウムクロリド、ベヘニルジエチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルミリスチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルセチルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルステアリルルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルベヘニルアンモニウムクロリド、ベンジルジメチルエチルセチルアンモニウムクロド、ベンジルジメチルエチルステアリルアンモニウムクロド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジベヘニルジヒドロキシエチルアンモニウムクロリド、および相当するブロミド等、さらにジパルミチルウロピルエチルアンモニウムメチルサルフェート等が挙げられ、これらのうち一種または二種以上が任意に選択されて処理される。
【0015】
また、水膨潤性粘土鉱物を処理するために用いる非イオン性界面活性剤はそのHLB値が2〜16の範囲内に存し、3〜12のものがさらに好適である。例示すれば、ポリオキシエチレン2〜30モル付加{以下POE(2〜30)と略す。}オレイルエーテル、POE(2〜35)ステアリルエーテル、POE(2〜20)ラウリルエーテル、POE(1〜20)アルキルフェニルエーテル、POE(6〜18)ベヘニルエーテル、POE(5〜25)2−デシルペンタデシルエーテル、POE(3〜30)2−デシルテトラデシルエーテル、POE(8〜16)2−オクチルデシルエーテル、等のエーテル型活性剤、およびPOE(4〜60)硬化ヒマシ油、POE(3〜14)脂肪酸モノエステル、POE(6〜30)脂肪酸ジエステル、POE(5〜20)ソルビタン脂肪酸エステル等のエステル型活性剤、更にPOE(2〜30)グリセリルモノイソステアレート、POE(10〜60)グリセリルトリイソステアレート、POE(7〜50)硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE(12〜60)硬化ヒマシ油トリイソステアレート等のエーテルエステル型活性剤等のエチレンオキシド付加型界面活性剤およびデカグリセリルテトラオレート、ヘキサグリセリルトリイソステアレート、ジグリセリルジイソステアレート、グリセリルモノオレエート等のグリセリン脂肪酸エステル等の多価アルコール脂肪酸エステル型界面活性剤があげられる。これらの中で、デカグリセリルテトラオレート、ヘキサグリセリルトリイソステアレート、ジグリセリルジイソステアレート等のジグリセリン以上のポリグリセリン脂肪酸エステル、POE(2〜12)ラウリルエーテル、POE(6〜15)ベヘニルエーテル、POE(5〜20)2−デシルペンタデシルエーテル、POE(5〜17)2−デシルテトラデシルエーテル、POE(8〜16)2−オクチルデシルエーテル等のPOE付加エーテル型活性剤、およびPOE(10〜20))硬化ヒマシ油、POE(5〜14)オレイン酸モノエステル、POE(6〜20)オレイン酸ジエステル、POE(5〜10)ソルビタンオレインエステル等のPOE付加エステル型活性剤、POE(3〜15)グリセリルモノイソステアレート、POE(10〜40)グリセリルトリイソステアレート等のPOE付加エーテルエステル活性剤等のエチレンオキシド付加型の非イオン性界面活性剤が特に好ましい。これら非イオン界面活性剤の中から一種または二種以上が任意に選択されて用いられる。
【0016】
本発明に用いられる有機変性粘土鉱物は、例えば、水、アセトンあるいは低級アルコール等の低沸点溶媒中で上述の水膨潤性粘土鉱物と第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤と非イオン性界面活性剤とを分散攪拌処理するか、または予め水膨潤性粘土鉱物と第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤とを低沸点溶媒中で処理してカチオン変性粘土鉱物を得てから非イオン性界面活性剤で処理し、次いで低沸点溶剤を除去することによって得られる。なお、第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤のみで処理された有機変性粘土鉱物と非イオン性界面活性剤を油中水型乳化組成物に添加して油中水型乳化組成物中にて非イオン性界面活性剤で処理されることも可能である。
【0017】
第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤と非イオン性界面活性剤とが層間に入り込むことにより水膨潤性粘土鉱物の層間隔は広がった状態になるので、X線回析で長面間隔を測定することにより第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤と非イオン性界面活性剤の吸着の有無を確認できる。
【0018】
また、この有機変性粘土鉱物をクロロホルム、エーテル等を用いてソックスレー抽出すれば層間の界面活性剤は洗い流されてくるので、該抽出液をガスクロマトグラフィー分析、熱分解温度測定あるいは熱分解量測定(DTA−TG測定)等にかけて界面活性剤の存在を確かめることができる。
【0019】
本発明に用いる有機変性粘土鉱物中の第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤の含量は水膨潤性粘土鉱物100gに対して60〜140ミリ当量(以下 meqと略す。)であることが好ましい。又有機変性粘土鉱物中の非イオン性界面活性剤の含有量は、水膨潤性粘土鉱物100gに対して5〜200gが好ましく、さらに好ましくは15〜170gである。
【0020】
本発明の油中水型乳化組成物に配合される有機変性粘土鉱物の配合量は、乳化組成物全量に対し0.25〜5重量%であり、0.5〜3重量%が好ましい。
【0021】
本発明に用いられる低分子ベタインとは、トリメチルグリシンが最も好適に使用され、γ−ブチロベタインも好適に使用される。
【0025】
本発明において、油中水型乳化組成物にトリメチルグリシンまたはγ−ブチロベタインを配合することによって、温度安定性及び使用性を驚くほど向上させることが出来る。また、トリメチルグリシンまたはγ−ブチロベタインは、油中水型乳化組成物にムコ多糖類等の保湿剤を配合した場合にもそのべたつきを抑える効果を発揮し、さらに、トリメチルグリシンまたはγ−ブチロベタインそれ自体に保湿効果、肌あれ改善効果がある。
【0026】
本発明の油中水型乳化組成物に配合されるトリメチルグリシンまたはγ−ブチロベタインの配合量は、乳化組成物全量に対し0.01〜20重量%であり、0.1〜1.0重量%が好ましい。
【0027】
本発明に用いられる油分は、化粧品、医薬部外品、医薬品等で用いられる一般的な油分は、全て用いることができ、その範囲も極性油から非極性油まで幅広く用いることができる。油分を例示すれば、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、分岐鎖状径パラフィン等の炭化水素油、イソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート等のエステル油、デカメチルペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油等が挙げられる。また、ワセリン、マイクロクリスタリン、ラノリン、ビースワックス等のワックス類も本発明の効果を損なわない範囲で配合可能である。
【0028】
本発明の油中水型乳化組成物に配合される油分の配合量は、乳化組成物全量に対し5〜90重量%程度であり、10〜80重量%が好ましい。
【0029】
本発明の必須成分である水の中には他の水溶性成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【0030】
本発明の油中水型乳化組成物は上記必須成分の他に必要に応じ本発明の効果を損なわない範囲で油溶性および水溶性の物質を配合して常法により製造することが出来る。例えば、薬剤、保湿剤、増粘剤、防腐剤、金属封鎖剤、香料等の通常化粧品、医薬部外品及び医薬品に用いられる成分を配合し、常法により油中水型乳化組成物の皮膚外用剤を製造することが出来る。なお、上記必須成分は油中水型乳化組成物である皮膚外用剤全量に対してそれぞれ配合される。本発明の皮膚外用剤とは、皮膚化粧料、毛髪化粧料などの化粧品、医薬部外品及び医薬品として利用される。
【0031】
【実施例】
次に本発明を実施例を挙げてさらに詳細に説明する。本発明はこれによって限定されるものではない。実施例中の数字は重量%を表す。
【0032】
先ず本発明に乳化剤として用いる有機変性粘土鉱物調製の一例を次に示す。
「製造例1」
ベンジルジメチルステアリルアンモニウムクロリド45g(約100meq相当)とPOE(6)ラウリルエーテル30gを50℃で溶解した水溶液500mlに水膨潤性粘土鉱物であるビーガム(米国バンダービルト社の商品名)100gを添加し約30分間ディスパーにて十分に分散し混合した。次いで濾過器により水を除去後、約一昼夜乾燥して本発明に用いる有機変性粘土鉱物を得た。
【0033】
「実施例1:油中水型乳化組成物」
製造例1で得た有機変性粘土鉱物1部をセチルイソオクタノエート30部と混合しあらかじめ油相を形成し、引続き水70部とトリメチルグリシン1部を室温で加え、ホモミキサーで攪拌乳化して本発明の油中水型乳化組成物を製造した。
【0034】
「実施例2:油中水型乳化組成物」
製造例1で得た有機変性粘土鉱物1部をデカメチルペンタシロキサン30部と混合しあらかじめ油相を形成し、引続き水70部とγ−ブチロベタイン1部を室温で加え、ホモミキサーで攪拌乳化して本発明の油中水型乳化組成物を製造した。
【0035】
次に本発明の油中水型乳化組成物からなる皮膚外用剤を製造し、温度安定性及び使用性を評価した。なお、有機変性粘土鉱物は製造例1に準じて得たものを使用した。
【0036】
「製法」
(1)〜(5)を混合分散し、予め油相を調製しておく。次に(6)〜(8)を均一に溶解したものを徐々にディスパーで攪拌しながら油相に添加し本発明のモイスチャークリームを得た。
【0037】
「実施例4:ナイトクリーム」
(1)スクワラン 30.0
(2)ラノリン 1.0
(3)マイクロクリタリンワックス 1.0
(4)0.5gのベントン38をPOE(14)
ジオレイン酸エステル0.05gで処理して
得た有機変性粘土鉱物 0.6
(5)パラヒドロキシ安息香酸ブチル 0.1
(6)香料 適 量
(7)L−グルタミン酸ナトリウム 0.1
(8)γーブチロベタイン 1.0
(9)ピロリドンカルボン酸ナトリウム 4.0
(10)プロピレングリコール 5.0
(11)水 残 量
「製法」
(1)〜(6)を混合分散し、予め油相を調製しておく。次に(7)〜(11)を均一に溶解したものを徐々にディスパーで攪拌しながら油相に添加し本発明のモイスチャークリームを得た。
【0038】
「比較例1:モイスチャークリーム」
実施例3の処方からトリメチルグリシンを除いた他は実施例3と同様にしてモイスチャークリームを製造した。
【0039】
「比較例2:ナイトクリーム」
実施例4の処方からγ−ブチロベタインを除いた他は実施例4と同様にしてナイトクリームを製造した。
【0040】
「温度安定性及び使用性試験」
実施例1、2、3、4、比較例1、2の温度安定性及び実施例3、4、比較例1、2の女性専用パネル20名による使用性の試験の結果をそれぞれ「表1」に示す。温度安定性試験は、0℃、25℃及び50℃に1か月放置後の外観を、また、使用性試験は女性専用パネル20名の前腕部に塗布して、塗布に伴う使用感触(べたつき)をそれぞれ下記の判定基準で判定した。
【0041】
「温度安定性」
<判定基準>
○:分離が全くみられない
△:分離が殆どみられない
×:液相(油相又は水相)の分離が生じた
【0042】
「使用性」
<評価基準>
著効 :べたつかない
有効 :わずかにべたつくが、使用性上問題のない程度である
やや有効:べたつく
無効 :著しくべたつく
<判定基準>
◎:著効、有効又はやや有効であると認めた被験者が16名以上
○:著効、有効又はやや有効であると認めた被験者が11〜15名
△:著効、有効又はやや有効であると認めた被験者が6〜10名
×:著効、有効又はやや有効であると認めた被験者が5名以下
【0043】
【表1】
【0044】
「表1」から、本発明の油中水型乳化組成物及び皮膚外用剤は優れた温度安定性を有し、べたつかず滑らかでしっとりした感触を与えることが可能な優れた使用性も有していることが分かる。
【0045】
【発明の効果】
本発明によれば、優れた温度安定性を有する油中水型乳化組成物を提供することが出来る。本発明の油中水型乳化組成物は乳化剤として用いる有機変性粘土鉱物の配合量が少なくてすみ、また、従来、油中水型乳化組成物に配合が困難であった極性の高い油分も使用することが出来る。さらに、本発明の油中水型乳化組成物は従来の油中水型乳化組成物の使用感触であるべたつきが軽減され皮膚に塗布した場合の伸びが軽いので、優れた使用性を有する皮膚外用剤を提供することが出来る。
Claims (3)
- 水膨潤性粘土鉱物を第四級アンモニウム塩型カチオン界面活性剤と非イオン性界面活性剤とで処理して得られる有機変性粘土鉱物と、トリメチルグリシンまたはγ−ブチロベタインと、油分と水とを含有することを特徴とする油中水型乳化組成物。
- 前記有機変性粘土鉱物の配合量が0.5〜3重量%であって、前記トリメチルグリシンまたはγ−ブチロベタインの配合量が0.1〜1.0重量%であることを特徴とする請求項1記載の油中水型乳化組成物。
- 請求項1または2記載の油中水型乳化組成物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
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