JP3564103B2 - 咥え折装置の咥え胴 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、輪転印刷機用の咥え折装置の咥え胴に係り、特に稼動中に咥え装置の非開閉部材と開閉部材の隙間の大きさを調節可能な咥え折装置の咥え胴に関する。
【0002】
【従来の技術】
稼動中に咥え装置の非開閉部材と開閉部材の隙間の大きさを調節可能な咥え胴としては、例えば、特公平7−55761号公報、特許第2637067号公報、特許第2779140号公報、及び特許第2848982号公報などに示されているものが公知である。
【0003】
特公平7−55761号公報には、処理するウェブの厚さを機上で測定し、測定結果に基づいて咥え機構における非開閉部材と開閉部材の間隔を調節可能な調節機構を備えた咥え胴が記載されており、この咥え胴は、対向する2つのフレームに回転可能に支持された咥え胴軸を有している。この咥え胴軸には、咥え機構における非開閉部材が取り付けられた第1部材と咥え機構における開閉部材が取り付けられた第2部材が、その咥え同軸の回転中心線を中心に回転可能に取り付けられている。さらに、咥え胴軸と同期して回転可能であるとともに、回転中心線を咥え胴軸の回転中心線と一致させて設けられた第1調節軸と、その咥え胴軸の回転中心線と直角かつ咥え胴の半径方向に伸びる第2回転中心線を中心に回転可能であるとともに、傘歯車を介して第1調節軸の回転が伝達可能に連結された第2調節軸と、咥え胴軸の回転中心線及び第2回転中心線に直角な第3回転中心線を中心に回転可能であるとともに、傘歯車を介して第2調節軸の回転が伝達可能に連結された第3調節軸と、を備えており、第3調節軸の一端は、前記第1部材に取り付けられた雌ねじ部材とねじ連結され、その他端は、前記第2部材に取り付けられた雌ねじ部材とねじ連結されて、咥え胴軸、第1部材、及び第2部材が同期して回転可能に構成されている。そして、前記測定結果に基づいて、第1調節軸を咥え胴軸に対して回転させ、第2調節軸を介して第3調節軸を回転させ、第1部材と第2部材を咥え軸の回転中心線を中心に互いに逆向きに角変位させ、咥え機構における非開閉部材と開閉部材の間隔を、この間に印刷物を差し込む差し刃の位置から均等量ずつ開いたり閉じたりして調節するように構成されている。
【0004】
特許第2637067号公報には、咥え機構における非開閉部材と開閉部材の間隔を調節可能な調節機構を備えた咥え胴が記載されており、この咥え胴は、対向する2つのフレームに回転可能に支持された咥え胴軸を有している。この咥え胴軸には、咥え機構における非開閉部材が取り付けられた第1部材と咥え機構における開閉部材が取り付けられた第2部材が、その咥え胴軸の回転中心線を中心に回転可能に取り付けられている。また、この咥え胴軸と同じ回転中心線周りに同期して回転可能であるとともに、咥え胴軸の回転中心線に沿って移動可能であり、かつその移動方向に対して傾斜した溝を有する調節軸と、前記溝に一端が連係され、前記回転中心線と直角かつ咥え胴の半径方向に変位可能に設けられた調節アームと、を備え、この調節アームの他端には、前記回転中心線と平行かつアームの移動方向に対して等しく傾斜した軸対称の2つの傾斜面が設けられ、この傾斜面の一方が第1部材に接触し、他方が第2部材に接触するように形成されており、この調節機構によって咥え胴軸、第1部材、及び第2部材が同期して回転可能に構成されている。さらに、調節軸とベアリングを介して同一回転中心線上に連結されるとともに、フレームに固定された雌ねじとねじ連結された雄ねじ部材が設けられている。そして、この雄ねじ部材を、回転操作して、調節軸をその回転中心線に沿って移動させることによって、調節アームを半径方向に変位させ、調節アームの軸対称の2つの傾斜面によって、この2つの傾斜面にそれぞれ接触している第1部材と第2部材とを咥え軸の回転中心線を中心に互いに逆向きに角変位させ、咥え機構における非開閉部材と開閉部材の間隔を、この間に印刷物を差し込む差し刃の位置から均等量ずつ開いたり閉じたりして調節するように構成されている。
【0005】
特許第2779140号公報には、咥え機構における非開閉部材と開閉部材の間隔を調節可能な調節機構を備えた咥え胴が記載されており、この咥え胴は、対向する2つのフレームに回転可能に支持された咥え胴軸を有している。この咥え胴軸には、咥え機構における非開閉部材が取り付けられた第1部材が、その回転中心線を中心に回転可能に取り付けられており、咥え機構における開閉部材が取り付けられた第2部材が、第1部材の偏心位置に回転可能に取り付けられている。さらに、第1部材を咥え胴軸と同期して回転させるように咥え胴軸から第1部材に回転伝達する歯車機構が設けられており、この歯車機構のはすば歯車のねじれを利用して、咥え胴軸に対して第1部材を咥え胴軸の回転中心線を中心に角変位させ、第1部材の角変位を他の歯車機構又はリンク機構を介して第2部材に伝達し、第1部材に対して第2部材を前記第1部材の角変位方向と逆向きに角変位させて開閉部材を非開閉部材に対して遠近させるように設けられている。そして、この構成によって第1部材を咥え胴軸に対して角変位させるとともに第2部材を第1部材に対して角変位させ、咥え機構における非開閉部材と開閉部材の間隔を、この間に印刷物を差し込む差し刃の位置から均等量ずつ開いたり閉じたりして調節するようになっている。
【0006】
特許第2848982号公報には、咥え機構における非開閉部材と開閉部材の間隔を調節可能な調節機構を備えた咥え胴が記載されており、この咥え胴は、対向する2つのフレームに回転可能に支持された咥え胴軸を有している。この咥え胴軸には、咥え機構における非開閉部材が取り付けられた第1部材と咥え機構における開閉部材が取り付けられた第2部材が、その咥え同軸の回転中心線を中心に回転可能に取り付けられている。さらに、第1部材と第2部材との間に介在させて咥え胴軸の回転中心線を中心に回転可能に設けるとともに、咥え胴軸と一体で回転可能であるよう咥え胴軸に設けられた歯車と噛み合わされた伝動歯車を設け、咥え胴軸と一体で回転するときは第1部材と第2部材とを一体で回転させ、また、伝動歯車のはずばのねじれを利用して咥え胴軸に対して角変位するときは第1部材と第2部材とを互いに逆向きに角変位させて開閉部材を非開閉部材に対して遠近するようにし、又は、第1部材及び第2部材を咥え胴軸と同期して回転させるように咥え胴軸から第1部材及び第2部材に回転伝達する歯車機構のはすば歯車のねじれを利用して、咥え胴軸に対して第1部材及び第2部材を咥え胴軸の回転中心線を中心に互いに逆向きに角変位させて、開閉部材を非開閉部材に対して遠近するように設けられている。そして、この構成によって、第1部材及び第2部材を咥え胴軸に対して角変位させ、咥え機構における非開閉部材と開閉部材の間隔を、この間に印刷物を差し込む差し刃の位置から均等量ずつ開いたり閉じたりして調節するようになっている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来の咥え胴は、共通の解決すべき課題を有している。すなわち、非開閉部材と開閉部材の間隔を調節するための調節機構を形成する諸部材の可動連係部及び可動連結部、つまり歯車の噛み合い部、雄ねじと雌ねじのねじ連結部、可動嵌め合わせ部などに設けられた可動のための僅少隙間が不確定な状態で集積されるため、隙間調節量が、これら僅少隙間を総計した範囲で変動し正確さを欠いた極めて曖昧なものとなり、非開閉部材の咥え作用部と開閉部材の咥え作用部との間隔を正しく設定できなかった。そのため、咥えが弱すぎて印刷物を取り落として咥え折装置に紙詰まりを生じさせたり、本来一定になるべき印刷物の排紙ピッチに乱れを生じる不具合があり、また反対に咥えが強すぎて印刷物を破損したり、互いに接触している印刷面の印刷画像の明確なセットオフを生じる不具合があった。特に、咥える印刷物が薄い場合にこの傾向が大きかった。
【0008】
そこで、本発明は、処理する印刷物の厚さに合わせて咥え機構の非開閉部材と開閉部材の間隔を正確に調節できる咥え折装置の咥え胴を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
以上の目的を達成するため、本発明は、咥え機構の非開閉部材が設けられている第1ベース部材と、咥え作用部が前記非開閉部材の咥え作用部に近接するように開閉部材が設けられている第2ベース部材と、両端に端軸を有し、これら端軸によって対向する一対のフレームに回転可能に支持されている第3ベース部材と、を備え、前記第1ベース部材及び前記第2ベース部材は、前記第3ベース部材の回転中心線を中心に前記第3ベース部材に対して回転可能に設けられ、前記第1ベース部材、前記第2ベース部材及び前記第3ベース部材が同期して回転しつつ非開閉部材に対して開閉部材が開閉して印刷物を咥えるように構成された咥え折装置の咥え胴において、前記第1ベース部材と前記第2ベース部材を前記第3ベース部材の回転中心線を中心に互いに相反する向きに角変位させて、咥え機構の非開閉部材の咥え作用部と開閉部材の咥え作用部の間隔を調節可能な咥え隙間調節機構と、前記第1ベース部材にその回転軌跡の接線と平行な方向に力を常時付与する第1力付与機構と、前記第2ベース部材にその回転軌跡の接線と平行な方向に力を常時付与する第2力付与機構と、を備えたことを特徴とするものである。
【0010】
このような本発明に係る咥え胴において、咥え隙間調節機構を操作して、第1ベース部材と第2ベース部材を第3ベース部材の回転中心線を中心に互いに逆向きに等量だけ角変位させると、第1ベース部材に設けられた非開閉部材と第2ベース部材に設けられた開閉部材が、第3ベース部材の回転中心線を中心に互いに逆向きに位置を移動させられ、非開閉部材と開閉部材の咥え作用部の間隔が変化調節される。この際、第1力付与機構と第2力付与機構は、回転軌跡の接線と平行な力を第1ベース部材と第2ベース部材に常時付与しているので、咥え隙間調節機構における可動部は、僅少隙間分だけその対応部の一方に常時押し付けられ、第3ベース部材の回転中心線を中心とする円周方向、すなわち非開閉部材の作用部と開閉部材の作用部の間隔方向の可動のための僅少隙間が常時一方方向に集積する。したがって、前記調節操作の際に僅少隙間が不確定な状態で集積されることがなくなり、調節量の正確さを欠くことはない。
【0011】
本発明に係る咥え胴において、前記第1力付与機構と前記第2力付与機構によって常時付与される力の向きは、互いに反対方向を向いていることが好ましい。また、前記第1力付与機構と前記第2力付与機構が前記第3ベース部材に設けられていることが好ましく、前記第1力付与機構と前記第2力付与機構が一体に設けられ、第1ベース部材と第2ベース部材の間に介在されていることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明に係る咥え胴において、前記咥え隙間調節機構は、前記第3ベース部材に対して回転可能に支持されるとともに、前記第1ベース部材に対応する部位に第1偏心カムを有し、かつ咥え胴の側面から一方の前記フレーム側に突き出た部位に第1歯車を有する第1カム軸と、前記第3ベース部材に対して回転可能に支持されるとともに、前記第2ベース部材に対応する部位に第2偏心カムを有し、かつ咥え胴の側面から前記一方のフレーム側に突き出た部位に第2歯車を有する第2カム軸と、前記第1偏心カムが嵌め合わされるとともに、前記第1ベース部材の半径方向にのみ移動可能に前記第1ベース部材に設けられた第1スライド部材と、前記第2偏心カムが嵌め合わされるとともに、前記第2ベース部材の半径方向にのみ移動可能に前記第2ベース部材に設けられた第2スライド部材と、前記第3ベース部材の軸端の前記一方のフレームから突き出た部位に取り付けられ、駆動源側の歯車と噛み合わされ第3ベース部材に回転伝動する従動歯車と、前記一方のフレームに前記第3ベース部材の回転中心線を中心にして回転可能に支持されるとともに、前記一方のフレームの一方側に突き出た部位に第4歯車を有し、かつ前記一方のフレームの他方側に突き出た部位に第1歯車及び第2歯車に同時に噛み合う第3歯車を有する歯車機構と、前記従動歯車に噛み合う第5歯車と前記第4歯車に噛み合う第6歯車とを同一回転中心線をもって一体で回転可能に、かつ回転中心線と平行な方向に変位可能に設けるとともに、前記第5歯車と前記第6歯車の少なくともいずれか一方の歯車とこの歯車と噛み合う歯車をはすば歯車とした伝動歯車機構と、前記伝動歯車機構をその回転中心線と平行な方向に変位させる調節操作機構と、を備えていることが好ましい。
【0013】
このような構成において、咥え隙間調節機構は、以下のように作用する。すなわち、調節操作機構を操作して、伝動歯車機構をその回転中心線と平行に移動させると、伝動歯車機構のはすば歯車及びこれと噛み合うはすば歯車のうち駆動伝動の下流側のはすば歯車が、上流側のはすば歯車の歯のねじれによって、自らの回転中心線を中心に角変位させられる。つまり、従動歯車の下流側の第5歯車及び第6歯車を介して、その下流側の第4歯車が自らの回転中心線(3つのベース部材と同一の回転中心線)を中心に角変位させられる。第4歯車が角変位すると、これと一体に設けられた第3歯車が角変位し、第3歯車と噛み合わされた第1歯車と第2歯車が同時に角変位し、第1カム軸及び第2カム軸が第3ベース部材に対し角変位する。第1カム軸が角変位すると、この軸に設けられた第1偏心カムは、これが嵌め合わせられた第1スライド部材内で角変位して、第1スライド部材を第1ベース部材の半径方向に移動させるとともに、第1スライド部材を介して第1ベース部材に対してその回転軌跡の接線と平行な一方向に力を付与する。この力によって、第1ベース部材は、その回転中心線(第3ベース部材と同一の回転中心線)を中心に一方向に角変位する。また、第2カム軸が角変位すると、この軸に設けられた第2偏心カムは、これが嵌め合わされた第2スライド部材内で角変位して、第2スライド部材を第2ベース部材の半径方向に移動させるとともに、第2スライド部材を介して第2ベース部材に対してその回転軌跡の接線と平行で、第1ベース部材に付与された力と反対の方向に力を付与する。この力によって、第2ベース部材は、その回転中心線(第3ベース部材と同一の回転中心線)を中心に第1ベース部材と反対の方向に角変位する。したがって、第1ベース部材に設けられた非開閉部材と第2ベース部材に設けられた開閉部材は、第3ベース部材の回転中心線を中心に互いに逆向きに位置を移動させられ、両部材のそれぞれの咥え作用部の間隔が調節される。
【0014】
この構成においても、第1力付与機構と第2力付与機構は、互いに逆向きの力を第1ベース部材と第2ベース部材に常時付与するので、咥え隙間調節機構における可動部は、僅少隙間分だけその対応部の一方に常時押し付けられ、第3ベース部材の回転中心線を中心とする円周方向、すなわち非開閉部材の作用部と開閉部材の作用部の間隔方向の可動のための僅少隙間が常時一方方向に集積される。したがって、咥え隙間調節の時に、僅少隙間が不確定な状態で集積されることがなくなり、調節量に正確さを欠くことがない。
【0015】
また、本発明に係る咥え胴において、前記咥え隙間調節機構は、前記第3ベース部材に対して回転可能に支持され、前記第1ベース部材に対応する部位に第1偏心カムを有するとともに前記第2ベース部材に対応する部位に第2偏心カムを有し、さらに咥え胴の側面から一方の前記フレーム側に突き出た部位にカム軸歯車を有するカム軸と、前記第1偏心カムが嵌め合わされるとともに、前記第1ベース部材の半径方向にのみ移動可能に前記第1ベース部材に設けられている第1スライド部材と、前記第2偏心カムが嵌め合わされるとともに、前記第2ベース部材の半径方向にのみ移動可能に前記第2ベース部材に設けられている第2スライド部材と、前記第3ベース部材の軸端の前記一方のフレームから突き出た部位に取り付けられ、駆動源側の歯車と噛み合わされ第3ベース部材に回転伝動する従動歯車と、前記一方のフレームに前記第3ベース部材の回転中心線を中心にして回転可能に支持されるとともに、前記一方のフレームの一方側に突き出た部位に第4歯車を有し、かつ前記一方のフレームの他方側に突き出た部位にカム軸歯車に噛み合う第3歯車を有する歯車機構と、前記従動歯車に噛み合う第5歯車と前記第4歯車に噛み合う第6歯車とを同一回転中心線をもって一体で回転可能に、かつ回転中心線と平行な方向に変位可能に設けるとともに、前記第5歯車と前記第6歯車の少なくともいずれか一方の歯車とこの歯車と噛み合う歯車をはすば歯車とした伝動歯車機構と、前記伝動歯車機構をその回転中心線と平行な方向に変位させる調節操作機構と、を備えていることが好ましい。
【0016】
このような構成において、咥え隙間調節機構は、第1偏心カムと第2偏心カムとが一つのカム軸に設けられている点を除けば、上記構成と同じであり、第1カム軸と第2カム軸の作用を一つのカム軸が代行するだけなので、他の作用は、上記構成の咥え隙間調節機構と同じである。
【0017】
また、本発明に係る咥え胴において、前記第5歯車及び前記第6歯車のいずれをもはすば歯車とし、それらのねじれ角とねじれ方向の少なくともいずれか一方を互いに相違させて設けられていることが好ましい。このような構成の咥え隙間調節機構は、その作用において、調節操作機構の操作によって生じる第4歯車の変位の大きさが、第5歯車のねじれによる変位と第6歯車のねじれによる変位が合わせられたものとなるほかは、上述の咥え隙間調節機構と同じである。
【0018】
さらに、本発明に係る咥え胴において、前記従動歯車の回転軌跡の接線と平行な一方向の力を前記従動歯車の偏心位置に対して常時付与するとともに、前記従動歯車の回転軌跡の接線と平行で、前記一方向の力と反対方向の力を前記第4歯車の偏心位置に対して常時付与する反発機構を前記従動歯車と第4歯車の間に介在させていることが好ましい。
【0019】
このような構成により、咥え隙間調節機構は、従動歯車と第4歯車の間に反発機構が作用する。すなわち、反発機構が、駆動伝動において従動歯車の下流側となる第4歯車にその回転軌跡の接線方向の力を常時付与するので、第4歯車は、その回転中心線(従動歯車の回転中心線と同じ)を中心に角変位し、その一方の歯面が常時これに対応する従動歯車の歯面に押し付けられる。つまり、従動歯車と第5歯車の間のバックラッシュ及び第6歯車と第4歯車の間のバックラッシュに起因するこれら歯車の回転中に生じる自由回転は阻止され、これにより咥え隙間調節操作時にバックラッシュ分の僅少隙間が不確定な状態で集積されることがなくなり調節量に正確さを欠くことがない。
【0020】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る咥え胴の第1の実施の形態について図面に基づいて説明する。図1は、第1の実施の形態に係る咥え胴の断面図であり、図2又は3のIa―Ia線に沿った断面図とIb−Ib線に沿った断面図を合成した断面図である。図2は、図1のII矢視図、図3は、図1のIII―III線に沿った断面図、図4は、図1のIV−IV線に沿った断面図、図5は、図1のV−V線に沿った断面図、図6は、図1のVI−VI線に沿った断面図、図7は図6のVII−VII線に沿った一部を省略して示す断面図、図8は、図2のVIII−VIII沿った断面図である。
【0021】
第1の実施の形態に係る咥え胴JCは、第1ベース部材1、第2ベース部材2、第3ベース部材3及び咥え隙間調節機構4を備えている。
【0022】
第1ベース部材1は、図1及び図4に示すように、咥え胴JCの両側に配置された一対の第1プレート1a、1bと、咥え胴JCの軸線と平行に設けられ、これら第1プレート1aと1bを一体に連結するとともに咥え胴JCの外周面の一部を形成する3つの第1ステー1c、1c、1cと、を備えている。これら第1ステー1c、1c、1cは、咥え胴JCの回転中心線を中心とする円周方向に等間隔をおいて設けられている。2つの第1プレート1a、1bは、後述する第3ベース部材3の小径部3e、3fに、第3ベース部材3の回転中心線を中心に第3ベース部材3に対して回転可能に設けられている。また、第1ステー1cの咥え胴JCの回転中心線と平行な一側には、咥え機構Jの非開閉部材11が設けられている。さらに、第1プレート1a、1bには、咥え胴JCの半径方向外側に開口された切欠き19、19、19が、咥え胴JCの回転中心線を中心とする円周方向に等間隔をおいて設けられている。これら切欠き19、19、19それぞれには、後述する咥え隙間調節機構4の第1スライド部材47が、咥え胴JCの半径方向にのみ移動可能な状態で取り付けられており、切欠き19、19、19は、キャップ18によってその外周面側の開口が閉口されている。
【0023】
第2ベース部材2は、図1及び図5に示すように、咥え胴JCの両側に配置された一対の第2プレート2a、2bと、咥え胴JCの軸線と平行に設けられ、これら第2プレート2aと2bを一体に連結するとともに咥え胴JCの外周面の一部を形成する3つの第2ステー2c、2c、2cと、を備えている。これら第2ステー2c、2c、2cは、咥え胴JCの回転中心線を中心とする円周方向に等間隔をおいて設けられている。2つの第2プレート2a、2bは、後述する第3ベース部材3の小径部3e、3fに、第3ベース部材3の回転中心線を中心に第3ベース部材3に対して回転可能に設けられている。また、第2プレート2a、2bには、両者に亘って後述する咥え機構Jの開閉部材21、21・・・が取り付けられた開閉軸22が回転可能に支持されており、これら開閉軸22は、咥え胴JCの回転中心線を中心とする円周方向に等間隔をおいて3つ設けられている。さらに、第2プレート2a、2bには、咥え胴JCの半径方向外側に開口された切欠き29、29、29が、咥え胴JCの回転中心線を中心とする円周方向に等間隔をおいて設けられている。これら切欠き29、29、29それぞれには、後述する咥え隙間調節機構4の第2スライド部材57が、咥え胴JCの半径方向にのみ移動可能な状態で取り付けられており、切欠き29、29、29は、キャップ28によってその外周面側の開口が閉口されている。
【0024】
また、開閉軸22の一端(図1の上側)は、第2プレート2aを貫通しており、その先端には、開閉軸22の回転中心線に対して直角に延びるアーム23の一端が取り付けられている。アーム23の他端には、開閉軸22の回転中心線と平行に設けられたピンを介してカムフォロアー24が取り付けられており、カムフォロアー24は、スリーブSaに固定されて設けられた溝カム25に入れられている。すなわち、咥え胴JCが回転すると、カムフォロアー24は、溝カム25に沿って変位し、開閉軸22を介して開閉部材21、21・・・を適宜のタイミングで角変位動作させるよう構成されている。また、開閉軸22は、ねじりばね26、26によって常時一方向に回転するよう力が付与されており、カムフォロアー24が溝カム25の一方のガイド面に接触して動作するよう構成されている。
【0025】
第3ベース部材3は、図1及び図6に示すように、両端部に咥え胴の回転中心線と同軸の端軸31a、31bを有する本体3zと、本体3zの端軸31a、31bよりも内側に、端軸31a、31bよりも大径で、かつ本体3zよりも小径に形成された小径部31e、31fと、本体3zの小径部3e、3fより内側に、咥え胴JCの回転中心線を中心とする円周方向に等間隔をおいて、半径方向に突出して設けられている立上がり部3d、3d・・・と、立上がり部3d、3d・・・の先端に取り付けられ、咥え胴JCの軸線と平行に設けられ、咥え胴JCの外周面の一部を形成する第3ステー3c、3c、3cと、を備えており、端軸31a、31bを介して対向して設けられたフレームFa、Fbに回転可能に支持されて設けられている。すなわち、端軸31aは、軸受32、スリーブSaを介してフレームFaに回転可能に支持され、端軸31bは、軸受33、咥え隙間調節機構4の歯車機構スリーブ42、軸受34、スリーブSbを介してフレームFbに回転可能に支持されている。また、小径部3fは、端部に向かって小径となる二段の段状に形成され、その大径側には、第1プレート1bと第2プレート2bが回転可能に取り付けられており、小径側には、押さえプレート3gが取り付けられている。この押さえプレート3gとその反対側に設けられた立上がり部3d、3d・・・は、軸受48a、58a、48b、58bを介して第1カム軸45と第2カム軸55を第3ベース部材3に対して回転可能に支持している。さらに、端軸31bのフレームFbを貫通した先端には、咥え胴JCに回転駆動を伝達する従動歯車38が取り付けられており、従動歯車38は、図2に示すように駆動源側の歯車DGと噛み合わされている。従動歯車38及び駆動源側の歯車DGは、図示の実施の形態ではいずれもはすば歯車である。
【0026】
また、図6、図7に示すように、第1カム軸45及び第2カム軸55のいずれもが取り付けられていない立上がり部3dには、第1ベース部材1の偏心位置に第1ベース部材1の回転軌跡の接線と平行な一方向に力を付与する第1力付与機構8と、第2ベース部材2の偏心位置に第2ベース部材2の回転軌跡の接線と平行な一方向に力を付与する第2力付与機構9が設けられている。すなわち、第1力付与機構8は、第1ステー1cと対向する立上がり部3dの壁面に設けられ、第2力付与機構9は、第2ステー2cと対向する立上がり部3dの壁面に設けられている。これら第1力付与機構8及び第2力付与機構9の第1ステー1c及び第2ステー2cに対向する位置には、それら第1ステー1c及び第2ステー2cに先端を向けた押し部材81、91が立上がり部3dの壁面から突出して設けられている。また、第1ステー1cの押し部材81に対向する面には、押し部材81と接触する受け部材89が設けられており、第2ステー2cの押し部材91に対向する面には、押し部材91と接触する受け部材99が設けられている。そして、押し部材81が受け部材89に接触してこれを一方向に押し、押し部材91が受け部材99に接触してこれをその反対方向に押すよう構成されている。
【0027】
第1力付与機構8は、前述した押し部材81と、第1ステー1cに向かって開口し、その開口の縁に内側に突出する止め部材84が設けられ、押し部材81をその先端が開口から突出した状態で収容するケース83と、ケース83内に収容された押し部材81を第1ステー1cに向かって力を付与する圧縮ばね82と、を備えており、止め部材84は、押し部材81に形成された段部に干渉して、押し部材81がケース83から飛び出すのを防止するよう構成されている。また、同様に第2力付与機構9は、前述した押し部材91と、第2ステー2cに向かって開口し、その開口の縁に内側に突出する止め部材94が設けられ、押し部材91をその先端が開口から突出した状態で収容するケース93と、ケース93内に収容された押し部材91を第2ステー2cに向かって力を付与する圧縮ばね92と、を備えており、この止め部材94は、押し部材91に形成された段部に干渉して、押し部材91がケース93から飛び出すのを防止するよう構成されている。
【0028】
咥え隙間調節機構4は、前述のように押さえプレート3gとその反対側に設けられた立上がり部3d、3d・・・に軸受48a、48bを介して回転可能に支持されている第1カム軸45と、第1カム軸45の第1プレート1a、1bの切欠き部19に対応する位置に、第1カム軸45と一体で回転可能に設けられた第1偏心カム部材46、46と、第1偏心カム46が回転可能に嵌め合わされているとともに、第1プレート1a、1bの半径方向にのみ移動可能に切欠き部19に装着された第1スライド部材47と、押さえプレート3gを貫通した第1カム軸45の先端に第1カム軸45と一体で回転可能に設けられた第1歯車49と、を備え、同様に、前述のように押さえプレート3gとその反対側に設けられた立上がり部3d、3d・・・に軸受58a、58bを介して回転可能に支持されている第2カム軸55と、第2カム軸55の第2プレート2a、2bの切欠き部29に対応する位置に、第2カム軸55と一体で回転可能に設けられた第2偏心カム部材56、56と、第2偏心カム56が回転可能に嵌め合わされているとともに、第2プレート2a、2bの半径方向にのみ移動可能に切欠き部29に装着された第2スライド部材57と、押さえプレート3gを貫通した第2カム軸55の先端に第2カム軸55と一体で回転可能に設けられた第2歯車59と、を備えている。また、第1カム軸45と第2カム軸55は、それぞれの中心線が第3ベース部材3の回転中心から同じ距離に位置するように設けられている。第1歯車49と第2歯車59は、同一歯数、同一ピッチ円直径を有し、歯車機構スリーブ42の基端(図1の上側)に取り付けられ歯車機構スリーブ42と一体で回転可能な第3歯車43と噛み合わされている。そして、第1偏心カム46と第2偏心カム56は、第3歯車43及び第1歯車49を介して第1カム軸45が角変位するとともに第3歯車43及び第2歯車59を介して第2カム軸55が角変位するときに、第1ベース部材1と第2ベース部材2が第3ベース部材3の回転中心線を中心に互いに逆向きに同じ角度だけ角変位するよう配置されている。歯車機構スリーブ42の先端(図1の下側)には、第4歯車44が歯車機構スリーブ42と一体で回転可能に取り付けられている。図示の第1の実施の形態においては、第4歯車44は、従動歯車38と同一ピッチ円直径を有するとともに、ねじれの向きが従動歯車38と反対であるはすば歯車である。
【0029】
さらに、咥え隙間調節機構4は、調節操作機構60bで操作可能な伝動歯車機構60aを備えている。伝動歯車機構60aは、従動歯車38と噛み合う第5歯車65及び第4歯車44と噛み合う第6歯車66が同一回転中心線で一体で回転可能であるとともに、それらの回転中心線と平行に往復移動可能に設けられ、調節操作機構60bによって回転中心線と平行に往復移動され、かつ移動した位置に固定されるよう設けられている。すなわち、咥え胴JCの回転中心線と平行に設けられ、フレームFbに固定されたスプライン軸61に軸方向に移動可能に移動スリーブ62が取り付けられ、この移動スリーブ62に、軸受を介して第5歯車65と第6歯車66とが回転可能に取り付けられている。さらに、移動スリーブ62の先端部には、雄ねじ部材63の一方端が、軸受を介して、第5歯車65と第6歯車66の回転中心線と軸線が一致した状態で回転可能に取り付けられている。この雄ねじ部材63は、雄ねじが形成された雄ねじ部がフレームFbに設けられたブラケット69の雌ねじ部64とねじ結合され、先端にはハンドル67が取り付けられている。また、雄ねじ部材63は、その回転を阻止するロック機構68によって固定可能に設けられている。
【0030】
第1の実施の形態に係る咥え胴JCにおいて、従動歯車38と第4歯車44との間には、一対の反発機構7が設けられている。反発機構7は、図2及び図8に示すように、第4歯車44の従動歯車38と対向する面に基部が取り付けられ、従動歯車38に形成された貫通長穴39を通って従動歯車38の外側面から突き出るよう設けられた軸71と、軸71の従動歯車38の外側面から突き出た部分に軸受75を介して基部が回転可能に取り付けられた案内棒72と、従動歯車38が第5歯車65と噛み合い、第4歯車44が第6歯車66と噛み合った状態で、軸71の中心から案内棒72の先端までの長さより短い距離だけ離れた従動歯車38の外側面の位置に、案内棒72の先端が突き抜け可能に設けられたブラケット74と、案内棒72の基部とブラケット74の間に案内棒72に沿って伸縮可能に設けられた圧縮ばね73と、を備えている。反発機構7は、この圧縮ばね73の反発力によって、従動歯車38と第4歯車44とに互いに逆向きの接線方向に力を付与するよう作用する。
【0031】
以上のような構成によれば、咥え折装置を動作させ咥え胴JCを回転すると、カムフォロアー24が溝カム25に沿って変位し、それにより開閉軸22がアーム23を介して角変位する。開閉軸22が角変位すると、それにより開閉軸22に取り付けられた開閉部材21が角変位し、その咥え作用部である先端が、非開閉部材11の咥え作用部に適宜のタイミングで接近と離隔を繰り返し、非開閉部材11と開閉部材21は、接近した際にそれらの咥え作用部の間に印刷物を咥える。この咥え折装置の動作において、非開閉部材11と開閉部材21の作用部の間隔が、咥えられる印刷物の厚さに対して適切でないときは、咥え隙間調節機構4を操作することによって、非開閉部材11の咥え作用部と開閉部材21の咥え作用部が接近したときの距離、すなわち咥え隙間を調節する。
【0032】
すなわち、咥え隙間の調節は、先ず、咥え隙間調節機構4のロック機構68による雄ねじ部材63へのロックを解き、調節操作機構60bのハンドル67を操作して、雄ねじ部材63を回転する。雄ねじ部材63は、回転すると、雌ねじ部64とのねじ作用によって移動し、それに伴い移動スリーブ62、及びそれに軸受を介して回転可能に設けられた第5歯車65と第6歯車66がスプライン軸61に沿って移動する。この際、第5歯車65は、駆動力によって第5歯車65に対して固定されている駆動上流側の従動歯車38のはすばのねじれに沿って角変位し、それによりこの第5歯車65と一体に設けられた第6歯車66も同様に角変位する。同様に、第4歯車44は、駆動力によって第4歯車44に対して固定されている駆動上流側の第6歯車66のはすばのねじれに沿って角変位する。すなわち、第4歯車44は、従動歯車38に対する第5歯車65の角変位を第6歯車を介して伝達され、さらに第6歯車66に対する自らの角変位を加えて角変位する。そして、この角変位は、歯車機構スリーブ42を介して第3歯車43に伝達され、第3歯車43と噛み合わされた第1歯車49及び第2歯車59を角変位させる。
【0033】
第1歯車49が角変位すると、第1カム軸45が第3ベース部材3に対して角変位し、第1偏心カム46は、嵌め合わせられた第1スライド部材47内で角変位して、第1スライド部材47を第1ベース部材1の半径方向に移動させるとともに、第1スライド部材47を介して第1ベース部材1に対してその回転軌跡の接線と平行な一方向の力を付与し、第1ベース部材1を、第3ベース部材3の回転中心線を中心に一方向に角変位させる。同様に、第2歯車59が角変位すると、第2カム軸55が第3ベース部材3に対して角変位し、第2偏心カム56は嵌め合わせられた第2スライド部材57内で角変位して、第2スライド部材57を第2ベース部材2の半径方向に移動させるとともに、第2スライド部材57を介して第2ベース部材2に対してその回転軌跡の接線と平行な他方向の力を付与し、第2ベース部材2を第3ベース部材3の回転中心線を中心に他方向に角変位させる。すると、第1ベース部材1に取り付けられた非開閉部材11と第2ベース部材2に取り付けられた開閉部材21が、第3ベース部材3の回転中心線を中心として互いに逆向きに位置を移動し、両部材それぞれの咥え作用部の間隔が変化して調節される。調節が終了したらロック機構68によって雄ねじ部材63を固定する。
【0034】
この際、第1力付与機構8は、ケース83に収容された圧縮ばね82が押し部材81及び受け部材89を介して第1ベース部材1を一の方向に押することによって、第1ベース部材1を第3ベース部材3に対して相対的に図6の時計回りに回転し得る力を第1ベース部材1に付与し、第2力付与機構9は、ケース93に収容された圧縮ばね92が押し部材91及び受け部材99を介して第2ベース部材2をその反対方向に押することによって、第2ベース部材2を第3ベース部材3に対して相対的に図6の反時計回りに回転し得る力を付与する。すなわち、第1力付与機構8と第2力付与機構9は、互いに逆向きの力を第1ベース部材1と第2ベース部材2に常時付与し、咥え隙間調節機構4における可動部を僅少隙間分だけその対応部の一方に常時押し付け、第3ベース部材3の回転中心線を中心とする円周方向、すなわち非開閉部材11の咥え作用部と開閉部材21の咥え作用部との間隔方向の可動のための僅少隙間が常時一方向に集積し、調節操作の時に、僅少隙間が不確定な状態で集積されることはない。
【0035】
したがって、第1の実施の形態に係る咥え胴において、開閉部材21と非開閉部材11との間隔を大きくする場合、第1ベース部材1と第2ベース部材2の角変位は、第1ベース部材1が第1力付与機構8の圧縮ばね82の力に抗して、第2ベース部材2が第2力付与機構9の圧縮ばね92の力に抗して、それぞれ第3ベース部材3に対し同じ角度だけ行われ、また、開閉部材21と非開閉部材11との間隔を小さくする場合、第1ベース部材1と第2ベース部材2の角変位は、第1ベース部材1が第1力付与機構8の圧縮ばね82の力に従って、第2ベース部材2が第2力付与機構9の圧縮ばね92の力に従って、それぞれ第3ベース部材3に対し同じ角度だけ行われ、調節量に正確さを欠くことがない。なお、非開閉部材11の咥え作用部と開閉部材21の咥え作用部との間隔が最小のときに、押し部材81、91は、それぞれ受け部材89、99に接触するよう配置されて設けられている。
【0036】
また、咥え隙間調節機構4の操作において、従動歯車38と第4歯車44との間には、反発機構7が作用する。すなわち、駆動力によって従動歯車38が第4歯車44に対して固定されているため、従動歯車38に取り付けられたブラケット74と第4歯車44に設けられた軸71との間には、案内棒72を介して設けられた圧縮ばね73の反発力が、案内棒72、軸受75、軸71を介して第4歯車44に作用し、第4歯車44に、図2の反時計回りの力が付与される。その結果、第4歯車44は、その回転中心線(従動歯車38の回転中心線と同じ)を中心に角変位し、その一方の歯面が常時これに対応する第6歯車66の歯面に押し付けられる。そして、この第4歯車44の押し付けにより、第6歯車66及びこれと一体の第5歯車65は、その回転中心線を中心に角変位させられ、第5歯車65の一方歯面が常時これに対応する、駆動力によって第4歯車44に対して固定された従動歯車38の歯面に押し付けられる。したがって、従動歯車38と第5歯車65の間のバックラッシュ及び第6歯車66と第4歯車44の間のバックラッシュがなくなり、これら歯車の回転中にバックラッシュに起因する自由回転がなくなる。これにより、咥え隙間調節操作時に、バックラッシュ分の僅少隙間が不確定な状態で集積されることがなくなり、調節量に正確さを欠くことがない。
【0037】
なお、本発明においては、第5歯車65と第6歯車66のうちいずれか一方の歯車及びこの歯車と噛み合う歯車をはすば歯車とすれば同様の咥え隙間調節作用が得られ、また、第5歯車65と第6歯車66の双方及びこれらと噛み合う歯車をはすば歯車とし、第5歯車65と第6歯車66とのねじれ角を異なるようにしても、同様の咥え隙間調節作用が得られる。
【0038】
次に、本発明に係る咥え折装置の咥え胴の第2の実施の形態について図9に基づいて説明する。図9に示すように、第2の実施の形態に係る咥え胴の咥え隙間調節機構4は、押さえプレート3gとその反対側に設けられた立上がり部3dに軸受52a、52bを介して回転可能に支持されているカム軸51と、カム軸51の第1プレート1a、1bの切欠き部19に対応する位置に、カム軸51と一体で回転可能に設けられた第1偏心カム部材46、46と、第1偏心カム46が回転可能に嵌め合わされているとともに、第1プレート1a、1bの半径方向にのみ移動可能に切欠き部19に装着された第1スライド部材47と、押さえプレート3gを貫通したカム軸51の先端にカム軸51と一体で回転可能に設けられたカム軸歯車50と、を備え、さらに、カム軸51の第2プレート2a、2bの切欠き部29に対応する位置に、カム軸51と一体で回転可能に設けられた第2偏心カム部材56、56と、第2偏心カム56が回転可能に嵌め合わされているとともに、第2プレート2a、2bの半径方向にのみ移動可能に切欠き部29に装着された第2スライド部材57と、を備えている。そして、第1偏心カム46と第2偏心カム56は、第3歯車43及びカム軸歯車50を介してカム軸51が角変位するときに、第1ベース部材1と第2ベース部材2が第3ベース部材の回転中心線を中心に互いに逆向きに同じ角度だけ角変位するよう配置されている。なお、カム軸歯車50が、歯車機構スリーブ42の他方側端に取り付けられ歯車機構スリーブ42と一体で回転可能な第3歯車43と噛み合わされている構成、歯車機構スリーブ42の一方側端に、第4歯車44が歯車機構スリーブ42と一体で回転可能に取り付けられている構成、第4歯車44が、従動歯車38と同一ピッチ円直径を有するとともに、ねじれの向きが従動歯車38と反対であるはすば歯車である構成、咥え隙間調節機構4が、伝動歯車機構(図9においては省略)を備えている構成は、図1乃至6に示す第1の実施の形態のものと同様である。また、第2の実施の形態においても、第1力付与機構、第2力付与機構及び反発機構(図9にはいずれも図示せず)を備えており、前記伝動歯車機構も含め、これら各機構の具体的な構成は、図1乃至6に示す第1の実施の形態のものと同様である。
【0039】
そして、図9に示された第2の実施の形態においては、カム軸歯車50が角変位すると、第1偏心カム46は嵌め合わせられた第1スライド部材47内で角変位して、第1スライド部材47を第1ベース部材1の半径方向に移動させるとともに、第1スライド部材47を介して第1ベース部材1に対してその回転軌跡の接線と平行な一方向の力を付与し、第1ベース部材1を、第3ベース部材3の回転中心線を中心に一方向に角変位させ、かつ同時に、第2変位カム56は嵌め合わせられた第2スライド部材57内で角変位して、第2スライド部材57を第2ベース部材2の半径方向に移動させるとともに、第2スライド部材57を介して第2ベース部材2に対してその回転軌跡の接線と平行な他方向の力を付与し、第2ベース部材2を、第3ベース部材3の回転中心線を中心に他方向に角変位させる。すると、第1ベース部材1に取り付けられた非開閉部材11と第2ベース部材2に取り付けられた開閉部材21とが、第3ベース部材3の回転中心線を中心に互いに逆向きに位置を移動させられ、両部材それぞれの咥え作用部の間隔が変化調節される。
【0040】
なお、第1力付与機構8及び第2力付与機構9は、前記の構成に限定されるものではなく、例えば、ケース83とケース93とを一体にして中空部を連続させる(図示省略)とともに、この中空部に一つの圧縮ばね(図示省略)を装填し、この圧縮ばねの一端を、受け部材89を介して第1ステー1cを押す押し部材81の尾部に接触させるとともに、圧縮ばねの他端を、受け部材99を介して第2ステー2cを押す押し部材91の尾部に接触させ、中空部に装填した一つの圧縮ばねによって、押し部材81と押し部材91とに互いに逆向きの力を付与するように構成しても良い。
【0041】
【発明の効果】
以上のように本発明に係る咥え胴によれば、非開閉部材と開閉部材の間隔を調節するための調節機構を構成する諸部材の可動連係部及び可動連結部、すなわち、歯車の噛み合い部、雄ねじと雌ねじのねじ連結部、可動嵌め合わせ部などに設けられた可動のための僅少隙間が常時予め定めた状態で集積されるので、こらら僅少隙間を正確に把握して非開閉部材と開閉部材の間隔を調節することができ、非開閉部材の咥え作用部と開閉部材の咥え作用部との間隔を正しく設定できる。その結果、印刷物を取り落として咥え折装置に紙詰まりを生じさせたり、印刷物の排紙ピッチに乱れを生じさせることがなくなり、また咥えが強すぎることによる印刷物の破損や接触している印刷面のセットオフがなくなる。したがって、機械効率を向上させることができ、かつ不良印刷物の発生を防止することができ、ひいては、生産性の向上とランニングコストの低減を図ることができる。これら効果は、印刷物の厚薄に拘らず得られるが、特に薄い印刷物において効果的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る咥え折装置の咥え胴の第1の実施の形態を示す部分断面図で、図2又は図3のIa―Ia線に沿った断面図とIb−Ib線に沿った断面図を合成した断面図である。
【図2】図1のII矢視図である。
【図3】図1のIII―III線に沿った断面図である。
【図4】図1のIV−IV線に沿った断面図である。
【図5】図1のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図1のVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】図6のVII−VII線に沿った一部を省略して示す断面図である。
【図8】図2のVIII−VIII沿った断面図である。
【図9】本発明に係る咥え折装置の咥え胴の第2の実施の形態の図1と同じ部分断面図であり、図2のIb−Ibに沿った部分を省略して示す図である。
【符号の説明】
1 第1ベース部材
1a、1b 第1プレート
1c 第1ステー
2 第2ベース部材
2a、2b 第2プレート
2c 第2ステー
3 第3ベース部材
3a、3b 第3プレート
3c 第3ステー
3d 立上がり部
3e、3f 小径部
3g 押さえプレート
3z 本体
4 咥え隙間調節機構
7 反発機構
8 第1力付与機構
9 第2力付与機構
11 非開閉部材
18 キャップ
19 切欠き
21 開閉部材
22 開閉軸
23 アーム
24 カムフォロアー
25 溝カム
26 ねじりばね
28 キャップ
29 切欠き
31a、31b 端軸
32、33、34 軸受
38 従動歯車
39 貫通長穴
41 歯車機構
42 歯車機構スリーブ
43 第3歯車
44 第4歯車
45 第1カム軸
46 第1偏心カム
47 第1スライド部材
48a、48b 軸受
49 第1歯車
50 カム軸歯車
51 カム軸
52a、52b 軸受
55 第2カム軸
56 第2偏心カム
57 第2スライド部材
58a、58b 軸受
59 第2歯車
60a 伝動歯車機構
60b 調節操作機構
61 スプライン軸(歯車伝動機構)
62 移動スリーブ(歯車伝動機構)
63 雄ねじ部材(調節操作機構)
64 雌ねじ部材(調節操作機構)
65 第5歯車(歯車伝動機構)
66 第6歯車(歯車伝動機構)
67 ハンドル(調節操作機構)
68 ロック機構(調節操作機構)
69 ブラケット(調節操作機構)
70 反発機構
71 軸
72 案内棒
73 圧縮ばね
74 ブラケット
75 軸受
81 押し部材
82 圧縮ばね
83 ケース
84 止め部材
89 受け部材
91 押し部材
92 圧縮ばね
93 ケース
94 止め部材
99 受け部材
DG 駆動源側の歯車
Fa、Fb フレーム
J 咥え機構
JC 咥え胴
Sa、Sb スリーブ

Claims (8)

  1. 咥え機構の非開閉部材が設けられている第1ベース部材と、咥え作用部が前記非開閉部材の咥え作用部に近接するように開閉部材が設けられている第2ベース部材と、両端に端軸を有し、これら端軸によって対向する一対のフレームに回転可能に支持されている第3ベース部材と、を備え、前記第1ベース部材及び前記第2ベース部材は、前記第3ベース部材の回転中心線を中心に前記第3ベース部材に対して回転可能に設けられ、前記第1ベース部材、前記第2ベース部材及び前記第3ベース部材が同期して回転しつつ非開閉部材に対して開閉部材が開閉して印刷物を咥えるように構成された咥え折装置の咥え胴において、
    前記第1ベース部材と前記第2ベース部材を前記第3ベース部材の回転中心線を中心に互いに相反する向きに角変位させて、咥え機構の非開閉部材の咥え作用部と開閉部材の咥え作用部の間隔を調節可能な咥え隙間調節機構と、
    前記第1ベース部材にその回転軌跡の接線と平行な方向に力を常時付与する第1力付与機構と、
    前記第2ベース部材にその回転軌跡の接線と平行な方向に力を常時付与する第2力付与機構と、
    を備えたことを特徴とする咥え折装置の咥え胴。
  2. 前記第1力付与機構と前記第2力付与機構によって常時付与される力の向きは、互いに反対方向を向いていることを特徴とする請求項1記載の咥え折装置の咥え胴。
  3. 前記第1力付与機構と前記第2力付与機構が前記第3ベース部材に設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の咥え折装置の咥え胴。
  4. 前記第1力付与機構と前記第2力付与機構が一体に設けられ、第1ベース部材と第2ベース部材の間に介在されていることを特徴とする請求項1又は2記載の咥え折装置の咥え胴。
  5. 前記咥え隙間調節機構は、
    前記第3ベース部材に対して回転可能に支持されるとともに、前記第1ベース部材に対応する部位に第1偏心カムを有し、かつ咥え胴の側面から一方の前記フレーム側に突き出た部位に第1歯車を有する第1カム軸と、
    前記第3ベース部材に対して回転可能に支持されるとともに、前記第2ベース部材に対応する部位に第2偏心カムを有し、かつ咥え胴の側面から前記一方のフレーム側に突き出た部位に第2歯車を有する第2カム軸と、
    前記第1偏心カムが嵌め合わされるとともに、前記第1ベース部材の半径方向にのみ移動可能に前記第1ベース部材に設けられた第1スライド部材と、前記第2偏心カムが嵌め合わされるとともに、前記第2ベース部材の半径方向にのみ移動可能に前記第2ベース部材に設けられた第2スライド部材と、
    前記第3ベース部材の軸端の前記一方のフレームから突き出た部位に取り付けられ、駆動源側の歯車と噛み合わされ第3ベース部材に回転伝動する従動歯車と、
    前記一方のフレームに前記第3ベース部材の回転中心線を中心にして回転可能に支持されるとともに、前記一方のフレームの一方側に突き出た部位に第4歯車を有し、かつ前記一方のフレームの他方側に突き出た部位に第1歯車及び第2歯車に同時に噛み合う第3歯車を有する歯車機構と、
    前記従動歯車に噛み合う第5歯車と前記第4歯車に噛み合う第6歯車とを同一回転中心線をもって一体で回転可能に、かつ回転中心線と平行な方向に変位可能に設けるとともに、前記第5歯車と前記第6歯車の少なくともいずれか一方の歯車とこの歯車と噛み合う歯車をはすば歯車とした伝動歯車機構と、
    前記伝動歯車機構をその回転中心線と平行な方向に変位させる調節操作機構と、
    を備えていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の咥え折装置の咥え胴。
  6. 前記咥え隙間調節機構は、
    前記第3ベース部材に対して回転可能に支持され、前記第1ベース部材に対応する部位に第1偏心カムを有するとともに前記第2ベース部材に対応する部位に第2偏心カムを有し、さらに咥え胴の側面から一方の前記フレーム側に突き出た部位にカム軸歯車を有するカム軸と、
    前記第1偏心カムが嵌め合わされるとともに、前記第1ベース部材の半径方向にのみ移動可能に前記第1ベース部材に設けられている第1スライド部材と、
    前記第2偏心カムが嵌め合わされるとともに、前記第2ベース部材の半径方向にのみ移動可能に前記第2ベース部材に設けられている第2スライド部材と、
    前記第3ベース部材の軸端の前記一方のフレームから突き出た部位に取り付けられ、駆動源側の歯車と噛み合わされ第3ベース部材に回転伝動する従動歯車と、
    前記一方のフレームに前記第3ベース部材の回転中心線を中心にして回転可能に支持されるとともに、前記一方のフレームの一方側に突き出た部位に第4歯車を有し、かつ前記一方のフレームの他方側に突き出た部位にカム軸歯車に噛み合う第3歯車を有する歯車機構と、
    前記従動歯車に噛み合う第5歯車と前記第4歯車に噛み合う第6歯車とを同一回転中心線をもって一体で回転可能に、かつ回転中心線と平行な方向に変位可能に設けるとともに、前記第5歯車と前記第6歯車の少なくともいずれか一方の歯車とこの歯車と噛み合う歯車をはすば歯車とした伝動歯車機構と、
    前記伝動歯車機構をその回転中心線と平行な方向に変位させる調節操作機構と、
    を備えていることを特徴とする請求項1乃至4いずれか記載の咥え折装置の咥え胴。
  7. 前記第5歯車及び前記第6歯車のいずれをもはすば歯車とし、それらのねじれ角とねじれ方向の少なくともいずれか一方を互いに相違させて設けていることを特徴とする請求項5又は6記載の咥え折装置の咥え胴。
  8. 前記従動歯車の回転軌跡の接線と平行な一方向の力を前記従動歯車の偏心位置に対して常時付与するとともに、前記従動歯車の回転軌跡の接線と平行で、前記一方向の力と反対方向の力を前記第4歯車の偏心位置に対して常時付与する反発機構を前記従動歯車と第4歯車の間に介在させていることを特徴とする請求項5乃至7いずれか記載の咥え折装置の咥え胴。
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