JP3563856B2 - 連写カメラ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、1回のレリーズ操作により露光時間よりも長い露光間隔で順次に複数の露光を行う連写カメラに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、安価なレンズ付きフイルムユニットに連写機能をもたせたものが、特開平7−110507号公報に提案されている。このレンズ付きフイルムユニットのシャッタ装置には、フイルム給送方向に隣接するシャッタ開口から等距離の位置に各々の回転中心が決められた4枚のシャッタ円板が設けられている。これらのシャッタ円板には回転中心から異なる位置にそれぞれ1個のスリットが設けられている。そして、バネの付勢により走行板を直線移動させてシャッタ円板を回転させ、前記スリットが順次にシャッタ開口を横切って連写撮影が行えるようになっている。
【0003】
ところで、スポーツをしている被写体の動きを止めて撮影するためには、シャッタ円板のスリットがシャッタ開口を横切る露光時間を遅くとも1/125sec 以上に設定しておく必要がある。またシャッタ円板を回転させて複数回の露光を行う場合、シャッタ円板の回転速度を速くすると、短時間のうちに連写が終了してしまい、運動の初期から終期までを撮影することができなくなり、逆にシャッタ円板の回転速度を遅くすると毎回の露光時にシャッタ秒時が長くなり、瞬間的な撮影に不向きであるばかりか露光オーバーになる恐れがある。このような実情から前述したシャッタ機構には、露光時間を短く、そして露光間隔は露光時間よりも長くなるように間欠的にシャッタ円板のスピードを変える速度切換え機構が用いられている。
【0004】
速度切換え機構は、遊星歯車機構とガバナ機構とを連結して構成されている。遊星歯車機構は、シャッタ円板のスリットがシャッタ開口を横切っていないときにガバナー機構に噛合する間欠歯車を備えており、走行板がチャージ位置から走行完了位置に向けて移動した際に間欠歯車をガバナー機構に連結する。これにより、1回のシャッタレリーズで1画面を複数に分割した各コマに時系列的な露光が露光時間よりも長い露光間隔で行えるようになる。
【0005】
前述した遊星歯車機構では、間欠歯車が遊星ギヤとされており、走行板を走行完了位置からチャージ位置に向けてチャージさせる際に伝達される回転によって間欠歯車が連結位置から離した位置に公転する。このため、フイルム巻き上げ時にはガバナ機構の負荷が伝達されることがなく、したがってフイルム巻き上げ操作がスムーズに行える。しかも、この遊星歯車機構を用いると、間欠歯車とガバナ機構との連結位置で歯同士が衝突した際に、間欠歯車が連結位置から離した位置に公転するから、歯欠け等の損傷や破損も防ぐことができる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、間欠歯車と減速駆動系との歯が衝突した際に、間欠歯車が連結位置から離した位置に公転すると、この間は減速駆動系の駆動が伝達されないから、露光間隔が所定時間よりも短くなる不具合が生じる。このような現象が単発的に生じるのであれば問題はないが、多発的に生じると、運動の初期から終期までを撮影することができなくなる恐れがある。そこで、このような不具合を解決するために、減速駆動をつなぎっ放しにすると、フイルム巻き上げ時に減速駆動が伝達されてしまい、フイルム巻き上げ操作をスムーズに行えない欠点が生じる。
【0007】
本発明は上述した従来技術のもつ欠点を解決するためになされたもので、速度切換え機構に安定した精度を持たせるとともに、フイルム巻き上げ操作がスムーズに行えるようにした連写カメラを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の連写カメラでは、ガンギ車とこれに係脱自在に噛合するアンクルとで構成され、シャッタ円板の回転を緩速化するガバナ機構と;シャッタ円板駆動系のギヤ又はシャッタ円板に噛合するギヤとガバナ機構との間に直結して設けられており、スリットがシャッタ開口を通過した後にシャッタ円板の回転をガバナ機構により緩速化しスリットが次のシャッタ開口に対して一定の角度位置まで移動してきたときにシャッタ円板の回転を高速化するために、前記ギヤが所定の回転域を通過する期間だけこのギヤにガバナ機構を連結する間欠接続手段と;シャッタレリーズに応答して走行板がチャージ位置から走行完了位置に移動するときにシャッタ開口の全部を露呈し、フイルム巻き上げ操作に連動して走行板が走行完了位置からチャージ位置に戻ることに応答してシャッタ開口の全部を遮蔽する遮蔽位置に移動する全遮蔽板と;全遮蔽板が遮蔽位置に移動することに連動してアンクルをガンギ車との噛合位置から退避させる切換え手段と;をを備えたものである。
【0009】
フイルム巻き上げ操作完了時には、切換え手段がガバナ機構の作動を有効化している。シャッタレリーズを行うと、これに連動してバネ付勢により駆動部材がチャージ位置から走行完了位置に向けて走行する。この駆動部材の移動がシャッタ円板駆動系に回転駆動として伝達される。シャッタ円板駆動系はシャッタ板を回転させ、シャッタ板に設けたスリットが順次に複数のシャッタ開口を横切って複数回の露光を行う。シャッタ円板のスリットがシャッタ開口を通過した後に間欠接続手段は、ガバナ機構に駆動を伝達して、シャッタ円板の回転を緩速化し、また、次に通過するシャッタ開口に対してスリットが一定の角度位置に達した時点で間欠接続手段は、ガバナ機構の駆動伝達を解除する。フイルム巻き上げ操作を行うと切換え手段がガバナ機構の作動を不能化にする。これにより、フイルム巻き上げ操作には、ガバナ機構の駆動が負荷されることはない。
【0010】
ガバナ機構は、アンクルとガンギ車とで構成され、また、切換え手段はアンクルをガンギ車から離した位置に移動させることでガバナ機構の作動を不能化にする。
【0011】
フイルム巻き上げ時にシャッタ円板が逆転して露光されることを防止するための全遮蔽板が設けられている。切り換えレバーは、この全遮蔽板がシャッタ開口の全てを遮蔽する遮蔽位置に移動するのに連動してアンクルをガンギ車から離した位置に移動する。
【0012】
【発明の実施の形態】
図1ないし図3に示すように、レンズ付きフイルムユニット10(以下、「フイルムユニット」と称す。)は、前カバー11、露光ユニット12、本体基部13、写真フイルムパトローネ14、及び後カバー15とから構成されており、露光ユニット12が前カバー11と本体基部13との間に組み込まれている。また、前カバーと露光ユニット12との間には、2枚のレンズプレート16,17が挟装されている。
【0013】
レンズプレート16,17には、上下2段、左右2列、計4個の撮影レンズ18がそれぞれアクリル等の透明な樹脂で一体的に形成されている。各々の撮影レンズ18の8本の光軸18a〜18hは平行となっている。
【0014】
本体基部13には、内部を上下2段、左右4列、計8個の部屋19a〜19hに仕切った暗箱19が一体に形成されている。撮影レンズ18の各光軸18a〜18hは暗箱19の各仕切り部屋19a〜19hの略中心を通る。暗箱19を挟む両側には、フイルムロール室20、及びパトローネ室21が一体に設けられている。パトローネ室21には、パトローネ22が、またフイルムロール室20にはパトローネ22から写真フイルム23を引き出してロール形態としたフイルムロール24がそれぞれ装填される。
【0015】
このような形態の写真フイルムパトローネ14は、本体基部13に後カバー15を被せることによって、フイルムロール24とパトローネ22との間のフイルム展延部が本体基部13の背面に形成されたアパーチャー36に位置決めされる。アパーチャー36は、アスペクト比をハイビジョン比率とした画面サイズとなっている。1回のシャッタレリーズでアパーチャー36を通して写真フイルム23に写し込む1画面は、各撮影レンズ18を透過した時系列的な被写体光が各部屋19a〜19hを通ってそれぞれ写真フイルム23に入射する8個のコマで構成されている。
【0016】
パトローネ22には、写真フイルム23の後端が係止されたスプール25が回動自在に収納されている。パトローネ室21の上部には、巻き上げノブ26が回動自在に配設されている。巻き上げノブ26には、スプール25に係合する係合部27が設けられている。巻き上げノブ26の外周には歯列28が形成されている。本体基部13には、逆止爪29が形成されている。逆止爪29は、歯列28に噛合しており、巻き上げ方向とは逆の方向に巻き上げノブ23が回転することを阻止している。
【0017】
後カバー15には、パトローネ室21の底面を覆うプルトップ式の蓋30が一体に設けられている。この蓋30を開放状態にしてパトローネ室21から撮影済みの写真フイルムを収納したパトローネ22を取り出すことができる。なお、後カバー15には、ファインダー接眼窓31と巻き上げノブ23の一部を外部露呈させる開口32とが一体に形成されている。
【0018】
前カバー11には、シャッタボタン33、ファインダー対物窓34、及び撮影レンズ18を外部に露呈させる開口35が一体に形成されている。開口35は、各撮影レンズ18をぞれぞれ外部に露呈する8個の開口35a〜35hで構成されている。シャッタボタン33は、前カバー11の上面の一部を切り欠いて弾性自在に形成されており、シャッタレリーズ時に押下操作される。なお、押圧操作を解除すると、シャッタボタン33はそれ自身の弾性により元の位置に復帰する。
【0019】
本体基部13の前面には、露光ユニット12がビス等で着脱自在に取り付けられる。なお、この露光ユニット12には、接眼レンズと対物レンズとからなるファインダー光学系39が組み込まれている。
【0020】
露光ユニット12は、光密な箱にシャッタ機構、シャッタチャージ機構、フイルム巻き止め機構、及びフイルムカウンタ機構等を一体的に組み込んだユニット化部品とされている。箱は、前板40,中板41、及び後板42で構成されている。シャッタ機構は、図4及び図5に示すように、前板40と中板41との間に組み込まれたシャッタ円板42〜45、間欠接続手段である外接ゼネバ機構46、減速手段であるガバナー機構47と、中板41と後板42との間に組み込まれた駆動部材である走行板48、切換え遮蔽板49、及び全遮蔽板50等から構成されている。
【0021】
前板40、中板41、及び後板42には、撮影レンズ18の光軸18a〜18h上にそれぞれ開口40a〜40h,41a〜41h,42a〜42hが形成されている。このうち中板41の開口41a〜41hが絞り開口とされている。これらの絞り開口41a〜41hは、固定絞りとシャッタ開口とを兼用しており、これらの内径はいずれも等しくなっている。なお、開口40a〜40h,42a〜42hは、画角外の有害光をカットする大きさに決められている。
【0022】
絞り開口41a〜41hの前面には、4つのシャッタ円板42〜45が回動自在に設けられている。これらのシャッタ円板42〜45の回転中心は、上方に配列された4個の絞り開口41e〜41hの中心を通る水平線よりも上方の位置で、且つ隣接する絞り開口41eと41f,41gと41hから等距離の位置に2個のシャッタ円板44,45の回転中心が、また下方に配列された4個の絞り開口41a〜41dの中心を通る水平線よりも下方の位置で、且つ隣接する絞り開口41aと41b,41cと41dから等距離の位置に2個のシャッタ円板42,43の回転中心がそれぞれ決められている。
【0023】
シャッタ円板42〜45には、各々1個ずつのスリット42a,43a,44a,45aが形成されている。これらのスリット42a,43a,44a,45aは、各回転中心から同じ半径上に形成されており、そのスリット長(シャッタ円板の半径方向の長さ)が絞り開口41a〜41hの内径以上となっている。
【0024】
シャッタ円板42〜45の外周には、全周にわたって同じ歯数のギヤ42b,43b,44b,45bが形成され、上下方向で回転中心を同じにしたシャッタ円板同士のギヤ42bとギヤ44b、及びギヤ43bとギヤ45bとがそれぞれ互いに噛合している。そして、ギヤ44bとギヤ45bとには、ギヤ52が噛合している。ギヤ52は、二段ギヤとなっており、他方のギヤ53にはギヤ54が噛合している。ギヤ54は二段ギヤとなっており、他方のギヤ55には、中板41の開口56を介して走行板48の走行駆動伝達用のラック48aが噛合している。
【0025】
各シャッタ円板42〜45は、走行板48がフイルム給送方向に沿って走行することによってそれぞれ2回転する。これらのスリット42a,43a,44a,45aは、シャッタ円板42〜45の2回転により各絞り開口41a〜41hを2回横切る。この横切りは、シャッタ円板42,43のスリット42a,43aが下段の絞り開口列41a〜41dを、またシャッタ円板44,45のスリット44a,45aが上段の絞り開口列41e〜41hをそれぞれ順に横切る。
【0026】
走行板48の下方には、上側の絞り開口列41e〜41hと下側の絞り開口列41a〜41dとをシャッタ円板42〜45の1回転目と2回転目とで択一的に遮蔽する切換え遮蔽板49が、絞り開口41a〜41hの背後でフイルム給送方向に移動自在に配置されている。切換え遮蔽板49には、下段の絞り開口列41a〜41dを同時に露呈させる4つの開口49a〜49hと、上段の絞り開口列41e〜41hを同時に露呈させる4つの開口49e〜49hとが、フイルム給送方向に所定間隔ずらして形成されており、バネ56により開口49d〜49hが下段の絞り開口列41d〜41hを同時に露呈する切換え位置に向けて付勢されている。
【0027】
切換え遮蔽板49には、突出片57と段差部58とがそれぞれ一体に形成されており、走行板48がチャージ位置に向けて移動された際に、走行板48の立ち下がり片48bが突出片57を引っ掛けて、開口49a〜49dが下段の絞り開口列41a〜41dを同時に露呈する初期位置に向けて移動される。初期位置に移動されると、切換え遮蔽板49は段差部58に入り込む切換えレバー59の一端59aで保持される。切換えレバー59は、一端59aが段差部58に入り込む方向に向けて捩じりバネ60で付勢されている。
【0028】
シャッタレリーズ後に走行板48がシャッタ円板42〜45を1回転させる位置まで走行すると、走行板48の立ち下がり片48bが切換えレバー59の他端59bに当接し、切換えレバー59をバネ60の付勢方向とは逆方向に回転させる。これにより、切換え遮蔽板49の保持が解除され、切換え遮蔽板49は切換え位置に向けてバネ56の付勢により瞬時に移動する。切換え遮蔽板49が切換え位置に移動した際には、切換えレバー59の一端59aが突出片57に当接して切換え遮蔽板49が切換え位置で保持される。
【0029】
シャッタ円板45には、ギヤ60が噛合している。このギヤ60は二段ギヤとなっており、他方のギヤ61にはゼネバ機構46が噛合している。ゼネバ機構46にはガバナ機構47が噛合している。間欠接続手段であるゼネバ機構46は、2個のピン62a,62bを備えたピンギヤ62と、4つの溝63a〜63dを備えたマルタクロス63とから構成されている。ピンギヤ62は、シャッタ円板42〜45に対して2回転し、各スリット42a〜45aが各絞り開口41a〜41hを通過している間ではピン62a,62bと溝63a〜63dとの噛合が解除され、絞り開口41a〜41hを通過していない間ではピン62a,62bが溝63a〜63dに噛合する。
【0030】
マルタクロス63が停止中には、シャッタ円板42〜45が走行板48の走行に従動して高速回転する。また、マルタクロス63が回転すると、ガバナ機構47がシャッタ円板42〜45の回転を減速させる。これにより、シャッタ円板42〜45は、露光間隔が露光時間よりも遅くなる。
【0031】
ガバナ機構47は、シャッタ円板42〜45の回転を緩速化する減速手段であり、周知のガンギ車64とアンクル65とから構成されている。このアンクル65は、レバー板65aとともに切換え手段を構成しており、レバー板65aに軸着されている。レバー板65aは、中板41に植設された軸65bを中心にしてアンクル65をガンギ車64に噛合させる噛合位置とこれから退避した退避位置との間で移動自在に取り付けられる。そして、レバー板65aには、中板41の長穴41iを通して中板41の裏面に突出する突状部65cが設けられている。
【0032】
長穴41iは、レバー板65aの噛合位置を規制する規制部材を構成している。すなわち、レバー板65aが噛合位置の際にアンクル65がガンギ車64に強固に食いつかないように、長穴41iの内壁の上端で突状部65cを当接させてレバー板65aを最適な噛合位置に規制している。これによれば、レバー板65aが自重で移動する構造であるため、例えば連写カメラ10を逆さまに構えて撮影した場合、レバー板65aが自重で移動してアンクル65がガンギ車64に深く食いついてしまい、ガバナ機構47の動きが悪くなることを防止することができる。
【0033】
シャッタ円板42〜45の各露光時間は、走行板48の走行速度と、ガバナ機構47の遅延が解除された時点でのスリット42a〜45aと絞り開口41a〜41hとの間の角度によって決まり、露光ムラを防止するためにこれらを一定にする必要がある。本実施例ではシャッタ円板42〜45の回転中心に対して各絞り開口41a〜41hの角度が異なる2種類の角度の配列となっているため、前述した角度を一定にするためには、ピンギヤ62の2つのピン62a,62bの間隔を2種類の角度と同じ比率にする。これにより、ガバナ機構47の遅延駆動がシャッタ円板42〜47の露光間隔内で確実に伝達されるとともに、ガバナ機構47の遅延駆動が解除された時点でのスリット42a〜45aと絞り開口41a〜41hとの間の角度が全て同じとなる。
【0034】
走行板48は、フイルム給送方向に沿ったチャージ位置と走行完了位置との間で移動自在に組み込まれている。この走行板48の背面には、後板42の長孔66を介して後板42の背面側に突出したピン48cが一体に設けられている。このピン48cには、捩じりバネ67の一端67aが引っ掛けられている。捩じりバネ67は、後板42に一体に形成された4本の突出ピン68にコイル部が固定され、また他端67bが後板42に形成したストッパーピン69に引っ掛けられており、走行板48を走行完了位置に向けて付勢している。
【0035】
シャッタチャージ機構、及びフイルム巻き止め機構等は、スプロケット70、三段ギヤ71、走行板48、連結板72、レリーズ連動レバー73、巻き止めレバー74、及び、回転部材75等から構成されている。詳しくは図7に示すように、スプロケット70は、暗箱19の上方で写真フイルム22のパーフォレーションに係合しており、1画面分のフイルム移送に連動して1回転する。このスプロケット70には同軸にギヤ76が一体に固定されている。
【0036】
ギヤ76には、三段ギヤ71のうち真ん中のギヤ77に噛合しており、1画面分のフイルム移送に連動してスプロケット70と同じに1回転する。三段ギヤ71の上方には、歯欠けギヤ78が一体に形成されている。歯欠けギヤ78は、後板42の開口87を介して走行板48のラック48dに臨んでいる。巻き上げノブ26の巻き上げ操作が行われると、写真フイルム23の移送に連動してスプロケット70及び三段ギヤ71が回転し、歯欠けギヤ78のギヤ部78bがラック48cに噛合することで、走行板48を走行完了位置からチャージ位置に移動させる。
【0037】
連結板72は、箱の内部で走行する走行板48と、箱の外部に配置されたレリーズ連動レバー73、及び、巻き止めレバー74との連結を光密にした状態で行わせるためのものであり、中板41に形成された別室79の中で、下降位置と上昇位置との間で昇降自在に組み込まれている。
【0038】
連結板72には、弾性自在な爪片72a、開口72b、及びロック爪72cが一体に形成されている。弾性自在な爪片72aは、別室79に形成された開口80を介して箱の内部で走行する走行板48の走行路内に臨んでおり、中板41の内部に形成された固定爪81に係合して連結板72を下降位置に保持している。走行板48がチャージ位置に移動すると、走行板48に形成した突起部48fが爪片72aを撓ませて、爪片72aと固定爪81との係合を解除する。
【0039】
連結板72の開口72bには、レリーズ連動レバー73の連動棒73aが入り込んでいる。レリーズ連動レバー73は、シャッタボタン33の押下操作に連動して光軸18a〜18hに沿った回転軸を中心に初期位置と押下位置との間で回転し、捩じりバネ82により初期位置に向けて付勢されている。この捩じりバネ82は、連動棒73aを介して連結板72を上昇位置に向けて付勢している。これにより、連結板72の爪片72aと固定爪81との係合が解除された後には、捩じりバネ82の付勢により連結板72が上昇位置に、またレリーズ連動レバー73が初期位置にそれぞれ移動する。連結板72が上昇位置に移動すると、これのロック爪72cが走行板48の保持爪48eに係合して走行板48をチャージ位置に保持する。
【0040】
回転部材75は、円板75aの外周に溝75bが形成されており、スプロケット70と一体に回転する。円板75aの外周には、巻き止めレバー74の一端74aが臨んでいる。巻き止めレバー74は、一端74aの他に、斜面部74bと巻き止め爪74cとが一体に形成されており、光軸18a〜18hに対して直交する方向に沿った回転軸に、巻き止め位置と巻き止め解除位置との間で回動自在に配置され、捩じりバネ83により巻き止め位置に向けて付勢されている。斜面部74bには、開口72bを挿通した連動棒73aの先端が臨んでいる。
【0041】
1画面分の長さだけ写真フイルム23の巻き上げが行われると、回転部材75が1回転する。回転部材75が1回転すると、溝75bに一端74aが入り込んでスプロケット70の回転が阻止される。このとき、巻き止めレバー74が巻き止め位置に向けて回転するため、巻き止め爪74cが巻き上げノブ26の歯列28に噛合して巻き上げノブ26の巻き上げ操作が禁止される。
【0042】
シャッタボタン33の押下操作が行われると、レリーズ連動レバー73が押下位置に回転する。レリーズ連動レバー73が押下位置に回転すると、これに従動する連動棒73aにより連結板72が下降位置に移動する。連結板72が下降位置に移動するとロック爪72cと走行板48の保持爪48eとの係合が解除され、走行板48のチャージ位置での保持が解除される。このとき、走行板48は、ラック48dに歯欠けギヤ78の歯欠け部78aが対峙しているから、ギヤ部78bに噛合することなく、チャージ位置に向けて走行する。
【0043】
一方、レリーズ連動レバー73が押下位置に回転した際には、連動棒73aの先端が巻き止めレバー74の斜面部74bに当接し、巻き止めレバー74を巻き止め解除位置に向けて回転させる。巻き止めレバー74が巻き止め解除位置に回転すると、一端74aが溝75bから退避し、また巻き止め爪74cが歯列28から退避するから、スプロケット70の回転と巻き上げノブ26の回転操作とのロックが解除される。この連結板72が下降位置に移動した際には、爪片72aが固定爪81に係合するから、レリーズ連動レバー73が押下位置の状態で保持される。これにより、連動棒73aの先端が巻き止めレバー74の斜面部74bを押した状態のままとなっているので、巻き止めレバー74は巻き止め位置に回転することはない。
【0044】
ところで、巻き上げ操作時に走行板48が走行完了位置からチャージ位置に向けて移動すると、ラック48dと歯欠けギヤ78との噛合によりシャッタ円板42〜45が逆回転して露光が行われてしまう。そこで、フイルム巻き上げ操作の際に生じる露光を防止するために、全遮蔽板50が配置されている。
【0045】
全遮蔽板50には、8個の開口50a〜50hが形成されており、切換え遮蔽板49の背後でフイルム給送方向に移動自在に配置されている。この全遮蔽板50は、各開口50a〜50hから各絞り開口41a〜41hを全部露呈する全露呈位置と各開口50a〜50hが各絞り開口41a〜41hを全部遮蔽する全遮蔽位置との間で移動が行われ、バネ84により全露呈位置に向けて付勢されている。
【0046】
また、全遮蔽板50には、全露呈位置に向けて移動する方向に斜面をもった係合部50iが一体に設けられている。係合部50iは、全遮蔽板50が全露呈位置に移動した時に前述したレバー板65aの突状部65cを押し上げてレバー板65aを噛合位置に移動させ、また全遮蔽板50が全遮蔽位置に向けて移動した時に突状部65cから退避してレバー板65aの押し上げを解除する。係合部50iが退避するとレバー板65aがこれ自身の重さにより退避位置に移動する。
【0047】
三段ギヤ71の下方には、歯欠けギヤ85が一体に形成されている。この歯欠けギヤ85には切り欠き部85aが形成されている。切り欠き部85aには、全遮蔽板50に突出して形成したL字片86が後板42の開口87を介して臨んでいる。
【0048】
スプロケット70の回転に従動して歯欠けギヤ85が回転すると、走行板48のチャージ位置への移動が開始される前に、切り欠き部85aが縁でL字片86を引っ掛けて全遮蔽板50を全遮蔽位置に移動させる。その後、走行板48のチャージ位置への移動が完了するまでの間で、この位置でL字片86に歯欠けギヤ85の歯を順次に係合させてゆくことで、全遮蔽板50を全遮蔽位置の状態で保持する。そして、走行板48のチャージ位置への移動が完了した時点で切り欠き部85aがL字片86に対峙するから、全遮蔽板50はバネ84の付勢により全露呈位置に戻される。
【0049】
スプロケット70には、フイルム巻き上げ時に、シャッタ円板42〜45等の回転負荷の他に、走行板48、全遮蔽板50、及び切換え遮蔽板49を移動させる負荷とこれらに設けた捩じりバネ67、バネ56,84の付勢に抗する負荷が加わるため、スプロケット70の歯幅が少ないとパーフォレーションの縦エッジに対して僅かにしか引っ掛からず、パーフォレーション間を破ってしまう恐れがある。そこで、本実施例のスプロケット70は、パーフォレーションの縦エッジに対して引っ掛かり量が多くなるように歯幅を厚くしてある。また、歯幅を厚くすると、スプロケット70の歯先でパーフォレーションの縦のエッジに応力集中を生じさせ、パーフォレーションの角の部分に裂け目や亀裂等を生じさせる恐れがある。そこで、このような応力集中を与えることを防ぐために、スプロケット70の各歯先は、断面円弧又は楕円弧形状に形成されている。
【0050】
フイルムカウンタ機構は、回転部材75の先端に形成した一歯ギヤ75c、枚数表示板88、及びカム部88aとから構成されており、これらは天板89によって箱に取り付けられている。一歯ギヤ75cは、枚数表示板88の外周に形成した歯列88bに噛合しており、1画面分の長さだけ写真フイルム23が巻き上げられると、一歯ギヤ75cの1回転により枚数表示板88が一目盛り分だけ歩進する。枚数表示板88の上面には、前カバー11と後カバー15とを組み合わせることで形成される表示窓90を通してその時点での残りの撮影枚数を表示する数字が表記されている。
【0051】
最後の画面に撮影を行った後の巻き上げ操作によって枚数表示板88が歩進すると、枚数表示板88の下面に一体に形成したカム部88aが、レリーズ連動レバー73に一体に形成した立ち上がり突起73bの上面に入り込む。その後、走行板48がチャージ位置に到達することで、連結板72が上昇位置に向けて移動し、これに連動してレリーズ連動レバー73も初期位置に向けて回転する。この回転中に立ち上がり突起73bがカム部88aに当接し、レリーズ連動レバー73を押下位置と初期位置との間のフイルム収納許容位置に保持する。レリーズ連動レバー73がフイルム収納許容位置となると、連結板72が走行板48をチャージ位置に保持した状態となり、また、連動棒73aが巻き止めレバー74を巻き止め解除位置に保持した状態となる。これにより、最後の画面に撮影を行った後の巻き上げ操作によって、走行板48をチャージ位置に保持したまま撮影済みの写真フイルム23の全てをパトローネ22の内部に収納させることができる。
【0052】
上記構成の作用について説明する。シャッタレリーズ完了後には、図8に示すように、シャッタ円板42〜45の各スリット42a〜45aが回転中心を通る水平線上に位置しており、このうちシャッタ円板42,44のスリット42a,45bがシャッタ円板43,45に対して180度ずれた位置の状態となっている。このため、絞り開口41a〜41hは、シャッタ円板42〜45で遮蔽された状態となっている。
【0053】
ゼネバ機構46は、ピンギヤ62のピン62bとマルタクロス63の溝63aとの係合が解除される直前の状態とされている。走行板48は、走行完了位置の状態となっている。フイルム巻き止め機構は、レリーズ連動レバー73が押下位置の状態、また連結板72が下降位置の状態、さらに、巻き止めレバー74が巻き止め解除位置の状態となっている。
【0054】
切換え遮蔽板49は、切換えレバー59の先端59aが段差部58に当接しており、下段の絞り開口列41a〜41dを全部露呈した初期位置の状態とされている。全遮蔽板50は、全露呈位置の状態となっており、係合部50iが突状部65cに当接してアンクル65がガンギ車64に噛合する位置にレバー板65を保持している。
【0055】
巻き上げノブ26をフイルム巻き上げ方向に回転させる巻き上げ操作を行うと、写真フイルム23がフイルムロール室20からパトローネ室21に向けて移送され、この移送に連動してスプロケット70が回転する。スプロケット70の回転に連動して三段ギヤ71が回転すると、図9に示すように、最初に歯欠けギヤ85の切り欠き部85aが縁でL字片86を引っ掛けて全遮蔽板50を全遮蔽位置に移動させる。この全遮蔽板50の移動により係合部50iが突状部65bから退避した位置に移動する。これにより、レバー板65aは、軸65bを中心として自重で退避位置に回転する。その後、歯欠けギヤ78のギヤ部78bがラック48dに噛合して走行板48をチャージ位置に向けて移動させる。
【0056】
走行板48がチャージ位置に向けて移動すると、シャッタ円板42〜45が回転するが、この間で全遮蔽板50が絞り開口41a〜41hを全部遮蔽しているので、露光が行われることはない。また、このときのシャッタ円板42〜45の回転がガンギ車64に伝達されるが、レバー板65aが退避位置に移動しているから、減速手段の駆動伝達が断たれている。したがって、フイルム巻き上げ時に減速駆動が伝達されないから、巻き上げ操作がスムーズに行える。
【0057】
走行板48がチャージ位置に移動した際には、走行板48の往復移動長が同じであるため、シャッタ円板42〜45が逆方向に2回転して前述した初期状態と同じ状態となる。
【0058】
走行板48がチャージ位置に到達すると、突起部48fが連結板72の爪片72aを撓ませて爪片72aと固定爪81aとの係合が解除される。これにより、捩じりバネ82の作用によりレリーズ連動レバー73が初期位置に、また連結板72が上昇位置にそれぞれ移動する。そして、連結板72が上昇位置に移動すると、ロック爪72cが走行板48の保持爪48eに係合して走行板48をチャージ位置に保持する。走行板48がチャージ位置に到達した後には、歯欠けギヤ78の歯欠け部78aがラック48dに対面するため、走行板48がこれ以上移動することはない。このとき、捩じりバネ67は、バネを巻き込む方向に捩じられた状態となる。
【0059】
レリーズ連動レバー73が初期位置に回転することにより連動棒73aの斜面部74dへの押圧が解除されるから、巻き止めレバー74が捩じりバネ83の付勢により巻き止め位置に向けて回転する。このとき、未だスプロケット70が1回転していないから、巻き止めレバー74の一端74aが円板75aの周面に当接した状態となる。
【0060】
1画面分の長さだけ写真フイルム23が巻き上げられると、スプロケット70が1回転し、一端74aが溝75bに入り込む。これにより、巻き止めレバー74が巻き止め位置に回転し、スプロケットの回転が阻止される。このとき、巻き止め爪74cが巻き上げノブ26の歯列28に係合して巻き上げノブ26の回転操作も阻止される。またスプロケット70が1回転した際には、三段ギヤ71が1回転している。したがって、切り欠き部85aがL字片86に対面するため、全遮蔽板50がバネ84の付勢により全露呈位置に戻される。この全遮蔽板50の移動により、係合部50iが突状部65cの下に入り込んでこれを押し上げる。このとき、長穴41iの内部の上端部がレバー板65aの突状部65cに当接しレバー板65aの噛合位置の規制が行われ、図8に示した状態に戻る。この状態では、アンクル65をガンギ車64に強固に噛合させることのない最適な噛合位置にレバー板65aが保持されている。
【0061】
シャッタボタン33を押下操作すると、レリーズ連動レバー73が押下位置に回転し、連動棒73aを介して連結板72も下降位置に移動する。これにより、連結板72のロック爪72cが走行板48の保持爪48eから退避して走行板48のチャージ位置での保持が解除される。このとき、捩じりバネ67がバネを巻き戻す方向に付勢するため、走行板48が走行完了位置に向けて移動する。
【0062】
走行板48の直線駆動は、走行駆動用のラック48aに噛合したギヤ55によって回転駆動に変換され、シャッタ円板42〜45に伝達される。各シャッタ円板42〜45の回転方向は、図10に矢印で示した方向となっている。ゼネバ機構46は、ピンギヤ62のピン62bとマルタクロス63の溝63aとの係合が解除される直前の状態とされているため、次のピン62aと溝63bとが噛合するまでの間では、シャッタ円板42〜45が走行板48を付勢する捩じりバネ67の付勢力によって回転する。この回転により、図11に示すように、各スリット42a〜45aが点線で示す位置から実線で示す位置にまで回転する。
【0063】
この回転中には、上段左側のシャッタ円板44と下段左側のシャッタ円板42とのスリット44a,42aがそれぞれ絞り開口41a,41eを横切っているが、切換え遮蔽板49が下段の絞り開口列41a〜41dだけを露呈しているので、スリット42aが横切る絞り開口41aだけを被写体光が通過する。この被写体光は、暗箱19の仕切り部屋19aを通して写真フイルム23に入射し、仕切り部屋19aのサイズで潜像画像のコマが形成される。
【0064】
その後、スリット42a〜45aが実線で示す位置にまでシャッタ円板42〜45が回転すると、ピンギヤ62のピン62aがマルタクロス63の溝63bに噛合する。このため、その後はガバナ機構47の減速駆動が与えられるため、シャッタ円板42〜45の回転が減速される。
【0065】
ガバナ機構47の減速駆動は、マルタクロス63が回転している間でシャッタ円板42〜45に与えられる。この間のシャッタ円板43〜45の回転は、各スリット42a〜45aが図12に点線で示す位置から実線で示す位置までの間となっている。同図に示す点線の位置となると、ピン62aと溝63bとの係合が解除され、マルタクロス63の回転が停止する。これにより、ゼネバ機構46は、ガバナー機構47の減速駆動を解除した作動停止の状態とされる。このとき、スリット42aと次に横切る絞り開口41bとの間の角度が初期状態と同じ角度となるので、次回の2回目の露光は1回目の露光と同じ露光時間で行えるようになる。
【0066】
ゼネバ機構46が次に作動するまでの間では、再び捩じりバネ67の付勢力によって走行板48が走行し、各スリット42a〜45aが図13に示す点線で示す位置から実線で示す位置にまでシャッタ円板42〜45が回転する。この回転中に、スリット42aが横切る絞り開口41bに対応するコマに2回目の露光が行われる。その後は、各スリット42a〜45aが図14に点線で示す位置から実線で示す位置にまで回転する範囲で、シャッタ円板42〜45にガバナ機構47の減速駆動が与えられる。この時点でシャッタ円板42〜45は半回転しており、その後、図15から図18に示す順で、シャッタ円板42〜45がさらに半回転する。この間の図15の際にスリット43aが絞り開口41cを横切って3回目の露光が、また、図17の際にスリット43aが絞り開口41dを横切って4回目の露光が行われる。そして、図18に示す状態でシャッタ円板42〜45が1回転した状態となる。
【0067】
シャッタ円板42〜45を1回転させる位置まで走行板48が走行すると、図19に示すように、立ち下がり片48bが切換えレバー59の他端59bに当接し、切換えレバー59をバネ60の付勢に抗して時計方向に回転させる。これにより切換えレバー59の一端59aと切換え遮蔽板49の段差部58との係合が解除され、バネ56の付勢により切換え遮蔽板49が瞬時に切換え位置に向けて移動する。このとき、切換えレバー59の一端59aが切換え遮蔽板49の突出片57に係合して、切換え遮蔽板49を切換え位置に保持する。
【0068】
切換え遮蔽板49が切換え位置に移動すると、上段の絞り開口列41e〜41hが露呈される。その後、シャッタ円板42〜45は、図11〜図18で説明したと同じに再び1回転し、図11に示した際にスリット44aが絞り開口41eを横切って5回目の露光が、図13に示した際にスリット44aが絞り開口41fを横切って6回目の露光が、図15に示した際にスリット45aが絞り開口41gを横切って7回目の露光が、そして、図17に示した際にスリット45aが絞り開口41hを横切って最後の8回目の露光がそれぞれ順に行われる。その後、走行板48が走行完了位置に到達して停止し、シャッタ円板42〜45が図18に示す状態となる。これにより、露光枠19にセットされた写真フイルム23には、1画面を上下2段、左右4列に分割した8コマに時系列的な潜像画像が全て露光されている。
【0069】
露光が完了した時点では、連結板72が下降位置に保持されていることから、巻き止めレバー74が捩じりバネ83の付勢に抗して巻き止め解除位置に保持されている。これにより、次回のフイルム巻き上げ操作が行える。
【0070】
以下、前述したと同じに巻き上げ操作を行った後にシャッタレリーズを繰り返し行うことで、写真フイルム23の各画面には、8コマの時系列的な潜像画像が露光される。そして、最後の画面に撮影を行った後の巻き上げ操作によって、走行板48がチャージ位置に復帰すると、枚数表示板88のカム部88aがレリーズ連動レバー73の立ち上がり突起73bに当接し、レリーズ連動レバー73をフイルム収納許容位置に保持する。これにより、走行板48をチャージ位置に保持したままで巻き止めレバー74を巻き止め解除位置に保持することができるため、最後の巻き上げ操作によって写真フイルム23の全部をパトローネ22の内部に収納することができる。
【0071】
撮影済みのフイルムユニット10は、そのままの状態で現像所に提出される。現像所では、後カバー15の底蓋30を開いてパトローネ22を取り出して、従来通りの処理で写真フイルム23に現像び焼付け処理を行い、図20に示すようなプリント写真90が得られる。このプリント写真90は、アスペクト比がハイビジョン比率とされたサイズとなっており、各コマの画像が左上から右上へ、左下から右下への順で時系列的に記録されている。
【0072】
本実施例によれば、全遮蔽板50が全遮蔽位置に移動した際に係合板50iがレバー板65aの噛合位置での保持を解除し、レバー板65aが重力方向に沿った退避位置に自然に移動するようにしているから、レバー板65aを退避位置に移動させる強制的な機構を別途に必要とせず、したがって、コンパクト化及びローコスト化を図ることができる。
【0073】
上記実施例では、全遮蔽板50の係合部50iでレバー板65aを押し上げてアンクル65をガンギ車64から離すようにしているが、本実施例ではこれに限らず、図21に示すように、バネ80でレバー板65aを噛合位置に向けて付勢させておき、全遮蔽板50に設けた解除板82で全遮蔽位置への移動に応答してレバー板65aに設けた係合部材81をバネ80の付勢に抗して押し下げてレバー板65aを退避位置に移動させ、アンクル65をガンギ車64から離すようにしてもよい。なお、図21では、(A)が全露呈位置の状態、(B)が全遮蔽位置の状態をそれぞれ示している。
【0074】
上記実施例では、レンズ付きフイルムユニット10の連写用シャッタ機構について説明しているが、本発明ではこれに限らず、連写機能を付与した一般的なカメラにも採用することができるのはいうまでもない。また、本発明では、シャッタ開口列を4列に限定しない。さらにまた、シャッタ開口列を上下2段に限ることなく、1段でもよいし、3段以上でもよい。また、予め装填しておくフイルムとしては、135タイプのパトローネ付き写真フイルムの他に、例えばスプールの回転により写真フイルムを送り出すタイプを装填してもよい。
【0075】
また、間欠接続手段としては、ゼネバ機構の他に、減速駆動を間欠的に伝達する機構、例えば間欠歯車機構等を採用してもよい。また本実施例では 外接ゼネバ機構を採用しているが、内接ゼネバ機構を採用してもよい。また、ゼネバ機構として、2つのピン62a,62bを有するピンギヤ62と、4つの溝63a〜63dを有するマルタクロス63との構成としているが、本発明ではこれらのピンと溝との数を限定することはない。しかしながら、シャッタ円板のスリットがシャッタ開口を通過した後に減速駆動を伝達し、次に通過するシャッタ開口に対してスリットが一定の角度位置に達した時点で減速駆動の伝達を解除するタイミングでピンと溝とが係脱するようにしておく必要がある。
【0076】
上記実施例では、バネ付勢により移動する駆動部材を走行板48としているが、これ以外にバネ付勢により回転する回転板等も採用することができる。また、上記実施例では、切換えレバー65aを全遮蔽板50の移動に応答させて移動しているが、これの他に走行板48の移動に応答させるようにしてもよい。さらに、ガバナ機構47の緩速化駆動をフイルム巻き上げ操作に伝達させないようにする切換え手段としては、アンクル65をガンギ車64から切り離す構造の他に、例えばスプロケット70の駆動をガバナ機構47に伝達するまでの駆動伝達系のいずれかのギヤを噛合位置と噛合解除位置との間で移動させるようにしてもよいし、一方向クラッチ機構を内蔵させてもよい。
【0077】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、間欠接続手段にガバナ機構の緩速駆動を間欠的に伝達させる作用だけをもたせ、フイルム巻き上げ時に全遮蔽板が遮蔽位置に移動するのに連動してガバナ機構の緩速駆動を非伝達にする作用を切換え手段にもたせたから、フイルム巻き上げ操作にガバナ機構の緩速駆動が伝達されることがなく、したがってフイルム巻き上げ操作がスムーズに行える。
【0078】
また、切換え手段は、ガバナ機構を構成するアンクルとガンギ車との噛合を解除することで、ガバナ機構の作動を不能化するから、構成が簡単で安価で達成できる。
【0079】
さらに、切換え手段を構成する切換えレバーを全遮蔽板の移動に応答して移動させるようにしたから、フイルム巻き上げ時に生じるガバナ機構の緩速駆動の伝達を確実に無くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】レンズ付きフイルムユニットの分解斜視図である。
【図2】レンズ付きフイルムユニットの横断面図である。
【図3】レンズ付きフイルムユニットの縦断面図である。
【図4】シャッタ機構の一部を示す分解斜視図である。
【図5】シャッタ機構の他部を示す分解斜視図である。
【図6】シャッタチャージ機構、フイルム巻き止め機構、及びフイルムカウンタ機構等の要部を示す分解斜視図である。
【図7】フイルム巻き止め機構、及びシャッタチャージ機構等の概略説明図である。
【図8】シャッタ円板、全遮蔽板、及び切換え手段の初期状態を示す説明図である。
【図9】フイルム巻き上げ操作時のシャッタ円板、全遮蔽板、及び切換え手段の状態を示す説明図である。
【図10】シャッタ円板、及びゼネバ機構等のシャッタレリーズ直後の状態を示す説明図である。
【図11】ゼネバ機構が停止中にシャッタ円板が回転して1回目、又は5回目の露光を行った状態を示す説明図である。
【図12】図11で説明した露光後にゼネバ機構が作動する間でシャッタ円板が回転する状態を示す説明図である。
【図13】ゼネバ機構が停止中にシャッタ円板が回転して2回目、又は6回目の露光を行った状態を示す説明図である。
【図14】図13で説明した露光後にゼネバ機構が作動する間でシャッタ円板が回転する状態を示す説明図である。
【図15】ゼネバ機構が停止中にシャッタ円板が回転して3回目、又は7回目の露光を行った状態を示す説明図である。
【図16】図15で説明した露光後にゼネバ機構が作動する間でシャッタ円板が回転する状態を示す説明図である。
【図17】ゼネバ機構が停止中にシャッタ円板が回転して4回目、又は8回目の露光を行った状態を示す説明図である。
【図18】図16で説明した露光後にゼネバ機構が作動する間でシャッタ円板が回転する状態を示す説明図である。
【図19】シャッタ円板が1回転した後に切換え遮蔽板が切り換わる状態を示す説明図である。
【図20】得られたプリント写真を示す正面図である。
【図21】バネの付勢でアンクルをガンギ車に噛合させておき、全遮蔽板の全遮蔽位置への移動によってアンクルをバネの付勢に抗してガンギ車から離すようにした他の実施例を示す説明図である。
【符号の説明】
18 撮影レンズ
41a〜41h 絞り開口
42〜45 シャッタ円板
42a,43a,44a,45a スリット
46 ゼネバ機構
47 ガバナ機構
48 走行板
49 切換え遮蔽板
50 全遮蔽板
50i 係合板
64 ガンギ車
65 アンクル
65a レバー板
70 スプロケット
Claims (1)
- 1回のシャッタレリーズによって走行板がチャージ位置から走行完了位置に移動する間に、前記走行板の移動に連係してシャッタ円板駆動系を介してシャッタ円板を回転させ、前記シャッタ円板に設けたスリットによって複数のシャッタ開口を順次に横切って時系列的な露光を行うとともに、フイルム巻き上げ操作時に前記走行板がチャージ位置に戻ることに連動して前記シャッタ円板を元の位置に逆転して戻す連写カメラにおいて、
前記ガンギ車とこれに係脱自在に噛合するアンクルとで構成され、シャッタ円板の回転を緩速化するガバナ機構と、
前記シャッタ円板駆動系のギヤ又はシャッタ円板に噛合するギヤと前記ガバナ機構との間に直結して設けられており、前記スリットがシャッタ開口を通過した後にシャッタ円板の回転を前記ガバナ機構により緩速化しスリットが次のシャッタ開口に対して一定の角度位置まで移動してきたときにシャッタ円板の回転を高速化するために、前記ギヤが所定の回転域を通過する期間だけこのギヤに前記ガバナ機構を連結する間欠接続手段と、
シャッタレリーズに応答して走行板がチャージ位置から走行完了位置に移動するときに前記シャッタ開口の全部を露呈し、フイルム巻き上げ操作に連動して前記走行板が走行完了位置からチャージ位置に戻ることに応答して前記シャッタ開口の全部を遮蔽する遮蔽位置に移動する全遮蔽板と、
前記全遮蔽板が遮蔽位置に移動することに連動して前記アンクルをガンギ車との噛合位置から退避させる切換え手段と、を備えたことを特徴とする連写カメラ。
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