JP3563717B2 - 苦汁豆腐 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に絹生揚げ製品用に適した、苦汁を主体とする凝固剤を用いた豆腐(以下、苦汁豆腐と言う)に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、絹生揚げ製品の製造には、グルコノデルタラクトン等の遅効性の凝固剤を用いた豆腐が使われていた。
【0003】
一方、速効性の凝固剤である苦汁を主体とする凝固剤を用いた豆腐は、風味は優れているが、絹生揚げ製品用の豆腐として利用しようとすると、揚げ工程中に形状変化を起こし、中央部がくぼむ、離水量が著しい等の問題を生じ、それ故、苦汁豆腐を用いた絹生揚げ製品は市販されていなかった。
【0004】
従って、本発明の目的はこのような問題を生じない、絹生揚げ製品に適した苦汁豆腐を提供することにある。
【0005】
本発明は、油脂、水及び乳化剤を用い苦汁を乳化させたW/O型あるいはW/O/W型の乳化凝固剤により、苦汁の使用量が塩化マグネシウム6水塩として対豆乳で0.30重量%以上の条件下で、豆乳濃度が固形分量11.5%以上(Brix 13以上) の65℃以上の高温豆乳を凝固させて得られる、その豆腐の物測値であるG' が11000 以上、G" が2000以上であり、且つTan(δ)が0.185 以下である苦汁豆腐により、上記目的を達成するものである。
また、本発明に用いる乳化凝固剤は下記特性を有するものであることが好ましい。
(乳化凝固剤特性)
(1) 水相部の水中の塩化マグネシウムが10〜90%(W/V%)濃度であること
(2) 乳化剤と油脂を含む油相と上記水相の比率が30 / 70 〜 70 / 30であること
(3) 塩化マグネシウムと、乳化剤と油脂を含む油相との比率が10/90〜80/20であること
(4) 乳化剤の使用量は0.5 〜6重量%であること
更に、本発明では、上記乳化凝固剤を、苦汁の使用量が塩化マグネシウム6水塩として対豆乳で0.30重量%以上の条件下で、豆乳濃度が固形分量11.5%以上(Brix 13以上) の65℃以上の高温豆乳に添加し、ホモミクサーで攪拌した後、凝固させることにより、容易に上記物測値を有する苦汁豆腐を製造することができる。
【0006】
また、上記物性を有する本発明の苦汁豆腐は、そのまま食しても、風味、食感が従来市販の苦汁豆腐より優れている。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明において、苦汁を主体とした凝固剤を用いた豆腐(苦汁豆腐)とは塩化マグネシウム6水塩を凝固剤として5割以上、好ましくは7割以上用いて凝固した豆腐を意味する。苦汁の他に凝固剤として塩化カルシウム、硫酸カルシウム、グルコノデルタラクトンを混合して用いてもよい。
【0008】
本発明における豆腐の物測値G’、G”、Tan(δ)は、正弦振動を利用した動的粘弾性評価による結果であって、動的粘弾性評価装置として、ダイナミックアナライザーRDAII(レオメトリック社製)を用い、正弦周波数振動2rad/sec 、歪率(Strain)3%で測定を行った。測定したG’(dyn/cm sq) とG”(dyn/cm sq) から、Tan(δ)((Tan(δ) =G”/G’) )を求め、G’、G”、tan(δ) を豆腐の物測値とした。測定に供する豆腐試料は、製造後3時間から36時間経過した豆腐を用い、測定時に豆腐を品温10℃に保ち、直径20mm、高さ約5mm(±5%)の円柱に成形し、測定を行った。
【0009】
本発明における豆腐の物測値G’は11000 以上、好ましくは12000 以上が望ましく、G”は2000以上、好ましくは2200以上が望ましく、Tan(δ) は0.185 以下、好ましくは0.175 以下が望ましい。
【0010】
絹生揚げ用の豆腐として利用しようとすると、上記物測値を満たさない豆腐は、揚げ工程中に形状変化を引き起こし、中央部がくぼみ、さらには、丸みを帯びた製品になる。また、離水量も著しい絹生揚げ製品になる。
【0011】
本発明において上記豆腐の物理測定値を制御するためには、豆乳温度、豆乳濃度、凝固剤量、凝固剤の性状によって調整を行う。
【0012】
豆乳の温度は、高温の豆乳、好ましくは65℃以上、さらに好ましくは70℃以上の豆乳を用いるのが望ましく、低温豆乳によってはこの物性は得られない。
【0013】
豆乳濃度は、固形分量11.5%以上(Brix 13以上)、好ましくは固形分量12.0%以上(Brix 14.0以上) が望ましい。
【0014】
苦汁の使用量は、塩化マグネシウム6水塩として対豆乳で0.30重量%以上、好ましくは0.35〜0.60重量%である。
【0015】
さらに凝固剤の性状としては、油脂、水及び乳化剤を用い苦りを乳化させたもの(乳化凝固剤)が好ましく、苦汁を単独で水溶液として用いた場合は、上記の物性は得られない。
【0016】
乳化にあたっては、塩化マグネシウムを水で溶解あるいは半溶解状態にして、水中の塩化マグネシウムが10〜90%、好ましくは30〜70%(W/V%)濃度になるように水相部を調製し、乳化剤と油脂を含む油相と水相比率は、10/90〜90/10、特に30/70〜70/30であることが好ましい。乳化形態としては、W/Oを基本としたものであるが、W/O/Wの形でもよい。
【0017】
また分散にあたり、塩化マグネシウムと、乳化剤と油脂を含む油相との比率は、10/90〜80/20、特に20/80〜50/50であることが好ましい。
【0018】
ここで用いられる油脂は、食用に適する動物性、植物性の油脂及びそれらの硬化油、エステル交換油、分別油等であり、サフラワー油、オリーブ油、綿実油、ナタネ油、ヤシ油、パーム核油、パーム油、大豆油、コーン油、牛脂、魚油、中鎖トリグリセリド等が挙げられる。ジグリセリドを含む油脂でもよい。特に常温で液状の油脂が好ましい。
【0019】
また使用する乳化剤としては、リン脂質、ショ糖脂肪酸エステル、グリセリンモノ脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。W/O製剤化のために、HLBが6以下の親油性の乳化剤を選択使用するのが好ましく、これに親水性の乳化剤を併用して用いることで乳化性能を制御してもよい。乳化剤の使用量は0.5 〜6重量%、特に0.5 〜5重量%が好ましい。
【0020】
本発明における絹生揚げ製品とは、絹豆腐を、食用油、例えば大豆及び菜種油、あるいは硬化油等を用い、油温150 〜220 ℃で揚げた製品を意味する。
【0021】
【実施例】
参考例1
下記の処方にて、乳化を行いW/Oの乳化凝固剤を得た。
【0022】
縮合リシノレイン酸ペンタグリセリンエステル 2.5重量%
(サンソフトA−Z2E、太陽化学(株)製)
トリミスチン酸ペンタグリセリンエステル 0.5重量%
(サンソフトA−143E、太陽化学(株)製)
ソルビタン脂肪酸エステル 1.0重量%
(エマゾール0−10F、花王(株)製)
大豆油 46.0重量%
塩化マグネシウム6水塩(クリスタリン、赤穂(株)製) 30.0重量%
水道水 20.0重量%
実施例1
大豆ビントンから常法により固形分量12.3(Brix 13.5) の煮沸豆乳を得た。この豆乳を温度75℃に保持し、1リットルの豆乳に対して、参考例1によって得られた凝固剤を1重量%(塩化マグネシウム6水塩として0.33重量%)加え、ホモミクサー(特殊機化工業(株)製)を用い、5000rpm で30秒撹拌した。直ちに、350cc の長方形の型枠(7cm×10cm×厚さ5cm)に移し入れ、蒸し器にて、80℃、30分間熟成した。30分後、型枠をはずし、容器に充填し、さらにシール水を注入しシールを行い、1〜2℃の冷水で品温が5℃になるよう冷却を行い製品とした。得られた製品を5℃で貯蔵した。
【0023】
製造後10時間経過した豆腐を前記記載の方法によって、G’ 、G” 、Tan(δ)を測定した。
【0024】
さらに、この豆腐を成人20人(男10人、女性10人)にて官能評価を行った。評価法は、モナディック、5点採点評価で行った。(好ましい〜好ましくない:5〜1)。これらの結果を表1に示す。
【0025】
また上記豆腐から作成した絹生揚げの評価を行った。絹生揚げ製造に際し、製造6時間後の豆腐を、フライヤーを用い、190 ℃の大豆油にて10分間揚げ、5℃の保冷庫にて10時間寝かせ、絹生揚げ製品を得た。得られた製品を上記のパネラーを用いて官能評価を行うとともに、製品の性状、保水性を評価した。保水性試験は、5cm幅の立方体に成形し、5℃、10時間冷蔵中に試料からドリップする離水量を測定した。これらの結果を表2に示す。
実施例2
豆乳に対する凝固剤の添加量を1.17重量%(塩化マグネシウム6水塩として0.37%)とした以外は実施例1と同様にして実施及び評価を行った。
比較例1
実施例1の方法によって得られた豆乳を5℃まで冷却し、この豆乳1リットルに対して、塩化マグネシウム6水塩(クリスタリン、赤穂化成(株))の30%水溶液を1.15重量%(塩化マグネシウムとして0.35重量%)加え、軽く撹拌し、直ちに350cc の型枠に移し入れ、蒸し器を用い、98℃で90分熟成させた。熟成後、実施例1に準じて、製造及び評価を行った。
比較例2〜4
市販品A(A社製造品)、市販品B(B社製造品)、市販品C(C社製造品)(何れも苦汁凝固、絹豆腐)を用い、実施例1に準じて評価を行った。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
Claims (3)
- 油脂、水及び乳化剤を用い苦汁を乳化させたW/O型あるいはW/O/W型の乳化凝固剤により、苦汁の使用量が塩化マグネシウム6水塩として対豆乳で0.30重量%以上の条件下で、豆乳濃度が固形分量11.5%以上(Brix 13以上) の65℃以上の高温豆乳を凝固させて得られる、その豆腐の物測値であるG' が11000 以上、G" が2000以上であり、且つTan(δ)が0.185 以下である苦汁豆腐。
- W/O型あるいはW/O/W型の乳化凝固剤が下記特性を有するものである請求項1記載の苦汁豆腐。
(乳化凝固剤特性)
(1) 水相部の水中の塩化マグネシウムが10〜90%(W/V%)濃度であること
(2) 乳化剤と油脂を含む油相と上記水相の比率が30 / 70 〜 70 / 30であること
(3) 塩化マグネシウムと、乳化剤と油脂を含む油相との比率が10/90〜80/20であること
(4) 乳化剤の使用量は0.5 〜6重量%であること - 油脂、水及び乳化剤を用い苦汁を乳化させたW/O型あるいはW/O/W型の乳化凝固剤を、苦汁の使用量が塩化マグネシウム6水塩として対豆乳で0.30重量%以上の条件下で、豆乳濃度が固形分量11.5%以上(Brix 13以上) の65℃以上の高温豆乳に添加し、ホモミクサーで攪拌した後、凝固させることを特徴とする、その豆腐の物測値であるG' が11000 以上、G" が2000以上であり、且つTan(δ)が0.185 以下である苦汁豆腐の製造方法。
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