JP3563602B2 - 練歯磨組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、カルボキシメチルセルロース又はその塩類を含む練歯磨組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、練歯磨組成物の流動性、保形性、保湿性、表面の艶などの物性を制御するため、カルボキシメチルセルロース又はその塩類(以下、単にCMCと総称する)が使用されている。
【0003】
このような練歯磨組成物には、容器に充填するための流動性が要求されるとともに、使用する場合には、流動性と反する保形性が要求される。例えば、練歯磨組成物を容器に充填する場合に、流動性の高い組成物の方が充填し易いものの、流動性の高い組成物を使用する場合には、保形性がないため、容器から充填物を出すと、形状がくずれたり、垂れたりすることがある。逆に、保形性を付与するには組成物の粘度を高めることが行われているが、組成物の粘度を高めると、流動性、ひいては容器への充填性が低下する。
【0004】
このように、従来のCMCを用いると、各物性のバランス、特に流動性と保形性とを両立させることが困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、CMCを含み、流動性(又は容器への充填性)と保形性とを高いレベルで両立できる練歯磨組成物を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記目的を達成するため鋭意検討の結果、特定の粘度特性を有するCMCを用いると、高い流動性と高い保形性とを両立できることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明に使用されるCMCは、セルロースとして木材パルプ、リンターパルプを使用し、スラリー法又はニーダー法により得られる。また、前記CMCは、ソルビトール水溶液を調製したとき、1時間後の粘度η1と24時間後の粘度η24との粘度比η24/η1が1.70〜10である。さらに、前記CMCの1重量%水溶液の粘度は20〜500( mPa ・ s )である。
【0008】
本発明において、セルロースとアルカリとを温度20〜50℃で反応させてアルカリセルロースを生成させ、アルカリセルロースとモノクロロ酢酸との反応により得られたCMCを含む練歯磨組成物を提供する。なお、CMCの平均重合度は、10〜1000程度であってもよい。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に使用されるCMCの塩型としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などが例示でき、これらの塩の混合物であってもよい。CMCとしては、通常、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩が使用される。
【0010】
本発明に使用されるCMCは糖類と組合わせて使用するのに適している。すなわち、本発明に使用されるCMCは、ソルビトール水溶液を調製したとき、1時間後の粘度η1 と24時間後の粘度η24との粘度比η24/η1 が1.4以上(例えば、1.5〜10程度)、好ましくは1.8以上(例えば、2〜5程度)であり、通常、1.5〜5程度である。粘度比η24/η1 が1.4未満では、練歯磨組成物を容器に充填した後の粘度上昇が小さく、高い保形性を付与することが困難である。
【0011】
このような粘度比のCMCを用いると、練歯磨組成物を調製した直後では粘度が低く、流動性が高いため容器に充填し易い。一方、容器に充填した後、しばらくするとCMCと糖類(例えば、ソルビトール)との相互作用により、練歯磨組成物の粘度が大きく上昇し、高い保形性を保持させることができる。
【0012】
さらに、本発明に使用されるCMCは、4重量%食塩水を溶媒としたとき、1重量%溶液の濁度が30%以上(例えば、30〜90%程度)、好ましくは35%以上(例えば、35〜85%程度)である。このような濁度を有するCMCは、練歯磨組成物を調製した直後は粘度が低いため流動性(容器への充填性)が高く、充填した後、しばらくするとCMCと糖類(例えば、ソルビトール)との相互作用により、組成物の粘度が大きく上昇し、高い保形性を保持できる。なお、濁度が30%未満では、CMCと糖類とを含む組成物において、容器へ充填した後、粘度上昇が小さく、高い保形性を付与できない。
【0013】
さらに、本発明に使用されるCMCは、1重量%水溶液の粘度が20〜500(mPa ・s )、好ましくは50〜300(mPa ・s )、さらに好ましくは90〜200(mPa ・s )程度である。このような粘度を有するCMCを含む練歯磨組成物は、流動性(容器への充填性)および保形性を向上できる。なお、粘度が20(mPa ・s )未満では、練歯磨組成物の粘度が低く、保形性が低下しやすく、500(mPa ・s )を越えると、練歯磨組成物の粘度が高くなり過ぎて流動性や容器への充填性が低下しやすい。
【0014】
本発明に使用されるCMCの平均エーテル化度は、例えば、0.6〜1.0、好ましくは0.7〜0.95、さらに好ましくは0.8〜0.95程度である。平均エーテル化度が0.6未満では、練歯磨組成物に必要な表面の艶が得られなかったり、分散安定性が低下し、十分な流動性が得られない場合がある。一方、平均エーテル化度が1.0を越えると、充填後に高い保形性を付与できない場合がある。
【0015】
なお、CMCの平均重合度は、前記特性の範囲内で調整でき、例えば、10〜1000、好ましくは50〜900、さらに好ましくは200〜800程度である。
【0016】
このようなCMCは、慣用のスラリー法やニーダー法などの種々の方法、例えば、セルロースとアルカリとを反応させてアルカリセルロースを生成させる工程(アルセル化工程又はマーセル化工程)と、アルカリセルロースとモノクロロ酢酸との反応によりカルボキシメチルセルロースを生成させる工程(カルボキシメチル化工程又はエーテル化工程)とで構成された方法により製造できる。
【0017】
セルロースとしては、種々の原料、例えば、木材パルプ,リンターパルプなどが使用できる。アルカリとしては、アルカリ(リチウム,カリウム,ナトリウムなど)、アンモニアなどが利用できる。アルカリとしては、通常、ナトリウムが使用される。アルカリは、通常、水酸化物又は水溶液として使用される。
【0018】
アルセル化工程において、アルカリ(水酸化ナトリウムなど)の使用量は、通常、ニーダー法において、セルロース100重量部に対して70.5〜80重量部程度の範囲から選択できる。なお、スラリー法において、アルカリ(水酸化ナトリウムなど)の使用量は、通常、セルロース100重量部に対して40〜70重量部、好ましくは45〜65重量部程度である。スラリー法では、セルロース濃度1〜7重量%程度、ニーダー法では、セルロース濃度10〜20重量%程度でアルセル化を行う場合が多い。また、アルセル化工程でのアルカリ濃度は、スラリー法,ニーダー法などにより異なるが、スラリー法では、通常、1〜5重量%程度の水性媒体中で行うことができ、ニーダー法では、通常、濃度13.1〜20重量%程度の水性媒体中で行うことができる。
【0019】
アルセル化工程は、適当な溶媒の存在下で行ってもよい。溶媒としては、例えば、水,アルコール類(エタノール,イソプロパノールなど),ケトン類(アセトン),セロソルブ類(メチルセロソルブ,エチルセロソルブなど)などが例示できる。
【0020】
本発明において、アルカリセルロース生成工程では、温度20〜50℃、好ましくは25〜40℃、さらに好ましくは25〜35℃で反応させるのが有利である。反応温度が低いと、前記特性を有するCMCを得ることが困難である。
【0021】
カルボキシメチル化工程において、モノクロロ酢酸の使用量は、カルボキシメチル化の程度に応じて選択でき、例えば、セルロース100重量部に対して40〜100重量部、好ましくは45〜75重量部程度の範囲から選択できる。
【0022】
このようにして生成したCMCは、脱液、洗浄して乾燥することにより精製できる。なお、必要であれば、反応終了後、粘度調整のため、過酸化水素,過酢酸などの過酸化物で処理してもよい。
【0023】
前記のように本発明の練歯磨組成物は、糖類と組合わせて使用することができ、それらを混合することにより調製できる。使用される糖類としては、単糖類(例えばトリオース、テトロース、ペントース、ヘキソースなど)又はその置換誘導体が挙げられる。好ましくは、単糖類のアルデヒド基又はケト基が還元された糖アルコール(例えば、ペントースから誘導されるアラビトール、キシリトール、またはヘキソースから誘導されるソルビトール、アンニトールなど)、さらに好ましくは、ソルビトールが挙げられる。
【0024】
糖類の使用量は、例えば,固形分換算でCMC100重量部に対して、0.01〜1000重量部、好ましくは0.1〜500重量部、さらに好ましくは1〜300重量部程度の範囲から選択できる。
【0025】
なお、歯磨用組成物は、通常、充填剤や研磨剤(炭酸カルシウム,炭酸マグネシウム,二酸化ケイ素,リン酸カルシウム,酸化チタンなど)、湿潤剤(ソルビトール,キシリトール,乳糖,果糖,ショ糖などの糖類,グリセリン,グリコール類など),粘結剤(CMC,カラギーナン,キサンタンガム,ローカストビーンガム,グアーガム,ペクチン,カラゲニンなどの多糖類、メチルセルロース,ヒドロキシエチルセルロース,ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロースエーテル類、ポリビニルアルコール,ポリビニルピロリドンなどの水性高分子など)、安定剤(酸化防止剤など)、界面活性剤などの分散安定剤、殺菌剤、消炎剤、口臭除去剤、ビタミン剤、香料、甘味剤、色素、水などで構成できる。
【0026】
【発明の効果】
本発明では、特定の粘性挙動を示すCMCを用いるため、流動性(又は容器への充填性)と保形性とを高いレベルで両立できる練歯磨組成物を得ることができる。
【0027】
【実施例】
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
実施例1
撹拌装置付きの3Lセパラブルフラスコに、イソプロピルアルコール1684重量部と水124重量部、および粉砕したパルプ70重量部を投入して撹拌した。約30℃に温度調節した後、水酸化ナトリウム41.6重量部と水40.7重量部との水溶液を入れ、温度30〜35℃で60分間撹拌混合してアルカリセルロースを調製した。次いで、モノクロル酢酸44.2重量部とイソプロピルアルコール35.8重量部の混合液を投入して混合した後、70℃に昇温して反応を1時間行った。反応終了後、反応器から内容物を取り出して遠心分離機で脱液し、湿綿を約80重量%メチルアルコール水溶液で洗浄し、過酸化水素で粘度調整した後、脱液して乾燥することにより、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)を製造した。
【0029】
実施例2
二軸の撹拌翼を有する5L反応器に、イソプロピルアルコール883重量部と水酸化ナトリウム141重量部と水190重量部との混合液を入れた後、粉砕したパルプ200重量部を投入し、30〜35℃で60分間撹拌混合した。反応器にモノクロル酢酸140重量部とイソプロピルアルコール113重量部との混合液を投入した後、70℃に昇温して1時間反応を行った。反応終了後、反応器から内容物を取り出しで遠心分離機で脱液し、湿綿を約80重量%のメチルアルコール水溶液で洗浄し、過酸化水素で粘度調整した後、脱液して乾燥し、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)を製造した。
【0030】
実施例3
撹拌装置付きの3Lセパラブルフラスコに、イソプロピルアルコール1664重量部と水160重量部、および粉砕したパルプ70重量部を投入して撹拌した。約20℃に温度調節した後、水酸化ナトリウム34.0重量部と水33.3重量部との混合液を入れ、温度20〜30℃で60分間撹拌混合してアルカリセルロースを調製した。次いで、モノクロル酢酸33.7重量部とイソプロピルアルコール27.3重量部との混合液を投入して混合した後、70℃に昇温して1時間反応を行った。反応終了後、反応器から内容物を取り出して遠心分離機で脱液し、湿綿を約80重量%メチルアルコール水溶液で洗浄し、過酸化水素で粘度調製した後、脱液して乾燥することにより、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)を製造した。
【0031】
比較例1
アルカリセルロースの調製工程で、温度を10〜20℃未満とする以外は、実施例1と同様にしてCMCを得た。
【0032】
比較例2
アルカリセルロースの調製工程で、温度を10〜20℃未満とする以外は、実施例2と同様にしてCMCを得た。
【0033】
比較例3
撹拌装置付きの3Lセパラブルフラスコに、イソプロピルアルコール1675重量部と水114重量部、および粉砕したパルプ70重量部を投入して撹拌した。約20℃に温度調節した後、水酸化ナトリウム51.9重量部と水50.9重量部との混合液を入れ、温度20〜30℃で60分間撹拌混合してアルカリセルロースを調製した。次いで、モノクロル酢酸33.7重量部とイソプロピルアルコール27.3重量部との混合液を投入して混合した後、70℃に昇温して1時間反応を行った。反応終了後、反応器から内容物を取り出して遠心分離機で脱液し、湿綿を約80重量%メチルアルコール水溶液で洗浄し、過酸化水素で粘度調製した後、脱液して乾燥することにより、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC)を製造した。
【0034】
このようにして得られたCMCについて、4重量%食塩水を溶媒とする1重量%溶液の濁度(食塩水濁度)、およびソルビトール系水溶液の1時間後と24時間後の粘度(ソルビトール粘度)を測定した。
【0035】
[食塩水濁度]
所定量の4重量%食塩水に、精秤したCMCを撹拌しながら添加し、凝固物(ママコ)をペンシルミキサーでつぶした。その後、濃度1重量%となるように4重量%食塩水を加えて溶液を調製した。温度25℃の恒温槽中で一定時間放置した後、溶液が均一になるように撹拌し、溶液の濁度を濁度計(東京電色(株)製,T−2600D型濁度計,光源:ハロゲンランプを用いた積分球方式,セル長50mm)を用いて測定した。
濁度(%)=散乱光/全透過光×100
[ソルビトール粘度]
水136gと70重量%ソルビトール水溶液100.5gを500mlビーカーに入れて撹拌した。この混合液に、50mlビーカー中でCMC6.0gを94%エタノール水溶液7.5gに分散させた液を投入するとともに、ビーカーの付着物を水50gで共洗し、ホモジナイザー(イカ社製,ウルトラタックスT−25型)を用いて24000rpmで5分間均一化した。この均一化液を25℃の恒温槽中で、撹拌停止から一定時間(1時間後および24時間後)放置した後、粘度を測定した(ブルックフィールドBH型粘度計,10rpm,3分間後の値)。
【0036】
結果を表1に示す。
【0037】
【表1】
【0038】
[練歯磨組成物]
以下の成分を混合して練歯磨ペーストを調製した。
【0039】
研磨剤(炭酸カルシウム) 15重量%
研磨剤(リン酸水素カルシウム) 31重量%
実施例および比較例で得られたCMC 1重量%
グリセリン 20重量%
70%ソルビトール 10重量%
ラウリル硫酸ナトリウム 1.5重量%
サッカリンナトリウム 0.1重量%
ペパーミント 0.9重量%
水 20.5重量%
得られた練歯磨ペーストのチューブへの充填し易さ(流動性)を測定した。測定基準を以下に示す。
・流動性があり、充填し易い ○
・流動性がなく、充填しにくい ×
次いで、チューブに充填したペーストを紙の上に絞り出し、3分後の形状変化(保形性)を目視で判定した。判定基準を以下に示す。
・変化なし ○
・ほぼ変化なし △
・変化あり(垂れが生じる) ×
結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
Claims (8)
- セルロースとして木材パルプ、リンターパルプを使用し、スラリー法又はニーダー法により得られたカルボキシメチルセルロース又はその塩類を含む練歯磨組成物であって、カルボキシメチルセルロース又はその塩が、ソルビトール水溶液を調製し、1時間後の粘度η1と24時間後の粘度η24とを測定したとき、粘度比η24/η1が1.70〜10であり、かつカルボキシメチルセルロース又はその塩類の1重量%水溶液の粘度が20〜500( mPa ・ s )である練歯磨組成物。
- 4重量%食塩水を溶媒としたとき、カルボキシメチルセルロ−ス又はその塩類の1重量%溶液の濁度が30%以上である請求項1記載の練歯磨組成物。
- カルボキシメチルセルロース又はその塩類の平均エーテル化度が0.6〜1.0である請求項1記載の練歯磨組成物。
- セルロースとアルカリとを温度20〜50℃で反応させてアルカリセルロースを生成させ、アルカリセルロースとモノクロロ酢酸との反応によって得られたカルボキシメチルセルロース又はその塩類を含む請求項1に記載の練歯磨組成物。
- カルボキシメチルセルロース又はその塩類の平均重合度が10〜1000である請求項1に記載の練歯磨組成物。
- さらに糖類を含む請求項1記載の練歯磨組成物。
- 前記糖類が糖アルコールである請求項6記載の練歯磨組成物。
- 前記糖類がソルビトールである請求項6記載の練歯磨組成物。
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