JP5142563B2 - 耐剪断性カルボキシメチルセルロースおよびそれを配合した口腔用組成物 - Google Patents
耐剪断性カルボキシメチルセルロースおよびそれを配合した口腔用組成物 Download PDFInfo
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Description
しかしながら、これらの文献には、剪断力を利用する混合機械による製造に対する高分子材料の耐性については何も開示されていない。
[1]セルロース原料とアルカリとを反応させてアルカリセルロースを調製し、ついで、該アルカリセルロースとエーテル化剤とを反応させてカルボキシメチルセルロースまたはその塩を製造する方法において、該アルカリセルロース調製が、第1段目として10〜25℃にて反応させた後、第2段目として10〜25℃上げて反応させる2段アルカリセルロース調製法であることを特徴とするカルボキシメチルセルロースまたはその塩の製造方法;
[2]第1段目の反応を30〜60分間行い、第2段目の反応を30〜60分間行うことを特徴とする[1]記載のカルボキシメチルセルロースまたはその塩の製造方法;
[3]セルロース原料と、15〜30重量%の水および7〜15重量%のアルカリを含む含水アルカリ有機溶媒とを、該セルロース原料1重量部に対して3〜10重量部の含水アルカリ有機溶媒の割合で反応させてアルカリセルロースを調製することを特徴とする[1]または[2]記載のカルボキシメチルセルロースまたはその塩の製造方法;
[4][1]ないし[3]のいずれか1に記載の方法で得られるカルボキシメチルセルロースまたはその塩;
[5]エーテル化度が0.5〜1.5であって、2重量%水溶液の粘度が5000〜10000mPa・sである[4]記載のカルボキシメチルセルロースまたはその塩;
[6][4]または[5]記載のカルボキシメチルセルロースまたはその塩を含有する口腔用組成物;
[7]カルボキシメチルセルロースまたはその塩の配合量が口腔用組成物の全量に対して0.01〜10重量%である[6]記載の口腔用組成物;および
[8]練歯磨組成物である[6]または[7]記載の口腔用組成物
を提供する。
なお、本願の特許請求の範囲および明細書において単に「CMC」という場合は、特記しない限り、遊離酸および塩の両方の形態のカルボキシメチルセルロースをいう。
本発明のCMCの製造方法は、(1)セルロース原料とアルカリとを特定の条件下で反応させてアルカリセルロースを調製する工程、および、(2)該アルカリセルロースとカルボキシメチルエーテル化剤(以下、エーテル化剤と略す)とを反応させてCMCを製造する工程、からなる。
本発明の製造方法における工程(1)においては、セルロース原料とアルカリとを反応させる。
セルロース原料としては、特に限定されず、例えば、木材パルプ、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ、コットンリンターパルプなど従来使用されているセルロース原料を使用することができる。
水の量が15重量%未満の場合は水によるセルロース分子へのアタックが減少し、結晶化領域の破壊が少なくなり、水溶液としたときに透明性が高いCMCを得ることが困難になる。一方、水の量が30重量%を超える場合は水とエーテル化剤との間での副反応が進み、エーテル化剤の有効利用率が低下する。
アルカリの量が7重量%未満の場合は十分な量のアルカリセルロースを生成することができない。一方、アルカリの量が15重量%を超えると後の工程で使用するエーテル化剤の有効利用率の低下を招く。
これらの有機溶媒は1種または2種以上を併用することができる。特に入手の手軽さ、低価格、取り扱いやすさの点で、イソプロピルアルコール、エチルアルコールが好ましく、イソプロピルアルコールがさらに好ましい。また、エチルアルコール−ベンゼン、エチルアルコール−トルエン、イソプロピルアルコール−ベンゼンなどの混合溶媒も使用できる。
アルカリセルロースをエーテル化するために用いられるカルボキシメチルエーテル化剤としては、例えば、モノクロロ酢酸、モノクロロ酢酸ナトリウム、モノクロロ酢酸メチル、モノクロロ酢酸エチルおよびモノクロロ酢酸イソプロピルよりなる群から選択される剤などが挙げられる。
これらのエーテル化剤は1種または2種以上を併用することができる。これらの中では、酸・アルカリ反応という点でモノクロロ酢酸およびモノクロロ酢酸ナトリウムが好ましい。
ここで、0.5〜1.5のエーテル化度のCMCを得るためには、セルロース原料1重量部に対して、0.25〜1.35重量部のカルボキシメチルエーテル化剤を添加するのが好ましい。
通常、エーテル化剤は、含水有機溶媒に溶解してアルカリセルロースに添加する。含水有機溶媒としては、セルロース原料とアルカリとの反応に用いた含水有機溶媒と同様の溶媒を用いることができる。
本発明の耐剪断性CMCは、2%水溶液の粘度が5000〜10000mPa・sであることが好ましい。CMCの水溶液の粘度は、例えば、セルロース原料の種類の変更、エーテル化度の変化などにより、調整することができる。
従来の混練機の代わりに分散機などの混合機械を歯磨などの製造に利用することができれば、配合成分をより均一に配合することができ、より多様な形態の商品を効率よく製造することができる。
口腔用組成物中のCMCの配合量は、好ましくは0.01〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%である。この範囲の配合量にすることにより、高い剪断力が製造工程において与えられても、本発明の耐剪断性CMCの特有の性質により、組成物の粘度を維持することができる。組成物に配合するCMCの塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩が好ましく、ナトリウム塩であるCMCナトリウムがより好ましい。
容量5Lのニーダー型反応機に、日本製紙ケミカル製N−DSPパルプをミキサーで粉砕して得られたチップ状のパルプ550gを仕込んだ。これとは別に、イソプロピルアルコール2147gと水679gを5L容器にとりフレーク苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)375gを溶解させた後、20℃まで冷却した。なお、この含水アルカリ有機溶媒のアルカリ濃度は11.7重量%、水濃度は21.2重量%であり、セルロースに対する重量比は5.82である。この含水アルカリ有機溶媒を反応機のパルプに馴染ませながら添加し、20℃で45分間、リフラックスコンデンサーを付けて溶媒組成変化を起こさないように反応させた。反応機の設定温度を上げ、さらに30℃で45分間、リフラックスコンデンサーを付けて溶媒組成変化を起こさないように反応させた(2段アルカリセルロース調製法)。なお、この間、反応機の回転数は30rpmとした。
実施例1のCMCナトリウム(CMC−Na)を得た。
試料1〜2gを秤量瓶に精密に量りとり、105±2℃の定温乾燥器中において4時間乾燥し、デシケーター中で冷却し重さを量り、その減量から水分を求めた。
水分(%)=減量(g)/試料(g)×100
無水物試料約1gを300mlビーカーに精密に量り、水約200mlを加えて溶かす。0.1モル/L硝酸銀で、電位差滴定し、塩分を求める。
塩分(%)=0.1モル/L硝酸銀(ml)×f×0.585/無水物試料(g)
f:0.1モル/L硝酸銀の力値
無水物試料0.5〜0.7gを精密に量り、濾紙に包んで磁性ルツボに入れ、600℃で灰化した。冷却後、ビーカーに移し、水約250mlと0.05モル/L硫酸35mlを加えて30分間煮沸した。これを冷却し、フェノールフタレイン指示薬を加えて、0.1モル水酸化カリウム標準液で過剰の酸を滴定した。
A=af1−bf2/無水物試料(g)
エーテル化度=162×A/10000−80A
A:試料1g中の結合アルカリに消費された0.05モル硫酸の量(mL)
a :0.05モル/L硫酸の使用量(mL)
f1:0.05モル/L硫酸の力価
b :0.1モル水酸化カリウムの使用量(mL)
f2:0.1モル水酸化カリウムの力価
162:グルコースの分子量
80:CH2COONa−Hの分子量
共栓三角フラスコに試料4.4gを精密に採取し、次式によって求めた溶解水を加えた。
溶解水(g)=試料(g)×98−水分(%)/2
この水溶液を一昼夜放置後、マグネチックスターラーで約5分間かきまぜ、完全な溶液とした後、フタつき容器に移し、30分間25±0.2℃の恒温槽に入れた。溶液をガラス棒でゆるやかにかき混ぜ、BM型粘度計により、ローター4、回転数30rpmで開始3分後の目盛りを読み取った。
粘度=目盛りを読み取り値×200
[pH]
無水物試料1gを99mlの水に溶かし、ガラス電極を備えたpHメーターにて測った。
前記と同様に本発明の方法で製造したCMCナトリウム(実施例4〜8)および従来のCMCナトリウム(商品名:セロゲンF−880B、セロゲンBS−H、セロゲンF−AGS、セロゲンHE−90F)を用い、溶解時の耐剪断性試験を実施した。なお、それぞれのCMC−Naの分析値は以下の通りであった。
A:スターラーの緩やかな回転により溶解
B:ホモミキサー(TKホモミキサー MODEL M(特殊機化工業(株)製))(回転数4500rpm、10分間)により溶解
C:同ホモミキサー(回転数9000rpm、10分間)により溶解
粘度は、BM型粘度計により、最適ローターにて、回転数30rpmで開始3分後の目盛りを読み取った。結果を表3に示す。
表4で示される処方の歯磨組成物をアジテーターホモジナイザー(15L容量のペコミックス真空乳化攪拌装置(ベレンツ社製))を使用して製造した。実施例9には実施例1のCMCナトリウムを使用し、比較例1には従来のCMCナトリウム(商品名:セロゲンF−880B)を使用した。製造工程におけるホモジナイジング時間による粘度の変化は表4および図1の通りとなった。なお、ホモミキシングの周速は20m/sで行った。この結果により本発明のCMCナトリウムは耐剪断力に優れること、およびそれを用いた歯磨組成物は剪断力を利用する混合機械を用いた場合、従来のCMCナトリウムに比べ、好ましい粘度特性を有することが確認された。
さらに、実施例9で得られた練歯磨(ホモジナイジング時間 30分)について経日(室温保管)における粘度変化を測定した(図2)。CMCナトリウムなどの高分子材料は製造後徐々に架橋構造を形成し粘度が製造直後よりも上昇することが経験的に知られている。実施例9および比較例1の口腔用組成物は、製造後5日以上経ることにより、一定の粘度になっている。しかしながら、製造直後においては、比較例1の口腔用組成物ではホモジナイジング時間が30分間の場合において、剪断力による分子鎖の切断により初期の粘度低下が発生している。それに対して、耐剪断性CMCナトリウムを配合した実施例9の口腔用組成物では初期の粘度低下が抑えられている。最終的な口腔用組成物の粘度に対する初期の粘度低下の割合を少なくことは製品設計上および品質管理上有用であり、本発明のCMCナトリウムの剪断力に対する耐性により、経時的に安定な口腔用組成物が製造できることが確認された。
Claims (7)
- セルロース原料とアルカリとを反応させてアルカリセルロースを調製し、ついで、該アルカリセルロースとエーテル化剤とを反応させてカルボキシメチルセルロースまたはその塩を製造する方法において、該アルカリセルロース調製が、第1段目として10〜25℃にて反応させた後、第2段目として10〜25℃上げて反応させる2段アルカリセルロース調製法であることを特徴とするカルボキシメチルセルロースまたはその塩の製造方法。
- 第1段目の反応を30〜60分間行い、第2段目の反応を30〜60分間行うことを特徴とする請求項1記載のカルボキシメチルセルロースまたはその塩の製造方法。
- セルロース原料と、15〜30重量%の水および7〜15重量%のアルカリを含む含水アルカリ有機溶媒とを、該セルロース原料1重量部に対して3〜10重量部の含水アルカリ有機溶媒の割合で反応させてアルカリセルロースを調製することを特徴とする請求項1または2記載のカルボキシメチルセルロースまたはその塩の製造方法。
- 請求項1ないし3のいずれか1項に記載の方法で得られるカルボキシメチルセルロースまたはその塩であって、エーテル化度が0.5〜0.95であって、2重量%水溶液の粘度が5000〜10000mPa・sであるカルボキシメチルセルロースまたはその塩。
- 請求項4記載のカルボキシメチルセルロースまたはその塩を含有する口腔用組成物。
- カルボキシメチルセルロースまたはその塩の配合量が口腔用組成物の全量に対して0.01〜10重量%である請求項5記載の口腔用組成物。
- 練歯磨組成物である請求項5または6記載の口腔用組成物。
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