JP3563434B2 - 感熱自己接着性樹脂塗装金属板およびその製法並びに該樹脂塗装金属板の接合法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、自己接着性を有する感熱接着型の樹脂塗装金属板およびその製法並びに該樹脂塗装金属板の接合法に関し、この感熱自己接着性樹脂塗装金属板は、自動車や家庭電気製品、鋼製家具等の外板材あるいは建築材料用等として、溶接や接着剤等の接合手段を必要としない自己接合性を有するものとして、成形・組み立て時に金属板同士、あるいは金属板と非金属板(ベニヤ板、プラスチック板、ゴム板、布などを含む)を接着する必要がある部位に有利に適用できる。
【0002】
【従来の技術】
従来より金属板の接合法として汎用されているのは、ろう付けを含めた接着剤を使用する方法、溶接法、ボルト・ナット等を使用する機械的接合法である。
このうち溶接法には、ガス溶接法、アーク溶接法、電気抵抗溶接法等があり、金属同士の接合に汎用されているのは主として電気抵抗溶接法であり、この方法は、被接着体の面同士を圧着して通電し、通電部分を抵抗熱で発熱させることによって被接着体を相互に加熱溶融・拡散させて冶金的に接合する方法である。
【0003】
ところがこの電気抵抗溶接法は、アルミニウムや銅あるいはこれらの合金の如く電気抵抗が非常に小さくて抵抗熱を発生しない金属板に対しては適用できず、また被処理金属板の表面が有機塗膜やセラミックス皮膜の様な電気絶縁層で完全に被覆されている場合にも適用し難い。更に溶接法を適用し得る金属材であっても、溶接部はかなりの高温に曝されるので、溶接部が熱影響を受けて金属母材が組織変化や表面酸化等を受け、外観や耐食性、強度等に悪影響を及ぼすことも多く、更には、溶接部表面にナゲット状もしくはビード状の溶接跡が残るため、美観を高めるには煩雑な表面仕上げ研磨等の後処理が必要となる。
【0004】
また機械的接合法には、リベット、ボルト・ナット、かしめ等の方法があるが、リベットやボルト・ナットによる方法では、これら接合部材の頭部が外面に突出するため美観を害し、用途や適用部位によってはその適用が制限される。そこで、例えば家庭用電気製品等では、かしめによる機械接合法が多用されているが、この方法では接合部の機械的強度が不十分であるという問題が指摘される。
【0005】
更にろう付け法を含めた接着剤を用いる方法では、被接着体自身を溶融させないため、溶接等の溶融接着方法に比べると被接着体自身の外観が損なわれたり熱歪みや熱変形・変質等の熱的材料劣化が少ないか全く生じないという利点を有している。このろう付け法では、銀ろう、黄銅ろう、洋銀ろう等の各種低融点金属や合金ろうを溶融させ、被接着面同士の接合が行なわれる。
【0006】
一方、有機系の接着剤を用いる方法は、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂あるいはエラストマー等の接着剤を被接合面の片面ないし両面に塗布し、樹脂中の接着に関与する成分を反応させるため、あるいは樹脂を溶融させて粘着性を発現させるために、加熱および/または圧着が行なわれる。
【0007】
例えば、特開平4−322771号や特開平4−330970号等には、耐食製、塗膜密着性、溶接性、加工性、接着性に優れた有機樹脂被覆めっき鋼板が開示されている。この有機樹脂被覆めっき鋼板は、特定の水系樹脂にブロック化イソシアネート基含有化合物を混合した処理液を鋼板表面に塗布・乾燥したものであり、この有機塗膜表面に、市販の接着剤を塗布してから密着し、その後にブロック剤の解離温度以上に加熱・焼付けを行なうことにより、優れた接着強度を得ている。
【0008】
ところがこの様に接着剤を塗布する方法では、まず金属板を所定形状に打ち抜きしたり剪断した後で所定の成形加工を行ない、その後、接合させたい部位の表面に一個ずつ接着剤を塗布しなければならないため作業効率が極めて悪く、結果として生産性や製造コストの点で不利である。
【0009】
一方、特公昭52−8998号には、電気機器の積層鉄心用電磁鋼板として、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を有機溶媒で希釈混合し乳化剤で水性エマルジョン化した処理液を、鋼板表面に塗布し乾燥した有機被覆電磁鋼板が開示されている。
【0010】
この有機被覆鋼板は、積層し加圧・加熱するだけで接合することができ、接着剤を別途塗布する必要がないのでユーザサイドでの接着剤の塗布工程が省略できるという利点を有している。この場合、熱可塑性樹脂のみからなる被覆では接着強度が十分でなく、特に積層鉄心が使用時に発熱して高温になったときに、接合剤が可塑化して接着強度が急激に低下するという問題がある。そこでこの公報では、熱可塑性樹脂に熱硬化性樹脂を混合することによって接合後の耐熱性を高めると共に、乳化剤の添加によって生じる軟化点の低下も防止することができ、結果として高温時における接着強度の低下を改善している。
【0011】
しかしながら、塗膜中に熱可塑性樹脂が残存する限り、高温時や湿潤環境下での接着強度の低下は避けられず、また耐溶剤性にも劣る。加えて接着に長時間を要するので接着作業の効率も悪い。これらのことから、自動車や家電製品、鋼製家具あるいは建築材料等の構造材として、上記の様な有機被覆金属材を適用することは困難である。
【0012】
更に同種の積層鉄心用有機被覆鋼板として、特公昭52−8999号公報には、水系のアクリル系樹脂エマルジョンに水溶性フェノール系樹脂や水溶性メラミン系樹脂を配合したものを塗布し、不完全に焼付けることによって有機被覆電磁鋼板を得る方法が開示されており、この方法でも同様に接着剤の塗布なしで接合することができる。しかしこの場合も接着後の塗膜中に熱可塑性樹脂成分が残存しているため、可塑化温度以上の高温条件や湿潤環境下に曝されると、接着強度の低下が避けられず、また耐溶剤性にも劣る。
【0013】
更に、接着被膜形成のための不完全焼付け工程で250℃を超える高温に短時間加熱されるため、加熱ムラが生じると、局部的に樹脂が劣化を起こして接着強度に大きなばらつきが生じ、接合時の焼付け温度管理が非常にむずかしい。しかも接合にかなり長時間を要するため作業効率も悪い。従って、この様な積層鉄心用有機被覆鋼板の塗膜設計を、そのまま自動車や家電製品、鋼製家具用あるいは建築材料用として適用することは、性能面および施工作業効率の両面から実用性を欠く。
【0014】
また、上記特公昭52−8999号公報に開示された不完全焼付け時の温度範囲や時間を広げて製造をより容易にしたものとして、アクリル系樹脂の水性エマルジョンに水溶性スチレン−マレイン酸共重合ポリマーを混合した処理液を、被処理材表面に塗布し乾燥した接着用有機被覆鋼板が開示されている(特公昭55−9815号公報)。しかしながらこの有機塗膜にしても、高温時の接着強度が若干改善されている程度であって基本的には熱可塑性樹脂を含む混合塗膜であるため、高温時あるいは湿潤環境下での接着強度は十分でなく、且つ耐溶剤性にも劣る。
【0015】
また、アクリル系樹脂と水溶性スチレン−マレイン酸共重合ポリマーとの架橋結合により接着強度が増大すると記載されているが、アクリル酸基やアクリル酸エステル基とカルボキシル基との結合はさほど強固なものではなく、またスチレン−マレイン酸共重合ポリマーが巨大高分子であるほど流動性が悪くなってアクリル系樹脂との結合機会(架橋点)は少なくなるので、接着強度の向上にさほど顕著な効果は期待できない。更に、積層板間の接着に要する時間も長く、接着時の作業効率が悪いという欠点については未解決のままである。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は金属板の種類やその板厚には制限されることなく、且つろう付け、接着剤塗布等による接合手段を必要とせず、接合させたい面同士を密着させ、しかる後に比較的低温且つ短時間の加熱焼付けによって優れた接合力を得ることができ、且つ接合後は優れた接着耐久性、耐熱接着性、耐食性、耐溶剤性を発揮し得る様な自己接着性に優れた感熱型の樹脂塗装金属板およびその製法並びに該樹脂塗装金属板の接合法を提供しようとするものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決することのできた本発明に係る感熱自己接着性樹脂塗装金属板は、感熱自己接着性樹脂塗装金属板であって、前記樹脂塗装金属板は、金属板の表面を、80℃以上の温度で可塑化し且つそれ以上の温度で架橋反応性を示すウレタン系樹脂(A)を含有する塗膜で被覆したものであり、前記ウレタン樹脂(A)は、イソシアネート基との反応性を有する官能基と、ブロック化イソシアネート基を有し、且つ両者の当量比が、イソシアネート基との反応性を有する官能基:ブロック化イソシアネート基=1:0.5〜2の範囲であり、前記ブロック化イソシアネート基は、フェノール系、ラクタム系、オキシム系または活性メチレン系のブロック剤(フェノールと、1,1,1−トリメチロールプロパンおよび1,3−ブタンジオールが併用される場合を除く)によってブロック化されてなるものであり、 前記塗膜は、前記ウレタン系樹脂(A)を含む塗布液を塗布し、熱架橋反応性が発現しない温度で乾燥してなるものであり、前記塗膜の付着量が、固形分換算で0.5〜30g/m2であるところに要旨が存在する。
【0018】
ここでウレタン系樹脂(A)としてより好ましいのは、80〜200℃の温度範囲で可塑化し、且つ100〜200℃の温度範囲で架橋反応性を示すものであり、該ウレタン系樹脂(A)のより具体的な構成としては、
(1) 樹脂固形分に対してイソシアネート基との反応性を有する官能基を12KOHmg/g以上有するウレタン系樹脂(A1)に、ブロック化イソシアネート基含有化合物(a2)を、イソシアネート基との反応性を有する官能基とブロック化イソシアネート基との当量比が1:0.5〜2の範囲となる様に配合したもの、
(2) ブロック化イソシアネート基を遊離−NCO換算で1重量%以上含有するブロック化イソシアネート基含有ウレタン系樹脂(A2)に、イソシアネート基との反応性を有する官能基含有化合物(a1)を、イソシアネート基との反応性を有する官能基とブロック化イソシアネート基との当量比が1:0.5〜2の範囲となる様に配合されたもの、
(3) 樹脂固形分に対してイソシアネート基との反応性を有する官能基を12KOHmg/g以上有するウレタン系樹脂(A1)と、ブロック化イソシアネート基を再生−NCO基換算で樹脂固形分に対して1重量%以上含有するブロック化イソシアネート基含有ウレタン系樹脂(A2)とを、イソシアネート基との反応性を有する官能基とブロック化イソシアネート基との当量比が1:0.5〜2の範囲となる様に配合されたもの
が挙げられる。
【0019】
上記においてイソシアネート基との反応性を有する官能基としては、活性水素を有する官能基、その中でもアミノ基が最適である。
そして、上記のウレタン系樹脂(A)を含有する塗布液を金属板の表面に塗布した後、架橋反応性を生ずる温度未満で乾燥すると感熱型の自己接着性に優れた樹脂塗装金属板を得ることができ、またこの感熱自己接着性樹脂塗装金属板を重ね合わせ、ウレタン系樹脂(A)が架橋反応を生ずる温度以上で且つ250℃以下の温度で焼付けを行なう方法を採用すれば、該樹脂塗装金属板の接合を極めて簡単に行なうことができる。
【0020】
【作用】
上記の様に本発明の自己接着性に優れた感熱接着性樹脂塗装金属板は、金属板の表面が、80℃以上の温度で可塑化し且つそれ以上の温度で架橋反応を生ずるウレタン系樹脂(A)、好ましくは可塑化温度が80〜200℃で、且つ100〜200℃で架橋反応性を示すウレタン系樹脂(A)、を主成分とする塗膜で被覆されたものであり、具体的には、イソシアネート基との反応性を有する官能基(たとえばアミノ基など)とブロック化イソシアネート基とを所定の当量比で有するウレタン系樹脂(A)を主成分とする塗膜を、金属板の表面に感熱自己接着層として形成してなるものである。
【0021】
この樹脂塗装金属板は、切り板ないしコイル製品ままの状態においては、塗膜表面のべとつきやブロッキング性がなく、また加工性にも優れたものであって、スリット加工や打ち抜き加工、成形加工時に塗膜表面に加工疵を生じることがなく、しかも、塗膜面同士を密着させた状態で、熱可塑性と架橋反応性を同時に発現する温度以上に加熱焼付けを行なうと、該塗膜面同士を強固に接合することができる。
【0022】
尚、塗膜形成用の塗布液を塗布し乾燥した後の塗膜は、加工に適度な硬さと熱可塑性を有しているが、塗膜面同士を接合し加熱焼付けした後は、塗膜を構成する樹脂中の官能基間での相互の架橋反応によって熱可塑性を消失し、強固な塗膜間接着強度を発現すると共に、耐溶剤性や耐湿性、耐高温接着強度においても優れた性能を発揮するものとなる。
【0023】
またこの感熱自己接着性樹脂塗装金属板を製造するに当たっては、任意の方法で予め表面を清浄化し、あるいは更に任意の塗装前処理(化成処理)を施した被金属板(一般的には金属帯)の表面に、熱可塑性と熱架橋反応性を有するウレタン系樹脂(A)を主成分とする塗布液を塗布し、熱架橋反応性が発現しない温度(イソシアネート基のブロック剤が再生しない温度)で乾燥・造膜させることにより、塗装金属板(一般的には塗装金属帯)を得ることができる。
以下、研究の経緯を追って本発明の構成および作用効果を詳細に説明する。
【0024】
本発明者らは前述の様な従来技術の下で、様々の金属板に接合用樹脂塗膜を形成してなる塗装金属板の改善を目的とし、造膜後の状態では、塗膜表面に接着性やべとつき等がなく、一方、塗膜面同士を密着させて加熱焼付けを行なうと、塗膜面同士が強固に接着して耐熱性、耐湿性、耐溶剤性等に優れた接合状態が確保できる様な塗膜構成について、鋭意研究を重ねてきた。
【0025】
その結果、80℃以上の温度で可塑化し、且つそれ以上の温度で架橋反応性を示すウレタン系樹脂(A)、より好ましくは可塑化温度が80〜200℃であり、且つ熱架橋反応性が100〜200℃で発現するウレタン系樹脂(A)は、上記要望にかなう優れた特性の感熱自己接着性樹脂層となることを知った。
上記の熱化学的性質を有するウレタン系樹脂(A)について規定される上記の限定理由及び好ましい態様等について以下に詳述していく。
【0026】
まず、樹脂塗装金属板の塗膜面同士を密着させた後に加熱焼付けして高度の接着強度を得るためには、加熱焼付け時の温度で樹脂塗膜自身が焼付け初期に軟化し、流動性を示すことが必要である。即ち、焼付け初期の加熱下で樹脂が軟化し、レベリング作用によって接着面同士が融合一体化すると共に接着層が非常に平滑なものとなり、これにより接合面全体に亘って均一且つ強固な接着性が発現されるからである。従って塗膜を構成する主たる樹脂成分は、加熱焼付けの初期に可塑化するものでなければならない。
【0027】
次に、塗膜構成樹脂の可塑化温度を80℃以上、より好ましくは80〜200℃と定めた理由は、以下の通りである。即ち、各種家電製品等を始めとする金属薄板加工製品の塗装焼付け工程において、金属板自身は通常100℃以上、より一般的には100〜250℃程度に加熱されるが、焼付け後に十分な接合強度を得るには、本焼付けの温度域で該樹脂塗膜が十分に軟化して流動性を示すことが必要である。従って、該樹脂の可塑化温度域は80℃以上、より好ましくは80〜200℃と定めた。
【0028】
尚、後述する様に、接合のための加熱焼付け工程では、樹脂中の官能基が架橋反応を生じる温度域(熱架橋反応性発現温度域)まで加熱することが必須となるが、この加熱焼付け温度に比べて樹脂の可塑化温度の方が高いと、焼付け時に樹脂の流動性およびレベリング性が発現されず、接合面の一体化が不十分となって満足のいく自己接着性が得られなくなる。従って可塑化温度は、200℃以下、より望ましくは180℃以下が好ましい。尚、この可塑化温度は、塗膜の主成分となるウレタン系樹脂(A)の分子量や分岐度を調整することによって制御できる。
一方、可塑化温度が低くなりすぎると、保管時や搬送もしくは取扱い時に塗膜がべとつきやブロッキングを起こし易くなるので、可塑化温度の下限は80℃以上、好ましくは100℃以上とすべきである。
【0029】
次に、該樹脂の熱架橋反応性が発現する好ましい温度域を100〜200℃に定めた理由は以下の通りである。即ち塗膜の圧着と加熱焼付けにより高度の自己接着性を発現させると共に、接合後は高レベルの高温接着性、耐食性、耐溶剤性等を発揮させるには、塗膜面同士を合わせた後の加熱・焼付けの初期に樹脂を可塑化させて均一な接合層を形成するだけでなく、更に樹脂中の官能基同士を相互に反応させて架橋させる必要がある。
【0030】
ところでこの架橋反応が本発明に係る樹脂塗装金属板の製造工程、即ち塗布・乾燥工程で生じてしまうと、焼付け接合時における樹脂中の未反応の官能基の量が少なくなってしまっているので、塗膜合わせ面間での架橋点(架橋密度)が十分に上がらず、満足のいく接合強度が得られなくなるばかりでなく、焼付け接合時に樹脂塗膜が熱可塑化し難くなって接合不良を生じ易くなる。従って、該樹脂塗膜が焼付け接合工程で十分な架橋反応性を発現する温度は、塗膜の塗布・乾燥温度よりも高温であることが必須であり、通常は100℃程度以上、好ましくは120℃以上とすべきである。
【0031】
但し、架橋反応性発現温度が200℃を超える高温架橋反応性樹脂系の場合は、一般的に生産性も考慮して接合時の焼付け温度を250℃を超える高温度にしなければならず、焼付け時に塗膜構成樹脂が熱分解を起こして実質的に十分な接合強度が得られなくなるばかりでなく、黄変等による外観品質の低下を招く。従って、架橋反応性を発現する好ましい温度域は100〜200℃と定めた。塗膜構成樹脂の熱分解を防止するうえでより好ましい上限温度は180℃程度である。
【0032】
次に、塗膜を構成する主たる樹脂としてウレタン系樹脂を選定した理由は、下記の通りである。即ち、本発明に係る樹脂塗装金属板は、接合に先立って切断加工や成型加工されるが、このとき金属板母材と共に樹脂塗膜も加工を受けることになる。従って、加工時に金属母材と共に塗膜自身も容易に延展して変形し、表面にクラックやヘアーライン等の疵や欠陥を生じないことが重要となる。そこで本発明では、この様な接合前の加工性を考慮し、優れた延展性を示すものとしてウレタン系樹脂を選定した。
【0033】
かくして本発明によれば、塗膜を構成する主たる樹脂として、可塑化温度が80℃以上、好ましくは80〜200℃であり、且つ望ましくは100〜200℃の温度範囲で架橋反応性を発現するウレタン系樹脂(A)を選定し、該ウレタン系樹脂(A)を、主成分とする塗膜を金属板の表面に形成することにより、保管、搬送等においてはブロッキング等を起こすことなく、しかも焼付け接合後は優れた接合強度、高温接合強度、耐食性、耐溶剤性等を有する感熱型の自己接着性樹脂塗装金属板を得ることができる。
【0034】
ところで上記の様な自己密着性と耐高温接合強度、耐食性、耐溶剤性等を発揮させるには、前述の如く樹脂間で架橋反応するために必要な架橋点、即ち官能基が樹脂中に存在しなければならないが、該官能基の具体例としては、イソシアネート基との反応性を有する官能基とブロック化イソシアネート基の組合せが挙げられる。
【0035】
イソシアネート基との反応性を有する官能基の具体例としては、活性水素を有する官能基、例えば水酸基(−OH)、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NH2 )等が挙げられ、これらイソシアネート基との反応性を有する官能基は、いずれもブロック化イソシアネート基からブロック剤が解離することによって生成する再生イソシアネート基(−NCO基)と反応して架橋反応を起こすものであり、その具体的な反応は下記の通りである。
−NCO + −OH = −NH−COO−
−NCO + −COOH = −NH−CO−
−NCO + −NH2 = −NH−CO−NH−
上記イソシアネート基との反応性を有する官能基の中でも最も好ましいのはアミノ基である。しかしてアミノ基は、他のイソシアネート基との反応性を有する官能基に比べて再生イソシアネート基との架橋反応速度が大きく、より短時間で、あるいはより低い焼付け温度で高い接合強度が得られるからである。
【0036】
ところで活性イソシアネート基は、常温で容易にイソシアネート基との反応性を有する官能基と反応してしまうため、このままの形態でイソシアネート基との反応性を有する官能基を含む樹脂中に混合・共存させると、経時的に塗膜層内部での架橋反応が進行し、架橋点が次第に消失すると共に焼付け加熱時における塗膜の熱可塑性も消失してしまう。そしてこの様に焼付け加熱前に変質してしまった樹脂塗膜は、たとえその後に塗膜面同士を密着させて焼付け加熱を行なっても、該塗膜が可塑化しないため均一且つ平滑な接着層が得られず、また架橋反応も殆ど起こらないため、本発明で意図する様な感熱自己接着性が発現されなくなる。
【0037】
そこで本発明では、焼付け加熱前の塗膜状態でイソシアネート基がイソシアネート基との反応性を有する官能基と反応しない様に、イソシアネート基を予めフェノール、オキシム、活性メチレン等のブロック剤によってブロック化し、常温での上記活性水素を有する官能基との反応を抑制した状態で樹脂中に存在させておく必要がある。このとき、ブロック剤の種類を適宜選択することによって、該ブロック剤のイソシアネート基からの解離温度を調整することが可能であり、本発明で定める樹脂塗膜の熱架橋反応性発現温度を100〜200℃(望ましくは120〜180℃)の範囲に調整することができる。
【0038】
かくして、イソシアネート基との反応性を有する官能基とブロック化イソシアネート基を有するウレタン系樹脂(A)を主成分として含む塗布液を金属板表面に塗布し、ブロック剤の解離反応が皆無または殆ど無視し得る温度域で乾燥して造膜し、しかる後に塗膜面同士を密着させてから100〜250℃で焼付けすると、均一且つ平滑な接合層が形成されると共に、ブロック剤の離脱により活性を取り戻した再生イソシアネート基と前記活性水素保有官能基との架橋反応が進行し、樹脂塗膜を強固に接合させることができる。そして焼付け架橋後のウレタン系樹脂塗膜は熱可塑性を失い、接着力、接着耐久性、耐熱接着性、耐食性、耐溶剤性、耐水性、耐疵付き性等のいずれにおいても優れた諸性能を発現する。
【0039】
本発明で用いるウレタン系樹脂(A)は、2個以上のイソシアネート基との反応性を有する官能基を有する有機化合物と2個以上のブロック化イソシアネート基を有する有機化合物との反応によって得られるが、具体的には次に示す様な各種有機化合物を所望の配合比で混合することによって調製される。
【0040】
<熱可塑性ウレタン樹脂(A1 )>
分子中にイソシアネート基との反応性を有する官能基を有するウレタン樹脂であって、2個以上のイソシアネート基との反応性を有する官能基を有する有機化合物と、2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネート化合物とを反応させる際に、官能基の当量比でイソシアネート基に対して、イソシアネート基との反応性を有する官能基を過剰量配合することによって得ることができ、該ウレタン系樹脂(A1 )中におけるイソシアネート基との反応性を有する官能基の好ましい量は、十分な架橋反応性を確保する意味からウレタン樹脂固形分に対して12KOHmg/g以上とするのがよい。
【0041】
<ブロック化イソシアネート基含有化合物(a2)>
ブロック化イソシアネート基含有化合物(a2)としては、有機ポリイソシアネート化合物に、フェノール、クレゾール等のフェノール系;ε−カプロラクタム等のラクタム系;メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系;マロン酸ジメチル、アセト酢酸エチル等の活性メチレン系等のブロック剤を反応させることによって得られる。このとき、有機ポリイソシアネート化合物とブロック剤の種類を適宜選定することにより、イソシアネート基からのブロック剤の熱解離温度を、100〜200℃に調整することができる。また、熱架橋反応時に解離されたブロック剤が沸騰して発泡することのない様、熱架橋反応温度以上の沸点を有するブロック剤を選定するのがよい。
【0042】
<熱可塑性ウレタン樹脂(A2 )>
分子中にブロック化イソシアネート基を有するウレタン樹脂であって、ブロック化イソシアネート基含有熱可塑性ウレタン樹脂(A2 )の製法としては、イソシアネート基との反応性を有する官能基2個以上有する有機化合物と、2個以上のイソシアネート基を有する有機ポリイソシアネート化合物とを反応させる際に、官能基の当量比でイソシアネート基との反応性を有する官能基に対してイソシアネート基を過剰量配合することにより、イソシアネート基含有ポリウレタン樹脂を作製し、過剰イソシアネート基を、前述の様なブロック剤で保護することにより、ブロック化イソシアネート基含有ウレタン樹脂(A2 )を得ることができる。尚、有機ポリイソシアネート化合物とブロック剤の組合せを適宜選定することにより、ブロック剤の熱解離温度を100〜200℃の範囲に調整することができる。この場合も、熱架橋反応時に解離されたブロック剤が沸騰して発泡することのない様、熱架橋反応温度以上の沸点を有するブロック剤を選定するのがよい。
【0043】
<イソシアネート基との反応性を有する官能基含有有機化合物(a1 )>
イソシアネート基との反応性を有する官能基含有有機化合物(a1 )としては、イソシアネート基との反応性を有する官能基を2個以上有する多価ヒドロキシル化合物、多価アミノ化合物、多価アミノヒドロキシル化合物等が挙げられる。この場合も、熱架橋反応時に該有機化合物(a1 )が沸騰して発泡することがない様、熱架橋反応温度以上の沸点を有するものを選択するのがよい。
【0044】
上記のイソシアネート基との反応性を有する官能基含有熱可塑性ウレタン樹脂(A1 )やブロック化イソシアネート基含有熱可塑性ウレタン樹脂(A2 )を製造するための使用原料、およびイソシアネート基との反応性を有する官能基含有有機化合物(a1 )として使用される化合物、即ち多価ヒドロキシル化合物(1分子中に2個以上の水酸基を有する化合物)、多価アミノ化合物(1分子中に2個以上のアミノ基を有する化合物)、多価アミノヒドロキシル化合物(1分子中に2個以上のアミノ基および水酸基を有する化合物)としては、具体的に以下のものが挙げられる。
【0045】
多価ヒドロキシル化合物:エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、ポリプロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジヒドロキシエチルテレフタレート、ヒドロキノンジヒドロキシエチルエーテル、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコール、および上記多価アルコール類およびビスフェノールA、ビスフェノールS、水素添加ビスフェノールA、ジブロムビスフェノールA等のアルキレン誘導体、上記多価アルコール類もしくはそのアルキレン誘導体と多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルとから合成されるエステル化合物、更にはポリカーボネートポリオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリチオエーテルポリオール、ポリアセタールポリオール、ヒマシ油ポリオール等のポリオール化合物等が挙げられる。
【0046】
多価アミノ化合物:エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヘキシレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルメタンジアミン、水素添加ジフェニルメタンジアミン等が挙げられる。
多価アミノヒドロキシ化合物:ジエタノールアミン、3−アミノプロパノール等が挙げられる。
【0047】
上記イソシアネート基との反応性を有する官能基含有ウレタン系樹脂(A1 )、ブロック化イソシアネート基含有化合物(a2 )、ブロック化イソシアネート基含有ウレタン樹脂(A2 )を製造するための使用原料となる有機ポリイソシアネート系化合物としては、芳香族系、脂肪族系、脂環族系のイソシアネート化合物を単独もしくは2種以上を適用できるが、具体例としては以下のものが挙げられる。
【0048】
トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加トルエンジイソシアネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート等のイソシアネート類;および上記イソシアネート類のビュレット化合物やイソシアヌレート化物、上記イソシアネート類をトリメチロールプロパン等の多価ヒドロキシ化合物に付加反応した化合物等が挙げられる。
【0049】
尚、上記のイソシアネート基との反応性を有する官能基含有ウレタン樹脂(A1 )、ブロック化イソシアネート基含有ウレタン樹脂(A2 )、ブロック化イソシアネート基含有化合物(a2 )の製造する際には、たとえばトルエン、アセトン、酢酸エチル、キシレン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド等の如くウレタン化反応に影響を与えない溶媒を使用することによって、その製造を容易に行なうことができる。
【0050】
さらに、イソシアネート基との反応性を有する官能基含有ウレタン樹脂(A1 )、ブロック化イソシアネート基含有ウレタン樹脂(A2 )、ブロック化イソシアネート基含有化合物(a2 )を製造する際に、公知の方法でアニオン性親水基、カチオン性親水基、非イオン性親水基等を導入したり、あるいは反応系に界面活性剤を配合すれば、それらの樹脂(A1 ),(A2 )および有機化合物(a2 )を親水性のものとすることもできる。
【0051】
本発明において塗膜の主たる構成成分となる架橋反応性のウレタン系樹脂(A)は、
▲1▼上記イソシアネート基との反応性を有する官能基含有ウレタン樹脂(A1 )とブロック化イソシアネート基含有化合物(a2 )を、イソシアネート基との反応性を有する官能基と再生−NCO基換算のブロック化イソシアネート基との当量比で1:0.5〜2の割合で、好ましくは1:0.8〜1.5の割合で配合し、あるいは
▲2▼上記ブロック化イソシアネート基含有ウレタン樹脂(A2 )とイソシアネート基との反応性を有する官能基含有有機化合物(a1 )とを、イソシアネート基との反応性を有する官能基と再生−NCO基換算のブロック化イソシアネート基との当量比で1:0.5〜2の割合で、好ましくは1:0.8〜1.5の割合で配合し、更には
▲3▼上記イソシアネート基との反応性を有する官能基含有ウレタン樹脂(A1 )とブロック化イソシアネート基含有ウレタン樹脂(A2 )を、イソシアネート基との反応性を有する官能基と再生−NCO基換算のブロック化イソシアネート基との当量比で1:0.5〜2、好ましくは1:0.8〜1.5の割合で配合すること
の何れかによって得られる。
【0052】
尚、上記樹脂(A1 ),(A2 )や有機化合物(a1 ),(a2 )を配合して架橋反応性ウレタン系樹脂(A)を調製するに際し、イソシアネート基との反応性を有する官能基と再生−NCO基換算のブロック化イソシアネート基との当量比が上記範囲を外れると、得られる樹脂(A)の焼付け処理後の分子中に余剰の上記活性水素保有官能基または再生イソシアネート基が多量残存することになり、焼付け加熱処理後の樹脂塗装金属板の耐熱接着性や耐溶剤性等が不十分になる。
【0053】
かくして得られるウレタン系樹脂(A)を主成分とする塗料を金属板表面に均一に塗布し、該樹脂(A)が架橋反応を起こすことのない温度条件、通常は30〜120℃、好ましくは60〜100℃で乾燥すると、本発明の感熱接着性樹脂塗装金属板を得ることができる。このときの塗膜付着量は、単位面積当たりの接着強度を十分に確保する意味から、乾燥後の塗膜付着量として、0.5g/m2 以上、好ましくは1g/m2 に以上すべきである。しかして、樹脂塗膜付着量が不足する場合は、該塗膜で金属板表面を十分に覆うことができないため焼付け時の樹脂塗膜層が均一且つ平滑なものになり難く、部分的に接合不良を生じ易くなる傾向が生じ、自己接着性樹脂塗装金属板としての性能が不十分になることがある。
【0054】
一方該樹脂塗膜付着量の上限値については、特に接着強度の観点からは何ら限定されるものではないが、付着量が厚くなり過ぎると、単位処理面積当たりの樹脂原料コスト費の増加を招くばかりでなく、樹脂液塗布後の乾燥時間も長くなって連続塗装ラインによる連続製造工程でライン速度の低下を余儀なくされるため生産性が低下し、結果として製造コストが高くなる。従って樹脂塗膜厚は30g/m2 以下に抑えるのが良い。自己接着性および製造コストの両面から、より望ましい樹脂塗膜の付着量は5〜10g/m2 の範囲である。
【0055】
尚、ウレタン系樹脂(A)含有塗布液の調製に当たっては、上記ウレタン系樹脂(A)によって発現される感熱自己接着性能を阻害しない範囲で、希釈溶媒、皮張り防止剤、レベリング剤、消泡剤、浸透剤、造膜助剤、着色顔料、増粘剤等の各種添加剤や、密着性向上や耐食性向上のための微粉末シリカ、コロイダルシリカ、シランカップリング剤等を適宜添加し、塗膜性能を更に高めることも可能である。
【0056】
また、塗膜の耐候性や硬度、剪断強度等の向上を目的として、上記樹脂(A)の一部をアクリル変性やエポキシ変性したり、更には樹脂の低コスト化等を目的として、ポリビニルアルコール系樹脂、SBR樹脂、クロロプレン系樹脂、NBR樹脂、アクリル系樹脂、塩化ビニル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、エチレン・酢酸ビニル系樹脂等の各種樹脂を、本来の感熱自己接着性能を損ねない範囲で適宜混合することも可能である。
【0057】
次に、本発明に係る感熱自己接着性樹脂塗装金属板の製法について説明すると、この樹脂塗装鋼板は、前述の様なウレタン系樹脂(A)を主成分として含む塗布液を、任意の塗装方法で金属板の表面に塗布し乾燥することによって金属板表面で造膜させるが、このときの乾燥温度を、架橋反応性発現温度未満(ブロック剤の解離温度未満)とすることにより、樹脂塗膜乾燥後の塗膜表面にべとつきやブロッキングを生じることなく、しかもスリッターや打ち抜き等の加工時に疵が殆ど付かない程度の硬い皮膜となり、且つ熱架橋反応性を備えた塗膜を形成させることができる。
【0058】
このとき、熱架橋反応性発現温度を超える温度で塗膜を乾燥させると、造膜自体に問題は生じないものの、樹脂中に存在するブロック化イソシアネート基のブロック剤が解離反応を起こし、反応性に富む活性イソシアネート基が樹脂中に再生し始める。そして該再生イソシアネート基と前記官能基の反応が乾燥・造膜工程で一部でも進行すると、その後の焼付け接合時における塗膜の熱可塑性が失われると共に、塗膜内の官能基量(架橋点)も少なくなって塗膜面同士の間での反応性も著しく低下し、十分な接合強度が得られなくなる。これらのことから、ウレタン系樹脂(A)の塗布後の乾燥温度は、熱架橋反応性発現温度未満(保護剤解離温度未満)にする必要がある。尚、乾燥直後に十分な冷却工程が設けられない様な場合には、塗膜構成樹脂の可塑化温度未満で乾燥することにより、コイル製品として巻取るときにもブロッキングを生じることがないので好ましい。
【0059】
また、本発明に係る感熱自己接着性樹脂塗装金属板を所定の形状に加工してから接合すべき部位を重ね合わせて接合する際には、加熱温度(焼付け温度)を、該樹脂(A)の熱可塑化温度以上且つ熱架橋反応性発現温度以上で250℃以下の温度条件下とすることにより、高い接合強度を得ることができる。しかして、焼付け温度が架橋反応性発現温度(保護剤の解離温度)未満である場合は、樹脂(A)中に含まれるブロック化イソシアネート基からブロック剤の解離が起こらず、活性イソシアネート基が再生されないため前記官能基との架橋反応点ができず、結果として満足のいく接合強度が得られない。
【0060】
一方、熱可塑化温度未満の焼付け温度では、焼付け加熱直後におけるウレタン系樹脂(A)の流動性が不十分となってレベリング効果が得られず、均一な接合層が形成され難くなってやはり本発明で意図する様な高レベルの接合強度が得られない。また、250℃を超える高温で焼付けを行なうと、イソシアネート基の再生は十分に進行し前記官能基との架橋反応も活発に進行するが、一方で該樹脂(A)の熱分解が進行して塗膜成分の変質が起こり、接合強度等がかえって低下する恐れが生じてくるばかりでなく、樹脂(A)の分解によって黄変が進行し、外観も悪化させることがある。
以上の結果から、自己接着のための焼付け温度は、ウレタン系樹脂(A)の熱可塑化温度以上且つ熱架橋反応性発現温度以上で、250℃以下(望ましくは200℃以下)にすべきである。
【0061】
ところで、金属板表面への上記ウレタン系樹脂含有塗布液の塗布方法には一切制限がなく、たとえば表面を清浄化し、あるいは更に塗装前処理(例えばリン酸塩処理、クロメート処理)等を施した長尺金属帯表面に、ロールコーター法、スプレー法、カーテンフローコーター法等を用いて樹脂希釈液を塗布する方法が挙げられる。しかし、塗膜厚さの均一性や処理コスト、塗装効率等を総合的に考慮して最も実用上好ましいのは、ロールコーターで塗布する方法である。尚、上記のウレタン系樹脂塗膜は、金属板の片面のみ或は両面に形成することができる。
【0062】
本発明で用いられる素地金属板の種類にも一切制限がなく、最も一般的な軟鋼板やステンレス鋼板をはじめとする各種合金鋼板のほか、AlおよびAl合金板、CuおよびCu合金板、TiおよびTi合金板、めっき金属板(亜鉛系めっき鋼板、Al系めっき鋼板、銅系めっき鋼板、Ni系めっき鋼板、Cr系めっき鋼板、亜鉛系めっきAlおよびAl合金板等の各種めっき金属板)、化成処理(りん酸塩処理、クロメート処理等)金属板、更には耐食塗装金属板等が幅広く活用できる。
【0063】
かくして得られる本発明の感熱自己接着性樹脂塗装金属板は、自動車用あるいは家庭電気製品や鋼製家具用の外板材等や建築材料等として広く利用できるが、その実用化に当たっては積層接合の前または後の任意の時期に、接合面以外の部位に、たとえばアクリル系塗料、メラミン系塗料、ポリエステル系塗料などをスプレー法、静電塗装法、電着法等の各種塗装方法によって塗装することも可能である。
【0064】
例えば、本発明に係る樹脂塗装金属板を所定形状に打ち抜き加工し、2枚を重ね合わせた後で、上記の塗布液を表面に塗装して焼付け処理を行ない、上塗り塗料焼付け時の熱を利用して、前記感熱自己接着性樹脂塗膜の架橋反応を同時に起こさせ、接合部に高度な接着強度を発現させることもできる。即ち、この様な方法を採用すれば、上塗り塗膜の焼付けと感熱自己接着性樹脂塗膜の架橋反応による接合を同時に行なえるという利点も享受できる。
【0065】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明の構成および作用効果をより詳細に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0066】
実施例1
金属板に塗布するための樹脂塗布液を作製するに当たり、まず種々の官能基と物性を有する下記の有機化合物を合成した。
(1)活性水素(水酸基)含有有機化合物(a)
ポリエステルポリオール(ブチレンアジペート、分子量1000):210重量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(分子量360):60重量部、トリメチルプロパン:5重量部、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート:95重量部およびトルエン溶媒:370重量部の混合液を撹拌しつつ、これに触媒(ジブチル錫ジラウレート):0.1重量部を添加して90℃で反応を行ない、生成するウレタンポリマー中の遊離イソシアネート基が0重量%(固形分換算値)になるまで反応させた。得られた熱可塑性ウレタン樹脂の固形分は50重量%であり、水酸基含有量は、21.2KOHmg/g(固形分換算値)であり、また熱可塑化温度は120℃であった。
【0067】
(2)活性水素(水酸基)含有有機化合物(b)
ポリカーボネートポリオール(1,6−ヘキサンジオールのカーボネート、分子量1000):210重量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(分子量360):30重量部、ジメチロールプロピオン酸:20重量部、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート:129重量部およびアセトン溶媒:300重量部の混合液を撹拌しつつ、これに触媒(スタナスオクトエート):0.2重量部を加え、55℃で反応させた。そして生成するウレタンポリマーの遊離イソシアネート基が1.0重量%(固形分換算値)になった時点で反応液にトリエチルアミン15重量部を混合し、更に蒸留水900重量部を加えて高速撹拌することにより乳化させた。
【0068】
得られた遊離イソシアネート基含有乳化液にジエタノールアミンの10重量%水溶液97重量部を加え、遊離イソシアネート基が0重量%(固形分換算値)になるまで反応させた。その後、用いたアセトン溶媒を減圧留去することにより水系の熱可塑性ウレタン樹脂を得た。得られた水系熱可塑性ウレタン樹脂の固形分は32重量%であり、水酸基含有量は、26.0KOHmg/g(固形分換算値)であり、熱可塑化温度は120℃であった。
【0069】
(3)活性水素基(アミノ基)含有有機化合物(c)
ポリカーボネートポリオール(1,6−ヘキサンジオールのカーボネート、分子量1000):210重量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(分子量360):30重量部、ジメチロールプロピオン酸:20重量部、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート:135重量部およびアセトン溶媒:270重量部の混合液を撹拌しつつ、これに触媒(スタナスオクトエート):0.2重量部を添加し55℃で反応を行なった。生成するウレタンポリマーの遊離イソシアネート基が1.5重量%(固形分換算値)になった時点で反応液にトリエチルアミン15重量部を混合し、更に蒸留水900重量部を加えて高速撹拌することにより乳化させた。
【0070】
得られる遊離イソシアネート基含有乳化液にジエチレントリアミンの10重量%水溶液110重量部を加え、遊離イソシアネート基が0重量%(固形分換算値)になるまで反応させた。その後、用いたアセトン溶媒を減圧留去することにより、水系の熱可塑性ウレタン樹脂を得た。得られた水系熱可塑性ウレタン樹脂の固形分は32重量%であり、アミノ基含有量は、25.4KOHmg/g(固形分換算値)であり、熱可塑化温度は120℃であった。
(4)活性水素基(水酸基)含有有機化合物(d)
市販のトリメチロールプロパンを使用した。
【0071】
(5)イソシアネート基含有有機化合物(e)
ポリエステルポリオール(ブチレンアジペート、分子量1000):210重量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(分子量360):60重量部、トリメチルプロパン:5重量部、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート:135重量部およびトルエン溶媒425重量部の混合液を撹拌しつつ、これに触媒(ジブチル錫ジラウレート):0.1重量部を加え、90℃で反応を進め、生成するウレタンポリマーの遊離イソシアネート基が、1.7重量%(固形分換算値)になるまで反応させた。
【0072】
得られる遊離イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーにメチルエチルケトオキシム14.5重量部を徐々に加え、遊離イソシアネート基が0重量%(固形分換算値)になるまで反応させた。得られた熱可塑性ウレタン樹脂の固形分は50重量%であり、保護されたイソシアネート基の含有量は、1.6重量%(固形分換算値:NCO基として計算)であり、また熱可塑化温度は110℃であった。
【0073】
(6)イソシアネート基含有有機化合物(f)
トリメチロールプロパン:200重量部、トリレンジソシアネート:780重量部および酢酸エチル溶媒1490重量部の混合液を撹拌しつつ75℃で反応を進め、遊離イソシアネート基が、19.0重量%(固形分換算値)になるまで反応させた。その後、ε−カプロラクタム510重量部を加え、触媒(ジブチル錫ジラウレート:0.8重量部とトリエチルアミン:2.0重量部)の存在下に遊離イソシアネート基が0重量%(固形分換算値)になるまで反応させた。
得られたブロック化イソシアネート基含有化合物の固形分は50重量%であり、ブロック化イソシアネート基の含有量は12.5重量%(固形分換算値:NCO基として計算)であった。
【0074】
(7)イソシアネート基含有有機化合物(g)
トリメチロールプロパン:200重量部、トリレンジイソシアネート:780重量部および酢酸エチル溶媒:1500重量部の混合液を撹拌しつつ75℃に加温して反応を進め、遊離イソシアネート基が19.0重量%(固形分換算値)になるまで反応させた。その後、ε−カプロラクタム510重量部を加え、触媒(ジブチル錫ジラウレート:0.8重量部とトリエチルアミン:2.0重量部)の存在下に遊離イソシアネート基が0重量%(固形分換算値)になるまで反応させた。
この反応液に、ポリオキシエチレンノニルフェノール型非イオン界面活性剤(HLB=15)80重量部とポリビニルアルコール10重量%水溶液(部分ケン化物、重合度=約1000)800重量部を混合した後、蒸留水1800重量部を加えて高速撹拌することにより乳化させた。
【0075】
その後、用いた酢酸エチル溶媒を減圧留去することにより、水系の保護されたイソシアネート基含有化合物を得た。得られた保護されたイソシアネート基含有化合物の固形分は40重量%であり、保護されたイソシアネート基の含有量は11.3重量%(固形分換算値:NCO基として計算)であった。
一方、比較合成例として、熱架橋反応を生じるために必要な活性水素基を全く保有しない熱可塑性ウレタン樹脂を下記の方法で合成した。
【0076】
(8)活性水素基を含有しない有機化合物(h)
ポリエステルポリオール(ブチレンアジペート、分子量1000):210重量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(分子量360):60重量部、トリメチルプロパン:5重量部、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート:135重量部およびトルエン溶媒313重量部の混合液を触媒(ジブチル錫ジラウレート):0.1重量部の存在下に撹拌しつつ90℃で反応を進め、生成するウレタンポリマーの遊離イソシアネート基が1.7重量%(固形分換算値)になるまで反応させた。
【0077】
得られた遊離イソシアネート基含有ウレタンプレポリマーにジエチルアミン(トルエン10重量%溶液)122重量部を徐々に加え、遊離イソシアネート基が0重量%になるまで反応させた。得られた熱可塑性ウレタン樹脂の固形分は50%重量であり、活性水素基含有量は0KOHmg/g、また熱可塑化温度は110℃であった。
【0078】
(9)活性化水素基を含有しない有機化合物(i)
ポリカーボネートポリオール(1,6−ヘキサンジオールのカーボネート、分子量1000):210重量部、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物(分子量360)30重量部、ジメチロールプロピオン酸:20重量部、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート:129重量部およびアセトン溶媒300重量部の混合液を触媒(スタナスオクトエート):0.2重量部の存在下に撹拌しつつ55℃で反応を行い、生成するウレタンポリマーの遊離イソシアネート基が1.0重量%(固形分換算値)になった時点でトリエチルアミン15重量部を混合し、更に蒸留水900重量部を加えて高速撹拌することにより乳化させた。
【0079】
得られる遊離イソシアネート基含有乳化物に、エチレンジアミンの10重量%水溶液27.8重量部を加えて遊離イソシアネート基が0重量%(固形分換算値)になるまで反応させた。その後、用いたアセトン溶媒を減圧留去することにより、水系の熱可塑性ウレタン樹脂を得た。得られた水系熱可塑性ウレタン樹脂の固形分は32重量%であり、活性水素基含有量は0KOHmg/g(固形分換算値)、熱可塑化温度120℃であった。
上記で合成した夫々の有機化合物(a)〜(i)を、下記の表1に示す割合で配合し、金属板に塗布するための塗布液A〜Jを作製した。
【0080】
尚、表1に示した塗布液のうち、No.A〜Eについては、樹脂中に含まれる再生イソシアネート基/活性水素基の当量比が、本発明で規定される範囲内に調整されており、一方、No.F〜Jについては、どちらか一方の官能基種を有していないため、該官能基当量比が本発明で規定する範囲外になっている。従って、No.F〜Jについては、熱可塑性は有しているものの、熱架橋反応性は有していない。また、表1中に示した熱可塑化温度と熱架橋反応性発現温度は、下記の方法で測定した。
【0081】
[熱可塑化温度の測定法]
樹脂溶液をテフロン板上に塗布して80℃で乾燥させ、得られるフィルムを、所定温度に加熱した熱板上に置き、溶融するときの温度を測定して熱可塑化温度とした。
[熱架橋反応性発現温度の測定法]
樹脂溶液をテフロン板上に塗布して80℃で乾燥させ、得られるフィルムを、示差熱分析にかけてブロック剤の解離温度を測定し、熱架橋反応性発現温度とした。
【0082】
【表1】
【0083】
次に、電気純Znめっき鋼板(めっき付着量:20g/m2 、板厚0.6mm)の表面に、塗布型クロメート処理(クロメート付着量:50mg/m2 )を施し、これを樹脂塗装用の被処理金属板とした。該被処理金属板の表面に、表1に示した夫々の塗布溶液A〜Jをロールコーターで乾燥膜厚が所定の厚さとなる様に塗布した後、熱風乾燥炉内で移送しながら所定板温(鋼板温度)で樹脂塗膜を乾燥させた。得られた各樹脂塗装鋼板の諸性能を、下記の方法で評価した。
【0084】
[塗装−乾燥後(焼付け前)の性能評価]
(1)耐疵付き性(塗膜硬度)
塗装−乾燥後の塗装金属板の塗膜硬度を、JIS K 5400で規定される鉛筆硬度試験に付し塗膜表面の耐疵付き性を評価した。尚判定は、各種硬度の鉛筆で塗膜表面を計5回引っかき、引っかき疵が2本以上付いた1ランク下の鉛筆硬度を塗膜硬度とした。評価基準は、次の通りである。
<耐疵付き性>
◎優れる :鉛筆硬度 H以上
○良好 : 〃 HB〜F
×劣る : 〃 B以下
【0085】
(2)耐食性(耐白錆性)
塗装−乾燥後の塗装金属板の耐食性を、JIS Z 2371に示される5重量%塩水噴霧試験に供し、耐白錆性によって耐食性を評価した。即ち、塗膜の下層にある電気純Znめっき層の腐食により1%白錆が発生するまでの時間によって評価した。
評価基準は、次の通りである。
<耐白錆性>
◎優れる : 240h以上 で白錆発生
○良好 :120〜240h未満で白錆発生
△やや劣る: 48〜120h未満で白錆発生
×劣る : 48h以内 で白錆発生
【0086】
[焼付け後の性能評価]
(3)自己接着性(感熱自己接着強度)
塗装−乾燥後の塗装金属板を25mm×100mmのサイズに切断した後、塗膜表面同士を25mm×12mmの面積で重ね合せ、単純重ね合わせ材(シングルラップ・ジョイント)を作製した。この重ね合わせ材を、所定温度(接着温度)の加熱プレス装置を用いて20分間加圧(3kgf/cm2 )してから冷却し、得られた試験片を、JIS K 6850に準じて、単軸引張り試験機により常温下で試験片が破断するまでの最大荷重を測定し、剪断面積で割って剪断接着強度を求めた。評価基準は、次の通りである。
<接着強度>
◎優れる :接着強度150kgf/cm2 以上
○良好 : 〃 80〜150kgf/cm2 未満
△不良 : 〃 50〜80kgf/cm2 未満
×劣る : 〃 50kgf/cm2 未満
【0087】
(4)接着耐久性(接着性の耐経時劣化)
塗装−乾燥後の塗装金属板を30mm×75mmのサイズに切断した後、塗膜表面同士を30mm×10mmの面積で重ね合せ、単純重ね合わせ材(シングルラップ・ジョイント)を作製した。
この重ね合わせ材を、所定温度(接着温度)の加熱プレス装置を用いて20分間加圧(3kgf/cm2 )してから冷却し、得られた試験片を、JIS K−6857に準じて、下記に示す条件の恒温恒湿試験に供し、その後上記(3)と同様の単軸引張り試験によって接着強度の耐久性(接着性の耐経時劣化)を調べた。評価基準は下記の通りである。
<恒温恒湿試験>
温度:25℃、相対湿度:90%RH、試験時間:720h
<接着耐久性>
◎優れる :接着強度130kgf/cm2 以上
○良好 : 〃 70〜130kgf/cm2 未満
△不良 : 〃 40〜70kgf/cm2 未満
×劣る : 〃 40kgf/cm2 未満
【0088】
(5)耐熱接着性
塗装−乾燥後の塗装金属板を30mm×75mmのサイズに切断した後、塗膜表面同士を30mm×10mmの面積で重ね合せ、単純重ね合わせ材(シングルラップ・ジョイント)を作製した。
この重ね合わせ材を所定温度(接着温度)の加熱プレス装置を用いて20分間加圧(3kgf/cm2 )してから冷却し、得られた試験片を、60℃の大気雰囲気下で上記(3)と同様の単軸引張り試験を行ない、高温環境下での接着強度(耐熱接着性)を調べた。評価基準は次の通りである。
<耐熱接着性>
◎優れる :接着強度80kgf/cm2 以上
○良好 : 〃 50〜80kgf/cm未満2
×劣る : 〃 50kgf/cm2 未満
【0089】
(6)耐食性(耐白錆性)
焼付け後の耐食性を評価するため、まず塗装−乾燥後の塗装金属板を70mm×150mmのサイズに切断してから表2〜7に示す所定の鋼板温度で焼付けを行い、端面および裏面をテープシールした後、上記(2)と同様にしてJIS
Z 2371に規定する5重量%塩水噴霧試験に供し、同様の評価基準で塗膜の下層にある電気純Znめっき層の腐食による1%白錆発生時間で耐食性を評価した。評価基準は、以下の通りである。
<耐白錆性>
◎優れる : 240h以上 で白錆発生
○良好 :120〜240h未満で白錆発生
△やや劣る: 48〜120h未満で白錆発生
×劣る : 48h以内 で白錆発生
【0090】
(7)耐溶剤性
焼付け後の樹脂塗膜の耐溶剤性を評価するため、まず塗装−乾燥後の塗装金属板を70mm×150mmサイズに切断し、表2〜7に示す所定の鋼板温度で焼付けを行った。得られた各試験片の表面を、トルエンを含ませたガーゼによって軽く20回こすり、塗膜の劣化状態で耐溶剤性を評価した。評価基準は、次の通りである。
<耐溶剤性>
◎優れる :異常なし
○良好 :やや艶ひけ乃至やや膨張する程度
△やや劣る:塗膜の溶解発生
【0091】
上記性能評価試験の結果は表2〜7に示す通りであり、それらの結果より次の様に考えることができる。
官能基として活性水素基とブロック化イソシアネート基を本発明で規定される好ましい当量比で有する塗布溶液A〜Eを使用し、好ましい付着量と乾燥温度で塗膜形成したものの耐疵付き性、耐食性(両性能は乾燥後の性能)は何れも良好であり、且つ焼付け接合したものの自己接着性、接着耐久性、耐熱接着性、耐食性および耐溶剤性(焼付け後)もすべて良好であることが分かる。これらに対し、塗膜を形成していないもの(No.11)は、全ての性能に劣る。
【0092】
また、本発明で規定される乾燥塗膜の条件を満足する塗布溶液A〜Eを用いたものであっても、塗膜の付着量が不足する場合、乾燥温度が樹脂の熱架橋反応性発現温度を越える場合、焼付け温度が好適温度範囲外である場合には、塗膜表面にピンホール等のミクロ欠陥が多くなる、焼付け時に均一且つ平滑な接合層が形成されない、架橋点が少ない、造膜時に既に架橋反応が進行している、焼付け時の架橋反応が不十分である、焼付け時の塗膜の熱劣化が起こる、といったいずれかの理由により、耐食性(乾燥後および焼付け後の性能)や自己接着性、接着耐久性、高温接着性、耐溶剤性(焼付け後の性能)のうち、1つ以上の性能が劣る。
【0093】
特に、塗膜形成時の乾燥を高温で行った場合には、乾燥時にブロック化イソシアネート基の解離による塗膜内での活性水素基との架橋反応が起こり、樹脂の硬化反応に伴う熱可塑性が消失するにため、その後の塗膜の焼付け工程で塗膜面同士の接合面の一体化および架橋反応が殆ど起こらず、本発明の主目的である感熱型自己接着性が得られなくなる。
【0094】
また、塗布溶液F〜Jについては、前述の様に塗布溶液を構成する樹脂、ひいては塗膜構成樹脂が、架橋反応を生じるためのブロック化イソシアネート基ないし活性水素基を有していないため、塗膜の焼付けを行っても、熱可塑性の性質による接着面の一体化効果による接着性しか得られず、塗膜面同士の架橋反応による高度な感熱型自己接着性を得ることができず、しかもこの場合の接合層は、焼付け後においても焼付け前と同様の熱可塑性を示すため、焼付け後の高温接着性や耐溶剤性等の性能が不十分である。
【0095】
【表2】
【0096】
【表3】
【0097】
【表4】
【0098】
【表5】
【0099】
【表6】
【0100】
【表7】
【0101】
実施例2
ウレタン系樹脂(A)中に含まれるイソシアネート基とイソシアネート基との反応性を有する官能基(活性水素基)の当量比が、得られる樹脂塗装金属板の諸性能に及ぼす影響を調査した。
表1に示した塗布液Bの組合せにおいて、活性水素基(アミノ基)含有有機化合物(c)とイソシアネート基含有有機化合物(g)の混合量を表8に示す様に変化させた塗布液を作製した。
この塗布液を、実施例1と同じ被処理金属板(電気純Znめっき鋼板;塗布型クロメート処理材)に所定の乾燥膜厚となる様に塗布した後、所定の鋼板温度で乾燥させて樹脂塗装鋼板を得た。
得られた各樹脂塗装鋼板の性能を前記実施例1と同様にして評価し、表8に併記する結果を得た。
【0102】
【表8】
【0103】
表8の結果からも明らかである様に、ウレタン系樹脂(A)中に存在する官能基の当量比が、本発明で定める好適範囲内にあるものは、全ての性能において優れた結果が得られている。これに対し該当量比が好適範囲を外れる樹脂塗装金属板については、焼付け後の性能のうち少なくとも1つ以上の性能が不十分であることが分かる。特に、イソシアネート基含有有機化合物の配合量が少なくて官能基の当量比が小さいものは、架橋反応が充分に進行しないため焼付け接合後の接着耐久性、耐熱接着性、耐溶剤性が劣る結果となった。
【0104】
【発明の効果】
本発明は以上の様に構成されているので、乾燥状態でべたつきやブロッキング性を生じることがなく、しかも、スリッターや打ち抜き加工時に皮膜に疵を生じるといったことがなく、更には塗膜面を重ね合わせて焼付け接合を行うことによって、優れた接着性、接着耐久性、耐高温接着性、耐溶剤性、耐食性等を発現し得る感熱型の自己接着性樹脂塗装金属板を提供しうると共に、接合強度の強力な重ね合わせ接合金属材を提供し得ることになった。
Claims (9)
- 接合面として、感熱自己接着性樹脂塗膜を有する感熱自己接着性樹脂塗装金属板であって、
前記樹脂塗装金属板は、金属板の表面を、80℃以上の温度で可塑化し且つそれ以上の温度で架橋反応性を示すウレタン系樹脂(A)を含有する塗膜で被覆したものであり、
前記ウレタン樹脂(A)は、イソシアネート基との反応性を有する官能基と、ブロック化イソシアネート基を有し、且つ両者の当量比が、イソシアネート基との反応性を有する官能基:ブロック化イソシアネート基=1:0.5〜2の範囲であり、
前記ブロック化イソシアネート基は、フェノール系、ラクタム系、オキシム系または活性メチレン系のブロック剤(フェノールと、1,1,1−トリメチロールプロパンおよび1,3−ブタンジオールが併用される場合を除く)によってブロック化されてなるものであり、
前記塗膜は、前記ウレタン系樹脂(A)を含む塗布液を塗布し、熱架橋反応性が発現しない温度で乾燥してなるものであり、
前記塗膜の付着量が、固形分換算で0.5〜30g/m2であることを特徴とする接合用感熱自己接着性樹脂塗装金属板。 - ウレタン系樹脂(A)が、80〜200℃の温度範囲で可塑化し、且つ100〜200℃の温度範囲で架橋反応性を示すものである請求項1に記載の感熱自己接着性樹脂塗装金属板。
- ウレタン系樹脂(A)が、樹脂固形分に対してイソシアネート基との反応性を有する官能基を12KOHmg/g以上有するウレタン系樹脂(A1)に、ブロック化イソシアネート基含有化合物(a2)を、イソシアネート基との反応性を有する官能基とブロック化イソシアネート基との当量比が1:0.5〜2の範囲となる様に配合したものである請求項1または2に記載の感熱自己接着性樹脂塗装金属板。
- ウレタン系樹脂(A)が、ブロック化イソシアネート基を再生−NCO基換算で1重量%以上含有するブロック化イソシアネート基含有ウレタン系樹脂(A2)に、イソシアネート基との反応性を有する官能基含有化合物(a1)を、イソシアネート基との反応性を有する官能基とブロック化イソシアネート基との当量比が1:0.5〜2の範囲となる様に配合されたものである請求項1または2に記載の感熱自己接着性樹脂塗装金属板。
- ウレタン系樹脂(A)が、樹脂固形分に対してイソシアネート基との反応性を有する官能基を12KOHmg/g以上有するウレタン系樹脂(A1)と、ブロック化イソシアネート基を再生−NCO基換算で樹脂固形分に対して1重量%以上含有するブロック化イソシアネート基含有ウレタン系樹脂(A2)とを、イソシアネート基との反応性を有する官能基とブロック化イソシアネート基との当量比が1:0.5〜2の範囲となる様に配合されたものである請求項1または2に記載の感熱自己接着性樹脂塗装金属板。
- イソシアネート基との反応性を有する官能基が活性水素を有するものである請求項1〜5のいずれかに記載の感熱自己接着性樹脂塗装金属板。
- イソシアネート基との反応性を有する官能基がアミノ基である請求項6に記載の感熱自己接着性樹脂塗装金属板。
- 請求項1〜7のいずれかに記載されたウレタン系樹脂(A)を含有する塗布液を金属板の表面に塗布した後、架橋反応性を生ずる温度未満で乾燥して造膜することを特徴とする接合用感熱自己接着性樹脂塗装金属板の製法。
- 請求項8に記載の接合用感熱自己接着性樹脂塗装金属板を重ね合わせ、ウレタン系樹脂(A)が熱可塑性を発現し且つ架橋反応を生ずる温度以上250℃以下の温度で焼付けを行なうことを特徴とする接合用感熱自己接着性樹脂塗装金属板の接合法。
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