JP3196564B2 - 感熱接着性樹脂塗装金属板およびその製法並びに該樹脂塗装金属板の接合方法 - Google Patents

感熱接着性樹脂塗装金属板およびその製法並びに該樹脂塗装金属板の接合方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、感熱接着型の樹脂塗装
金属板とその製法、並びに該樹脂塗装金属板の接合方法
に関するものであり、この感熱接着性樹脂被覆金属板
は、自動車や家庭電気製品、鋼製家具等の外板材あるい
は建築材料用等として適用することができ、溶接や接着
剤等を必要とせずに、成形・組み立て時に金属板同士、
あるいは金属と非金属板(ベニア板、プラスチック板、
ゴム板、布などを含む)を容易に接合することができ
る。
【0002】
【従来の技術】金属板同士の接合方法としては、従来よ
り溶接法、ボルト・ナット等を使用する機械的接合法、
ろう付けを含めた接着剤を用いる方法等が多用されてい
る。一方、プラスチック、布、合板等の非金属材料と金
属板とを接合する際に採用されているのは、そのほとん
ど接着剤による貼り合わせである。
【0003】接着接合に用いられる接着剤のベース樹脂
は、その熱的性質によって熱可塑性樹脂、熱硬化性樹
脂、エラストマーに大別される。そして接着剤を用いる
接合法では、該接着剤を被接合面の片面ないし両面に塗
布し、接着剤に含まれる樹脂中の接着に関与する成分を
反応させ、あるいは樹脂を溶融させて粘着性を発現させ
るために、被着体を加熱してから圧着することが多い。
【0004】ところが、この様な接合法では、まず金属
板を所望の形状に打抜きしたり剪断してから所望の形状
に成形加工し、その後、接合させたい部位の表面に個別
に接着剤を塗布しなければならないので作業効率が極め
て悪く、結果として生産性を低下させ製造コストを高め
る原因となっている。
【0005】しかも使用される接着剤は、塗布時の粘度
調整のために有機溶剤を使用することが多いので、作業
環境に揮発する有機溶剤によって健康障害を招いたり、
更には爆発、火災といった危険も生じてくる。そのた
め、接着剤の塗布・接合・組み立てラインには集中換気
装置を設けることが不可欠であり、設備コストの上昇を
招く。また、溶剤の揮発に伴って接着剤の粘度が変動し
易いため、結果として接着材の塗布量にばらつきが生
じ、均一な接着強度が得られにくくなるという問題も指
摘される。
【0006】そこで、こうした有機溶剤使用に伴う問題
点を解消するための手段として、例えば、特公昭52−
8998号公報には、電気製品の積層鉄芯用電磁鋼板と
して、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂を有機溶媒で希釈混
合し、これを乳化剤により水系エマルジョン化した水性
樹脂液を、鋼板表面に塗布し乾燥した樹脂被覆電磁鋼板
が開示されている。
【0007】この樹脂被覆鋼板は、被着材を相互に重ね
合わせて加熱・加圧するだけで鋼板同士を接合すること
ができ、接着剤を別途塗布する必要がないので、ユーザ
ーサイドでの接着剤塗布工程が省略できるという利点を
有している。尚、熱可塑樹脂のみからなる被覆では十分
な接着強度が得られにくく、特に積層鉄芯が使用時に発
熱して高温になったとき、接着剤が可塑化して接着強度
が急激に低下するという問題を解決するため、本公報で
は、熱可塑性樹脂に熱硬化性樹脂を混合することによっ
て接合後の耐熱性を高めると共に、乳化剤の使用によっ
て生じる軟化点の低下も抑えており、高温時における接
着強度の低下も抑制される。
【0008】しかしながら、塗膜中に熱可塑性樹脂が存
在する限り、高温時や湿潤環境下での接着強度の低下は
避けられず、また耐溶剤性も劣るものとなる。加えて本
公報に記載された樹脂被覆鋼板では、接合に長時間を要
するので接着作業の効率も悪い。これらのことから、本
公報に記載された様な樹脂被覆鉄芯用鋼板を自動車や家
電製品、鋼製家具あるいは建築材料等の構造材として実
用化することはできない。
【0009】更に上記と同種の積層鉄芯用樹脂被覆鋼板
として、特公昭52−8999号公報には、水性のアク
リル系樹脂エマルジョンに水性フェノール系樹脂や水性
メラミン系樹脂を配合したものを塗布し、不完全焼き付
けによって有機被覆電磁鋼板を得る方法が開示されてお
り、この塗装鋼板も前記公報記載の樹脂被覆鋼板と同様
に接着剤の塗布なしで接合することができる。しかし、
このものでも接着後の塗膜中に熱可塑性樹脂成分が残存
しているため、可塑化温度以上の高温条件や湿潤環境下
に曝されると接着強度の低下が避けられず、また耐溶剤
性にも劣る。
【0010】更に本公報では、接合皮膜形成のための不
完全焼き付けが250℃以上の高温・短時間で行なわれ
るため、焼付け工程で加熱ムラを生じ、局部的に樹脂が
熱劣化を起こして接着強度に大きなばらつきが生じる
他、接合時の焼付け温度管理も非常に難しい。従って、
この様な積層鉄芯用樹脂被覆鋼板をそのまま自動車や家
電製品、鋼性家具用あるいは建築材料用として実用化す
ることも困難である。
【0011】また、上記公報に開示された不完全焼付け
法における焼付け時の温度範囲や時間を広げ、製造をよ
り容易にしたものとして特公昭55−9825号公報に
は、アクリル系樹脂の水系エマルジョンに水溶性スチレ
ン−マレイン酸共重合体を混合した処理液を被処理鋼板
表面に塗布し乾燥した自己接着型樹脂被覆鋼板が開示さ
れている。しかしながら、この樹脂被覆にしても、高温
時の接着強度が若干改善されている程度であり、基本的
には熱可塑性樹脂を含む混合塗膜であるため高温時ある
いは湿潤環境下での接着強度は十分ではなく、且つ耐溶
剤性にも劣る。
【0012】また本公報では、アクリル系樹脂と水溶性
スチレン−マレイン酸共重合体との架橋結合により、接
着強度が増大すると記載されているが、アクリル酸基や
アクリル酸エステル基とカルボキシル基との結合はさほ
ど強固なものではなく、またスチレン−マレイン酸共重
合体は巨大高分子になるほど流動性が悪くなって、アク
リル系樹脂との結合機会(架橋点)が少なくなるので、
接着強度の向上にさほど顕著な効果は期待できない。更
に、積層板間の接着に要する時間も長く、接着時の作業
効率が悪いという欠点については未解決のままである。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記の様な
事情に着目してなされたものであって、その目的は金属
板の種類や板厚等に制限されず、且つろう付けや接着剤
塗布等による接合手段を必要とせず、接合させたい面同
士を密着させて比較的低温且つ短時間の加熱・加圧で優
れた接合力を得ることができ、更に接合後は優れた接着
耐久性、耐熱接着性、耐食性、耐溶剤性を発揮し得る様
な、感熱接着性に優れた樹脂塗装金属板およびその製法
を提供し、併せて該樹脂塗装金属板を用いた接合方法を
提供しようとするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明に係る感熱接着性塗装金属板の構成は、
金属板の表面を、メラミン樹脂との反応性、またはイソ
シアネート基との反応性官能基を有する水溶性または水
分散性の熱可塑性樹脂(A)と架橋剤(B)とを含有す
る塗膜で被覆したものであるところに要旨を有するもの
である。ここで使用される好ましい熱可塑性樹脂(A)
としては、80℃以上の温度で可塑化し且つ可塑化温度
以上で架橋剤との架橋反応性を示す官能基を有するも
の、より具体的には、ポリエチレン系樹脂、ポリエステ
ル系樹脂、及びポリウレタン系樹脂の1種または2種以
上からなる熱可塑性樹脂であって、メラミン樹脂との反
応性を示す官能基が、水酸基および/またはカルボキシ
ル基であり、イソシアネート基との反応性を示す官能基
が、水酸基、アミノ基、カルボキシル基よりなる群から
選択される1種または2種以上であることが好ましい。
また好ましい架橋剤(B)としては、80℃以上で架橋
反応性を示すもの、より具体的には、活性メチロール基
を有するメラミン樹脂またはブロック化イソシアネート
基含有化合物が挙げられる。
【0015】上記熱可塑性樹脂(A)は、80〜200
℃の温度範囲で可塑化し、また熱可塑性樹脂(A)と架
橋剤(B)とが、上記熱可塑性樹脂(A)の可塑化温度
以上230℃以下の温度範囲で架橋反応を起こすものが
特に好ましく、これらの熱可塑性樹脂(A)と架橋剤
(B)を含む塗膜の好ましい付着量は、固形分換算で
0.5〜60g/m2 である。
【0016】また、上記塗装金属板を製造するに当たっ
ては、表面の清浄化された金属材の表面に、前記熱可塑
性樹脂(A)と架橋剤(B)を含む塗布液を塗布した
後、上記(A)と(B)が架橋反応を起こさない温度条
件で乾燥すればよい。さらに、本発明に係る接合法は、
前記方法によって得られる感熱接着性樹脂塗装金属板同
士または該感熱接着性樹脂塗装金属板と他の被着材を重
ね合わせ、熱可塑性樹脂(A)と架橋剤(B)を含む塗
膜が可塑化し且つ架橋反応を生じる温度以上、250℃
以下の温度で焼付けて接合することにより遂行される。
【0017】本発明において感熱型接合層を構成する樹
脂は、水溶性または水分散性であるので、塗布乾燥工程
での有機溶剤の揮発による作業者への健康障害、火災や
爆発といった危険性がなく、しかも塗布液中の溶剤の蒸
発とそれに伴う固形分濃度や粘度変化が少ないので樹脂
液の塗布量も安定しており、確実で安定した接合状態を
得ることができる。
【0018】
【作用】上記の様に本発明に係る感熱接着性に優れた樹
脂塗装金属板は、好ましくは80℃以上の温度で可塑化
し、且つ可塑化温度以上で架橋反応を生じる官能基を有
する熱可塑性樹脂(A)と、好ましくは80℃以上の温
度で架橋反応を生じる架橋剤(B)を主成分とする塗膜
で、金属板表面を被覆してなるものであり、該塗膜を構
成する熱可塑性樹脂(A)の可塑化温度は80〜200
℃の範囲のものが好ましく、また該熱可塑性樹脂性
(A)と架橋剤(B)は、該熱可塑性樹脂(A)の可塑
化温度以上230℃以下の範囲で架橋反応を示すものが
好ましい。
【0019】こうした好ましい要件を満足する架橋剤
(B)の具体例としては、メラミン樹脂あるいはブロッ
ク化イソシアネート基含有化合物が挙げられ、また熱可
塑性樹脂(A)の具体例としては、上記メラミン樹脂と
架橋反応性を有し、あるいはイソシアネート基との架橋
反応性を有する官能基を有するポリエチレン系樹脂、ポ
リウレタン系樹脂あるいはポリエステル系樹脂が挙げら
れる。
【0020】本発明に係る樹脂塗装金属板は、切り板や
コイル製品のままの状態においては、塗装表面のべたつ
きやブロッキング性がなく、また加工性にも優れたもの
であって、スリット加工や打ち抜き加工、成形加工時に
塗膜表面に加工疵を生じることがなく、しかも塗膜面同
士あるいは塗膜面と被着面を密着させた状態で、該塗膜
構成材が熱可塑性と架橋反応性を共に発現する温度以上
に加熱して焼付けを行うことにより、該塗膜面同士ある
いは塗膜面と被着材面を強固に接合することができる。
【0021】尚、加熱焼付け前の塗膜は、熱可塑性と加
工に必要な適度な硬さを有しているが、塗膜面同士ある
いは塗膜面と被着材面を合わせて加熱焼付けした後は、
塗膜を構成する樹脂中の官能基間の相互の架橋反応によ
って熱可塑性を消失し、強固な塗膜間接着強度を発現す
ると共に、耐溶剤性や耐食性、耐高温接着強度において
も優れた性能を発揮するものとなる。
【0022】本発明者らは、塗布・乾燥後には粘着性や
べとつき等を有していないが、塗膜面同士あるいは塗膜
面と被着材面を貼り合わせ、所定温度で焼付けすること
によって始めて接着効果を発現し得る様な樹脂塗膜を得
るべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、前記の様に8
0℃以上の温度で可塑化し、且つそれ以上の温度で架橋
反応性を示す熱可塑性樹脂(A)[好ましくは、可塑化
温度が80〜200℃であり、可塑化温度以上230℃
以下の温度範囲で架橋反応性を示す熱可塑性樹脂、具体
的には、メラミン樹脂との架橋反応性を示し、あるいは
イソシアネート基との架橋反応性を示す官能基を有する
ポリエチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂あるいはポリ
エステル系樹脂の1種または2種以上]と、80℃以上
の温度で架橋反応性を示す感熱型の架橋剤(B)[好ま
しくは、上記熱可塑性樹脂(A)の可塑化温度以上23
0℃以下の温度範囲で架橋反応性を示す架橋剤、具体的
にはメラミン樹脂あるいはブロック化イソシアネート基
含有化合物]とを主成分とする塗膜は、上記要望にかな
う優れた特性の感熱接着性樹脂塗膜層となることが明ら
かとなった。以下、本発明に係る感熱接着性樹脂塗装金
属板を構成する各構成要素の限定理由および好ましい態
様等について詳述する。
【0023】[熱可塑性樹脂(A)を用いる理由]ま
ず、樹脂塗装金属板の塗装面同士あるいは塗膜面と他の
被着材面を密着させた後に加熱焼付けして高度の接着強
度を得るには、加熱焼付けの初期過程で樹脂塗膜自身が
一旦軟化し、流動性を示すことが必要である。即ち、焼
付け初期の加熱下で樹脂が一旦軟化し、塗膜面同士の接
合の場合には当該軟化した樹脂のレベリング作用により
接着面同士が融合一体化して平滑な接合面を形成し、ま
た塗膜面と他の被着材面を接合する場合は、他の被着材
面の凹凸に軟化した樹脂が入り込んで塗膜面と被着材面
の接触面積を増大せしめ、接合面全体にわたって均一且
つ強固な接合状態が得られるからである。従って、塗膜
を構成する主たる樹脂成分としては、加熱焼付けの初期
過程で可塑化する熱可塑性樹脂(A)を用いることが必
須となる。
【0024】[熱可塑性樹脂(A)の可塑化温度]上記
熱可塑性樹脂(A)の可塑化温度は、好ましくは80℃
以上、より好ましくは80〜200℃の範囲が好まし
い。その理由は次の通りである。即ち、各種家電製品や
建材等の接着剤焼付けに当たり、金属板自身は通常10
0℃以上、より一般的には100〜250℃程度に加熱
されるが、焼付け後に十分な接着強度を得るためには、
上記の様に本焼き付けの温度域で該樹脂塗膜が一旦軟化
して流動性を示すことが必要である。従って該樹脂
(A)の好ましい可塑化温度は80℃以上、より好まし
くは80〜200℃の範囲である。
【0025】尚、後述する様に、接合のための加熱焼付
け工程では、樹脂中の官能基が架橋反応を生じる温度域
(熱架橋反応性発現温度域)まで加熱することが必須と
なるが、この加熱焼付け温度に比べて樹脂(A)の可塑
化温度の方が高いと、焼付け時に該樹脂(A)の流動性
およびレベリング性が発現されず、接合面の均一化と一
体化が不十分となって満足のいく接着性が得られなくな
る。それ故、該樹脂(A)の可塑化温度は、架橋性発現
温度以下で且つ200℃以下、より望ましくは180℃
以下が好ましい。尚、この可塑化温度は、塗膜の好まし
い主成分となるポリエチレン系樹脂、ポリウレタン系樹
脂、ポリエステル系樹脂の1種または2種以上の混合物
の分子量や分岐度あるいは重合度を調整することによっ
て制御できる。
【0026】一方、該樹脂(A)の可塑化温度が低くな
り過ぎると、保管時や搬送もしくは取扱い時に塗膜がべ
とつきやブロッキングを起こし易くなるので、可塑化温
度は80℃以上、より好ましくは100℃以上にするこ
とが望ましい。
【0027】[熱可塑性樹脂(A)および架橋剤(B)
の熱架橋発現温度]本発明において、熱架橋発現温度を
熱可塑化温度よりも高くする理由は下記の通りである。
即ち、塗膜の圧着と加熱焼付けにより高度の接合力を発
現させると共に、接合後において高レベルの高温接合
力、耐食性、耐溶剤性等を発揮させるには、塗膜面同士
あるいは塗膜面と被着材面を合わせた後の加熱・焼付け
の初期過程で樹脂混合物を一旦可塑化させて均一的な接
合層を形成させる必要があるだけでなく、塗膜構成樹脂
中の官能基同士を相互に架橋反応させる必要がある。
【0028】この架橋反応が該樹脂塗装金属板の製造工
程、即ち塗布・乾燥工程で生じてしまうと、焼付け接合
時における塗膜中の未反応官能基の量が少なくなって塗
膜内での架橋点(架橋密度)が十分に上がらず、満足の
いく接着強度が得られなくなるばかりでなく、焼付け接
合時に樹脂塗膜が可塑化し難くなって接合不良が生じ易
くなる。従って、該樹脂塗膜が焼付け接合工程ではじめ
て架橋反応性を発現する温度は、塗膜を形成するときの
塗布・乾燥温度よりも高温側でなければならず、好まし
くは100℃程度以上、より好ましくは120℃以上と
すべきである。
【0029】但し、架橋反応性発現温度が230℃を超
える高温架橋反応性樹脂系の場合は、生産性(接合効
率)も考慮して接合時の焼付け温度を250℃を超える
高温度にしなければならず、焼付け時に塗膜構成樹脂が
熱分解を起こして、実質的に十分な接着強度が得られ難
くなる他、非接合部において黄変等による外観品質の低
下を招く。従って、架橋反応性発現温度は230℃以下
にすることが望ましく、塗膜構成樹脂の熱分解を確実に
防止する上でより好ましい上限温度は180℃程度であ
る。
【0030】[熱可塑性樹脂(A)の種類]次に、塗膜
を構成する熱可塑性樹脂(A)の樹脂成分としては、ポ
リエチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル
系樹脂の1種または2種以上が好ましい。即ち本発明に
係る樹脂塗装金属板は、通常、接合に先立って切断ある
いは成形等の加工に付されるが、このとき金属母材と共
に樹脂塗膜も加工を受けることになる。従って、加工時
に金属母材と共に塗膜自身も容易に延展して変形し、表
面に疵や欠陥を生じないことが重要となる。そこで本発
明では、この様な接合前の加工性を考慮し、優れた延展
性や耐疵付き性を示すものとしてポリエチレン系樹脂、
ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂の1種または
2種以上の混合物を推奨する。
【0031】[架橋剤(B)の種類]上記の様な接着性
と耐高温接合力、耐食性、耐溶剤性等を発揮させるに
は、前述の如く、加熱軟化状態の熱可塑性樹脂(A)中
に含まれる反応性官能基との間で適度の架橋点で反応を
起こす架橋剤(B)が必要となるが、この様な架橋剤
(B)として最も好ましいのはブロック化イソシアネー
ト基を有する化合物あるいはメチロール基を有するメラ
ミン樹脂である。次に、熱可塑性樹脂(A)と架橋剤
(B)の架橋反応について述べる。
【0032】[架橋剤(B)がイソシアネート基含有化
合物である場合]架橋剤(B)がイソシアネート基含有
化合物である場合、該イソシアネート基と架橋反応する
ための熱可塑性樹脂(A)中の官能基の具体例として
は、活性水素を有する官能基、例えば水酸基(−O
H)、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−N
2 )等が挙げられる。これらの活性水素を有する官能
基は、いずれも保護されたイソシアネート基から保護基
が離脱することによって生成する活性イソシアネート基
(−NCO基)と反応して架橋反応を起こすものであ
り、その反応は下記の通りである。 −NCO + −OH → −NH−COO− −NCO + −COOH → −NH−CO− + CO2 −NCO + −NH2 → −NH−CO−NH−
【0033】上記イソシアネート基との反応性を有する
官能基の中でも特に好ましいのはアミノ基である。即ち
アミノ基は、水酸基やカルボキシル基に比べてイソシア
ネート基との架橋反応速度が大きく、より短時間で、或
はより低い焼付け温度で高い接着強度を示すからであ
る。
【0034】ところで活性イソシアネート基は、常温で
容易に水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の活性水素
含有官能基と反応するので、このままの形態でイソシア
ネート基との反応性を有する官能基を有する熱可塑性樹
脂(A)と混合・共存させると、保管温度条件下におい
ても塗膜層内部で架橋反応が進行し、架橋点が次第に消
失すると共に、焼付けのための加熱時点で塗膜の熱可塑
性が失なわれてしまう。この様に焼付け加熱前に架橋反
応を起こした樹脂塗膜では、たとえその後に塗膜面同士
を密着させて加熱焼付けを行なっても、該塗膜が可塑化
しないため均一且つ平滑な接着層が得られず、また架橋
反応もほとんど起こらないため、本発明で意図する様な
感熱接着性が発現されなくなる。
【0035】そのため本発明では、焼付け加熱前の塗膜
状態で架橋剤(B)中に含まれるイソシアネート基が、
熱可塑性樹脂(A)中の反応性官能基と反応しない様
に、架橋剤(B)の中のイソシアネート基を例えばフェ
ノール、アルコール、オキシム、活性メチレン等の保護
剤で予め保護しておく必要がある。このとき、保護剤の
種類を適宜選択すれば、該保護剤のイソシアネート基か
らの離脱温度を調整することが可能であり、前述の如く
樹脂塗膜の熱架橋反応性発現温度を100〜230℃、
望ましくは120〜200℃の範囲に調整することがで
きる。
【0036】[架橋剤(B)がメラミン樹脂である場
合]架橋剤(B)の1つとして推奨されるメラミン樹脂
は、メラミンとホルムアルデヒドの付加縮合によって得
られる樹脂であり、1分子中に1〜6個のメチロール基
(−NHCH2 OH)を有している。このメチロール基
は、加熱により水酸基(−OH)やカルボキシル基(−
COOH基)等の官能基との架橋反応を起こすものであ
り、その具体的な反応は下記の通りである。 R−NHCH2 OH + R’−OH → R−NHCH2 O−R’+H2 O → R−NH−R’+ HCHO R−NHCH2 OH + R’−COOH → R−NHCH2 OCO−R’+ H2 O → R−NHCO−R’ + HCHO
【0037】[好ましい熱可塑性樹脂(A)]熱可塑性ポリウレタン系樹脂(A1 本発明で用いる熱可塑性樹脂(A)としてポリウレタン
系樹脂を選択する場合には、該熱可塑性樹脂(A)とし
て、イソシアネート基あるいはメチロール基との架橋反
応性を示す官能基を1分子中に2個以上有する熱可塑性
ポリウレタン系樹脂(A1 )が使用される。該熱可塑性
ポリウレタン系樹脂(A1 )は、2個以上のイソシアネ
ート基を有する化合物あるいは2個以上のメチロール基
を有する架橋剤(B)との架橋反応によって、強固な塗
膜を形成する。
【0038】上記熱可塑性ポリウレタン系樹脂(A1
の製法としては、イソシアネート基あるいはメチロール
基との架橋反応性を有する官能基(X1 )を2個以上有
する有機化合物と、2個以上のイソシアネート基(Y
1 )を有する有機ポリイソシアネート化合物とを反応さ
せてポリウレタン系樹脂を製造する際に、官能基の当量
比でイソシアネート基(Y1 )に対して、イソシアネー
ト基あるいはメチロール基との反応性を示す官能基(X
1 )を過剰量反応させることによって、未反応の官能基
(X1 )が残ったポリウレタン系樹脂(A1 )を得るこ
とができる。
【0039】熱可塑性ポリエステル系樹脂(A2 本発明で用いる熱可塑性樹脂(A)としてポリエステル
系樹脂を選択する場合には、該熱可塑性樹脂(A)とし
て、イソシアネート基あるいはメチロール基との架橋反
応性を示す官能基を1分子中に2個以上有する熱可塑性
ポリエステル系樹脂(A2 )が使用される。該熱可塑性
ポリエステル系樹脂(A2 )は、2個以上のイソシアネ
ート基を有する化合物あるいは2個以上のメチロール基
を有する架橋剤(B)との架橋反応によって、強固な塗
膜を形成する。
【0040】上記熱可塑性ポリエステル系樹脂(A2
の製法としては、2個以上の水酸基含有化合物(X2
と2個以上のカルボキシル基含有化合物(Y2 )を反応
させてポリエステル系樹脂を製造する際に、官能基の当
量比で水酸基(またはカルボキシル基)に対して過剰量
のカルボキシル基(または水酸基)を有する化合物(X
2 ),(Y2 )を使用することによって、未反応のカル
ボキシル基(または水酸基)が残ったポリエステル系樹
脂(A2 )を得ることができる。この様にして得られる
ポリエステル系樹脂の具体例としては、グリプタル樹
脂、テレフタル酸系樹脂、イソフタル酸系樹脂、マレイ
ン酸系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、オキシ酸樹脂
等が挙げられる。
【0041】熱可塑性ポリエチレン系樹脂(A3 本発明で用いる熱可塑性樹脂(A)としてポリエチレン
系樹脂を選択する場合には、該熱可塑性樹脂(A)とし
て、イソシアネート基あるいはメチロール基との架橋反
応性を示す官能基を1分子中に2個以上有する熱可塑性
ポリエチレン系樹脂(A3 )が使用される。該熱可塑性
ポリエチレン系樹脂(A3 )は、2個以上のイソシアネ
ート基を有する化合物あるいは2個以上のメチロール基
を有する架橋剤(B)との架橋反応によって、強固な塗
膜を形成する。
【0042】上記熱可塑性ポリエチレン系樹脂(A3
は、エチレンに対し、カルボキシル基を有するエチレン
性不飽和カルボン酸を共重合させることによって得るこ
とができる。
【0043】尚、プレス加工や打ち抜き加工時の耐アブ
レージョン性や打抜き加工性、加工時の耐黒化性等の向
上に必要な高強度の樹脂被膜を得ようとする場合は、エ
チレン性不飽和カルボン酸単独あるいはエチレン性不飽
和カルボン酸とアクリル酸エステルやスチレンなどをエ
チレンと共重合させたカルボキシル基含有ポリエチレン
系樹脂が好ましく用いられる。
【0044】2種以上の熱可塑性樹脂の混合体(A4 本発明で用いられる熱可塑性樹脂(A)は、ポリウレタ
ン系樹脂(A1 )、エステル系樹脂(A2 )、ポリエチ
レン系樹脂(A3 )の2種以上の混合体(A4)であっ
ても良く、その場合は該熱可塑性樹脂(A)として、イ
ソシアネート基あるいはメチロール基との架橋反応性を
示す官能基を1分子中に2個以上有する熱可塑性系樹脂
の混合体(A4 )が使用される。その場合の具体的な組
み合わせとしては、ポリウレタン系樹脂(A1 )+ポリ
エステル系樹脂(A2 )の混合物、ポリエステル系樹脂
(A2 )+ポリエチレン系樹脂(A3 )の混合物、ポリ
エチレン系樹脂(A3 )+ポリウレタン系樹脂(A1
の混合物、ポリウレタン系樹脂(A1 )+ポリエステル
系樹脂(A2 )+ポリエチレン系樹脂(A3 )の混合物
のいずれかである。
【0045】[架橋剤(B)の構成]ブロック化イソシアネート基含有化合物(B1 ブロック化イソシアネート基含有物(B1 )は、有機ポ
リイソシアネート化合物に、公知のブロック剤を反応さ
せることによって得られる。このとき、有機ポリイソシ
アネート化合物とブロック剤の種類を適宜選定すること
により、イソシアネート基からのブロック剤の熱離脱温
度を100〜200℃に調整することができる。このと
き、熱架橋反応時に離脱されたブロック剤が沸騰して発
泡することのない様、熱架橋反応温度以上の沸点を有す
るブロック剤を選定するのがよい。
【0046】この様なブロック剤としては、フェノー
ル、クレゾール等のフェノール系;メタノール、エタノ
ール、ブチルセロソルブ等のアルコール系;ε−カプロ
ラクタム等のラクタム系;メチルエチルケトオキシム、
シクロヘキサノンオキシム等のオキシム系;マロン酸ジ
メチル、アセト酢酸エチル等の活性メチレン系等の公知
のブロック剤が挙げられる。
【0047】メラミン樹脂(B2 メラミン樹脂(B2 )とは、メラミンとホルムアルデヒ
ドの付加反応により生成したポリメチロールメラミンを
アルコールで変性(エーテル化)することによって得ら
れるアルコール変性メラミン樹脂であり、好ましくは最
終生成物の遊離ホルムアルデヒド濃度を0.5%以下に
調整することにより、水溶性で高不揮発分濃度の架橋剤
として有効に作用する。このメラミン樹脂は、メラミン
樹脂中のメチロール基との架橋反応を生じる前記熱可塑
性樹脂(A)中の官能基に対するメラミン樹脂中のメチ
ロール基の官能基当量比を変えることにより、熱架橋温
度を100〜200℃に調整することができる。
【0048】[熱可塑性樹脂(A)および架橋剤(B)
の製造原料]ポリウレタン系樹脂の原料 イソシアネート基あるいはメラミン樹脂との反応性を有
する官能基を有する熱可塑性ポリウレタン系樹脂(A
1 )を製造するための原料としては、公知の多価ヒドロ
キシル化合物(1分子中に2個以上の水酸基を有する化
合物)、多価アミノ化合物(1分子中に2個以上のアミ
ノ基を有する化合物)、多価アミノヒドロキシル化合物
(1分子中に2個以上の水酸基とアミノ基を有する化合
物)が挙げられる。
【0049】多価ヒドロキシル化合物としては、エチレ
ングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオー
ル、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、ポリプ
ロピレングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジ
オール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジヒド
ロキシエチルテレフタレート、ヒドロキノンジヒドロキ
シエチルエーテルトリメチロールプロパン、グリセリ
ン、ペンタエリストール等の多価アルコール、上記多価
アルコール類と、ビスフェノールA、ビスフェノール
S、水素添加ビスフェノールA、ジブロムビスフェノー
ルA等のアルキレン誘導体、あるいは上記多価アルコー
ル類もしくはそのアルキレン誘導体と多価カルボン酸、
多価カルボン酸無水物、多価カルボン酸エステルとから
合成されるエステル化合物、更にはポリカーボネートポ
リオール、ポリテトラメチレングリコール、ポリカプロ
ラクトンポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリ
チオエーテルポリオール、ポリアセタールポリオール、
ヒマシ油ポリオール等のポリオール化合物等が挙げられ
る。
【0050】多価アミノ化合物としては、エチレンジア
ミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、ヘ
キシレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエ
チレンペタミン、イソホロンジアミン、キシリレンジア
ミン、ジフェニルメタンジアミン、水素添加ジフェニル
メタンジアミン等が挙げられる。多価アミノヒドロキシ
ル化合物としては、ジエタノールアミン、3−アミノプ
ロパノール等が挙げられる。
【0051】ポリエステル系樹脂の原料 イソシアネート基あるいはメラミンとの反応性を有する
官能基を有する熱可塑性ポリエステル系樹脂(A2 )を
製造するための原料としては、公知の多価ヒドロキシル
化合物(1分子中に2個以上の水酸基を有する化合
物)、多塩基酸(1分子中に2個以上のカルボキシル基
を有する化合物)が挙げられる。
【0052】多塩基酸(1分子中に2個以上のカルボキ
シル基を有する化合物)およびその無水物としては、無
水フタル酸、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、
テトラクロロ無水フタル酸、コハク酸、アジピン酸、セ
バンチン酸、アゼライン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸
等が挙げられる。この原料としては、オキシ酸の分子内
縮合物や不飽和多塩基酸などを共用することができる。
また、塗膜硬度や分子量調節のため少量の一塩基酸(例
えば安息香酸等)を添加することもできる。
【0053】多価ヒドロキシル化合物(1分子中に2個
以上の水酸基を有する化合物)としては、エチレングリ
コール、プロピレングリコール、ジエチレングリコー
ル、グリセリン、1,3−ブチレングリコール、ネオペ
ンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエ
リスリトール、ソルビトール、ブテンジオール、4−ヒ
ドロキシエトキシフェニルプロパン、グリセリンモノア
リル等が挙げられる。
【0054】ポリエチレン系樹脂の原料 イソシアネート基あるいはメラミン樹脂との反応性を有
する官能基を有する熱可塑性ポリエチレン系樹脂(A
3 )を製造する際の原料としては、エチレンと、例えば
(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のエチ
レン性不飽和カルボン酸の1種または2種以上が用いら
れる。エチレン性不飽和カルボン酸以外に、例えば(メ
タ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、
(メタ)アクリル酸プロピル等の(メタ)アクリル酸エ
ステル、スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等
のスチレン系単量体、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエ
チル、(メタ)アクリルヒドロキシプロピル等の(メ
タ)ヒドロキシアルキル、N−メチロール(メタ)アク
リルアミド等のN−置換(メタ)アクリルアミド、(メ
タ)アクリルグリシジル等のエポキシ基含有(メタ)ア
クリル酸エステル、(メタ)アクリルニトリル等の1種
または2種以上の併用が可能である。
【0055】ブロック化イソシアネート基含有化合物の
原料 ブロック化イソシアネート基含有化合物(B1 )を製造
する際の原料となる有機ポリイソシアネート系化合物と
しては、芳香族系もしくは脂環族系のイソシアネート化
合物の単独もしくは2種以上が使用できる。具体例とし
ては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジ
イソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチ
レンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、
ヘキサメチレンジイソシアネート、水素添加ジフェニル
メタンジイソシナネート、水素添加トルエンジイソシア
ネート、テトラメチレンキシリレンジイソシアネート等
のイソシアネート類;および上記イソシアネート類のビ
ュレット化合物やイソシアヌレート化合物、上記イソシ
アネート類をトリメチロールプロパン等の多価ヒドロキ
シ化合物に付加反応させて得られる化合物等が挙げられ
る。
【0056】メラミン樹脂の原料 メラミン樹脂(B2 )を製造する際の原料となる化合物
としては、メラミンとホルムアルデヒド、更には変性の
ために用いられるメタノール、エタノール、プロパノー
ル、ブタノールなどのアルコール類が挙げられる。
【0057】[熱可塑性樹脂(A)および架橋剤(B)
への親水性付与法]上記熱可塑性ポリウレタン系樹脂
(A1 )、熱可塑性ポリエステル系樹脂(A 2 )、熱可
塑性ポリエチレン系樹脂(A3 )、ブロック化イソシア
ネート基含有化合物(B1 )、メラミン樹脂(B2 )を
製造する際に、公知の方法でアニオン性親水基、カチオ
ン性親水基、非イオン性親水基等を導入したり、あるい
は反応系に界面活性剤を配合し、それら熱可塑性樹脂
(A1 ),(A2 ),(A3 )や架橋剤(B1 ),(B
2 )を親水性とすることができ、水性樹脂液として適用
可能となる。
【0058】[熱可塑性樹脂(A)と架橋剤(B)の好
ましい配合比]上記イソシアネート基との反応性を有す
る官能基含有ポリウレタン系樹脂(A 1 ),ポリエステ
ル系樹脂(A2 ),ポリエチレン系樹脂(A3 )の1種
または2種以上とブロック化イソシアネート基含有化合
物(B1 )との好ましい配合比率は、イソシアネート基
と反応する官能基と活性イソシアネート基換算のブロッ
ク化イソシアネート基との当量比で1:0.5〜1.
2、より好ましくは1:0.8〜1:1.5の範囲であ
る。
【0059】また、上記メラミン樹脂との反応性を有す
る官能基含有ポリウレタン系樹脂(A1 ),ポリエステ
ル系樹脂(A2 ),ポリエチレン系樹脂(A3 )の1種
または2種以上とメラミン樹脂(B2 )の好ましい配合
比率は、重量配合比で100:2〜100:30、より
好ましくは100:10〜100:20の範囲である。
【0060】その理由は、上記熱可塑性樹脂(A1 ),
(A2 ),(A3 )の1種または2種以上と架橋剤(B
1 ),(B2 )を配合して樹脂液を合成するに際し、上
記好適配合比率の範囲を外れると、得られる配合樹脂の
焼付け処理後の分子中に活性イソシアネート基や未架橋
メラミン樹脂、あるいはこれらとの反応性官能基が多量
に残存することになり、焼付け加熱処理後の耐熱接着性
や耐溶剤性が不十分になるからである。
【0061】かくして得られる熱可塑性樹脂(A)と架
橋剤(B)を含有する塗料を金属板表面に均一に塗布
し、これら(A),(B)が架橋反応を起こすことのな
い温度条件、通常は30〜100℃、好ましくは60〜
80℃で乾燥すると、本発明の感熱接着性樹脂塗装金属
板が得られる。
【0062】[樹脂塗膜の好ましい付着量]上記塗膜の
付着量は、十分な接着強度を確保する意味から乾燥後の
塗膜付着量として、0.5g/m2 以上、好ましくは1
g/m2 以上にすべきである。しかして塗膜付着量が
0.5g/m2 未満の場合は、該塗膜で金属板表面を十
分に被覆できなくなるため、焼付け時の樹脂塗膜が均一
且つ平滑になり難く、部分的に接合不良を生じ易くなる
からである。
【0063】該樹脂塗膜付着量の上限値については、特
に接着強度の観点からは何ら限定されないが、付着量が
厚くなり過ぎる、単位処理面積当たりの塗膜原料コスト
が高くなるばかりでなく、樹脂液塗布後の乾燥時間も長
くなり、特に連続塗装ラインにおける連続製造工程でラ
イン速度が遅くなって生産性が低下し、結果として製造
コストが高くなる。従って、樹脂塗膜の付着量は30g
/m2 以下に抑えるのが良い。接着性と製造コストの両
面から、より望ましい樹脂塗膜の付着量は1〜10g/
2 の範囲である。
【0064】[許容される添加剤および樹脂成分の変
性]上記熱可塑性樹脂(A)と架橋剤(B)を含有する
塗布液の調整に当たっては、それらによって発現される
感熱型接着性能を阻害しない範囲で、部分架橋剤、希釈
溶媒、皮張り防止剤、レベリング剤、消泡剤、浸透剤、
造膜助剤、着色顔料、増粘剤等の各種添加剤、あるいは
密着性や耐食性向上のための微粉シリカ、コロイダルシ
リカ、シランカップリング剤等を必要に応じて適量添加
し、塗膜性能を更に高めることも可能である。
【0065】また、塗膜の耐候性や硬度、剪断強度等を
高めるため、上記熱可塑性樹脂(A)の一部をアクリル
変性やエポキシ変性したり、更には樹脂の低コスト化等
を目的として、ポリビニルアルコール樹脂、SBR樹
脂、クロロプレン樹脂、NBR樹脂、アクリル樹脂、塩
化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル
樹脂等の各種樹脂を、感熱接着性能を損なわない範囲で
適量混合することも可能である。
【0066】[製造方法について]次に、本発明に係る
感熱接着性樹脂塗装金属板の製法について説明する。こ
の樹脂塗装金属板は、前記した熱可塑性樹脂(A)と架
橋剤(B)を主成分として含む水性塗布液を、任意の塗
装方法で金属板の表面に塗布し乾燥させることにより金
属板表面で造膜させるが、この時の乾燥温度を、架橋反
応性発現温度未満(ブロック剤の離脱温度あるいはメラ
ミン樹脂の熱架橋温度未満)とすることによって、樹脂
塗膜乾燥後の塗膜表面にべとつきやブロッキングを生じ
ることなく、しかもスリッターや打ち抜き等の加工時に
疵が殆んどつかない程度の硬い皮膜となり、且つ熱架橋
反応性を備えた塗膜を形成することができる。
【0067】このとき、熱架橋性発現温度を超える温度
で塗膜を乾燥させると、造膜自体に問題を生じることは
ないが、該乾燥工程で塗膜中の架橋剤による硬化反応が
進行し、その後の焼付け接合時における塗膜の熱可塑性
が失われると共に、塗膜内の残存官能基量(架橋点)も
少なくなり、結果として高度な接合強度が得られなくな
る。即ち、メラミン樹脂を架橋剤(B)として用いた場
合は、メラミン樹脂と前記熱可塑性樹脂(A)中の官能
基との反応が進行し、またブロック化イソシアネートを
架橋剤として用いた場合は、ブロック化イソシアネート
基のブロック剤が離脱反応を起こして反応性に富む活性
イソシアネート基が塗膜中に再生し、該活性イソシアネ
ート基と前記熱可塑性樹脂(A)中の官能基の反応が起
こる。これらの反応が乾燥・造膜工程で進行すると、そ
の後の焼付け接合のための加熱初期過程で塗膜の熱可塑
性が失われると共に、塗膜内の官能基量(架橋点)も少
なくなり、結果として接合部での高度な接着強度が得ら
れなくなる。
【0068】こうした理由から、熱可塑性樹脂(A)と
架橋剤(B)を含む塗布液の塗布・造膜のための乾燥温
度は、熱架橋反応性発現温度未満(ブロック剤の離脱温
度あるいはメラミン樹脂の熱架橋反応温度未満)にする
必要がある。尚、乾燥・造膜の直後に充分な冷却工程を
設けられない場合は、塗膜構成樹脂の可塑化温度未満の
温度で乾燥すれば、コイル製品として巻き取るときにも
ブロッキング等が生じないので好ましい。
【0069】また、本発明の感熱型接着性樹脂塗装金属
板を所定の形状に加工してから接合すべき部位を重ね合
わせて接合する際には、加熱温度(焼付け温度)を、該
熱可塑性樹脂(A)の熱可塑化温度以上で、且つ該樹脂
(A)と架橋剤(B)が架橋反応性を発現する温度以
上、250℃以下に設定してやれば、高い接着強度を得
ることができる。しかして、焼付け温度が架橋反応性発
現温度(ブロック剤の離脱温度あるいはメラミン系樹脂
の熱架橋反応温度)未満である場合、該塗膜中に含まれ
る架橋剤(B)がブロック化イソシアネート基含有化合
物(B1 )であるときは、ブロック化イソシアネート基
からブロック剤の離脱が起こらず、活性なイソシアネー
ト基が再生されないため、また、該塗膜中に含まれる架
橋剤(B)がメラミン樹脂(B2 )であるときは、メラ
ミン樹脂との反応性を有する官能基とメラミン樹脂中の
メチロール基との架橋反応が起きないため、官能基との
架橋点ができず、結果として十分な接着強度が得られな
い。
【0070】一方、焼付け温度が熱可塑性発現温度未満
の低温では、焼付け加熱初期過程における樹脂の流動性
が乏しく、レベリング効果が得られないため均一な接着
層が形成されず、意図する様な接着強度が得られない。
【0071】更に、焼付け温度が250℃を超える高温
になると、架橋剤(B)としてブロック化イソシアネー
ト基を有する化合物(B1 )を用いた場合には、イソシ
アネート基の再生は充分に進行し、また、メラミン樹脂
(B2 )を用いた場合にも、前記官能基との架橋反応も
活発に進行するが、一方で該樹脂の熱分解が進行して塗
膜成分の変質が起こり、接着強度等が却って低下傾向を
示す様になるばかりでなく、樹脂の分解による黄変が進
行して外観も悪くなる恐れがでてくる。
【0072】以上の理由から、接着のための焼付け温度
は、該熱可塑性樹脂(A)の熱可塑化温度以上で、且つ
熱可塑性樹脂(A)と架橋剤(B)の熱架橋反応性発現
温度以上で250℃以下、望ましくは200℃以下にす
べきである。ところで、本発明を実施するに当たって
は、塗膜構成樹脂を水分散性または水溶性の塗布液とし
て使用するが、それによってもたらされる利点は下記の
通りである。
【0073】即ち水性樹脂であれば、樹脂塗装ラインに
おいて溶剤系樹脂液を用いる場合に生じる揮発有機溶剤
を除去するための特別な排気処理設備を設ける必要がな
く、設備コストの上昇を回避することができるからであ
る。更に、本発明を実施する際に用いられる樹脂液塗装
設備としては、例えば原板としてめっき金属板や化成処
理金属板を使用する場合は、既設のめっき処理あるいは
化成処理ラインの中に樹脂塗装設備を設けるだけでよ
く、特別な排気処理設備を設けた専用の樹脂塗装ライン
で製造する場合に比べて、生産性が高められるといった
利点も享受できる。
【0074】また、塗布液が有機溶剤系の場合には、溶
剤の揮発によって塗布液の固形分濃度や粘度が経時的に
変化し易く、塗膜の付着量制御が困難になるばかりでな
く塗装むらも生じ易い。しかしながら塗布液が水分散性
または水溶性であると、塗布液からの蒸発は極少量であ
るため固形分濃度や粘度の経時変化が少なく、安定した
塗装性が得られると共に付着量制御も容易となる。
【0075】ところで、金属表面への上記樹脂含有塗布
液の塗装方法は一切制限されないが、一般的な方法とし
ては、例えば表面を清浄化し、あるいは塗装前処理(例
えばリン酸塩処理、クロメート処理)等を施した金属板
あるいは長尺金属帯の表面に、ロールコーター法、スプ
レー法、カーテンフローコーター法等を用いて樹脂希釈
液を塗布する方法が挙げられる。しかし、塗膜厚さの均
一性や処理コスト、塗装効率等を総合的に考慮して最も
好ましいのは、ロールコーターで塗布する方法である。
尚上記樹脂塗膜は、金属板の片面のみあるいは両面に形
成することができる。
【0076】本発明で用いられる素地金属板の種類にも
一切制限がなく、最も一般的な軟鋼板やステンレス鋼板
をはじめとする各種合金鋼板のほか、AlおよびAl合
金板、CuおよびCu合金板、TiおよびTi合金板、
めっき金属板(亜鉛および亜鉛合金系めっき鋼板、Al
およびAl合金系めっき鋼板、銅系めっき鋼板、Ni系
めっき鋼板、Cr系めっき鋼板、亜鉛めっきAlおよび
Al合金板等の各種めっき金属板)、化成処理(りん酸
塩処理、クロメート処理等)金属板、更には塗装金属板
等に広く活用できる。
【0077】かくして得られる本発明の感熱接着性樹脂
塗装金属板は、前述の如く自動車や家庭電気製品、金属
製家具用の外板材等や建築用材料等と広く利用される
が、その実用化に当たっては、積層接合の前または後の
任意の時期に、接合面以外の部位に例えばアクリル系樹
脂塗料、メラミン系樹脂塗料、ポリエステル系樹脂塗料
などをスプレー法、静電塗装法、電着法等の各種塗装方
法によって塗装することも可能である。
【0078】例えば、本発明の樹脂塗装金属板を所定形
状に打ち抜き加工し、2枚をかしめ合わせた後に、上記
の塗布液を表面に塗布して不完全焼付け処理を行い、上
塗り塗料を焼付ける時の熱を利用して、前記感熱型接着
性樹脂塗膜の架橋反応を同時に起こさせ、接合部に高度
な接着強度を発現させることもできる。即ち、この様な
方法を採用すれば、上塗り塗膜の焼付けと感熱接着性塗
膜の架橋反応による接合を同時に行えるという利点も享
受できる。
【0079】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明の構成および作
用効果を具体的に説明するが、本発明はもとより下記実
施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣
旨に適合し得る範囲で適当に変更して実施することも勿
論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的に含ま
れる。
【0080】実施例1 金属板に塗布するための樹脂塗布液調製用の原料とし
て、下記の有機化合物を使用した。 1.水酸基含有ポリウレタン系樹脂(a) :官能基含有量
(固形分換算)20〜30 KOH mg/g 、分子量50,0
00〜200,000 2.水酸基含有ポリエステル系樹脂(b) :官能基含有量
(固形分換算)20〜30 KOH mg/g 、分子量50,0
00〜200,000 3.カルボキシル基含有ポリウレタン系樹脂(c) :官能
基含有量(固形分換算)20〜30 KOH mg/g 、分子量
50,000〜200,000 4.カルボキシル基含有ポリエチレン系樹脂(d) :官能
基含有量(固形分換算)20〜30 KOH mg/g 、分子量
50,000〜200,000 5.カルボキシル基含有ポリエステル系樹脂(e) :官能
基含有量(固形分換算)20〜30 KOH mg/g 、分子量
50,000〜200,000 6.アミノ基含有ポリウレタン系樹脂(f) :官能基含有
量(固形分換算)20〜30 KOH mg/g 、分子量50,
000〜200,000 7.アミノ基含有ポリウレタン系樹脂、カルボキシル基
含有ポリエチレン系樹脂、水酸基含有ポリエステル系樹
脂(g) :官能基含有量(固形分換算)20〜30 KOH m
g/g 、分子量50,000〜200,000 8.ブロック化イソシアネート基含有有機化合物(h) :
官能基含有量(固形分換算)1〜20重量%(NCOと
して換算)、分子量200〜600 9.メラミン樹脂(i) :官能基含有量(固形分換算)3
5〜55重量%(NH2CH2OHとして換算)、分子量200
〜600
【0081】また、比較合成例として、熱架橋反応を生
じるのに必要な官能基を全く含有しない熱可塑性樹脂も
使用した。 10.イソシアネート基との反応性を示す官能基を含有
しないポリウレタン系樹脂(j) :官能基含有量(固形分
換算)0 KOH mg/g 、分子量50,000〜200,0
00 11.イソシアネート基と反応性を示す官能基を含有し
ないポリエチレン系樹脂(k) :官能基含有量(固形分換
算)0 KOH mg/g 、分子量50,000〜200,00
0 12.イソシアネート基と反応性を示す官能基を含有し
ないポリエステル系樹脂(l) :官能基含有量(固形分換
算)0 KOH mg/g 、分子量50,000〜200,00
0 13.メラミン樹脂と反応性を示す官能基を含有しない
ポリウレタン系樹脂(m) :官能基含有量(固形分換算)
0 KOH mg/g 、分子量50,000〜200,000 14.メラミン樹脂と反応を示す官能基を含有しないポ
リエチレン系樹脂(n) :官能基含有量(固形分換算)0
KOH mg/g、分子量50,000〜200,000 15.メラミン樹脂と反応性を示す官能基を含有しない
ポリエステル系樹脂(o) :官能基含有量(固形分換算)
0 KOH mg/g 、分子量50,000〜200,000 上記の各種有機化合物(a) 〜(o) を、下記表1に示す比
率で配合し、金属板に塗布するための塗布液A〜Mを作
製した。
【0082】尚、表1に示した各種塗布液の中で、N
o.A〜Gについては、樹脂中に含まれる再生イソシア
ネート基/活性水素基の当量比あるいはメラミン樹脂と
の反応性を示す官能基とメラミン樹脂との当量比が適当
な範囲内に調整されており、一方、No.H〜Mについ
ては、どちらか一方が官能基を有しておらず、熱可塑性
は有しているものの熱架橋性は有していない。また、表
1中に示した熱可塑化温度と熱架橋性発現温度は、以下
の方法で測定した値をいう。
【0083】[熱可塑化温度の測定法]樹脂液をテフロ
ン板上において80℃で乾燥させて得たフィルムを、所
定温度に加熱した熱板上において溶融する温度を測定
し、熱可塑化温度とした。 [熱架橋性発現温度の測定法]樹脂液をテフロン板上に
おいて80℃で乾燥させて得たフィルムを、示差熱分析
にかけて保護剤の離脱温度を測定し、熱架橋性発現温度
とした。
【0084】
【表1】
【0085】次に、電気純Znめっき鋼板(めっき付着
量:20g/m2 、板厚0.6mm)の表面に、塗布型
クロメート処理(クロメート付着量:50mg/m2
を施し、これを樹脂塗布用被処理金属板とした。該被処
理金属板の表面に、表1に示した各種塗布液A〜Mをロ
ールコーターにて所定膜厚塗布した後、熱風乾燥炉内で
移送しながら、所定板温(乾燥温度)で樹脂塗膜の乾燥
・造膜を行なった後、得られた各種樹脂塗装鋼板につい
て、下記の方法で塗膜性能評価試験を行なった。
【0086】1.塗布−乾燥後(焼付け前)の性能評価 (1)耐疵付き性(塗膜硬度) 樹脂液の塗布−乾燥後の塗装金属板の塗膜硬度を調査す
るため、JIS−K5400に規定される鉛筆硬度試験
を実施し、塗膜表面の耐疵付き性を評価した。判定は、
各種硬度の鉛筆で塗膜表面を計5回引っかき、引っかき
疵が2本以上ついた1ランク下の鉛筆硬度を塗膜硬度と
した。評価基準は、下記の通りである。 〈耐疵付き性〉 ◎ 優れる : 鉛筆硬度 H以上 ○ 良好 : 〃 HB〜F × 劣る : 〃 B以下
【0087】(2)耐食性(耐白錆性) 樹脂液の塗布−乾燥後の塗装金属板の耐食性をJIS−
Z2371に示される5重量%塩水噴霧試験に供し、耐
白錆性により耐食性を評価した。即ち、塗膜の下層にあ
る電気純Znめっき層の腐食による1%白錆発生時間に
よって評価した。評価基準は、下記の通りである。 〈耐白錆性〉 ◎ 優れる : 240h以上で白錆発生 ○ 良好 : 120〜240hで白錆発生 △ やや劣る: 48〜120hで白錆発生 × 劣る : 48h以内で白錆発生
【0088】2.焼付け後の性能評価 (3)自己接着性(感熱自己接着強度) 樹脂液の塗布−乾燥後の塗装金属板を25mm×100
mmのサイズに切断した後、塗膜面同士を25mm×1
2mmの面積で重ね合わせ、単純重ね合わせ材(シング
ルラップジョイント)を作製した。この重ね合わせ材
を、所定温度(接着温度)の加熱プレス装置を用いて2
0分間加圧(3kgf/cm2 )してから冷却し、得ら
れた試験片を、JIS K−6857に準じて、下記に
示す条件の恒温恒湿試験に供し、その後上記(3)と同
様の単軸引張り試験を行なうことにより、接着強度の耐
久性(接着性の耐経時劣化)を調査した。
【0089】〔恒温恒湿試験〕 温度:25℃、相対湿度:90%RH、試験時間:72
0h 評価基準は、下記の通りである。 〈耐白錆性〉 ◎ 優れる : 接着強度130kgf/cm2 ○ 良好 : 〃 70〜130kgf/cm2 △ やや劣る: 〃 40〜70kgf/cm2 × 劣る : 〃 40kgf/cm2 未満
【0090】(4)耐熱接着性 樹脂液の塗布−乾燥後の塗装金属板を30mm×75m
mのサイズに切断し、塗膜面同士を30mm×10mm
の面積で重ね合わせて単純重ね合わせ材(シングルラッ
プジョイント)を作製した。この重ね合わせ材を、所定
温度(接着温度)の加熱プレス装置を用いて20分間加
圧(3kgf/cm2 )してから冷却し、得られた試験
片を、60℃の大気雰囲気下にて上記(3)と同様の単
軸引張り試験を行なうことにより、高温環境下での接着
強度(耐熱接着性)を調べた。評価基準は、下記の通り
である。 〈耐熱接着性〉 ◎ 優れる : 接着強度80kgf/cm2 以上 ○ 良好 : 〃 50〜80kgf/cm2 × 劣る : 〃 50kgf/cm2 未満
【0091】(5)耐食性(耐白錆性) 焼付け後の耐食性を評価するため、まず樹脂液塗布−乾
燥後の塗装金属板を70mm×150mmのサイズに切
断し、表2に示す所定温度で加熱焼付けを行い、端面お
よび裏面をテープシールした後、上記(2)と同様にし
てJIS−Z2371に示される5重量%塩水噴霧試験
に供した。耐食性は、耐白錆性で評価し、即ち、塗膜の
下層にある電気純Znめっき層の腐食による1%白錆発
生時間によって評価した。評価基準は、下記の通りであ
る。 〈耐白錆性〉 ◎ 優れる : 240h以上で白錆発生 ○ 良好 : 120〜240hで白錆発生 △ やや劣る: 48〜120hで白錆発生 × 劣る : 48h以内で白錆発生
【0092】(6)耐溶剤性 加熱焼付け後の樹脂塗膜の耐溶剤性を評価するため、ま
ず樹脂液塗布−乾燥後の塗装金属板を70mm×150
mmのサイズに切断し、表2に示す所定温度で加熱焼付
けを行ない、得られた試験片の表面で、トルエンを含ま
せたガーゼを20回慴動させて塗膜の劣化状態を評価し
た。評価基準は、下記の通りである。 〈耐溶剤性〉 ◎ 優れる : 異常なし ○ 良好 : やや膨潤する程度 × 劣る : 塗膜の溶解発生 上記性能評価試験結果は表2〜9に示す通りであり、そ
れらの結果より次の様に考えることができる。
【0093】本発明で規定された官能基を所定当量比で
有する塗布溶液A〜Gを使用し、本発明で規定する好ま
しい付着量、乾燥温度、焼付け温度で造膜して得た塗装
鋼板は、優れた耐疵付き性と耐食性(両性能は乾燥後の
性能)および自己接着性、布との接着性、接着耐久性、
耐熱接着性、耐食性、耐溶剤性(加熱焼付け後)を有し
ていることがわかる。
【0094】一方、塗膜を有しないもの(No.11)
は、全ての性能に劣る。また、本発明で規定された条件
を満足する塗布溶液A〜Gを用いた場合であっても、本
発明で規定する乾燥温度が樹脂の熱架橋性発現温度を超
える場合、加熱焼付け温度が規定温度範囲外である場合
には、塗膜表面にピンホール等のミクロ欠陥が多い、焼
付け時に均一且つ平滑な接着層が形成されない、架橋点
が少ない、造膜時に既に架橋反応が進行している、焼付
け時の架橋反応が不十分である、焼付け時に塗膜の熱劣
化が起こる、等いずれかの理由により、耐食性(乾燥後
および焼付け後の性能)や自己接着性、布との接着性、
高温接着性、耐溶剤性(焼付け後の性能)のうち、1つ
以上の性能が劣っていることが分かる。また、本発明で
規定する好ましい付着量に満たない場合(参考例)、接
着層としての付着量不足、あるいは不均一付着となり、
いずれの性能も乏しいものとなっている。
【0095】特に塗膜乾燥を高温で行った場合には、造
膜のための乾燥時に保護されたイソシアネート基の離脱
による塗膜内での活性水素基との架橋反応あるいはメラ
ミン樹脂の架橋反応が起こり、樹脂の硬化反応によって
塗膜の熱可塑性が消失するため、その後に塗膜の加熱焼
付けを行っても、塗膜面同士の接着面の一体化および架
橋反応がほとんど起こらず、本発明で意図する様な感熱
型接着性が得られなくなる。
【0096】また、塗布液H〜Mについては、前述した
様に塗布液中の熱可塑性樹脂が、イソシアネート基また
はメラミン樹脂との反応性を示す官能基を有していない
ため、塗膜の焼付けを行っても、熱可塑化による溶融一
体化のみによる接着しか得られず、塗膜接着層内での架
橋反応による高度な接着強度が得られない。またこの場
合の接着層は、焼付け後においても焼付け前と同様の熱
可塑性を有したままであるため、焼付け後の高温接着性
や耐溶剤性等の性能が不十分であることがわかる。
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【0100】
【表5】
【0101】
【表6】
【0102】
【表7】
【0103】
【表8】
【0104】
【表9】
【0105】実施例2 電気純亜鉛めっき鋼帯(めっき付着量:20g/m2
板厚0.6mm)の表面に塗布型クロメート処理(クロ
メート付着量:50mg/m2 )を施し、これを樹脂塗
装用の被処理金属鋼帯とした。該被処理金属鋼帯の表面
に、下記の水系樹脂塗布液Xおよび溶剤系樹脂塗布液Y
をロールコーターで乾燥膜厚が所定の厚さ(5.0g/
2 )となる様に塗布し、この時の金属鋼帯の塗装処理
長さ当たりの乾燥膜厚の変動量を調べた。結果を図1に
示す。 1.水分散型(ポリウレタン系樹脂−メラミン樹脂)塗
布液X 2.溶剤型(ポリウレタン系樹脂−メラミン樹脂)塗布
液Y
【0106】図1からも明らかである様に、水分散型の
樹脂塗布液Xの場合は、狙い塗膜厚さに対し、±0.2
g/m2 しか変動していない。これに対し、溶剤系の樹
脂液Yの場合は、溶媒の蒸発によって塗布当初から塗布
液の樹脂固形分濃度と粘度が上昇し始め、それに伴い乾
燥塗膜厚さが上昇したため、逐次有機溶剤を添加して樹
脂固形分濃度と粘度を調整したが、乾燥塗膜厚さは最大
で0.9g/m2 も変動した。
【0107】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されているの
で、乾燥状態でのべとつきやブロッキング性がなく、し
かもスリッターや打抜き加工等で皮膜が疵つくこともな
く、しかも該塗膜層を加熱焼付け処理して架橋反応させ
た後は、優れた接着性、接着耐久性、耐高温接着性、耐
溶剤性、耐食性等を発現し得る樹脂塗装金属板を提供し
得ることになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】水性分散型樹脂塗布液を使用した場合と溶剤型
樹脂塗布液を使用した場合の、金属帯長手方向の乾燥塗
膜厚さの変動量を対比して示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI B32B 27/06 B32B 27/06 27/18 27/18 Z 27/40 27/40 (56)参考文献 特開 昭63−162886(JP,A) 特開 平6−182929(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 15/08

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属板の表面を、メラミン樹脂との反応
    性、またはイソシアネート基との反応性を示す官能基を
    有する水溶性または水分散性の熱可塑性樹脂(A)と架
    橋剤(B)とを含有する塗膜で被覆してなる感熱接着性
    樹脂塗装金属板であって、 前記熱可塑性樹脂(A)は、ポリエチレン系樹脂、ポリ
    エステル系樹脂、及びポリウレタン系樹脂の1種または
    2種以上からなる熱可塑性樹脂であって、メラミン樹脂
    との反応性を示す官能基が、水酸基および/またはカル
    ボキシル基であり、イソシアネート基との反応性を示す
    官能基が、水酸基、アミノ基、カルボキシル基よりなる
    群から選択される1種または2種以上であり、 前記架橋剤(B)は、活性メチロール基を有するメラミ
    ン樹脂またはブロックイソシアネート基含有化合物で
    あることを特徴とする感熱接着性樹脂塗装金属板。
  2. 【請求項2】 熱可塑性樹脂(A)が80〜200℃の
    温度範囲で可塑化し、また熱可塑性樹脂(A)と架橋剤
    (B)とが、上記熱可塑性樹脂(A)の可塑化温度以
    上、230℃以下の温度範囲で架橋反応を起こすもので
    ある請求項1に記載の感熱接着性樹脂塗装金属板。
  3. 【請求項3】 熱可塑性樹脂(A)と架橋剤(B)を含
    む塗膜の付着量が、固形分換算で0.5〜60g/m2
    である請求項1または2に記載の感熱接着性樹脂塗装金
    属板。
  4. 【請求項4】 請求項1〜のいずれかに記載の熱可塑
    性樹脂(A)と架橋剤(B)とを含む塗布液を金属板の
    表面に塗布した後、上記(A)と(B)が架橋反応を起
    こさない温度条件で乾燥して造膜することを特徴とする
    感熱接着性樹脂塗装金属板の製法。
  5. 【請求項5】 請求項1〜のいずれかに記載の感熱接
    着性樹脂塗装金属板同士または該感熱接着性樹脂塗装金
    属板と他の被着材を重ね合わせ、熱可塑性樹脂(A)と
    架橋剤(B)を含む塗膜が架橋反応を生じる温度以上、
    250℃以下の温度で焼付けて接合することを特徴とす
    る感熱接着性樹脂塗装金属板の接合方法。
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