JP3563130B2 - 資機材搬送装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【産業上の利用分野】
本発明は、コンクリート等の資材やコンクリート打設用機材等の資機材を搬送する資機材搬送装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来から、ダム建設には、面状に広くコンクリートを打設していくＲＣＤ（Ｒｏｌｌｅｒ Ｃｏｍｐａｃｔｅｄ Ｄａｍ−ｃｏｎｃｒｅｔｅ）工法や拡張レヤー打設工法等が採用されており、該工法は、すでにコンクリート打設で形成されたダム堤体上に一層ずつコンクリート打設層を積み重ねてダム堤体を上方に構築していくものである。
そして、上記の場合、すでに形成されたダム堤体上に、新たな打設を行うための、コンクリート等の資材やコンクリート打設用機材等の資機材を搬送する必要があり、従来は、コンクリート混練設備等をダム堤頂部近傍であって該堤頂部よりやや高い位置に設け、これよりさらに高い位置にケーブルクレーンを設置し該ケーブルクレーンを用いて資機材を搬送したり、ダムの掘削面にインクライン設備を設け該インクライン設備を用いてダム堤体上に資機材を降ろしたり、さらにはベルトコンベアで河床部から搬送する方法等が採用されている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
上記したケーブルクレーンを用いる場合には、主に以下の問題があった。
（１）コンクリート混練設備及びケーブルクレーンを設置するための広い用地がダム堤頂部付近に必要となるため、該ダム堤頂部付近の山を大きく削り取って用地を確保する必要があり、自然環境保全や景観上の観点から好ましくない。
（２）ケーブルクレーンのバケット等が作業者の上方を移動するため作業者の安全確保に一層の注意を払わなければならない。
【０００４】
上記したインクライン設備を用いる場合には、主に以下の問題があった。
（１）ケーブルクレーンの場合と同様、コンクリート混練設備を設置するための広い用地がダム堤頂部付近に必要となるため、該ダム堤頂部付近の山を大きく削り取って用地を確保する必要があり、自然環境保全や景観上の観点から好ましくない。
（２）台車を走行させるレール設備を、ダムの掘削面のダム頂部から河床に至る間に設置しなければならないため、ダムの打設開始に先立ってレール設備下面全体の岩盤について岩盤検査を受ける必要があり、またレールを前もって上から下まで全部を敷設しなければ稼働できない構造であり、よって、ダムコンクリートの打設開始に対する工程上の制約がある。加えてコンクリート打設の進捗と共に、基礎コンクリートの撤去などの作業を行わなければダムコンクリートの打設作業を進行できない。したがって、必然的に工期が長くなってしまう。
【０００５】
上記したベルトコンベアで河床部から搬送する場合には、以下の問題があった。
（１）コンクリート打設面の上昇に伴うベルトコンベアラインの盛替が大変であり、また、ベルトコンベアの敷設に伴う地山の切取りが発生するため、必然的に工期が長くなってしまう。
【０００６】
本発明は、従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、自然環境保全や景観上の観点から好ましく、また安全性が高く、さらに工期を大幅に短縮できるダム建設の施工に用いて好適な資機材搬送装置を提供するものである。
【０００７】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明の請求項１記載の資機材搬送装置は、すでにコンクリート打設により形成されたダム堤体上に載置される架台と、資機材を搭載可能な搬送器と、前記架台に設けられ、前記搬送器に連結された線状体を巻上げ及び繰出す巻上装置とを有し、前記架台は、同時伸縮可能な複数の第一脚部と、これら第一脚部とは個別に同時伸縮可能な複数の第二脚部とを具備し、前記第一脚部および前記第二脚部の下端部には、最大ストローク時の長さがコンクリートの面状打設の二層分の厚さより大きく設定され、かつ最大ストローク量が一層分の厚さより大きく設定された伸縮部が設けられていることを特徴としている。
【０００８】
本発明の請求項２記載の資機材搬送装置は、すでにコンクリート打設により形成されたダム堤体上に載置される架台と、資機材を搭載可能な搬送器と、前記架台以外の位置に設けられ、前記搬送器に連結された線状体を巻上げ及び繰出す巻上装置と、前記架台に設けられ、前記線状体がかけられるプーリとを有し、前記架台は、同時伸縮可能な複数の第一脚部と、これら第一脚部とは個別に同時伸縮可能な複数の第二脚部とを具備し、前記第一脚部および前記第二脚部の下端部には、最大ストローク時の長さがコンクリートの面状打設の二層分の厚さより大きく設定され、かつ最大ストローク量が一層分の厚さより大きく設定された伸縮部が設けられていることを特徴としている。
【０００９】
本発明の請求項３記載の資機材搬送装置は、請求項１又は２記載のものに加えて、前記搬送器を二つ有しており、前記巻上装置は、それぞれの搬送器に連結された線状体をそれぞれ個別の回転体に逆向きに巻き、かつそれら回転体をクラッチを介して連結してなることを特徴としている。
【００１０】
本発明の請求項４記載の資機材搬送装置は、すでにコンクリート打設により形成されたダム堤体上に載置される架台と、資機材を搭載可能とされ前記架台の少なくとも下方で昇降する搬送器と、前記架台に設けられ、前記搬送器により運搬された資材を仮受けする仮受ホッパーとを有し、前記架台は、同時伸縮可能な複数の第一脚部と、これら第一脚部とは個別に同時伸縮可能な複数の第二脚部とを具備し、前記第一脚部および前記第二脚部の下端部には、最大ストローク時の長さがコンクリートの面状打設の二層分の厚さより大きく設定され、かつ最大ストローク量が一層分の厚さより大きく設定された伸縮部が設けられていることを特徴としている。
【００１１】
本発明の請求項５記載の資機材搬送装置は、請求項１乃至４のいずれか一項に記載のものに加えて、前記第一脚部を前記第二脚部に対し水平方向に移動させる横移動機構を具備することを特徴としている。
【００１２】
本発明の請求項６記載の資機材搬送装置は、請求項１乃至５のいずれか一項に記載のものに加えて、前記第一脚部及び第二脚部は、下端部が先細テーパ状に形成されていることを特徴としている。
【００１３】
本発明の請求項７記載の資機材搬送装置は、請求項６記載のものに加えて、前記第一脚部及び第二脚部の先細テーパ状の下端部は、着脱自在のシートで被覆されていることを特徴としている。
【００１４】
【作用】
本発明の請求項１記載の資機材搬送装置によれば、すでにコンクリート打設により形成されたダム堤体上に架台を設置し、該架台に設けられた巻上装置で線状体を巻上げ及び繰出すことで搬送器を昇降させて、河床部側から搬入されたコンクリート等の資機材をすでにコンクリート打設により形成されたダム堤体上に運搬する。そして、第一脚部及び第二脚部のいずれか一方を伸長状態として架台を支持しつつ他方を縮長状態として、コンクリートを面状に打設し、そして、縮長状態にあったものを伸長状態として架台をジャッキアップし伸長状態にあったものを縮長状態として、該縮長状態とされたものの存在でコンクリートが打設されなかった部分に充填材を充填し、このようにコンクリート打設の進捗にともなって架台を上方にステップアップさせることで、該架台に設けられた巻上装置を上昇させることができる。
上記のように巻上装置をコンクリート打設の進捗にともなって上昇させることができ、搬送器の上昇位置を高くすることができることから、すでに打設されたダム堤体を利用して河床部側から資機材をダム堤体上に運搬できることになるため、コンクリートを混練製造するコンクリート混練設備等を河床部に設置することができ、またケーブルクレーンの数も少なくできることになり、よって、該コンクリート混練設備及びケーブルクレーンを設置するための用地確保のためにダム堤頂部付近の山を大きく削り取る必要がなくなるとともに、ケーブルクレーンのバケット等が作業者の上方を移動する機会も少なくなる。
また掘削面に設けられるのではなくすでに形成されたダム堤体に設けられるものであるため、掘削面の岩盤検査及び基礎構築が必要なくなり、またコンクリート打設の進捗とともに延長できることから前もって上から下まで全部布設する必要もなくなり、さらにはダムコンクリート打設の進捗と共に下から基礎を順次撤去する必要もなくなる。加えて、盛替も容易であり地山の切取りも不要となる。
【００１５】
本発明の請求項２記載の資機材搬送装置によれば、すでにコンクリート打設により形成されたダム堤体上に架台を設置し、巻上装置で線状体を巻上げ及び繰出すことで、架台に設けられたプーリにかけられた線状体で搬送器を昇降させて、河床部側から搬入されたコンクリート等の資機材をすでにコンクリート打設により形成されたダム堤体上に運搬する。そして、第一脚部及び第二脚部のいずれか一方を伸長状態として架台を支持しつつ他方を縮長状態として、コンクリートを面状に打設し、そして、縮長状態にあったものを伸長状態として架台をジャッキアップし伸長状態にあったものを縮長状態として、該縮長状態とされたものの存在でコンクリートが打設されなかった部分に充填材を充填し、このようにコンクリート打設の進捗にともなって架台を上方にステップアップさせることにより、プーリを上昇させることができる。
上記のようにプーリをコンクリート打設の進捗にともなって上昇させることができ、搬送器の上昇位置を高くすることができることから、すでに打設されたダム堤体を利用して河床部側から資機材をダム堤体上に運搬できることになるため、コンクリートを混練製造するコンクリート混練設備等を河床部に設置することができ、またケーブルクレーンの数も少なくできることになり、よって、該コンクリート混練設備及びケーブルクレーンを設置するための用地確保のためにダム堤頂部付近の山を大きく削り取る必要がなくなるとともに、ケーブルクレーンのバケット等が作業者の上方を移動する機会も少なくなる。
また掘削面に設けられるのではなくすでに形成されたダム堤体に設けられるものであるため、掘削面の岩盤検査及び基礎構築が必要なくなり、またコンクリート打設の進捗とともに延長できることから前もって上から下まで全部布設する必要もなくなり、さらにはダムコンクリート打設の進捗と共に下から基礎を順次撤去する必要もなくなる。加えて、盛替も容易であり地山の切取りも不要となる。さらに、プーリを架台に設け、巻上装置を架台以外の位置に設けることになるため、搭載物を含む架台の全重量を増大させることがない。
【００１６】
本発明の請求項３記載の資機材搬送装置によれば、巻上装置は、それぞれの搬送器に連結された線状体をそれぞれ個別の回転体に逆向きに巻いてなるため、回転体を一体回転させることにより、一方の搬送器を上昇させると他方の搬送器が下降することになる。これにより、下降する搬送器が上昇する搬送器のカウンタウエイト代りとなる。
【００１７】
本発明の請求項４記載の資機材搬送装置によれば、すでにコンクリート打設により形成されたダム堤体上に架台を設置し、架台の少なくとも下方で搬送器を昇降させて、河床部側から搬入されたコンクリート等の資機材をすでにコンクリート打設により形成されたダム堤体上に運搬し、架台に設けられた仮受ホッパーで仮受けさせる。そして、第一脚部及び第二脚部のいずれか一方を伸長状態として架台を支持しつつ他方を縮長状態として、コンクリートを面状に打設し、そして、縮長状態にあったものを伸長状態として架台をジャッキアップし伸長状態にあったものを縮長状態として、該縮長状態とされたものの存在でコンクリートが打設されなかった部分に充填材を充填し、このようにコンクリート打設の進捗にともなって架台を上方にステップアップさせることにより、仮受ホッパーを上昇させることができる。
上記のように架台の下方で昇降する搬送器により、すでに打設されたダム堤体を利用して河床部側から資機材をダム堤体上に運搬できることになるため、コンクリートを混練製造するコンクリート混練設備等を河床部に設置することができ、またケーブルクレーンの数も少なくできることになり、よって、該コンクリート混練設備及びケーブルクレーンを設置するための用地確保のためにダム堤頂部付近の山を大きく削り取る必要がなくなるとともに、ケーブルクレーンのバケット等が作業者の上方を移動する機会も少なくなる。
また、架台には仮受ホッパーが設けられているため、該仮受ホッパーをコンクリート打設の進捗とともに容易に上昇させることができる。
【００１８】
本発明の請求項５記載の資機材搬送装置によれば、第一脚部を第二脚部に対し水平方向に移動させる横移動機構を具備するため、第一脚部及び第二脚部のいずれか一方が伸長状態にあり他方が縮長状態にある場合に、横移動機構により縮長状態にあるものを常に一方向に水平移動させれば、架台が、ステップアップ毎に横移動することになり、よって、ダム堤体の河床部側の側壁面が傾斜する場合に、コンクリート打設の進捗に伴った河床部に対し反対方向へのステップバックができる。
【００１９】
本発明の請求項６記載の資機材搬送装置によれば、第一脚部及び第二脚部は、下端部が先細テーパ状に形成されているため、コンクリートに埋った状態からの抜けが容易となる。
【００２０】
本発明の請求項７記載の資機材搬送装置によれば、第一脚部及び第二脚部の先細テーパ状の下端部は、着脱自在のシートで被覆されているため、シートの介在によりコンクリートに埋った状態からの抜けがさらに容易となる。
【００２１】
【実施例】
本発明の第１実施例を図１〜図９を参照して説明する。なお、第１実施例において、ダム堤体の形成は、面状に広くコンクリートを打設していくＲＣＤ工法や拡張レヤー打設工法等が採用される。
【００２２】
図中符号１は既にコンクリート打設により形成されたダム堤体、符号２は、ダム堤体１の下流側壁面４に沿って上面まで設置された第１実施例の資機材搬送装置をそれぞれ示している。
図１〜図３に示すように、資機材搬送装置２は、すでに形成されたダム堤体１の側壁面４側の上面に設けられた架台７と、該架台７と河床部３とを結ぶよう、すでに形成されたダム堤体１の側壁面４に沿って設けられたレール装置８とを有している。
【００２３】
レール装置８には、ダム堤体１の傾斜した側壁面４に該側壁面４に平行をなして上下に延在設置される四本の昇降ガイドレール１０がダム堤体１に図示せぬアンカーボルト及びブラケット等で固定されて設けられており、これら昇降ガイドレール１０の一側の二本間には、これら昇降ガイドレール１０により移動が案内される搬送器である一方のバケット１１が、他側の二本の昇降ガイドレール１０間にも、これら昇降ガイドレール１０により移動が案内される他方のバケット１１が設けられている。なお、これら昇降ガイドレール１０は図示は略すが複数の分割体が連結されて構成されており、該分割体を既存のものの上側に連結すること及び必要に応じてアンカーボルト等で側壁面４に固定することで上方への延長が可能となっている。また、昇降ガイドレール１０の下部は、図３に示すように、河床部３に設けられた穴部１３の底部まで延在されており、その上部は、ダム堤体上面より上側で若干折り曲げられて架台７の上部に連結されている。
【００２４】
ここで、昇降ガイドレール１０は、バケット１１側に開口するとともに長さ方向に延在するガイド溝１５を有する断面コ字状をなしており、二つのバケット１１は、ガイド溝１５内に位置して、昇降ガイドレール１０にその長さ方向に沿った移動のみが許容されるよう走行が案内される昇降ローラ１６を両側面の上下に合計四つ有するとともに、これら昇降ローラ１６を昇降ガイドレール１０のガイド溝１５内に位置させた状態で上方に開口する上部開口部１７を有している。
また、バケット１１には、ダム堤体１に対し車輪から見て反対側の面に基端側が揺動自在に支持された状態のアーム１９が設けられており、該アーム１９の先端側は、該バケット１１を昇降させるワイヤ（線状体）２０に連結されている。なお、バケット１１の上部には、上部蓋体２１が必要に応じて取付可能となっている。
【００２５】
このような構成のバケット１１は、コンクリート等の資材を搬送する場合は、上部蓋体２１が外された状態で用いられ、上部開口部１７からコンクリートを受取った後、ワイヤ２０で吊られて昇降ガイドレール１０に沿って上昇し、昇降ガイドレール１０の上部所定位置に至ると、上側の昇降ローラ１６の移動が図示せぬ規制手段で規制され、さらなるワイヤ２０の吊り上げで、下側の昇降ローラ１６が昇降ガイドレール１０の図示せぬ切欠きを通過してガイド溝１５から外れる。このようにして上側の昇降ローラ１６を中心に、図１に示すようにバケット１１が回転し、上部開口部１７を下方に向かせて、架台７に設置された後述する上部ホッパー２３にコンクリートを排出するようになっている。一方、コンクリートを搬送しない場合等には、上部蓋体２１を取り付け、該上部蓋体２１上にコンクリート荷重相当分のダンプカー２４等の機材を載置してこれを搬送することができるようになっている。
【００２６】
昇降ガイドレール１０の下部は、図３に示すように、河床部３に設けられた穴部１３の底部まで延在しており、該穴部１３には、上部開口部２６からコンクリートを受取って、ある程度のコンクリートを一時貯留するとともに、下方に位置するバケット１１に、各バケット１１毎に開閉可能とされた下部開口部２７からコンクリートを供給する下部ホッパー２８が設けられている。ここで、ダム下流の河床部３には、諸材料を所定の配合比率で混練してコンクリートを製造する図示せぬコンクリート混練設備が設けられており、このコンクリート混練設備から、ダンプカー２４等で下部ホッパー２８にコンクリートが運搬されることになるため、ダンプカー２４からのコンクリートの受取りを容易とするよう、下部ホッパー２８は穴部１３内に、その上面を河床部３の表面に略合せた状態で設けられている。
【００２７】
次に、架台７は、図１及び図２に示すように、略矩形状をなして水平延在する内側台部３０を有しており、該内側台部３０には、設置時に上流側（図１左側）となる側面及び同下流側側面の両端近傍に、鉛直方向に沿って合計四本の内側脚部（第一脚部）３１がそれぞれ鉛直方向位置を合わせて設けられている。
これら内側脚部３１の下端部には、先細テーパ状をなすとともに図示せぬ油圧シリンダ等で駆動されて伸縮する内側伸縮部３２がそれぞれ設けられており、これら内側伸縮部３２は、すべて同時に伸長又は縮長され、水平面に立つことにより伸縮いずれの状態においても内側台部３０を水平に維持するように同じ長さストロークするようになっている。
【００２８】
また、架台７は、内側台部３０の上側に平行に設けられる基台部３４と、該基台部３４の下面側に、内側台部３０の内側脚部３１が設けられていない両側面に平行に延在するよう固定された支持部３５を有する外側台部３６を具備しており、該外側台部３６の両支持部３５の、設置時に上流側及び下流側となる両端面には、鉛直方向に沿って合計四本の外側脚部（第二脚部）３７がそれぞれ鉛直方向位置を合わせて設けられている。
これら外側脚部３７の下端部には、先細テーパ状をなすとともに図示せぬ油圧シリンダ等で駆動されて伸縮する外側伸縮部３８が設けられており、これら外側伸縮部３８は、すべて同時に伸長又は縮長され、水平面に立つことにより伸縮いずれの状態においても外側台部３６を水平に維持するように同じ長さストロークするようになっている。
ここで、第１実施例において、内側伸縮部３２及び外側伸縮部３８は、その最大ストローク時の長さがコンクリートの面状打設の二層分の厚さより大きく設定されており、かつ最大ストローク量が一層分の厚さより大きく設定されている。また図４に示すような着脱自在の厚手のビニールシート４０で必要に応じて被覆される。
【００２９】
内側台部３０と外側台部３６の両支持部３５との相互に対向する面同士の間には、それぞれ、内側台部３０に対し外側台部３６を相対的に水平移動させる横移動機構４２が設けられている。各横移動機構４２は、外側台部３６側に水平方向に延在固定される上下二本の横移動ガイドレール４３を有しており、これら横移動ガイドレール４３は、内側台部３０側に開口するとともに長さ方向に延在するガイド溝４４を有する断面略コ字状をなしている。
また、横移動機構４２は、内側台部３０に、水平方向に位置をずらすとともに横移動ガイドレール４３のガイド溝４４内に位置して横移動ガイドレール４３にその長さ方向に沿った移動のみが許容されるよう走行が案内される複数の横移動ローラ４５を有しており、このような横移動ローラ４５が、同じ面に横移動ガイドレール４３の数に合わせて上下二列設けられている。
さらに、横移動機構４２は、横移動ガイドレール４３の上側に同方向に延在する、油圧シリンダ等の横移動ジャッキ４７を有しており、この横移動ジャッキ４７は、筒状のジャッキ本体４８が内側台部３０に固定され、該ジャッキ本体４８の両側から突出するロッド４９が両端部ともに外側台部３６の支持部３５に固定されている。
【００３０】
このような横移動機構４２は、横移動ガイドレール４３のガイド溝４４に横移動ローラ４５が案内されることにより、内側台部３０及び外側台部３６の水平一方向に沿う往復相対移動が許容されており、横移動ジャッキ４７のロッド４９をジャッキ本体４８に対し一側に移動させることにより、内側台部３０に対し外側台部３６を同側に移動させ、よって外側台部３６に対し内側台部３０を逆側に突出させるよう移動させるようになっている。すなわち、ダム堤体１上において横移動ジャッキ４７のロッド４９をジャッキ本体４８に対し下流側に移動させることにより、内側台部３０を外側台部３６から上流側に突出させるよう移動させ、ロッド４９を最もジャッキ本体４８に対し上流側に移動させることにより、内側台部３０を外側台部３６から下流側に突出させるよう移動させる。
【００３１】
なお、架台７の内側伸縮部３２及び外側伸縮部３８の下端面は、共に伸長した状態で下端面の高さが合い、また共に縮長した状態でも下端面の高さが合うようになっている。
【００３２】
そして、架台７には、上部ホッパー（仮受ホッパー）２３が取り付けられている。この上部ホッパー２３は、上述したバケット１１で搬送されたコンクリートを、上部開口部５１で受取り、ある程度一時貯留するべく仮受けして、必要に応じて開閉可能な図示せぬ下部開口部から下方に位置するダンプカー２４等に供給するものである。なお、内側台部３０及び外側台部３６には、相互の相対移動位置にかかわらず上部ホッパー２３のコンクリート排出に干渉しないように図示せぬ貫通孔が形成されている。
【００３３】
さらに、架台７上には、同軸上に配列された二つの同形状の巻胴（回転体）５３を有する巻上装置５４が載置されており、各巻胴５３は、減速機及び電動機からなる駆動源５５に、接離切換手段であるクラッチ５６を介して連結されている。このクラッチ５６は、両巻胴５３を連結して駆動源５５からの駆動力でこれらを一体に回転させたり、両巻胴５３同士の連結を解除して駆動源５５からの駆動力を各巻胴５３にそれぞれ独立して伝達させたりすることができるものである。
【００３４】
ここで、巻上装置５４は、各巻胴５３にそれぞれワイヤ２０が巻かれており、これらワイヤ２０の繰出側は、架台７の上端に回転自在に支持されたプーリ５８にかけられた後、その先端が下方の対応するバケット１１のアーム１９にそれぞれ連結されている。そして、クラッチ５６は、一方の巻胴５３のワイヤ２０と他方の巻胴５３のワイヤ２０とが相互に逆向きに巻かれかつ一方のバケット１１が下部ホッパー２８の下側位置（図３実線位置）にあるとき他方のバケット１１が上部ホッパー２３にコンクリートを排出する位置（図１実線位置）となるよう位相を調整して両巻胴５３を一体に連結している。これにより、一方のバケット１１を上昇させる際には他方のバケット１１が下降することになる。
【００３５】
次に、このような構成の資機材搬送装置２を用いたダム構築について以下に説明する。
河床部３に設けられた図示せぬコンクリート混練設備からダムコンクリートを、ダンプカー２４等で下部ホッパー２８に運搬し一時貯蔵する。
すでにコンクリート打設により形成されたダム堤体１には、上記した資機材搬送装置２が設けられており、この資機材搬送装置２では、下部ホッパー２８の下側に一方のバケット１１を位置させ（このとき他方のバケット１１は上部ホッパー２３の上側排出位置に位置している）、下部ホッパー２８の対応する側の下部開口部２７を所定時間開かせてバケット１１内にコンクリートを積み込む。
【００３６】
次に、巻上装置５４の駆動源５５で両巻胴５３を一方向に一体回転させることにより、コンクリートを積み込んだバケット１１を昇降ガイドレール１０に沿って走行させて上昇させ（この上昇時に他方の空のバケット１１は下降する）、上部ホッパー２３の上側に位置させる。そして、規制手段で上側の昇降ローラ１６の移動を規制した状態でさらにワイヤ２０を巻き上げることにより、上述したようにバケット１１を回転させて、積み込まれたコンクリートを上部ホッパー２３の上部開口部５１に落し込む（このとき他方のバケット１１は下部ホッパー２８の下側に位置する）。
【００３７】
落し込みが終了したら（このとき下部ホッパー２８の下側にある他方のバケット１１には上記と同様にしてコンクリートが積み込まれている）、巻上装置５４の巻胴５３を逆方向に一体回転させることによって、空となった一方のバケット１１を元の状態に戻すとともに規制手段を解除して下降させ（この下降時にコンクリートが積み込まれた他方のバケット１１は上昇する）、下部ホッパー２８の下側に一方のバケット１１を位置させる。
このような工程を適宜繰り返すことにより、河床部３のコンクリート混練設備からダンプカー２４等で運搬されたコンクリートをすでに形成されたダム堤体１上に、両バケット１１で交互に搬送する。
【００３８】
一方、上部ホッパー２３で仮受けされたコンクリートは、該上部ホッパー２３からダム堤体１上にあるダンプカー２４等に積み込まれる。そして、該ダンプカー２４を自走によりすでに形成されたダム堤体１の上面のコンクリート打設位置まで運行させてコンクリートを打設する。このとき、ダム堤体１上においてコンクリート打設は、資機材搬送装置２より遠い位置から順次行い、最終的に、バケット１１に上部蓋体２１を取り付けこの上部蓋体２１上にダンプカー２４等の機材を逃した状態で資機材搬送装置回りの施工を行うことになる。
また必要に応じて、バケット１１に上部蓋体２１を取り付けこの上部蓋体２１上にダンプカー２４等の機材を搭載してバケット１１の昇降で該機材を運搬する。
【００３９】
なお、バケット１１に設けられた上部蓋体２１と河床部３との間でダンプカー２４等の機材の受け渡しを行う場合には、バケット１１を穴部１３内に潜り込ませて上部蓋体２１の高さを河床部３に合せるとともに、下部ホッパー２８上と、下部ホッパー２８及びバケット１１の隙間等とにダンプカー２４等の機材通過のための踏板を載置させることになる。
また、バケット１１に設けられた上部蓋体２１とダム堤体１との間でダンプカー２４等の機材の受け渡しを行う場合にも、バケット１１の上部蓋体２１の高さをダム堤体１の上面に合せるとともに、バケット１１とダム堤体１の隙間に踏板を載置させることになる。
【００４０】
そして、上記コンクリート打設を面状に行うに伴って、以下のようにして架台を一層毎の上昇すなわちステップアップ、及び一層毎の上流側への後退すなわちステップバックを行う。
図５に示すように、架台７は、前回の打設層ｎのさらに一層前の打設層（ｎ−１）のコンクリート打設面上であってダム堤体１の下流側側壁面４に近接する所定位置に、内側台部３０及び外側台部３６の相対移動方向を上下流方向（図５等における左右方向）に沿わせた状態で、伸長状態とされた外側脚部３７の外側伸縮部３８で立設されている。ここで、すべての外側脚部３７の外側伸縮部３８には、該外側伸縮部３８とコンクリートとの間に介在するよう、ビニールシート４０（図４参照）が打設層ｎの打設時に被覆されて設けられている。
そして、このとき、架台７は、図１及び図２に示す横移動ジャッキ４７のロッド４９をジャッキ本体４８に対し下流側に移動させた状態とし、内側台部３０を外側台部３６に対し上流側に位置させている。しかも、架台７は、内側伸縮部３２を上記と同様のビニールシート４０で被覆した状態の内側脚部３１を、縮長状態から、打設層ｎに影響を及ぼさない程度の小さい油圧をかけることで若干伸長させて打設層ｎ上に当接させている。以上を工程｛１｝とする。
【００４１】
上記状態で、図６に示すように、打設層ｎ上に新たな打設層（ｎ＋１）を形成すべくコンクリートを面状に打設する。なお、この打設層（ｎ＋１）の打設に対応するよう、外側伸縮部３８には伸長状態における全長にわたって上記ビニールシート４０が被覆されている。以上を工程｛２｝とする。
【００４２】
次に、図７に示すように、内側脚部３１を、打設層ｎ上で完全に伸長状態として、架台７をジャッキアップさせ、それとともに、外側脚部３７を縮長状態とする。このとき、打設層ｎのコンクリートは、打設層（ｎ＋１）の打設作業等により１〜２日経過しており、架台７を支持可能な強度まで硬化されている。以上を工程｛３｝とする。
【００４３】
そして、図８に示すように、打設層ｎおよび打設層（ｎ＋１）に連続する、外側脚部３７の抜けた穴６０内に、残留する図示せぬビニールシートを除去後、同種又はそれ以上のコンクリート等を充填材６１として充填する。それとともに、内側脚部３１に反力をとり、図１及び図２に示す横移動ジャッキ４７のロッド４９をジャッキ本体４８に対し上流側へ移動させた状態とすることにより、横移動ローラ４５と横移動ガイドレール４３との案内によって、横移動ガイドレール４３を支持する外側台部３６を上流側に水平移動させる（このとき、内側台部３０の図示略の下流側は外側台部３６から突出することになる）。加えて、外側伸縮部３８を上記と同様の図示せぬビニールシート４０で被覆した状態で、外側脚部３７を、図８で二点鎖線で示すように縮長状態から小さい油圧をかけることで若干伸長させて打設層（ｎ＋１）上に当接させる。このようにして、架台７の一打設層分のステップアップとステップバックとが行われる。以上を工程｛４｝とする。
【００４４】
上記状態で、図９に示すように、打設層（ｎ＋１）上に新たな打設層（ｎ＋２）を形成すべくコンクリートを面状に打設し、その後、外側脚部３７を、硬化した打設層（ｎ＋１）上で完全に伸長状態として、架台７をジャッキアップさせ、それとともに、内側脚部３１を縮長状態とする。
そして、外側脚部３７に反力をとり、図１及び図２に示す横移動ジャッキ４７のロッド４９をジャッキ本体４８に対し下流側に移動させることにより、内側台部３０を上流側に水平移動させ、その後、内側脚部３１を、若干伸長させて打設層（ｎ＋２）上に当接させる。このようにして、架台７の次の一打設層分のステップアップ及びステップバックが行われる。これで、図５と同様の状態となる。なお、このときも、打設層（ｎ＋１）および打設層（ｎ＋２）に連続する、内側脚部３１の抜けた穴６３内に、残留するビニールシートを除去後充填材を充填する。以上を工程｛５｝とする。
【００４５】
このような工程｛１｝から工程｛５｝を繰り返すことによって、架台７は、すでにコンクリートが打設されて形成されたダム堤体１上に設置される位置から、コンクリートの打設層が一層増える毎に、上方にステップアップし、かつダム堤体１の下流河床部３側の傾斜する側壁面４に沿って勾配に応じてステップバックすることになる。
【００４６】
なお、このとき、架台７のステップアップ及びステップバック時には、昇降ガイドレール１０は、架台７との連結を解除され、かつ架台７のステップアップ及びステップバックの量に応じて上方に延長されることになる。
また、架台７をステップアップ及びステップバックさせると、巻上装置５４は、一方のバケット１１が下部ホッパー２８の下側位置にあるとき他方のバケット１１が上部ホッパー２３にコンクリート投入状態となるよう、ワイヤ２０の延長とクラッチ５６による両巻胴５３の位相の再調整とを行う。
そして、上記のように、コンクリート打設の進捗（面状打設層の積み重ね）とともに、架台７のステップアップ及びステップバックと昇降ガイドレール１０の延長とを適宜繰り返して、ダム堤体１のコンクリート打設を完結する。
なお、始めのコンクリート打設時には、例えば、架台７を図５に示す状態でしかも内側脚部３１を最も縮長させておいて一層打設し、この打設層に内側脚部３１を若干伸長させて当接させステップアップ及びステップバックは行わずに次の打設層を打設すればよい。
また、上記ビニールシート４０を用いる代りに箱抜きを行ってもよい。
【００４７】
上記第１実施例は、以下に述べる効果を奏する。
（１）すでにコンクリート打設により形成されたダム堤体１上に架台７を設置し、該架台７に設けられた巻上装置５４でワイヤ２０を巻上げ及び繰出すことでバケット１１を昇降させて、河床部３側から搬入されたコンクリート等の資機材をすでにコンクリート打設により形成されたダム堤体１上に運搬し、そして、内側脚部３１及び外側脚部３７のいずれか一方を伸長状態として架台７を支持しつつ他方を縮長状態として、コンクリートを面状に打設し、縮長状態にあったものを伸長状態として架台７をジャッキアップし伸長状態にあったものを縮長状態として、該縮長状態とされたものの存在でコンクリートが打設されなかった穴６０に充填材６１を充填し、このようにして架台７及び該架台７に設けられた巻上装置５４を、コンクリート打設の進捗にともなって上方にステップアップできる。したがって、巻上装置５４のコンクリート打設の進捗にともなう上昇が容易となり、工期の短縮が図れる。
しかも、移動の反力を架台７自身の重量でとるため、アンカー等が不要となり、昇降ガイドレール１０の増設のみで済む。
【００４８】
（２）内側脚部３０を外側脚部３６に対し水平方向に移動させる横移動機構４２を具備するため、内側脚部３１及び外側脚部３７のいずれか一方が伸長状態にあり他方が縮長状態にある場合に、横移動機構４２により縮長状態にあるものを常に一方向に水平移動させれば、架台７が、ステップアップ毎に横移動することになり、よって、ダム堤体１の河床部３側の側壁面４が傾斜する場合に、コンクリート打設の進捗に伴った河床部３に対し反対方向へのステップバックができる。したがって、ステップバックの作業が容易になるため、工期をさらに短縮することができる。
（３）内側脚部３１及び外側脚部３７は、下端部が先細テーパ状に形成されており、しかも着脱自在のビニールシート４０で被覆されているため、ビニールシート４０の介在によりコンクリートに埋った状態からの抜けが著しく容易となり、作業性が大幅に向上する。
【００４９】
（４）上記のように巻上装置５４をコンクリート打設の進捗にともなって上昇させることができることから、すでに打設されたダム堤体１を利用して河床部３側から資機材をダム堤体１上に運搬できることになるため、コンクリートを混練製造するコンクリート混練設備等を河床部３に設置することができ、またケーブルクレーンの数も少なくできることになり、よって、該コンクリート混練設備及びケーブルクレーンを設置するための用地確保のためにダム堤頂部付近の山を大きく削り取る必要がなくなる。したがって、自然環境保全や景観上の観点から好ましい。
（５）コンクリートの大量搬送が、大きな設置面積を必要とせず比較的簡易な構造で実現できる。
【００５０】
（６）河床部３側から資機材をダム堤体１上に運搬でき、ケーブルクレーンの数が少なくできるため、ケーブルクレーンのバケット等が作業者の上方を移動する機会も少なくなって、さらに、安全上好ましい。
（７）資機材搬送装置２は、掘削面に設けられるのではなくすでに形成されたダム堤体１に設けられるため、掘削面の岩盤検査及び基礎構築は必要なくなり、またコンクリート打設の進捗とともに延長できるため前もって上から下まで全部布設する必要もなくなる。したがって、ダムコンクリートの打設開始を迅速に行うことができる。
【００５１】
（８）資機材搬送装置２は、すでに形成されたダム堤体１に設けられるため、ダムコンクリート打設の進捗と共に下から基礎を順次撤去する必要がなくなる。したがって、上記ダムコンクリートの打設開始の迅速化の実現と合せ、工期を大幅に短縮できる。
（９）ベルトコンベアラインで搬送する場合に比して、盛替が容易であり、敷設のための地山の切取りも不要となって、さらには豪雪地域での冬期養生が不要となり、コンクリート配合の切替えに手間どることもなくなる。
（１０）架台７を上昇させることにより、巻上装置５４の他に上部ホッパー２３をコンクリート打設の進捗にともなって上昇させることができるため、さらに、工期の短縮が図れる。
【００５２】
（１１）昇降可能なバケット１１に上部蓋体２１を取り付ければ、その上側に、コンリート打設時にダンプカー２４等の機材を逃すことができ、また機材を搭載し昇降させることができる。したがって、補助用ケーブルクレーンを少なくかつ小型のものですませることができる。
（１２）クラッチ５６により駆動源５５からの駆動力を各巻胴５３に独立して伝達可能となっているため、何等かの理由により片側のラインが動かせない場合にも、非可動ライン側のクラッチ接続を切ることで、可動側のラインを単独に稼働させることができる。
（１３）各巻胴５３が、そのワイヤ２０がそれぞれ巻方向を逆にし、かつ一方のバケット１１の上昇行程と他方のバケット１１の下降行程とを一致させるように位相を調整してクラッチ５６により一体に接続されているため、両巻胴５３の一体回転で同時に一方のバケット１１の上昇と他方のバケット１１の下降を行うことができ、しかも、コンクリート入りのバケット１１を巻上げる際に、下降する空のバケット１１がカウンターウェイト代りとなっていわゆるつるべ式となるため、バケット１１の重量分が相殺され、駆動源の駆動力が小さくてすみ、省エネ化が図れるとともにサイクルタイムを短縮できる。
【００５３】
次に、本発明の第２実施例を図１０を参照して、上記第１実施例との相違部分を中心に以下に説明する。
第２実施例において、架台７には、各ワイヤ２０をそれぞれかけるプーリ５８が設けられており、このワイヤ２０を巻上げ及び繰出す巻上装置５４は、河床部３に形成された穴部１３に設けられている。すなわち、架台７には、プーリ５８が、二つ並列して回転自在に支持されており、また、河床部３側にも、並列する二つのプーリ７１がダム堤体１側に回転自在に支持されていて、さらに、昇降ガイドレール１０の途中位置にも、並列する二つのプーリ７２が回転自在に支持されている。そして、各バケット１１に連結された各ワイヤ２０は、プーリ５８にかけられた後にプーリ７２にかけられ、さらに昇降ガイドレール１０に沿って河床部３の穴部１３まで下方に延在し、穴部１３内に設けられたプーリ７１でダム堤体１に対し離間方向に延在されて、穴部１３に設置された巻上装置５４に巻かれている。
【００５４】
このような構成の第２実施例の資機材搬送装置２においても、架台７すなわちプーリ５８を上昇させることにより、コンクリート打設の進捗にともなってバケット１１の上昇位置を高くすることができる。よって、第１実施例と同様の効果を発揮することができる。
加えて、第２実施例においては、プーリ５８を架台７に設け、巻上装置５４を架台７以外の部分である河床部３側に設けるため、搭載物を含む架台７の重量を大幅に低減できる。
【００５５】
なお、第２実施例においては、河床部３側に巻上装置５４を設けるものを例にとり説明したが、これに限定されることなく、昇降ガイドレール１０の途中位置、ダム堤体１上、近接する岩盤等のいずれの位置にも設けることができる。
また、第１実施例および第２実施例においては、架台７に巻上装置５４またはプーリ５８を設け、さらに上部ホッパー２３を設けるものを例にとり説明したが、勿論、上部ホッパー２３を除くことも可能である。逆に、バケット１１が自走で昇降ガイドレール１０を昇降するもの（例えば、昇降ガイドレール１０にラックギアを設け、バケット１１にこのラックギアに噛み合うピニオンギアおよびこれを駆動する駆動源を設けて、このピニオンギアの回転によりバケット１１が昇降するもの等）であれば、架台７に上部ホッパー２３のみを設けることも可能である。
【００５６】
さらに、以上の第１及び第２実施例においては、資機材搬送装置２を、ダム堤体１の傾斜する側壁面４に沿って設けたものを例にとり説明したが、勿論、鉛直に沿う鉛直壁面に設けることも可能であり、この場合は、架台７をステップバックさせる必要がないため、横移動機構４２が不要となる（このとき内側台部３０及び外側台部３６は一体のものとなる）。
【００５７】
【発明の効果】
本発明の請求項１記載の資機材搬送装置によれば、巻上装置をコンクリート打設の進捗にともなって上昇させることができ、搬送器の上昇位置を高くすることができることから、すでに打設されたダム堤体を利用して河床部側から資機材をダム堤体上に運搬できることになるため、コンクリートを混練製造するコンクリート混練設備等を河床部に設置することができ、またケーブルクレーンの数も少なくできることになる。よって、該コンクリート混練設備及びケーブルクレーンを設置するための用地確保のためにダム堤頂部付近の山を大きく削り取る必要がなくなるため、自然環境保全や景観上の観点から好ましい。それとともに、ケーブルクレーンのバケット等が作業者の上方を移動する機会も少なくなるため、安全性も高まる。
また掘削面に設けられるのではなくすでに形成されたダム堤体に設けられるものであるため、掘削面の岩盤検査及び基礎構築を行う必要がなくなり、またコンクリート打設の進捗とともに延長できることから前もって上から下まで全部布設する必要もなくなる。したがって、ダムコンクリートの打設開始を迅速に行うことができる。加えて、資機材搬送装置はすでに形成されたダム堤体に設けられるため、ダムコンクリート打設の進捗と共に基礎を下から順次撤去する必要もなくなり、さらには、盛替が容易であり地山の切取りも不要となる。したがって、上記ダムコンクリートの打設開始の迅速化の実現と合せ、工期を大幅に短縮できる。
【００５８】
本発明の請求項２記載の資機材搬送装置によれば、プーリをコンクリート打設の進捗にともなって上昇させることができ、搬送器の上昇位置を高くすることができることから、すでに打設されたダム堤体を利用して河床部側から資機材をダム堤体上に運搬できることになるため、コンクリートを混練製造するコンクリート混練設備等を河床部に設置することができ、またケーブルクレーンの数も少なくできることになる。よって、該コンクリート混練設備及びケーブルクレーンを設置するための用地確保のためにダム堤頂部付近の山を大きく削り取る必要がなくなるため、自然環境保全や景観上の観点から好ましい。それとともに、ケーブルクレーンのバケット等が作業者の上方を移動する機会も少なくなるため、安全性も高まる。
また掘削面に設けられるのではなくすでに形成されたダム堤体に設けられるものであるため、掘削面の岩盤検査及び基礎構築を行う必要がなくなり、またコンクリート打設の進捗とともに延長できることから前もって上から下まで全部布設する必要もなくなる。したがって、ダムコンクリートの打設開始を迅速に行うことができる。加えて、資機材搬送装置はすでに形成されたダム堤体に設けられるため、ダムコンクリート打設の進捗と共に基礎を下から順次撤去する必要もなくなり、さらには、盛替が容易であり地山の切取りも不要となる。したがって、上記ダムコンクリートの打設開始の迅速化の実現と合せ、工期を大幅に短縮できる。
さらに、プーリを架台に設け、巻上装置を架台以外の位置に設けるため、搭載物を含む架台の重量を大幅に低減できる。
【００５９】
本発明の請求項３記載の資機材搬送装置によれば、下降する搬送器が上昇する搬送器のカウンタウエイト代りとなるため、搬送器の重量分が相殺され、駆動源の駆動力が小さく省エネ化が図れる。
【００６０】
本発明の請求項４記載の資機材搬送装置によれば、架台の下方で昇降する搬送器により、すでに打設されたダム堤体を利用して河床部側から資機材をダム堤体上に運搬できることになるため、コンクリートを混練製造するコンクリート混練設備等を河床部に設置することができ、またケーブルクレーンの数も少なくできることになり、よって、該コンクリート混練設備及びケーブルクレーンを設置するための用地確保のためにダム堤頂部付近の山を大きく削り取る必要がなくなるとともに、ケーブルクレーンのバケット等が作業者の上方を移動する機会も少なくなる。
また、架台には仮受ホッパーが設けられているため、該仮受ホッパーをコンクリート打設の進捗とともに容易に上昇させることができる。
【００６１】
本発明の請求項５記載の資機材搬送装置によれば、第一脚部及び第二脚部のいずれか一方が伸長状態にあり他方が縮長状態にある場合に、横移動機構により縮長状態にあるものを常に一方向に水平移動させれば、架台が、ステップアップ毎に横移動することになり、よって、ダム堤体の河床部側の側壁面が傾斜する場合に、コンクリート打設の進捗に伴った河床部に対し反対方向へのステップバックができる。したがって、ステップバックが必要な場合には、作業がさらに容易になる上、工期をさらに短縮することができる。
【００６２】
本発明の請求項６記載の資機材搬送装置によれば、第一脚部及び第二脚部は、下端部が先細テーパ状に形成されているため、コンクリートに埋った状態からの抜けが容易となり、作業性が向上する。
【００６３】
本発明の請求項７記載の資機材搬送装置によれば、第一脚部及び第二脚部の先細テーパ状の下端部は、着脱自在のシートで被覆されているため、シートの介在によりコンクリートに埋った状態からの抜けがさらに容易となり、作業性がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【図１】本発明の第１実施例による資機材搬送装置のダム堤体上部側に設置される部分を概略的に示す側面図である。
【図２】本発明の第１実施例による資機材搬送装置の図１を左から見た図である。
【図３】本発明の第１実施例による資機材搬送装置のダム堤体下部側に設置される部分を概略的に示す側面図である。
【図４】本発明の第１実施例による資機材搬送装置の架台の伸縮部を示す正面図である。
【図５】本発明の第１実施例による資機材搬送装置の架台の上昇作動の工程｛１｝を示す側断面図である。
【図６】本発明の第１実施例による資機材搬送装置の架台の上昇作動の工程｛２｝を示す側断面図である。
【図７】本発明の第１実施例による資機材搬送装置の架台の上昇作動の工程｛３｝を示す側断面図である。
【図８】本発明の第１実施例による資機材搬送装置の架台の上昇作動の工程｛４｝を示す側断面図である。
【図９】本発明の第１実施例による資機材搬送装置の架台の上昇作動の工程｛５｝を示す側断面図である。
【図１０】本発明の第２実施例による資機材搬送装置を概略的に示す側面図である。
【符号の説明】
１ ダム堤体
２ 資機材搬送装置
７ 架台
１１ バケット（搬送器）
２０ ワイヤ（線状体）
２３ 上部ホッパー（仮受ホッパー）
３１ 内側脚部（第一脚部）
３２ 内側伸縮部（伸縮部）
３７ 外側脚部（第二脚部）
３８ 外側伸縮部（伸縮部）
４０ ビニールシート（シート）
４２ 横移動機構
５３ 巻胴（回転体）
５４ 巻上装置
５６ クラッチ
５８ プーリ

Claims (7)

1. すでにコンクリート打設により形成されたダム堤体上に載置される架台と、
   資機材を搭載可能な搬送器と、
   前記架台に設けられ、前記搬送器に連結された線状体を巻上げ及び繰出す巻上装置とを有し、
   前記架台は、同時伸縮可能な複数の第一脚部と、これら第一脚部とは個別に同時伸縮可能な複数の第二脚部とを具備し、
   前記第一脚部および前記第二脚部の下端部には、最大ストローク時の長さがコンクリートの面状打設の二層分の厚さより大きく設定され、かつ最大ストローク量が一層分の厚さより大きく設定された伸縮部が設けられていることを特徴とする資機材搬送装置。
2. すでにコンクリート打設により形成されたダム堤体上に載置される架台と、
   資機材を搭載可能な搬送器と、
   前記架台以外の位置に設けられ、前記搬送器に連結された線状体を巻上げ及び繰出す巻上装置と、
   前記架台に設けられ、前記線状体がかけられるプーリとを有し、
   前記架台は、同時伸縮可能な複数の第一脚部と、これら第一脚部とは個別に同時伸縮可能な複数の第二脚部とを具備し、
   前記第一脚部および前記第二脚部の下端部には、最大ストローク時の長さがコンクリートの面状打設の二層分の厚さより大きく設定され、かつ最大ストローク量が一層分の厚さより大きく設定された伸縮部が設けられていることを特徴とする資機材搬送装置。
3. 前記搬送器を二つ有しており、前記巻上装置は、それぞれの搬送器に連結された線状体をそれぞれ個別の回転体に逆向きに巻き、かつそれら回転体をクラッチを介して連結してなることを特徴とする請求項１又は２記載の資機材搬送装置。
4. すでにコンクリート打設により形成されたダム堤体上に載置される架台と、
   資機材を搭載可能とされ前記架台の少なくとも下方で昇降する搬送器と、
   前記架台に設けられ、前記搬送器により運搬された資材を仮受けする仮受ホッパーとを有し、
   前記架台は、同時伸縮可能な複数の第一脚部と、これら第一脚部とは個別に同時伸縮可能な複数の第二脚部とを具備し、
   前記第一脚部および前記第二脚部の下端部には、最大ストローク時の長さがコンクリートの面状打設の二層分の厚さより大きく設定され、かつ最大ストローク量が一層分の厚さより大きく設定された伸縮部が設けられていることを特徴とする資機材搬送装置。
5. 前記第一脚部を前記第二脚部に対し水平方向に移動させる横移動機構を具備することを特徴とする請求項１乃至４のいずれか一項に記載の資機材搬送装置。
6. 前記第一脚部及び第二脚部は、下端部が先細テーパ状に形成されていることを特徴とする請求項１乃至５のいずれか記載の資機材搬送装置。
7. 前記第一脚部及び第二脚部の先細テーパ状の下端部は、着脱自在のシートで被覆されていることを特徴とする請求項６記載の資機材搬送装置。

Images