JP3561946B2 - スピーカ用振動板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は音響出力機器等に用いるスピーカ用振動板及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、スピーカ用振動板は木材パルプ等の天然パルプを主材料とする紙が多く使用されている。これは、振動板の材料の持つ比弾性率(E/ρ:ただし、E=弾性率、ρ=密度)が大きいほど、即ち、より弾性率が高く且つ密度が低い材料を用いた振動板の高域共振周波数が高く、より高音域まで再生でき、広い再生帯域を持つスピーカの実現が可能で、また、振動板の材料の内部損失が高いほど平坦な周波数特性と低い歪み率を実現することが可能であり、これらのことから紙が適度の弾性率と内部損失を有し、また密度が低いため、合成樹脂やその複合物を成形した振動板では得られない特徴を有したものであるからであった。
【0003】
ところが、紙の振動板は吸湿性があるために湿度に弱く、特に耐水性が要求されるスピーカに用いる振動板については、紙の振動板の抄造時にパルプ繊維に撥水剤を定着させて防水性を付与する方法や、紙の振動板の抄造成形後に合成樹脂溶液を含浸して防水性を得る方法等が用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、最近では特に自動車のドアに取りつけられるスピーカにおいて、洗車時に用いられる洗浄剤、いわゆるカーシャンプー等の界面活性剤に対しても耐水性が求められてきており、従来の抄造時にパルプ繊維に撥水剤を定着させて防水性を付与したり、抄造成形後に合成樹脂溶液を含浸した紙振動板では十分な耐水性が得られないという課題を有していた。
【0005】
このため、紙振動板の抄造成形後に耐水性の合成樹脂フィルムを表面にラミネートして貼り付ける方法が考えられているが、貼り付けのために特別の治具、設備を必要とするという別の課題を有していた。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために本発明のスピーカ用振動板は、撥水処理を施した木材パルプ等の天然パルプを主体とし、耐水性を有する微細なフィルム状の合成パルプを混抄したスラリーを所望の形状に抄造して乾燥成形した成形物に、撥水剤を混入した合成樹脂溶液を含浸、乾燥して上記成形物の表面に撥水性の合成樹脂膜を形成した構成としたものである。
【0007】
【作用】
この構成により、紙振動板としての特性を損なうことなく、また特別な治具、設備を必要とせずに、内部の吸水性を排除すると共に、表面からの水の浸入を防止して、界面活性剤に対しても耐水性を示すことが可能となり、しかも、たとえ水分が内部に浸入しても耐水性を有する微細なフィルム状の合成パルプが木材パルプ等の天然パルプの繊維の表面に膜状に結着して強固なからみを生じ、これらの繊維どうしを結合させているため、湿潤状態でも高い挫屈強度を保ち、強固な撥水性、耐水性を有するスピーカ用振動板を得ることができる。
【0008】
【実施例】
(実施例1)
以下、本発明の第1の実施例によるスピーカ用振動板について説明する。
【0009】
濾水度550cc(カナディアン・フリーネス)のNUKP(未晒しクラフトパルプ)のスラリーに、メタ型アラミド樹脂パルプ(商品名 コーネックス・パルプ:帝人(株)製)をNUKPの絶乾重量に対し10wt%加え、フッ素系撥水剤(商品名 ディックガード,F−400:大日本インキ化学工業(株)製)をNUKPの絶乾重量100gに対して10ccの割合で加え、さらに染料を加えて攪拌の後、硫酸バンドでpHを4.5〜5.0に調整してフッ素系撥水剤をNUKPに定着させる。
【0010】
このスラリーをコーン形の振動板の形状に成形した金網で抄造し、脱水した後、200℃に加熱した振動板の形状の雄雌金型中で加熱加圧乾燥を行い、所望の形状の振動板の成形物を得る。
【0011】
また、別に飽和共重合ポリエステル樹脂溶液(商品名 ポリエスター,LP−011S50TO:日本合成化学(株)製)50gをメチルエチルケトン200ccで希釈した液にフッ素系撥水剤(商品名 サーフロン,SR−137AR:東永産業(株)製)10ccを加え攪拌した含浸用液を調整し、この調整した含浸用液に上記成形物を浸漬し、常温で約10分間風乾した後、120℃のオーブン中で10分間乾燥を行い16cm口径のコーン形の振動板を得た。
【0012】
(実施例2)
以下、本発明の第2の実施例によるスピーカ用振動板について説明する。
【0013】
濾水度550ccのNUKPのスラリーに、融点130℃、繊維長5mmの2デニールの変成ポリエステル繊維をNUKPの絶乾重量に対して10wt%加え、さらにメタ型アラミド樹脂パルプをNUKPの絶乾重量に対し10wt%加え、上記実施例1と同様に染料、撥水剤を添加定着させ、同上の方法で抄造成形した後、さらに上記実施例1と同様に含浸用液による処理を行い、実施例1と同様の16cm口径のコーン形の振動板を得た。
【0014】
上記実施例1,2の振動板の耐水性試験として、それぞれの振動板を用いて組み立てたスピーカの背面に円筒状の水溜め槽を設け、水道水及び市販の自動車用洗剤(カーシャンプー)を所定の濃度に希釈した水溶液を30mmの高さに注いで液の浸透状態を観察したが、本発明によるスピーカ用振動板は、実施例1,2ともに96時間を経過した時点でも振動板の表側面への水道水、自動車用洗剤液とも浸透は認められなかった。
【0015】
また、比較のために従来例1として、濾水度550ccのNUKPのスラリーに、上記実施例1と同様にフッ素系撥水剤及び染料を添加、定着させ、このスラリーを振動板の形状に成形した金網で抄造し、脱水した後、200℃に加熱した振動板の形状の雄雌金型中で加熱加圧乾燥を行って得た16cm口径のコーン形の振動板、及び従来例2として、濾水度550ccのNUKPのスラリーを振動板の形状に成形した金網で抄造し、脱水した後、200℃に加熱した振動板の形状の雄雌金型中で加熱乾燥を行って得た振動板の形状の成形物に、上記実施例1と同様に含浸用液による処理を行って得た16cm口径のコーン形の振動板を用いて同様に耐水性試験としての浸水試験を行った結果、従来例1、従来例2ともに水道水では24時間以上48時間迄に、自動車用洗剤液では1時間迄に振動板の表側面への浸透が認められた。
【0016】
また、上記実施例1,2、従来例1,2のコーン形の振動板を上記自動車用洗剤液に24時間浸漬した後に湿潤状態のコーン形の振動板を定盤上に伏せて置き、振動板のネック部に円板を乗せて定盤と円板が平行になるような状態で円板上に荷重をかけ、振動板が挫屈破壊する強度を測定し、試験前(未浸漬)の強度と比較した結果を、その低下率と共に(表1)に示した。
【0017】
【表1】
【0018】
(表1)に示すように、本発明における実施例1,2の振動板は従来例に比較して挫屈強度の低下率が低く、高い挫屈強度を保持することがわかる。また実施例2による振動板が実施例1による振動板よりもより低下率が低く、高い挫屈強度を保持することがわかる。これは、混抄した高強度で耐水性のよい低融点のポリエステル繊維が加熱乾燥成形中にその交点で溶融結着し三次元的な網目構造を形成することが顕微鏡観察により明らかになっており、このポリエステル繊維の効果によるものと考えられる。
【0019】
なお、上記実施例において、天然パルプを主体とするパルプ材料には、低融点のポリエステル繊維を混抄したが、耐水性で、アラミドもパルプとなじみがよく、同様の効果が得られるものであれば、その材質、形状にこだわるものではない。
【0020】
また、撥水剤には、パルプ定着用、含浸用、合成樹脂添加用共にフッ素系のものを用いたが、同様の効果が得られるものであれば、その材質を限定するものではない。
【0021】
さらに、含浸用合成樹脂には飽和変成ポリエステル樹脂を用いたが、乾燥後の成膜性が良好で、特性的にも音質的にも紙振動板の特徴を損なわないものであれば、アクリル系樹脂をはじめとして、その材質を限定するものではない。
【0022】
【発明の効果】
以上のように本発明によるスピーカ用振動板は、撥水処理を施した木材パルプ等の天然パルプを主体とし、耐水性を有する微細なフィルム状の合成パルプを混抄して乾燥成形した成形物に、撥水剤を混入した合成樹脂溶液を含浸、乾燥して成形物の表面に撥水性の合成樹脂膜を形成した構成とすることにより、紙振動板としての特性を損なうことなく、また特別な治具、設備を必要とせずに、内部の吸水性を排除すると共に、表面からの水の浸入を防止して、界面活性剤に対しても耐性を示すことが可能となり、たとえ水分が内部に浸入しても耐水性を有する微細なフィルム状の合成パルプが木材パルプ等の天然パルプの繊維の表面に膜状に結着し強固なからみを生じ、これらの繊維どうしを結合させているため、湿潤状態でも高い挫屈強度を保ち、強固な撥水性、耐水性を有するスピーカ用振動板を比較的廉価に得ることができる実用価値の高いものである。
Claims (2)
- 撥水処理を施した木材パルプ等の天然パルプを主体とし、耐水性を有する微細なフィルム状の合成パルプを混抄したスラリーを所望の形状に抄造して乾燥形成した成形物に、撥水剤を混入した合成樹脂溶液を含浸、乾燥して上記成形物の表面に撥水性の合成樹脂膜を形成したスピーカ用振動板。
- 微細なフィルム状の合成パルプに、メタ型芳香族ポリアミド樹脂からなるパルプを用いた請求項1記載のスピーカ用振動板。
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