JP3561478B2 - フレキシブルicモジュールの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、非接触式ICカードなどの情報担体の元になるフレキシブルICモジュールの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
非接触式ICカード等の非接触式情報担体は、定期券、運転免許証、テレホンカード、キャッシュカード等の代替品としての使用が検討されており、大量の使用が見込まれるところから、製造工程をいかに簡略化し、単価を下げるかが最も重要な技術的課題の1つになっている。
【0003】
従来より、非接触式ICカードの製造方法としては、ガラス繊維等で構成された補強体に切抜き孔を開口して当該切抜き孔内にICチップ及び非接触信号伝送手段である非接触伝送用コイルを収納し、次いで切抜き孔内を樹脂にて封止して基体を形成し、最後に、当該基体の表裏面にカバーシートを貼着して所要の非接触式ICカードを得るという方法が知られている。
【0004】
この方法によれば、切抜き孔のサイズをコイルのサイズに合わせて適度の大きさに調整することにより、基体に対するコイルの設定位置が正確に規制された非接触式ICカードを製造できるので、外部機器との間で電力の受給及び信号の授受を高能率に行うことができる。
【0005】
また、他の製造方法として、例えばNIKKEI MECHANICAL 1997.1.6 no.497、第16頁〜第17頁等に記載されているように、ICチップと非接触データ伝送手段である非接触伝送用コイルとが接着された第1の樹脂シートとこれらICチップ及びコイルを有しない第2の樹脂シートとを夫々射出成形機の固定金型と可動金型の対向部分に取り付け、型合わせ後、キャビティ内に樹脂を充填して、前記第1及び第2の樹脂シートとICチップと非接触伝送用コイルとが充填樹脂によって一体化された非接触式ICカードを得る方法が提案されている。
【0006】
この方法によれば、表面及び裏面に樹脂シート(カバーシート)が被着された非接触式ICカードを射出成形によって得ることができるので、ICチップ及び非接触伝送用コイルが埋設された基体を樹脂硬化した後に、当該基体の表面及び裏面にカバーシートを接着する従来の製造方法に比べて、非接触式ICカードの製造を効率化することができ、その製造コストを引き下げることができる。
【0007】
一方、非接触式ICカードに搭載されるICチップと非接触伝送用コイルの接続方式に関しては、ICチップを配線基板に実装し、当該配線基板に形成された電極端子に非接触伝送用コイルを接続するという方法が一般に採られている。
【0008】
この方式は、従来より技術的に確立されているので、ICチップと配線基板並びに配線基板と非接触伝送用コイルとを高い信頼性で接続することができる。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、前記した従来の非接触式ICカード製造方法のうち前者は、補強体に開口された切抜き孔内にICチップ及びコイルを収納し、切抜き孔の内外を樹脂にて硬化するので、補強体を有しない切抜き孔の内部の強度が低く、曲げなどの不正な外力を受けたとき、切抜き孔の内部に応力が集中して基体が割れやすいという問題がある。
【0010】
また、所要の切抜き孔が開孔された補強体にICチップ及びコイルを正確にセットした後、切抜き孔内の樹脂封止と補強体に対する樹脂の含浸並びに硬化を行わなくてはならないので、製造工程が複雑になり、安価な情報担体を製造することが難しいという問題もある。特に、各種の非接触式ICカードを同一ラインで生産する場合においては、収納するICチップ及び非接触伝送用コイルの大きさに応じて切抜き孔の大きさが異なる各種の補強体を用意しなくてはならないので、生産工程がさらに複雑になり、非接触式ICカードの製造コストが高価になる。
【0011】
一方、前記した従来の非接触式ICカード製造方法のうちの後者は、ICチップとコイルとが接着されたカバーシートを金型の一方に取り付けて射出成形を行うため、カバーシートの接着剤が付着した部分と付着していない部分とに高温の溶融樹脂が接触する。このため、接着剤が付着した部分と付着していない部分との熱膨張率差によって各部の境界部分にしわができやすく、しかもカード厚さが0.20〜0.75mmの薄形非接触カードについては、製造後のカードに反りが発生するという問題もあることも判明した。実験によると、樹脂温度や射出速度それに射出圧力を種々変更しても、カバーシートにしわがなく、しかも反りのない非接触式ICカードを製造することは困難であった。
【0012】
非接触式ICカードは、手指によって取り扱われ、かつ直接目視されるものであるので、表面にしわができたものは使い心地や美観が悪く、それだけで商品価値が失われる。また、非接触式ICカードの製造後にカバーシートの表面に印刷を施す場合、カード表面にきれいな印刷を施すことが不可能になるので、やはり商品価値が失われる。一方、非接触式ICカードに反りが発生した場合は、上記と同様の理由によって商品価値が失われるばかりでなく、カード内に備えられた非接触伝送用コイルとリーダ・ライタ側に備えられた非接触伝送用コイルとの距離が不均一になるため、通信不良が生じやすくなる。また、カード内のICチップや非接触伝送用コイルにストレスがかかることからICチップの破壊や非接触伝送用コイルの断線が生じやすく、この点からも商品価値が低いものになる。
【0013】
また、従来のICチップとコイルの接続方式は、配線基板を不可欠な構成要素とするので、高コストとなり、しかも非接触式ICカードの薄形化及びフレキシブル化に対応することが難しいという問題がある。
【0014】
本発明は、かかる課題を解決するためになされたものであって、その目的は、情報担体としても、また情報担体の製造するための半製品としても利用可能なフレキシブルICモジュールを効率的に製造する方法を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記の課題を解決するため、第1の不織布と、ICチップとコイルとの接続体と、第2の不織布とをこの順に重ね合わせ、これらの各部材をホットプレスによって一体化する工程を含むフレキシブルICモジュールの製造方法において、前記第1及び第2の不織布として、ポリエチレンテレフタレートよりなる心材の周囲が非晶質のポリエチレンテレフタレートにてコーティングされた繊維からなるものを用い、加熱圧縮後の前記第1及び第2の不織布に樹脂の含浸性が維持されるように前記ホットプレスを施すという構成にした。
【0016】
かかる構成によると、第1の不織布と、ICチップとコイルの接続体と、第2の不織布とをこの順に重ね合わせ、これらの各部材をホットプレスするだけで一体化することができるので、工程が単純で所望のフレキシブルICモジュールを効率良く製造することができ、フレキシブルICモジュールの生産性を高めることができる。また、不織布として、一部に非晶性共重合ポリエステルを含む結晶性樹脂繊維からなるものを用いると、非晶性共重合ポリエステルは、加熱されても再結晶化せず、したがって塩化ビニルと同様に接合用の樹脂を添加することなく単独で自己圧着性を有するので、フレキシブルICモジュールの製造時に不織布への接合用樹脂の添加を省略することができて、フレキシブルICモジュールの製造を容易なものにすることができる。また、一部に非晶性共重合ポリエステルを含む不織布は、ホットプレス後も多孔質で樹脂の含浸性に優れるので、不織布の外面に樹脂層を有するカバーシートを接着するだけで所望の情報担体を生産することができ、情報担体の生産性を高めることができる。さらに、一部に非晶性共重合ポリエステルを含む不織布は、熱収縮が小さいので、成形性に優れ、反りや変形のない高品質なフレキシブルICモジュールや情報担体を得ることができる。加えて、一部に非晶性共重合ポリエステルを含む不織布は、厚さ方向への圧縮性と自己圧着性とに優れるので、ICチップとコイルの接続体を不織布の厚さ方向にホットプレスしたときに不織布の片面にのみ接続体を埋設するための凹部が形成され、不織布の表面は平坦に形成することができるので、表面が平坦で美観に優れた情報担体を生産することができる。
【0017】
なお、本明細書において、「自己圧着性」とは、常温又は加熱下でフレキシブル基体に圧縮力を負荷したときに、フレキシブル基体を構成する各繊維が接合されると共に、複数枚のフレキシブル基体材料を重ねあわせて圧縮力を負荷した場合にはそれら重ね合わされたフレキシブル基体材料が互いに接合され、フレキシブル基体の形状が圧縮前より体積が減少した状態に保たれる特性をいう。
【0018】
また、本明細書において「ホットプレス」とは、平坦な対向面を有する上型と下型との間で、互いに重ね合わされた第1の不織布と、ICチップとコイルの接続体と、第2の不織布とに加熱下で厚さ方向の圧縮力を作用する方法をいう。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を参考例と共に説明する。
〈フレキシブルICモジュールの第1参考例〉
第1参考例に係るフレキシブルICモジュールの構成を、図1乃至図7に基づいて説明する。図1は第1参考例に係るフレキシブルICモジュールの平面図、図2は第1参考例に係るフレキシブルICモジュールの断面図、図3は第1参考例に係るフレキシブルICモジュールに搭載されるICチップ及び非接触伝送用コイルの要部平面図、図4は非接触伝送用コイルを構成する線材の断面図、図5はICチップと非接触伝送用コイルの直接接続方法及び接続部の状態を示す断面図、図6はICチップと非接触伝送用コイルの他の直接接続方法及び接続部の状態を示す断面図、図7はICチップと非接触伝送用コイルの直接接続に適用される溶接装置の使用状態の構成図である。
【0020】
図1乃至図3から明らかなように、本例のフレキシブルICモジュールは、ICチップ1と、当該ICチップ1の入出力端子(パッド)1aに直接接続され、図示しないリーダライタから前記ICチップ1への電源の供給を非接触で受けると共に当該図示しないリーダライタとの間でデータの伝送を非接触で行う非接触伝送用コイル2とを、例えば常温においてシート状に成形されたホットメルト接着剤などの熱圧着性合成樹脂シート(フレキシブル基体)3Aの片面に熱圧着により固定した構成になっている。ICチップ1及び非接触伝送用コイル2は、図2(a)に示すように、その一部が熱圧着性合成樹脂3Aの内部に埋設されるように熱圧着されるが、熱圧着性合成樹脂シート3Aの厚みや熱圧着時の加熱条件及び押圧条件等を工夫することによって、図2(b)に示すように、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2が熱圧着性合成樹脂シート3Aの内部に完全に埋設されるように熱圧着することも可能である。いずれの場合にも、前記ICチップ1及び非接触伝送用コイル2は、接続部分を保護するために、入出力端子1aを熱圧着性合成樹脂シート3A側に向けて熱圧着し、前記入出力端子1aを熱圧着性合成樹脂シート3A内に埋設することが好ましい。
【0021】
ICチップ1としては、従来より非接触式ICカードに搭載されている任意のICチップを用いることができるが、非接触式ICカードの薄形化を図るため、全厚が300μm以下、好ましくは200μm以下に薄形化されたものを用いることが望ましい。また、特に薄形のカードに適用するためには、ICチップ1として全厚が50μm〜150μm程度に薄形化されたものを用いることが好ましい。ICチップ1の構成については、公知に属する事項であり、かつ本願発明の要旨でもないので、説明を省略する。
【0022】
一方、非接触伝送用コイル2に関しては、図4(a)に示すように、銅やアルミニウムなどの良導電性金属材料からなる心線2aの周囲を樹脂などの絶縁層2bで被覆された線材から成るものを用いるほか、ICチップ1への直接接続を容易にするため、図4(b)に示すように、心線2aの周囲に金やハンダなどの接合用金属層2cが被覆され、かつ当該接合用金属層2cの周囲に絶縁層2bが被覆された線材から成るものを用いることもできる。
【0023】
非接触伝送用コイル2を構成する線材の直径は、20μm〜200μmであり、ICチップ1と非接触伝送用コイル2との接続を確実にするため、ICチップ1に設けられた入出力端子1aの一辺の長さよりも小さいものが選択的に用いられる。非接触伝送用コイル2は、所要の被覆が設けられ、かつ所要の直径を有する線材をICチップの特性に合わせて数回〜数十回ターンさせることにより形成される。
【0024】
ICチップ1と非接触伝送用コイル2の直接接続方式としては、ウェッジボンディング、ハンダ付け又は溶接が特に好適である。
【0025】
ICチップ1と非接触伝送用コイル2とをウェッジボンディングする場合には、図5(a)に示すように、ICチップ1として入出力端子1aに予め金バンプ又はニッケルバンプ1dが形成されたものが用いられる。ニッケルバンプを形成した場合には、金バンプを形成した場合に比べて、ICチップ1の低コスト化を図ることができる。金バンプ又はニッケルバンプ1dが形成されたICチップ1を用いる場合、非接触伝送用コイル2としては、接合用金属層2cを有しないものを用いることもできるが、接合をより容易かつ確実にするため、心線2aの周囲に金層が被覆されたものを用いることが特に好ましい。入出力端子1aと非接触伝送用コイル2とのウェッジボンディングは、同図に示すように、入出力端子1aに非接触伝送用コイル2の端部を重ねあわせ、非接触伝送用コイル2側よりボンディングツール51を押し付けて超音波を負荷し、そのエネルギによって絶縁層2bを炭化すると共にバンプ1dを溶融するすることによって行う。これによって、図5(b)に示すように、ICチップ1の入出力端子1aと非接触伝送用コイル2とが直接接続される。なお、これらの図に示すように、非接触伝送用コイル2としては、金バンプ又はニッケルバンプ1dの幅よりも線径が小さい線材からなるものが用いられることは当然である。
【0026】
ICチップ1と非接触伝送用コイル2とをハンダ付けする場合には、図6(a)に示すように、ICチップ1として入出力端子1aに予めハンダメッキによってハンダバンプ1bが形成されたものが用いられる。この場合、非接触伝送用コイル2としては、接合用金属層2cを有しないものを用いることもできるが、ハンダに対するぬれ性を良好にしてハンダ付けを容易かつ確実にするため、心線2aの周囲に金等が被覆されたものを用いることが特に好ましい。入出力端子1aと非接触伝送用コイル2とのハンダ付けは、同図に示すように、入出力端子1aに非接触伝送用コイル2の端部を重ねあわせ、非接触伝送用コイル2側より所定温度に加熱されたボンディングツール52を押し付け、そのエネルギによって絶縁層2bを炭化すると共にハンダバンプ1bを溶解することによって行う。これによって、図6(b)に示すように、ICチップ1の入出力端子1aと非接触伝送用コイル2とがハンダ1cを介してハンダ付けされる。なお、ICチップ1の入出力端子1aにハンダバンプ1bを形成する構成に代えて、非接触伝送用コイル2として心線2aの周囲にハンダ層が被覆されたものを用い、前記と同様の方法でハンダ付けすることも可能である。さらには、ICチップ1の入出力端子1aにハンダバンプ1bを形成し、かつ非接触伝送用コイル2として心線2aの周囲にハンダ層が被覆されたものを用いることもできる。
【0027】
また、ICチップ1と非接触伝送用コイル2とを溶接する場合には、入出力端子1aに金バンプが形成されたICチップ、又は心線2aの周囲に金層が被覆された線材から成る非接触伝送用コイル、若しくはこれらの双方が用いられる。溶接機としては、図7に示すように、微小なギャップdを隔てて平行に配置された2つの電極61a,61bを有する溶接ヘッド62と、この溶接ヘッド62に付設されたリボン巻回リール63a,63bと、これらのリボン巻回リール63a,63bに巻回され、その一部が前記電極61a,61bの先端部に接触するように配線されたリボン状抵抗発熱体64と、原動リール63aを駆動するモータ65を備えたものを用いることができる。前記リボン状抵抗発熱体64としては、比抵抗が大きくかつ熱伝導率が高いために高温を局部的に発生させることが可能で、しかも強度的にも優れることから、高純度の単結晶モリブデンから成るモリブデンリボンが最も好適である。
【0028】
溶接に際しては、図7に示すように、ICチップ1の入出力端子1aに非接触伝送用コイル2の端部を直接重ねあわせ、非接触伝送用コイル2側より前記溶接ヘッド62を押し付ける。そして、前記電極61a,61bにパルス電力を供給し、リボン状抵抗発熱体64の抵抗発熱を利用して絶縁層2bを炭化すると共に、金バンプ又は心線2aの周囲に被覆された金層若しくはその双方を溶融する。モータ65は、必要に応じて原動リール63aを駆動し、常時清浄なリボン状抵抗発熱体64を溶接ヘッド62に接触させる。なお、リボン状抵抗発熱体64に炭化物を除去するためのブラシ66を付設すれば、リボン状抵抗発熱体64の繰り返し使用が可能となり、ランニングコストを引き下げることができる。
【0029】
図7の溶接機は、図6(a)に示したボンディングツール52に代えて、ハンダ付け用の熱源として利用することもできる。
【0030】
本構成のフレキシブルICモジュールは、図1に例示したように、熱圧着性合成樹脂シート3Aからなるフレキシブル基体上にICチップ1と当該ICチップ1の入出力端子1aに直接接続された非接触伝送用コイル2とを熱圧着してなるので、単に熱圧着性合成樹脂シート3A上にICチップ1及び非接触伝送用コイル2を載置してこれらの間に所要の熱と加圧力とを作用するだけで目的物であるフレキシブルICモジュールを得ることができ、フレキシブルICモジュール、ひいてはこれを用いた情報担体の製造を極めて簡略化することができる。
【0031】
また、熱圧着性合成樹脂シート3Aからなるフレキシブル基体上にICチップ1及び非接触伝送用コイル2を熱圧着するので、少なくともICチップ1及び非接触伝送用コイル2が熱圧着されていない熱圧着性合成樹脂シート3Aの片面については平滑に形成でき、当該片面に所要のカバーシートを被着することによって、しわのない商品価値の高い情報担体を作製することができる。勿論、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2が熱圧着された面についても、例えば、図2に例示したように、熱圧着時に熱圧着性合成樹脂シート3A内にICチップ1及び非接触伝送用コイル2を完全に埋め込んでその表面を平滑に整形する、或いはICチップ1及び非接触伝送用コイル2が熱圧着された面に他の熱圧着性合成樹脂シートを介して第2のカバーシートを被着する、等の手段を施すことによって、しわの発生を抑制することができる。
【0032】
さらに、本構成のICモジュールは、熱圧着性合成樹脂シート3Aをもって基体が構成されており、極めてフレキシビリティに富んでいるので、平板状の情報担体の構成部品として利用できるだけでなく、湾曲した部分や繰り返し変形を受ける部分に付設される情報担体としても適用することができる。
【0033】
加えて、ICチップ1と非接触伝送用コイル2とを直接接続したので、配線基板の省略が可能になり、フレキシブルICモジュールひいては最終製品である非接触ICカードの薄形化と低コスト化を図ることができる。特に、ICチップ1と非接触伝送用コイル2の直接接続方法としてハンダ法又は溶接法を用いた場合には、ウェッジボンディング法を適用した場合に比べて、以下のような利点がある。即ち、ウェッジボンディングは、ICチップ1の入出力端子1aに重ねあわされた非接触伝送用コイル2にボンディングツール51を強圧しつつ当該ボンディングツール51より発振された超音波を接合部に負荷し、そのエネルギによって絶縁層2bを破壊すると共に金メッキ層2dの溶融を促進することによって行うので、図5(b)に示すように非接触伝送用コイル2の先端部が扁平状に変形し、非変形部との境界部から断線しやすい。また、ウェッジボンディング法は、接続部に超音波及び強圧を加えることからICチップにダメージを与えやすく、特に、厚みが50μm〜150μm程度の薄形ICチップを用いた場合にその影響が顕著になる。さらに、ウェッジボンディング法は、条件設定が複雑な超音波を利用するために接続条件の維持管理が難しく、良品を安定に製造することが難しい。
【0034】
これに対して、ハンダ法や溶接法は、接続部に超音波を負荷せず、かつボンディングツール52や溶接ヘッド62の押圧力もウェッジボンディング法より弱いので、非接触伝送用コイル2の断線やICチップの破壊を起すことがなく、超音波を利用しないことから接続条件の維持管理も容易である。なお、本発明によるハンダ法を採る場合、心線2aの周囲を接合用金属層2c及び絶縁層2bで被覆された線材を利用することから、線材に酸化皮膜が形成されない。したがって、通常のハンダ接合時には酸化皮膜を除去するために必要とされるフラックスを用いる必要がなく、フラックスの洗浄工程の追加による製造工程の複雑化も防止することができる。
【0035】
〈フレキシブルICモジュールの第2参考例〉
次に、第2参考例に係るフレキシブルICモジュールの構成を、図8に基づいて説明する。図8は第2参考例に係るフレキシブルICモジュールの断面図である。
【0036】
図8から明らかなように、本例のフレキシブルICモジュールは、2枚の熱圧着性合成樹脂シート3A1,3A2の間にICチップ1及び非接触伝送用コイル2を挾み込んで熱圧着したことを特徴とする。本例の熱圧着性合成樹脂シート3A1,3A2としては、第1例に係る熱圧着性合成樹脂シート3Aと同種のものを用いることができる。その他の構成については、第1参考例に係るフレキシブルICモジュールと同じであるので、重複を避けるために説明を省略する。
【0037】
本例のフレキシブルICモジュールは、2枚の熱圧着性合成樹脂シート3A1,3A2の間にICチップ1及び非接触伝送用コイル2を挾み込んだので、第1例のフレキシブルICモジュールに比べてICチップ1及び非接触伝送用コイル2の保護効果が高く、以後の工程における取り扱いがより容易になり、高性能の情報担体を高能率に製造することができる。また、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2の保護効果が高いことから、そのまま情報担体として使用することもできる。
【0038】
〈フレキシブルICモジュールの第3参考例〉
次に、第3参考例に係るフレキシブルICモジュールの構成を、図9に基づいて説明する。図9は第3参考例に係るフレキシブルICモジュールの断面図である。
【0039】
図9(a),(b),(c)から明らかなように、本例のフレキシブルICモジュールは、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2を熱圧着するフレキシブル基体として、例えば塩化ビニルシートやポリプロピレンシート等の非熱圧着性合成樹脂シート(カバーシート)41が裏打ちされた熱圧着性合成樹脂シート3Aを用いたことを特徴とする。前記ICチップ1及び非接触伝送用コイル2は、熱圧着性合成樹脂シート3Aの表面に熱圧着される。その他の構成については、第1参考例に係るフレキシブルICモジュールと同じであるので、重複を避けるために説明を省略する。
【0040】
本例のフレキシブルICモジュールは、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2を熱圧着するフレキシブル基体として、カバーシート41が裏打ちされた熱圧着性合成樹脂シート3Aを用いたので、フレキシブルICモジュールの製造工程における熱圧着性合成樹脂シートの取り扱いを容易化できると共に、製品であるフレキシブルICモジュールの強度を高めることができる。
【0041】
〈フレキシブルICモジュールの第4参考例〉
次に、第4参考例に係るフレキシブルICモジュールの構成を、図10及び図11に基づいて説明する。図10は第4参考例に係るフレキシブルICモジュールの分解斜視図、図11は第4参考例に係るフレキシブルICモジュールの断面図である。
【0042】
これらの図から明らかなように、本例のフレキシブルICモジュールは、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2の表面に不織布12を被せ、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2を不織布12と共に熱圧着性合成樹脂シート3Aに熱圧着したことを特徴とする。不織布12としては、公知に属する任意の不織布を用いることができるが、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2並びに熱圧着性合成樹脂シート3Aとの熱圧着性が良好であることから、前述した如き単体で自己圧着性を有するもの又は適量の合成樹脂を含浸させることによって自己圧着性が付与されたものが好適であり、特に、取り扱いが容易で熱圧着性にも優れることから、ポリエチレンテレフタレート(PET)の心材の周囲が非晶質のポリエチレンテレフタレート(PET−G)にてコーティングされた繊維からなるものを用いることが好ましい。
【0043】
なお、図11の例では、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2の一部のみが熱圧着性合成樹脂シート3Aに埋設されているが、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2の全体を熱圧着性合成樹脂シート3A内に埋設することも可能である。また、図11の例では、入出力端子1aを不織布12側に向けてICチップ1及び非接触伝送用コイル2が熱圧着性合成樹脂シート3Aに熱圧着されているが、入出力端子1aを熱圧着性合成樹脂シート3A側に向けてICチップ1及び非接触伝送用コイル2を熱圧着性合成樹脂シート3Aに熱圧着することも勿論可能である。その他の構成については、第1参考例に係るフレキシブルICモジュールと同じであるので、重複を避けるために説明を省略する。
【0044】
本例のフレキシブルICモジュールは、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2の表面に不織布12を被せて熱圧着性合成樹脂シート3Aに熱圧着したので、当該フレキシブルICモジュールの製造時及び当該フレキシブルICモジュールの表面にカバーシートを熱圧着して所望の情報担体を製造する際に、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2が不織布12によって保持され、外力によるICチップ1及び非接触伝送用コイル2の位置ずれや非接触伝送用コイル2の変形が抑制される。よって、非接触伝送用コイル2の断線を防止できると共に通信特性のバラツキを抑制することができ、良品の歩留まりを高めることができる。また、大型の熱圧着性合成樹脂シート3Aに多数のICチップ1及び非接触伝送用コイル2を配列して所望のフレキシブルICモジュール又は情報担体を多数個取りする場合にあっては、非接触伝送用コイル2の変形を抑制できることから、切断行程における非接触伝送用コイル2の切断を防止することができ、この点からも良品の歩留まりを高めることができる。
【0045】
〈フレキシブルICモジュールの第5参考例〉
次に、第5参考例に係るフレキシブルICモジュールの構成を、図12に基づいて説明する。図12は第5参考例に係るフレキシブルICモジュールの断面図である。
【0046】
図12から明らかなように、本例のフレキシブルICモジュールは、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2の表裏両面に不織布12を配置し、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2を2枚の不織布12と共に熱圧着性合成樹脂シート3Aに熱圧着したことを特徴とする。その他の構成については、第4参考例に係るフレキシブルICモジュールと同じであるので、重複を避けるために説明を省略する。
【0047】
本例のフレキシブルICモジュールは、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2の表裏両面に不織布12を配置したので、フレキシブルICモジュールの製造時及び情報担体の製造時におけるICチップ1及び非接触伝送用コイル2の位置ずれや非接触伝送用コイル2の変形がより効果的に抑制され、良品の歩留まりをより一層高めることができる。
【0048】
〈フレキシブルICモジュールの実施形態例〉
次に、本発明に係るフレキシブルICモジュールの実施形態例を、図13に基づいて説明する。図13は実施形態例に係るフレキシブルICモジュールの断面図である。
【0049】
図13から明らかなように、本例のフレキシブルICモジュールは、一部に非晶性共重合ポリエステルを含む結晶性樹脂繊維からなる不織布3B(フレキシブル基体)内にICチップ1及び非接触伝送用コイル2を埋設して熱圧着したことを特徴とする。
【0050】
前記不織布3Bとしては、所要の自己圧着性を確保するため、繊維表面の50%以上の部分に非結晶性共重合ポリエステルが存在するものを用いることが特に好ましい。
【0051】
その他の構成については、第1参考例に係るフレキシブルICモジュールと同じであるので、重複を避けるために説明を省略する。
【0052】
非晶性共重合ポリエステルは、加熱により軟化するため、自己圧着性が発揮される。また、非晶性共重合ポリエステルは、加熱しても溶融しないため、各繊維間の空隙が埋められることがなく、加熱圧縮後も樹脂の含浸性を維持できる。さらに、全体が非晶性共重合ポリエステルからなるのではなく、一部に結晶性樹脂を含む繊維シートは、強度に優れ、かつ熱圧着時の熱収縮が小さい。よって、一部に非晶性共重合ポリエステルを含む結晶性樹脂からなる不織布3B内にICチップ1及び非接触伝送用コイル2を埋設した本例のフレキシブルICモジュールは、第1実施形態例に係るフレキシブルICモジュールと同様の効果を有するほか、自己圧着性及び樹脂の含浸性に優れ、強度が高く、さらには、熱圧着時の熱収縮が小さく、反りを生じにくいという効果を有する。
【0053】
なお、本実施形態例においては、一部に非晶性共重合ポリエステルを含む結晶性樹脂繊維からなる不織布を用いたが、結晶性樹脂からなる単繊維と非結晶性共重合ポリエステルからなる単繊維との混合体からなる不織布を用いた場合にも、同様の効果を得ることができる。
【0054】
また、本実施形態例においては、フレキシブル基体材料として不織布3Bを用いたが、一部に非晶性共重合ポリエステルを含む結晶性樹脂繊維からなる織物や編み物を用いることもできる。
【0055】
〈フレキシブルICモジュールの第6参考例〉
次に、第6参考例に係るフレキシブルICモジュールの構成を、図14に基づいて説明する。図14は第6参考例に係るフレキシブルICモジュールの断面図である。
【0056】
図14から明らかなように、本例のフレキシブルICモジュールは、一部に非晶性共重合ポリエステルを含む結晶性樹脂繊維からなる不織布3Bの片面にICチップ1及び非接触伝送用コイル2を埋設して熱圧着したことを特徴とする。その他の構成については、実施形態例に係るフレキシブルICモジュールと同じであるので、重複を避けるために説明を省略する。
【0057】
本例のフレキシブルICモジュールは、実施形態例に係るフレキシブルICモジュールと同様の効果を有するほか、不織布3Bの片面にICチップ1及び非接触伝送用コイル2を埋設したので、薄形にして不織布3Bの使用量が少ないフレキシブルICモジュールを得ることができる。
【0058】
〈フレキシブルICモジュールの第7参考例〉
次に、第7参考例に係るフレキシブルICモジュールの構成を、図15に基づいて説明する。図15は第7参考例に係るフレキシブルICモジュールの断面図である。
【0059】
図15から明らかなように、本例のフレキシブルICモジュールは、非接触伝送用コイル2として、巻線コイルを用いる構成に代えて、不織布3B(フレキシブル基体)の片面に形成された平面コイルを用いたことを特徴とする。この平面コイルからなる非接触伝送用コイル2は、不織布3Bの表面に設けられた金属箔のエッチング、不織布3Bの表面への導電性インクの印刷又はメッキ等によって形成することができる。また、当該平面コイル2とICチップ1との電気的接続は、導電ペースト又は異方性導電フィルム4を介して行うことができ、不織布3B(フレキシブル基体)とICチップ1との結合強度の改善を図るためにはポッティング樹脂を併用することもできる。
【0060】
本例のフレキシブルICモジュールは、第6参考例に係るフレキシブルICモジュールと同様の効果を有するほか、非接触伝送用コイル2として不織布3B(フレキシブル基体)の片面に形成された平面コイルを用いたので、巻線コイルを用いる場合に比べて、格段にその取り扱いを容易化することができ、良品の歩留まりを向上することができる。
【0061】
〈フレキシブルICモジュール製造方法の第1参考例〉
以下、第2参考例に係るフレキシブルICモジュール製造方法を、図16に基づいて説明する。図16はフレキシブルICモジュール製造方法の第1参考例を示す説明図である。
【0062】
図16の製造方法は、所謂ホットプレス法を適用して図1及び図2に示したフレキシブルICモジュールを製造するものであって、フレキシブルICモジュールの製造に先立ち、所定形状及び所定寸法のシート状に成形された熱圧着性合成樹脂シート3と、ICチップ1の入出力端子1aに非接触伝送用コイル2の両端が直接接続されたもの(図3参照)を用意する。しかる後に、図16に示すように、上面が平滑な平面状に形成された下型11の上に熱圧着性合成樹脂シート3を置き、当該熱圧着性合成樹脂シート3上に入出力端子1aを下向きにしてICチップ1とコイル2との接続体を載置する。次いで、これらICチップ1及び非接触伝送用コイル2の上方から下面が平滑な平面状に形成された上型14を押し付け、加熱下で前記熱圧着性合成樹脂シート3を厚さ方向に圧縮する。これによって、熱圧着性合成樹脂シート3が軟化し、加圧力に応じた量だけICチップ1及び非接触伝送用コイル2が熱圧着性合成樹脂シート3内に埋設される。以下、加熱された熱圧着性合成樹脂シート3を冷却すれば、熱圧着性合成樹脂シート3が硬化してICチップ1及びコイル2が確実に保持されるので、これによって所要のフレキシブルICモジュール10が得られる。
【0063】
本例のフレキシブルICモジュール製造方法は、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2を保持するための基体として熱圧着性合成樹脂シート3を用いたので、熱圧着性合成樹脂シート3上に所要の接続体を載置し、これらの間に所要の熱と加圧力とを作用するだけで前記熱圧着性合成樹脂シート3上に所要の接続体を確実に固定することができ、フレキシブルICモジュールの製造を極めて高能率に行うことができる。また、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2として、ICチップ1の入出力端子1aにコイル2の両端が直接接続されたものを用いたので、フレキシブルICモジュールを薄形に形成することができる。
【0064】
なお、図16の例では、1枚の熱圧着性合成樹脂シート3上に1つの接続体を熱圧着したが、1枚の大型の熱圧着性合成樹脂シート3上に複数個の接続体を同時に熱圧着し、熱圧着後熱圧着性合成樹脂シート3を切断して所要のフレキシブルICモジュール10を多数個取りすることも勿論可能である。
【0065】
〈フレキシブルICモジュール製造方法の第2参考例〉
次に、第2参考例に係るフレキシブルICモジュール製造方法を、図17に基づいて説明する。図17はフレキシブルICモジュール製造方法の第2参考例を示す説明図である。
【0066】
図17の製造方法は、所謂ロールプレス法を適用して図1及び図2に示したフレキシブルICモジュールを製造するものであって、フレキシブルICモジュールの製造に先立って、所定形状及び所定寸法のテープ状に成形された熱圧着性合成樹脂シート3と、ICチップ1の入出力端子1aに非接触伝送用コイル2の両端が直接接続されたもの(図3参照)を用意する。しかる後に、図17に示すように、テープ状に成形されかつロール状に巻回された熱圧着性合成樹脂シート3の一端を巻き取りローラ78にて巻き取りつつ、その上面にマニピュレータ等の搬送手段72を用いて、入出力端子1aを下向きにしてICチップ1とコイル2との接続体を等間隔に搭載してゆき、前記接続体が搭載された熱圧着性合成樹脂シート3を加熱・加圧ローラ74の間に導入して、加熱下で前記熱圧着性合成樹脂シート3を厚さ方向に圧縮する。これによって、熱圧着性合成樹脂シート3が軟化し、加圧力に応じた量だけICチップ1及び非接触伝送用コイル2が熱圧着性合成樹脂シート3内に埋設される。以下、加熱された熱圧着性合成樹脂シート3を冷却すれば、熱圧着性合成樹脂シート3が硬化してICチップ1及び非接触伝送用コイル2が確実に保持されるので、これによって所要のフレキシブルICモジュール10が得られる。
【0067】
本例のフレキシブルICモジュール製造方法は、第1参考例に係るフレキシブルICモジュール製造方法と同様の効果を有するほか、各部材の熱圧着をロールプレスにより行うので、各部材の熱圧着を連続的に行うことができ、所望のフレキシブルICモジュールの製造をより効率的に行うことができる。
【0068】
なお、図16及び図17の製造方法においては、熱圧着性合成樹脂シート3を1枚のみ用い、当該熱圧着性合成樹脂シート3片面にICチップ1及び非接触伝送用コイル2を熱圧着したが、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2が熱圧着された第1の熱圧着性合成樹脂シートの上から第2の熱圧着性合成樹脂シートをかぶせてこれらを一体に熱圧着すれば、図8に示した埋設型のフレキシブルICモジュールを製造することができる。この場合、ICチップ1の入出力端子1aは、必ずしも第1の熱圧着性合成樹脂シート3a側に向ける必要はなく、入出力端子1aを上向きにしてICチップ1とコイル2との接続体を第1の熱圧着性合成樹脂シート3a上に載置することもできる。
【0069】
また、図16及び図17の製造方法においては、熱圧着性合成樹脂シート3を単独で用いたが、裏面に非熱圧着性合成樹脂シートからなるカバーシートが裏打ちされた熱圧着性合成樹脂シート3を用いれば、図9に示したカバーシート41を有するフレキシブルICモジュールを製造することができる。
【0070】
さらに、図16及び図17の製造方法においては、ICチップ1と非接触伝送用コイル2との接続体をそのまま熱圧着性合成樹脂シート3に熱圧着したが、熱圧着時の非接触伝送用コイル2の変形やチップエッジ部におけるコイルショートなどを防止するため、ICチップ1と非接触伝送用コイル2との接続部の周囲を予め樹脂封止しておくことも勿論可能である。
【0071】
〈フレキシブルICモジュール製造方法の第3参考例〉
次に、第3参考例に係るフレキシブルICモジュール製造方法を、図18及び図19に基づいて説明する。図18は不織布に対するICチップ1及び非接触伝送用コイル2の熱圧着方法を示す説明図であり、図19はICチップ1及び非接触伝送用コイル2が熱圧着された不織布と熱圧着性合成樹脂シート3との熱圧着方法を示す説明図である。
【0072】
本例の製造方法は、所謂ホットプレス法を適用して図11及び図12に示したフレキシブルICモジュールを製造するものであって、フレキシブルICモジュールの製造に先立って、所定形状及び所定寸法のシート状に成形された熱圧着性合成樹脂シート3と、これとほぼ同一寸法の不織布12と、ICチップ1の入出力端子1aに非接触伝送用コイル2の両端が直接接続されたもの(図3参照)を用意する。次に、図18に示すように、上面が平滑な平面状に形成された下型11の上に自己圧着性の不織布12を置き、当該不織布12上に入出力端子1aを下向きにしてICチップ1とコイル2との接続体を載置する。そして、当該不織布12の上方から下面のICチップ設定部と対応する部分に逃げ穴15aが形成された上型15を押し付け、加熱下で非接触伝送用コイル2を押圧する。これによって、自己圧着性の不織布12の表面にICチップ1及び非接触伝送用コイル2が熱圧着された中間体20が得られる。このように、所要の位置に逃げ穴15aが形成された上型15を用いると、ICチップ1に直接ストレスが作用しないので、製造段階におけるICチップ1の破壊を防止することができる。なお、上型15に逃げ穴15aを形成する構成に代えて、シリコンフィルムやテフロンフィルムなどのゴム状弾性を有する部材を、下型11及び上型15のうちの少なくともいずれか一方に設置した場合にも、同様の効果が得られる。
【0073】
次に、図19に示すように、上面が平滑な平面状に形成された下型11の上に熱圧着性合成樹脂シート3を置き、当該熱圧着性合成樹脂シート3上にICチップ1及び非接触伝送用コイル2を下向きにして不織布12を載置する。次いで、当該不織布12の上方から下面が平滑な平面状に形成された上型14を押し付け、加熱下で前記熱圧着性合成樹脂シート3を厚さ方向に圧縮する。これによって、熱圧着性合成樹脂シート3が軟化し、加圧力に応じた量だけICチップ1及び非接触伝送用コイル2が熱圧着性合成樹脂シート3内に埋設されると共に、熱圧着性合成樹脂シート3と不織布12とが一体化される。以下、加熱された熱圧着性合成樹脂シート3を冷却すれば、熱圧着性合成樹脂シート3が硬化してICチップ1及びコイル2が確実に保持されるので、これによって所要のフレキシブルICモジュール10が得られる。
【0074】
本例のフレキシブルICモジュール製造方法は、第1参考例に係るフレキシブルICモジュール製造方法と同様の効果を有するほか、不織布12の表面にICチップ1及び非接触伝送用コイル2が熱圧着された中間体20を熱圧着性合成樹脂シート3に熱圧着するようにしたので、熱圧着性合成樹脂シート3上に設定する場合におけるICチップ1及び非接触伝送用コイル2の取り扱いを容易化でき、フレキシブルICモジュールの生産性をより一層高めることができる。また、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2が不織布12によって常時保持されるので、熱圧着性合成樹脂シート3への熱圧着時にICチップ1及び非接触伝送用コイル2の位置ずれや非接触伝送用コイル2の変形が生じにくく、位置ずれに伴う非接触伝送用コイル2の断線や非接触伝送用コイル2の変形に伴う通信特性のバラツキを抑制できることから、良品の歩留まりを高めることができる。さらに、大型の熱圧着性合成樹脂シート3に多数のICチップ1及び非接触伝送用コイル2を配列して所望のフレキシブルICモジュール又は情報担体を多数個取りする場合にあっては、非接触伝送用コイル2の変形を抑制できることから、切断行程における非接触伝送用コイル2の切断を防止することができ、この点からも良品の歩留まりを高めることができる。
【0075】
〈フレキシブルICモジュール製造方法の第4参考例〉
次に、第4参考例に係るフレキシブルICモジュール製造方法を、図20に基づいて説明する。図20はフレキシブルICモジュール製造方法の第4参考例を示す説明図である。
【0076】
図20の製造方法は、所謂ロールプレス法を適用して図11及び図12に示したフレキシブルICモジュールを製造するものであって、フレキシブルICモジュールの製造に先立って、所定寸法のテープ状に形成されロール状に巻回された熱圧着性合成樹脂シート3と、これとほぼ同一寸法のテープ状に形成されロール状に巻回された中間体20(不織布12にICチップ1と非接触伝送用コイル2の接続体が等間隔に取り付けられたもの;図17参照)とを用意する。しかる後に、図20に示すように、熱圧着性合成樹脂シート3及び中間体20の一端を引き出しつつ、ICチップ1と非接触伝送用コイル2の接続体を内側にしてこれら熱圧着性合成樹脂シート3と中間体20とを貼り合わせ、次いで、この接合体を加熱・加圧ローラ74の間に導入して、加熱下で厚さ方向に圧縮する。これによって、熱圧着性合成樹脂シート3が軟化し、加圧力に応じた量だけICチップ1及び非接触伝送用コイル2が熱圧着性合成樹脂シート3内に埋設されると共に、熱圧着性合成樹脂シート3と中間体20を構成する不織布12とが密着される。以下、加熱された熱圧着性合成樹脂シート3を冷却すれば、熱圧着性合成樹脂シート3が硬化してICチップ1及び非接触伝送用コイル2が確実に保持されるので、これによって所要のフレキシブルICモジュール10が得られる。なお、図中の符号75は引き出しローラ、76は案内ローラ、77は貼り合わせローラ、78は巻き取りローラ、79は冷却ローラを示している。
【0077】
本例のフレキシブルICモジュール製造方法は、第3参考例に係るフレキシブルICモジュール製造方法と同様の効果を有するほか、各部材の熱圧着をロールプレスにより行うので、各部材の熱圧着を連続的に行うことができ、所望のフレキシブルICモジュールの製造をより効率的に行うことができる。
【0078】
〈フレキシブルICモジュール製造方法の第5参考例〉
次に、第5参考例に係るフレキシブルICモジュール製造方法を、図21に基づいて説明する。図21はフレキシブルICモジュール製造方法の第5参考例を示す説明図である。
【0079】
本例のフレキシブルICモジュール製造方法は、中間体20の製造と完成品であるフレキシブルICモジュールの製造とを一工程で行うこと、並びに、熱圧着性合成樹脂シート3と中間体20との接合をホットプレスにより行うことを特徴する。
【0080】
即ち、本例のフレキシブルICモジュール製造方法は、図21に示すように、所定寸法のテープ状に形成されロール状に巻回された熱圧着性合成樹脂シート3と、同じく所定寸法のテープ状に形成されロール状に巻回された自己圧着性を有する不織布12とを用意し、不織布12の一端を引き出しつつ、当該不織布12上に、接合工程にて作製されたICチップ1と非接触伝送用コイル2の接続体Mを等間隔に載置する。次いで、接続体Mが載置された不織布12を下型11と上型15とからなるホットプレス装置11に導入し、接続体Mと不織布12を加熱下で厚さ方向に圧縮する。これにより、接続体Mと不織布12とが一体化された中間体20が作製される。次いで、このようにして作製された中間体20の接続体載置面に熱圧着性合成樹脂シート3の引き出し端を重ね合わせ、加熱プレス92に導入して、これら中間体20と熱圧着性合成樹脂シート3の接合体を加熱下で厚さ方向に圧縮する。これによって、熱圧着性合成樹脂シート3が軟化し、中間体20と熱圧着性合成樹脂シート3とが一体化される。次に、一体化された中間体20と熱圧着性合成樹脂シート3とを冷却プレス93に導入し、所定の厚さに成形されたフレキシブルICモジュールの原反94を得る。この原反94は、ロール状に巻回され、保存される。なお、図中の符号75は引き出しローラ、76は案内ローラ、78は巻き取りローラを示している。
【0081】
本例のフレキシブルICモジュール製造方法は、第4参考例に係るフレキシブルICモジュール製造方法と同様の効果を有するほか、中間体20の製造と完成品であるフレキシブルICモジュールの製造とを一工程で行うので、フレキシブルICモジュールの原反の製造をより効率的に行うことができる。また、中間体20と熱圧着性合成樹脂シート3とをホットプレスにて貼り合わせるので、ロールプレス法による場合に比べて両部材の加熱時間を十分に長くすることができ、熱圧着性合成樹脂シート3として、例えば塩化ビニルやABSなどの樹脂材料の使用が可能になる。
【0082】
〈フレキシブルICモジュール製造方法の実施形態例〉
次に、本発明に係るフレキシブルICモジュール製造方法の実施形態例を、図22に基づいて説明する。図22はフレキシブルICモジュール製造方法の実施形態例を示す説明図である。
【0083】
本例の製造方法は、所謂ホットプレス法を適用して図13に示したフレキシブルICモジュールを製造するものであって、フレキシブルICモジュールの製造に先立って、一部に非晶性共重合ポリエステルを含む結晶性樹脂繊維からなり所定形状及び所定寸法のシート状に成形された第1及び第2の不織布3B1,3B2と、ICチップ1の入出力端子1aに非接触伝送用コイル2の両端が直接接続されたもの(図3参照)を用意する。
【0084】
しかる後に、図22に示すように、上面が平滑な平面状に形成された下型11の上に、第1の不織布3B1と、ICチップ1及びコイル2の接続体と、第2の不織布3B2とを互いに位置決めしてこの順に載置する。次に、当該積層体の上方から下面が平坦に形成された上型14を押し付け、加熱下でICチップ1及び非接触伝送用コイル2を押圧する。これによって、不織布3B1,3B2中の非晶性共重合ポリエステルが軟化し、2枚の不織布3B1,3B2の間にICチップ1及び非接触伝送用コイル2が熱圧着される。以下、加熱された不織布3B1,3B2を冷却すれば、不織布3B1,3B2中の非晶性共重合ポリエステルが硬化してICチップ1及びコイル2が確実に保持されるので、これによって所要のフレキシブルICモジュール10が得られる。その他については、第1参考例に係るフレキシブルICモジュール製造方法と同じであるので、説明を省略する。
【0085】
本例のフレキシブルICモジュール製造方法は、第1参考例に係るフレキシブルICモジュール製造方法と同様の効果を有するほか、フレキシブル基体の素材として、一部に非晶性共重合ポリエステルを含む結晶性樹脂繊維からなる不織布3B1,3B2を用いたので、熱圧着後も良好な樹脂の含浸性を保持することができ、この種のフレキシブルICモジュールを用いた情報担体の製造を容易なものにすることができると共に、熱圧着時の不織布の熱収縮を抑制することができ、平坦性に優れたフレキシブルICモジュールを製造することができる。
【0086】
なお、前記実施形態例においては、ICチップ1及びコイル2の接続体を介してその上方及び下方にそれぞれ第1及び第2の不織布3B1,3B2を配置することによって、図13のフレキシブルICモジュールを製造したが、第2の不織布3B2を省略すれば、同様の工程によって図14のフレキシブルICモジュールを製造することができる。もちろん、この場合には、ICチップ1を保護するため、図18に示すように、ICチップ設定部と対応する部分に逃げ穴15aが形成された上型15が用いられる。
【0087】
なお、本実施形態例においては、フレキシブル基体材料として不織布3B1,3B2を用いたが、織物や編み物など他の繊維シートを用いることも勿論可能である。
【0088】
〈フレキシブルICモジュール製造方法の第6参考例〉
次に、第6参考例に係るフレキシブルICモジュール製造方法を、図23に基づいて説明する。図23はフレキシブルICモジュール製造方法の第6参考例を示す説明図である。
【0089】
本例の製造方法は、所謂ホットプレス法を適用して、図15に示したフレキシブルICモジュールを製造するものであって、フレキシブルICモジュールの製造に先立ち、一部に非晶性共重合ポリエステルを含む結晶性樹脂繊維からなり所定形状及び所定寸法のシート状に成形された不織布3Bと、ICチップ1とを用意する。
【0090】
そして、まず、前記不織布3Bの片面に、例えばエッチング、印刷又はメッキ等の手段を用いて所望の非接触伝送用の平面コイル2を形成する。次いで、図23に示すように、上面が平滑な平面状に形成された下型11の上に、前記平面コイル2を上向きにして前記不織布3Bを載置し、前記平面コイル2のパッド部に導電ペースト又はACF4を介してICチップ1を配置する。さらに、前記ICチップ1の上から第2の不織布3Bを被せる。しかる後に、第2の不織布3Bの上方から下面が平坦に形成された上型15を押し付け、加熱下でICチップ1を押圧する。これによって、ICチップ1と平面コイル2とが導電ペースト又はACF4を介して電気的に接続される。また、不織布3B中の非晶性共重合ポリエステルが軟化し、2枚の不織布3Bの間にICチップ1が熱圧着される。以下、加熱された不織布3Bを冷却すれば、不織布3B中の非晶性共重合ポリエステルが硬化してICチップ1が確実に保持されるので、これによって所要のフレキシブルICモジュール10が得られる。その他については、実施形態例に係るフレキシブルICモジュール製造方法と同じであるので、説明を省略する。
【0091】
本例のフレキシブルICモジュール製造方法は、実施形態例に係るフレキシブルICモジュール製造方法と同様の効果を有するほか、非接触伝送用のコイルとしてフレキシブル基体である不織布3Bに形成された平面コイルを用いたので、巻線コイルを用いる場合に比べて、フレキシブルICモジュールの製造工程におけるコイル2の取り扱いを格段に容易化でき、良品の歩留を高めることができる。
【0092】
〈情報担体製造方法の第1例〉
以下、前記参考例及び実施形態例に係るフレキシブルICモジュール10を利用した情報担体製造方法の第1例を、非接触ICカードの製造方法を例に取り、図24に基づいて説明する。図24は本例に係る非接触ICカードの製造方法を示す説明図である。
【0093】
図24の製造方法は、熱圧着性合成樹脂シートどうしの接合を利用したホットプレス法を適用したものであって、非接触ICカードの製造に先立ち、所定形状及び所定寸法に成形された第1のカバーシート41と、前記のようにして製造されたフレキシブルICモジュール10と、所定形状及び所定寸法に成形されたシート状の第2の熱圧着性合成樹脂シート5と、第2のカバーシート43とを用意する。
【0094】
しかる後に、図24に示すように、上面が平滑な平面状に形成された下型11の上に第1のカバーシート41を置き、当該第1のカバーシート41上にICチップ1及び非接触伝送用コイル2の熱圧着面を上向きにしてフレキシブルICモジュール10を重ね、さらに、当該フレキシブルICモジュール10上に第2の熱圧着性合成樹脂シート5と第2のカバーシート43とをこの順に重ねる。次いで、前記第2のカバーシート43の上方から下面が平滑な平面状に形成された上型14を押し付け、加熱下で前記積層体を厚さ方向に圧縮する。これによって、フレキシブルICモジュール10を構成する熱圧着性合成樹脂シート3及び第2の熱圧着性合成樹脂シート5が軟化して、第1のカバーシート41とフレキシブルICモジュール10を構成する熱圧着性合成樹脂シート3、当該フレキシブルICモジュール10を構成する熱圧着性合成樹脂シート3と第2の熱圧着性合成樹脂シート5、当該第2の熱圧着性合成樹脂シート5と第2のカバーシート43とが互いに密着すると共に、フレキシブルICモジュール10を構成する熱圧着性合成樹脂シート3及び第2の熱圧着性合成樹脂シート5が加圧力に応じた量だけ変形してICチップ1及び非接触伝送用コイル2がこれら熱圧着性合成樹脂シート3,5内に埋設され、さらには第1及び第2のカバーシート41,43の表面が平坦化される。以下、加熱された熱圧着性合成樹脂シート3,5を冷却すれば、熱圧着性合成樹脂シート3,5が硬化してICチップ1及びコイル2が確実に保持されると共に、第1及び第2のカバーシート41,43がそれぞれ熱圧着性合成樹脂シート3,5に密着されるので、必要に応じて各カバーシート41,43の表面に所望の印刷等を施すことによって所要の非接触ICカードが得られる。
【0095】
本例の製造方法によると、予め製造されたフレキシブルICモジュールの表面に第2の熱圧着性合成樹脂シート5及び第1及び第2のカバーシート41,43を熱圧着するだけで所要の非接触ICカードを得ることができるので、非接触ICカードの製造を極めて簡略化することができる。また、熱圧着性合成樹脂シート3上にICチップ1及び非接触伝送用コイル2を熱圧着するので、少なくともICチップ1及び非接触伝送用コイル2が熱圧着されていない熱圧着性合成樹脂シート3の片面については平滑に形成でき、当該片面に所要のカバーシートを被着することによって、しわのない商品価値の高い非接触ICカードを作製することができる。また、基体である熱圧着性合成樹脂シート3,5に透孔が開設されていないので、非接触ICカードを湾曲させても特定部分に応力が集中するということがなく、耐久性に優れる。さらに、本例の非接触ICカードは、熱圧着性合成樹脂シート3,5をもって基体が構成されており、極めてフレキシビリティに富んでいるので、平板状の非接触ICカードの構成部品として利用できるだけでなく、湾曲した部分や繰り返し変形を受ける部分に付設される非接触ICカードとしても適用することができる。加えて、本例の非接触ICカードは、ICチップ1と非接触伝送用コイル2とを直接接続したので、配線基板の省略が可能になり、非接触ICカードの薄形化と低コスト化を図ることができる。
【0096】
なお、図24の例では、1個取り用のフレキシブルICモジュール10を利用して非接触ICカードを1枚ずつ製造したが、多数個取り用のフレキシブルICモジュールを利用することによって所要の非接触ICカードを多数個取りするようになすことも勿論可能である。
【0097】
また、図24の例では、熱圧着性合成樹脂シート3の片面にICチップ1と非接触伝送用コイル2との接続体を熱圧着してなるフレキシブルICモジュール10を用いたが、図8に示すように2枚の熱圧着性合成樹脂シート3a,3bの間に前記の接続体が挾み込まれたフレキシブルICモジュールを用いることもできる。この場合には、図24における熱圧着性合成樹脂シート5が不要になる。
【0098】
また、図24の例では、互いに別体に製造された熱圧着性合成樹脂シート3,5とカバーシート41,43とを用いたが、裏面に非熱圧着性合成樹脂シートからなるカバーシートが予め裏打ちされた熱圧着性合成樹脂シート3,5を用いることもできる。このようにすると、各製造工程における熱圧着性合成樹脂シートの取り扱いが容易になるため、情報担体の製造をより効率化することができる。
【0099】
また、図24の例では、フレキシブルICモジュール10の表裏両面に第1のカバーシート41と第2のカバーシート43とを配置したが、情報担体の薄形化を図るため、いずれか一方のカバーシートを省略することもできる。
【0100】
さらに、図24の例では、不織布を有しないフレキシブルICモジュール10を用いたが、図11及び図12に示すように、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2の片面又は両面に不織布12が備えられたフレキシブルICモジュールを用いることもできる。
【0101】
〈情報担体製造方法の第2例〉
図25の製造方法は、熱圧着性合成樹脂シートと単体で自己圧着性を有する不織布又は適量の合成樹脂を含浸させることによって自己圧着性が付与された不織布との接合を利用したホットプレス法を適用したものであって、非接触ICカードの製造に先立ち、所定形状及び所定寸法に成形された第1のカバーシート41と、前記のようにして製造されたフレキシブルICモジュール10と、所定形状及び所定寸法に成形された前記の不織布12と、第2のカバーシート43とを用意する。
【0102】
しかる後に、図25に示すように、上面が平滑な平面状に形成された下型11の上に第1のカバーシート41を置き、当該第1のカバーシート41上にICチップ1及び非接触伝送用コイル2の熱圧着面を上向きにしてフレキシブルICモジュール10を重ね、さらに、当該フレキシブルICモジュール10上に不織布12と第2のカバーシート43とをこの順に重ねる。次いで、前記第2のカバーシート43の上方から下面が平滑な平面状に形成された上型14を押し付け、加熱下で前記積層体を厚さ方向に圧縮する。これによって、フレキシブルICモジュール10を構成する熱圧着性合成樹脂シート3が軟化すると共に、不織布12の自己圧着性が発揮され、第1のカバーシート41とフレキシブルICモジュール10を構成する熱圧着性合成樹脂シート3、当該フレキシブルICモジュール10を構成する熱圧着性合成樹脂シート3と不織布12、当該不織布12と第2のカバーシート43とが互いに密着すると共に、フレキシブルICモジュール10を構成する熱圧着性合成樹脂シート3及び不織布12が加圧力に応じた量だけ変形してICチップ1及び非接触伝送用コイル2がこれら熱圧着性合成樹脂シート3及び不織布12内に埋設され、さらには第1及び第2のカバーシート41,43の表面が平坦化される。
【0103】
以下、加熱された熱圧着性合成樹脂シート3及び不織布12を冷却すれば、熱圧着性合成樹脂シート3が硬化すると共に不織布12が自己圧着してICチップ1及びコイル2が確実に保持されると共に、第1及び第2のカバーシート41,43がそれぞれ熱圧着性合成樹脂シート3及び不織布12に密着される。したがって、カバーシート41,43の表面に所望のデザイン印刷等を施すことによって所要の非接触ICカードが得られる。
【0104】
その他については、図24の製造方法と同じであるので、重複を避けるために説明を省略する。本例の情報担体製造方法も、図24の製造方法と同様の効果を有する。
【0105】
なお、図25の例では、熱圧着性合成樹脂シート3の片面にICチップ1と非接触伝送用コイル2との接続体を熱圧着してなるフレキシブルICモジュール10を用いたが、図11及び図12に示すように不織布12が予め備えられたフレキシブルICモジュールを用いることもできる。この場合には、図25における不織布12が不要になる。
【0106】
また、図25の例では、互いに別体に製造された熱圧着性合成樹脂シート3及び不織布12とカバーシート41,43とを用いたが、裏面に非熱圧着性合成樹脂シートからなるカバーシートが予め裏打ちされた熱圧着性合成樹脂シート3及び裏面に非熱圧着性合成樹脂シートからなるカバーシートが予め裏打ちされた不織布12を用いることもできる。このようにすると、各製造工程における熱圧着性合成樹脂シート3及び不織布12の取り扱いが容易になるため、情報担体の製造をより効率化することができる。
【0107】
〈情報担体製造方法の第3例〉
図26の製造方法は、熱圧着性合成樹脂シートどうしの接合を利用したローラプレス法を適用したものであって、非接触ICカードの製造に先立ち、所定形状及び所定寸法のテープ状に成形され、かつロール状に巻回された第1のカバーシート41と、所定形状及び所定寸法のテープ状に成形され、かつロール状に巻回されたフレキシブルICモジュール10と、所定形状及び所定寸法のテープ状に成形され、かつロール状に巻回された第2の熱圧着性合成樹脂シート5と、所定形状及び所定寸法のテープ状に成形され、かつロール状に巻回された第2のカバーシート43とを用意する。
【0108】
図26に示すように、各ローラから引き出しローラ75によって第1のカバーシート41とフレキシブルICモジュール10と第2の熱圧着性合成樹脂シート5と第2のカバーシート43とを引き出し、案内ローラ76によって、引き出された各テープ状部材を所定の配列で貼り合わせローラ77に案内する。貼り合わせローラ77では、第1のカバーシート41上にICチップ1及び非接触伝送用コイル2の熱圧着面を下向きにしてフレキシブルICモジュール10を重ねあわせると共に、当該フレキシブルICモジュール10上に第2の熱圧着性合成樹脂シート5と第2のカバーシート43とをこの順に重ねあわせ、4層構造の積層体を作製する。次に、当該積層体を加熱・加圧ローラ74の間に導入して加熱下で厚さ方向に圧縮する。これによって、フレキシブルICモジュール10を構成する熱圧着性合成樹脂シート3及び第2の熱圧着性合成樹脂シート5が軟化して、第1のカバーシート41とフレキシブルICモジュール10を構成する熱圧着性合成樹脂シート3、当該フレキシブルICモジュール10を構成する熱圧着性合成樹脂シート3と第2の熱圧着性合成樹脂シート5、当該第2の熱圧着性合成樹脂シート5と第2のカバーシート43とが互いに密着すると共に、フレキシブルICモジュール10を構成する熱圧着性合成樹脂シート3及び第2の熱圧着性合成樹脂シート5が加圧力に応じた量だけ変形してICチップ1及び非接触伝送用コイル2がこれら熱圧着性合成樹脂シート3,5内に埋設され、さらには第1及び第2のカバーシート41,43の表面が平坦化される。
【0109】
以下、加熱された熱圧着性合成樹脂シート3,5を冷却すれば、熱圧着性合成樹脂シート3,5が硬化してICチップ1及びコイル2が確実に保持されると共に、第1及び第2のカバーシート41,43がそれぞれ熱圧着性合成樹脂シート3,5に密着される。熱圧着後の積層体は、巻き取りローラ78に巻き取られ、保存される。したがって、必要に応じて各カバーシート41,43の表面に所望の印刷等を施した後、所要の形状及び寸法に裁断することによって所要の非接触ICカードを得ることができる。
【0110】
その他については、図24の製造方法と同じであるので、重複を避けるために説明を省略する。本例の情報担体製造方法は、図24の製造方法と同様の効果を有するほか、ローラプレス法によるので、より非接触ICカードの製造効率を高めることができる。
【0111】
なお、図26の例では、熱圧着性合成樹脂シート3の片面にICチップ1と非接触伝送用コイル2との接続体を熱圧着してなるフレキシブルICモジュール10を用いたが、図8に示すように2枚の熱圧着性合成樹脂シート3,5の間に前記の接続体が挾み込まれたフレキシブルICモジュール10を用いることもできる。この場合には、図26における第2の熱圧着性合成樹脂シート5が不要になる。
【0112】
また、図26の例では、互いに別体に製造された熱圧着性合成樹脂シート3,5とカバーシート41,43とを用いたが、裏面に非熱圧着性合成樹脂シートからなるカバーシートが予め裏打ちされた熱圧着性合成樹脂シート3,5を用いることもできる。このようにすると、各製造工程における熱圧着性合成樹脂シート3の取り扱いが容易になるため、情報担体の製造をより一層効率化することができる。
【0113】
〈情報担体製造方法の第4例〉
図27の製造方法は、熱圧着性合成樹脂シートと単体で自己圧着性を有する不織布又は適量の合成樹脂を含浸させることによって自己圧着性が付与された不織布との接合を利用したローラプレス法を適用したものであって、非接触ICカードの製造に先立ち、所定形状及び所定寸法のテープ状に成形され、かつロール状に巻回された第1のカバーシート41と、所定形状及び所定寸法のテープ状に成形され、かつロール状に巻回されたフレキシブルICモジュール10と、所定形状及び所定寸法のテープ状に成形され、かつロール状に巻回された不織布12と、所定形状及び所定寸法のテープ状に成形され、かつロール状に巻回された第2のカバーシート43とを用意する。
【0114】
図27に示すように、各ローラから引き出しローラ75によって第1のカバーシート41とフレキシブルICモジュール10と不織布12と第2のカバーシート43とを引き出し、案内ローラ76によって、引き出された各テープ状部材を所定の配列で貼り合わせローラ77に案内する。貼り合わせローラ77では、第1のカバーシート41上にICチップ1及び非接触伝送用コイル2の熱圧着面を下向きにしてフレキシブルICモジュール10を重ねあわせると共に、当該フレキシブルICモジュール10上に不織布12と第2のカバーシート43とをこの順に重ねあわせ、4層構造の積層体を作製する。次に、当該積層体を加熱・加圧ローラ74の間に導入して加熱下で厚さ方向に圧縮する。これによって、フレキシブルICモジュール10を構成する熱圧着性合成樹脂シート3が軟化すると共に、不織布12の自己圧着性が発揮され、第1のカバーシート41とフレキシブルICモジュール10を構成する熱圧着性合成樹脂シート3、当該フレキシブルICモジュール10を構成する熱圧着性合成樹脂シート3と不織布12、当該不織布12と第2のカバーシート43とが互いに密着すると共に、フレキシブルICモジュール10を構成する熱圧着性合成樹脂シート3及び不織布12が加圧力に応じた量だけ変形してICチップ1及び非接触伝送用コイル2がこれら熱圧着性合成樹脂シート3及び不織布12内に埋設され、さらには第1及び第2のカバーシート41,43の表面が平坦化される。
【0115】
以下、加熱された熱圧着性合成樹脂シート3及び不織布12を冷却すれば、熱圧着性合成樹脂シート3が硬化すると共に不織布12が自己圧着してICチップ1及びコイル2が確実に保持されると共に、第1及び第2のカバーシート41,43がそれぞれ熱圧着性合成樹脂シート3及び不織布12に密着される。熱圧着後の積層体は、巻き取りローラ78に巻き取られ、保存される。したがって、必要に応じて各カバーシート41,43の表面に所望の印刷等を施した後、所要の形状及び寸法に裁断することによって所要の非接触ICカードを得ることができる。
【0116】
その他については、図26の製造方法と同じであるので、重複を避けるために説明を省略する。本例の情報担体製造方法は、図26の製造方法と同様の効果を有する。
【0117】
なお、図27の例では、熱圧着性合成樹脂シート3の片面にICチップ1と非接触伝送用コイル2との接続体を熱圧着してなるフレキシブルICモジュール10を用いたが、熱圧着性合成樹脂シートと所定の不織布との間に前記の接続体が挾み込まれたフレキシブルICモジュールを用いることもできる。この場合には、図11及び図12における不織布12が不要になる。
【0118】
また、図27の例では、互いに別体に製造された熱圧着性合成樹脂シート3及び不織布12とカバーシート41,43とを用いたが、裏面に非熱圧着性合成樹脂シートからなるカバーシートが予め裏打ちされた熱圧着性合成樹脂シート3及び裏面に非熱圧着性合成樹脂シートからなるカバーシートが予め裏打ちされた不織布12を用いることもできる。このようにすると、各製造工程における熱圧着性合成樹脂シート3及び不織布12の取り扱いが容易になるため、情報担体の製造をより効率化することができる。
【0119】
前記各実施形態例に係るカバーシート41,43の裏面には、熱圧着性シート3,5,12への接合性を高めるため、微細な凹凸、例えばJISが定める砥粒粒度の400番〜1000番に相当する凹凸を形成することが好ましい。また、カバーシート41,43の表面に直接印刷を施す場合には、印刷性を高めるため、カバーシート41,43の表面にも微細な凹凸を形成することが好ましい。この場合には、インクの乗りを良くして印刷性を高めるため、カバーシート41,43の表面にJISが定める砥粒粒度の3000番〜10000番に相当する凹凸を形成することが好ましい。かかるカバーシートの製造方法としては、直径が0.1μm〜数十μmのフィラー(砥粒などを用いることができる。)を静電塗布によりカバーシートの原反シートに埋め込む方法、カバーシート材料に前記フィラーを混練する方法、それに原反シートの表面を砥粒で研摩する方法などを挙げることができる。
【0120】
〈情報担体製造方法の第5例〉
次に、本発明に係る情報担体製造方法の第5例を、図28に基づいて説明する。図28は情報担体製造方法の第5例を示す説明図である。
【0121】
本例の情報担体製造方法は、フレキシブルICモジュールのもとになる中間体20の製造から完成品である情報担体の製造までを一工程で行うこと、並びに、熱圧着性合成樹脂シート3と中間体20との接合及びフレキシブルICモジュール10(原反94)のケーシングをホットプレスにより行うことを特徴とする。
【0122】
即ち、本例の情報担体製造方法は、図28に示すように、所定寸法のテープ状に形成されロール状に巻回された熱圧着性合成樹脂シート3と、不織布12と、ケーシング用のカバーシート41,43及びオーバーレイシート95,96とをを用意し、各工程において所要の部材をホットプレス装置91,92,98及び冷却プレス93,98を用いて順次接合してゆく。
【0123】
フレキシブルICモジュールの原反94を製造するまでの工程については、フレキシブルICモジュールの製造方法の第5例(図21参照)と同じであるので、図28の対応する部分に同一の符号を表示して、説明を省略する。
【0124】
フレキシブルICモジュールの原反94を作製した後、この原反94の表裏両面にロールから引き出されたカバーシート41,43を重ね合わせ、次いで、当該カバーシート41,43の外面にロールから引き出されたオーバーレイシート95,96を重ね合わせ、さらにはオーバーレイシート96の外面に磁気ストライプ97を重ね合わせる。しかる後に、これらの積層体を加熱プレス98に導入して厚さ方向に圧縮し、各部材を一体化する。次いで、一体化された積層体を冷却プレス99に導入し、所定の厚さに成形された情報担体の原反100を得る。最後に、この原反100をパンチ101に導入して所定形状の情報担体(非接触ICカード)102を得る。情報担体102が切り出された後の積層体は、ローラに巻き取られ、処分される。なお、図中の符号75は引き出しローラ、76は案内ローラ、78は巻き取りローラを示している。
【0125】
本例のフレキシブルICモジュール製造方法は、第4例に係るフレキシブルICモジュール製造方法と同様の効果を有するほか、中間体20の製造と完成品であるフレキシブルICモジュールの製造とを一工程で行うので、フレキシブルICモジュールの原反の製造をより効率的に行うことができる。また、中間体20と熱圧着性合成樹脂シート3とをホットプレスにて貼り合わせるので、ロールプレス法による場合に比べて両部材の加熱時間を十分に長くすることができ、熱圧着性合成樹脂シート3として、例えば塩化ビニルやABSなどの樹脂材料の使用が可能になる。
【0126】
〈情報担体製造方法の第6例〉
次に、本発明に係る情報担体製造方法の第6例を、図29に基づいて説明する。図29は情報担体製造方法の第6例を示す説明図である。
【0127】
本例の情報担体製造方法は、図13に示したフレキシブルICモジュール10を利用し、いわゆるホットプレス法によって、カバーシートを有しない非接触ICカードを製造する方法に関する。
【0128】
まず、非接触ICカードの製造に先立ち、所定形状及び所定寸法に成形された例えばPETなどの熱可塑性樹脂よりなる熱溶融性シート45,46と、前記のようにして製造されたフレキシブルICモジュール10とを用意する。
【0129】
次に、図29に示すように、上面が平滑な平面状に形成された下型11の上に第1の熱溶融性シート45とフレキシブルICモジュール10と第2の熱溶融性シート46とをこの順に重ねる。この状態で、前記第2の熱溶融性シート46の上方から下面が平滑な平面状に形成された上型14を押し付け、加熱下で前記積層体を厚さ方向に圧縮する。この圧縮過程において、第1及び第2の熱溶融性シート45,46が溶融し、その一部又は全部がフレキシブルICモジュール10を構成するフレキシブル基体である繊維シート3Bに含浸する。これによって、フレキシブルICモジュール10と熱溶融性シート45,46とが一体化され、フレキシブルICモジュール10が熱溶融性シート45,46によってケーシングされる。以下、必要に応じて、外周部の整形と熱溶融性シート表面へのデザイン印刷とを施し、製品である非接触ICカードを得る。
【0130】
本例の製造方法によると、いわゆるホットプレス法によってフレキシブルICモジュール10のケーシングを行うので、ケーシング時の加熱条件及び加圧条件の制御が容易で、高精度の非接触ICカードを得ることができる。
【0131】
なお、図29の例では、1個取り用のフレキシブルICモジュール10を利用して非接触ICカードを1枚ずつ製造したが、多数個取り用のフレキシブルICモジュールを利用することによって所要の非接触ICカードを多数個取りするようになすことも勿論可能である。
【0132】
また、図29の例では、ICチップ1及び非接触伝送用コイル2が2枚の繊維シート3B1,3B2の間に埋設された図13のフレキシブルICモジュール10を用いたが、図14に示すように1枚の繊維シート3Bの片面にICチップ1及び非接触伝送用コイル2が埋設されたフレキシブルICモジュールについてもこれと同様の方法でケーシングすることができる。
【0133】
さらに、図29の例では、ホットプレスされた熱溶融性シート45,46上に直ちにデザイン印刷を施したが、ホットプレスされた熱溶融性シート45,46の表面を粗面か下の地にデザイン印刷を施すことも勿論可能である。
【0134】
〈情報担体製造方法の第7例〉
次に、本発明に係る情報担体製造方法の第7例を、図30に基づいて説明する。図29は情報担体製造方法の第7例を示す説明図である。
【0135】
本例の情報担体製造方法は、図13に示したフレキシブルICモジュール10を利用し、いわゆるホットプレス法によって、カバーシートを有する非接触ICカードを製造する方法に関する。
【0136】
まず、非接触ICカードの製造に先立ち、所定形状及び所定寸法に成形された耐熱性樹脂材料よりなるカバーシート41,43と、所定形状及び所定寸法に成形された例えばPETなどの熱可塑性樹脂よりなる熱溶融性シート45,46と、前記のようにして製造されたフレキシブルICモジュール10とを用意する。
【0137】
次に、図30に示すように、上面が平滑な平面状に形成された下型11の上に第1のカバーシート41と、第1の熱溶融性シート45と、フレキシブルICモジュール10と、第2の熱溶融性シート46と、第2のカバーシート43とをこの順に重ねる。この状態で、前記第2のカバー43の上方から下面が平滑な平面状に形成された上型14を押し付け、加熱下で前記積層体を厚さ方向に圧縮する。この圧縮過程において、第1及び第2の熱溶融性シート45,46が溶融し、その一部がフレキシブルICモジュール10を構成するフレキシブル基体である繊維シート3Bに含浸すると共に、他の一部がカバーシート43,41を接着する。これによって、フレキシブルICモジュール10と第1及び第2の熱溶融性シート45,46と第1及び第2のカバーシート41,43が一体化され、フレキシブルICモジュール10がケーシングされる。以下、必要に応じて、外周部の整形と熱溶融性シート表面へのデザイン印刷とを施し、製品である非接触ICカードを得る。
【0138】
本例の情報担体製造方法は、第6例に係る情報担体製造方法と同様の効果を有するほか、耐熱性樹脂材料よりなるカバーシート41,43を備えたので、より耐熱性に優れた非接触ICカードを作製することができる。
【0139】
なお、カバーシート41,43は、例えばポリ塩化ビニル、PET、ポリエチレンナフタレートなど、所定の耐熱性を有する任意の透明又は不透明の合成樹脂シートをもって形成することができるが、環境保護の観点から、焼却時に塩素を発生しない樹脂材料をもって形成することが特に好ましい。その他の点については、第6例に係る情報担体製造方法と同じであるので、反復を避けるために説明を省略する。
【0140】
【発明の効果】
本発明によると、第1の不織布と、入出力端子にニッケルバンプが形成されたICチップと前記ニッケルバンプに直接接続されたコイルとの接続体と、第2の不織布とをこの順に重ね合わせ、これらの各部材をホットプレスによって一体化するという構成にしたので、工程が単純で所望のフレキシブルICモジュールを効率良く製造することができ、フレキシブルICモジュール、ひいては情報担体の生産性を高めることができる。また、不織布として一部に非晶性共重合ポリエステルを含む結晶性樹脂繊維からなるものを用いたので、不織布への接合用樹脂の添加を省略することができてフレキシブルICモジュールの製造を容易なものにすることができ、また、不織布の外面に樹脂層を有するカバーシートを接着するだけで所望の情報担体を生産することができて情報担体の生産性を高めることができ、また、反りや変形のない高品質なフレキシブルICモジュールや情報担体を得ることができ、さらには、表面が平坦で美観に優れた情報担体を生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1参考例に係るフレキシブルICモジュールの一部切断した平面図である。
【図2】図1のA−A拡大断面図である。
【図3】第1参考例に係るフレキシブルICモジュールに搭載されるICチップ及びコイルの要部平面図である。
【図4】コイルを構成する線材の断面図である。
【図5】ICチップとコイルの直接接続方法及び接続部の状態を示す断面図である。
【図6】ICチップとコイルの他の直接接続方法及び接続部の状態を示す断面図である。
【図7】ICチップとコイルの直接接続に適用される溶接装置の使用状態図である。
【図8】第2参考例に係るフレキシブルICモジュールの平面図である。
【図9】第3参考例に係るフレキシブルICモジュールの平面図である。
【図10】第4参考例に係るフレキシブルICモジュールの分解斜視図である。
【図11】第4参考例に係るフレキシブルICモジュールの断面図である。
【図12】第5参考例に係るフレキシブルICモジュールの断面図である。
【図13】実施形態例に係るフレキシブルICモジュールの断面図である。
【図14】第6参考例に係るフレキシブルICモジュールの断面図である。
【図15】第7参考例に係るフレキシブルICモジュールの断面図である。
【図16】フレキシブルICモジュール製造方法の第1参考例を示す説明図である。
【図17】フレキシブルICモジュール製造方法の第2参考例を示す説明図である。
【図18】第3参考例に係るフレキシブルICモジュール製造方法の不織布に対するICチップ及び非接触伝送用コイルの熱圧着方法を示す説明図である。
【図19】第3参考例に係るフレキシブルICモジュール製造方法のICチップ及び非接触伝送用コイルが熱圧着された不織布と熱圧着性合成樹脂シートとの熱圧着方法を示す説明図である。
【図20】フレキシブルICモジュール製造方法の第4参考例を示す説明図である。
【図21】フレキシブルICモジュール製造方法の第5参考例を示す説明図である。
【図22】フレキシブルICモジュール製造方法の実施形態例を示す説明図である。
【図23】フレキシブルICモジュール製造方法の第6参考例を示す説明図である。
【図24】非接触ICカードの製造方法の第1例を示す説明図である。
【図25】非接触ICカードの製造方法の第2例を示す説明図である。
【図26】非接触ICカードの製造方法の第3例を示す説明図である。
【図27】非接触ICカードの製造方法の第4例を示す説明図である。
【図28】非接触ICカードの製造方法の第5例を示す説明図である。
【図29】非接触ICカードの製造方法の第6例を示す説明図である。
【図30】非接触ICカードの製造方法の第7例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 ICチップ
1a 入出力端子
2 コイル
3B1,3B2 不織布(フレキシブル基体)
10 フレキシブルICモジュール
11 下型
12 不織布
14,15 上型
Claims (1)
- 第1の不織布と、ICチップとコイルとの接続体と、第2の不織布とをこの順に重ね合わせ、これらの各部材をホットプレスによって一体化する工程を含むフレキシブルICモジュールの製造方法において、前記第1及び第2の不織布として、ポリエチレンテレフタレートよりなる心材の周囲が非晶質のポリエチレンテレフタレートにてコーティングされた繊維からなるものを用い、加熱圧縮後の前記第1及び第2の不織布に樹脂の含浸性が維持されるように前記ホットプレスを施すことを特徴とするフレキシブルICモジュールの製造方法。
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