JP3560726B2 - 小型電気音響変換器 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、電気信号によって振動磁界を発生させて音響に変換する小型電気音響変換器に係わり、特に、共鳴空間の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
小型電気音響変換器は、携帯用無線機や電話機等の通信手段において、使用者に対する起呼音等の発音手段として使用されている。図20は、従来の小型電気音響変換器を示している。
【0003】
この小型電気音響変換器は、リード端子102、104に外部から加えられた電気信号で振動磁界を発生させ、音響に変換する。電気信号は、交流信号であって、通常は特定の周波数を持つ連続したパルス電流である。外装ケース106の内部には、リード端子102、104を通して加えられる電気信号を振動磁界に変換する振動磁界発生部108とともに、振動磁界発生部108で生じた振動磁界で振動する共鳴板110が内蔵されている。この振動磁界発生部108は、ベース112に立設した鉄芯114にコイル116が巻回されており、このコイル116の端部がリード端子102、104に接続されている。このコイル116の周囲には、マグネット118が設置されており、このマグネット118の静磁界が共鳴板110に作用している。共鳴板110は、磁性材料で形成されているから、マグネット118からの磁界によって一方向の吸引力を受けている。共鳴板110と鉄芯114との間にはギャップ120が形成されており、共鳴板110は振動磁界発生部108と一つの磁気回路を構成している。このような構造により、振動磁界が共鳴板110に作用すると、共鳴板110は振動を呈し、これが音響として発生する。
【0004】
そして、共鳴板110の前面部には、外装ケース106によって包囲された空間部として共鳴室122が形成されている。この共鳴室122は、共鳴板110の振動に共鳴し、振動を音響に変換する機能を持っている。その音響は、外装ケース106に形成された放音孔124から外部に放出される。このように共鳴板110の前面部に形成された共鳴室122は、共鳴板110の前面空間を形成しているのに対し、共鳴板110の背面側の空間は背面空間と称される。これらが電気音響変換器の音圧特性等の音響特性に影響を与えている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このような小型電気音響変換器が持つ音響特性は、外装ケース106、共鳴板110等の構成要素が持つ特性、即ち、その材質や大きさ等に依存することは勿論であるが、共鳴室122のみに着目し、他の構成要素を共通にし、共鳴室122の大きさのみを変化させた場合、音圧や音色に著しい変化を生じることが確認されている。
【0006】
そして、この小型電気音響変換器の利用分野は多岐に亘るものの、設置される機器の小型化に伴い、極めて窮屈な空間部への設置が余儀なくされ、しかも、音圧特性等、従来品以上のものが要求されているのが現状である。
【0007】
そこで、本発明は、共鳴空間の容積拡大化及び容積調整の実現により、音響特性の改善を図った小型電気音響変換器を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明の小型電気音響変換器は、図1ないし図15に例示するように、共鳴板(10)の前面部に形成される共鳴室(24)に対し、補助的な空間である第2の共鳴室(28)を形成し、両者を結合して共鳴容積の拡大化を実現したものである。即ち、この小型電気音響変換器は、電気信号によって得られる振動磁界により音響を発生する小型電気音響変換器であって、電気信号を振動磁界に変換する振動磁界発生手段(振動磁界発生部8)と、この振動磁界発生手段の磁気回路の一部を成すとともに、発生する振動磁界によって機械的な振動を生じる共鳴板(10)と、この共鳴板の前面側に前記共鳴板と壁面部材を以て囲い込まれた空間部であって、前記共鳴板の振動を受けて音響を生じる第1の共鳴室(24)と、この第1の共鳴室と連通して設けられた第2の共鳴室(28)と、を備え、前記第1の共鳴室には外部に音響を放出させる放音孔を形成し、前記第2の共鳴室は、前記第1の共鳴室に対し放射方向に隣接して設置され、かつ、前記第1の共鳴室と連通する以外の部分は閉塞されていることを特徴とする。
【0009】
このように第1の共鳴室に対して音道で連結した第2の共鳴室を設けたことにより、共鳴空間の容積の拡大とともに、第2の共鳴室の容積に応じて全体の共鳴容積を調整することが可能となり、第2の共鳴室の音響特性が第1の共鳴室の音響特性に加わって、音響特性の改善が図られる。
【0011】
また、本発明の小型電気音響変換器において、第2の共鳴室は、前記第1の共鳴室とは異なる共振特性を備えたことを特徴とする。第1の共鳴室に対して第2の共鳴室の特性的な位置づけの問題である。第2の共鳴室の共振特性を第1の共鳴室のそれと異ならせることにより、互いの共振特性を補完し合う結果、所望の音圧特性や音色を実現できる。
【0013】
そして、本発明の小型電気音響変換器において、第2の共鳴室は、前記第1の共鳴室に隣接して1又は2以上の空間部を形成し、この空間部と前記第1の共鳴室とを選択的に連接して構成させてなることを特徴とする。これは、第1の共鳴室を固定的に考え、第2の共鳴室の形成及び容積を任意としたものである。このように構成する結果、外観形状に格別な形状変化を来すことなく、製造段階、調整段階で共鳴空間の容積や特性を設定できることになる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1の(A)、(B)及び(C)は、小型電気音響変換器の実施の形態を示している。各小型電気音響変換器において、外装ケース2は、上ケース4と下ケース6を接合して形成されており、下ケース6側には、振動磁界発生手段としての振動磁界発生部8及び共鳴板10が設置されている。この振動磁界発生部8は、図示していないリード端子に加えられる電気信号を振動磁界に変換する手段であって、ベース12、鉄芯14、コイル16及びマグネット18を備えている。共鳴板10は、磁性材料で形成され、下ケース6の支持段部20にその周縁部が支持されている。この共鳴板10の中心部には、質量を増強する錘としての磁片22が取り付けられている。そして、共鳴板10の上面部には、共鳴板10、上ケース4及び下ケース6によって囲い込まれた空間部を以て第1の共鳴室24が構成されている。この共鳴室24は、上ケース4の天井部側に形成された放音孔26を以て外気に開放されており、共鳴室24で発生した音響が放音孔26を通して外部に放出される。
【0016】
そして、図1の(A)に示す小型電気音響変換器では、上ケース4及び下ケース6を以て第1の共鳴室24に隣接して第2の共鳴室28が形成されている。この第2の共鳴室28と第1の共鳴室24とは、両者を仕切る壁面部材30に細管としての透孔32が形成され、この透孔32を以て第1及び第2の共鳴室24、28が連通されている。
【0017】
また、図1の(B)に示す小型電気音響変換器では、上ケース4側の位置に第2の共鳴室28が形成されている。この場合、第1及び第2の共鳴室24、28は、上ケース4側の壁面部材30に形成された透孔32を以て連通している。
【0018】
そして、図1の(C)に示す小型電気音響変換器は、下ケース6側に第2の共鳴室28が形成されている。この場合、第1及び第2の共鳴室24、28は、下ケース6側の壁面部材30に形成された透孔32を以て連通している。
【0019】
このような第1の共鳴室24とともに第2の共鳴室28を形成した場合の作用について説明する。
【0020】
共鳴室24に共鳴室28を付加したことにより、電気音響変換器における全体の共鳴空間の容積を拡大することができ、音圧特性の向上を図ることができる。その場合、一つの共鳴室24に対して複数の共鳴室28を形成し、複数の共鳴室28の内のいくつかのものを接着剤等を充填することにより、共鳴室24に付加される共鳴室28の数を調整し、電気音響変換器に共鳴空間として作用する容積を調整することができる。即ち、共鳴室28を共鳴空間の調整に使用し、その結果、固有共振周波数の変更や調整を行うことができ、所望の音響特性を持つ電気音響変換器が得られる。
【0021】
また、共鳴室24に結合する共鳴室28の共振周波数を任意に変更し、共鳴室24のそれと異なる共振周波数を設定することができる。この共振周波数の設定形態は、共鳴室28の空間形状や容積、個数の他、共鳴室24と共鳴室28との結合形態等で任意に設定することができる。即ち、透孔32の容積を共鳴室24及び共鳴室28の容積より少なく設定すれば、共鳴室24及び共鳴室28にそれぞれ固有の共振周波数を持たせることができる。
【0022】
次に、図2、図3、図4及び図5は、小型電気音響変換器の一実施形態を示し、図2は小型電気音響変換器の一部を切り欠いて示した平面図、図3は小型電気音響変換器の背面図、図4は図3のIV−IV線断面図、図5は図3のV−V線断面図である。
【0023】
外装ケース2は、上ケース4と下ケース6を接合したものであって、上ケース4及び下ケース6は樹脂を以て形成したものである。この外装ケース2の外観形状は、小型電気音響変換器の設置空間に対応した形状として直方体である。
【0024】
この外装ケース2の内部には、円筒形を成す壁面部材として、上ケース4及び下ケース6に同径の円筒形を成す立壁部40が形成されている。下ケース6側の立壁部40で包囲された空間部内には、電気信号を振動磁界に変換する振動磁界発生部8が内蔵されており、その一部を成すポールピース11が下ケース6の樹脂成形によって固定されており、このポールピース11は、板状を成すベース12の中央に鉄芯14を立設したものである。鉄芯14にはコイル16が巻回され、その周囲部にはベース12と密着して磁気回路を成すマグネット18が固定されている。このマグネット18は、立壁部40の内壁面から突出する複数の突部42を以て位置決めされている。コイル16の両端は、下ケース6の外壁面に形成されたリード端子44、46、48、50に半田付け等の接続手段によって接続されている。
【0025】
下ケース6の立壁部40には、支持段部20が形成されており、この支持段部20には、円形を成す共鳴板10が設置されている。この共鳴板10は、磁性板であって、鉄芯14及びマグネット18と閉磁路を成すとともに、マグネット18の磁力によって固定されている。鉄芯14と共鳴板10との間にはギャップ52が形成されている。
【0026】
また、共鳴板10の上面側には、上ケース4の天井部54、立壁部40及び共鳴板10で包囲された第1の共鳴室24が形成され、上ケース4の天井部54には放音孔26が形成されている。
【0027】
そして、立壁部40と上ケース4及び下ケース6の外壁との間には、第2の共鳴室として複数の共鳴室28が形成されている。この実施形態では、四角形を成す外装ケース2に円筒形を成す立壁部40を形成したことにより、角部の4箇所に共鳴室28が形成されている。各共鳴室28と共鳴室24とは細管を成す透孔32を以て連結されている。即ち、共鳴板10の上面に形成された一つの共鳴室24に対して4つの共鳴室28が放射状に形成されている。
【0028】
また、第1及び第2の共鳴室24、28間の連結には、図6及び図7に示すように、上ケース4の立壁部40及び下ケース6の立壁部40の接合部に半円形を成す切欠き56、58を形成し、この切欠き56、58により、立壁部40に円形の透孔32を形成する。この場合、共鳴室28は、図8に示すように、透孔32を細管とした上ケース4及び下ケース6に跨がる空間を形成し、透孔32を以て共鳴室24と結合される。
【0029】
このように共鳴室24に対して第2の共鳴空間ともいうべき共鳴室28を形成し、両者を結合したことにより、小型電気音響変換器の設置空間が矩形である場合、外装ケース2はその空間に合わせた矩形形状を成しているため、その空間内に収まりが良く、確実に固定される。そして、主たる共鳴室24は、その一片を直径とする円筒状を成し、僅かに立壁部40による容積の犠牲はあるにしても、第2の共鳴室28によって共鳴空間の容積を広く取ることができる。この結果、音圧特性を改善でき、従来と同様の実装容積率を以て音響特性の改善を図ることができる。
【0030】
また、第2の共鳴室28の形態及び共鳴室24、28間の連結は、図9ないし図11に示すように、上ケース4の角部に下ケース6を結合するための支持突部60を立設し、下ケース6側の立壁部40の中間部を延長し、その両側を上ケース4側で切欠き部62、64とし、この切欠き部62、64を以て細管として共鳴室24、28間を連通させてもよい。この場合、図11に示すように、上ケース4側の空間部は細管として機能し、下ケース6側に第2の共鳴室28が形成される。
【0031】
また、上記実施形態では、上ケース4の天井部54に放音孔26を形成したが、図12及び図13に示すように、天井部54を共鳴室24の閉塞面とし、その側部に放音孔26を形成することにより、外装ケース2の側面部側から放音を行うようにしてもよい。このようにしても、上記実施形態と同様の音響特性が得られる。
【0032】
また、上記実施形態では、第1の共鳴室24側に放音孔26を形成したが、図14及び図15に示すように、第2の共鳴室28側に放音孔26を形成してもよい。このようにすれば、上記実施形態と同様の音響特性が得られるとともに、外装ケース2を拡大させることなく、外装ケース2の側面部側に放音孔26を形成することができ、その結果、電気音響変換器の偏平化とともに、実装面積の狭小化を図ることができる。
【0033】
次に、本発明の小型電気音響変換器の音響特性について説明する。
図2ないし図5に示す小型電気音響変換器の4つの共鳴室28の全てを利用する場合(a)、その内の1つを閉じて他の3個を利用する場合(b)、その内の2つを閉じて他の2個を利用する場合(c)、その内の3つを閉じて他の1個を利用する場合(d)、全ての共鳴室28を閉じ、共鳴室24のみを共鳴空間とした場合(e)の5つの形態に共通の入力を与えた場合の音響特性について測定した。図16は音圧−周波数特性(全体)、図17は電流−周波数特性(全体)である。また、図18は最大音圧が得られる周波数近傍を拡大して示した音圧−周波数特性、図19は最大音圧が得られる周波数近傍を拡大して示した電流−周波数特性である。その結果、各特性a〜eは、前記ケースa〜eに対応している。なお、foは共鳴板10の固有共振周波数、fvは共鳴空間の固有共振周波数である。
【0034】
これらの特性から明らかなように、第1の共鳴室24に対して第2の共鳴室28が加わることにより、音圧特性が変化していることが判る。そこで、音圧特性の調整は第2の共鳴室28の容積の設定やその個数により行うことができる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、次のような効果が得られる。
a.第1の共鳴室に対して第2の共鳴室を付加することにより、電気音響変換器の共鳴空間の容積を拡大して共鳴効果を高めることができるとともに、第1の共鳴室の形状や容積に変更を加えることなく、第2の共鳴室を以て全体の共鳴空間の容積調整を行うことができる。
b.外装ケースの外観形状を共通にして共鳴空間の形態を任意に設定でき、小型で共鳴空間の拡大を図ることができる。
c.外装ケースの外観形状を共通にして音圧特性や音色等の音響特性の変更が可能になり、製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の小型電気音響変換器の実施形態を示す断面図である。
【図2】小型電気音響変換器の一部を切欠いた平面図である。
【図3】小型電気音響変換器の背面図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図3のV−V線断面図である。
【図6】小型電気音響変換器における第2の共鳴室の形態及び細管の形成を示す分解斜視図である。
【図7】小型電気音響変換器における第2の共鳴室及び細管部分を示す斜視図である。
【図8】第2の共鳴室の一例を示す斜視図である。
【図9】小型電気音響変換器における第2の共鳴室の形態及び細管の形成を示す分解斜視図である。
【図10】小型電気音響変換器における第2の共鳴室及び細管部分を示す斜視図である。
【図11】第2の共鳴室の一例を示す斜視図である。
【図12】小型電気音響変換器の他の実施形態を示す縦断面図である。
【図13】図12に示す小型電気音響変換器と直交方向に切断した小型電気音響変換器の縦断面図である。
【図14】小型電気音響変換器の他の実施形態を示す側面図である。
【図15】図14に示す小型電気音響変換器の一部を切欠いて示した平面図である。
【図16】本発明に係る小型電気音響変換器の音圧周波数特性を示す図である。
【図17】本発明に係る小型電気音響変換器の電流周波数特性を示す図である。
【図18】本発明に係る小型電気音響変換器の最大音圧部分の音圧周波数特性を示す図である。
【図19】本発明に係る小型電気音響変換器の最大音圧部分の電流周波数特性を示す図である。
【図20】従来の小型電気音響変換器を示す縦断面図である。
【符号の説明】
8 振動磁界発生部(振動磁界発生手段)
10 共鳴板
24 第1の共鳴室
26 放音孔
28 第2の共鳴室
Claims (3)
- 電気信号によって得られる振動磁界により音響を発生する小型電気音響変換器であって、
電気信号を振動磁界に変換する振動磁界発生手段と、
この振動磁界発生手段の磁気回路の一部を成すとともに、発生する振動磁界によって機械的な振動を生じる共鳴板と、
この共鳴板の前面側に前記共鳴板と壁面部材を以て囲い込まれた空間部であって、前記共鳴板の振動を受けて音響を生じる第1の共鳴室と、
この第1の共鳴室と連通して設けられた第2の共鳴室と、を備え、
前記第1の共鳴室には外部に音響を放出させる放音孔を形成し、前記第2の共鳴室は、前記第1の共鳴室に対し放射方向に隣接して設置され、かつ、前記第1の共鳴室と連通する以外の部分は閉塞されていることを特徴とする小型電気音響変換器。 - 前記第2の共鳴室は、前記第1の共鳴室とは異なる共振特性を備えたことを特徴とする請求項1記載の小型電気音響変換器。
- 前記第2の共鳴室は、前記第1の共鳴室に隣接して1又は2以上の空間部を形成し、この空間部と前記第1の共鳴室とを選択的に連接して構成させてなることを特徴とする請求項1記載の小型電気音響変換器。
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