JP3560713B2 - 磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料および磁性層の磁化の調整方法 - Google Patents

磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料および磁性層の磁化の調整方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ヘッド、位置センサ、回転センサ等に用いられる磁気抵抗効果素子用の多層薄膜材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の用途に用いられている磁気抵抗(MR)効果材料として、Ni−Fe合金薄膜(パーマロイ薄膜)が知られているが、パーマロイ薄膜の抵抗変 化率は2〜3%が一般的である。従って、今後、磁気記録における線記録密度およびトラック密度の向上あるいは磁気センサにおける高分解能化に対応するためには、より抵抗変化率(MR比)の大きい磁気抵抗効果材料が望まれている。
【0003】
ところで近年、巨大磁気抵抗効果と呼ばれる現象がFe/Cr交互積層膜、あるいはCo/Cu交互積層膜などの多層薄膜で発見されている。これらの多層薄膜においては、FeやCoなどからなる各強磁性層の磁化がCrやCuなどからなる非磁性層を介して磁気的な相互作用を起こし、積層された上下の強磁性層の磁化が反平行状態を保つように結合している。即ち、これらの構造においては、非磁性層を介して交互に積層された強磁性層が一層毎に磁化の向きを反対方向に向けて積層されている。そして、これらの構造においては、適当な外部磁界が印加されると、各強磁性層の磁化の向きが同じ方向に揃うように変化する。
【0004】
前記の構造において、各強磁性層の磁化が反平行状態の場合と平行状態の場合では、Fe強磁性層とCr非磁性層の界面、あるいは、Co強磁性層とCu非磁性層の界面における伝導電子の散乱のされ方が、伝導電子のスピンに依存して異なるといわれている。従ってこの機構に基づくと、各強磁性層の磁化の向きが反平行状態の時は電気抵抗が高く、平行状態の時は電気抵抗が低くなり、抵抗変化率として従来のパーマロイ薄膜を上回る、いわゆる、巨大磁気抵抗効果を発生する。このようにこれらの多層薄膜は、従来のNi−Feの単層薄膜とは根本的に 異なるMR発生機構を有している。
【0005】
しかしながら、これらの多層膜においては、各強磁性層の磁化の向きを反平行とするように作用する強磁性層間の磁気的相互作用が強すぎるために、各強磁性層の磁化の向きを平行に揃えるためには、非常に大きな外部磁界を作用させなくてはならない問題がある。従って、強い磁界をかけないと大きな抵抗変化が起こらないことになり、磁気ヘッドなどのように磁気記録媒体からの微小な磁界を検出する装置に適用した場合に満足な高い感度が得られないという問題があった。
【0006】
この問題を解決するためには、強磁性層間に働く磁気的な相互作用を過度に強くしないように、CrやCuなどからなる非磁性層の厚さを調整し、各強磁性層の磁化の向きの相対的な方向を磁気的相互作用とは別の方法により制御することが有効と思われる。
従来、このような磁化の相対的な方向制御技術として、FeMnなどの反強磁性層を設けることにより、一方の強磁性層の磁化の向きを固定し、この強磁性層の磁化の向きが外部磁界に対して動き難いように構成し、他方の強磁性層の磁化の向きを自由に動けるように構成することにより、微小な磁界による動作を可能にした技術が提案されている。
【0007】
図23は、特開平6ー60336号公報に開示されているこの種の技術を応用した構造の磁気抵抗センサの一例を示すものである。図23に示す磁気抵抗センサAは、非磁性の基板1に、第1の磁性層2と非磁性スペーサ3と第2の磁性層4と反強磁性層5を積層して構成されるものであり、第2の磁性層4の磁化の向きBが反強磁性層5による磁気的交換結合により固定されるとともに、第1の磁性層2の磁化の向きCが印加磁界がない時に第2の磁性層4の磁化の向きBに対して直角に向けられている。ただし、この第1の磁性層2の磁化の向きCは固定されないので外部磁界により回転できるようになっている。
【0008】
図23に示す構造に対して印加磁界hを付加すると、印加磁界hの方向に応じて第1の磁性層2の磁化の向きCが点線矢印の如く回転するので、第1の磁性層2と第2の磁性層4との間で磁化に回転差が生じることになるために、抵抗変化が起こり、これにより磁場検出ができるようになる。
【0009】
次に、一方の磁性層の磁化の向きを固定し、他方の磁性層の磁化の向きを自由とした構成の磁気抵抗センサBの他の例として、図24に示すように、基板6上に、NiOの反強磁性層7と、Ni−Feの磁性層8と、Cuの非磁性層9と、 Ni−Feの磁性層10と、Cuの非磁性層11と、Ni−Feの磁性層12と、FeMnの反強磁性層13を順次積層した構造が知られている。
この例の構造においては、反強磁性層7、13によりそれらに隣接する強磁性層8、12の磁化がそれぞれ固定され、強磁性層8、12の間に非磁性層9、11を介して挟まれた強磁性層10の磁化が外部磁界に応じて回転可能に構成されている。
【0010】
図23あるいは図24に示す構造の磁気抵抗センサであると、微小な印加磁界の変化に対して第1の磁性膜2あるいは磁性層10の抵抗が直線的に良好なリニアリティーでもって変化するので、測定磁界の範囲を広くできる利点がある。
また、第1の磁性層2としてNi−Feなどの軟磁性材料を用いると、その軟磁性 材料の透磁率の高い磁化困難軸を励磁方向として用いることができる利点があり、更に、ヒステリシスが少ないなどの利点を有する。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、図23、あるいは図24に示す構造の磁気抵抗センサは、FeMnの反強磁性層5で隣接する第2の磁性層4の磁化を固定するか、上下のFeMnとNiOの反強磁性層7、13でそれらの間の強磁性層8、12の磁化を固定し、それらの間の磁性層10の磁化を自由にする構造であるので、巨大磁気抵抗効果に寄与するNi−Fe(磁性層)/Cu(非磁性層)の界面の数を多くで きない制約があり、MR比の大きさに制約を生じる問題があった。従って、図23あるいは図24に示す構造において、10〜20%程度のMR比は、構造上到底実現できない問題がある。また、反強磁性層5、7の構成材料として用いられるFeMnは、耐食性および耐環境性の面から見て不利な問題がある。
【0012】
更に、図23あるいは図24に示す磁気抵抗センサにおいて、印加磁界が無い状態の磁化、即ち、自発磁化の向き(磁気異方性の磁化容易軸の向き)が、層毎に90度ずつ回転された構造の積層膜を製造するには、真空チャンバ内で成膜する際に、層毎に印加磁界を回転させる必要があり、製造工程上、印加磁界を回転できる複雑な成膜装置が必要になり、設備コストが嵩む問題がある。
【0013】
一方、磁化の向きを相対的に制御する他の方法として、保磁力が大きく、外部磁界によって容易に磁化反転しないCoのような強磁性層と、保磁力が小さく軟磁性を有するNi−Feなどの強磁性層をCuなどの非磁性層を介して交互に多 数積層した構造が提案されている。
【0014】
図25は、この種の技術を応用したMR素子の一例(日本応用学会誌:Vol. 15, No2,1991:第431頁〜436頁参照)を示すもので、この例のMR素子D は、基板15上に、Cuの非磁性層16と、Ni−Feの低保磁力磁性層17と、Cuの非磁性層18と、Coの高保磁力磁性層19と、Cuの非磁性層20と、Ni−Feの低保磁力磁性層21と、Cuの非磁性層22と、Coの高保磁力磁 性層23を積層し、これらの層を順次繰り返し多数積層してなる構造にされている。即ち、図22に示す構造は、高保磁力磁性層と低保磁力磁性層を交互に非磁性層を介して多層化した構造にされている。
【0015】
図25に示す構造であると、磁性層19、23の保磁力が高いので外部磁界に対して磁化が動き難く、磁性層17、21の保磁力が弱く、磁化の向きが容易に反転するので、このことを利用して人工的に反強磁性状態(磁化が反平行の状態=比抵抗が大きい状態)と強磁性状態(磁化が平行の状態=比抵抗が小さい状態)を小さな磁界で切り換えることができるようになっている。
【0016】
従って図25に示す構造によれば、磁性層の積層数を大きくすることができ、FeMnのような耐環境性に問題を有する材料を用いなくとも良い利点を有するが、以下に説明する問題を有していた。
低保磁力磁性層のNi−Feと高保磁力磁性層のCoは、全く異種の物質であ り、伝導電子の受けるポテンシャルが異なり、巨大磁気抵抗効果に寄与するスピン依存散乱以外の散乱が層界面で大きくなるので、MR比をあまり大きくできない問題がある。
【0017】
次に、高透磁率磁性層を構成するCoは結晶磁気異方性が大きいので、磁界中で成膜する際に誘導磁気異方性の制御が難しくなり、均一な一軸異方性を付与することが難しくなり、図23あるいは図24に示す構造のような自発磁化を直交させた構造の多層膜の設計が完全にはできない問題がある。即ち、高保磁力磁性層と低保磁力磁性層の保磁力差を利用した磁化制御では、90度で直交する磁化を層毎に生成させることは困難であり、よって図25に示す構造を利用したMR素子では10%程度のMR比が限界になる問題がある。
【0018】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、図23あるいは図24に示す従来構造ではできなかった磁性層の多層膜構造を実現できるとともに、図25に示す従来構造では実現できなかった組成の近い層の積層構造にすることにより、従来構造では得られなかった10〜20%ものMR比を得ることができると同時に、耐食性、耐環境性の面で問題があった反強磁性材料を用いる必要が無く、しかも、回転磁場成膜の必要がなく、高価な製造設備も不用とすることができる磁性層の磁化の調整方法を提供することを目的とする。
【0019】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明は前記課題を解決するために、飽和磁歪定数の符号が正の強磁性金属ないしは強磁性合金からなる強磁性層と、飽和磁歪定数の符号が負の強磁性金属ないしは強磁性合金からなる強磁性層が、非磁性層を介して交互に1組以上積層され、この積層体に一軸性の応力が印加されてなるものである。
この構造において、非磁性層を挟んで設けられた両方の強磁性層が、一軸磁気異方性を有し、それぞれの磁化容易軸が膜面内に沿って略直交されており、一方の強磁性層の有する一軸磁気異方性エネルギーの絶対値が500J/m以上、 他方の強磁性層の有する一軸磁気異方性エネルギーの絶対値が50〜500J/mの範囲であるものが好ましい。
【0020】
次に、本発明は、飽和磁歪定数の絶対値が2×10−6未満の強磁性金属ないしは強磁性合金からなる強磁性層と、飽和磁歪定数の絶対値が2×10−6以上の強磁性金属ないしは強磁性合金からなる強磁性層が、非磁性層を介して交互に1組以上積層され、この積層体に、一軸性の応力が印加されてなる構造とすることもできる。
この構造において、非磁性層を挟んで設けられた両方の強磁性層が、一軸磁気異方性を有し、それぞれの磁化容易軸が膜面内に沿って略直交されており、強磁性層の一軸磁気異方性が磁界中成膜ないしは磁界中熱処理により制御されたものであり、一方の一軸磁気異方性エネルギーの絶対値が50〜500J/mの範 囲であり、他方の強磁性層の一軸磁気異方性が磁歪と応力による磁気弾性効果により制御されたものであり、その一軸磁気異方性エネルギーの絶対値が500J/m以上としても良い。
【0021】
更に前記の各構造において、強磁性層が、Ni100−xFeまたはNi100−x−y FeCo合金からなり、一方の強磁性層の組成が、原子%で、0≦x≦20、 0≦y≦60なる関係を満足し、他方の強磁性層の組成が、原子%で、7≦x≦60、0≦y≦60であることを特徴としても良い。
【0022】
次に本発明は、一方の側に対接された反強磁性層によって単磁区化されて磁化がピン止めされた基準強磁性層と、この基準強磁性層の他方のに対接された非磁性層を介して成膜されたフリー強磁性層を具備して構成された薄膜積層体であって
、前記フリー強磁性層の自発磁化の方向が、フリー強磁性層の磁歪と積層体全体に印加された一軸性の応力によって生じる磁気弾性効果により、基準強磁性層の磁化の方向とほぼ90度の角度をなすように制御されてなる構造でも良い。
また、フリー強磁性層の磁歪と、積層体全体に印加された一軸性の応力とによってフリー強磁性層に誘起された一軸異方性エネルギーが、フリー強磁性層の磁界中成膜により誘起されている一軸異方性エネルギーより大きく、かつ、反強磁性層により基準強磁性層に誘起されている異方性エネルギーより小さくされてなることを特徴とするものでも良い。
【0023】
更に前記の積層体に印加される一軸性の応力が、積層体が形成された基板、または、積層体の上に成膜された保護膜、あるいは層間絶縁層により印加されたもの、あるいは、基板を加工する際の加工応力とすることもできる。また、前記のいずれかの非磁性層が、Cu,Ag,Auから選ばれる1種の金属から、あるいは、これらから選択される2種以上の元素の合金からなるものでも良い。次に、前記基板の少なくとも一部を圧電材料から構成し、前記一軸性の応力を圧電材料により印加した構成とすることもでき、前記基板の少なくとも一部を結晶方位で熱膨張係数が異なり、しかも熱膨張係数の異なる2つの結晶方位が直交してなる材料から構成し、前記一軸性の応力を基板の熱膨張係数の方位異方性によって印加した構成にすることもできる。
【0024】
一方、本発明方法は、飽和磁歪定数の符号が正の強磁性金属ないしは強磁性合金からなる強磁性層と、飽和磁歪定数の符号が負の強磁性金属ないしは強磁性合金からなる強磁性層を非磁性層を介し、交互に積層して積層体を形成し、この積層体に、一軸性の応力を印加することで両方の強磁性層の自発磁化の向きを直交させるものである。
【0025】
また、本発明方法において、飽和磁歪定数の絶対値が2×10−6未満の強磁性金属ないしは強磁性合金からなる強磁性層と、飽和磁歪定数の絶対値が2×
10−6以上の強磁性金属ないしは強磁性合金からなる他方の強磁性層を非磁性層を介して交互に積層し、この積層体に、一軸性の応力を印加して両方の強磁性層の自発磁化の向きを直交させることもできる。
【0026】
更に本発明において、反強磁性層と基準強磁性層と非磁性層とフリー強磁性層を積層して積層体を形成し、反強磁性層によって基準強磁性層を単磁区化するとともに、この積層体に一軸性の応力を付加して生じる磁気弾性効果によりフリー強磁性層の磁化の向きを基準強磁性層の磁化の向きに対して直交させることもできる。
次に、前記積層体を基板上に形成し、この基板の少なくとも一部を圧電材料から形成するとともに、圧電材料に通電して基板を変形させて前記積層体に一軸性の応力を印加した状態で積層体を形成し、積層体の形成後に圧電材料に対する通電を停止して基板の変形を解除することにより積層体に一軸性の応力を印加することもでき、前記積層体を基板上に形成し、この基板の少なくとも一部を結晶方位で熱膨張係数が異なり、しかもその方位が直交してなる材料から構成するとともに、前記基板を加熱または冷却して基板の熱膨張係数の方位異方性から一軸性の応力を印加した状態で積層体を形成し、この後に基板を常温に戻すことにより基板の熱膨張変形を解除することで積層体に一軸性の応力を印加することもできる。
【0027】
以下に本発明について更に詳細に説明する。
請求項1記載の発明において、飽和磁歪定数の符号が正の強磁性金属ないしは強磁性合金からなる強磁性層と、飽和磁歪定数の符号が負の強磁性金属ないしは強磁性合金からなる強磁性層を非磁性層を介し交互に1組あるいはそれ以上積層して積層体を形成し、この積層体に、一軸性の応力を印加することにより、非磁性層を挟んだ設けられた両方の強磁性層の自発磁化の向きを相互に略直角方向に向けることができる。
【0028】
これにより、非磁性層を挟んで設けられた多数の強磁性層と強磁性層がそれぞれ対になって相互の自発磁化の向きがほぼ90度異なるようになり、複数層積層された構造の積層体が得られる。このように自発磁化の向きがほぼ90度異なる磁性層が非磁性層を介して上下に積層された構造であると、一方の強磁性層の自発磁化と同じ向きに外部磁界が印加された場合、非磁性層を挟んで設けられた両方の強磁性層の磁化の向きが平行に揃うようになり、平行に揃うようになった場合、積層体の比抵抗が小さくなる。
【0029】
これに対して、180度反対向きに外部磁界が印加され、一方の強磁性層の磁化が動かずに他方の磁性層の磁化が磁界の方向に追従して回転した場合、非磁性層を挟んで設けられた両方の強磁性層の磁化の向きが反平行となり、積層体の比抵抗が大きくなる。
また、磁界が印加されていない状態であって、非磁性層を挟んで設けられた両方の強磁性層の自発磁化の向きが90度異なる場合は、前記2者の中間の比抵抗となる。
【0030】
従って前記構造であると、特別にバイアス磁界を印加する必要が無く、良好なリニアリティーが広い範囲でとれるとともに、磁界の有無により抵抗値が大きく変わるので大きなMR比が得られる。なお、両方の強磁性層の自発磁化の向きは90度異なるときが最も好ましいが、多少ずれていても支障はなく、80〜110度の範囲であれば良い。
次に、前記積層体に一軸性の応力が印加された具体的構成として、一軸性の応力が積層体を設ける基板から印加されたもの、積層体の上に成膜される保護膜あるいは層間絶縁層から印加されたもの、あるいは加工応力から印加されたもののいずれでもよく、基板が圧電材料からなる場合は圧電材料から印加されたもの、基板が結晶方位により熱膨張係数の異なるものである場合は基板の熱膨張係数の異方性から印加されたものでも良い。
【0031】
【発明の実施の形態】
図1は請求項1に記載の発明の一具体的構造例を示すものであり、この例の構造においては、非磁性体からなる基板30上に、Cu,Ag,Auなどの非磁性体からなる非磁性層31と、強磁性体からなる強磁性層32と、Cu,Ag,Auなどの非磁性体からなる非磁性層33と、強磁性体からなる強磁性層34とからなる一連の積層構造が、1組以上繰り返し複数回積層されて(図1に示す構造では2回繰り返し積層)基板30上に積層体35が構成されている。
【0032】
前記構造において、基板30は、ガラス、Si、Al、TiC、SiC、AlとTiCとの燒結体、あるいはZnフェライト等の非磁性体から構成されている。また、強磁性層32、34は、Ni−Fe合金、Ni−Fe−Co合金、Co−Fe合金、Co−Ni合金、Co−Zr等のアモルファス合金などの強磁性体から構成されている。
更に、前記の構造において、一方の強磁性層34は磁歪定数の符号が正の強磁性体からなり、他方の強磁性層32は磁歪定数の符号が負の強磁性体からなっている。更にまた、この積層体35の全体には、各層の膜面方向に沿う一軸引張応力が付加されている。
【0033】
図1に示す構造においては、一方の強磁性層34・・・の自発磁化の向きがいず れも図1の矢印a方向になり、他方の強磁性層32・・・の自発磁化の向きが図1 の紙面に垂直な方向を向くので、一方の強磁性層34と他方の強磁性層32の自発磁化の向きがは90度交差するようになる。
【0034】
次に、このように自発磁化の向きが90度で交差するようになる理由を以下に説明する。
磁歪定数の符号が正の強磁性層34と負の強磁性層32を非磁性層31を介して交互に積層し、この積層体35の膜面の一方向に一軸性の応力(大きさ;σ)が付加されていると仮定し、一方の強磁性層34の飽和磁歪定数をλ、他方の 強磁性層32の飽和磁歪定数をλと仮定すると、一方の強磁性層34には磁気 異方性エネルギーとして、(3/2)λ・σなる大きさの磁気弾性エネルギーを有する一軸磁気異方性が誘導され、他方の強磁性層32には、磁気異方性エネルギーとして、(3/2)λ・σなるなる大きさの磁気弾性エネルギーを有する一軸磁気異方性が誘導されていることになる。
ここで、例えば、一軸性の引張応力が付加されたとすると、一方の強磁性層34の磁化容易軸は膜面内で応力の方向と平行、他方の強磁性層32の磁化容易軸は膜面内で応力の方向と直角となる。従って、自発磁化の向きは一方の強磁性層34と他方の強磁性層32ごとに交互に90度ずつ異なる配置となる。
【0035】
この構造において、磁気記録媒体等からの検出するべき微小磁界の方向と平行な方向が磁化容易軸となる一方の強磁性層34については、その層の磁化を外部磁界に対して動き難くする必要があるため、該当する一方の強磁性層34の磁歪は、他方に比して大きくしておく必要がある。
一方、検出するべき微小磁界の方向に対して直角に磁化容易軸が配置する他方の強磁性層32に関しては、微小磁界に対応してこれらの強磁性層32の磁化が感度良く回転する必要がある。即ち、他方の強磁性層32の磁気異方性エネルギーは、あまり大きいと磁気抵抗効果の感度が低くなるので、前記した一方の強磁性層34の磁歪定数よりも小さくしておく必要がある。
【0036】
次に、図2は積層体35に一軸性の圧縮応力を付加した場合の自発磁化の方向を示したものである。
この例においては、一方の強磁性層34の自発磁化が図2の紙面に対して垂直な方向の向きになり、他方の強磁性層32の自発磁化が一軸性の圧縮応力に平行な方向に向くようになり、結果的に一方の強磁性層34と他方の強磁性層32の自発磁化の向きが交互に直角に向くことになる。
この例の構造においては、一方の強磁性層34と他方の強磁性層32の自発磁化の向きが先の図1の例のものと逆であるが、この例においても自発磁化の向きは各強磁性層ごとに交互に90度ずつ直交した配置となる。
【0037】
次に、請求項2記載の発明において、自発磁化の向きが一方の強磁性層と他方の強磁性層毎に直交された構造では、検出磁界の方向に略平行な自発磁化を持つ強磁性層の磁化を動き難くする必要がある。即ち、一方の強磁性層と他方の強磁性層の両方の磁化が同じように回転してしまうと、抵抗変化に関係する両層の磁化の相対角の変化が小さくなるために、また、ピン止めするべき強磁性層が容易に磁壁移動して磁化反転するようであると、+方向の抵抗変化をする領域と−方向の変化をする領域の打ち消し合いになるので、いずれにしても積層体全体としての抵抗変化が小さくなってしまうことがある。
従って、一方の強磁性層の自発磁化を動き難くするためには、磁気異方性エネルギーを大きくする必要があり、積層体として十分な抵抗変化を起こさせるためには、一軸磁気異方性エネルギーの絶対値を500J/m以上とすることが好 ましい。
【0038】
また、一方、検出磁界と略直交する方向に自発磁化を有する強磁性層は、微小な検出磁界に対して感度良く磁化の角度が反応しなくてはならないため、その強磁性層の一軸磁気異方性エネルギーの絶対値は小さくなければならない。しかしながら、この値があまりに小さいと、磁界零での状態で検出するべき磁界と略直交する方向に自発磁化を安定して向けることができなくなるために、一軸磁気異方性エネルギーは、絶対値で最低50J/mは必要であり、また、磁化の向き をピン止めするべき強磁性層の一軸磁気異方性エネルギーよりも小さくする必要があるので、500J/m以下とする必要がある。
【0039】
請求項3記載の発明において、各強磁性層の一軸磁気異方性エネルギーを一軸性の外部応力による磁気弾性効果により得る場合、請求項2に記載した磁気異方性エネルギーを得るためには、実際の磁気ヘッドやセンサ素子部にかかる応力として一般的な値を考えた場合、必要とされる飽和磁歪定数の絶対値として、一方の強磁性層は2×10−6未満であることが必要であり、他方の強磁性層は2×10−6以上であることが必要となる。
【0040】
請求項4に記載の発明においては、請求項2記載の発明の場合と同様に一方の強磁性層の異方性磁気エネルギーの絶対値が500J/m以上であることが必 要であり、他方の強磁性層の異方性磁気エネルギーの絶対値が50〜500J/mであることが必要である。
ここでは、磁化の動きやすい強磁性層の磁気異方性が、磁気弾性効果よりもむしろ磁界中成膜や磁界中熱処理によって付与される誘導磁気異方性によって決定される点が請求項2に記載した発明と異なっている。即ち、磁気弾性効果による異方性よりも磁界中成膜による誘導磁気異方性が勝っている場合は、両方の強磁性層の磁歪の符号は反対でなくとも良い場合もある。
【0041】
請求項5に記載の発明においては、両強磁性層の飽和磁歪定数の符号を反対にするために、両強磁性層を形成する材料の組成範囲を限定している。請求項5において、一方の強磁性層がNi、Ni100−xFe合金、または、Ni100−XFeCo合金からなり、0≦x≦20、0≦y≦60なる関係を満足し、他方の強磁 性層がNi100−xFe合金、または、Ni100−XFeCo合金からなり、7≦x≦60、0≦y≦60なる関係を満足するものとすることが好ましい。
【0042】
これらの組成範囲とした理由は、これらの強磁性層を構成する合金の組成図から、組成に応じた磁歪定数の符号が明らかになっているためである。図3にこの種の合金の組成と磁歪定数の関係を示す。図3に示す○で示す組成が磁歪定数λ=0の組成、△で示す組成が磁歪定数λ<0の組成、□で示す組成が磁歪定数λ>0の組成をそれぞれ示す。この図3の関係から前記組成範囲が妥当であることがわかる。
【0043】
なお、Feの濃度を60at%以下としてあるのは、これよりFe濃度が高くなると、インバー合金の組成に近くなり、飽和磁化が著しく低くなることと、面心立方構造の結晶に混じって体心立方構造の結晶が生じ易くなり、Cu,Ag,
Au等の非磁性金属との結晶の整合性が悪くなり、磁気抵抗に寄与しない伝導電子の界面散乱が大きくなって抵抗変化率が小さくなるためである。
なおまた、Co濃度を60at%以下としたのは、これよりCo濃度が高くなると、結晶磁気異方性が大きくなるため、磁化を動かそうとする側の強磁性層の磁化が動き難くなることに起因している。
【0044】
次に、図4は請求項6に記載の発明の一具体的構造例を示すもので、この例の構造においては、非磁性体からなる基板40の上にバッファ層41が形成され、このバッファ層41上に、NiFe合金などの強磁性体からなるフリー強磁性層42と、Cu,Ag,Auなどの非磁性体からなる非磁性層43と、NiFe合金などの強磁性体からなる基準強磁性層44と、FeMn合金などの反強磁性体からなる反強磁性層45が積層されて積層体46が構成されている。また、この積層体46の全体には、各層の膜面方向に沿う一軸引張応力が付加されている。
【0045】
なお、図4に示す例では基板40の上にバッファ層41が形成された例について記載したが、このバッファ層41は基板と成膜物質の濡れ性を良くし、平坦性を向上させる目的と膜の結晶配向性を整える目的で形成されたものであるので、基板として濡れ性の良好なものを用いる場合や配向性が良好な成膜条件が選択される場合は特に用いる必要が無く、省略しても差し支えない。
従って先の例で図1と図2を元に説明した構造の基板30の上に、バッファ層を設け、その上に積層体35を積層しても良いのは勿論である。
【0046】
図4に示す構造においては、基準強磁性層44の自発磁化の向きが図4の矢印b方向になり、フリー強磁性層42の自発磁化の向きが図4の紙面に垂直な方向を向くので、基準強磁性層44とフリー強磁性層42の自発磁化の向きは90度交差するようになる。
【0047】
次に図5に示す構造は、図4に示す構造の変形例であり、図5に示す構造においては、図4に示す構造と同様に基板40とバッファ層41とフリー強磁性層42と非磁性層43と基準強磁性層44と反強磁性層45が積層されて積層体46が構成される一方、この積層体46に各層の膜面方向に沿う一軸圧縮応力が付加されている。
図5に示す構造においても、基準強磁性層44の自発磁化の向きが図4の矢印b方向になり、フリー強磁性層42の自発磁化の向きが図4の紙面に垂直な方向を向くので、基準強磁性層44とフリー強磁性層42の自発磁化の向きが90度交差するようになる。
【0048】
このように自発磁化の向きが90度で交差するようになるのは、基準強磁性層44上に反強磁性層45を設け、これらの間で磁気的交換結合によってもたらされるバイアス磁場によって基準強磁性層44の磁化の向きをピン止めしたことに起因している。
このような反強磁性層45による交換結合によって基準強磁性層44の自発磁化が固定されるのは、特開平6ー60336号公報あるいは特開平6ー111252号公報に記載された技術により明らかにされている。
【0049】
ただし、これらの公報に開示された技術においては、基板上に積層体を形成する場合、磁場中で成膜処理し、成膜処理中に磁場を回転させて自発磁化の向きを調整する必要がある。即ち、各強磁性層中の自発磁化の方向を直交させるのに、成膜の最中に基板に印加する磁界の方向を90度ずつ回転させる方法を用いる必要があり、成膜装置に複雑な回転磁界付与機構を備える必要があった。
【0050】
これに対して図4あるいは図5の構造の積層体を製造する場合は、積層体の一連の成膜あるいは熱処理を途中で外部磁界の方向を変えないで行うことを前提としている。これらの磁界中処理では、全ての強磁性層の磁化の方向において、検出するべき磁界の方向と平行になるように磁界がかけられる。このようにして成膜された状態では、図6に示すようにフリー強磁性層52と、非磁性層53と、基準強磁性層54と、反強磁性層55が積層されて積層体56が形成された状態になっているが、この構造では、膜面に沿う平行な方向に各磁性層の自発磁化が揃い、直交する磁化配置とはならないので、後述するように磁気弾性効果を利用してフリー強磁性層52の磁化のみを検出するべき磁界の方向と直角な方向に向ける必要がある。
【0051】
そのためには、磁界中処理で付与された異方性エネルギーKよりも大きな磁 気弾性エネルギー(3/2)λ・σの導入が必要になる。ただし、前記式において、λは磁歪を示し、σは積層体に付加された一軸性の応力を示す。
ここで、磁気弾性エネルギー(3/2)λ・σが異方性エネルギーKより小 さいと、即ち、(3/2)λ・σ<Kの関係であると、図7に示すように基準 強磁性層54の磁化の向きとフリー強磁性層52の磁化の向きが平行になるので好ましくない。なお、図7において、○印の中心部に・印を記入した印は、図7の紙面に直交して上向きの方向に磁化が向いている状態を示し、○印の中に×印を記入した印は、図7の紙面に対して下向きの方向に磁化が向いている状態を示す。
【0052】
また、磁気弾性エネルギー(3/2)λ・σが異方性エネルギーKよりも大 きく、かつ、基準強磁性層54の異方性エネルギーHUA/2よりも小さい、 場合即ち、K<(3/2)λ・σ<HUA・M/2の関係であると、基準強磁性 層54の磁化の向きとフリー強磁性層52の磁化の向きが図8に示すように直交する配置となる。
更にまた、一軸性の応力による磁気弾性エネルギーが大きすぎて、基準強磁性層54の異方性エネルギーHUA/2より大きいと、両方の強磁性層とも磁化 の向きが90度回転してしまい、図9に示すように左右方向向きで平行な磁化の配置になってしまうので好ましくない。
【0053】
ところで、前記の一軸性の応力は、積層体を設ける磁気ヘッド、位置センサ、回転センサなどの素子を実際に製造する際に付加される加工応力、あるいは、積層体の外部に被覆される被覆層などの膜応力を利用することができる。
【0054】
次に、先に図1を元に説明した積層体35の簡略化モデルが示す磁化履歴曲線について説明する。
積層体35のような構造で一方の強磁性層32と他方の強磁性層34が一層ずつの場合のモデルにおいては、磁化の向きが固定された強磁性層34が、図10の磁化履歴曲線Kを示し、磁化の向きを回転可能にした他方の強磁性層32が、図10の磁化履歴曲線Kを示す。
【0055】
即ち、図10で示すように外部磁界Hが、他方の強磁性層32の保磁力HC1と一方の強磁性層34の保磁力HC2の間(HC1<H<HC2)の場合、あるいは、外部磁界−Hが、他方の強磁性層32の保磁力−HC1と一方の強磁性層34の保磁力−HC2の間(−HC1>−H>HC2)の場合に、非磁性層33を介して隣り合った強磁性層34と強磁性層32の磁化の向きが互いに逆向きの成分が生じ、抵抗が増大するようになる。
【0056】
そして、磁化の向きが固定された強磁性層34の磁化の向きが図10で右向きの場合であって、強磁性層32の磁化の向きが図10の紙面に対して垂直な向きの場合に、図11に示すようなリニアリティーに優れた抵抗変化が得られる。
即ち、このようなリニアリティーに優れた抵抗変化を利用することにより、磁気ヘッド、位置センサ、回転センサ等に用いられる磁気抵抗効果素子用の多層薄膜材料として有用なものが得られる。
【0057】
次に、図1と図2に示す積層体35、あるいは図4と図6に示す積層体46に一軸性の引張応力あるいは圧縮応力を印加するための具体的手段とその構成について説明する。
積層体35に一軸性の応力を印加することができる具体的構成の一例として、例えば図12に示すように、圧電材料製の基板36上に積層体35が形成され、この積層体35に一軸性の圧縮応力あるいは引張応力が作用された構造を採用することができる。この例の基板36は、PZT(ジルコン酸鉛)、LiNbO、LiTaO、BaNaNb15、PbTiOなどに代表される圧電材料から形成され、基板36への通電により基板36の横方向(基板面方向)の特定の一方向に縮小あるいは伸張できるように構成されている。なお、基板36の上面には、基板上面の凹凸やうねりを除去する目的であるいはその上に積層される層の結晶整合性を良好にするなどの目的で被覆層やバッファ層を適宜設けても良いのは勿論である。
【0058】
図12に示す構造を得るには、圧電材料製の基板36に通電して例えば図12の矢印Dに示すように基板36をその横方向に縮小した状態で基板36の上に積層体35を成膜し、この成膜後に基板36への通電を停止すると、基板36は元の縮小していない状態に戻るので積層体35に一軸性の図12の横方向に沿う引張応力D’を印加した磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料を得ることができる。また、逆に、基板36に通電して図12の矢印Eに示すように基板36をその横方向に伸張した状態で基板36上に積層体35を成膜し、この成膜後に基板36への通電を停止すると、基板36は伸張していない元の状態に戻るので積層体35に一軸性の矢印E’で示す圧縮応力を印加した磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料を得ることができる。
このように圧電材料により積層体35に応力を印加して積層体35を形成した構成を採用すると、圧電材料に対する通電電圧の大小により積層体35に印加できる応力値を容易に調整できるので、所望の応力を印加した磁気抵抗素子用多層薄膜材料を確実かつ容易に得ることができる。
【0059】
次に、図13は基板の一部のみを圧電材料で構成した例について説明するためのものである。この例の基板37は、先の第1の例で用いた基板30の両側に圧電材料製の補助基板38を一体化して構成されている。
これらの補助基板38は先に説明した圧電材料製の基板36と同等の圧電材料からなり、基板38、38への通電により基板38、38の横方向(基板面方向)の特定の一方向に縮小あるいは伸張できるように構成されている。
この構成の基板37を用い、この基板37上に積層体35を成膜する場合、補助基板38、38の端部を把持部材等で把持して固定し、補助基板38、38に通電して補助基板38、38を図13の矢印Fに示すように縮小させることで基板30を横方向に伸張させて矢印Gで示す引張歪を付加できるので、この状態で基板30上に積層体を成膜し、成膜後に通電停止することで基板30は元の伸張していない状態に戻り、積層体に矢印G’で示す一軸性の圧縮応力を印加した磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料を得ることができる。
また、逆に、補助基板38、38を図13の矢印Mに示すように伸張させることで基板30を横方向に縮小して矢印Nで示す圧縮歪を付加できるので、この状態で基板30上に積層体を成膜し、成膜後に通電停止することで基板30を縮小していない元の状態に戻すことができ、これにより積層体に矢印N’で示す一軸性の引張応力を印加した状態の磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料を得ることができる。以上のように基板の一部分のみを圧電材料で形成することで一軸性の引張応力あるいは圧縮応力の作用した積層体を具備する目的の磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料を得ることができる。
【0060】
次に図14は、基板に対して機械的に一軸性の応力を印加し、それにより積層体に一軸性の応力を印加する方法を説明するためのものである。
図14(A)に示す平板状の基板30を図14(B)に示すように機械的に上向きに湾曲させ、この状態で基板30上に先の例の積層体35を成膜し、成膜後に基板30を元の平板状に戻すことで基板上の積層体35に一軸性の圧縮応力を印加できる。この際に印加する圧縮応力の大小は基板30を湾曲させる際の曲率半径を調整することで容易に調整できる。また、逆に、基板30を図14(C)に示すように下向きに湾曲させ、この状態で基板30上に先の例の積層体35を成膜し、成膜後に基板30を元の平板状に戻すことで基板上の積層体35に一軸性の引張応力を印加できる。
基板30を機械的に上向きあるいは下向きに湾曲させるには、基板30の両端を把持装置で把持して上向きあるいは下向きの力を加えて湾曲させる方法を採用しても良いし、目的の曲率半径の曲面を有する治具に基板を押しつけて湾曲させるなどの方法を採用しても良い。
【0061】
また、基板30を湾曲させる方法として以下に説明する圧電材料を用いる方法を採用しても良い。
即ち、基板を圧電材料から構成し、しかも、圧電材料の変位を伸張モードあるいは伸張モードではなく、曲げモードに変更して構成し、図14(B)あるいは図14(C)に示すように圧電材料の変位で基板を上下に湾曲するように構成するならば、圧電材料に対する通電電圧の大小により基板の湾曲状態の変化を利用して所望の圧縮応力あるいは引張応力を積層体35に印加することができ、これを利用して基板上に所望の大きさの一軸性の応力を印加した積層体を形成することができる。
なおまた、基板を圧電材料で形成し、前記の如く曲げモードで湾曲させることで積層体に圧縮応力あるいは引張応力を印加できるので、基板を平板状の状態とした際に積層体を成膜し、成膜後に実際に使用する際に圧電材料製の基板に所定の曲げモードになるように通電して積層体に一軸性の圧縮応力あるいは引張応力を与えて目的を達成できる構成とすることもできる
【0062】
図15〜図17は基板に対して一軸性の応力を印加するための他の方法とその構造例を示すものである。
この例の基板47は、結晶方位によって熱膨張係数の異なる材料であって、しかも、その方向が直交している材料から構成されている。
このような材料として具体的には、単結晶サファイア、水晶、方解石、Sb、Be、Bi、Co、Sn、Zn、Zrなどの単結晶板を用いることができる。ここで、単結晶サファイアは、<201>方向(本明細書において結晶格子の方向指数のアンダーライン(例えばこの例では2の下に付されたアンダーライン)は、その数値の方向指数の逆方向を示すものとする。)の熱膨張係数αは70.1×10−7であり、その直交方向<110>の熱膨張係数αは76.4×10−7である。従って基板47を加熱すると基板40は<110>方向に伸びる状態となり、冷却された場合は縮小する状態となる。
【0063】
また、水晶の[0001]方向(結晶のC軸に平行な方向)の熱膨張係数αは図15にも示すように7.5×10−6、[010]方向(結晶のC軸に垂直な方向)の熱膨張係数は図15にも示すように13.7×10−6である。同様に、方解石結晶のC軸に平行な方向の熱膨張係数は26.3×10−6、C軸に垂直な方向の熱膨張係数は5.44×10−6である。更に、SbのC軸に平行な方向の熱膨張係数は15.6〜16.8×10−6、C軸に垂直な方向の熱膨張係数は7.0×10−6であり、BeのC軸に平行な方向の熱膨張係数は10.4×10−6、C軸に垂直な方向の熱膨張係数は15.0×10−6であり、BiのC軸に平行な方向の熱膨張係数は16.2×10−6、C軸に垂直な方向の熱膨張係数は11.6×10−6であり、CoのC軸に平行な方向の熱膨張係数は16.1×10−6、C軸に垂直な方向の熱膨張係数は12.6×10−6であり、SnのC軸に平行な方向の熱膨張係数は25.9〜32.2×10−6、C軸に垂直な方向の熱膨張係数は14.1〜16.8×10−6であり、ZnのC軸に平行な方向の熱膨張係数は56〜64.0×10−6、C軸に垂直な方向の熱膨張係数は14.1〜16×10−6であり、ZrのC軸に平行な方向の熱膨張係数は4×10−6、C軸に垂直な方向の熱膨張係数は13×10−6である。従ってこれらのいずれの材料も基板47用として使用できる。
【0064】
次に、前記基板47を用いた構造の磁気抵抗効果多層薄膜を製造する方法の一例について説明する。
前記材料において、例えば、水晶からなる基板47を用意したならば、この基板47を所定の温度に加熱した状態で図17に示すように基板47上に積層体35を成膜する。ここで所定の温度とは、基板47と積層体35が損傷しない程度の高温であるので、具体的には100〜300℃の範囲が好ましい。
前記の温度に加熱した状態では基板47は伸張した状態であるので、この加熱を停止して常温に戻すことで積層体35には熱膨張係数の大きな特定の結晶方向に沿って一軸圧縮応力が作用し、これにより一軸性の圧縮応力が作用した図17に示す多層膜35を得ることができる。
【0065】
次に、多層膜35に一軸性の引張応力を作用させるには、基板47を液体窒素等の冷媒で常温より低い低温に冷却して基板47を縮小させた状態にしながら基板47の上に積層体35を成膜する。成膜後、基板47の冷却を停止して基板47を常温に戻すことで、基板47は縮小していない元の状態に戻るので基板47上の積層体35に一軸性の引張応力を印加することができる。
以上のように結晶方位に応じて異なった熱膨張係数を有する基板47を用いることによっても目的の磁気抵抗効果多層薄膜材料を得ることができる。
【0066】
なお、前記の説明においては、各種の基板上に積層体35を成膜してこの積層体35に一軸性の応力を印加した構成と方法について説明したが、これまで説明した構成と方法を用いて基板上に図4と図5に示す積層体46を成膜しても先の図4と図5を元に説明した構成と同等の磁気抵抗効果多層薄膜材料を得ることができるのは勿論である。
【0067】
【実施例】
以下、図面を参照して本発明の実施例について説明する。
高周波マグネトロンスパッタ装置を用いて、シリコン単結晶基板上に厚さ5nmのTaからなる下地層(バッファ層)を形成し、更にその上に、表1に示す組成のNi−Fe合金あるいはNi−Fe−Co合金からなる厚さ3nmの強磁性層 Aと、表1に示す金属材料からなる厚さ2.5nmの非磁性層と、表1に示す組 成のNi−Fe合金あるいはNi−Fe−Co合金からなる厚さ3nmの強磁性層 Bと、表1に示す金属材料からなる厚さ2.5nmの非磁性層からなる積層ユニ ットを複数層積層した。積層ユニットの繰り返し積層回数は、表1に示すように10回とした。
【0068】
各強磁性層の一軸磁気異方性エネルギーおよび飽和磁歪定数は、厚さ15nmの一方の強磁性層と他方の強磁性層をそれぞれ別個に基板上に形成し、それら単層膜の磁化曲線の応力による変化(異方性磁界の変化)から求めた。
また、各積層体のデータは、図1(A)、(B)に示すように積層体60を一面に形成したシリコン単結晶基板61に対して三角柱型の4つの治具62を用いて4点曲げにより積層体60に一軸性の引張応力(図1(A)参照)あるいは圧縮応力(図1(B)参照)をMR測定時の磁界印加方向(電流を流す方向と直角方向)に印加したときのものである。また、磁気抵抗変化率の測定は4端子法により行い、電流の方向と磁界の方向を直角(いずれの方向も膜面内)として行い、図19にも示す如く以下に示される式で定義される値とした。
即ち、磁気抵抗変化率(MR比)=(ΔR/Rs)×100 (%)とした。
【0069】
以下の表1に一方の強磁性層の組成と飽和磁歪定数λと一軸磁気異方性エネルギーの各値と、他方の強磁性層の組成と飽和磁歪定数λ と一軸磁気異方性エ ネルギーの各値と、非磁性層の構成材料の種類と、組になって積層される強磁性層、非磁性層、強磁性層および非磁性層の積層ユニットの繰り返し積層数と、一軸性の応力の種類と、抵抗変化率の各値を示す。
また、表1において比較のために、Si基板の上にTaバッファ層(厚さ5nm)とNiFe合金の強磁性層(厚さ6nm)とCuの非磁性層(厚さ2.5n m)とNiFe合金の強磁性層(厚さ3nm)とFeMn合金の反強磁性層(厚さ7nm)が積層された従来構造の多層薄膜の抵抗変化率も示した。
【0070】
【表1】
Figure 0003560713
【0071】
表1に示す結果から明らかなように、従来例の多層膜が3.8%の抵抗変化率 を示したのに対し、本発明に係る▲1▼〜▲5▼の試料は7〜14%の比抵抗変化率を示し、極めて優れた抵抗変化率を示した。なお、表1の従来例の試料の抵抗変化率が低いのは、NiFe合金からなる強磁性層を2層しか積層することができず、それを超える数の積層構造にできないためであると思われる。
【0072】
次に前記の製造方法と同じ方法を実施し、成膜時に基板面内の一方向(MR測定時の電流の流れる方向)に磁界を印加しながら成膜して積層体に一軸異方性を誘導した。この例において一方の強磁性層は磁歪が大きいので、電流と直角方向に付加された引張応力により磁化容易軸の向きが90度反転するのに対し、他方の強磁性層は磁歪が小さいので反転せず、磁界中成膜により誘導磁気異方性が残り、一方の強磁性層と他方の強磁性層の磁化は直交配置となる。この例の積層体の各特性を表2(A)に示した。
【0073】
【表2】
Figure 0003560713
【0074】
表2(A)は、一方の強磁性層と他方の強磁性層の磁歪の符号が同じ場合に積層体の特性を測定した結果を示す。この表2(A)に示す試料においては10%の優れた抵抗変化率が得られた。
【0075】
次に、表1の従来例に記載した積層体と同じ構造で組成のみを変えた積層体を作成し、基板面内の一方向(MR測定時の電流の流れる方向)に磁界を印加しながら成膜処理を行い、成膜処理後に図18に記載の方法と同様の方法を実施してMR測定時の電流の流れる方向と直角方向に一軸性の応力を印加してMR比を測定した。
また、リニアリティーを確保できる範囲の広さを表す指標として、図19に示す磁界と抵抗の関係を示す図におけるH*の値を評価した。また、応力を印加し た方向と平行方向に磁界を印加して図20に示すような磁化履歴曲線を測定し、フリー強磁性層の保磁力HCFを求め、更に基準強磁性層が反強磁性層から受けるバイアス磁界HUAを評価した。
【0076】
その結果を表2(B)に示す。本発明の試料において、抵抗変化率は従来例の試料と同程度であるが、H*の大きさとHCFの小ささはいずれも従来例の試料を上回っており、優れた特性が得られた。
【0077】
次に、図21と図22は、円盤状の磁気記録媒体60に対して浮上して走行しながら記録磁界を読み取る磁気ヘッド61に対して本発明に係る多層薄膜材料を適用した一構造例を示すものである。
磁気記録媒体60に対して走行するスライダ62の後部にCuからなる一対の電極膜63、63により挟まれた状態で表2(B)に示した本発明の積層体64が形成されている。
【0078】
この例においてスライダ62は、Al−TiC(アルチック)基板から形 成されてなり、左右の電極膜63、63の間隔は3μm、積層体64の高さは2μmに形成されている。更に、図示していないが、積層体64と基板との間には下部シールド磁性膜が絶縁層を介して成膜されている。
また、スライダ62の表面側には、電極膜63、63と積層体64を覆う上部シールド強磁性膜と、厚さ2μmのAlの保護膜(図示略)が被覆され、このAlの保護膜により、あるいは、スライダを加工する際等の加工応力により積層体64に一軸性の応力が付加されている。更に、スライダ62と電極膜63、63と積層体64の下面はラップ加工により鏡面加工されている。
【0079】
以上のように構成された磁気ヘッド61の電極膜63、63間に電流を流し、電位差の変化から抵抗変化率を測定した。求めたR−H曲線から、抵抗変化率を 求めた結果、3.0%の値が得られ、H*=12 Oeが得られた。
このことから、被覆したAl膜からの応力と加工途中の応力により積層体64に一軸性の応力が付加され、積層体の各強磁性層間で磁化が直交配置されていることが立証された。
【0080】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1〜5または10に記載の発明によれば、積層体に付加した一軸性の応力により磁歪定数の異なる一方の強磁性層の磁化の方向と他方の強磁性層の磁化の方向を制御するので、一方の強磁性層の磁化の方向と他方の強磁性層の磁化の方向を略直交させた積層体が容易に得られる。
また、本発明の構造においては一方の強磁性層と他方の強磁性層を非磁性層を介して多数積層可能であるので、非磁性層を両強磁性層で挟み、これらの強磁性層間に生じる伝導電子のスピン依存散乱を利用する本願構造の場合、スピン依存散乱の起こる界面数を増加できるので、従来構造より高いMR比を得ることができる。
【0081】
更に本発明の場合、一方の強磁性層と他方の強磁性層を同一組成系の強磁性材料で構成できるので、従来構造の如く異種の強磁性層の積層構造とは異なり、スピン依存散乱以外の伝導電子の散乱を少なくすることができ、大きなMR比を得る上での障害を無くしたので、大きなMR比を得ることができる。
なお、保磁力の異なる異種材料系の強磁性層を非磁性層を介して多数積層した従来構造にあっては、保磁力の高い全ての強磁性層の磁化の向きを完全に平行にすることに無理があったが、本発明の構造では一方の強磁性層の磁化の向きを確実に平行に固定することができるので、高いMR比のものを確実に得ることができる。
【0082】
次に、請求項2またはに記載のように強磁性層のどちらかの一軸磁気異方性エネルギーを他方より大きくすることにより、大きな異方性エネルギーを有する方の強磁性層の磁化の向きを容易にピン止めすることができ、小さな異方性エネルギーを有する方の強磁性層の磁化の向きを微小磁界で回転させることができるので、微小磁界にも敏感に反応して抵抗変化する性能を得ることができる。
また、請求項1〜5に記載の発明においては、従来構造において強磁性層の磁化の向きを固定していたFeMn層を用いる必要がないので、耐食性、耐環境性の面で問題を生じない。
【0083】
更に、各強磁性層の自発磁化を直交させるために、成膜の最中に基板に印加する磁界の方向を変える必要があったが、本発明によれば磁界の方向を成膜毎に変える特別な装置は必要なくなり、従来より安価な装置で製造できるようになる。次に、積層体の各磁性層に作用させる一軸性の応力は、積層体を設ける素子の加工時の応力、積層体に被覆する被覆層の応力を有効に利用できるので、容易に応力付加ができる。
【0084】
次に請求項6、7または14に記載の発明においては、反強磁性層の存在により基準強磁性層の磁化の向きを確実にピン止めして固定できると同時に、積層体に印加された一軸性の応力により確実にフリー強磁性層の磁化の向きを基準強磁性層の磁化の向きに直交させることができる。そして、このフリー強磁性層の磁化の向きを決める一軸磁気異方性エネルギーを基準強磁性層の磁化の向きを決める異方性エネルギーに対して適切な値に設定することで、フリー強磁性層の磁化の向きを磁気記録媒体の微小磁界で確実に回転させるようにすることができる。
【0085】
次に請求項10と11あるいは請求項15と16に記載の発明においては、圧電材料製の基板、あるいは熱膨張係数が直交する結晶方位で異なる材料からなる基板が用いられているので、圧電材料に通電するか、基板を加熱あるいは冷却することにより基板を縮小させるか伸張させ、この状態で積層体を成膜することにより、通電停止後あるいは加熱冷却処理停止後に常温で一軸性の応力が確実に付加された積層体を備えた磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料が得られる。また、圧電材料に対する通電条件あるいは加熱冷却時の温度条件に応じて積層体に付加できる一軸性の応力値の大小を容易に設定できるので、所望の大きさの応力が印加された積層体を有する磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料を特別な磁場印加装置を要することなく確実かつ容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は強磁性層と非磁性層が積層されてなる積層体に引張応力が付加された構造の多層薄膜材料の一例を示す断面図である。
【図2】図2は強磁性層と非磁性層が積層されてなる積層体に圧縮応力が付加された構造の多層薄膜材料の一例を示す断面図である。
【図3】図3はFe−Ni−Co系合金の組成と磁歪λの関係を示す三角組成図である。
【図4】図4は反強磁性層と強磁性層と非磁性層と強磁性層と非磁性層が積層された積層体に引張応力が付加された構造の多層薄膜材料の一例を示す断面図である。
【図5】図5は反強磁性層と強磁性層と非磁性層と強磁性層と非磁性層が積層された積層体に圧縮応力が付加された構造の多層薄膜材料の一例を示す断面図である。
【図6】図6は図5と同様な構造において強磁性層の磁化の向きが平行状態になっている状態を示す断面図である。
【図7】図7は図5と同様な構造において強磁性層の磁化の向きが平行状態になっている状態の他の例を示す断面図である。
【図8】図8は図5と同様な構造において強磁性層の磁化の向きが直交状態になっている状態を示す断面図である。
【図9】図9は図5と同様な構造において強磁性層の磁化の向きが平行状態になっている状態の更に他の例を示す断面図である。
【図10】図10は本発明に係る多層薄膜材料の磁化履歴曲線を示す図である。
【図11】図11は図10に示す多層薄膜材料の印加磁界と抵抗の関係を示す図である。
【図12】図12は圧電材料からなる基板を用いた磁気抵抗効果多層薄膜材料の一例を示す断面図である。
【図13】図13は圧電材料からなる補助基板を両端部に備えた基板を示す断面図である。
【図14】図14は基板に機械的に応力を付加する方法を説明するためのもので、図14(A)は平板状の基板を示す側面図、図14(B)は基板を上向きに湾曲させた状態を示す側面図、図14(C)は基板を下向きに湾曲させた状態を示す側面図である。
【図15】図15は熱膨張係数の異なる基板を示す平面図である。
【図16】図16は図15に示す基板の側面図である。
【図17】図17は図15と図16に示す基板を用いて構成された磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料を示す断面図である。
【図18】図18(A)は実施例において積層体に引張応力を印加する方法を説明するための側面図、図18(B)は実施例において積層体に圧縮応力を印加する方法を説明するための側面図である。
【図19】図19は実施例の積層体における印加磁界と抵抗の関係を示す断面図である。
【図20】図20は実施例の積層体の磁化履歴曲線を示す図である。
【図21】図21は本発明に係る多層薄膜材料が設けられる磁気ヘッドとこの磁気ヘッドで読み出される磁気情報が記録された磁気記録媒体の一例を示す斜視図である。
【図22】図22は図15に示す磁気ヘッドの要部の拡大図である。
【図23】図23は従来の磁気抵抗センサの第1の例を示す分解斜視図である。
【図24】図24は従来の磁気抵抗センサの第2の例を示す断面図である。
【図25】図25は従来の磁気抵抗センサの第3の例を示す断面図である。
【符号の説明】
30、40、36、37、47 基板
31、33 非磁性層
32 他方の強磁性層
34 一方の強磁性層
35、46 積層体
38 補助基板
41 バッファ層
42、52 フリー強磁性層
43、53 非磁性層
44、54 基準強磁性層
45、55 反強磁性層

Claims (16)

  1. 飽和磁歪定数の符号が正の強磁性金属ないしは強磁性合金からなる強磁性層と飽和磁歪定数の符号が負の強磁性金属ないしは強磁性合金からなる強磁性層が、非磁性層を介し交互に1組以上積層されて積層体が形成され、この積層体に、一軸性の応力が印加されてなることを特徴とする磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料。
  2. 前記非磁性層を挟んで設けられた両方の強磁性層が、いずれも一軸磁気異方性を有し、それぞれの磁化容易軸が膜面内に沿って略直交されており、前記両方の強磁性層のうち、一方の強磁性層の有する一軸磁気異方性エネルギーの絶対値が500J/m以上、他方の強磁性層の有する一軸磁気異方性エネルギーの絶対値が50〜500J/mの範囲であることを特徴とする請求 項1記載の磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料。
  3. 飽和磁歪定数の絶対値が2×10−6未満の強磁性金属ないしは強磁性合金からなる強磁性層と、飽和磁歪定数の絶対値が2×10−6以上の強磁性金属ないしは強磁性合金からなる強磁性層が、非磁性層を介し交互に1組以上積層されて積層体が形成され、この積層体に、一軸性の応力が印加されてなることを特徴とする磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料。
  4. 前記非磁性層を挟んで設けられた両方の強磁性層が、いずれも一軸磁気異方性を有し、それぞれの磁化容易軸が膜面内に沿って略直交されており、前記一方の強磁性層の一軸磁気異方性が磁界中成膜ないしは磁界中熱処理により制御されたものであり、その一軸磁気異方性エネルギーの絶対値が50〜500J/mの範囲であり、前記他方の強磁性層の一軸磁気異方性が磁歪と応力による磁気弾性効果により制御されたものであり、その一軸磁気異方性エネルギーの絶対値が500J/m以上とされてなることを特徴とする請求項3記載 の磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料。
  5. 強磁性層が、Ni100−xFeまたはNi100−x−yFeCo 合金からなり、一方の強磁性層の組成が、原子%で、
    0≦x≦20、0≦y≦60
    なる関係を満足し、他方の強磁性層の組成が、原子%で、
    7≦x≦60、0≦y≦60
    なる関係を満足するものであることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料。
  6. 方の側に対接された反強磁性層によって単磁区化された基準強磁性層と、この基準強磁性層の他方の側に対接された非磁性層を介して設けられたフリー強磁性層を具備して構成された薄膜積層体であって、前記フリー強磁性層の自発磁化の方向が、フリー強磁性層の磁歪と積層体全体に印加された一軸性の応力によって生じる磁気弾性効果により、基準強磁性層の磁化の方向とほぼ90度の角度をなすように制御されてなることを特徴とする磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料。
  7. 前記フリー強磁性層の磁歪と、積層体全体に印加された一軸性の応力とによってフリー強磁性層に誘起された一軸異方性エネルギーが、フリー強磁性層の磁界中成膜により誘起されている一軸異方性エネルギーより大きくされ、かつ、反強磁性層により基準強磁性層に誘起されている異方性エネルギーより小さくされてなることを特徴とする請求項6記載の磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の積層体に印加される一軸性の応力が、積層体が形成された基板、または、積層体の上に成膜された保護膜あるいは層間絶縁層により印加されたもの、あるいは、基板を加工する際の加工応力からなるものとされたことを特徴とする磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の非磁性層が、Cu,Ag,Auから選ばれる1種の金属から、あるいは、これらから選択される2種以上の元素の合金からなることを特徴とする磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載の積層体が基板上に形成され、前記基板の少なくとも一部が圧電材料からなり、前記一軸性の応力が圧電材料によって印加されたものであることを特徴とする磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料。
  11. 請求項1〜10のいずれかに記載の積層体が基板上に形成され、前記基板の少なくとも一部が、結晶方位で熱膨張係数が異なり、しかも 膨張係数の異なる2つの結晶方位が直交してなる材料からなり、前記一軸性の応力が基板の熱膨張係数の方位異方性によって印加されたものであることを特徴とする磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料。
  12. 飽和磁歪定数の符号が正の強磁性金属ないしは強磁性合金からなる強磁性層と、飽和磁歪定数の符号が負の強磁性金属ないしは強磁性合金からなる強磁性層を非磁性層を介し、交互に1組以上積層して積層体を形成し、この積層体に、一軸性の応力を印加することで非磁性層を挟んで設けられた両方の強磁性層の自発磁化の向きを略直交させることを特徴とする磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料の磁性層の磁化の調整方法。
  13. 飽和磁歪定数の絶対値が2×10−6未満の強磁性金属ないしは強磁性合金からなる強磁性層と、飽和磁歪定数の絶対値が2×10−6以上の強磁性金属ないしは強磁性合金からなる強磁性層を非磁性層を介して交互に1組以上積層し、この積層体に、一軸性の応力を印加して非磁性層を挟んで設けられた両方の強磁性層の自発磁化の向きを直交させることを特徴とする磁気抵抗効果素子用多層薄膜材料の磁性層の磁化の調整方法。
  14. 反強磁性層と基準強磁性層と非磁性層とフリー強磁性層を積層して積層体を形成し、反強磁性層によって基準強磁性層を単磁区化するとともに、この積層体に一軸性の応力を付加することで生じる磁気弾性効果によりフリー強磁性層の磁化の向きを基準強磁性層の磁化の向きに対して略直交させることを特徴とする磁性層の磁化の調整方法。
  15. 少なくとも一部を圧電材料から形成した基板を用いるとともに、圧電材料に通電して圧電材料の変形により基板に一軸性の歪を生じさせた状態で基板上に積層体を形成し、積層体の形成後に圧電材料に対する通電を停止して基板の変形を解除し、これにより積層体に一軸性の応力を印加することを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の磁性層の磁化の調整方法。
  16. 少なくとも一部を結晶方位で熱膨張係数が異なり、しかも熱膨張係数の異なる2つの結晶方位が直交してなる材料から形成した基板を用いるとともに、前記基板を加熱または冷却して基板の熱膨張係数の方位異方性により基板に一軸性の歪を生じさせた状態で基板上に積層体を形成し、積層体の形成後に基板を常温に戻して基板の熱膨張変形を解除し、これにより積層体に一軸性の応力を印加することを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の磁性層の磁化の調整方法。
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