JP3560509B2 - ミシン - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はボタン穴等の周縁をかがり縫いするための穴かがりミシンのように、針振り動作により縫目を形成するミシンに関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、針を送り方向との直交方向に振らせて針落ち位置を変更しながら縫目を形成する針振り型のミシンが知られている。通常、この種の針振り機構は、ミシン主軸に連動するカムにより針振り位置を規正する構成のもの、或いはステッピングモータを直接針棒揺動機構に連結して針振りを行なわせるものが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記カムによるものは、縫い形状、或いはその大きさに応じて多数のカムを用意しなければならないし、針落ち位置や針振り量を変更するには手動による調節を必要とした。また、前記ステッピングモータ等により直接針棒揺動機構に連結するものでは、一針の縫目形成毎にステッピングモータを駆動して針を振らなければならず、一針毎にステッピングモータに針棒揺動機構全体の大きな慣性負荷がかかり、高速にするとステッピングモータの脱調を起こす問題があり、高速化ができない。
【0004】
本発明の目的は上述の如き従来技術の欠点を改善したミシンを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、
請求項1の発明は、縫製物を送る縫製物送り機構(2)と、ミシンの主駆動軸(33)の回転に連動して回転する偏心カム(29)の偏心作用によって針(20)を揺動させる針揺動機構(3)と、前記針の針落ち位置を変える基線変換機構(40)と、前記基線変換機構による針落ち位置からの針の揺動範囲を調節する針揺動調節機構(41)と、を有するミシンにおいて、常には前記偏心カムの偏心作用によって前記針を揺動させ,前記針の針落ち位置を変える時にのみ前記基線変換機構を電気的に駆動する基線変換駆動手段(駆動手段52)と、前記針落ち位置からの針の揺動範囲を調整する時にのみ前記針揺動調節機構を電気的に駆動する揺動調節駆動手段(駆動手段53)と、主駆動軸に設けたエンコーダ(60)と、予め縫いデータが入力されており、縫製時に前記縫製物送り機構が作動して縫製物を送りながら、前記エンコーダ出力に応じて、縫いデータに基づいて基線変換駆動手段(52)及び揺動調節駆動手段(53)を制御することにより、基線変換機構(40)及び針揺動調節機構(41)を作動させ、針落ち位置を調整すると共に針の揺動範囲を調節する制御手段(50)とを備えたことを特徴とする。
また、請求項2の発明は、請求項1に記載のミシンにおいて、 前記縫製物送り機構(2)を電気的に駆動する送り駆動手段(駆動手段51)による布送り量を制御する送り制御手段(50)を有し、主駆動軸の回転により、前記エンコーダ出力に応じて、形状縫いデータ、返し縫データ及び穴かがり縫いデータに基づいて前記基線変換駆動手段、前記揺動調節駆動手段及び前記送り制御手段を制御することにより、形状縫い又は返し縫いを形成してから該形状縫い又は返し縫い上に穴かがり縫いを形成することを特徴とする。
【作用】
この請求項1の発明によれば、このミシンは、一針毎の針の揺動自体は偏心カムの偏心作用により行い、針の針落ち位置を変える時にのみ基線変換機構を電気的な基線変換駆動手段で駆動し、針落ち位置からの針の揺動範囲を調節する時にのみ針揺動調節機構を電気的な揺動調節駆動手段で駆動することにより、電気的な駆動手段にかかる負荷を軽減して高速での脱調を防止し、ミシンの高速化を可能にすると共に、予め入力された縫いデータに基づいて電気的な駆動手段を制御することにより、針棒の基線位置と基線位置からの針振り量を適時適量の変更することが可能となり、自在な針振り制御を可能にする。
また、請求項2の発明によれば、縫製物送り機構を電気的な送り駆動手段により駆動することにより、形状縫いデータ又は返し縫データ、及び穴かがり縫いデータに基づいて前記基線変換駆動手段、前記揺動調節駆動手段及び前記送り制御手段を制御することにより、形状縫い又は返し縫いを高速で形成してから該形状縫い又は返し縫い上に穴かがり縫いを高速で形成することを可能にする。
【0007】
【実施例】
図1を参照すると、本発明に係る穴かがりミシンが示してあり、この穴かがりミシンは、例えば、図2〜図4に示す如きボタン穴の穴かがり縫いa〜dを行う穴かがり縫い装置1を備えている。この穴かがり縫い装置1は、図1に示す如く、縫製物送り機構2と針揺動機構3とを有する。縫製物送り機構2は図示しない任意の縫製物を図1に矢印Tで示す方向に直線往復運動させるものである。この縫製物送り機構2は縫製物を把持する把持手段4と、一端がこの把持手段を支持しミシンアーム5に矢印T方向に移動可能に取付けられたレバー6とを有する。把持手段4は通常の構造から成り、従って、その説明を省略する。レバー6の他端は送り台7の一端7aにピン8によって枢着され、この送り台の中間部7bは軸9にその軸線方向に摺動自在に支承されている。この軸9はミシン本体10に固定されている。送り台7の他端7cにはねじ棒11の一端がねじ込まれている。従って、このねじ棒を回動させると、送り台が軸9の軸線方向に沿って移動する。この送り台の移動に伴ってレバー6および把持手段4が駆動され、縫製物が矢印T方向に移動される。
【0008】
針揺動機構3は、針20を図1に矢印Sで示された方向に揺動させるものである。この針揺動機構3は、針20を支持する針棒21を一端即ち下端に支持する揺動台22を有する。この揺動台22の他端即ち上端22aは枢軸23によって矢印方向Sに揺動可能にミシンアーム5に支承されている。この揺動台の下端には揺動腕24の一端が枢着され、この揺動腕の他端には揺動軸25の一端が固定されている。この揺動軸25はミシンアーム5に回転可能に支承されている。この揺動軸の他端は揺動リンク26の一端が固定され、この揺動リンクの他端はカムリンク27の一端27aに枢着されている。
【0009】
このカムリンク27は二叉部28を有し、この二叉部の中に偏心カム29が嵌合されている。この偏心カムは図示の実施例では回転軸線から偏心した三角形カム面を有するものから成っている。この偏心カムはその回転軸線を中心とするシャフト30を有し、このシャフトはミシンの本体10に回転可能に支承され且つギヤ31に連結されている。このギヤ31はギヤ32に噛合いこのギヤ32はミシンの主駆動軸33に固定されている。
【0010】
従って、この主駆動軸33が回転すると、ギヤ31,32を介して偏心カム29が回転される。そしてこの偏心カムの偏心作用によってカムリンク27が揺動し揺動リンク26を介して揺動軸25を回転せしめる。この揺動軸25の回転によって揺動腕24が揺動して揺動台22を揺動せしめ針20を矢印方向Sに揺動する。
【0011】
穴かがり縫い装置1は、又、針20の針落ち位置を変える基線変換機構40と上述の針揺動機構3による針20の揺動範囲を変える(調節する)針揺動調節機構41とを含む。
【0012】
基線変換機構40は針20の軸線が垂直方向にある基準位置から上述の針の揺動方向である矢印方向Sの任意の位置に針位置を変えるようにするものである。この基線変換機構40は、図示の実施例では、基線変換腕42を有する。この基線変換腕は中間部42aがミシンの本体10に回転可能に支承されている。この基線変換腕42の一端には二叉部42bが形成され、他端には起動部42cが形成されている。この基線変換腕の二叉部42bにはコ字形の変換リンク43が枢着される。更に詳細にのべると、この変換リンクの平行に延びる一対の脚44,44窒フ先端部が図示しないピンによって基線変換腕の二叉部42bに回転自在に取付けられる。この変換リンクの取付位置に中間リンク45の一端が上述のピンによって変換リンクの脚44,44窒ニ共に回転自在に取付けられる。この中間リンクの他端は、カムリンク27の一端27aとは反対の他端27bに回転自在に連結されている。この基線変換機構40は、基線変換腕42の他端の起動部42cを図1に矢印S1で示す方向に移動することにより、変換リンク43、中間リンク45を介してカムリンク27を、その支点位置である揺動リンク26との連結部の位置が矢印Sに沿う任意の位置に変えられるように移動せしめる。
【0013】
このようにして、針の針落ち位置を変えることができる。
【0014】
針揺動調節機構41は、揺動調節腕46を有する。この揺動調節腕の中間部46aはミシンの本体10に回転自在に支承されている。この揺動調節腕の一端46bには調節リンク47の一端が枢着され、この調節リンクの他端は、変換リンク43の基準変換腕42への連結部とは反対の端部に枢着されている。この揺動調節腕46の他端には起動部46cが形成されている。
【0015】
この針揺動調節機構41は、揺動調節腕46の起動部46cを図1に矢印S2で示す方向に移動することにより、調節リンク47、変換リンク43および中間リンク45を介してカムリンク27を、偏心カム29の二叉部28内での位置が変るように駆動し、従って、カムリンク27の揺動リンク26との連結位置と偏心カム29の回転軸線との間の距離、即ちカムリンクの揺動半径を変えるようにする。これによって、針の揺動幅を任意に変えることができる。
【0016】
上述の穴かがり縫い装置1即ち、縫製物送り機構2、針揺動機構3;基線変換機構40および針揺動調節機構41によって図2〜図4に示す穴かがり縫い、即ち、第一の平行部a、第一閂止めb、第二平行部cおよび第二閂止めdの縫製を行う。
【0017】
この場合、一つのボタン穴の穴かがり縫いが終った後、上下糸が切断装置(図示せず)によって切断され次のボタン穴の穴かがり縫いを行う際に、針20に係合し針から延びている上糸即ち針糸(図示せず)の端部分をいかに穴かがり縫いの中に巻き込むように縫製物に縫い付けるかが課題となる。
【0018】
本発明では上述の穴かがり縫い装置による穴かがり縫いの前に図3に示す形状縫いC又は図2に示す返し縫いRを行う縫い込み装置を設けたことを特徴とする。注目すべきはこの縫い込み装置が上述の穴かがり縫い装置を電気的に制御する制御手段50を備えて上述の形状縫いC又は返し縫いRを行うことである。
【0019】
ここで、返し縫いRとは図2に示すように、穴かがり縫いの前に第一の平行部aに沿ってある距離縫った後に縫い始め点に戻す縫い方をいう。又、形状縫いCとは図3に示すように、穴かがり縫いの前に穴かがり縫いの始めから終り迄の工程に亘って縫うことをいう。
【0020】
制御手段50は、縫製物送り機構2を駆動する駆動手段51と基線変換機構40を駆動する駆動手段52と針揺動調節機構41を駆動する駆動手段53とこれら駆動手段51,52,53を電気的に制御する電気制御回路54とを備えている。
【0021】
駆動手段51は、図示の実施例では縫製物送り機構2のねじ棒11に連結された回転軸を有する電気モータ57から成っている。駆動手段52は例えばリニアモータ55から成り、このリニアモータは基線変換機構40の基準変換腕42の起動部42cに連結された直線往復移動するシャフト55aを有する。駆動手段53は駆動手段52と同様にリニアモータ56から成り、このリニアモータは針揺動調節機構41の揺動調節腕46の起動部46cに連結された直線往復移動するシャフト56aを有する。
【0022】
尚、上述の駆動手段51,52,53は上述の実施例に限定されず、電気的に作動し且つ応答性が良好なものであれば任意のアクチュエータを用いることができる。
【0023】
電気制御回路54には、ボタン穴の寸法に相応した穴かがり縫製データや穴かがり縫製パターン等のデータが入力されている。又、この電気制御回路54は主駆動軸33に設けられた例えばエンコーダ60を有し、このエンコーダからの出力に応じて、駆動手段51,52,53を駆動して針糸の縫い付けと穴かがり縫いとを行う。
【0024】
次に、上述の穴かがりミシンの使用状態を説明する。
【0025】
縫製物の一つのボタン穴が穴かがり縫い装置1によって穴かがり縫いされる。この穴かがり縫いが終了すると、上下の糸が切断装置によって切断される。次の穴かがり縫いを始める前に、上述の返し縫いR(図2)又は形状縫いC(図3)が行われる。返し縫いRは、予め電気制御回路54に入力された返し縫いデータに基いて、駆動手段52により基線変換機構40を適宜駆動し、且つ駆動手段51により縫製物送り機構2をある距離に亘って往復運動させることにより行われる。形状縫いRは、予め電気制御回路54に入力された形状縫いデータに基いて、基線変換機構40を駆動手段52により駆動し、且つ針揺動調節機構41を駆動手段53により駆動し、又縫製物送り機構2を駆動手段51により駆動して行われる。即ち、基線変換機構40を針が適当な針落ち位置をとるように設定して第一の平行部aに沿って縫う。次いで、第一の閂止めbにおいて、基線変換機構40および針揺動調節機構41を適当に作動して縫い、次いで第二の平行部cに沿って縫って行く。
【0026】
このように返し縫い又は形状縫いが行われた後、換言すると、針糸が縫製物に縫い付けられた後、電気制御回路54に予め入力された穴かがり縫いデータに基いて穴かがり縫い装置によって穴かがり縫いを行う。
【0027】
従って、縫い目の上に糸が残る現象が完全に解消するから、例えば実公昭61−40296号公報に記載されている針糸下面で往復動し、その往復時に針糸ループの一方と下糸とを糸引き部に対向させ、往復時にそれらの糸を糸引部に引っかけて移動する動メスの連動に、回動メスを連動させ、回動メスの刃部を常には針板の針孔に近接した位置とし、糸切りのための動メスの往復時に回動メスの刃部を針孔から離し、動メスの往復時に針孔に接近する方向に移動するようにしたミシンの糸切り機構にすることでミシンを簡素化することができる。さらに、伸縮性のある素材での縫形状のくずれを防止して芯ひも入り縫いと同様の効果を特別の機構を取付けることなく行なうことができるので汎用性が向上する。
【0028】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、針の揺動自体は偏心カムの偏心作用により行い、基線変更機構及び針揺動調節機構を縫いデータに基づいて電気的な駆動手段を適時適量だけ駆動することができるので、基線位置又は針揺動量を変更するときにのみ前記電気的な駆動手段を駆動することにより、複雑な針振り制御が簡単に行えると共に、高速での脱調が無くなりミシンを高速にできる。
また、請求項2に記載の発明によれば、縫製物送り機構を電気的な駆動手段により駆動するようにしたので、形状縫いデータ又は返し縫データ、及び穴かがり縫いデータに基づいて前記基線変換駆動手段、前記揺動調節駆動手段及び前記送り制御手段を制御することにより、形状縫い又は返し縫いを高速で形成してから該形状縫い又は返し縫い上に穴かがり縫いを行うという複雑な縫製工程を簡単にしかも高速で形成することを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る穴かがりミシンの要部の分解斜視図。
【図2】本発明の穴かがりミシンによる返し縫いの縫製パターンを示す平面図。
【図3】本発明の穴かがりミシンによる形状縫いの縫製パターンを示す平面図。
【図4】一般の穴かがり縫いの縫製パターンを示す平面図。
【図5】従来の上糸切断機構を示し、(a)は針糸を切断して可動刃と押え板との間で保持している状態を示す図、(b)はその解放状態を示す図。
【図6】従来の縫い目状態の欠点を示し、(a)は糸端の残り糸の説明図、(b)は残り糸が縫目からはみ出す説明図。
【符号の説明】
1:穴かがり縫い装置
2:縫製物送り機構
3:針揺動機構
20:針
40:基線変換機構
41:針揺動調節機構
50:制御手段
51,52,53:駆動手段
54:電気制御回路

Claims (2)

  1. 縫製物を送る縫製物送り機構と、
    ミシンの主駆動軸の回転に連動して回転する偏心カムの偏心作用によって針を揺動させる針揺動機構と、
    前記針の針落ち位置を変える基線変換機構と、
    前記基線変換機構による針落ち位置からの針の揺動範囲を調節する針揺動調節機構と、を有するミシンにおいて、
    常には前記偏心カムの偏心作用によって前記針を揺動させ、前記針の針落ち位置を変える時にのみ前記基線変換機構を電気的に駆動する基線変換駆動手段と、
    前記針落ち位置からの針の揺動範囲を調整する時にのみ前記針揺動調節機構を電気的に駆動する揺動調節駆動手段と、
    主駆動軸に設けたエンコーダと、
    予め縫いデータが入力されており、縫製時に前記縫製物送り機構が作動して縫製物を送りながら、前記エンコーダ出力に応じて、縫いデータに基づいて基線変換駆動手段及び揺動調節駆動手段を制御することにより、基線変換機構及び針揺動調節機構を作動させ、針落ち位置を調整すると共に針の揺動範囲を調節する制御手段とを備えたことを特徴とするミシン。
  2. 前記縫製物送り機構を電気的に駆動する送り駆動手段による布送り量を制御する送り制御手段を有し、主駆動軸の回転により、前記エンコーダ出力に応じて、形状縫いデータ又は返し縫データ、及び穴かがり縫いデータに基づいて前記基線変換駆動手段、前記揺動調節駆動手段及び前記送り制御手段を制御することにより、形状縫い又は返し縫いを形成してから該形状縫い又は返し縫い上に穴かがり縫いを形成することを特徴とする請求項1に記載のミシン。
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