JP3559788B2 - アルミニウム又はその合金用冷間プレス加工潤滑剤 - Google Patents
アルミニウム又はその合金用冷間プレス加工潤滑剤 Download PDFInfo
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明はアルミニウム又はその合金用冷間プレス加工潤滑剤に関し、更に詳しくは、単一油剤で潤滑性、防錆性、脱脂性に優れるという広範囲な性質、性能に優れた性能を有する冷間プレス加工潤滑剤を提供せんとするものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にアルミニウム又はその合金(以下単にアルミ合金という)の冷間プレス加工潤滑剤は、基油たる鉱物油にナフテン酸、石油スルホネート、アルキルカルボン酸、脂肪族アルコール、合成エステル、油脂等を、又はそれらの金属塩とアルキルフェノール等が添加されるのが一般的である。
【0003】
しかし、地球温暖化に対する環境問題改善、石油資源の節約、石油価格の上昇から、自動車燃費向上が望まれ、ここ数年より自動車外板にアルミ合金板を使用して車体重量を減少して燃費効率を向上させる努力がされている。
【0004】
現状の高張力鋼板に代わるべくアルミ合金板にて検討されているが、プレス成形性が難しく潤滑不足のためにプレス割れ、アルミ合金粉末の発生等のトラブルが発生している。アルミ合金板に塗布される潤滑油にも多機能の性質を有するものが要求されてきた。
【0005】
これらのアルミ合金は比強度を向上させるために、アルミニウムにマグネシウム、シリコン、等が添加されている。この他元素が添加されると非常に加工性が劣るようになり、また剛性が低く、キズが付きやすくなるという欠点がある。また、加工後に製品の組立をするためにスポット溶接性が必要である。アルミ合金表面に加工性を保持するために多くの潤滑剤が残っていると熱や電気の伝導性が悪くなり、更に溶接性が劣ることになる。このことより非常に薄膜にて塑性加工できる潤滑剤が要求されている。
【0006】
スポット溶接後、自動洗浄装置にて加工アルミ合金表面より潤滑皮膜を除去し、表面処理、塗装される。これらの後処理に悪影響させないために潤滑皮膜の被洗浄性が必要となってくる。
【0007】
潤滑皮膜の被洗浄性が良いと、その後の表面処理性が優れ、塗装性に優れ、塗膜の密着性に優れ、剥離等のトラブルが発生せず商品価値を高める。これらの洗浄工程は短時間で行われ、またアルミ合金は化学反応性に富むために、弱アルカリ性の洗浄剤で行われる。それ故、潤滑剤の皮膜を除去するには、潤滑剤自身が水に溶けるか又は乳化し易い構造にする必要がある。
【0008】
また、アルミ合金の板、コイルのメーカーにてこれらの表面に潤滑剤を塗布して出荷されたり、プレス加工加工前にこれらの表面に潤滑剤を塗布して、長時間放置されることが推定される。この間にアルミ合金表面が腐食されないことが後工程を良くするには必要になり、又必須条件となる。
【0009】
即ち、潤滑性はもちろん防錆性、脱脂性等があげられ、単一プレス油で全てを満足するものは現状では得られていない。このような現状に鑑み、単一油剤にて潤滑性はもとより、防錆性に優れ、脱脂し易いという新規なプレス潤滑剤を提供することが本発明の目的である。
【0010】
このようにアルミ合金はそのプレス加工に際しては、独特の潤滑性が要求され、特に通常最もよく行われる鋼の場合とは大きな差異がある。これについて更に若干以下に説明する。
【0011】
(イ)アルミ合金が融点が低く、柔らかいために独特の問題が生じる。
(1)アルミニウムの融点は660℃であり、鋼の1530℃と比較すると非常 に低い値を示している。またアルミ合金の表面は鋼と比較すると柔らかく疵 が付きやすい。
(2)プレス加工塑性加工すると、摩擦熱と加工変形熱が発生して加工界面では非常に 温度が上昇する。摩擦係数が大きいと摩擦熱の比率が大きくなり温度上昇が 大きくなる。加工界面にてアルミ合金が工具表面に凝着しやすくなり、焼き 付きを発生させる。その結果、加工荷重が大きくなり、また摩擦熱が大きく なり悪循環となる。
(3)プレス加工は、拡大面積が一般の加工に比較すると大きい加工である。それ 故に、潤滑皮膜厚みを大きくすることが必要となり、面積拡大に対して密着 性に優れた潤滑皮膜が均一に追随することが最も必要になる。
【0012】
(ロ)アルミ合金は酸化皮膜が薄いために生じる問題。
(1)鋼の表面酸化膜厚は条件にもよるが、μmの単位である。これに比較して アルミ合金表面に生成する酸化皮膜は、nmの単位であり、非常に薄い値で ある。プレス加工により表面積が拡大されると酸化皮膜は更に薄くなる。その ために融点の低い、柔らかいアルミ合金表面が露出される比率が大きくなり 、焼き付き現象の発生が多くなる。
(2)この焼き付き現象を無くすためには、加工材料の表面に密着性に優れ、そ して潤滑皮膜が面積拡大に対して均一に追随する優れた化合物を吸着させる ことが必要になる。
【0013】
(ハ)その他
(1)アルミ製品は鋼と比較して、引張り強さは低い値であり、塑性加工に於い て面積拡大される時に、潤滑皮膜が不足したり、性能が優れていないと、割 れが発生することがある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来のアルミ合金のプレス加工油剤の欠点を解消することにある。更に詳しくはアルミ合金の冷間プレス加工工程に優れた潤滑性を有し、かつ優れた防錆性を併せて有し、さらに従来のプレス油と同等以上の脱脂性を有するアルミ合金の冷間プレス加工潤滑油を開発することにある。又、従来の市販リン酸エステルは耐加水分解に乏しく、無機性リン酸の生成が避けられず、アルミ合金の腐食の原因となっている。更に熱的にも不安定で、比較的低温で分解し易く、無機性リン酸の生成が速く、腐食の原因となっている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定化合物を合成し、その化合物を鉱油等の基油に35〜100重量%含有せしめることによって、上記課題を解決出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、従来のアルミ合金用冷間プレス加工潤滑油では得られない優れた潤滑性を有し、更に従来のアルミ合金用冷間プレス加工潤滑油の防錆性と脱脂性と同等以上の特性を有することである。
【0017】
【発明の作用】
本発明に於いては、炭素原子数が6ないし60個のα位に二重結合を有するオレフィンと亜リン酸、次亜リン酸、又はジアルキルフォスファイトより合成された[化1]で示されるアルキルホスホン酸誘導体を基油(鉱物油)に単独あるいは他の助剤と共用することを基本としている。
【0018】
【化1】
【0019】
(但しR1はC6〜C60の直鎖又は分岐アルキル基、R2又はR3は両方又はいずれか一方がH又はC1〜C18の直鎖又は分岐アルキル基、オキシアルキレン基、アルカリ金属、アルカリ土類金属を示す)
【0020】
また、本発明に於いては、上記[化1]で示される特定の化合物に更に下記化合物(1)及び(2)〜(3)で表される化合物の少なくとも1種との反応生成物を基油に単独又は他の助剤と共に含有せしめる態様も包含される。
化合物(1)
【0021】
【化2】
【0022】
(但し、R4、R5、R6、は全部又は2個又は1個がH又はC1〜C18の直鎖又は分岐アルキル基、又はR6がR7−O−R8で示されるアルコキシル基で、残りがHである。R7はC1〜C6の直鎖又は分岐アルキル基、R8はC1〜C18の直鎖又は分岐アルキル基)
【0023】
化合物(2)
アミノアルコール
【0024】
化合物(3)
【0025】
【化3】
【0026】
(R15は炭素数C1〜C18のアルキル基、R14、16、17、18はH又はアルキル基)
【0027】
【発明の作用並びに構成】
本発明においては、上記[化1]と、化合物(1)〜(3)の化合物の少なくとも1種を使用することにより、アルミニウム又はアルミ合金に対する潤滑性に優れ、防錆性、脱脂もし易い油剤となる。更に詳しくは、本発明冷間プレス加工潤滑油組成物において、上記[化1]と(1)〜(3)の化合物の少なくとも1種との反応物を基油、例えば灯油、スピンドル油、マシン油、等の鉱物油にまた、トルエン等低沸点溶剤に1.0〜100重量%添加したものは、無添加基油、市販アルミ合金プレス油に比べ優れた潤滑性と防錆性を示す。これは上記式[化1]と(1)〜(3)の化合物の少なくとも1種との反応物であるアルキルホスホン酸誘導体の吸着皮膜がアルミ合金表面に均一に形成され、水、ハロゲン、無機酸等の腐食因子によっても破壊されない強靭なものであることをものがたっている。
【0028】
さらに本発明化合物は下記の実験例にも示すように、耐加水分解性、熱分解性に優れ、無機性リン酸が生成し難く、腐食に対しても優位に働いている。
【0029】
【実験例】
下記表1に示す添加剤の特性を測定した。
【0030】
【表1】
【0031】
<耐加水分解性>
方法:試料2gに10%KOH水溶液100mlを加え95℃で10時間加熱還流を行い、エーテル抽出し、油層、水層の燐分を測定し、無機性燐化合物の生成度合より耐加水分解性の指標とした。結果を表1に示す。
【0032】
A:【化4】
【0033】
B:【化5】
【0034】
C:【化6】
表1より明らかなように、本発明化合物は、市販燐酸エステルに比べ化学的に安定なことを示している。これは燐と結合する原子の違いによるもので、P−C結合と、P−O−C結合の結合エネルギーの差によるものである。
【0035】
<熱安定性>
図1に於いて1は本発明化合物A(参考例6)、2は市販リン酸エステルB、3は市販リン酸エステルCを示す。
熱天秤による減量測定
【0036】
【0037】
<潤滑性>
図2に於ける各番号は図1と同じことを示す。
曽田式振り子式油性試験による摩擦係数測定
【0038】
【0039】
本発明で使用する上記特定の化合物であるアルキルホスホン酸誘導体は、その製法は何ら限定されないが、例えば次のような方法で製造される。
【0040】
炭素原子数が6〜60個のα位に二重結合を有するオレフィンと、亜燐酸、次亜燐酸及びジアルキルホスファイトの少なくとも一種とを、オレフィンに対して1.0〜2.0モル混合し、触媒として過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル開始剤を用い、窒素雰囲気中、60〜150℃で4〜20時間反応を行い、アルキルホスホン酸又はアルキルホスホン酸ジアルキルエステルを得る。アルキルホスホン酸ジアルキルエステルは、更に適当な触媒下、例えば濃塩酸、濃アルカリ水の存在下、加水分解してアルキルホスホン酸モノアルキルエステル又はアルキルホスホン酸を得ることが出来る。次いで、アルキレンオキサイドの付加、アミノ化又はアミン塩、アミノアルコールとの縮合又はアミノアルコールとの塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩にすることが出来る。
【0041】
更に詳しく反応条件を例示すると以下の通りである。
【0042】
(イ)アルキレンオキサイド付加反応
オートクレーブ中に、アルキルホスホン酸又はアルキルホスホン酸モノアルキルエステルを1モル入れ、触媒として水酸化カリウム等のアルカリを0.5〜2重量%加え、オートクレーブ中を窒素置換し、撹拌しながら酸化エチレン、酸化プロピレン等の1種0.5〜10モルを圧入し、昇温し、50〜200℃で1〜20時間反応を行い、必要とあれば濾過を行い、アルキレンオキサイド付加物を得る。
【0043】
(ロ)アミン又はアミノアルコールとの塩
温度計、撹拌機、還流冷却管を取りつけた反応器に、アルキルホスホン酸又はアルキルホスホン酸モノアルキルエステルを1モル入れ、アルキルアミン又はアルカノールアミンを0.5〜2.0モル加え、100〜150℃で1〜5時間撹拌しアルキルアミン塩又はアルカノールアミン塩を得る。
【0044】
(ハ)アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩
温度計、撹拌機、還流冷却管を取りつけた反応器にアルキルホスホン酸又はアルキルホスホン酸モノアルキルエステルを1モル入れ、水酸化ナトリウム又は水酸化マグネシウムを0.5〜1.0モル加え、100〜150℃で1〜5時間反応を行い、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を得る。
【0045】
本発明に於いて使用するα位に二重結合を有するオレフィンとしては、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドテセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタコセン等の炭素数6〜60の各αオレフィンが挙げられ、好ましくは炭素数12〜60のオレフィンである。炭素数5以下では、沸点、引火点が低く合成上の収率が極めて低い。炭素数60より多くなると融点が極めて高く、溶解性に乏しく好ましくない。
【0046】
ジアルキルホスファイトとしては、ジメチルホスファイト、ジエチルホスファイト、ジイソプロピルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジ−2エチルヘキシルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジテトラデシルホスファイト、ジヘキサデシルホスファイト、ジオクタデシルホスファイト等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜8のジアルキルホスファイトである。炭素数9以上のジアルキルホスファイトは加水分解を受け易く好ましくない。
【0047】
アルキレンオキサイドとしては、アルキレン基の炭素数が2〜6程度のもので、特に、酸化エチレン、酸化プロピレンが好ましい。
【0048】
アミノ化、アミン塩に使用されるアミンとしては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソピロピルアミン、トリイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、オクタデシルアミンが挙げられ、好ましくは1級アルキルアミンである。又、H2N−R7−0−R8で示されるアミンでは、R7は炭素原子数1〜3、R8は炭素原子数6〜18のものが好ましい。R7の炭素原子数5や6の化合物は、市販合成品の単価が高くこの点からは好ましいとは言い難い。R8の炭素原子数19以上のものは、融点が高く、溶解性に乏しい傾向がある。付加モル数は、1〜10程度であり、これより多いと溶解性が低下する。
【0049】
アミノアルコールとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、N、N−ジメチルプロパノールアミン、N、N−ジエチルプロパノールアミン、ブタノールアミン、ネオペンタノールアミンが好ましい。
【0050】
ポリアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N、N−ジメチルアミノプロピルアミン、N、N−ジエチルアミノプロピルアミンが好ましい。
【0051】
アルカリ金属、アルカリ土類金属としては、Na、K、Ca、Ba、Mg等が好ましい。
【0052】
本発明化合物は35重量%未満では効果がなく、又、本発明化合物は、公知の添加剤、例えばスルホネート類、エステル類、アルコール類、金属石鹸、酸化防止剤等適宜に共用出来る。
【0053】
【実施例】
本発明を理解し易くするために以下に合成例たる参考例を示し、その合成品を用いての実施例を示すが、下記の合成例及び実施例は本発明を何ら制限するものではない。
【0054】
【参考例1】
1−オクテン(1.0モル)、と亜燐酸(2.0モル)および溶媒としてジオキサン500mlを温度計、撹拌機、窒素ガス導入管、滴下ロート、還流冷却管を取りつけた反応器に仕込み、触媒として過酸化ベンゾイル(0.1モル)を1−オクテン50gに溶解させ、滴下ロートよりゆっくり加え、60〜80℃で10時間反応を行い、溶剤抽出により、未反応亜燐酸、未反応1−オクテンを除去し、更に溶剤留去して、オクチルホスホン酸を得た。中和価580(計算値584)。
【0055】
【参考例2】
温度計、撹拌機、窒素ガス導入管、滴下ロート、還流冷却管を取りつけた反応器に、炭素数16のオレフィン(1.0モル)とジイソプロピルホスファイト(1.2モル)を入れ、窒素ガス雰囲気中、触媒として過酸化ベンゾイル(0.2モル)をゆっくり加え、100〜150℃で8時間反応を行い、炭素数16のアルキルホスホン酸ジイソプロピルエステルを得た。
【0056】
【参考例3】
参考例2と同方法で、炭素数28のアルキルホスホン酸ジイソプロピルエステルを得、更に、20%塩酸を用いて共沸下15時間撹拌を行い、水洗精製して炭素数28のアルキルホスホン酸モノイソプロピルエステルを得た。中和価116(計算値109)。
【0057】
【参考例4】
参考例1と類似な方法で、炭素数30〜50のアルキルホスホン酸を得、更にオートクレーブ中、触媒として水酸化カリウム(1重量%)を用い、エチレンオキサイドを1モル付加させ、炭素数30〜50のアルキルホスホン酸モノヒドロキシエチルを得た。中和価79(計算値72)。
【0058】
【参考例5】
参考例3と類似な方法で、炭素数30〜50のアルキルホスホン酸モノイソプロピルエステルを得、その1モルに対して、ラウリルアミン1モルを加え、80〜100℃で1時間加熱撹拌して、炭素数30〜50のアルキルホスホン酸モノイソプロピルのラウリルアミン塩を得た。
【0059】
【参考例6】
参考例1と類似方法で、炭素数20〜28のアルキルホスホン酸を得、その1モルに対してN、N−ジエチルプロパノールアミン1モルを加え、100〜130℃にて5時間加熱撹拌し縮合させ、炭素数20〜28のアルキルホスホン酸モノ(ジエチルアミノ)プロパノールエステルを得た。
【0060】
【参考例7】
参考例3と同じ方法で、炭素数20〜28のアルキルホスホン酸モノイソプロピルを得、その1モルに対し、水酸化マグネシウム0.5モルを加え、100〜130℃で3時間加熱撹拌し、炭素数20〜28のアルキルホスホン酸モノイソプロピルモノMg塩を得た。
【0061】
【参考例8】
参考例6にて作成した試験液を試験片(アルミニウム#5052)に塗布後、コンタクトして14日間放置した。その膜厚は2μであった。その後、性能試験をした。
【0062】
【実施例1〜3】
下記表2に示す各成分を所定量配合して、プレス加工油を調製した。但し同表中は全て重量%を示す。
【0063】
【表2】
【0064】
【0065】
2.プレス性試験(円筒深絞り試験)
試 験 片:アルミニウム合金(#5052)板
ブ ラ ン ク 径 (D):φ70〜φ85(厚さ0.8mm)
ポ ン チ 径 (dp):φ40(平頭ポンチ)
ポ ン チ 肩半径 (rp):R4.2
ダ イ ス 径 (dd):φ41.6
ダ イ ス 肩半径 (rd):R8.7
し わ 押 さ え 力 :10.0Kg/cm2
ポ ン チ 速度(m/min):0.3、40.0
試 料 油 :3g/m2塗布(潤滑添加剤の皮膜量)
評 価 :塗布後24時間放置しテストに供し、限界絞り 比で評価した。限界絞り比が高いブランク径ま で絞れたものが良い潤滑性を示す。試験結果を 表3に示す。
(注)限界絞り比(LDR)=ブランク径/ポンチ径
【0066】
【0067】
〈アルミ合金の腐食試験〉
条 件:60℃×90%(湿度) 7日間
試 験 片:アルミニウム合金(#5052)板
方 法:試験片を#1000のエメリー紙で研磨後、試料油に浸漬塗布し 、24時間垂直ドレン後、更に試料油に半浸漬し、アルミ箔で蓋 をし、数箇所に空気穴をあけ試験に供した。
評 価:未浸漬部、浸漬部の腐食状態を観察した。結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
但し表3の各物性の判定方法は以下の通りである。
【0070】
比較例2に示した市販プレス油の組成は以下の推定組成物である。
1.エステル系添加剤………………20.0%
2.アルコール系添加剤……………10.0%
3.スルホネート系添加剤………… 3.0%
4.酸化防止剤……………………… 0.5%
5.ナフテン系軽質潤滑油…………66.5%
粘度:12cst(40℃)
【0071】
表3の結果から明らかなように、本発明品はアルミ合金に対して優れた潤滑性、洗浄性、防食性を示す。
【実施例4〜7】
灯油60重量部及び参考例1、2、3及び4の各化合物の夫々を40重量部ずつ配合して4種のプレス加工潤滑剤を調製した。これ等のプレス加工潤滑剤の特性は実施例2とほぼ同じ程度であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は熱安定性を示すグラフである。
【図2】図2は摩擦係数を示すグラフである。
【符号の説明】
1……本発明化合物
2……市販リン酸エステルB
3……市販リン酸エステルC
【産業上の利用分野】
本発明はアルミニウム又はその合金用冷間プレス加工潤滑剤に関し、更に詳しくは、単一油剤で潤滑性、防錆性、脱脂性に優れるという広範囲な性質、性能に優れた性能を有する冷間プレス加工潤滑剤を提供せんとするものである。
【0002】
【従来の技術】
一般にアルミニウム又はその合金(以下単にアルミ合金という)の冷間プレス加工潤滑剤は、基油たる鉱物油にナフテン酸、石油スルホネート、アルキルカルボン酸、脂肪族アルコール、合成エステル、油脂等を、又はそれらの金属塩とアルキルフェノール等が添加されるのが一般的である。
【0003】
しかし、地球温暖化に対する環境問題改善、石油資源の節約、石油価格の上昇から、自動車燃費向上が望まれ、ここ数年より自動車外板にアルミ合金板を使用して車体重量を減少して燃費効率を向上させる努力がされている。
【0004】
現状の高張力鋼板に代わるべくアルミ合金板にて検討されているが、プレス成形性が難しく潤滑不足のためにプレス割れ、アルミ合金粉末の発生等のトラブルが発生している。アルミ合金板に塗布される潤滑油にも多機能の性質を有するものが要求されてきた。
【0005】
これらのアルミ合金は比強度を向上させるために、アルミニウムにマグネシウム、シリコン、等が添加されている。この他元素が添加されると非常に加工性が劣るようになり、また剛性が低く、キズが付きやすくなるという欠点がある。また、加工後に製品の組立をするためにスポット溶接性が必要である。アルミ合金表面に加工性を保持するために多くの潤滑剤が残っていると熱や電気の伝導性が悪くなり、更に溶接性が劣ることになる。このことより非常に薄膜にて塑性加工できる潤滑剤が要求されている。
【0006】
スポット溶接後、自動洗浄装置にて加工アルミ合金表面より潤滑皮膜を除去し、表面処理、塗装される。これらの後処理に悪影響させないために潤滑皮膜の被洗浄性が必要となってくる。
【0007】
潤滑皮膜の被洗浄性が良いと、その後の表面処理性が優れ、塗装性に優れ、塗膜の密着性に優れ、剥離等のトラブルが発生せず商品価値を高める。これらの洗浄工程は短時間で行われ、またアルミ合金は化学反応性に富むために、弱アルカリ性の洗浄剤で行われる。それ故、潤滑剤の皮膜を除去するには、潤滑剤自身が水に溶けるか又は乳化し易い構造にする必要がある。
【0008】
また、アルミ合金の板、コイルのメーカーにてこれらの表面に潤滑剤を塗布して出荷されたり、プレス加工加工前にこれらの表面に潤滑剤を塗布して、長時間放置されることが推定される。この間にアルミ合金表面が腐食されないことが後工程を良くするには必要になり、又必須条件となる。
【0009】
即ち、潤滑性はもちろん防錆性、脱脂性等があげられ、単一プレス油で全てを満足するものは現状では得られていない。このような現状に鑑み、単一油剤にて潤滑性はもとより、防錆性に優れ、脱脂し易いという新規なプレス潤滑剤を提供することが本発明の目的である。
【0010】
このようにアルミ合金はそのプレス加工に際しては、独特の潤滑性が要求され、特に通常最もよく行われる鋼の場合とは大きな差異がある。これについて更に若干以下に説明する。
【0011】
(イ)アルミ合金が融点が低く、柔らかいために独特の問題が生じる。
(1)アルミニウムの融点は660℃であり、鋼の1530℃と比較すると非常 に低い値を示している。またアルミ合金の表面は鋼と比較すると柔らかく疵 が付きやすい。
(2)プレス加工塑性加工すると、摩擦熱と加工変形熱が発生して加工界面では非常に 温度が上昇する。摩擦係数が大きいと摩擦熱の比率が大きくなり温度上昇が 大きくなる。加工界面にてアルミ合金が工具表面に凝着しやすくなり、焼き 付きを発生させる。その結果、加工荷重が大きくなり、また摩擦熱が大きく なり悪循環となる。
(3)プレス加工は、拡大面積が一般の加工に比較すると大きい加工である。それ 故に、潤滑皮膜厚みを大きくすることが必要となり、面積拡大に対して密着 性に優れた潤滑皮膜が均一に追随することが最も必要になる。
【0012】
(ロ)アルミ合金は酸化皮膜が薄いために生じる問題。
(1)鋼の表面酸化膜厚は条件にもよるが、μmの単位である。これに比較して アルミ合金表面に生成する酸化皮膜は、nmの単位であり、非常に薄い値で ある。プレス加工により表面積が拡大されると酸化皮膜は更に薄くなる。その ために融点の低い、柔らかいアルミ合金表面が露出される比率が大きくなり 、焼き付き現象の発生が多くなる。
(2)この焼き付き現象を無くすためには、加工材料の表面に密着性に優れ、そ して潤滑皮膜が面積拡大に対して均一に追随する優れた化合物を吸着させる ことが必要になる。
【0013】
(ハ)その他
(1)アルミ製品は鋼と比較して、引張り強さは低い値であり、塑性加工に於い て面積拡大される時に、潤滑皮膜が不足したり、性能が優れていないと、割 れが発生することがある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来のアルミ合金のプレス加工油剤の欠点を解消することにある。更に詳しくはアルミ合金の冷間プレス加工工程に優れた潤滑性を有し、かつ優れた防錆性を併せて有し、さらに従来のプレス油と同等以上の脱脂性を有するアルミ合金の冷間プレス加工潤滑油を開発することにある。又、従来の市販リン酸エステルは耐加水分解に乏しく、無機性リン酸の生成が避けられず、アルミ合金の腐食の原因となっている。更に熱的にも不安定で、比較的低温で分解し易く、無機性リン酸の生成が速く、腐食の原因となっている。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、特定化合物を合成し、その化合物を鉱油等の基油に35〜100重量%含有せしめることによって、上記課題を解決出来ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0016】
即ち、従来のアルミ合金用冷間プレス加工潤滑油では得られない優れた潤滑性を有し、更に従来のアルミ合金用冷間プレス加工潤滑油の防錆性と脱脂性と同等以上の特性を有することである。
【0017】
【発明の作用】
本発明に於いては、炭素原子数が6ないし60個のα位に二重結合を有するオレフィンと亜リン酸、次亜リン酸、又はジアルキルフォスファイトより合成された[化1]で示されるアルキルホスホン酸誘導体を基油(鉱物油)に単独あるいは他の助剤と共用することを基本としている。
【0018】
【化1】
【0019】
(但しR1はC6〜C60の直鎖又は分岐アルキル基、R2又はR3は両方又はいずれか一方がH又はC1〜C18の直鎖又は分岐アルキル基、オキシアルキレン基、アルカリ金属、アルカリ土類金属を示す)
【0020】
また、本発明に於いては、上記[化1]で示される特定の化合物に更に下記化合物(1)及び(2)〜(3)で表される化合物の少なくとも1種との反応生成物を基油に単独又は他の助剤と共に含有せしめる態様も包含される。
化合物(1)
【0021】
【化2】
【0022】
(但し、R4、R5、R6、は全部又は2個又は1個がH又はC1〜C18の直鎖又は分岐アルキル基、又はR6がR7−O−R8で示されるアルコキシル基で、残りがHである。R7はC1〜C6の直鎖又は分岐アルキル基、R8はC1〜C18の直鎖又は分岐アルキル基)
【0023】
化合物(2)
アミノアルコール
【0024】
化合物(3)
【0025】
【化3】
【0026】
(R15は炭素数C1〜C18のアルキル基、R14、16、17、18はH又はアルキル基)
【0027】
【発明の作用並びに構成】
本発明においては、上記[化1]と、化合物(1)〜(3)の化合物の少なくとも1種を使用することにより、アルミニウム又はアルミ合金に対する潤滑性に優れ、防錆性、脱脂もし易い油剤となる。更に詳しくは、本発明冷間プレス加工潤滑油組成物において、上記[化1]と(1)〜(3)の化合物の少なくとも1種との反応物を基油、例えば灯油、スピンドル油、マシン油、等の鉱物油にまた、トルエン等低沸点溶剤に1.0〜100重量%添加したものは、無添加基油、市販アルミ合金プレス油に比べ優れた潤滑性と防錆性を示す。これは上記式[化1]と(1)〜(3)の化合物の少なくとも1種との反応物であるアルキルホスホン酸誘導体の吸着皮膜がアルミ合金表面に均一に形成され、水、ハロゲン、無機酸等の腐食因子によっても破壊されない強靭なものであることをものがたっている。
【0028】
さらに本発明化合物は下記の実験例にも示すように、耐加水分解性、熱分解性に優れ、無機性リン酸が生成し難く、腐食に対しても優位に働いている。
【0029】
【実験例】
下記表1に示す添加剤の特性を測定した。
【0030】
【表1】
【0031】
<耐加水分解性>
方法:試料2gに10%KOH水溶液100mlを加え95℃で10時間加熱還流を行い、エーテル抽出し、油層、水層の燐分を測定し、無機性燐化合物の生成度合より耐加水分解性の指標とした。結果を表1に示す。
【0032】
A:【化4】
【0033】
B:【化5】
【0034】
C:【化6】
表1より明らかなように、本発明化合物は、市販燐酸エステルに比べ化学的に安定なことを示している。これは燐と結合する原子の違いによるもので、P−C結合と、P−O−C結合の結合エネルギーの差によるものである。
【0035】
<熱安定性>
図1に於いて1は本発明化合物A(参考例6)、2は市販リン酸エステルB、3は市販リン酸エステルCを示す。
熱天秤による減量測定
【0036】
【0037】
<潤滑性>
図2に於ける各番号は図1と同じことを示す。
曽田式振り子式油性試験による摩擦係数測定
【0038】
【0039】
本発明で使用する上記特定の化合物であるアルキルホスホン酸誘導体は、その製法は何ら限定されないが、例えば次のような方法で製造される。
【0040】
炭素原子数が6〜60個のα位に二重結合を有するオレフィンと、亜燐酸、次亜燐酸及びジアルキルホスファイトの少なくとも一種とを、オレフィンに対して1.0〜2.0モル混合し、触媒として過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル開始剤を用い、窒素雰囲気中、60〜150℃で4〜20時間反応を行い、アルキルホスホン酸又はアルキルホスホン酸ジアルキルエステルを得る。アルキルホスホン酸ジアルキルエステルは、更に適当な触媒下、例えば濃塩酸、濃アルカリ水の存在下、加水分解してアルキルホスホン酸モノアルキルエステル又はアルキルホスホン酸を得ることが出来る。次いで、アルキレンオキサイドの付加、アミノ化又はアミン塩、アミノアルコールとの縮合又はアミノアルコールとの塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩にすることが出来る。
【0041】
更に詳しく反応条件を例示すると以下の通りである。
【0042】
(イ)アルキレンオキサイド付加反応
オートクレーブ中に、アルキルホスホン酸又はアルキルホスホン酸モノアルキルエステルを1モル入れ、触媒として水酸化カリウム等のアルカリを0.5〜2重量%加え、オートクレーブ中を窒素置換し、撹拌しながら酸化エチレン、酸化プロピレン等の1種0.5〜10モルを圧入し、昇温し、50〜200℃で1〜20時間反応を行い、必要とあれば濾過を行い、アルキレンオキサイド付加物を得る。
【0043】
(ロ)アミン又はアミノアルコールとの塩
温度計、撹拌機、還流冷却管を取りつけた反応器に、アルキルホスホン酸又はアルキルホスホン酸モノアルキルエステルを1モル入れ、アルキルアミン又はアルカノールアミンを0.5〜2.0モル加え、100〜150℃で1〜5時間撹拌しアルキルアミン塩又はアルカノールアミン塩を得る。
【0044】
(ハ)アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩
温度計、撹拌機、還流冷却管を取りつけた反応器にアルキルホスホン酸又はアルキルホスホン酸モノアルキルエステルを1モル入れ、水酸化ナトリウム又は水酸化マグネシウムを0.5〜1.0モル加え、100〜150℃で1〜5時間反応を行い、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩を得る。
【0045】
本発明に於いて使用するα位に二重結合を有するオレフィンとしては、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドテセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタコセン等の炭素数6〜60の各αオレフィンが挙げられ、好ましくは炭素数12〜60のオレフィンである。炭素数5以下では、沸点、引火点が低く合成上の収率が極めて低い。炭素数60より多くなると融点が極めて高く、溶解性に乏しく好ましくない。
【0046】
ジアルキルホスファイトとしては、ジメチルホスファイト、ジエチルホスファイト、ジイソプロピルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジヘキシルホスファイト、ジ−2エチルヘキシルホスファイト、ジデシルホスファイト、ジドデシルホスファイト、ジテトラデシルホスファイト、ジヘキサデシルホスファイト、ジオクタデシルホスファイト等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜8のジアルキルホスファイトである。炭素数9以上のジアルキルホスファイトは加水分解を受け易く好ましくない。
【0047】
アルキレンオキサイドとしては、アルキレン基の炭素数が2〜6程度のもので、特に、酸化エチレン、酸化プロピレンが好ましい。
【0048】
アミノ化、アミン塩に使用されるアミンとしては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソピロピルアミン、トリイソプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、デシルアミン、ドデシルアミン、テトラデシルアミン、オクタデシルアミンが挙げられ、好ましくは1級アルキルアミンである。又、H2N−R7−0−R8で示されるアミンでは、R7は炭素原子数1〜3、R8は炭素原子数6〜18のものが好ましい。R7の炭素原子数5や6の化合物は、市販合成品の単価が高くこの点からは好ましいとは言い難い。R8の炭素原子数19以上のものは、融点が高く、溶解性に乏しい傾向がある。付加モル数は、1〜10程度であり、これより多いと溶解性が低下する。
【0049】
アミノアルコールとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、N、N−ジメチルプロパノールアミン、N、N−ジエチルプロパノールアミン、ブタノールアミン、ネオペンタノールアミンが好ましい。
【0050】
ポリアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、N、N−ジメチルアミノプロピルアミン、N、N−ジエチルアミノプロピルアミンが好ましい。
【0051】
アルカリ金属、アルカリ土類金属としては、Na、K、Ca、Ba、Mg等が好ましい。
【0052】
本発明化合物は35重量%未満では効果がなく、又、本発明化合物は、公知の添加剤、例えばスルホネート類、エステル類、アルコール類、金属石鹸、酸化防止剤等適宜に共用出来る。
【0053】
【実施例】
本発明を理解し易くするために以下に合成例たる参考例を示し、その合成品を用いての実施例を示すが、下記の合成例及び実施例は本発明を何ら制限するものではない。
【0054】
【参考例1】
1−オクテン(1.0モル)、と亜燐酸(2.0モル)および溶媒としてジオキサン500mlを温度計、撹拌機、窒素ガス導入管、滴下ロート、還流冷却管を取りつけた反応器に仕込み、触媒として過酸化ベンゾイル(0.1モル)を1−オクテン50gに溶解させ、滴下ロートよりゆっくり加え、60〜80℃で10時間反応を行い、溶剤抽出により、未反応亜燐酸、未反応1−オクテンを除去し、更に溶剤留去して、オクチルホスホン酸を得た。中和価580(計算値584)。
【0055】
【参考例2】
温度計、撹拌機、窒素ガス導入管、滴下ロート、還流冷却管を取りつけた反応器に、炭素数16のオレフィン(1.0モル)とジイソプロピルホスファイト(1.2モル)を入れ、窒素ガス雰囲気中、触媒として過酸化ベンゾイル(0.2モル)をゆっくり加え、100〜150℃で8時間反応を行い、炭素数16のアルキルホスホン酸ジイソプロピルエステルを得た。
【0056】
【参考例3】
参考例2と同方法で、炭素数28のアルキルホスホン酸ジイソプロピルエステルを得、更に、20%塩酸を用いて共沸下15時間撹拌を行い、水洗精製して炭素数28のアルキルホスホン酸モノイソプロピルエステルを得た。中和価116(計算値109)。
【0057】
【参考例4】
参考例1と類似な方法で、炭素数30〜50のアルキルホスホン酸を得、更にオートクレーブ中、触媒として水酸化カリウム(1重量%)を用い、エチレンオキサイドを1モル付加させ、炭素数30〜50のアルキルホスホン酸モノヒドロキシエチルを得た。中和価79(計算値72)。
【0058】
【参考例5】
参考例3と類似な方法で、炭素数30〜50のアルキルホスホン酸モノイソプロピルエステルを得、その1モルに対して、ラウリルアミン1モルを加え、80〜100℃で1時間加熱撹拌して、炭素数30〜50のアルキルホスホン酸モノイソプロピルのラウリルアミン塩を得た。
【0059】
【参考例6】
参考例1と類似方法で、炭素数20〜28のアルキルホスホン酸を得、その1モルに対してN、N−ジエチルプロパノールアミン1モルを加え、100〜130℃にて5時間加熱撹拌し縮合させ、炭素数20〜28のアルキルホスホン酸モノ(ジエチルアミノ)プロパノールエステルを得た。
【0060】
【参考例7】
参考例3と同じ方法で、炭素数20〜28のアルキルホスホン酸モノイソプロピルを得、その1モルに対し、水酸化マグネシウム0.5モルを加え、100〜130℃で3時間加熱撹拌し、炭素数20〜28のアルキルホスホン酸モノイソプロピルモノMg塩を得た。
【0061】
【参考例8】
参考例6にて作成した試験液を試験片(アルミニウム#5052)に塗布後、コンタクトして14日間放置した。その膜厚は2μであった。その後、性能試験をした。
【0062】
【実施例1〜3】
下記表2に示す各成分を所定量配合して、プレス加工油を調製した。但し同表中は全て重量%を示す。
【0063】
【表2】
【0064】
【0065】
2.プレス性試験(円筒深絞り試験)
試 験 片:アルミニウム合金(#5052)板
ブ ラ ン ク 径 (D):φ70〜φ85(厚さ0.8mm)
ポ ン チ 径 (dp):φ40(平頭ポンチ)
ポ ン チ 肩半径 (rp):R4.2
ダ イ ス 径 (dd):φ41.6
ダ イ ス 肩半径 (rd):R8.7
し わ 押 さ え 力 :10.0Kg/cm2
ポ ン チ 速度(m/min):0.3、40.0
試 料 油 :3g/m2塗布(潤滑添加剤の皮膜量)
評 価 :塗布後24時間放置しテストに供し、限界絞り 比で評価した。限界絞り比が高いブランク径ま で絞れたものが良い潤滑性を示す。試験結果を 表3に示す。
(注)限界絞り比(LDR)=ブランク径/ポンチ径
【0066】
【0067】
〈アルミ合金の腐食試験〉
条 件:60℃×90%(湿度) 7日間
試 験 片:アルミニウム合金(#5052)板
方 法:試験片を#1000のエメリー紙で研磨後、試料油に浸漬塗布し 、24時間垂直ドレン後、更に試料油に半浸漬し、アルミ箔で蓋 をし、数箇所に空気穴をあけ試験に供した。
評 価:未浸漬部、浸漬部の腐食状態を観察した。結果を表3に示す。
【0068】
【表3】
【0069】
但し表3の各物性の判定方法は以下の通りである。
【0070】
比較例2に示した市販プレス油の組成は以下の推定組成物である。
1.エステル系添加剤………………20.0%
2.アルコール系添加剤……………10.0%
3.スルホネート系添加剤………… 3.0%
4.酸化防止剤……………………… 0.5%
5.ナフテン系軽質潤滑油…………66.5%
粘度:12cst(40℃)
【0071】
表3の結果から明らかなように、本発明品はアルミ合金に対して優れた潤滑性、洗浄性、防食性を示す。
【実施例4〜7】
灯油60重量部及び参考例1、2、3及び4の各化合物の夫々を40重量部ずつ配合して4種のプレス加工潤滑剤を調製した。これ等のプレス加工潤滑剤の特性は実施例2とほぼ同じ程度であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は熱安定性を示すグラフである。
【図2】図2は摩擦係数を示すグラフである。
【符号の説明】
1……本発明化合物
2……市販リン酸エステルB
3……市販リン酸エステルC
Claims (3)
- 炭素原子数が6ないし60個のα位に二重結合を有するオレフィンと、亜リン酸、次亜リン酸及びジアルキルフォスファイトの少なくとも1種より合成された下記一般式[化1]で示されるアルキルホスホン酸誘導体と、下記(1)〜(3)で示される化合物の少なくとも1種との反応物を、基油に35〜100重量%含有せしめることを特徴とするアルミニウム又はその合金用冷間プレス加工潤滑剤。
化合物(1)
[化2]で示されるアミン
化合物(2)
アミノアルコール
化合物(3)
[化3]で示されるポリアミン
- 請求項1または2に記載の冷間プレス加工潤滑剤を用いて、その乾燥皮膜厚さが0.1〜10.0μmとなるように潤滑皮膜を形成したアルミニウム又はその合金、又はコイル。
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