JP3567311B2 - 水性冷間鍛造潤滑剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な鋼又は鋼合金の水性冷間鍛造潤滑剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般的に金属の塑性加工の冷間鍛造には、基油たる鉱物油に硫黄化合物、リン酸エステル化合物、有機酸、塩素化合物、合成エステル、油脂、金属石鹸、二硫化モリブデン等が添加された油性潤滑剤が、多く使用されている。例えば、特開平5−65493号には、鉱物油にリン酸エステル化合物を添加したアルミ合金又は非鉄金属用の油性潤滑剤が開示されている。しかし、この潤滑剤は、アルミ合金や非鉄金属には使用できるものの、塑性加工条件が過酷な鋼又は鋼合金の冷間鍛造に使用した場合には、油膜の保持性が不十分で焼き付きが発生し、加工荷重が大きいために、工具であるパンチやダイスが破損するという欠点を生じる。また、例えば、豊田中央研究所R&Dレビュー,Vol.28,No.3,P.11−21(1993.9)には、パラフィン系鉱油にリン酸エステル化合物であるオレイルアシッドホスフェート、無機リン酸及びリン酸金属塩を添加、加熱処理した鋼又は鋼合金用の油性潤滑剤が開示されている。しかし、この潤滑剤には、防錆性が必ずしも十分ではないという欠点がある。
【0003】
また、油性の冷間鍛造潤滑油には、加工後のドライ切削加工工程等にて発煙し作業環境を大きく低下させるという問題点がある。更に、近年、該ドライ切削加工工程が自動化されるに伴い、油性及び水性の冷間鍛造潤滑油において、自動化ロボットが加工される部品をチャッキングセッティングする場合に、潤滑被膜のベタツキのためチャッキング不良を生じて、屡々作業中断を起こすという問題点もある。これらの問題点を解決するために鍛造加工後の部品を洗浄剤にて洗浄して潤滑被膜を除去することが必要になり、洗浄剤液の使用とその液の管理等が必要になってくるという欠点もある。
【0004】
一方、特開昭59−227990号には、炭素数が8以下のアルキルホスホン酸とポリエーテルポリオールを水に分散した水性冷間鍛造潤滑剤が提案されており、水性であるため被膜除去が容易であるという利点がある。しかし、この潤滑剤には、耐焼き付き性や防錆性が悪いという欠点がある。
【0005】
そのため、加工条件が過酷な鋼又は鋼合金の冷間鍛造においては、従来の潤滑剤では、潤滑性、耐焼き付き性等の不足を補うために鍛造加工の前にあらかじめ加工材料表面にリン酸亜鉛鉄のような化成処理被膜を生成させて、その被膜上を潤滑剤で処理して冷間鍛造加工されているのが現状である。
【0006】
ここで、上記化成処理被膜は潤滑性、耐焼き付き性には優れているが生成固体被膜のため加工すると工具と加工材の界面にて高圧のスベリにより粉塵が発生して職場を汚染していた。また、この化成処理被膜の剥離物が工具表面に残留し、鍛造された部品の欠肉の原因にもなっている。更に、化成処理被膜を材料表面に生成するには液管理された多くの処理液が必要になる。そして、化成処理液の廃液処理には多くの経費を要している。
【0007】
従って、別工程であるこの前処理としての化成処理被膜を生成させずに直接に潤滑剤のみにて鋼の冷間鍛造が可能になれば、工程の省略ができ加工コストが大幅に低下でき、省資源、省エネルギーに大きな寄与となる。また、加工ラインが一体化できる等の大きな生産ラインの改善が可能となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、潤滑性、焼き付き防止性等の加工潤滑性能や防錆性に優れ、鋼又は鋼合金の塑性加工のような過酷な冷間鍛造加工においてもリン酸化成処理被膜なしで冷間鍛造加工が可能であり、潤滑被膜のベタツキが無いためロボットによるチャッキング不良を発生せず、しかも潤滑被膜が水性のためにその被膜除去は水のみにて十分可能である優れた被膜除去性を有する新規な冷間鍛造潤滑剤を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、従来の冷間鍛造潤滑剤が有する諸欠点を解消するために研究を重ねた。その結果、炭素数が10以上のアルキルホスホン酸誘導体又はその反応物である特定の化合物及びリン酸金属塩を有効成分とし、これを界面活性剤と共に水に分散してなる水性潤滑剤は、従来の冷間鍛造潤滑剤に比して極めて優れた加工潤滑性能、防錆性、耐ベタツキ性及び被膜除去性を有し、特に鋼又は鋼合金用の冷間鍛造加工潤滑剤として好適であり、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち本発明は、一般式
【0011】
【化5】
【0012】
(式中、R1はC10〜C60の直鎖又は分岐アルキル基を示す。R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子、C1〜C8の直鎖若しくは分岐アルキル基、−(R4O)m−H基、アルカリ金属又はアルカリ土類金属を示す。R4はC2〜C6の直鎖又は分岐アルキレン基を、mは2〜20の整数を、それぞれ示す。)で表されるアルキルホスホン酸誘導体、並びに
リン酸金属塩を、
界面活性剤と共に水に分散せしめてなることを特徴とする鋼又は鋼合金の水性冷間鍛造潤滑剤に係る。
【0013】
また、本発明は、上記一般式〔1〕のアルキルホスホン酸誘導体と、一般式
【0014】
【化6】
【0015】
(式中、R5、R6及びR7は、同一又は異なって、水素原子、C1〜C8の直鎖若しくは分岐アルキル基又は−R8−O−R9で表されるアルコキシアルキル基を示す。R8はC1〜C8の直鎖又は分岐アルキレン基を、R9はC1〜C8の直鎖又は分岐アルキル基を、それぞれ示す。)で表されるアミン化合物、アミノアルコール及び一般式
【0016】
【化7】
【0017】
(式中、R11、R12、R13及びR14は、同一又は異なって、水素原子又はC1〜C8の直鎖若しくは分岐アルキル基を示す。R15は、C1〜C4の直鎖又は分岐アルキレン基を示す。nは、1〜1000の整数を示す。)で表されるポリアミン化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物との反応物、並びに
リン酸金属塩を、
界面活性剤と共に水に分散せしめてなることを特徴とする鋼又は鋼合金の水性冷間鍛造潤滑剤にも係る。
【0018】
【発明の実施の態様】
本発明に於いては、一般式〔1〕のアルキルホスホン酸誘導体又は該誘導体と一般式〔2〕のアミン化合物、アミノアルコール及び一般式〔3〕のポリアミン化合物の少なくとも一種との反応物並びにリン酸金属塩を有効成分とし、これを界面活性剤と共に水に分散させて潤滑剤とすることを基本としている。
【0019】
ここで、R1で示されるC10〜C60の直鎖又は分岐アルキル基としては、例えば、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、テトラデシル基、オクタデシル基、イソオクタデシル基、エイコシル基、オクタコシル基、トリアコンタシル基、テトラコンタシル基、ペンタコンタシル基、ヘキサコンタシル基、ドコシル基、テトラコシル基、ヘキサコシル基、ペンチルコンタシル基等を挙げることができる。
【0020】
R2、R3、R5、R6、R7及びR9で示されるC1〜C8の直鎖又は分岐アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、ヘプチル基等を挙げることができる。
【0021】
−(R4O)m−H基は、アルキレンオキサイドが付加されてなるオキシアルキレン基であり、R4で示されるC2〜C6の直鎖又は分岐アルキレン基としては、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基等を挙げることができる。
【0022】
R8で示されるC1〜C8の直鎖又は分岐アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、テトラメチレン基、2−エチルヘキシレン基等を挙げることができる。R15で示されるC1〜C4の直鎖又は分岐アルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、1,2−ブチレン基、1,3−ブチレン基、テトラメチレン基、イソプロピレン基等を挙げることができる。
【0023】
アルカリ金属としては、カリウム、ナトリウム等を、又アルカリ土類金属としては、カルシウム、マグネシウム等を、それぞれ挙げることができる。
【0024】
本発明水性冷間鍛造潤滑剤が、従来公知の潤滑剤に比較して優れた潤滑性と防錆性を示すのは、有効成分とする一般式〔1〕のアルキルホスホン酸誘導体又は該誘導体と一般式〔2〕のアミン化合物、アミノアルコール及び一般式〔3〕のポリアミン化合物の少なくとも一種との反応物の付着乃至吸着被膜が被加工材である鋼材又は鋼合金材表面に形成され、その被膜が工具と被加工材の界面の過酷な加工状態である高温・高圧にても分解されずに潤滑被膜として働き、また水、無機酸等の腐蝕因子によっても破壊されないことを示している。
【0025】
本発明潤滑剤の上記有効成分は、下記の実験例に示す通り、耐加水分解性、熱安定性、潤滑性に優れ、無機リン酸が生成し難いので腐蝕に対しても優れている。
【0026】
即ち、本発明潤滑剤の有効成分である化合物A、市販リン酸エステルである化合物B及びCについて、下記実験例により、耐加水分解性、熱安定性、潤滑性を調べた。
【0027】
化合物A、B及びCの構造式は、次の通りである。
【0028】
化合物A
【0029】
【化8】
【0030】
化合物B
【0031】
【化9】
【0032】
化合物C
【0033】
【化10】
【0034】
耐加水分解性:試料化合物2gに10%KOH水溶液100mlを加え95℃にて10時間加熱還流を行い、エチルエーテルにて抽出し、油層と水層のリン分を測定し、無機リン酸の生成率より加水分解率を測定した。
【0035】
その結果、化合物Aの加水分解率は0%であった。これに対して、化合物B及びCの加水分解率はいずれも84%であった。
【0036】
この結果より明らかなように、本発明で有効成分とするアルキルホスホン酸誘導体化合物は、市販リン酸エステル化合物に比較して、化学的に安定で耐加水分解性に優れることを示している。このことはリンと結合する原子の違いに基づくもので、P−C結合とP−O−C結合の結合エネルギーの差によるものであると考えられる。
【0037】
熱安定性:試料化合物10mg〜15mgを正確に熱天秤測定装置のカップに採取して、N2ガス量100ml/分を流しながら、昇温速度5℃/分にて700℃まで昇温したときの減量を測定した。結果を、図1に示す。図1において、線1は市販リン酸エステル化合物Bを、線2は市販リン酸エステル化合物Cを、線3は本発明の有効成分である化合物Aを、それぞれ示す。
【0038】
図1より明らかなように、本発明で有効成分とする化合物は、市販リン酸エステル化合物に比較して、熱に対して安定なことを示している。これは化学構造に起因した結果であり、P−C結合化合物が安定であることによるものと考えられる。冷間鍛造加工といえども大きな加工熱、摩擦熱が発生するが本発明で有効成分とする化合物の被膜が有機被膜として十分に作用することを示している。
【0039】
潤滑性:試料化合物の摩擦係数として、曽田式振り子式油性試験機による各温度の摩擦係数を測定する。試験球と試験棒とも材質はSUJ−2(高炭素クロム軸受鋼)である。結果を、図2に示す。図2において、線1は市販リン酸エステル化合物Bを、線2は市販リン酸エステル化合物Cを、線3は本発明の有効成分である化合物Aを、それぞれ示す。
【0040】
図2より明らかなように、本発明で有効成分とする化合物は、市販リン酸エステル化合物に比較して、熱に対して安定な構造を有しているために、測定温度が上昇しても優れた摩擦係数を示し、そして図1に示した熱安定性測定結果と同じく最も優れた結果を示している。
【0041】
上記耐加水分解性、熱安定性、潤滑性の実験結果より、次の点が明らかである。
【0042】
冷間鍛造加工において、被加工材料の加工中の温度は、金属を変形させるのに伴い、加工熱と摩擦熱が加わり約500℃以上に表面温度が上昇する。ゆえに、潤滑剤は被加工材料の表面に塗布されているので高温に曝される。この高温において潤滑剤が分解、蒸散してしまうと潤滑剤の働きが無くなり、摩擦が増加し、結果として負荷荷重が高くなり、焼き付きが発生する。最悪の場合には加工工具の破損にいたる。しかし、本発明で有効成分とする化合物は、熱的に非常に安定な構造を有しているために分解等の現象は発生せず、安定な皮膜を保持し、その潤滑皮膜が摩擦熱の発生を低減し、負荷荷重も低くし、焼き付き発生を防止し優れた潤滑効果を発揮する。
【0043】
また、水性の冷間鍛造加工では、加工熱と摩擦熱により工具と被加工材の表面は高温になり、さらに希釈剤としての水分が皮膜に存在する。この水分により潤滑皮膜が加水分解されて、アルコールと無機リン酸が生成するとリン酸エステル潤滑皮膜として皮膜存在が不可能になり、潤滑効果が低減して負荷荷重が高く、焼き付きが発生する。しかし、本発明で有効成分とする化合物の化学構造は、炭素原子とリン原子が直接結合しているために結合エネルギーが大きく、市販品のリン酸エステル化合物の酸素原子とリン原子が結合しているものより、格段と耐加水分解性に優れている。それ故に、本発明で用いる耐加水分解性に優れた化合物の潤滑皮膜は摩擦熱の発生を低減し、負荷荷重も低くし、焼き付き発生を防止し優れた潤滑効果を発揮する。
【0044】
そして、本発明の化合物の各温度における摩擦係数を曽田式振り子式油性試験にて測定すると、市販リン酸エステルは耐熱性能と同じ順序にて昇温すると分解して摩擦係数が上昇するが本発明で有効成分とする化合物であるアルキルホスホン酸誘導体は熱的に安定で、さらに耐加水分解性に優れているために優れた低い摩擦係数を示している。
【0045】
本発明潤滑剤で有効成分として使用する一般式〔1〕のアルキルホスホン酸誘導体又は該誘導体と一般式〔2〕のアミン化合物、アミノアルコール及び一般式〔3〕のポリアミン化合物の少なくとも一種との反応物は、その製法は何ら限定されないが、例えば次の方法で製造される。
【0046】
即ち、炭素原子数が10〜60個のα位に二重結合を有するオレフィンと、亜リン酸、次亜リン酸及びジアルキルフォスファイトの少なくとも一種とを、オレフィン1モルに対して1.0〜1.5モル混合し、触媒として過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル等のラジカル開始剤を用い、窒素雰囲気中、60〜150℃程度で4〜20時間程度反応を行い、アルキルホスホン酸又はアルキルホスホン酸ジアルキルエステルを得る。アルキルホスホン酸ジアルキルエステルは更に適当な触媒下、例えば濃塩酸、濃アルカリ水の存在下、加水分解してアルキルホスホン酸モノアルキルエステル又はアルキルホスホン酸を得ることができる。
【0047】
次いで、必要に応じて、アルキレンオキサイドの付加、アミノ化又はアミン塩、アミノアルコールとの縮合又はアミノアルコールとの塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩にすることができる。これらの場合の反応条件を例示すると以下の通りである。
【0048】
(イ)アルキレンオキサイド付加反応
オートクレーブ中にアルキルホスホン酸又はアルキルホスホン酸モノアルキルエステルを1モル入れ、触媒として水酸化カリウム等のアルカリを0.5〜2重量%加え、オートクレーブ中を窒素置換し、撹拌しながらエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドの一種を0.5〜20モル圧入し、温度50〜200℃で1時間〜20時間反応を行い、アルキレンオキサイド付加物を得る。
【0049】
(ロ)アミン化合物、アミノアルコール又はポリアミン化合物との反応
温度計、撹拌機、還流冷却管を取り付けた反応器に、アルキルホスホン酸又はアルキルホスホン酸モノアルキルエステルを1モル入れ、一般式〔2〕のアミン化合物、アミノアルコール又は一般式〔3〕のポリアミン化合物を0.5〜2.0モル加え、100〜150℃で1〜5時間撹拌して、アミン化合物、アミノアルコール又はポリアミン化合物との反応物を得る。
【0050】
(ハ)アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩の生成反応
温度計、撹拌機、還流冷却管を取り付けた反応器に、アルキルホスホン酸又はアルキルホスホン酸モノアルキルエステルを1モル入れ、水酸化ナトリウム、水酸化マグネシウム等を0.5〜2.0モル加え、100〜150℃で1〜5時間撹拌しアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩を得る。
【0051】
本発明において使用するα位に二重結合を有するオレフィンとしては、例えば、1−デセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、1−ドコセン、1−テトラコセン、1−ヘキサコセン、1−オクタコセン、1−トリアコンテセン、1−ヘプタコンテセン、1−テトラコンテセン、1−ペンタコンテセン、1−ヘキサコンテセン等の炭素数10〜60の各α−オレフィンが挙げられ、好ましくは炭素数12〜60のα−オレフィンである。炭素数が9以下では、得られる潤滑剤の耐焼き付き性、防錆性が低く、又炭素数が60より大きくなると融点が極めて高くなり合成が困難になり且つリン含有量が小さくなり、いずれも好ましくない。
【0052】
ジアルキルフォスファイトとしては、ジメチルフォスファイト、ジエチルフォスファイト、ジイソプロピルフォスファイト、ジブチルフォスファイト、ジヘキシルフォスファイト、ジ(2−エチルヘキシル)フォスファイト、ジデシルフォスファイト、ジドデシルフォスファイト、ジオクタデシルフォスファイト等が挙げられ、好ましくは炭素数1〜8のジアルキルフォスファイトである。炭素数9以上のジアルキルフォスファイトは加水分解を受け易く好ましくはない。
【0053】
アルキレンオキサイドとしては、アルキレン基の炭素数が2〜6であり、工業上にて多量に生産されているエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド等が好ましい。
【0054】
アミノ化、アミン塩に使用される一般式〔2〕のアミンとしては、アンモニア、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、トリプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、トリチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン等が挙げられ、好ましくは1級アルキルアミンである。
【0055】
アミノアルコールとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N,N−ジメチルプロパノールアミン、N,N−ジエチルプロパノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン等が望ましい。
【0056】
一般式〔3〕のポリアミンとしては、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、N,N−ジメチルアミノプロピルアミン、N,N−ジエチルアミノプロピルアミン、ポリエチレンイミン等が望ましい。
【0057】
また、本発明潤滑剤においては、有効成分として更にリン酸金属塩を配合することにより、潤滑被膜の耐ベタツキ性が大きく向上している。また、耐焼き付き性も更に大きく向上しており、焼き付きが発生し易いクロム含量の多い鋼合金に対しても十分な耐焼き付き性を発揮する。好適なリン酸金属塩としては、例えば、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸鉛、リン酸錫、亜リン酸亜鉛、亜リン酸鉄、亜リン酸鉛、亜リン酸錫等を挙げることができる。
【0058】
本発明潤滑剤における界面活性剤としては、従来公知のもの、例えば、アニオン系、カチオン系、ノニオン系のものを使用できる。好ましいものは、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤である。
【0059】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸カリウム等のカルボン酸塩類、ラウリルアルコール硫酸エステルアンモニウム、ラウリル硫酸エステルナトリウム、セチル硫酸エステルナトリウム、ステアリル硫酸エステルナトリウム、オレイル硫酸エステルナトリウム、ラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウム、ラウリル硫酸エステルトリエタノールアミン塩ナトリウム、抹香アルコール硫酸エステルナトリウム、硫酸化ヒマシ油ナトリウム、硫酸化抹香鯨油ナトリウム等の硫酸エステル類、オクタデシルスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スルホコハク酸ジ2−エチルヘキシル、ジセチルスルホサクシネートナトリウム、ジオクチルスルホサクシネートナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸カルシウム、ドデシルベンゼンスルホン酸トリエタノールアミンナトリウム等のスルホン酸塩、オレイルアルコールリン酸モノエステルジナトリウム、ラウリルアルコールリン酸ジエステルジナトリウム等のリン酸エステル塩等を挙げることができる。
【0060】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、メチルアンモニウムクロライド、ラウリルアンモニウムクロライド、ステアリルアンモニウムクロライド、エタノールアンモニウムクロライド等の第1級アミン塩、ジメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルアンモニウムクロライド、ジステアリルアンモニウムクロライド、ジエタノールアンモニウムクロライド等の第2級アミン塩、トリメチルアンモニウムクロライド、トリラウリルアンモニウムクロライド、トリステアリルアンモニウムクロライド、トリエタノールアンモニウムクロライド等の第3級アミン塩、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムサルフェート、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等の第4級アミン塩、ポリオキシエチレンモノラウリルアミン、ポリオキシエチレンモノオレイルアミン、ポリオキシエチレンジオレイルアミン、ポリオキシエチレンジオクチルアミン等のポリオキシアルキレンアルキルアミン等を挙げることができる。
【0061】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリエチレングリコールラウリン酸エステル、ポリエチレングリコールオレイン酸ジエステル、ポリエチレングリコールオクチルフェノールエーテル、ポリエチレングリコールノニルエーテル、ポリエチレングリコールオクチルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールノニルフェノールエーテル、ポリエチレングリコールオクチルフェノールエーテル等のポリエチレングリコール型のもの、グリセリンオレイン酸モノエステル、グリセリンラウリン酸モノエステル、ペンタエリスリットパルミチン酸モノエステル、ペンタエリスリットステアリン酸モノエステル、ソルビットパルミチン酸モノエステル、ソルビットステアリン酸モノエステル、ソルビタンオレイン酸モノエステル、ソルビタンステアリン酸ジエステル等の多価アルコール型のもの、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエステル、ポリオキシエチレンオレイルエステル等のポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル等のポリオキシエチレンアルキルアミノエーテル、ポリエチレングリコールジステアリン酸エステル、ポリエチレングリコールステアリン酸エステル等のポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ステアリン酸モノグリセライド、ラウリン酸モノグリセライド、オレイン酸モノグリセライド等の脂肪酸モノグリセライド、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンセスキオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のソルビタン脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールジ牛脂脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールモノ牛脂脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールモノステアレート等のペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレンラウリン酸モノエタノールアマイド、ラウリン酸ジエタノールアマイド等の脂肪酸アルキロールアマイド等を挙げることができる。
【0062】
本発明潤滑剤は、一般式〔1〕のアルキルホスホン酸誘導体又は該誘導体と一般式〔2〕のアミン化合物、アミノアルコール及び一般式〔3〕のポリアミン化合物の少なくとも一種との反応物、並びにリン酸金属塩を、界面活性剤と共に水に分散せしめてなるが、その際の各成分の配合割合は、次の通りである。
【0063】
即ち、一般式〔1〕のアルキルホスホン酸誘導体又は該誘導体と一般式〔2〕のアミン化合物、アミノアルコール及び一般式〔3〕のポリアミン化合物の少なくとも一種との反応物は、通常、5〜50重量%程度の濃度とするのが好ましい。5重量%未満の濃度では所要の性能が不足し、又50重量%を越えて使用してもそれ以上の性能向上は望めないので経済的でなく、いずれも好ましくない。
【0064】
リン酸金属塩は、通常、1〜80重量%程度の濃度とするのが好ましい。1重量%未満の濃度では所要の性能が不足し、又80重量%を越えて使用してもそれ以上の性能向上は望めないので経済的でなく、いずれも好ましくない。また、界面活性剤は、通常、1〜10重量%程度の濃度とするのが適当である。
【0065】
本発明潤滑剤には、必要に応じて、縮合リン酸アルカリ金属塩を配合することができる。これを配合することにより、リン酸金属塩の水分散性を向上できるという利点が得られるので、好ましい。即ち、一般式〔1〕のアルキルホスホン酸誘導体又は該誘導体と一般式〔2〕のアミン化合物、アミノアルコール及び一般式〔3〕のポリアミン化合物の少なくとも一種との反応物の使用濃度が低くなると、リン酸金属塩の水分散性が低下して沈降することがあるが、この場合に縮合リン酸アルカリ金属塩を添加しておくと、潤滑性能を低下させることなくリン酸金属塩の水分散性を向上せしめてその沈降を効果的に防止できる。好適な縮合リン酸アルカリ金属塩としては、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等を挙げることができる。縮合リン酸アルカリ金属塩を配合する場合の使用量としては、通常、1〜50重量%程度の濃度とするのが好ましい。
【0066】
本発明潤滑剤には、更に必要に応じて、公知の添加剤、例えばアルカリ金属スルホネート類、アルカリ土類金属スルホネート類、金属石鹸類等や、塩素系、イオウ系、リン酸エステル系の極圧添加剤等を適宜に併用することができる。
【0067】
本発明潤滑剤を適用する鋼及び鋼合金としては、特に限定されず、各種炭素鋼や、マンガン鋼、マンガンクロム鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、ニッケルクロム鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼等の鋼合金を挙げることができる。
【0068】
また、本発明潤滑剤の使用は、常法に従って行うことができ、例えば、浸漬法等により、鋼又は鋼合金に適宜塗布、乾燥し、これを適宜所用の冷間鍛造に付することができる。
【0069】
【実施例】
本発明を理解し易くするために以下に合成の参考例を示し、その合成品を用いての実施例を示すが、下記の合成例及び実施例は本発明を制限するものではない。
【0070】
参考例1
1−ドデセン(1.0モル)と亜リン酸(2.0モル)及び溶媒としてジオキサン500mlを温度計、撹拌機、窒素ガス導入管、滴下ロート、還流冷却管を取り付けた反応器に仕込み、触媒として過酸化ベンゾイル(0.1モル)を1−ドデセン50gに溶解させ、滴下ロートよりゆっくり加え、60〜80℃で10時間反応を行い、溶剤(エチルエーテル)抽出により、未反応亜リン酸、未反応1−ドデセンを除去し、更に溶剤を蒸留除去して、ドデシルホスホン酸を得た。
【0071】
参考例2
温度計、撹拌機、窒素ガス導入管、滴下ロート、還流冷却管を取り付けた反応器に、炭素数28のα−オレフィン(1.0モル)とジイソプロピルフォスファイト(1.2モル)を入れ、窒素ガス雰囲気中、触媒として過酸化ベンゾイル(0.2モル)をゆっくり加え、100〜150℃で8時間反応を行い、炭素数28のアルキルホスホン酸ジイソプロピルエステルを得た。
【0072】
更に20%塩酸を用いて共沸下5時間撹拌を行い、水洗精製して炭素数28のアルキルホスホン酸モノイソプロピルエステルを得た。
【0073】
参考例3
α−オレフィン(炭素数30〜50の混合物)を用いて、参考例1と同様の方法で、炭素数30〜50のアルキルホスホン酸を得、更にオートクレーブ中、触媒として水酸化カリウム(1重量%)を用い、エチレンオキサイドを1モル付加させ炭素数30〜50のアルキルホスホン酸モノヒドロキシエチルを得た。
【0074】
参考例4
α−オレフィン(炭素数30〜50の混合物)を用いて、参考例2と同様の方法で、炭素数30〜50のアルキルホスホン酸モノイソプロピルエステルを得、その1モルに対して、モノイソプロパノールアミンを1モル加え、1時間撹拌して、炭素数30〜50のアルキルホスホン酸モノイソプロピルエステルのモノイソプロパノールアミン塩を得た。
【0075】
参考例5
α−オレフィン(炭素数20〜28の混合物)を用いて、参考例1と同様の方法で、炭素数20〜28のアルキルホスホン酸を得、その1モルに対してN,N−ジエチルプロパノールアミンを1モル加え、100〜130℃にて5時間加熱撹拌し縮合させ、炭素数20〜28のアルキルホスホン酸モノ(ジエチルアミノ)プロパノールエステルを得た。
【0076】
参考例6
α−オレフィン(炭素数20〜28の混合物)を用いて、参考例2と同様の方法で、炭素数20〜28のアルキルホスホン酸モノイソプロピルエステルを得、その1モルに対し、水酸化ナトリウムを0.5モル加え、室温にて1時間撹拌して、炭素数20〜28のアルキルホスホン酸モノイソプロピルエステルのNa塩を得た。
【0077】
参考例7
α−オレフィン(炭素数12と14の混合物)を用いて、参考例2と同様の方法で、炭素数12と14の混合アルキルホスホン酸モノイソプロピルエステルを得、その1モルに対し、n=500のポリエチレンイミン1モルを加え、50℃にて1時間撹拌反応して、炭素数12と14の混合アルキルホスホン酸モノイソプロピルエステルポリエチレンイミン塩を得た。
【0078】
実施例1〜7及び比較例1
下記表1に示す各成分を配合して本発明又は比較用の水性冷間鍛造潤滑剤を調製した。
【0079】
【表1】
【0080】
表中の数値は、重量%を示す。また、表中のノニオン系界面活性剤はポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルである。
【0081】
比較例2
テストピースを、湯洗(80℃)し、アルカリ脱脂し、次いで希硫酸により酸洗し、湯洗(80℃)し、70〜80℃でリン酸化成処理(処理液「PB−181XM」、日本パーカライジング社製)を行って、比較用に用いた。
【0082】
比較例3
市販の油性冷間鍛造潤滑剤を比較用に用いた。その組成は、硫化油脂(20重量%)、ジンクジチオフォスフェート(25重量%)、塩素化油脂(25重量%)及び精製鉱物油(30重量%)である。
【0083】
次に、実施例1〜7及び比較例1〜3の本発明及び比較用の各潤滑剤について、下記性能試験を行った。
【0084】
1.付着スベリ試験
バウデン式付着スベリ試験によった。各潤滑剤液に試験片を浸漬して潤滑被膜を生成させ、その試験片を15時間放置乾燥させ、この潤滑被膜生成した試験片を試験に用いて、下記項目に従い、被膜の密着強度を調べた。
【0085】
試験片材質:SPCC−SD(冷間圧延鋼板、標準調質ダル板)
摩擦球:SUJ−2(高炭素クロム軸受鋼)、3/16インチφ
試験温度:200℃
荷重:3kg
スベリ速度:3.88mm/sec.
評価:焼き付きが発生するまでのスベリ回数を測定した結果を示す。
【0086】
2.リング圧縮試験
各潤滑剤液に試験片を浸漬して潤滑被膜を生成させ、その試験片を15時間放置乾燥させ、この潤滑被膜生成した試験片をクランクプレス機にて圧縮試験に用いて、下記項目に従い、試験した。
【0087】
試験片材質:S45C(炭素鋼)
試験片形状:外径10mm、内径5mm、厚さ3.3mm
工具材質:SKD−12(合金工具鋼)
試験温度:30℃
評価:圧縮率と形状変化より摩擦係数を測定した。
【0088】
3.ボール通し試験
豊田中央研究所R&Dレビュー,Vol.28,No.3,P.12−13(1993.9)の記載に従い、各潤滑剤液に円筒状試験片を浸漬して潤滑被膜を生成させ、その試験片を15時間放置乾燥させ、この潤滑被膜生成した試験片をクランクプレス機にてボール通し試験に用いて、下記項目に従い、試験した。
【0089】
試験片材質:S10C(低炭素鋼)
試験片形状:外径29.9mm、内径14.5mm又は15.0mm
ボール材質:SUJ−2(高炭素クロム軸受鋼)
ボール直径:15.08mm、15.88mm、16.67mm又は17.46mm
工具材質:SKD−12(合金工具鋼)
試験温度:30℃
評価:試験片の内径よりも大きな直径のボールを円筒内に押し込み貫通させて加工したとき、内径が拡大し軸方向に伸びる変形を受けるが、このときにボール直径と試験片内径との組み合わせを一定の間で変化させるに伴って試験片の断面積が減少する割合(減面率)及び試験後の試験片内面を調べ、焼き付きを生じることなく加工できた最大の減面率(%)及びそのときの負荷荷重(トン)を測定した。
【0090】
4.防錆性試験
各潤滑剤液に試験片を浸漬して潤滑被膜を生成させ、その試験片を15時間放置乾燥させ、この潤滑被膜生成した試験片を試験に用いて、下記項目に従い、試験した。
【0091】
試験片材質:SPCC−SD(冷間圧延鋼板、標準調質ダル板)
試験片形状:長片100mm、短片80mm、厚さ0.8mm
試験温度:30℃
試験条件:屋内放置7日間
評価:錆の発生の有無を観察して、次の評価基準により防錆性を調べた。○は錆発生面積1%以下を、△は錆発生面積10%以下を、×は錆発生面積20%以上を、それぞれ示す。
【0092】
5.耐ベタツキ性試験
各潤滑剤液に試験片を浸漬して潤滑被膜を生成させ、その試験片を15時間放置乾燥させ、この潤滑被膜生成した試験片を用いて、指触により耐ベタツキ性を調べ、次の基準で評価した。○はベタツキなしを、△は少しベタツキありを、×はベタツキありを、それぞれ示す。
【0093】
6.被膜除去性試験
各潤滑剤液に試験片を浸漬して潤滑被膜を生成させ、その試験片を15時間放置乾燥させ、この潤滑被膜生成した試験片を試験に用いて、下記項目に従い、試験した。
【0094】
試験片材質:SPCC−SD(冷間圧延鋼板、標準調質ダル板)
試験片形状:長片100mm、短片80mm、厚さ0.8mm
洗浄液:アルカリを主成分にした市販洗浄液、2%水溶液
洗浄条件:スプレー圧1.5kg/cm2×1分間
評価:洗浄後、流水に浸漬して水濡れ面積より洗浄性を確認して、次の評価基準により被膜除去性を調べた。○は被膜除去面積90%以上を、△は被膜除去面積70%以上を、×は被膜除去面積50%以下を、それぞれ示す。
【0095】
7.実機試験
各潤滑剤液を用いて、リング状粗形材(材質はSCR−20(クロム鋼)である)に浸漬塗布後5時間自然乾燥させて潤滑被膜を生成させ、これを実際の連続生産加工ラインの自動トランスファープレス鍛造機械を使用して、スプラインピースギヤーの冷間鍛造加工を行って、冷間鍛造加工性及び加工時の負荷荷重(トン)を調べた。冷間鍛造加工性は、自動トランスファープレス鍛造機械における自動化ロボットのチャッキングセッティング及び潤滑被膜切れによる焼き付きの指標である金属キシミ音を次の基準により、評価した。○はチャッキングセッティングが良好で金属キシミ音も無く加工性に優れることを、△はチャッキングセッティングがやや不良又は金属キシミ音を少し生じ加工性がやや劣ることを、×はチャッキングセッティングが不良又は金属キシミ音を生じ加工性が劣ることを、それぞれ示す。
【0096】
8.総合評価
総合評価は、次の基準によった。◎はリン酸化成処理被膜に比較して特に優れることを、○はリン酸化成処理被膜に比較して優れることを、△はリン酸化成処理被膜に比較して同等を、×はリン酸化成処理被膜に比較して劣ることを、それぞれ示す。
【0097】
性能試験の結果を表2に示す。
【0098】
【表2】
【0099】
表2の結果より明らかなように、本発明水性冷間鍛造潤滑剤は、リン酸化成処理被膜や市販の冷間鍛造潤滑油と比較して非常に優れた性能結果を示している。
【0100】
【発明の効果】
本発明によれば、潤滑性、焼き付き防止性等の加工潤滑性能や防錆性に優れ、鋼又は鋼合金の塑性加工のような過酷な冷間鍛造加工においてもリン酸化成処理被膜なしで冷間鍛造加工が可能であり、潤滑被膜のベタツキが無いためロボットによるチャッキング不良を発生せず、しかも潤滑被膜が水性のためにその被膜除去は水のみにて十分可能である優れた被膜除去性を有する新規な冷間鍛造潤滑剤が提供されるという格別な効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明潤滑剤の有効成分とする化合物及び市販リン酸エステル化合物についての熱安定性の試験結果を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明潤滑剤の有効成分とする化合物及び市販リン酸エステル化合物についての潤滑性の試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
図1及び2において、線1は市販リン酸エステル化合物Bを、線2は市販リン酸エステル化合物Cを、線3は本発明の有効成分である化合物Aを、それぞれ示す。
Claims (6)
- リン酸金属塩が、リン酸亜鉛である請求項1に記載の鍛造潤滑剤。
- 更に、縮合リン酸アルカリ金属塩を併用する請求項1又は2に記載の鍛造潤滑剤。
- 一般式
- リン酸金属塩が、リン酸亜鉛である請求項4に記載の鍛造潤滑剤。
- 更に、縮合リン酸アルカリ金属塩を併用する請求項4又は5に記載の鍛造潤滑剤。
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